JP5086957B2 - 多段変速機 - Google Patents
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Description
通常、被動歯車が被動歯車軸に回転自在に軸支され、被動歯車を被動歯車軸に係合する種々の係合手段が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
そして、被動歯車軸の各被動歯車に対応する部分に平坦に切り欠くように形成された切込溝にそれぞれ装入されたローラが筒体の長溝に拡開孔を除いて一列に遊嵌されている。
すなわち、拡開孔が位置した被動歯車が被動歯車軸に回転を伝達するので、筒体を軸方向に移動することにより変速することができる。
また、変速時、ローラの被動歯車との係合が外れたときに駆動力の抜けが生じ、隣りの被動歯車に係合するときに大きな変速ショックが発生するので、滑らかな変速が難しい。
本実施の形態に係る多段変速機10は、自動二輪車に搭載される内燃機関に組み込まれて構成されている。
図1は、該多段変速機10の断面図であり、同図1に示すように、該多段変速機10は、内燃機関と共通の機関ケース1に設けられている。
左右割りの左機関ケース1Lと右機関ケース1Rが合体して構成された機関ケース1は、変速室2を形成しており、同変速室2にメイン歯車軸11とカウンタ歯車軸12が互いに平行に左右方向に指向して回転自在に軸支されている。
内燃機関のクランク軸の回転がプライマリ被動ギヤ4から係合状態の摩擦クラッチ5を介してメイン歯車軸11に伝達される。
右ベアリング3Rに沿って第1駆動変速歯車m1がメイン歯車軸11に一体に形成され、メイン歯車軸11の同第1駆動変速歯車m1と左ベアリング3Lとの間に形成されたスプラインに右から左へ順に順次径を大きくした第2,第3,第4,第5,第6駆動変速歯車m2,m3,m4,m5,m6がスプライン嵌合されている。
カウンタ歯車軸12において、右ベアリング7Rの左に介装されたカラー部材14Rを介して外装された右端の軸受カラー部材13と、左ベアリング7Lの右に介装されたカラー部材14Lを介して外装された左端の軸受カラー部材13との間に、等間隔に5つの軸受カラー部材13が外装され、この全部で7つの軸受カラー部材13の隣り合う軸受カラー部材13,13間に跨るようにして右から左へ順に順次径を小さくした第1,第2,第3,第4,第5,第6被動変速歯車n1,n2,n3,n4,n5,n6が回転自在に軸支されている。
コントロールロッド51の軸方向の移動は、ロストモーション機構52,53を介してカムロッドCを軸方向に連動し、このカムロッドCの移動がカウンタ歯車軸12に組み込まれた係合手段20により各被動変速歯車nを選択的にカウンタ歯車軸12と係合して変速を行う。
コントロールロッド51の右端は雄ねじが形成された雄ねじ端部51bbとなっており、雄ねじ端部51bbの手前に6角形状のナット部51cが形成されている。
左右のロストモーション機構52,53は、同じ構造のものを互いに左右対称になるように配設している。
なお、コッタ52cは、スプリングホルダ52hの内周凹部52haの内径を外径とし、コントロールロッド51の外周凹部51aの外径を内径とした中空円板状をなし、組み付けのため半割りにされている。
したがって、コントロールロッド51が軸方向に移動すると、左右のロストモーション機構52,53の圧縮コイルスプリング52s,53sを介してスプリングホルダ52h,53hが軸方向に移動する。
カムロッドCは、断面が特別な形状をしておらず概ね外形が単純な矩形の角柱棒状部材であるので、カムロッドCを容易に製造することができる。
このコントロールロッド操作子55の螺着されたナット57より右側に延出した円筒部に直径方向に穿孔したピン孔55hが形成されており、同ピン孔55hにシフトピン58が貫通する。
なお、コントロールロッド51の左端の2面巾カット端部51aaに形成されたピン孔51hには係合ピン59が貫通する。
右機関ケース1Rの側壁1RRの右方に突出したガイド部1Raに溝条60が左右方向に指向して形成されており、この溝条60にシフトピン58の突出した一端頭部が摺動自在に嵌合してシフトピン58の回り止めとしている。
コントロールロッド操作子55はコントロールロッド51の右端部を回転自在に保持しているので、結局シフトドラム67の回動はコントロールロッド51を軸方向に移動させる。
シフト伝達手段は、シフトドラム67を所定角度毎の変速段位置に安定して保持させるシフトカム部材などの機構を備えてシフトセレクトレバーの操作動力をシフトドラム67の側縁に形成されたギヤ67gに伝達してシフトドラム67を順次変速段位置に回動する。
この中空円筒状のカウンタ歯車軸12は、内径がロストモーション機構52,53のスプリングホルダ52h,53hの外径に略等しく、コントロールロッド51に取り付けられたスプリングホルダ52h,53hを摺動自在に嵌挿する。
8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeは、図7に示す配列で対応するカム案内溝12gに摺動自在に嵌合する。
同種類のカムロッドCは、対称位置に配設される。
カウンタ歯車軸12に対するカム部材Cの回り止めとなるカム案内溝12gは、断面コ字状の単純な形状をして簡単に加工成形できる。
右側の拡大内径部の内側に前記コントロールロッド操作子55が半分程挿入されている。
カム案内溝12gを利用して係合ピン59を係合する簡単な構成で、カウンタ歯車軸12に対するコントロールロッド51の回り止めとすることができる。
また、短尺矩形凹部12qと軸方向溝12avとの間の厚肉部で周方向溝12cv上にピン孔12hが前記カム案内溝12gまで径方向に穿孔されている。
各周方向溝12cv上にはそれぞれ4か所ピン孔12hが形成される。
ピン孔12hにはピン部材23が摺動自在に嵌挿される。
なお、ピン孔12hが連通するカム案内溝12gの幅は、ピン部材23の外径幅より小さい。
したがって、ピン孔12hを進退するピン部材23がカム案内溝12gに脱落することがないので、カウンタ歯車軸12への係合手段20の組み付けを容易にする。
ピン孔12h内でのピン部材23の進退は、その遠心側端部を周方向溝12cvの底面より外側に出没させる。
このようにして、全ての揺動爪部材Rが組み付けられた状態を図11に示す。
そして、合致した軸受凹部Rdと軸方向溝12avに支軸ピン26が嵌合される。
また、ピン受部Rrは、ピン部材23を受け止めるだけの幅を具えれば足りるので、揺動爪部材Rを小型に形成することができ、かつ他方の係合爪部Rpの遠心力による揺動を容易にすることができる。
また、ピン部材23が退行したときは、圧縮スプリング22により付勢された係合爪部Rpがカウンタ歯車軸12の中央円筒部12aの外周面より外側に突出し被動変速歯車nと係合可能とする。
同様に、正回転偶数段揺動爪部材Raeが前記正回転偶数段用カムロッドCaeの移動により進退するピン部材23により揺動し、逆回転偶数段係合部材Rbeが前記逆回転偶数段用カムロッドCbeの移動により進退するピン部材23により揺動する。
カウンタ歯車軸12の中央円筒部12aの軸方向溝12avに埋設される支軸ピン26は、中央円筒部12aの外周面に接する深さに埋設されるので、軸受カラー部材13が外装されると、ガタなく固定される。
各被動変速歯車nは、左右内周縁部(内周面の左右周縁部)に切欠きが形成されて左右切欠きの間に薄肉環状の突条30が形成されており、この突条30を挟むように左右の軸受カラー部材13,13が切欠きに滑動自在に係合する(図2,図3参照)。
係合凸部31は、側面視(図4,図5に示す軸方向視)で薄肉円弧状をなし、その周方向の両端面が前記揺動爪部材Rの係合爪部Rpと係合する係合面をなす。
コントロールロッド操作子55および係合ピン59を取付けたコントロールロッド51に左右2つのロストモーション機構52,53を組み付け、ロストモーション機構52,53の外周囲に8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeを配設した状態で、カウンタ歯車軸12の中空内に嵌挿する。
そして、8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeのカウンタ歯車軸12に対する左右移動位置は、ニュートラル位置になるように設定しておく。
そして、まず図12に実線で示すように中央円筒部12aの下端(右端)に右端の軸受カラー部材13を外装してから、最も下の第1被動変速歯車n1に対応する周方向溝12cvにおけるピン孔12hにピン部材23を挿入し、スプリング受部12dに圧縮スプリング22の一端を支持させて揺動爪部材Rを長尺矩形凹部12p,短尺矩形凹部12q,周方向溝12cvに嵌合し、支軸ピン26を右端の軸受カラー部材13の内側の軸方向溝12avに嵌入すると同時に揺動爪部材Rの軸受凹部Rdに嵌合して揺動爪部材Rを組み付ける。
軸受カラー部材13は、各被動変速歯車nの軸方向の力を支え、軸方向の位置決めとスラスト力を受けることができる。
図13ないし図17は、順次経時的変化を示しており、各図において、図(a)は図2(図4,図5のII−II線断面図)の歯車等を省略した断面図であり、図(b)は図3(図4,図5のIII−III線断面図)の歯車等を省略した断面図であり、図(c)は図(a),図(b)のc−c線断面図(第1被動変速歯車n1の断面図)、図(d)は図(a),図(b)のd−d線断面図(第2被動変速歯車n2の断面図)である。
なお、図13ないし図20において、有効に動力伝達している揺動爪部材Rと係合凸部31には格子ハッチを施している。
他の第3,第4,第5,第6被動変速歯車n3,n4,n5,n6も同様で空回りしている(図13(a),(b)参照)。
なお、正回転奇数段用カムロッドCaoがこれと係止するロストモーション機構53のスプリングホルダ53hとともに停止しているので、同スプリングホルダ53hに係合する逆回転偶数段用カムロッドCbeも停止している。
なお、逆回転偶数段用カムロッドCbeは停止したままで、逆回転偶数段揺動爪部材Rbeも係合爪部Rpを内側に引っ込めたままである。
この瞬間、図16(c)と図16(d)を参照して、第2被動変速歯車n2の係合凸部31の正回転偶数段揺動爪部材Raeへの当接と第1被動変速歯車n1の係合凸部31の正回転奇数段揺動爪部材Raoへの当接とが、同時に発生する。
このようにして1速から2速への変速作業は完了し、図17に示す状態が2速状態である。
したがって、車速が減速されて後輪からカウンタ歯車軸12への駆動力が働き、駆動力の方向が変化した時には、第1被動変速歯車n1の係合凸部31が正回転奇数段揺動爪部材Raoから逆回転奇数段揺動爪部材Rboに係合が速やかに切り換わり、係合が滑らかに引き継がれて維持されることができる。
図18は、変速段が2速状態で、減速した直後の状態を示している。
減速により後輪からカウンタ歯車軸12への駆動力が働き、図18(d)に示すように、回転速度が低下した第2被動変速歯車n2の係合凸部31に、係合可能状態にあった逆回転偶数段揺動爪部材Rbeの係合爪部Rpが係合してカウンタ歯車軸12の回転動力を第2被動変速歯車n2に伝達する所謂エンジンブレーキが働いている。
なお、逆回転偶数段用カムロッドCbeとともに正回転奇数段用カムロッドCaoもロストモーション機構53のスプリングホルダ53hを介して停止状態にある。
前記正回転偶数段揺動爪部材Raeが係合爪部Rpを内側に引っ込めた後に、逆回転奇数段揺動爪部材Rboが係合爪部Rpを外側に突出する。
この直後から、より低速で回転する第1被動変速歯車n1との係合が有効になり、第2被動変速歯車n2との係合は解除され、2速から1速へのシフトダウンが実行される。
この状態で2速から1速への変速作業は完了する。
したがって、車速が加速されて内燃機関から第2被動変速歯車n2へ駆動力が働き、駆動力の方向が変化した時には、第2被動変速歯車n2の係合凸部31が逆回転偶数段揺動爪部材Rbeから正回転偶数段揺動爪部材Raeに係合が速やかに切り換わり、係合が滑らかに引き継がれて維持されることができる。
n…被動変速歯車、n1〜n6…第1〜第6被動変速歯車、
1L…左機関ケース、1R…右機関ケース、2…変速室、4…プライマリ被動ギヤ、5…摩擦クラッチ、7L,7R…ベアリング、
10…多段変速機、11…メイン歯車軸、12…カウンタ歯車軸、12cv…周方向溝、12av…軸方向溝、12p…長尺矩形凹部、12q…短尺矩形凹部、12g…カム案内溝、13…軸受カラー部材、
20…係合手段、22…圧縮スプリング、23…ピン部材、26…支軸ピン、31…係合凸部、
C…カムロッド、Cao…正回転奇数段用カムロッド、Cae…正回転偶数段用カムロッド、Cbo…逆回転奇数段用カムロッド、Cbe…逆回転偶数段用カムロッド、p…係止爪、v,v1,v2,v3,v4,v5,v6…カム溝、
R…揺動爪部材、Rao…正回転奇数段揺動爪部材、Rae…正回転偶数段揺動爪部材、Rbo…逆回転奇数段揺動爪部材、Rbe…逆回転偶数段揺動爪部材、Rp…係合爪部、Rr…ピン受部、Rq…幅広端部、
50…変速駆動手段、51…コントロールロッド、51a,51b…外周凹部、52,53…ロストモーション機構、52h,53h…スプリングホルダ、52ha,53ha…内周凹部、52s,53s…コイルスプリング、55…コントロールロッド操作子、58…シフトピン、59…係合ピン、67…シフトドラム、67v…シフト溝。
Claims (3)
- 互いに平行な歯車軸にそれぞれ複数の駆動歯車と被動歯車が変速段毎に常時噛み合い状態で軸支され、前記駆動歯車と前記被動歯車の一方の複数の歯車が歯車軸に固定され、他方の複数の歯車と歯車軸との間に設けられ互いの係合を行う係合手段が変速駆動手段により切り換え駆動されて変速を行う多段変速機において、
前記係合手段は、
変速段が奇数段の奇数段歯車と歯車軸を歯車の正回転方向で当接して前記各奇数段の歯車と歯車軸とが同期して回転するように係合する各正回転奇数段係合部材と、
変速段が偶数段の偶数段歯車と歯車軸を歯車の正回転方向で当接して前記各偶数段の歯車と歯車軸とが同期して回転するように係合する各正回転偶数段係合部材と、
前記歯車軸の中空内周面に軸方向に移動自在に摺接され摺接面に奇数段用のカム溝が軸方向所要箇所に複数形成され前記正回転奇数段係合部材を作動する正回転奇数段用カムロッドと、
前記歯車軸の中空内周面に軸方向に移動自在に摺接され摺接面に偶数段用のカム溝が軸方向所要箇所に複数形成され前記正回転偶数段係合部材を作動する正回転偶数段用カムロッドとを備え、
前記変速駆動手段が減速比の1段小さい1段上の変速段にシフトアップする際に、前記正回転奇数段用カムロッドと前記正回転偶数段用カムロッドが前記正回転奇数段係合部材と前記正回転偶数段係合部材を交互に作動させて変速し、
前記係合手段は、
変速段が奇数段の奇数段歯車と歯車軸を歯車の逆回転方向で当接して前記各奇数段の歯車と歯車軸とが同期して回転するように係合する各逆回転奇数段係合部材と、
変速段が偶数段の偶数段歯車と歯車軸を歯車の逆回転方向で当接して前記各偶数段の歯車と歯車軸とが同期して回転するように係合する各逆回転偶数段係合部材と、
前記歯車軸の中空内周面に軸方向に移動自在に摺接され摺接面に奇数段用のカム溝が軸方向所要箇所に複数形成され前記逆回転奇数段係合部材を作動する逆回転奇数段用カムロッドと、
前記歯車軸の中空内周面に軸方向に移動自在に摺接され摺接面に偶数段用のカム溝が軸方向所要箇所に複数形成され前記逆回転偶数段係合部材を作動する逆回転偶数段用カムロッドとを備え、
前記変速駆動手段が減速比の1段大きい1段下の変速段にシフトダウンする際に、前記逆回転奇数段用カムロッドと前記逆回転偶数段用カムロッドが前記逆回転奇数段係合部材と前記逆回転偶数段係合部材を交互に作動させて変速することを特徴とする多段変速機。 - 前記正回転奇数段用カムロッドの奇数段用のカム溝と前記逆回転偶数段用カムロッドの偶数段用のカム溝を1本のカムロッドに形成した第1の共用カムロッドとし、
前記正回転偶数段用カムロッドの偶数段用のカム溝と前記逆回転奇数段用カムロッドの奇数段用のカム溝を1本のカムロッドに形成した第2の共用カムロッドとしたことを特徴とする請求項1記載の多段変速機。 - 前記変速駆動手段は、
前記正回転奇数段用カムロッド,前記正回転偶数段用カムロッド,前記逆回転奇数段用カムロッド,前記逆回転偶数段用カムロッドのそれぞれの内側で前記歯車軸の中空中心軸に設けられるコントロールロッドと、
前記コントロールロッドの外周面と前記正回転奇数段用カムロッド,前記正回転偶数段用カムロッド,前記逆回転奇数段用カムロッド,前記逆回転偶数段用カムロッドの各内側面との間に介装される第1のロストモーション機構と第2のロストモーション機構とを備え、
前記第1のロストモーション機構が前記正回転奇数段用カムロッドと前記逆回転偶数段用カムロッドとを前記コントロールロッドに連動させ、
前記第2のロストモーション機構が前記正回転偶数段用カムロッドと前記逆回転奇数段用カムロッドとを前記コントロールロッドに連動させることを特徴とする請求項1記載の多段変速機。
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