JP2013204598A - 多段変速機 - Google Patents

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Shinya Matsumoto
真也 松本
Hodaka Mukohara
穂高 向原
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Abstract

【課題】コントロールロッドをニュートラル位置に容易かつ確実に位置決めできるニュートラル位置決め機構を備えた多段変速機を供する。
【解決手段】変速駆動機構(50)のコントロールロッド(51)が中空に形成された歯車軸(12)の中空中心軸(Z)上を軸方向に移動することにより係合切換機構(20)が駆動されて変速を行うリターン式の多段変速機(10)において、コントロールロッド(51)の外周に凹部(51v)が形成され、歯車軸(12)の端部内周に係止部材(81)が径方向に移動自在にかつ径方向中心側に付勢力が作用するように設けられ、コントロールロッド(51)がニュートラル位置にあるときに、係止部材(81)がコントロールロッド(51)の外周凹溝(51v)に一部進退可能となるニュートラル位置決め機構(80)を備えた多段変速機。
【選択図】図22

Description

本発明は、歯車軸に回転自在に軸支され、係合手段により回転自在の歯車のうち歯車軸に係合する歯車を切り換えることで変速を行う多段変速機に関する。
この種の常時噛合い式の多段変速機であって、歯車軸内を軸方向に移動するコントロールロッドが係合手段を作動して歯車軸に係合する歯車を切り換えることができるようにしたリターン式の多段変速機が、同じ出願人によって出願されている(例えば、特許文献1等参照)。
特開2010−78050号公報
特許文献1に開示された多段変速機は、歯車軸の中空中心軸に配設されるコントロールロッドがシフトドラムの回転により軸方向所要位置に移動され、同コントロールロッドが歯車軸の中空内周面に軸方向に移動自在に摺接するカムロッドをロストモーション機構を介して摺動し、複数のカム溝が軸方向所要箇所に形成されたカム面を有するカムロッドが所要位置に摺動することで、同摺動位置でカム溝に落ち込んだピン部材により作動した揺動爪部材が対応する歯車を歯車軸と係合して、1つの変速段を確立する。
一回の変速操作によりシフトドラムが所定量回転してコントロールロッドを所要位置に移動するが、変速段の1つが確立するときは、その対応するピン部材がカムロッドのカム溝に係合するので、ロストモーション機構を介して連動するコントロールロッドの移動が抑制されて位置決めがなされる。
しかし、コントロールロッドがニュートラル位置にあるときは、全てのピン部材がカムロッドのカム溝に係合せずにカム面に接しているだけであるので、ピン部材によりコントロールロッドをニュートラル位置に位置決めして安定させることができない。
変速方式が1速からニュートラルを経て2速,3速,4速,…の順にシフトアップし、逆の順序でシフトダウンするリターン式の場合、走行を停止して1速からニュートラルに入れる際、コントロールロッドをその他の変速のときより小さく移動させて2速位置手前のニュートラル位置で停止させる必要がある。
例えば、足のペダル操作により刻み送り機構を介して変速段の切換え動作がなされるリターン方式の変速装置においては、刻み送り機構に備えられたディテント機構により各変速段の状態を位置決めし安定して保持できるようにしているが、加速時に1速から2速に円滑に変速できるように、ニュートラル位置の位置決めは安定保持力を弱くしている。
そのため、ペダル操作でニュートラルに入れる場合、1速から軽くシフトペダルをかき上げてニュートラル位置に停止させるところを、ペダル操作の加減を誤って、安定度が弱いニュートラル位置を飛び越して2速に入ってしまうことがあった。
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、コントロールロッドをニュートラル位置に容易かつ確実に位置決めできるニュートラル位置決め機構を備えた多段変速機を供する点にある。
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、
互いに平行な歯車軸(11,12)にそれぞれ複数の駆動歯車(m)と被動歯車(n)が変速段毎に常時噛み合い状態で軸支され、
前記駆動歯車(m)と前記被動歯車(n)の一方の複数の歯車(m)が歯車軸(11)に固定され、他方の複数の歯車(n)と歯車軸(12)との間で歯車軸(12)と各歯車(n)の係合を歯車ごとに切り換える係合切換機構(20)が備えられ、
変速駆動機構(50)のコントロールロッド(51)が中空に形成された歯車軸(12)の中空中心軸(Z)上を軸方向に移動することにより前記係合切換機構(20)が駆動されて変速を行うリターン式の多段変速機(10)において、
前記コントロールロッド(51)の外周に凹部(51v)が形成され、
前記歯車軸(12)の内周に係止部材(81)が径方向に移動自在にかつ径方向中心側に付勢力が作用するように設けられ、
前記コントロールロッド(51)がニュートラル位置にあるときに、前記係止部材(81)が前記コントロールロッド(51)の前記凹部(51v)に一部進退可能となるニュートラル位置決め機構(80)を備えたことを特徴とする多段変速機である。
請求項2記載の発明は、
請求項1記載の多段変速機において、
前記コントロールロッド(51)の前記凹部(51v)が軸方向に長尺に形成され、前記コントロールロッド(51)が1速位置からニュートラル位置までの間にあるときに、前記係止部材(81)が前記凹部(51v)に一部進退可能となることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、
請求項2記載の多段変速機において、
前記ニュートラル位置決め機構(80)は、
前記歯車軸(12)の内周に前記コントロールロッド(51)が挿入される挿入穴(85h)が形成された円筒部材(85)が固着され、
前記円筒部材(85)の前記挿入穴(85h)の周囲の周壁に周方向に等間隔に少なくとも3本の案内孔(86)が前記挿入穴(85h)から放射方向に穿孔され、
前記係止部材(81)が前記案内孔(86)に案内されて移動自在に挿入され、
前記コントロールロッド(51)が1速位置からニュートラル位置までの間にあるときに、前記コントロールロッド(51)の前記凹部(51v)が前記円筒部材(85)の前記挿入穴(85h)に挿入されて、前記案内孔(86)の前記挿入穴(85h)への内側開口(86i)が前記凹部(51v)に臨むように構成されていることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、
請求項3記載の多段変速機において、
前記円筒部材(85)の前記案内孔(86)は、前記コントロールロッド(51)の前記挿入穴(85h)への挿入方向に対して鋭角の傾斜角度を有した方向に指向して穿孔されていることを特徴とする。
請求項5記載の発明は、
請求項3または請求項4記載の多段変速機において、
前記円筒部材(85)は、前記歯車軸(12)の前記係合切換機構(20)より軸方向外側の内周に固着され、
前記コントロールロッド(51)の前記凹部(51v)は、前記コントロールロッド(51)の端部近傍に周方向に溝条に形成されることを特徴とする。
請求項6記載の発明は、
請求項5記載の多段変速機において、
前記コントロールロッド(51)における前記凹部(51v)が近傍にある側の先端部(51e)は、円錐状に尖ったテーパ面(51et)が形成されていることを特徴とする。
請求項7記載の発明は、
請求項5または請求項6記載の多段変速機において、
前記係止部材(81)は球体をなし、
前記円筒部材(85)における前記案内孔(86)の前記挿入穴(85h)への内側開口(86i)は、内径が縮径さていることを特徴とする。
請求項8記載の発明は、
請求項3ないし請求項7のいずれか1項記載の多段変速機において、
前記円筒部材(85)の前記案内孔(86)に移動自在に挿入される前記係止部材(81)に、径方向内側に付勢力が作用するように、ばね部材(90)が前記案内孔(86)に挿入されることを特徴とする。
請求項1記載の多段変速機によれば、歯車軸(12)の端部内周に径方向に移動自在にかつ径方向中心側に付勢力が作用するように設けられた係止部材(81)が、コントロールロッド(51)がニュートラル位置にあるときに、コントロールロッド(51)の凹部(51v)に一部進退可能となるニュートラル位置決め機構(80)を備えるので、走行を停止するとき、歯車軸(12)の回転が停止して、コントロールロッド(51)が1速位置からニュートラル位置に移動すると、歯車軸(12)の端部内周に径方向に移動自在に設けられた係止部材(81)が重力等の付勢力によりコントロールロッド(51)の凹部(51v)に一部進入することで、係止部材(81)によりコントロールロッド(51)が係止されて移動が規制されてニュートラル位置に容易かつ確実に位置決めされる。
走行を開始して歯車軸(12)が回転すると、係止部材(81)は付勢力に抗して遠心力により径方向外側に移動してコントロールロッド(51)の凹部(51v)から抜けて係止解除状態にあるので、コントロールロッド(51)は1速位置からニュートラル位置を経て2速位置へ円滑に移動してシフトアップが容易に行われ、同様に、2速位置からニュートラル位置を経て1速位置への移動も円滑でシフトダウンも容易に行われる。
請求項2記載の多段変速機によれば、コントロールロッド(51)の凹部(51v)が軸方向に長尺に形成され、前記コントロールロッド(51)が1速位置からニュートラル位置までの間にあるときに、係止部材(81)が凹部(51v)に一部進退可能となるので、内燃機関が始動し走行を開始するときに係止部材(81)が凹部(51v)に進入していても、コントロールロッド(51)をニュートラル位置から1速位置に円滑に移動して変速して走行することができ、
なお、コントロールロッド(51)が1速位置からニュートラル位置までの間以外の2速位置以上の高速段位置にあるときは、係止部材(81)がコントロールロッド(51)の凹部(51v)に進入することがないので、2速位置以上の高速段でのシフトアップおよびシフトダウンは円滑に行われる。
請求項3記載の多段変速機によれば、
歯車軸(12)の内周にコントロールロッド(51)が挿入される挿入穴(85h)が形成された円筒部材(85)が固着され、円筒部材(85)の挿入穴(85h)の周囲の周壁に周方向に等間隔に係止部材(81)が案内されて移動自在に挿入される少なくとも3本の案内孔(86)が前記挿入穴(85h)から放射方向に穿孔され、コントロールロッド(51)が1速位置からニュートラル位置までの間にあるときに、コントロールロッド(51)の凹部(51v)が円筒部材(85)の挿入穴(85h)に挿入されて、案内孔(86)の挿入穴(85h)への内側開口(86i)が凹部(51v)に臨むように構成されているので、歯車軸(12)が略水平に保たれていれば、走行を停止するとき、歯車軸(12)の回転が停止して、コントロールロッド(51)が1速位置からニュートラル位置に移動すると、複数の案内孔(86)のうち少なくとも1本の案内孔(86)に挿入された係止部材(81)は重力によりコントロールロッド(51)の凹部(51v)に一部進入することで、係止部材(81)によりコントロールロッド(51)が係止されて移動が規制されてニュートラル位置に容易かつ確実に位置決めされる。
コントロールロッド(51)が1速位置からニュートラル位置までの間にあるときに、係止部材(81)はコントロールロッド(51)の凹部(51v)に一部進退可能となるので、内燃機関が始動し走行を開始するときに係止部材(81)が重力により凹部(51v)に進入していても、コントロールロッド(51)をニュートラル位置から1速位置に円滑に移動して変速して走行することができ、走行を開始して歯車軸(12)が回転すると、係止部材(81)は重力に抗して遠心力により径方向外側に移動してコントロールロッド(51)の凹部(51v)から抜けて係止解除状態にあるので、コントロールロッド(51)は1速位置からニュートラル位置を経て2速位置へ円滑に移動してシフトアップが容易に行われ、同様に、2速位置からニュートラル位置を経て1速位置への移動も円滑でシフトダウンも容易に行われる。
請求項4記載の多段変速機によれば、円筒部材(85)の案内孔(86)は、コントロールロッド(51)の挿入穴(85h)への挿入方向に対して鋭角の傾斜角度を有した方向に指向して穿孔されているので、走行を停止するとき、歯車軸(12)の回転が停止して、コントロールロッド(51)が1速位置からニュートラル位置に移動すると、コントロールロッド(51)の凹部(51v)に一部進入した係止部材(81)は凹部(51v)の一方の内側面(51vL)と同内側面(51vL)に相対する傾斜した案内孔(86)の傾斜面(86r)との間に挟まれて係止部材(81)によりコントロールロッド(51)が係止されて移動が規制されニュートラル位置に容易かつ確実に位置決めされる。
請求項5記載の多段変速機によれば、前記円筒部材(85)は、歯車軸(12)の係合切換機構(20)より軸方向外側の内周に固着され、コントロールロッド(51)の凹部(51v)は、コントロールロッド(51)の端部近傍に周方向に溝条に形成されるので、ニュートラル位置決め機構(80)の配置が容易であるとともに、ニュートラル位置決め機構(80)をコンパクトに構成することができる。
請求項6記載の多段変速機によれば、コントロールロッド(51)における凹部(51v)が近傍にある側の先端部(51e)は、円錐状に尖ったテーパ面(51et)が形成されているので、コントロールロッド(51)の移動で、コントロールロッド(51)の先端部(51e)が案内孔(86)の挿入穴(85h)への内側開口(86i)から進出した係止部材(81)に干渉してもテーパ面(51et)で係止部材(81)を円滑に退行させてコントロールロッド(51)の移動を容易にすることができる。
請求項7記載の多段変速機によれば、前記係止部材(81)は球体をなし、円筒部材(85)における案内孔(86)の挿入穴(85h)への内側開口(86i)は、内径が縮径されているので、2速以上の変速段でコントロールロッド(51)が円筒部材(85)の挿入穴(85h)から抜けているときに、係止部材(81)が径方向内側の挿入穴(85h)に抜け落ちることを防止することができる。
2速以上の変速段では、通常、歯車軸(12)は回転して遠心力により係止部材(81)は案内孔(86)の径方向外側に位置して径方向内側の挿入穴(85h)に抜け落ちることはないが、振動等何らかの原因で抜けるようなことを確実に防止することができる。
また、円筒部材(85)の案内孔(86)に挿入された係止部材(81)は径方向内側の挿入穴(85h)に抜け落ちないので、複数の案内孔(86)に係止部材(81)を挿入した円筒部材(85)を歯車軸(12)の端部内周に固着する組付けの作業性を良くすることができる。
請求項8記載の多段変速機によれば、円筒部材(85)の案内孔(86)に移動自在に挿入される係止部材(81)に、径方向内側に付勢力が作用するように、ばね部材(90)が案内孔(86)に挿入されるので、係止部材(81)の移動が潤滑油等で円滑でない場合でも、歯車軸(12)が回転していないときに、ばね部材(90)の付勢力により係止部材(81)をコントロールロッド(51)の凹部(51v)に確実に進入させて、ニュートラル位置決めを確実に実行することができる。
本発明の一実施の形態に係る多段変速機の断面図である。 カウンタ歯車軸およびその周りの構造を示す断面図(図4,図5のII−II線断面図)である。 カウンタ歯車軸およびその周りの構造を示す別の断面図(図4,図5のIII−III線断面図)である。 図2,図3のIV−IV線断面図である。 図2,図3のV−V線断面図である。 コントロールロッドとロストモーション機構の分解斜視図である。 コントロールロッドにロストモーション機構組み付けた状態とカムロッド等の分解斜視図である。 カウンタ歯車軸およびピン部材とスプリングの一部の分解斜視図である。 カウンタ歯車軸の左側面図(図8のIX矢視図)である。 揺動爪部材および支軸ピン,ピン部材,スプリングの分解斜視図である。 コントロールロッドに変速駆動手段の一部および係合手段を組み付けた状態を示す斜視図である。 図11に示す状態のカウンタ歯車軸に1つの軸受カラー部材を外装した状態を示す斜視図である。 2速へのシフトアップ完了直前のカウンタ歯車軸およびその周りの構造を示す断面図である。 図13のXIV−XIV線断面図である。 図13のXV−XV線断面図である。 シフト伝達機構の側面図である。 ニュートラル位置決め機構の斜視図である。 有底円筒部材の右側面図である。 ニュートラル位置決め機構の有底円筒部材を断面としコントロールロッドの先端部を側面として示した拡大側面図である。 図19における有底円筒部材のXX-XX線断面図である。 1速走行状態にあるときのニュートラル位置決め機構の要部拡大断面図である。 ニュートラル状態にあるときのニュートラル位置決め機構の要部拡大断面図である。 別の実施の形態における1速停止状態にあるときのニュートラル位置決め機構の要部拡大断面図である。
以下、本発明に係る一実施の形態について図1ないし図20に基づいて説明する。
本実施の形態に係る多段変速機10は、自動二輪車に搭載される内燃機関に組み込まれて構成されている。
図1は、該多段変速機10の断面図であり、同図1に示すように、該多段変速機10は、内燃機関と共通の機関ケース1に設けられている。
左右割りの左機関ケース1Lと右機関ケース1Rが合体して構成された機関ケース1は、変速室2を形成しており、同変速室2にメイン歯車軸11とカウンタ歯車軸12が互いに平行に左右方向に指向して回転自在に軸支されている。
メイン歯車軸11は、左機関ケース1Lの側壁と右機関ケース1Rの別体の側壁1RRにベアリング3L,3Rを介して回転自在に軸支され、右ベアリング3Rを貫通して変速室2から突出した右端部には多板式の摩擦クラッチ5が設けられている。
摩擦クラッチ5の左側には、図示されないクランク軸の回転が伝達されるプライマリ被動ギヤ4がメイン歯車軸11に回転自在に軸支されている。
内燃機関のクランク軸の回転がプライマリ被動ギヤ4から係合状態の摩擦クラッチ5を介してメイン歯車軸11に伝達される。
他方、カウンタ歯車軸12も、左機関ケース1Lの側壁と右機関ケース1Rの側壁1RRにベアリング7L,7Rを介して回転自在に軸支され、左ベアリング7Lを貫通して変速室2から突出した左端部には円筒状のカラー部材33が左ベアリング7Lのインナレースに当接して嵌合され、カウンタ歯車軸12のカラー部材33が嵌合される箇所に径方向に貫通された給油導入孔12xが複数穿孔され、対応してカラー部材33にも導入孔が形成され、その外周を環状シール部材39が覆っている。
そして、カラー部材33との間に皿ばね34を挟んで出力スプロケット32がカウンタ歯車軸12にスプライン嵌合され、カウンタ歯車軸12の軸端に介装部材36を介装して螺合される袋ナット37によりスペーサ35を介して出力スプロケット32が外側から押えられる。
このようにして取り付けられた出力スプロケット32に駆動チェーン38が巻き掛けられ、同駆動チェーン38が後方の図示されない後輪を駆動するスプロケットに巻き掛けられて、カウンタ歯車軸12の回転動力が後輪に伝達され、車両が走行する。
メイン歯車軸11には、左右のベアリング3L,3Rの間に駆動変速歯車m群がメイン歯車軸11と一体に回転可能にメイン歯車軸11に構成されている。
右ベアリング3Rに沿って第1駆動変速歯車m1がメイン歯車軸11に一体に形成され、メイン歯車軸11の同第1駆動変速歯車m1と左ベアリング3Lとの間に形成されたスプラインに右から左へ順に順次径を大きくした第2,第3,第4,第5,第6駆動変速歯車m2,m3,m4,m5,m6がスプライン嵌合されている。
他方、カウンタ歯車軸12には、左右のベアリング7L,7Rの間に被動変速歯車n群が円環状の軸受カラー部材13を介して回転自在に軸支されている。
カウンタ歯車軸12において、右ベアリング7Rの左に介装されたカラー部材14Rを介して外装された右端の軸受カラー部材13と、左ベアリング7Lの右に介装されたカラー部材14Lを介して外装された左端の軸受カラー部材13との間に、等間隔に5つの軸受カラー部材13が外装され、この全部で7つの軸受カラー部材13の隣り合う軸受カラー部材13,13間に跨るようにして右から左へ順に順次径を小さくした第1,第2,第3,第4,第5,第6被動変速歯車n1,n2,n3,n4,n5,n6が回転自在に軸支されている。
メイン歯車軸11と一体に回転する第1,第2,第3,第4,第5,第6駆動変速歯車m1,m2,m3,m4,m5,m6は、カウンタ歯車軸12に回転自在に軸支される対応する第1,第2,第3,第4,第5,第6被動変速歯車n1,n2,n3,n4,n5,n6にそれぞれ常時噛み合っている。
第1駆動変速歯車m1と第1被動変速歯車n1の噛合が、最も減速比の大きい1速を構成し、第6駆動変速歯車m6と第6被動変速歯車n6の噛合が、最も減速比の小さい6速を構成し、その間順次減速比が小さくなって2速、3速、4速、5速が構成される。
カウンタ歯車軸12に変速段が奇数段の奇数段歯車(第1,第3,第5被動変速歯車n1,n3,n5)と変速段が偶数段の偶数段歯車(第2,第4,第6被動変速歯車n2,n4,n6)が交互に配列されることになる。
中空筒状をなすカウンタ歯車軸12は、各被動変速歯車nと係合可能な係合手段20が後記するように組み込まれ、後記するように係合手段20の1構成要素である種類ごと2本ずつ4種類の計8本のカムロッドC(Cao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbe)がカウンタ歯車軸12の中空内周面に形成された後記するカム案内溝12gに嵌合して軸方向に移動自在に設けられる(図9参照)。
このカムロッドCを駆動して変速する変速駆動手段50の1構成要素であるコントロールロッド51が、カウンタ歯車軸12の中空中心軸に挿入されており、コントロールロッド51の軸方向の移動は、ロストモーション機構52,53を介して連動してカムロッドCを軸方向に移動する。
このコントロールロッド51を軸方向に移動する機構が、右機関ケース1Rに設けられている。
コントロールロッド51の軸方向の移動は、ロストモーション機構52,53を介してカムロッドCを軸方向に連動し、このカムロッドCの移動がカウンタ歯車軸12に組み込まれた係合手段20により各被動変速歯車nを選択的にカウンタ歯車軸12と係合して変速を行う。
図6を参照して、変速駆動手段50のコントロールロッド51は、円柱棒状をなし、軸方向の左右2か所に縮径して形成された外周凹部51a,51bがそれぞれ所定長さに亘って形成されるとともに、左端の円錐状に尖ったテーパ面51etを有する先端部51eの手前に幅狭の外周凹溝51vが形成されている。
コントロールロッド51の右端は雄ねじが形成された雄ねじ端部51bbとなっており、雄ねじ端部51bbの手前に6角形状のナット部51cが形成されている。
このコントロールロッド51の左右の外周凹部51a,51bにそれぞれ対応してロストモーション機構52,53が組み付けられる。
左右のロストモーション機構52,53は、同じ構造のものを左右に配設している。
左側のロストモーション機構52は、コトロールロッド51を摺動自在に嵌挿するスプリングホルダ52hが長尺ホルダ52hlと短尺ホルダ52hsの連結で構成され、内周面にコトロールロッド51の外周凹部51aに対応する内周凹部52haが形成されている。
このスプリングホルダ52hにコントロールロッド51を貫通させてスプリングホルダ52hを外周凹部51aに位置させたとき、スプリングホルダ52hの内周凹部52haとコントロールロッド51の外周凹部51aの両空間が共通の空間を構成する。
スプリングホルダ52hの内周凹部52haとコントロールロッド51の外周凹部51aの両空間に跨るようにスプリング受けである左右一対のコッタ52c,52cが対向して嵌挿され、両コッタ52c,52c間にコントロールロッド51に巻回される圧縮コイルスプリング52sが介装されて両コッタ52c,52cを離間する方向に付勢する。
なお、コッタ52cは、スプリングホルダ52hの内周凹部52haの内径を外径とし、コトロールロッド51の外周凹部51aの外径を内径とした中空円板状をなし、組み付けのため半割りにされている。
右側のロストモーション機構53(スプリングホルダ53h,長尺ホルダ53hl,短尺ホルダ53hs,内周凹部53ha,コッタ53c,圧縮コイルスプリング53s)も同じ構造をしてコトロールロッド51の外周凹部51bに配設される。
したがって、コトロールロッド51が軸方向に移動すると、左右のロストモーション機構52,53の圧縮コイルスプリング52s,53sを介してスプリングホルダ52h,53hが軸方向に移動する。
このコントロールロッド51の左右の外周凹部51a,51bに取り付けられたロストモーション機構52,53のスプリングホルダ52h,53hの外周面に、8本のカムロッドC(Cao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbe)が放射位置にあって当接される(図7参照)。
カムロッドCは、断面が矩形で軸方向に長尺に延びる角柱棒状部材であり、スプリングホルダ52h,53hと接する内周側面の反対側の外周側面がカム面を形成しており、カム面にカム溝vが所要3か所に形成され、内周側面にはスプリングホルダ52h,53hのいずれか一方を左右から挟むように係止する一対の係止爪pが突出している。
カムロッドCは、断面が特別な形状をしておらず概ね外形が単純な矩形の角柱棒状部材であるので、カムロッドCを容易に製造することができる。
カム溝v1,v3,v5が奇数段歯車(第1,第3,第5被動変速歯車n1,n3,n5)に対応する3か所に形成された奇数段用カムロッドCao,Cboには、正回転(加速時に被動変速歯車nからカウンタ歯車軸12に力が加わる回転方向)用と逆回転(減速時に被動変速歯車nからカウンタ歯車軸12に力が加わる回転方向)用の2種類があり、一方の正回転奇数段用カムロッドCaoは、内周側面に右側スプリングホルダ53hに係止する係止爪pを有し、他方の逆回転奇数段用カムロッドCboは、内周側面に左側スプリングホルダ52hに係止する係止爪pを有する(図7参照)。
同様に、カム溝v2,v4,v6が偶数段の偶数段歯車(第2,第4,第6被動変速歯車n2,n4,n6)に対応する3か所に形成された偶数段用カムロッドCae,Cbeには、正回転用と逆回転用の2種類があり、一方の正回転偶数段用カムロッドCaeは、内周側面に左側スプリングホルダ52hに係止する係止爪pを有し、他方の逆回転偶数段用カムロッドCbeは、内周側面に右側スプリングホルダ53hに係止する係止爪pを有する(図7参照)。
したがって、コントロールロッド51の軸方向の移動により、右側のロストモーション機構53の圧縮コイルスプリング53sを介してスプリングホルダ53hとともに正回転奇数段用カムロッドCaoと逆回転偶数段用カムロッドCbeが軸方向に連動し、左側のロストモーション機構52のコイルスプリング52sを介してスプリングホルダ52hとともに逆回転奇数段用カムロッドCboと正回転偶数段用カムロッドCaeが軸方向に連動する。
図7に示すように、コントロールロッド51のナット部51cより右側の右端部分には、円筒状をしたコントロールロッド操作子55が、その内側に嵌装されたボールベアリング56を介して取り付けられる。
ボールベアリング56は、軸方向に2個連結したもので、コントロールロッド51のナット部51cより右側の右端部分に嵌入され、雄ねじ端部51bbに螺合されるナット57によりナット部51cとの間で挟まれて締結される。
したがって、コントロールロッド操作子55は、コントロールロッド51の右端部を回転自在に保持している。
このコントロールロッド操作子55の螺着されたナット57より右側に延出した円筒部に直径方向に穿孔したピン孔55hが形成されており、同ピン孔55hにシフトピン58が貫通する。
シフトピン58は、コトロールロッド操作子55を貫通して一方にのみ突出するもので(図2参照)、図1に示すように、その突出する端部が後記するシフトドラム67のシフト案内溝67vに摺動自在に係合する円柱状の係合部58aであり、コトロールロッド操作子55を貫通する小径円柱部と係合部58aとの間に直方体状をした摺動部58bが形成されている。
右機関ケース1Rの側壁1RRの右方に突出したガイド部1Raに溝条60が左右方向に指向して形成されており、この溝条60にシフトピン58の直方体状をした摺動部58bが摺動自在に嵌合してシフトピン58の回り止めとしている。
側壁1RRには右方に突出して支軸65が植設されて、同支軸65にベアリング66を介してシフトドラム67が回動自在に軸支されており、このシフトドラム67のシフト案内溝67vにシフトピン58の突出した係合部58aが摺動自在に嵌合している。
シフトドラム67のシフト案内溝67vは、ドラム外周面に略一周に亘って螺旋を描くように形成され、その間に所定回動角度(例えば60度)毎に1速から6速までの各変速段位置およびその途中の1速と2速との間にニュートラル位置が形成されてリターン式の変速方式を構成している。
したがって、シフトドラム67の回動は、シフト案内溝67vに嵌合するシフトピン58をコントロールロッド操作子55とともに軸方向に移動させる。
コントロールロッド操作子55はコントロールロッド51の右端部を回転自在に保持しているので、結局シフトドラム67の回動はコントロールロッド51を軸方向に移動させる。
コントロールロッド51がカウンタ歯車軸12に対して軸方向の最も左側に位置するときが、図2ないし図5に示す1速状態であり、1速状態からコントロールロッド51が順次軸方向右側に移動するごとに、ニュートラル,2速,3速,4速,5速,6速状態が構成される。
なお、コントロールロッド51はカウンタ歯車軸12の中空中心軸Z上を移動し、そのコントロールロッド51の左側先端部51eは、カウンタ歯車軸12の左端部内周に圧入された有底円筒部材85の挿入穴85hに臨んで挿入可能とされ、後記するニュートラル位置決め機構80が構成されている。
前記シフトドラム67は、図示されないシフトペダルの足操作によってシフト伝達機構100を介して回動する。
図16はシフト伝達機構の要部を示す側面図であり、同図16とシフト伝達機構の断面を示す図1とを参照して、シフト伝達機構100の構造を簡単に説明する。
カウンタ歯車軸12の下方に左右機関ケース1L,1Rを左右水平方向に貫通してシフトスピンドル102が架設されており、左機関ケース1Lを貫通した左端部にペダルリンクアーム部材101の基端が嵌着され、右機関ケース1Rを貫通した部分にシフトアーム103の基端が嵌着されるとともに、戻しばね104のコイル部が巻装されている。
ペダルリンクアーム部材101は、図示されないシフトペダルとリンクロッドを介して連結され、シフトペダルの操作をシフトスピンドル102の回動に伝達し、戻しばね104によりシフトスピンドル102とともにシフトペダルは元の中立位置に戻される。
シフトスピンドル102の上方にカム軸105と中間軸115が右機関ケース1Rに軸支されており、カム軸105に上流側回動部材106と下流側回動部材108が相対向して回動自在に軸支され、上流側回動部材106と下流側回動部材108の間にラチェット機構107が介装されている。
上流側回動部材106の偏心した位置に突設されたピン部106pが前記シフトアーム103の先端の長孔103hに摺動自在に係合して、シフトアーム103の揺動により長孔103hとピン部106pの係合を介して上流側回動部材106が回動され、ラチェット機構107を介して下流側回動部材108が回動される。
シフトアーム103の戻りの揺動に対しては、上流側回動部材106は逆方向に回動するが、上流側回動部材106の逆方向の回動に対して、下流側回動部材108はラチェット機構107により回動されない。
カム軸105に軸支された下流側回動部材108には一体に花形カム111が形成されている。
花形カム111は、1速,ニュートラル,2速,3速,4速,5速,6速までの各変速段とに対応するディテント凹部が順次形成された所定の凹凸カム面が周方向に連続して形成されている。
基端を軸支され、ねじりばね114により付勢されたディテントアーム112の先端に軸支されたローラ113が花形カム111の凹凸カム面に押圧されてディテント機構110が構成されている。
ディテント機構110は、花形カム111の凹凸カム面に押圧されたローラ113が花形カム111の各変速段に対応するディテント凹部に納まることで、花形カム111とともに下流側回動部材108を所要の変速段の回動位置に位置決めし安定して保持することができる。
下流側回動部材108にはギヤ108gが嵌着されており、ギヤ108gは中間軸115に嵌着された中間ギヤ116に噛合し、中間ギヤ116が前記シフトドラム67の側縁に形成されたギヤ67gに噛合している。
したがって、ペダル操作によりシフトスピンドル102が回動してシフトアーム103が一体に揺動すると、長孔103hとピン部106pの係合を介して上流側回動部材106が回動され、ラチェット機構107を介して回動された下流側回動部材108は、花形カム111のディテント機構110により所要の回動位置に安定保持され、その間の下流側回動部材108の回動は、中間ギヤ116を介してシフトドラム67を所定量回動し、シフト案内溝67vに案内されたシフトピン58を介してコントロールロッド51が軸方向に所定量移動し、変速段の切換えが行われる。
ディテント機構110の花形カム111は、1速,ニュートラル,2速,3速,4速,5速,6速までの各変速段とに対応するディテント凹部が順次形成された所定の凹凸カム面を外周縁に備え、凹凸カム面に押圧されたローラ113がディテント凹部に納まることで、花形カム111とともに下流側回動部材108を位置決めし安定して保持するが、加速時に1速から2速に円滑に変速できるように、ニュートラルに対応するディテント凹部は、他の変速段に対応するディテント凹部より凹みが浅く、安定保持力が弱い。
したがって、従来はペダル操作でニュートラルに入れる場合、ニュートラルを乗り越えて2速に行かないように、1速から軽くシフトペダルをかき上げてニュートラルに停止させる必要があった。
なお、カム軸105に軸支された下流側回動部材108から左方の左機関ケース1Lに向かって連結ロッド120が、カム軸105に同軸に延設され、同連結ロッド120の左端は左機関ケース1Lに軸支されており、左機関ケース1Lに装着されたギヤポジションセンサ121の作動軸が連結ロッド120の左端に同軸に結合されている。
したがって、花形カム111を備える下流側回動部材108の回動角度すなわち変速段をギヤポジションセンサ121が検出することができる。
以上のように、変速駆動手段50は、シフトペダルの足操作がシフト伝達機構100を介してシフトドラム67を所定量回動し、シフトドラム67の回動がシフト案内溝67vに嵌合したシフトピン58を案内して軸方向に移動し、シフトピン58の移動がコントロールロッド操作子55を介してコントロールロッド51を軸方向に移動し、コントロールロッド51の移動がロストモーション機構52,53を介して係合手段20の8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeを連動する。
ロストモーション機構52,53が組み付けられたコントロールロッド51は、カウンタ歯車軸12の中空内に挿入され中心軸に配設される。
この中空円筒状のカウンタ歯車軸12は、内径がロストモーション機構52,53のスプリングホルダ52h,53hの外径に略等しく、コントロールロッド51に取り付けられたスプリングホルダ52h,53hを摺動自在に嵌挿する。
そして、カウンタ歯車軸12の中空の内周面における8か所の放射位置に断面が矩形の8本のカム案内溝12gが軸方向に指向して延出形成されている(図9参照)。
8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeは、図7に示す配列で対応するカム案内溝12gに摺動自在に嵌合する。
同種類のカムロッドCは、対称位置に配設される。
カウンタ歯車軸12に対するカム部材Cの回り止めとなるカム案内溝12gは、断面コ字状の単純な形状をして簡単に加工成形できる。
カム案内溝12gの深さはカムロッドCの放射方向の幅に等しく、よってカムロッドCの外周側面であるカム面はカム案内溝12gの底面に摺接し、内周側面は中空内周面と略同一面をなしてスプリングホルダ52h,53hの外周面に接し、内周側面から突出した係止爪pはスプリングホルダ52h,53hのいずれかを両側から挟むようにして掴む。
中空筒状をなすカウンタ歯車軸12は、軸受カラー部材13を介して被動変速歯車nが軸支される中央円筒部12aの左右両側に外径が縮径された左側円筒部12bと右側円筒部12cが形成されている(図8参照)。
カウンタ歯車軸12の左側円筒部12bにはワッシャ14Lを介してベアリング7Lが嵌合され、他方、右側円筒部12cにはワッシャ14Rを介してベアリング7Rが嵌合される(図1,図2,図3参照)。
なお、カウンタ歯車軸12の左側円筒部12bの軸端部は外径が縮径されて雄ねじ12eが形成されており、雄ねじ12eの軸方向内側には出力スプロケット32がスプライン嵌合するスプライン溝12sが形成されている。
カウンタ歯車軸12の中空内は、カム案内溝12gが形成される内径がスプリングホルダ52h,53hの外径に等しい小径内周面と、同小径内周面の両側の内径がカム案内溝12gの底面と略同一周面をなす大径内周面とが形成されている(図2,図3参照)。
右側の拡大内径部の内側に前記コントロールロッド操作子55が半分程挿入されている。
このように、カウンタ歯車軸12の中空内にコントロールロッド51とロストモーション機構52,53と8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeが組み込まれると、これら全てが一緒に回転し、コントロールロッド51が軸方向に移動すると、左側ロストモーション機構52のコイルスプリング52sを介して逆回転奇数段用カムロッドCboと正回転偶数段用カムロッドCaeが軸方向に連動し、右側ロストモーション機構53のコイルスプリング53sを介して正回転奇数段用カムロッドCaoと逆回転偶数段用カムロッドCbeが軸方向に連動する。
図8に示すように、カウンタ歯車軸12の軸受カラー部材13を介して被動変速歯車nが軸支される中央円筒部12aは、外径が大きく厚肉に構成されており、この厚肉の外周部に周方向に一周する幅狭の周方向溝12cvが第1,第2,第3,第4,第5,第6被動変速歯車n1,n2,n3,n4,n5,n6に対応して軸方向に亘って等間隔に6本形成されるとともに、軸方向に指向した軸方向溝12avが周方向に亘って等間隔に4本形成されている。
さらに、カウンタ歯車軸12の中央円筒部12aの外周部には、4本の軸方向溝12avで区画された4つの部分が各周方向溝12cvにおいて周方向溝12cvの溝幅を隣り合う軸方向溝12av,12av間に亘って長尺に左右均等に拡大した長尺矩形凹部12pと、周方向溝12cvの溝幅を隣り合う軸方向溝12av,12av間の一部で左右均等に拡大した短尺矩形凹部12qとが、軸方向に交互に形成されている。
長尺矩形凹部12pの底面の周方向に離れた2か所に軸方向に長尺の楕円形をして周方向溝12cvに跨って若干凹んだスプリング受部12d,12dが形成されている。
また、短尺矩形凹部12qと軸方向溝12avとの間の厚肉部で周方向溝12cv上にピン孔12hが前記カム案内溝12gまで径方向に穿孔されている。
すなわち、カウンタ歯車軸12の中空内周面から周方向の8か所に刻設されたカム案内溝12gの放射方向にピン孔12hが穿孔される。
各周方向溝12cv上にはそれぞれ4か所ピン孔12hが形成される。
スプリング受部12dには、楕円形に巻回された圧縮スプリング22がその端部を嵌装させて設けられる。
ピン孔12hにはピン部材23が摺動自在に嵌挿される。
なお、ピン孔12hが連通するカム案内溝12gの幅は、ピン部材23の外径幅より小さい。
したがって、ピン孔12hを進退するピン部材23がカム案内溝12gに脱落することがないので、カウンタ歯車軸12への係合手段20の組み付けを容易にする。
カム案内溝12gにはカムロッドCが摺動自在に嵌合されるので、ピン孔12hに嵌挿されたピン部材23は中心側端部が対応するカムロッドCのカム面に接し、カムロッドCの移動でカム溝vがピン孔12hに対応するとピン部材23がカム溝vに落ち込み、カム溝v以外の摺接面が対応するとピン部材は摺接面に乗り上げ、カムロッドCの移動により進退する。
ピン孔12h内でのピン部材23の進退は、その遠心側端部を周方向溝12cvの底面より外側に出没させる。
以上のような構造のカウンタ歯車軸12の中央円筒部12aの外周部に形成された長尺矩形凹部12pと短尺矩形凹部12qと両凹部間を連通する周方向溝12cvに、揺動爪部材Rが埋設され、軸方向溝12avに揺動爪部材Rを揺動自在に軸支する支軸ピン26が埋設される。
このようにして、全ての揺動爪部材Rが組み付けられた状態を図11に示す。
図10の分解斜視図には、奇数段歯車(第1,第3,第5被動変速歯車n1,n3,n5)に対応する周方向溝12cvおよび長尺矩形凹部12p,短尺矩形凹部12qに埋設される4個の揺動爪部材Rと、偶数段の偶数段歯車(第2,第4,第6被動変速歯車n2,n4,n6)に対応する周方向溝12cvおよび長尺矩形凹部12p,短尺矩形凹部12qに埋設される4個の揺動爪部材Rとが、互いの相対角度位置関係を維持した姿勢で図示されており、加えて各揺動爪部材Rを軸支する支軸ピン26および各揺動爪部材Rに作用する圧縮スプリング22とピン部材23が示されている。
揺動爪部材Rは、全て同じ形状のものを使用しており、軸方向視で略円弧状をなし、中央に支軸ピン26が貫通する貫通孔の外周部が欠損して軸受凹部Rdが形成されており、同軸受凹部Rdの揺動中心に関して一方の側に長尺矩形凹部12pに揺動自在に嵌合する幅広矩形の係合爪部Rpが形成され、他方の側にはピン孔12hが形成された周方向溝12cvに揺動自在に嵌合する幅狭のピン受部Rrが延出し、その端部は短尺矩形凹部12qに至り幅広に拡大した幅広端部Rqが形成されている。
揺動爪部材Rは、ピン受部Rrがピン孔12hが形成された周方向溝12cvに嵌合し、一方の係合爪部Rpが長尺矩形凹部12pに嵌合するとともに軸受凹部Rdが軸方向溝12avに合致し、他方の幅広端部Rqが短尺矩形凹部12qに嵌合する。
そして、合致した軸受凹部Rdと軸方向溝12avに支軸ピン26が嵌合される。
揺動爪部材Rは、嵌合する周方向溝12cvに関して左右対称に形成されており、一方の幅広矩形の係合爪部Rpが他方のピン受部Rrおよび幅広端部Rqより重く、支軸ピン26に軸支されてカウンタ歯車軸12とともに回転したとき、遠心力に対して係合爪部Rpが重錘として作用して遠心方向に突出するように揺動爪部材Rを揺動させる。
揺動爪部材Rは、ピン受部Rrが揺動中心に関して反対側の係合爪部Rp側より幅が狭く形成されている。
また、ピン受部Rrは、ピン部材23を受け止めるだけの幅を具えれば足りるので、揺動爪部材Rを小型に形成することができ、かつ他方の係合爪部Rpの遠心力による揺動を容易にすることができる。
周方向に隣り合う揺動爪部材Rは、互いに対称な姿勢にカウンタ歯車軸12に組み付けられるので、互いに所定間隔を存して対向する係合爪部Rp,Rpは共通の長尺矩形凹部12pに嵌合し、他方の互いの近接する幅広端部Rqは共通の短尺矩形凹部12qに嵌合する。
揺動爪部材Rの係合爪部Rpの内側にカウンタ歯車軸12のスプリング受部12dに一端を支持された圧縮スプリング22が介装され、ピン受部Rrの内側にピン孔12hに嵌挿されたピン部材23がカムロッドCとの間に介装される。
このようにして、揺動爪部材Rが、支軸ピン26に揺動自在に軸支されてカウンタ歯車軸12の長尺矩形凹部12p,短尺矩形凹部12q,周方向溝12cvに埋設され、一方の係合爪部Rpが圧縮スプリング22により外側に付勢され、他方のピン受部Rrがピン部材23の進退により押圧されることで、圧縮スプリング22の付勢力に抗して揺動爪部材Rが揺動する。
ピン部材23が遠心方向に進行して揺動爪部材Rを揺動したときは、揺動爪部材Rは係合爪部Rpが長尺矩形凹部12pに没してカウンタ歯車軸12の中央円筒部12aの外周面より外側に突出するものはない。
また、ピン部材23が退行したときは、圧縮スプリング22により付勢された係合爪部Rpがカウンタ歯車軸12の中央円筒部12aの外周面より外側に突出し被動変速歯車nと係合可能とする。
圧縮スプリング22がカウンタ歯車軸12の軸方向を長径とする楕円形状をなし、楕円形状をした圧縮スプリング22は、長径が揺動爪部材Rのピン受部Rrの幅より大きく、ピン受部Rrを揺動可能に嵌合する周方向に一周に亘って形成される周方向溝12cvを跨いで受け止められるので、カウンタ歯車軸12の加工を容易にするとともに、揺動爪部材Rを安定してカウンタ歯車軸12に組み付けることができる。
奇数段歯車(第1,第3,第5被動変速歯車n1,n3,n5)に対応する4個の揺動爪部材Rと、偶数段の偶数段歯車(第2,第4,第6被動変速歯車n2,n4,n6)に対応する4個の揺動爪部材Rは、互いに軸中心に90度回転した相対角度位置関係にある。
奇数段歯車(第1,第3,第5被動変速歯車n1,n3,n5)に対応する4個の揺動爪部材Rは、歯車の正回転方向で当接して各奇数段被動変速歯車n1,n3,n5とカウンタ歯車軸12とが同期して回転するように係合する正回転奇数段揺動爪部材Raoと、歯車の逆回転方向で当接して各奇数段被動変速歯車n1,n3,n5とカウンタ歯車軸12とが同期して回転するように係合する逆回転奇数段係合部材Rboとが、それぞれ対称位置に一対ずつ設けられる。
同様に、偶数段歯車(第2,第4,第6被動変速歯車n2,n4,n6)に対応する4個の揺動爪部材Rは、歯車の正回転方向で当接して各偶数段被動変速歯車n2,n4,n6とカウンタ歯車軸12とが同期して回転するように係合する正回転偶数段揺動爪部材Raeと、歯車の逆回転方向で当接して各偶数段被動変速歯車n2,n4,n6とカウンタ歯車軸12とが同期して回転するように係合する逆回転偶数段係合部材Rbeとが、それぞれ対称位置に一対ずつ設けられる。
正回転奇数段揺動爪部材Raoが前記正回転奇数段用カムロッドCaoの移動により進退するピン部材23により揺動し、逆回転奇数段係合部材Rboが前記逆回転奇数段用カムロッドCboの移動により進退するピン部材23により揺動する。
同様に、正回転偶数段揺動爪部材Raeが前記正回転偶数段用カムロッドCaeの移動により進退するピン部材23により揺動し、逆回転偶数段係合部材Rbeが前記逆回転偶数段用カムロッドCbeの移動により進退するピン部材23により揺動する。
カウンタ歯車軸12に係合手段20を組み込む場合、まず右端の軸受カラー部材13を中央円筒部12aの外周端部に外装し、その軸受カラー部材13の内側の軸方向溝12avに支軸ピン26の一端を嵌入するようにして右端の係合手段20を組み込み、次の軸受カラー部材13を前記支軸ピン26の他端を覆うように外装した後、前段と同じようにして次段の係合手段20を組み込むことを、順次繰り返して、最後に左端の軸受カラー部材13を外装して終了する。
図12に示すように、軸受カラー部材13は、中央円筒部12aの長尺矩形凹部12pおよび短尺矩形凹部12q以外の軸方向位置に外装され、それは軸方向溝12avに一列に連続して埋設される支軸ピン26の隣り合う支軸ピン26,26に跨って配置され、支軸ピン26および揺動爪部材Rの脱落を防止する。
カウンタ歯車軸12の中央円筒部12aの軸方向溝12avに埋設される支軸ピン26は、中央円筒部12aの外周面に接する深さに埋設されるので、軸受カラー部材13が外装されると、ガタなく固定される。
7個の軸受カラー部材13がカウンタ歯車軸12に等間隔に外装され、隣り合う軸受カラー部材13,13間に跨るようにして被動変速歯車nが回転自在に軸支される。
各被動変速歯車nは、左右内周縁部(内周面の左右周縁部)に切欠きが形成されて左右切欠きの間に薄肉環状の突条30が形成されており、この突条30を挟むように左右の軸受カラー部材13,13が切欠きに滑動自在に係合する(図2,図3参照)。
この各被動変速歯車nの内周面の突条30に係合凸部31が周方向に等間隔に6箇所形成されている(図2,図3,図4,図5参照)。
係合凸部31は、側面視(図4,図5に示す軸方向視)で薄肉円弧状をなし、その周方向の両端面が前記揺動爪部材Rの係合爪部Rpと係合する係合面をなす。
正回転奇数段揺動爪部材Rao(正回転偶数段揺動爪部材Rae)と逆回転奇数段係合部材Rbo(逆回転偶数段係合部材Rbe)は、互いに対向する側に係合爪部Rp,Rpを延出しており、正回転奇数段揺動爪部材Rao(正回転偶数段揺動爪部材Rae)は被動変速歯車n(およびカウンタ歯車軸12)の正回転方向で係合凸部31に当接して係合し、逆回転奇数段係合部材Rbo(逆回転偶数段係合部材Rbe)は被動変速歯車nの逆の回転方向で、係合凸部31に当接して係合する。
なお、正回転奇数段揺動爪部材Rao(正回転偶数段揺動爪部材Rae)は被動変速歯車nの逆の回転方向では係合爪部Rpが外側に突出していても係合せず、同様に、逆回転奇数段係合部材Rbo(逆回転偶数段係合部材Rbe)は被動変速歯車nの正回転方向では係合爪部Rpが外側に突出していても係合しない。
カムロッドCが1速と2速の間のニュートラル位置にあれば、全ての被動変速歯車nは、それぞれ対応する係合手段20のカムロッドCの移動位置によりピン部材23が突出して揺動爪部材Rのピン受部Rqを内側から押し上げ係合爪部Rpを内側に引っ込めた係合解除状態にあって、カウンタ歯車軸12に対して自由に回転する。
一方、係合手段20のカムロッドCのニュートラル位置以外の移動位置によりピン部材23がカム溝vに入り揺動爪部材Rが揺動して係合爪部Rpを外側に突出した係合可能状態となれば、対応する被動変速歯車nの係合凸部31が係合爪部Rpに当接して、該被動変速歯車nの回転がカウンタ歯車軸12に伝達されるか、またはカウンタ歯車軸12の回転が該被動変速歯車nに伝達される。
前記変速駆動手段50において、シフトペダルの操作によってシフトドラム67を所定量回動し、シフトドラム67の回動がシフト案内溝67vに嵌合したシフトピン58を介してコントロールロッド51を軸方向に所定量移動し、ロストモーション機構52,53を介して係合手段20の8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeを連動する。
カムロッドCが軸方向に移動することで、カムロッドCのカム面に摺接するピン部材23がカム溝vに入ったり抜けたりして進退し、揺動爪部材Rを揺動して、被動変速歯車nとの係合を解除し、他の被動変速歯車nと係合してカウンタ歯車軸12と係合する被動変速歯車nを変えることで変速が行われる。
シフトペダルの操作によって変速する場合、一度のシフトペダルの操作は、シフト伝達機構100のラチェット機構107によりシフトドラム67を所定角度回動し、シフトピン58,コントロールロッド操作子55を介してコントロールロッド51を所定量(変速1段分)移動し、シフトペダル自体は元に戻り、次の変速に備える。
図2ないし図5は1速の加速状態を示しており、この1速の加速状態からシフトペダルの足操作によって2速に変速する場合を考察してみると、シフトペダルの操作によってシフトドラム67が所定角度回動し、シフトピン58を介してコントロールロッド51を軸方向右方に所定量移動させる。
コントロールロッド51が右方に移動すると、ロストモーション機構52,53のコイルスプリング52s,53sを介して8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeを連動して軸方向右方に移動しようとするが、正回転奇数段用カムロッドCaoは、ピン部材23を介して作動する正回転奇数段揺動爪部材Raoが第1被動変速歯車n1の係合凸部31と係合して第1被動変速歯車n1から動力を受けているので、正回転奇数段揺動爪部材Raoを揺動して係合を解除するのに相当大きな摩擦抵抗があり、当初直ぐには移動せず、よって逆回転偶数段用カムロッドCbeも停止したままであるが、正回転偶数段用カムロッドCaeと逆回転奇数段用カムロッドCboは抵抗なく移動する。
逆回転奇数段用カムロッドCboの移動で1速の逆回転奇数段揺動爪部材Rboが係合爪部Rpを内側に引っ込める。
図13ないし図15を参照して、正回転偶数段用カムロッドCaeの移動で、カム溝v2にピン部材23が入り、よって第2被動変速歯車n2に対応する正回転偶数段揺動爪部材Raeが圧縮スプリング22の付勢力および係合爪部Rpの遠心力により揺動して係合爪部Rpを外側に突出し、第2被動変速歯車n2に係合可能となり、第1被動変速歯車n1とともに回転するカウンタ歯車軸12より高速で回転する第2被動変速歯車n2の係合凸部31が正回転偶数段揺動爪部材Raeの外側に突出した係合爪部Rpに追いつき当接する。
図13ないし図15は、第2被動変速歯車n2の係合凸部31が正回転偶数段揺動爪部材Raeの外側に突出した係合爪部Rpに追いつく直前の状態を示しており、図14で第1被動変速歯車n1の係合凸部31が正回転奇数段揺動爪部材Raoと係合した状態で、同時に図15に示すように第2被動変速歯車n2の係合凸部31が正回転偶数段揺動爪部材Raeの外側に突出した係合爪部Rpに追いつく直前である。
この時点で、まだ正回転奇数段揺動爪部材Raoが第1被動変速歯車n1の係合凸部31と係合して第1被動変速歯車n1から動力を受けているので、コントロールロッド51は移動しているが、摩擦抵抗により正回転奇数段用カムロッドCaoは停止したままである。
図13ないし図15に示す状態から、第2被動変速歯車n2の係合凸部31が正回転偶数段揺動爪部材Raeの外側に突出した係合爪部Rpに追いつくと、より高速で回転する第2被動変速歯車n2によりカウンタ歯車軸12が第2被動変速歯車n2と同じ回転速度で回転し始め、第1被動変速歯車n1の係合凸部31から正回転奇数段揺動爪部材Raoの係合爪部Rpが離れ、実際の1速から2速へのシフトアップが実行される。
第1被動変速歯車n1の係合凸部31から正回転奇数段揺動爪部材Raoの係合爪部Rpが離れることで、正回転奇数段揺動爪部材Raoを固定する摩擦抵抗が無くなり、ロストモーション機構53のコイルスプリング53sにより付勢されていた正回転奇数段用カムロッドCaoが後れて右方に移動してカム溝v1に入っていたピン部材23が抜け出し、正回転奇数段揺動爪部材Raoを揺動してその係合爪部Rpを内側に引っ込める。
以上のように、1速の加速状態から減速比が1段小さい2速状態にシフトアップする際に、第1被動変速歯車n1の係合凸部31が正回転奇数段揺動爪部材Raoの係合爪部Rpに当接して係合しカウンタ歯車軸12を第1被動変速歯車n1と同速度で回転させている状態で、より高速で回転する第2被動変速歯車n2の係合凸部31が正回転偶数段揺動爪部材Raeの係合爪部Rpに追いつき当接してカウンタ歯車軸12を第2被動変速歯車n2とともにより高速度で回転させて変速するので、第1被動変速歯車n1の係合凸部31から正回転奇数段揺動爪部材Raoの係合爪部Rpは自然と離れていき係合が円滑に解除されるため、係合解除に力を要せず滑らかに作動して滑らかなシフトアップを行うことができる。
2速から3速、3速から4速、4速から5速、5速から6速の各シフトアップも同様に、被動変速歯車nが揺動爪部材Rに係合している状態で、減速比が1段小さい被動変速歯車nが揺動爪部材Rに係合してシフトアップがなされるので、係合解除に力を要せず滑らかに作動して変速用のクラッチを必要とせず、かつシフトアップ時の切換え時間に全くロスがなく、駆動力の抜けがないとともに変速ショックも小さく、滑らかなシフトアップを行うことができる。
シフトダウンも同様に、被動変速歯車nが揺動爪部材Rに係合している状態で、減速比が1段大きい被動変速歯車nに揺動爪部材Rが係合してシフトダウンがなされるので、係合解除に力を要せず滑らかに作動して変速用のクラッチを必要とせず、かつシフトダウン時の切換え時間に全くロスがなく、駆動力の抜けがないとともに変速ショックも小さく、滑らかなシフトダウンを行うことができる。
本多段変速機10の変速方式は、1速と2速の間にニュートラル状態があるリターン式であり、前記した1速の加速状態から2速状態へのシフトアップは、コントロールロッド51が最も左側に位置した1速位置から右方に移動してニュートラル位置を経由して2速位置に至ることにより変速段の切換えがなされるものである。
したがって、走行を停止して1速からニュートラルに入れるときは、コントロールロッド51をその他の変速のときの移動量の半分程度の小さい移動量移動させて2速位置手前のニュートラル位置で停止させる。
しかし、本多段変速機10においては、コントロールロッド51が1速と2速の間のニュートラル位置にあるとき、8本のカムロッドCがニュートラル位置にあって、全てのピン部材23がカムロッドCのカム溝vに係合せずにカム面に接しているだけであるので、ピン部材23によりカムロッドCおよびコントロールロッド51をニュートラル位置に位置決めして安定させているわけではない。
また、前記したように、シフト伝達機構100が備えるディテント機構110の花形カム111は、ニュートラルに対応するディテント凹部が、他の変速段に対応するディテント凹部より凹みが浅く、安定保持力が弱いので、走行を停止して1速からニュートラルに入れるには、シフトペダルの操作を通常の変速操作の半分程度に調節しなければならず、大き過ぎると、コントロールロッド51がニュートラル位置を過ぎて2速位置まで移動してしまう可能性がある。
そこで、本多段変速機10は、コントロールロッド51をニュートラル位置に確実に位置決めできるニュートラル位置決め機構80が、カウンタ歯車軸12の左端部内周に設けられている。
以下、図17ないし図22に基づきニュートラル位置決め機構80について説明する。
カウンタ歯車軸12の左端部内周には、有底円筒部材85が左側から圧入されて所定位置に固定されている。
有底円筒部材85は、挿入穴85hを右方に向け、カウンタ歯車軸12の左側から軸方向でカウンタ歯車軸12の給油導入孔12xより大分手前の略出力スプロケット32の嵌合位置辺りまで圧入されている(図2,図3参照)。
この有底円筒部材85の挿入穴85hは、内径がコントロールロッド51の外径(先端部51eの外径でもある)に略等しく、該挿入穴85hにコントロールロッド51の先端部51eが臨んで挿入可能とされる。
有底円筒部材85は、挿入穴85hの周囲の周壁に周方向に等間隔に3本の案内孔86が挿入穴85hから斜め放射方向に穿孔されている(図19ないし図20参照)。
3本の案内孔86はコントロールロッド51の挿入穴85hへの挿入方向に対して鋭角の傾斜角度αを有した方向に指向して穿孔されている。
すなわち、図19に示すように、3本の案内孔86の傾斜角度αは、有底円筒部材85の中心軸すなわちカウンタ歯車軸12の中心軸Zに対する角度αである。
案内孔86は、有底円筒部材85の外周側から傾斜角度αでドリルにより加工端形状が半球面となるように穿孔加工されるが、ドリルは挿入穴85hまで完全に穿孔する手前の、斜めに切り込むドリルの先端ののみ刃部が一部残して挿入穴85hに抜けたところで穿孔を停止する。
案内孔86はドリルにより内径Dの円孔として形成されるが、挿入穴85hを右方に向けた有底円筒部材85における案内孔86の内周面の右側傾斜面86rは、挿入穴85hへの内側開口86iの近傍で内径が縮径されてすぼまった開口縁部86raを形成しており、開口縁部86raの内径dは、案内孔86の内径Dより小さく、さらに案内孔86に挿入されるボール81の外径より小さい(図20参照)。
なお、案内孔86の外側開口は、カウンタ歯車軸12の内周面で塞がれる。
この3本の案内孔86には、それぞれ係止部材であるボール81が移動自在に挿入される。
ボール81は、案内孔86の内径Dより若干小さい直径の鋼球であり、案内孔86に案内されて斜め径方向に移動できる。
しかし、ボール81の直径は、案内孔86の挿入穴85hへの開口縁部86raの内径dよりは大きいので、ボール81は、開口縁部86raに規制されて案内孔86から挿入穴85hに抜けることはできず、開口縁部86raに嵌って内側開口86iから一部を挿入穴85hに突出させて止まる(図21,図22参照)。
図18ないし図20は、水平中心軸Zを中心に回転する有底円筒部材85が、挿入穴85hから斜め放射方向に穿孔された3本の案内孔86のうち1本の案内孔86が挿入穴85hから上方に向いて回転を停止している状態を示しており、この状態では挿入穴85hより上方にある案内孔86に挿入されたボール81は自重により径方向内側に移動して内側開口86iから一部を挿入穴85hに突出させて内側開口86iに嵌っており、他の挿入穴85hより下方にある2本の案内孔86に挿入されたボール81は、有底円筒部材85の径方向外側に移動している(図19ではボール81を仮想線で示している)。
3本の案内孔86は周方向に等間隔に形成されているので、有底円筒部材85が任意の回転位置で停止したとき、3本の案内孔86のうち少なくとも1本の案内孔86が挿入穴85hより上方にあり、同挿入穴85hより上方にある案内孔86に挿入されたボール81は、内側開口86iから一部を挿入穴85hに突出させて開口縁部86raに嵌っている。
したがって、カウンタ歯車軸12が回転を停止しているときは、少なくとも1個のボール81が一部を挿入穴85hに突出させている。
一方、カウンタ歯車軸12が回転しているときは、カウンタ歯車軸12と一体に回転する有底円筒部材85の3本の案内孔86に挿入されたボール81は、全て遠心力により径方向外側に移動してカウンタ歯車軸12の内周面に接しており、内側開口86iから挿入穴85hに突出するボール81は存在しない。
また、有底円筒部材85には、挿入穴85hの案内孔86より奥側(左側)に挿入穴85hから放射方向に6本の放射通気孔87が周方向等間隔に穿孔され、さらに各放射通気孔87の径方向外側開口端から軸方向右側に軸方向通気溝88が軸方向に指向して穿設されている。
この放射通気孔87と軸方向通気溝88は、有底円筒部材85の挿入穴85hにコントロールロッド51の端部が挿入されたとき、挿入穴85hの内空間の通気を良くすることで、コントロールロッド51の軸方向の移動を円滑にする。
この有底円筒部材85の挿入穴85hに挿入されるコントロールロッド51の左端部分は、円錐状に尖った先端部51eの手前に幅狭の外周凹溝51vが形成されている。
ニュートラル位置決め機構80の1速状態を示す図21およびニュートラル状態を示す図22を参照して、コントロールロッド51が最も左側の1速位置からその右隣りのニュートラル位置までの間にあるときには、有底円筒部材85の挿入穴85hにコントロールロッド51の左端部分が挿入されて、コントロールロッド51の外周凹溝51vが案内孔86の内側開口86iに臨むように構成されている。
コントロールロッド51の外周凹溝51vの深さは、案内孔86の内側開口86iから挿入穴85hに突出したボール81が接するか僅かに間隙を存する程度である。
そしてコントロールロッド51の外周凹溝51vの左右内側面51vL,51vRはテーパしており、図19に示すように、外周凹溝51vのテーパした左内側面51vLの中心軸Zに対する傾斜角度βは、有底円筒部材85の案内孔86の傾斜角度αより若干大きい。
図21は、1速で走行状態にあるときのニュートラル位置決め機構80の要部断面図であり、コントロールロッド51が最も左側に移動した1速位置にあってコントロールロッド51の先端部51eおよび外周凹溝51vが有底円筒部材85の挿入穴85hに挿入されて案内孔86の内側開口86iが外周凹溝51vの右側部分に臨む位置にあり、カウンタ歯車軸12の回転でともに回転する有底円筒部材85の3本の案内孔86にそれぞれ挿入されたボール81(図21で実線で示す)は、全て遠心力により径方向外側に移動してカウンタ歯車軸12の内周面に接しており、内側開口86iから挿入穴85hに突出するボール81は存在しない。
この1速走行状態から2速にシフトアップするときは、コントロールロッド51を最も左側の1速位置から右方にニュートラル位置を経て図21に仮想線(2点鎖線)で示す2速位置まで移動するが、ボール81は、全て遠心力により径方向外側に移動して内側開口86iから挿入穴85hに突出していないので、ボール81がコントロールロッド51の外周凹溝51vに係止されることがなく、コントロールロッド51は1速位置からニュートラル位置を経て2速位置へ円滑に移動してシフトアップが容易に実行される。
2速状態では、コントロールロッド51は図21で仮想線で示す2速位置にあるので、2速から1速にシフトダウンするときもボール81が邪魔することなくコントロールロッド51を左方に円滑に移動することができる。
なお、2速からさらに高速の変速段へのシフトアップ時は、コントロールロッド51がさらに右方に移動することになり、コントロールロッド51の外周凹溝51vはもとより先端部51eも有底円筒部材85の挿入穴85hから抜け出ているので、シフトダウンを含め、ニュートラル位置決め機構80は影響しない。
走行を停止するときは、カウンタ歯車軸12の回転が停止したところで、シフトペダルをを通常の変速操作の半分程度かき上げ操作して、コントロールロッド51を1速位置からニュートラル位置に移動するが、コントロールロッド51が1速位置にあってカウンタ歯車軸12が回転停止すると、有底円筒部材85の挿入穴85hより上方にある案内孔86に挿入されたボール81は、図21に仮想線で示すように、自重により径方向内側に移動して内側開口86iから一部を挿入穴85hに突出してコントロールロッド51の外周凹溝51vに進入している。
図22に実線で示したボール81は、挿入穴85hより上方にある案内孔86を径方向内側に落下移動して右側傾斜面86rの内側開口86iの開口縁部86raに規制されて停止している。
図22において、案内孔86の右側傾斜面86rに対向する左側傾斜面の径方向内側端縁にボール81が達したときを仮想線で示しているが、この仮想線で示す位置よりも若干下方(径方向内側)に位置して挿入穴85hに突出しボール81は停止している。
この状態で、コントロールロッド51を右方に移動すると、図22に示すように、コントロールロッド51の外周凹溝51vのテーパした左内側面51vLが、ボール81の外周凹溝51vに進入した部分に当接してボール81を案内孔86の右側傾斜面86rに押しつけ、ボール81が左内側面51vLと案内孔86の右側傾斜面86rとの間に挟まれることで、ボール81によりコントロールロッド51が係止されて移動が規制されニュートラル位置に容易かつ確実に位置決めされる。
コントロールロッド51の外周凹溝51vのテーパした左内側面51vLの中心軸Zに対する傾斜角度βは、有底円筒部材85の案内孔86の傾斜角度αより若干大きいので、ボール81に当接して案内孔86の右側傾斜面86rに押しつける押圧力の方向は右側傾斜面86rに略直角であるが、若干ボール81を右側傾斜面86rの開口縁部86ra側に傾いていて、径方向内側の開口縁部86raにボール81を押しつけ固定することになるので、ボール81が径方向外側に逃げることはない。
前記したように、シフト伝達機構100にディテント機構110では、ニュートラルに対応する位置決めの安定保持力が弱く、ニュートラルを飛び越えるおそれがあるが、上記のように、ニュートラル位置決め機構80により、走行を停止し、シフトペダルを通常の変速操作の半分程度かき上げ操作すれば、コントロールロッド51がニュートラル位置で移動が阻止されて確実に位置決めされるので、ニュートラルに入れるシフトペダルの操作を微妙に加減する必要がなく、簡単に、かつ確実にニュートラルに入れることができる。
シフトペダルのかき上げ操作が大き過ぎて、コントロールロッド51がニュートラル位置を過ぎて2速位置まで移動してしまうようなことは完全に防止することができる。
コントロールロッド51がニュートラル位置にあって車両が停止している状態で内燃機関が始動し走行を開始するときは、図22に示すように、有底円筒部材85の挿入穴85hより上方にある案内孔86に挿入されたボール81がコントロールロッド51の外周凹溝51vに進入しているが、シフトペダルの操作でコントロールロッド51を左方に移動して図21に示す1速位置に移動するので、ボール81はコントロールロッド51の外周凹溝51vに進入したままで係止されることがなく、コントロールロッド51をニュートラル位置から1速位置に円滑に移動して変速することができる。
コントロールロッド51が1速位置に移動して変速した後に、摩擦クラッチ5の接続で走行を開始することができる。
走行を開始して、カウンタ歯車軸12が回転すれば、全てのボール81が遠心力により案内孔86の径方向外側に移動して、図21に示す1速走行状態となる。
上記実施の形態では、有底円筒部材85の挿入穴85hから放射方向に穿孔される案内孔を3本としたが、4本以上周方向に等間隔に設けて、それぞれにボールを挿入してもよい。
以上の実施の形態に係るニュートラル位置決め機構80では、カウンタ歯車軸12が回転していないとき、有底円筒部材85の挿入穴85hより上方にある案内孔86に挿入されたボール81は、自重により径方向内側に移動して内側開口86iから一部を挿入穴85hに突出するようにしていたが、図23に示すように、案内孔86内にボール81の径方向外側にスプリング90を介装するようにしてもよい。
図23に示すように、有底円筒部材85の案内孔86の径方向外側の開口を閉塞するようにリテーナ部材91を嵌合し、リテーナ部材91とボール81との間にスプリング90を介装する。
なお、案内孔86は1本でよく、1組のボール81,スプリング90,リテーナ部材91が1本の案内孔86に設けられる。
スプリング90はボール81を径方向内側に付勢し、ボール81の移動が潤滑油等で円滑でない場合でも、カウンタ歯車軸12が回転していないときは、スプリング90の付勢力によりボール81を径方向内側に位置させて内側開口86iから一部を挿入穴85hに突出し、コントロールロッド51の外周凹溝51vに確実に進入させて、ニュートラル位置決めを確実に実行することができる。
スプリング90の付勢力は比較的弱く、カウンタ歯車軸12が回転し、ボール81に遠心力が僅かでも作用すると、スプリング90の付勢力に抗してボール81は径方向外側に移動して案内孔86に没してコントロールロッド51の移動に影響しない。
なお、ボール81が案内孔86の内側開口86iから少し突出してコントロールロッド51の外周凹溝51vに僅かに進入していたとしても、殆ど抵抗なくコントロールロッド51は先端部51eがボール81を押しのけて移動することができる。
また、3速以上で有底円筒部材85の挿入穴85hからコントロールロッド51が抜けた状態から2速に変速するときに、有底円筒部材85の挿入穴85hにコントロールロッド51の先端部51eを挿入することになるが、その際にボール81が案内孔86の内側開口86iから突出していたとしても、コントロールロッド51の先端部51eのテーパ面51etがボール81を容易に押しのけることができ、円滑に有底円筒部材85の挿入穴85hにコントロールロッド51を挿入することができる。
以上の実施の形態に係るニュートラル位置決め機構では、係止部材としてボール81のような球体としたが、球体でなくてもよく、案内孔86内を径方向に移動でき、内側開口86iから突出してコントロールロッド51の外周凹溝51vに係止できるものであればよく、例えば、両端が球面をなした円柱体等が考えられる。
m…駆動変速歯車、m1〜m6…第1〜第6駆動変速歯車、
n…被動変速歯車、n1〜n6…第1〜第6被動変速歯車、
10…多段変速機、11…メイン歯車軸、12…カウンタ歯車軸、13…軸受カラー部材、
20…係合手段、23…ピン部材、31…係合凸部、32…出力スプロケット、38…チェーン、
C…カムロッド、p…係止爪、v…カム溝、R…揺動爪部材、Rp…係合爪部、
50…変速駆動手段、51…コントロールロッド、51e…先端部、51v…外周凹溝、51a,51b…外周凹部、52,53…ロストモーション機構、55…コントロールロッド操作子、58…シフトピン、67…シフトドラム、67v…シフト案内溝、
80…ニュートラル位置決め機構、81…ボール、85…有底円筒部材、85h…挿入穴、86…案内孔、87…放射通気孔、88…軸方向通気溝、
90…スプリング、91…リテーナ部材、
100…シフト伝達機構、102…シフトスピンドル、103…シフトアーム、107…ラチェット機構、110…ディテント機構、111…花形カム、112…ディテントアーム、121…ギヤポジションセンサ。

Claims (8)

  1. 互いに平行な歯車軸(11,12)にそれぞれ複数の駆動歯車(m)と被動歯車(n)が変速段毎に常時噛み合い状態で軸支され、
    前記駆動歯車(m)と前記被動歯車(n)の一方の複数の歯車(m)が歯車軸(11)に固定され、他方の複数の歯車(n)と歯車軸(12)との間で歯車軸(12)と各歯車(n)の係合を歯車ごとに切り換える係合切換機構(20)が備えられ、
    変速駆動機構(50)のコントロールロッド(51)が中空に形成された歯車軸(12)の中空中心軸(Z)上を軸方向に移動することにより前記係合切換機構(20)が駆動されて変速を行うリターン式の多段変速機(10)において、
    前記コントロールロッド(51)の外周に凹部(51v)が形成され、
    前記歯車軸(12)の内周に係止部材(81)が径方向に移動自在にかつ径方向中心側に付勢力が作用するように設けられ、
    前記コントロールロッド(51)がニュートラル位置にあるときに、前記係止部材(81)が前記コントロールロッド(51)の前記凹部(51v)に一部進退可能となるニュートラル位置決め機構(80)を備えたことを特徴とする多段変速機。
  2. 前記コントロールロッド(51)の前記凹部(51v)が軸方向に長尺に形成され、前記コントロールロッド(51)が1速位置からニュートラル位置までの間にあるときに、前記係止部材(81)が前記凹部(51v)に一部進退可能となることを特徴とする請求項1記載の多段変速機。
  3. 前記ニュートラル位置決め機構(80)は、
    前記歯車軸(12)の内周に前記コントロールロッド(51)が挿入される挿入穴(85h)が形成された円筒部材(85)が固着され、
    前記円筒部材(85)の前記挿入穴(85h)の周囲の周壁に周方向に等間隔に少なくとも3本の案内孔(86)が前記挿入穴(85h)から放射方向に穿孔され、
    前記係止部材(81)が前記案内孔(86)に案内されて移動自在に挿入され、
    前記コントロールロッド(51)が1速位置からニュートラル位置までの間にあるときに、前記コントロールロッド(51)の前記凹部(51v)が前記円筒部材(85)の前記挿入穴(85h)に挿入されて、前記案内孔(86)の前記挿入穴(85h)への内側開口(86i)が前記凹部(51v)に臨むように構成されていることを特徴とする請求項2記載の多段変速機。
  4. 前記円筒部材(85)の前記案内孔(86)は、前記コントロールロッド(51)の前記挿入穴(85h)への挿入方向に対して鋭角の傾斜角度を有した方向に指向して穿孔されていることを特徴とする請求項3記載の多段変速機。
  5. 前記円筒部材(85)は、前記歯車軸(12)の前記係合切換機構(20)より軸方向外側の内周に固着され、
    前記コントロールロッド(51)の前記凹部(51v)は、前記コントロールロッド(51)の端部近傍に周方向に溝条に形成されることを特徴とする請求項3または請求項4記載の多段変速機。
  6. 前記コントロールロッド(51)における前記凹部(51v)が近傍にある側の先端部(51e)は、円錐状に尖ったテーパ面(51et)が形成されていることを特徴とする請求項5記載の多段変速機。
  7. 前記係止部材(81)は球体をなし、
    前記円筒部材(85)における前記案内孔(86)の前記挿入穴(85h)への内側開口(86i)は、内径が縮径されていることを特徴とする請求項5または請求項6記載の多段変速機。
  8. 前記円筒部材(85)の前記案内孔(86)に移動自在に挿入される前記係止部材(81)に、径方向内側に付勢力が作用するように、ばね部材(90)が前記案内孔(86)に挿入されることを特徴とする請求項3ないし請求項7のいずれか1項記載の多段変速機。
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