JP5231332B2 - 多段変速機 - Google Patents
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Description
この歯車と歯車軸の係合に、カム部材により作動するラチェット部材を用いた構成が、同じ出願人により先に出願された例(特許文献1)にある。
したがって、歯車軸の加工が非常に難しくコストが嵩んでいた。
本実施の形態に係る多段変速機10は、自動二輪車に搭載される内燃機関に組み込まれて構成されている。
図1は、該多段変速機10の断面図であり、同図1に示すように、該多段変速機10は、内燃機関と共通の機関ケース1に設けられている。
左右割りの左機関ケース1Lと右機関ケース1Rが合体して構成された機関ケース1は、変速室2を形成しており、同変速室2にメイン歯車軸11とカウンタ歯車軸12が互いに平行に左右方向に指向して回転自在に軸支されている。
右ベアリング3Rに沿って第1駆動変速歯車m1がメイン歯車軸11に一体に形成され、メイン歯車軸11の同第1駆動変速歯車m1と左ベアリング3Lとの間に形成されたスプラインに右から左へ順に順次径を大きくした第2,第3,第4,第5,第6駆動変速歯車m2,m3,m4,m5,m6がスプライン嵌合されている。
カウンタ歯車軸12において、右ベアリング7Rの左に介装されたカラー部材14Rを介して外装された右端の軸受カラー部材18と、出力ギヤ5の右に介装されたカラー部材14Lを介して外装された左端の軸受カラー部材18との間に、等間隔に5つの軸受カラー部材18が外装され、この全部で7つの軸受カラー部材18の隣り合う軸受カラー部材18,18間に跨るようにして右から左へ順に順次径を小さくした第1,第2,第3,第4,第5,第6被動変速歯車n1,n2,n3,n4,n5,n6が回転自在に軸支されている。
コントロールロッド51の軸方向の移動は、ロストモーション機構52,53を介してカムロッドCを軸方向に連動し、このカムロッドCの移動がカウンタ歯車軸12に組み込まれた係合手段20により各被動変速歯車nを選択的にカウンタ歯車軸12と係合して変速を行う。
左右のロストモーション機構52,53は、同じ構造のものを互いに左右対称になるように配設している。
なお、コッタ52cは、スプリングホルダ52hの内周凹部52haの内径を外径とし、コントロールロッド51の外周凹部51aの外径を内径とした中空円板状をなし、組み付けのため半割りにされている。
したがって、コントロールロッド51が軸方向に移動すると、左右のロストモーション機構52,53の圧縮コイルスプリング52s,53sを介してスプリングホルダ52h,53hが軸方向に移動する。
カムロッドCは、断面が特別な形状をしておらず概ね外形が単純な矩形の角柱棒状部材であるので、カムロッドCを容易に製造することができる。
このコントロールロッド操作子55の螺着されたナット57より右側に延出した円筒部に直径方向に穿孔したピン孔55hが形成されており、同ピン孔55hにシフトピン58が貫通する。
このコントロールロッド操作子55およびシフトピン58を右側から変速駆動カバー60が覆っており、変速駆動カバー60の内側に左右方向に指向して形成された2条の溝条60a,60bに、シフトピン58のコントロールロッド操作子55から突出した部分が摺動自在に嵌合してシフトピン58を回り止めして左右に案内する。
コントロールロッド操作子55はコントロールロッド51の右端部を回転自在に保持しているので、結局シフトドラム61の回動はコントロールロッド51を軸方向に移動させる。
したがって、変速用モータ65が駆動されると、駆動軸65dの回転が中間軸62の大径中間ギヤ63と小径中間ギヤ62gの減速ギヤ機構を介してシフトドラム61の回動に伝達され、シフトドラム61を順次変速段位置に回動する。
この中空円筒状のカウンタ歯車軸12は、内径がロストモーション機構52,53のスプリングホルダ52h,53hの外径に略等しく、コントロールロッド51に取り付けられたスプリングホルダ52h,53hを摺動自在に嵌挿する。
なお、8か所のカム案内溝12gを2つおきにした4か所の放射位置に給油溝12oがカム案内溝12gに平行に削成されている。
8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeは、図7に示す配列で対応するカム案内溝12gに摺動自在に嵌合する。
同種類のカムロッドCは、対称位置に配設される。
カウンタ歯車軸12に対しカム部材Cを軸方向に案内するカム案内溝12gは、断面コ字状の単純な形状をして簡単に加工成形できる。
カウンタ歯車軸12の中空内は、カム案内溝12gが形成される内径がスプリングホルダ52h,53hの外径に等しい内周面が形成されている。
軸方向凹部13は、図9に示す軸方向視で、長円を円弧状に湾曲させた面対称の形状をしており、両端部が円弧状(端部円弧面12f)をなす。
軸方向凹部13の底円弧面は、前記スプライン12sの外周面と略同一面をなす。
周方向4個の突片12Pの組は、軸方向に6組形成され、各組それぞれ第1,第2,第3,第4,第5,第6被動変速歯車n1,n2,n3,n4,n5,n6に対応した位置にある。
すなわち、カウンタ歯車軸12の中空内周面から周方向の8か所に刻設されたカム案内溝12gの放射方向にさらにボール孔15が穿孔される。
また、ボール孔15も所定箇所に径方向外側から中心に向かって穴あけ加工すればよいので、簡単に形成することができる。
なお、ボール孔15が連通するカム案内溝12gの幅は、ボール孔15の内径より小さい。
したがって、ボール孔15を進退する従動ボール23がカム案内溝12gに脱落することがないので、カウンタ歯車軸12への係合手段20の組み付けを容易にする。
ボール孔15内での従動ボール23の進退は、その遠心側を軸方向凹部13の底円弧面より外側に出没させる。
このようにして、全てのラチェット部材Rが組み付けられた状態を図15に示す。
揺動基端部Rfの左右両面の揺動中心から左右側方に支軸ピンRtが突出して一体に形成されている。
なお、支軸ピンRtはラチェット部材Rとは別体のものを貫通して一体化してもよい。
さらに、揺動基端部Rfにおける軸方向凹部13のボール孔15が開口する底面側に従動ボール23が嵌る浅い円穴であるボール受穴Rdが所要箇所に形成されている。
なお、ラチェット部材Rには、ラチェット爪部Rpに対して係止片Rrが互いに対称位置にある2つの種類がある。
その際、ラチェット部材Rは軸方向凹部13のボール孔15が形成された側の端部円弧面12fに揺動基端部Rfを回動自在に嵌合して、図12に示すように、各被動変速歯車nに対応する4つの軸方向凹部13にそれぞれラチェット部材Rが嵌挿される。
各被動変速歯車nに対応する4個のラチェット部材Rは、すべて突片12Pから同じ方向にスリットRsと係止片Rrをはみ出している。
ラチェットスプリング22は、4個のラチェット部材RのスリットRsに外嵌された状態で縮径する方向にばね力が働く。
すなわち、ラチェットスプリング22は、支軸ピンRtの揺動中心に対して、ラチェット部材Rのラチェット爪部Rpを外側遠心方向に突出する方向に付勢している。
このとき、従動ボール23はボール受穴Rdに嵌る。
ラチェット部材Rの両側面に沿って一対のラチェットホルダ16,16を各周方向溝14に嵌合することで、ラチェット部材Rの両側に突出した支軸ピンRt,Rtを位置決めしてラチェット部材Rを確実に軸支することができる。
結局、各被動変速歯車nに対応する4個のラチェット部材Rは、左右2枚ずつの計4枚のラチェットホルダ16によって位置決め軸支される。
軸方向に隣合うラチェット部材R,R間の周方向溝14には90度角度回転した相対位置関係にあるラチェットホルダ16,16が重なり合って嵌合される。
なお、左右両端の各ラチェットホルダ16は軸方向に1枚であるので、周方向に合体されて環状をなしたラチェットホルダ16,16に幅狭の軸受カラー部材18が外嵌される。
軸受カラー部材18によりラチェットホルダ16の脱落が防止されることは、ラチェット部材Rが脱落防止されることになる。
このようにしてカウンタ歯車軸12に軸受カラー部材18を介して第1,第2,第3,第4,第5,第6被動変速歯車n1,n2,n3,n4,n5,n6が回転自在に軸支される。
係合凸部31は、側面視(図4,図5に示す軸方向視)で薄肉円弧状をなし、その周方向の両端面が前記ラチェット部材Rのラチェット爪部Rpと係合する係合面をなす。
同様に、正回転偶数段ラチェット部材Raeが前記正回転偶数段用カムロッドCaeの移動により進退する従動ボール23により揺動し、逆回転偶数段係合部材Rbeが前記逆回転偶数段用カムロッドCbeの移動により進退する従動ボール23により揺動する。
図2ないし図5は、1速状態を示しており、図4では第1被動変速歯車n1が矢印方向に回転し、図5では第2被動変速歯車n2が矢印方向に回転しており、第1被動変速歯車n1よりも第2被動変速歯車n2が高速で回転している。
他の第3,第4,第5被動変速歯車n3,n4,n5,n6も同様で空回りしている(図2,図3参照)。
n…被動変速歯車、n1〜n6…第1〜第6被動変速歯車、
1L…左機関ケース、1R…右機関ケース、2…変速室、4…プライマリ被動ギヤ、5…出力ギヤ、
10…多段変速機、11…メイン歯車軸、12…カウンタ歯車軸、12g…カム案内溝、13…軸方向凹部、14…周方向溝、15…ボール孔、16…ラチェットホルダ、18…軸受カラー部材、
20…係合手段、22…ラチェットスプリング、23…従動ボール、26…、31…係合凸部、
C…カムロッド、Cao…正回転奇数段用カムロッド、Cae…正回転偶数段用カムロッド、Cbo…逆回転奇数段用カムロッド、Cbe…逆回転偶数段用カムロッド、p…係止爪、v1,v2,v3,v4,v5,v6…カム溝、
R…ラチェット部材、Rao…正回転奇数段ラチェット部材、Rae…正回転偶数段ラチェット部材、Rbo…逆回転奇数段ラチェット部材、Rbe…逆回転偶数段ラチェット部材、Rt…支軸ピン、Rp…ラチェット爪部、Rr…係止片、Rs…スリット、Rd…ボール受穴、
50…変速駆動手段、51…コントロールロッド、51a,51b…外周凹部、52,53…ロストモーション機構、55…コントロールロッド操作子、60…変速駆動カバー、61…シフトドラム、61v…シフト溝、62…中間軸、65…変速用モータ。
Claims (3)
- 互いに平行な歯車軸にそれぞれ複数の駆動歯車と被動歯車が変速段毎に常時噛み合い状態で軸支され、前記駆動歯車と前記被動歯車の一方の複数の歯車が歯車軸に固定され、他方の複数の歯車と歯車軸との間に設けられ互いの係合を行う係合手段が切り換え駆動されて変速を行う多段変速機において、
前記係合手段は、各歯車の内周面に周方向に係合面を有して突出して形成された係合凸部と、
前記歯車軸の中空内周面に軸方向に移動自在に摺接され摺接面に複数のカム溝が軸方向所要箇所に形成されたカムロッドと、
前記歯車軸の所要箇所に径方向に貫通した貫通孔に嵌挿され前記軸方向に移動するカムロッドの摺接面と前記カム溝に交互に接して進退する従動部材と、
支軸ピンを中心に揺動し前記従動部材を受ける受部と前記係合凸部の係合面に当接するラチェット爪部とを揺動中心に関して互いに反対側に有し前記従動部材の進退で揺動して前記ラチェット爪部で前記係合凸部と係合および係合解除を行うラチェット部材と、
前記ラチェット爪部を係合凸部の係合面に係合する揺動方向に前記ラチェット部材を付勢する付勢手段とを備え、
前記ラチェット部材は前記歯車の正転方向で前記係合凸部が当接する正転用ラチェット部材と、前記歯車の逆転方向で前記係合凸部が当接する逆転用ラチェット部材がそれぞれ対称位置に一対ずつ設けられ、
前記歯車軸は、外周にそれぞれ一対の前記正転用ラチェット部材と前記逆転用ラチェット部材を収納する軸方向凹部が軸方向に連続して形成されるとともに、それぞれ一対の前記正転用ラチェット部材と前記逆転用ラチェット部材の軸方向両側に突設される前記支軸ピンを嵌入する凹部が内周縁に形成された半円弧板状をなすラチェットホルダを嵌合する周方向溝が周方向に形成されることを特徴とする多段変速機。 - 前記歯車軸の外周の前記周方向溝に外側から嵌合され環状をなす一対の前記ラチェットホルダの外周に環状の軸受カラー部材が外嵌され、
前記軸受カラー部材に前記歯車が回転自在に軸支されることを特徴とする請求項1記載の多段変速機。 - 前記歯車軸の外周の前記軸方向凹部は軸方向視で面対称に形成されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の多段変速機。
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