JP2019100304A - 鞍乗型車両 - Google Patents

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Yasunori Murayama
恭規 村山
信也 飯塚
Shinya Iizuka
信也 飯塚
竜司 山本
Ryuji Yamamoto
竜司 山本
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Abstract

【課題】足で操作するシフトペダルを有する鞍乗型車両において、クラッチ操作無しでより円滑な変速段の変更を行う。【解決手段】鞍乗型車両は、多段変速機と、エンジンと、クラッチと、シフトペダル荷重検出器と、制御装置とを備える。制御装置は、クラッチが切られることなく多段変速機のシフト切替え操作が行われているときに、足の操作による荷重がシフトペダル荷重検出器で検出されてから、変速先の変速段に対応する駆動ギア及び被駆動ギアを介して動力が多段変速機の入力軸から出力軸へ伝達されるまでの間に、(i)(ii)を行う。(i)エンジンの吸気量を増加させる増加処理、並びに、吸気量の増加に伴うエンジンの動力の増加を抑えるようなエンジンの点火遅角を開始し、(ii)エンジンの吸気量を増加させる増加処理を行っている時に、エンジンの動力を増加させるよう、エンジンの点火遅角を終了する処理を開始する。【選択図】図1

Description

本発明は、鞍乗型車両に関する。
鞍乗型車両では、通常、エンジンから出力される回転の速度及びトルクが変速機で変えられ、車輪に伝達される。
例えば、特許文献1には、変速機のシフト動作を補助する制御システムが開示されている。この制御システムは、エンジン出力調整部を備えている。制御システムは、運転者が変速段を変更するためのシフト操作をクラッチの操作無しで行うことができるよう、変速段の変更時にエンジンの出力を制御する。例えば、シフトダウンが行われる場合、エンジン出力調整部は、シフトペダルの操作を検出する荷重センサから出力される検出値に応じてエンジンの出力を調整する。エンジン出力調整部は、エンジンの回転速度を増加する。
特開2008−144755号公報
特許文献1に開示されたシフトペダルは、運転者の足で操作される。特許文献1に開示されたような自動二輪車の運転者は、操作の意図がなくてもシフトペダルに足を載せている場合がある。特許文献1のエンジン出力調整部は、シフトペダルが十分な荷重で操作された場合に運転者によりシフト操作が意図されたと判定して、エンジンの回転速度を増加する。具体的には、エンジン出力調整部は、スロットル弁を開く。
しかし、スロットル弁が開いてから、エンジンの吸気量が増加して回転速度が増加するまでには時間がかかる。このため、シフト操作の意図が判定されてから変速段の変更完了まで長い時間を要する場合がある。
本発明の目的は、足で操作するシフトペダルを有する鞍乗型車両において、クラッチ操作無しでより円滑な変速段の変更を行うことである。
本発明者らは、クラッチ操作無しで変速段の変更を行う方法について、シフトペダルの特性の観点から詳細に検討した。
例えば、特許文献1に開示された制御システムでは、エンジン出力の調整に際して、足によるシフトペダル操作について判別の確実性を確保しようとしている。これは、次の理由による。例えば、シフトペダルの荷重が比較的小さい時にエンジン出力調整が開始する場合、操作の意図無しに足の荷重がかけられてもエンジン出力が変動してしまうことがある。
このため、従来は、足によるシフトペダルの操作が確実に行われたことを確認してからエンジン出力調整を行う必要があると考えられていた。
これに対し、本発明者らは、敢えて足の操作による荷重に基づいてエンジンの制御を早期に行う方法を検討してみた。エンジンの制御のタイミングは、荷重を検出するレベルの調整によって早められることができる。
本発明者らは、エンジンの制御を、エンジンの吸気量を増加する処理と、エンジンの動力の調整とに分けることを検討した。より具体的に、本発明者らは、まずシフトペダルの操作荷重が小さい時に吸気量を増加する処理を行い、その後シフトペダルの操作量が増加した時にエンジンの動力を増加することを検討した。吸気量増加の処理では、例えば、エンジンの吸気量を増加させるとともに点火タイミングを遅角させる。これによってエンジンの吸気量は増加するが、エンジンから出力される動力の変化は抑えられる。小さいシフトペダルの操作荷重で吸気量増加の処理を行うことにより、長い時間を要するエンジン吸気量の増加を早期に開始できる。
吸気量増加の処理では、エンジンからの動力の変化が抑えられる。このため、例えば足による荷重が運転者によるシフト操作を意図しない場合であっても、エンジンの動力の変動が生じにくい。
足による小さいシフトペダルの操作荷重で吸気量増加処理としてエンジンの吸気量を増加させた後、点火遅角若しくは燃料減量を終了又は低減することにより動力を増大することができる。点火遅角若しくは燃料減量の終了又は低減によるエンジンの動力の変化は、吸気量の調整による変化と比べて短時間で起こる。
このように、足の操作による荷重を検出して運転者の操作の意思に基づきエンジンの吸気量の増加を早期に開始することができる。また、足の操作による荷重が操作を意図しない場合でも、動力の変化は抑えられる。この結果、足で操作するシフトペダルを有する鞍乗型車両において、クラッチ操作無しで円滑な変速を行なうことができる。
以上の知見に基づいて完成した本発明の各観点による鞍乗型車両は、次の構成を備える。
(1) 鞍乗型車両であって、
回転可能に配置され、動力が入力される入力軸と、
前記入力軸と平行な軸線上に回転可能に配置される出力軸と、
前記入力軸に設けられ、前記入力軸と常に共に回転するか又は前記入力軸と相対回転可能であるように構成され、それぞれが各変速段に対応する複数の駆動ギアと、
前記出力軸に設けられ、前記出力軸と常に共に回転するか又は前記出力軸と相対回転可能であるように構成され、対応する前記駆動ギアと常時噛み合う複数の被駆動ギアと、
鞍乗型車両のライダーの足で操作されるシフトペダルと、
前記シフトペダルの足での操作に応じていずれか一つの変速段に係る前記駆動ギア及び前記被駆動ギアを介した前記入力軸から前記出力軸への動力伝達を機械的に且つ選択的に有効に設定するように構成された変速段設定機構と、を有し、
前記変速段設定機構は、第n速に対応する第n速被駆動ギア又は第n+1速に対応する第n+1速被駆動ギアのいずれか一方を通る動力の前記出力軸への伝達を機械的な係合状態を変更することによって選択的に有効にするための係合機構を含む、多段変速機と、
前記多段変速機の前記入力軸に供給される動力を出力するエンジンと、
前記エンジンと前記入力軸との間に設けられ、前記エンジンと前記入力軸との間で伝達される動力を断続するクラッチと、
前記シフトペダルに加えられた足の操作による荷重を検出するシフトペダル荷重検出器と、
前記鞍乗型車両の減速中に前記クラッチが切られることなく前記多段変速機のシフト切替え操作が行われているときに、前記足の操作による荷重が前記シフトペダル荷重検出器で検出されてから、変速先の変速段に対応する駆動ギア及び被駆動ギアを介して動力が前記多段変速機の前記入力軸から前記出力軸へ伝達されるまでの間に、下記(i)、(ii)を行うように、前記エンジンの動力を制御する制御装置であって、
(i)エンジンの吸気量を増加させる増加処理、並びに、吸気量の増加に伴うエンジンの動力の増加を抑えるようなエンジンの点火タイミング及び/若しくは燃料量の変更を開始し、
(ii)前記エンジンの吸気量を増加させる増加処理を行っている時に、前記エンジンの動力を増加させるよう、前記エンジンの前記点火タイミング及び/若しくは前記燃料量を変更する、制御装置と、
を備えた鞍乗型車両。
(1)の鞍乗型車両によれば、鞍乗型車両の減速中にクラッチが切られることなく多段変速機のシフト切替え操作が行われているときに、足の操作による荷重がシフトペダル荷重検出器で検出されてから、変速先の変速段に対応する駆動ギア及び被駆動ギアを介して動力が前記多段変速機の入力軸から出力軸へ伝達されるまでの間に、吸気量増加処理が開始される。吸気量増加の動作は、エンジンの吸気量を増加させる増加処理、並びに、吸気量の増加に伴うエンジンの動力の増加を抑えるようなエンジンの点火タイミング及び/若しくは燃料量の変更の組合せである。増加処理でエンジンの吸気量が増加する。しかし、エンジンの動力の増加は、エンジンの点火タイミング及び/若しくは燃料量の変更によって抑えられる。
エンジンの吸気量を増加させる増加処理が行われている時、エンジンの動力が増加するように、点火タイミング及び/若しくは前記燃料量が変更される。
足の操作による荷重の検出に基づいて増加処理を開始することにより、長い時間を要するエンジンの吸気量増加を早期に開始することができる。
また、吸気量増加処理でエンジンの吸気量は増加するが、エンジンの動力の増加は抑えられる。このため、足によるシフトペダルの操作による荷重が運転者によるシフト操作を意図しない場合にエンジンの動力の変化が抑えられる。従って、シフトペダルの操作による荷重が運転者によるシフト操作を意図しない場合に、エンジンの動力の変動が抑えられる。
制御装置は、足の操作による荷重の検出に応じてエンジンの吸気量を増加させている時に、エンジンの動力が増加するように。点火遅角若しくは燃料減量の変化によるエンジンの動力の変更は、吸気量の調整による動力の変更と比べて短時間で実施することができる。従って、足の操作による荷重の検出に応じて先に吸気量を増加させ、この後で、点火遅角等を終了する処理を開始しても、変速段の変更の動作に寄与することができる。
このように、シフトペダルに加えられた足の操作による荷重の検出でエンジンの吸気量を増加することによって、変速段の変更のための動力の増加に対応することを可能としつつ、シフト操作が意図されない場合であっても、エンジンの動力の変化を抑えることができる。従って、足で操作するシフトペダルを有する鞍乗型車両において、クラッチ操作無しでより円滑な変速段の変更を行うことができる。
(2)本発明の、別の観点によれば、(1)の鞍乗型車両であって、
前記(i)における点火タイミング及び/若しくは燃料量の変更の開始は、エンジンの点火遅角及び/若しくは燃料減少を開始することであり、
前記(ii)におけるエンジンの点火タイミング及び/若しくは燃料量の変更は、前記(i)において開始されたエンジンの点火遅角及び/若しくは燃料減少を終了するか又は低減し始めることである。
(2)の鞍乗型車両によれば、点火タイミング及び燃料量のうち、前記(i)において変更される対象と、前記(ii)において変更が終了又は低減し始める対象とが同じである。制御の複雑化が解消又は抑制され、より円滑な変速段の変更が可能となる。
(3)本発明の、別の観点によれば、(1)又は(2)の鞍乗型車両であって、
前記変速段設定機構は、周方向に延びるカム部が外周面に形成され、足の操作による前記シフトペダルの操作に応じて、シフトアップ時の回転方向とシフトダウン時の回転方向とが反対になるようにシフトアップ時及びシフトダウン時に回転するように構成され、回転に伴って、前記第n速に対応する前記第n速被駆動ギア又は前記第n+1速に対応する前記第n+1速被駆動ギアのいずれか一方を通る動力の前記出力軸への伝達を選択的に有効にするシフトカムを備え、
前記制御装置は、前記シフトペダルが足の操作による荷重を受け、且つ、前記シフトカムが前記変速段設定機構に前記動力の機械的な係合状態の変更を開始させる程度に回転する時点より前に、前記(i)を行うように前記エンジンの動力を制御する。
(3)の鞍乗型車両によれば、変速段設定機構が動力の機械的な係合状態の変更を開始する時点より前に、前記(i)が開始される。このため、シフトカムの回転を待たずに足で操作するシフトペダルの操作荷重で早期にエンジンの吸気量増加を開始することが可能になる。従って、さらに円滑な変速段の変更のための動力増大に対応することが可能となる。従って、足で操作するシフトペダルを有する鞍乗型車両において、クラッチ操作無しでより円滑な変速段の変更を行うことができる。
(4)本発明の、別の観点によれば、(1)から(3)いずれか1の鞍乗型車両であって、
前記制御装置は、
前記鞍乗型車両の減速中に前記エンジンから前記入力軸への動力伝達が切断されることなく前記多段変速機の第n+1速段から第n速段へのシフトダウン操作が行われた場合、前記エンジンの吸気量を増加させる増加処理を行っている時に、前記入力軸から前記出力軸への動力伝達が、第n+1速段に対応する駆動ギア及び被駆動ギアを介して行われる状態から、当該動力伝達が途切れることなく、第n速段に対応する駆動ギア及び被駆動ギアを介して行われる状態へ切り替えられる前に、前記(ii)として、前記エンジンの動力を増加させるよう、前記(i)において開始されたエンジンの点火タイミング及び/若しくは燃料量の変更を終了する。
(4)の鞍乗型車両によれば、鞍乗型車両の減速中にシフトダウン操作が行われた場合入力軸から出力軸への動力伝達が切り替えられる前に、エンジンの動力が増加する。このため、動力伝達が、第n+1速に対応する被駆動ギアを介して行われる状態からより低い速度で回転する第n速対応の被駆動ギアを介して行われる状態へ切り替えられるときのイナーシャ相ショックが抑えられる。
エンジンの動力の増大に先立ち、足で操作するシフトペダルの操作荷重で、早期にエンジンの吸気量を増加して円滑な変速段の変更のための動力増大に対応可能としつつ、シフト操作が意図されない場合であってもエンジンの動力の変化を抑えることができる。足で操作するシフトペダルの操作荷重で早期に動力増大に対応可能としつつ、動力伝達が切り替えられる前のエンジンの動力の増加によって、より円滑な変速段の変更を行うことができる。
(5)本発明の、別の観点によれば、(1)から(3)いずれか1の鞍乗型車両であって、
前記制御装置は、
前記鞍乗型車両の減速中に前記エンジンから前記入力軸への動力伝達が切断されることなく前記多段変速機の第n速段から第n+1速段へのシフトアップ操作が行われた場合、
前記エンジンの吸気量を増加させる増加処理を行っている時に、前記シフトペダル荷重検出器で検出された、前記足の操作による荷重が、前記エンジンの吸気量を増加させる増加処理の前の前記足の操作による荷重よりも増加した場合に、前記(ii)を行う。
(4)の鞍乗型車両によれば、シフトアップ操作が行われた場合、シフトペダル荷重検出器で検出された足の操作による荷重が、前記エンジンの吸気量を増加させる増加処理の前の足の操作による荷重よりも増加した場合に、エンジンの動力を増加させる。これによって、鞍乗型車両の減速中のシフトアップ操作に応じて、第n+1速被駆動ギアを通る動力の出力軸への伝達を選択的に有効にするための機械的な係合状態を変更する場合に、第n速被駆動ギアについての係合状態を解除しやすくすることができる。エンジンの動力の増大に先立ち、足で操作するシフトペダルの操作荷重で、早期にエンジンの吸気量を増加して円滑な変速段の変更のための動力増大に対応可能としつつ、シフト操作が意図されない場合であってもエンジンの動力の変化を抑えることができる。足で操作するシフトペダルの操作荷重で早期に動力増大に対応可能としつつ、第n速被駆動ギアについての係合状態を解除しやすくすることができる。従って、より円滑な変速段の変更を行うことができる。
(6)本発明の、別の観点によれば、(1)から(5)いずれか1の鞍乗型車両であって、
前記制御装置は、前記(i)を実行した後、前記(ii)を実行する前に、前記シフトペダル荷重検出器で検出される荷重が前記(i)を実行した時点の荷重よりも減少した場合、前記(ii)を中止する。
シフトペダルに加えられた荷重が、運転者の操作の意図なしに加えられた荷重であっても、制御装置が、前記(i)を開始する。(5)の構成によれば、運転者の操作の意図がなく、その後、シフトペダルの荷重が解放された場合に、前記(ii)を中止する。このため、運転者の操作の意図なしにシフトペダルに荷重が加えられたり、荷重が解放されたりした場合に、エンジンの動力の変化を抑えることができる。
従って、足で操作するシフトペダルを有する鞍乗型車両において、運転者の操作の意図に応じた円滑な変速段の変更を実現するとともに、操作の意図なしにシフトペダルに荷重が加えられたり、荷重が解放されたりした場合も動力の変化が抑えられる。
(7)本発明の、別の観点によれば、(1)から(6)いずれか1の鞍乗型車両であって、
前記係合機構は、第n速に対応する第n速被駆動ギア又は第n+1速に対応する第n+1速被駆動ギアのいずれか一方を介して前記出力軸を通る動力の伝達を機械的に且つ選択的に有効に設定するためのラチェット機構であり、
前記ラチェット機構は、
起立時に前記入力軸から前記出力軸へ前記第n速に対応する駆動ギア及び被駆動ギアを通る加速する向きの動力を伝達する一方、伏倒時に動力を伝達しないように構成される第n速加速用ポールと、
起立時に前記入力軸から前記出力軸へ前記第n速に対応する駆動ギア及び被駆動ギアを通る減速する向きの動力を伝達する一方、伏倒時に動力を伝達しないように構成される第n速減速用ポールと、
起立時に前記入力軸から前記出力軸へ前記第n+1速に対応する駆動ギア及び被駆動ギアを通る加速する向きの動力を伝達する一方、伏倒時に動力を伝達しないように構成される第n+1速加速用ポールと、
起立時に前記入力軸から前記出力軸へ前記第n+1速に対応する駆動ギア及び被駆動ギアを通る減速する向きの動力を伝達する一方、伏倒時に動力を伝達しないように構成される第n+1速減速用ポールと、を含み、
前記変速段設定機構は、さらに、周方向に延びるカム部が外周面に形成され、シフトアップ時の回転方向とシフトダウン時の回転方向とが反対になるようにシフトアップ時及びシフトダウン時に回転するように構成され、回転に伴って、前記第n速加速用ポールと、前記第n速減速用ポールと、前記第n+1速加速用ポールと、前記第n+1速減速用ポールと、を伏倒又は起立させるシフトカムを備える。
(6)の構成によれば、多段変速機は、シームレス変速機である。第n速加速用ポール(pawl)と、第n速減速用ポールとによって、第n速について、加速する向きの動力の伝達、及び減速する向きの動力の伝達が選択される。このことは、第n+1速でも同じである。
このため、例えば、鞍乗型車両の減速中に第n+1速から第n速へのシフトダウン操作が行われる場合、第n+1速及び第n速の双方で減速する向きの動力の伝達が選択されると、ギアに回転速度差が生じる。このため、第n速で減速する向きの動力の伝達開始によって、第n+1速での係合が解除される。従って、変速段が変更される際に動力伝達が切断されない。このシームレス変速機では、動力伝達が途切れることなく変速段が変更できる。従って、シームレス変速機では、他のタイプの変速機と比べて変速段の変更に掛かる期間も短い。(6)の構成によれば、変速段の変更に掛かる短い期間に対応して、足で操作するシフトペダルの操作荷重で、早期にエンジンの吸気量を増加して円滑な変速段の変更のための動力増大に対応可能とし円滑な変速段の変更を行うことができる。
本発明によれば、足で操作するシフトペダルを有する鞍乗型車両において、クラッチ操作無しでより円滑な変速段の変更を行うことが可能な鞍乗型車両が実現する。
変速段設定機構は、動力の出力軸への伝達を選択的に有効にするための係合機構を含む。係合機構は、例えば、ドグを備えドグ係合により動力を伝達するドグ係合機構である。ただし、変速段設定機構は、ドグ係合機構に限られず、例えばラチェットを備え、ラチェット係合により動力を伝達するラチェット係合機構を有してもよい。
例えば、ラチェットとしてのポールを備えたラチェット係合機構において、鞍乗型車両の減速中にエンジンの動力を増加させることによって、ポールが伏倒しやすくなる。従って、変速段の変更前におけるギアに係るポール(ラチェット)の係合が解除されやすくなる。但し、係合の解除はこれに限られず、例えば、ドグを備えたドグ係合機構において、鞍乗型車両の減速中にエンジンの動力を増加させることによって、ドグ係合が解除しやすくなる(いわゆるドグ抜き)。
多段変速機のシフト切替え操作は、変速段設定機構に、いずれか一つの変速段に係る駆動ギア及び被駆動ギアを介した入力軸から出力軸への動力伝達を機械的に且つ選択的に有効に設定させる操作である。減速中における多段変速機のシフト切替え操作には、減速中におけるシフトダウン操作及び減速中におけるシフトアップ操作の少なくともいずれかが含まれる。
荷重を検出するシフトペダル荷重検出器は、シフトペダルに掛かる荷重を検出する。シフトペダル荷重検出器は、荷重の形式で表れる運転者の操作の意思を検出する検出器である。シフトペダル荷重検出器は、運転者即ち鞍乗型車両のライダーの操作の意思を検出する検出器である。シフトペダル荷重検出器は、例えば、ロードセルのような直接的に荷重を検出するタイプの検出器である。但し、シフトペダル荷重検出器は、これに限られず、例えば間接的に荷重を検出してもよい。シフトペダル荷重検出器は、例えば、ばねと検出子を有するポテンショメータでもよい。ポテンショメータは、ばねの弾性力に抗して変位する検出子の位置を検出する。シフトペダル荷重検出器は、例えば、スイッチのオン・オフとしてよって荷重を検出してもよい。シフトペダル荷重検出器は、例えば、シフトペダルの回転角度によって荷重を間接的に検出してもよい。鞍乗型車両が備えるシフトペダル荷重検出器の数は、1つに限定されない。鞍乗型車両は、複数のシフトペダル荷重検出器を備えていてもよい。
多段変速機は、例えば、変速段が変更する際に動力伝達が切断されないシームレス変速機である。但し、多段変速機は、シームレス変速機に限られず、変速段が変更する際に伝達が一時的に切断されるタイプのドグ式変速機であってもよい。また、多段変速機は、AMT(Automated Manual Transmission)であってもよい。
「第n速」及び「第n+1速」は、変速装置が有する変速段のうち、隣り合う変速段の対を指す。隣り合う変速段の間では、交互に変速が可能である。「第n速」が、低速側の変速段である。「第n+1速」が、高速側の変速段である。「n」は、変速装置が有する変速段の数より小さい正整数を取り得る。「n」に関して、変速装置が有する変速段は、ニュートラルポジションを含まない。例えば、変速装置が有する変速段の数が6である場合、そのような変速段の対は、以下の通りである。nは、1〜5のいずれかの値を取り得る。
第1速及び第2速 (n=1)
第2速及び第3速 (n=2)
第3速及び第4速 (n=3)
第4速及び第5速 (n=4)
第5速及び第6速 (n=5)
上記の例において、第2速は、第3速との関係において「第n速」に該当し、第1速との関係において「第n+1速」に該当する。このように、変速装置においては、1つの変速段が、隣り合う一方の変速段との関係において「第n速」に該当するとともに、隣り合う他方の変速段との関係において「第n+1速」に該当してもよい。
制御装置は、エンジンの動力の増加を抑える処理として、エンジンの点火遅角を行なう。但し、エンジンの動力の増加を抑える処理はこれに限られず、例えば燃料の供給量を減少する処理でもよい。また、燃料の供給量を減少する処理には、燃料の供給をゼロにすることによって供給量を減少する処理も含まれる。
鞍乗型車両とは、運転者がサドルに跨って着座する形式の車両をいう。鞍乗型車両は、ビークルの一例である。鞍乗型車両は、リーン姿勢で旋回する車両であり、旋回時にカーブ内側にリーンするように構成されている。
鞍乗型車両は例えば自動二輪車である。自動二輪車としては、特に限定されず、例えば、スクータ型、モペット型、オフロード型、オンロード型の自動二輪車が挙げられる。また、鞍乗型車両としては、自動二輪車に限定されず、例えば三輪車であってもよい。また、鞍乗型車両としては、例えば、ATV(All−Terrain Vehicle)等であってもよい。
制御装置は、例えば、プログラムを実行するコンピュータで構成される。但し、制御装置は、これに限られず、電子回路で構成されてもよい。
上記(i)は、(i−1)「エンジンの吸気量を増加させる増加処理」と、(i−2)「吸気量の増加に伴うエンジンの動力の増加を抑えるようなエンジンの点火タイミング及び/若しくは燃料量の変更」との組合せを指している。上記(ii)は、「エンジンの増力を増加させるようなエンジンの点火タイミング及び/若しくは燃料量の変更」を指している。上記(i−1)及び上記(i−2)の両方が、上記(ii)よりも先に開始される。上記(i−1)が開始されるタイミングと、上記(i−2)が実行されるタイミングとは、同じであってもよく、異なっていてもよい。本発明においては、上記(i−2)として、エンジンの点火遅角及び/若しくは燃料減少が開始され、上記(ii)において、エンジンの点火遅角及び/若しくは燃料減少を終了するか又は低減し始めることが好ましい。この一例として、後述する実施形態では、上記(i−2)として、点火遅角が開始され、上記(ii)において、エンジンの点火遅角が終了する。但し、上記(i−2)及び上記(ii)の各々が、点火タイミング、燃料量、又はそれらの組合せのうち、いずれを対象とするかについては、特に限定されず、任意の組合せが採用され得る。例えば、上記(i−2)として燃料量が変更され、上記(ii)において燃料量が変更されてもよい。また、上記(i−2)として点火タイミング及び燃料量の両方が変更され、上記(ii)において点火タイミング及び燃料量の両方が変更されてもよい。また、上記(i−2)の対象と、上記(ii)の対象とは、必ずしも同じである必要はなく、異なっていてもよい。例えば、上記(i−2)として、エンジンの動力を抑えるように点火遅角が行われ、上記(ii)において、燃料量が増加されることによりエンジンの動力が増加されてもよい。
制御装置は、シフトペダル荷重検出器による一つの検出結果を契機として、上記(i)及び上記(ii)を順次実行してもよい。但し、制御装置は、シフトペダル荷重検出器による互いに異なる検出結果を契機として、上記(i)及び上記(ii)を順次実行することが好ましい。この場合、上記(i)が実行される契機となる検出結果と、上記(ii)が実行される契機となる検出結果とが異なる。例えば、鞍乗型車両が2つのシフトペダル荷重検出器を備えている場合において、一方のシフトペダル荷重検出器による検出結果に基づいて上記(i)が実行され、他方のシフトペダル荷重検出器による検出結果に基づいて上記(ii)が実行されてもよい。また、鞍乗型車両が1つのシフトペダル荷重検出器を備えている場合において、荷重又はその相関量(例えばシフトカムの回転角若しくは位置等)が、予め定められた第一の値に達した時に、上記(i)が実行され、第一の値より大きい第二の値に達した時に、上記(ii)が実行されてもよい。制御装置が、互いに異なる検出結果を契機として上記(i)及び上記(ii)が実行されるように構成されている場合、上記(i)が実行されてから上記(ii)が実行されるまでの間に、シフトペダルに対する操作が行われない場合に、上記(ii)を中止できる。
本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両の概略構成を説明する図である。 図1に示す鞍乗型車両の側面図である。 図1に示す多段変速機の拡大図である。 (A)は、加速用ポール、減速用ポール、ドグリング、及び被駆動ギアを軸方向に見た模式図であり、(B)は、被駆動ギア及びドグリングの周方向部分断面図である。 減速中のシフトダウンにおける、ドグ及びポールの動作を説明する図である。 減速中のシフトアップにおける、ドグ及びポールの動作を説明する図である。 図1に示す制御装置の構成を示すブロック図である。 図7に示す制御装置の機能ブロックを示すブロック図である。 鞍乗型車両の減速中でのシフトダウン時における鞍乗型車両の動作を概略的に示すタイムチャートである。 鞍乗型車両の減速中でのシフトアップ時における鞍乗型車両の動作を概略的に示すタイムチャートである。 制御装置の変速制御の動作を説明するフローチャートである。 図11に示す前処理を説明するフローチャートである。 図11に示す係合解除補助の処理を説明するフローチャートである。 図11に示す動力制御開始の処理を説明するフローチャートである。
以下、本発明を、実施形態に基づいて図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両の概略構成を説明する図である。
図1を参照して、本実施形態の鞍乗型車両1の概要を説明する。
図1に示す鞍乗型車両1は、エンジン11と、クラッチ12と、多段変速機13と、制御装置8とを備えている。
エンジン11は、動力を出力する。図1には、エンジン11として4気筒エンジンが示されている。図1では、1つの気筒のみ構成が概略的に示され、残りの気筒については構成の図示が省略されている。エンジン11は、動力軸90と、シリンダ102と、ピストン103と、点火プラグ107を備えている。動力軸90はクランクシャフトである。
ピストン103は、シリンダ102内に往復移動自在に設けられている。点火プラグ107は、シリンダ102内に形成される燃焼室104に設けられている。燃焼室104に続く吸気通路には、スロットルバルブ105、燃料噴射装置106が設けられている。スロットルバルブ105、燃料噴射装置106、及び点火プラグ107の動作は、制御装置8によって制御される。
スロットルバルブ105は、燃焼室104に供給される空気の量を調整する。また、燃料噴射装置106は、燃焼室104に供給される空気に燃料を噴射する。空気と燃料の混合気が燃焼室104に供給され、点火プラグ107の点火によって燃焼することで、ピストン103を往復動させる。ピストン103の往復動が、動力軸90の回転に変換される。エンジン11から、動力軸90の回転として動力が出力される。図中では、1つのスロットルバルブ105のみが示されているが、鞍乗型車両1は、シリンダ102と同数のスロットルバルブ105を備えている。スロットルバルブ105は、シリンダ102ごとに設けられている。
クラッチ12は、動力の伝達経路におけるエンジン11と多段変速機13との間に設けられている。クラッチ12は、エンジンと多段変速機13との間で伝達される動力を断続する。クラッチ12は、運転者の操作に応じて動力を断続する。
多段変速機13は、クラッチ12と接続されている。
多段変速機13は、複数の変速段を有する。本実施形態の多段変速機13は、シームレス変速機である。多段変速機13は、動力伝達を切断することなく、変速段を切替えることができる。
多段変速機13は、入力軸20と、出力軸30と、駆動ギア241〜246と、被駆動ギア341〜346と、シフトペダル501と、変速段設定機構139とを有する。図1では、出力軸30及び出力軸に設けられた部材の断面が示されている。
入力軸20は、回転可能に配置される。入力軸20には、動力が入力される。入力軸20には、エンジン11から出力された動力がクラッチ12を介して入力される。多段変速機13は、入力軸20に対し出力軸30の回転速度を段階的に変速する。
出力軸30は、入力軸20と平行な軸線上に回転可能に配置される。複数の駆動ギア241〜246は、入力軸20に設けられ、常に入力軸20と共に回転するように構成されている。また、複数の駆動ギア241〜246のそれぞれは、各変速段に対応する。複数の被駆動ギア341〜346は、出力軸30に設けられ、出力軸30と相対回転可能であるように構成される。複数の被駆動ギア341〜346は、対応する駆動ギア241〜246と噛み合い可能であるように構成されている。常時、複数の被駆動ギア341〜346の少なくとも一つが、駆動ギア241〜246と噛み合う。
詳細には、図1に示す多段変速機13に備えられた複数の駆動ギア241〜246は、常に入力軸20と共に回転するように構成されている。また、複数の被駆動ギア341〜346は、出力軸30と相対回転可能であるように構成される。また、複数の被駆動ギア341〜346のそれぞれが、駆動ギア241〜246と常時噛み合う。
シフトペダル501は、運転者の足によって操作されるように設けられている。シフトペダル501が運転者の足で荷重をかけられることによって、シフト切替え操作が行われる。シフトペダル501に掛けられる荷重は、シフトペダル501に接続されたリンク部材504を介して伝達される。荷重によるシフトペダル501の変位に伴い、シフトカム50が回転する。これによって、変速段の切替えが実施される。例えば、シフトペダル501がシフトアップ操作としての踏み込み荷重を受けて鞍乗型車両1の上下方向における下向きに回動すると、多段変速機13はシフトアップする。また、シフトペダル501がシフトダウン操作としての踏み込みとは逆向きの荷重を受けて上向きに回動すると、多段変速機13はシフトダウンする。
鞍乗型車両1には、シフトペダル荷重検出器730が設けられている。シフトペダル荷重検出器730は、シフトペダル501に掛かる荷重を検出する。これによって、シフトペダル荷重検出器730は、運転者によるシフト操作の意思を検出する。シフトペダル荷重検出器730は、上下両方向の荷重を検出する。図1に示すシフトペダル荷重検出器730は、リンク部材504に設けられた荷重センサである。シフトペダル荷重検出器730は、例えばロードセルで構成されている。
変速段設定機構139は、シフトペダルに対する足の操作に応じていずれか一つの変速段に係る駆動ギア241〜246及び被駆動ギア341〜346を介した入力軸20から出力軸30への動力伝達を機械的に且つ選択的に有効に設定するように構成されている。変速段設定機構139は、ラチェット機構400及びシフトカム50を有する。また、変速段設定機構139は、ドグ係合機構138を有する。
ラチェット機構400は、第n速に対応する第n速被駆動ギア又は第n+1速に対応する第n+1速被駆動ギアのいずれか一方を介して出力軸30を通る動力の伝達を機械的に且つ選択的に有効に設定する。
本実施形態の多段変速機13は、6速の変速機である。従って、上記nには、1から5までのいずれかが該当する。例えば、n=2の場合、ラチェット機構400は、第2速に対応する第2速被駆動ギア342又は第3速に対応する第3速被駆動ギア343のいずれか一方を介して出力軸30を通る動力の伝達を機械的にかつ選択的に有効に設定する。
本実施形態における変速段設定機構139は、詳細には、ラチェット機構400及びドグ係合機構138によって、第n速に対応する第n速被駆動ギア又は第n+1速に対応する第n+1速被駆動ギアのいずれか一方を介して出力軸30を通る動力の伝達を機械的に且つ選択的に有効に設定する。
ドグ係合機構138は、第n速被駆動ギア又は第n+1速被駆動ギアのいずれか一方を通る動力の出力軸30への伝達を、機械的な係合状態を変更することによって選択的に有効にする。
ドグ係合機構138は、本実施形態における変速段設定機構139が有する係合機構の一例に相当する。以降、係合機構をとしてドグ係合機構138を説明する。
ドグ係合機構138は、第1ドグD1、及び第2ドグD2を有する。詳細には、図1に示す多段変速機13の第1ドグD1は、被駆動ギア341〜346に設けられている。第1ドグD1は、被駆動ギア341〜346に、周方向に間隔を空けて配置された複数の突部である。第1ドグD1は、被駆動ギア341〜346から、出力軸30の軸方向に突出している。第2ドグD2は、ドグリング37a〜37cに設けられている。第2ドグD2は、円環状のドグリング37a〜37cに設けられた穴部を画定する。
ドグリング37a〜37cは、出力軸30の軸線上で移動可能なように出力軸30に設けられている。詳細には、ドグリング37a〜37cのそれぞれは、ハブ38を介して出力軸30に支持されている。ドグリング37a〜37cは、ハブ38と常に共に回転する。ドグリング37a〜37cは、ハブ38に対し出力軸30の軸線上で移動可能なようにハブ38に設けられている。第1のドグリング37aは、第1速の被駆動ギア341及び第3速の被駆動ギア343と対応する。第2のドグリング37bは、第5速の被駆動ギア345及び第6速の被駆動ギア346と対応する。第3のドグリング37cは、第2速の被駆動ギア342及び第4速の被駆動ギア344と対応する。
ドグリング37a〜37cが、出力軸30の軸線上で移動することによって被駆動ギア341〜346のいずれかと係合する。ドグリング37a〜37cが、被駆動ギア341〜346のいずれかとドグ係合する。このとき、周方向に間隔を空けて配置された第2ドグD2の間隔に第1ドグD1が入り込み、且つ第2ドグD2が第1ドグD1と周方向で当たることによりドグ係合する。周方向は、被駆動ギア341〜346及びドグリング37a〜37cの回転方向Rを含む方向である。ドグ係合によって、回転方向Rの動力が伝達される。
変速段設定機構139は、動力が伝達される経路を選択的に有効に設定する。変速段設定機構139は、被駆動ギア341〜346のいずれかが対応するドグリング37a〜37cと係合するよう、ドグリング37a〜37cを移動させる。ドグ係合機構138は、被駆動ギア341〜346と、対応するドグリング37a〜37cのドグ係合により、動力の伝達の経路を有効にする。
ラチェット機構400は、加速用ポール35a〜35c及び減速用ポール36a〜36cを含んでいる。
本実施形態において、加速用ポール35a〜35c及び減速用ポール36a〜36cは、ドグリング37a 〜37cに対応して設けられている。ドグリング37a〜37cのそれぞれに、加速用ポール35a〜35c及び減速用ポール36a〜36cが設けられている。加速用ポール35a及び減速用ポール36a の組は、第1速段及び第3速段に対応する。加速用ポール35b及び減速用ポール36bの組は、第5速段及び第6速段に対応する。加速用ポール35c及び減速用ポール36cの組は、第2速 段及び第4速段に対応する。
加速用ポール35a〜35c及び減速用ポール36a〜36cは、径方向でドグリング37a〜37cより中に配置されている。加速用ポール35a〜35c及び減速用ポール36a〜36cは、出力軸30に揺動可能に設けられている。加速用ポール35a〜35c及び減速用ポール36a〜36cは、起立又は伏倒の状態を有する。
加速用ポール35a〜35cのそれぞれは、起立時に入力軸20から出力軸30へ、対応する速段に対応する駆動ギア241〜246及び被駆動ギア341〜346を通る加速する向きの動力を伝達する。加速用ポール35a〜35cのそれぞれは、この一方、伏倒時に動力を伝達しない。
また、減速用ポール36a〜36cのそれぞれは、起立時に入力軸20から出力軸30へ、対応する速段に対応する駆動ギア241〜246及び被駆動ギア341〜346を通る減速する向きの動力を伝達する。減速用ポール36a〜36cのそれぞれは、一方、伏倒時に動力を伝達しない。
詳細には、加速用ポール35a〜35c及び減速用ポール36a〜36cは、出力軸30とハブ38との間における動力の伝達及び伝達の中断を切り替える。これによって、加速用ポール35a〜35c及び減速用ポール36a〜36cは、出力軸30と被駆動ギア341〜346との間における動力の伝達及び伝達の中断を切り替える。
例として、第2速と第3速について説明する。第2速加速用ポール35cは、起立時に入力軸20から出力軸30へ第2速(第n速)に対応する駆動ギア242及び被駆動ギア342を通る加速する向きの動力を伝達する。一方、第2速加速用ポール35cは、伏倒時に動力を伝達しない。
第2速減速用ポール36cは、起立時に入力軸20から出力軸30へ第2速(第n速)に対応する駆動ギア242及び被駆動ギア342を通る減速する向きの動力を伝達する。一方、第2速減速用ポール36cは、伏倒時に動力を伝達しない。
第3速加速用ポール35aは、起立時に入力軸20から出力軸30へ第3速(第n+1速)に対応する駆動ギア243及び被駆動ギア343を通る加速する向きの動力を伝達する。一方、第3速加速用ポール35aは、伏倒時に動力を伝達しない。
第3速減速用ポール36aは、起立時に入力軸20から出力軸30へ第3速(第n+1速)に対応する駆動ギア243及び被駆動ギア343を通る減速する向きの動力を伝達する。一方、第3速減速用ポール36aは、伏倒時に動力を伝達しない。
シフトカム50は、ドグリング37a〜37cの動作を制御する。シフトカム50は、円筒状である。シフトカム50には、ドグリング37a〜37cを移動させるためのカム溝52a〜52cが設けられている。シフトカム50は、シフトアップ時及びシフトダウン時に回転する。シフトカム50は、シフトアップ時の回転方向とシフトダウン時の回転方向とが反対になるように回転する。シフトカム50は、シフトアップ時及びシフトダウン時に回転することによって、ドグリング37a〜37cと被駆動ギア341〜346のドグ係合により選択された動力の伝達の経路を有効にする。なお、カム溝52a〜52cに受け入れられるシフトフォーク53a〜53cについては後述する。
また、シフトカム50は、第n速加速用ポールと、第n速減速用ポールと、第n+1速加速用ポールと、第n+1速減速用ポールと、を伏倒又は起立させる。第n速加速用ポールと、第n速減速用ポールと、第n+1速加速用ポールと、第n+1速減速用ポールとは、シフトカム50の回転に伴って伏倒又は起立する。シフトカム50は、例えばシフトアップ時及びシフトダウン時に、出力軸30の内部に設けられた図示しないカム部材を移動させることにより、ポールを伏倒又は起立させる。また、シフトカム50が、例えば出力軸30の内部に設けられた図示しないカム部材を回転させることにより、ポールを伏倒又は起立させる構成も採用可能である。
例えば、シフトカム50の回転に伴って、第2速加速用ポール35cと、第2速減速用ポール36cと、第3速加速用ポール35aと、第3速減速用ポール36aと、が伏倒又は起立する。これによって、第2速と第3速との間で変速段の切替えが行われる。
本実施形態における多段変速機13は、シフトカム50の回転に伴いドグリング37a〜37cを移動させると共に加速用ポール35a〜35c及び減速用ポール36a〜36cの起立及び伏倒状態を制御する。これによって、変速段の切替え時に、第n速に対応する第1ドグD1及び第2ドグD2がドグ係合する期間と、第n+1速に対応する第1ドグD1及び第2ドグD2がドグ係合する期間とが重なりを有することが可能である。このため、多段変速機13では、出力軸30への動力伝達が、第n速に対応する駆動ギア及び被駆動ギアを介して行われる状態から、当該動力伝達が切断されることなく、第n+1速に対応する駆動ギア及び被駆動ギアを介して行われる状態へ切替え可能である。また、出力軸30への動力伝達が、第n+1速に対応する駆動ギア及び被駆動ギアを介して行われる状態から、当該動力伝達が切断されることなく、第n速に対応する駆動ギア及び被駆動ギアを介して行われる状態へ切替え可能である。
鞍乗型車両1には、車輪5も備えられている。多段変速機13の入力軸20から出力軸30に伝達された動力は、ドライブスプロケット9とドライブチェーン10と後輪駆動用スプロケット5aとを介して、車輪5に伝達される。これにより、車輪5が駆動され、鞍乗型車両1が走行する。
シフトカム角度検出器55は、シフトカム50の回転角であるシフトカム角度を検出する。また、シフトカム角度検出器55は、変速段設定機構139により動力伝達が有効に設定された変速段を検出する。シフトカム角度検出器55は、変速段及びシフトカム角度を表す信号を制御装置8に供給する。
鞍乗型車両1において、エンジン11で生じる動力は、通常、動力軸90、クラッチ12、多段変速機13の入力軸20、駆動ギア241〜246、被駆動ギア341〜346、これら被駆動ギア341〜346に設けられた第1ドグD1、ドグリング37a〜37cに設けられた第2ドグD2、出力軸30、ドライブチェーン10、そして、車輪5へと順に伝達される。以降、各部品の位置を、この動力の伝達の流れの向きを基準として、上流側又は下流側と称する場合もある。
制御装置8は、エンジン11を制御する。制御装置8は、詳細には、ECU(Engine Control Unit)である。制御装置8は、スロットルバルブ105の開度、燃料噴射装置106における燃料の供給量、及び、点火プラグ107における点火のタイミングの少なくともいずれかを制御することにより、エンジン11の動力の減少及び増加を制御する。制御装置8は、例えば、エンジン11としての燃焼サイクルで、点火プラグ107による点火のタイミングを遅らせることによって、エンジン11の動力を減少させる。なお、エンジンの動力の減少及び増加の制御は、特に限定されず、上述した例に限定されない。例えば、エンジンが多気筒エンジンである場合に、気筒ごとに制御が変更されてもよい。
制御装置8は、多段変速機13に対するシフト操作に基づいて、イナーシャ相ショックを低減するための処理を実行する。また、制御装置8は、多段変速機13に対するシフト操作に基づいて、変速段の切替え前に動力を伝達しているギアの第1ドグD1及び第2ドグD2の係合解除を補助するための処理を実行する。
詳細には、制御装置8は、鞍乗型車両の加速/減速の状態、及びシフト操作の種類に応じて、エンジン11の動力を減少する処理、及び、エンジン11の動力を増加する処理を実行する。
例えば、制御装置8は、鞍乗型車両1の減速中にクラッチ12が切られることなく多段変速機13のシフト切替え操作が行われているときに、下記(i)、(ii)を行うように、エンジン11の動力を制御する。より詳細には、制御装置8は、足の操作による荷重がシフトペダル荷重検出器730で検出されてから、変速先の変速段に対応する駆動ギア241〜246及び被駆動ギア341〜346を介して動力が多段変速機13の入力軸20から出力軸30へ伝達されるまでの間に、下記(i)、(ii)を行うように、エンジン11の動力を制御する。
(i)エンジン11の吸気量を増加させる増加処理、並びに、吸気量の増加に伴うエンジン11の動力の増加を抑えるようなエンジン11の点火遅角を開始する(時刻t11)。
(ii)エンジン11の吸気量を増加させる増加処理を行っている時に、エンジン11の動力を増加させるよう、エンジン11の点火遅角及び/若しくは燃料減量を終了する、又は点火遅角及び/若しくは燃料減量を低減する処理を開始する(時刻t13)。
上記(i)におけるエンジン11の吸気量を増加させる増加処理を吸気量増加処理とも称する。(i)では、エンジン11の吸気量を増加させる増加処理、並びに、エンジン11の点火遅角の処理が開始される。エンジン11の点火遅角は、吸気量の増加に伴うエンジン11の動力の増加を抑えるように実施される。単に吸気量が増加するとエンジン11の動力が増加する。しかし、エンジン11の動力の増加は、エンジン11の点火遅角によって抑えられる。
上記(ii)において、エンジン11の点火遅角が終了すると、吸気量増加に起因するエンジン11の動力の増加が抑えられなくなる。この結果、エンジン11の動力が増加する。
足の操作による荷重の検出に基づいて(i)のエンジン11の吸気量の増加を行うことにより、時間が掛かるエンジン11の吸気量の増加を早期に開始することができる。
上述したように吸気量増加処理では、エンジン11の吸気量は増加するが、点火遅角によってエンジン11の動力の増加は抑えられる。このため、足によるシフトペダル501の操作による荷重が運転者によるシフト操作を意図しない場合であっても、エンジン11の動力が変動してしまうことが抑えられる。つまり、運転者がシフト操作を意図しない場合のエンジン11の動力の変化が抑えられる。また、例えば、足によるシフトペダル501の操作が緩慢に行われた場合でも、エンジン11の動力の早期の変化が抑えられる。
このため、足で操作するシフトペダル501の操作荷重で、早期にエンジン11の吸気量を増加して円滑な変速段の変更のための動力増大に対応することを可能としつつ、シフト操作が意図されない場合であっても、エンジン11の動力の変化を抑えることができる。従って、足で操作するシフトペダル501を有する鞍乗型車両1において、クラッチ12の操作無しでより円滑な変速段の変更を行うことができる。
詳細には、制御装置8は、鞍乗型車両1の走行中にエンジン11から入力軸20への動力伝達が切断されることなく多段変速機13の第n+1速から第n速へのシフトダウン操作が行われた場合、エンジン11の動力を増加する。具体的には、制御装置8は、鞍乗型車両1の減速中に、多段変速機13がシフトダウン(パワーオフダウンシフト)する場合にエンジン11の動力を増加する。これにより、イナーシャ相ショックが低減される。
また、制御装置は、鞍乗型車両1の減速中にエンジン11から入力軸20への動力伝達が切断されることなく多段変速機13の第n速段から第n+1速段へのシフトアップ操作が行われた場合、エンジン11の動力を増加する。具体的には、制御装置8は、鞍乗型車両1の減速中に、多段変速機13がシフトアップ(パワーオフアップシフト)する場合にエンジン11の動力を増加する。
図2は、図1に示す鞍乗型車両1の側面図である。
図1及び図2に示す鞍乗型車両1は、自動二輪車である。鞍乗型車両1は、リーン姿勢で旋回可能に構成されている。鞍乗型車両1は、エンジンユニット6を備えている。エンジン11と、多段変速機13とは、エンジンユニット6に含まれている。エンジン11の動力は、制御装置8によって制御される。また、鞍乗型車両1は、シート2と、ハンドル3と、車輪4,5と、クラッチレバー7aと、アクセル操作子7bと、シフトペダル501とを備えている。クラッチレバー7a及びアクセル操作子7bは、運転者の手によって操作されるようにハンドル3に設けられる。シフトペダル501は、運転者の足によって操作されるように設けられている。シフトペダル501に対する運転者の操作が、シフト操作として、多段変速機13に入力される。
エンジン11から出力された動力は、多段変速機13へ伝達される。多段変速機13に伝達された動力は、ドライブチェーン10と後輪駆動用スプロケット5aを介して、車輪5に伝達される。動力は、2つの車輪4,5のうち後の車輪5に伝達される。
図3は、図1に示す多段変速機13の拡大図である。図3では、出力軸30及び出力軸30に設けられた部材の断面が示されている。
図3を参照して、多段変速機13の詳細を説明する。
入力軸20は、エンジン11の動力軸90からの動力が入力されるように構成されている。入力軸20には、クラッチ12が接続状態である場合に、動力軸90の動力が入力される。
入力軸20には、複数の駆動ギア241〜246が設けられている。複数の駆動ギア241〜246は、図3における入力軸20の右端部から、第1速駆動ギア241、第3速駆動ギア243、第5速駆動ギア245、第6速駆動ギア246、第4速駆動ギア244、第2速駆動ギア242の順に並んでいる。また、出力軸30には、複数の被駆動ギア341〜346が設けられている。複数の被駆動ギア341〜346は、図1における出力軸30の右端部から、第1速被駆動ギア341、第3速被駆動ギア343、第5速被駆動ギア345、第6速被駆動ギア346、第4速被駆動ギア344、第2速被駆動ギア342の順に並んでいる。駆動ギア241〜246と被駆動ギア341〜346とが、変速段の組ごとに、入力軸20及び出力軸30の軸方向における同じ位置において、互いに噛み合うように設けられている。
変速段設定機構139は、いずれか1つの変速段の対応する駆動ギア241〜246及び被駆動ギア341〜346を介した、入力軸20から出力軸30への動力伝達を有効に設定する。
変速段設定機構139は、上述したように、ラチェット機構400、ドグ係合機構138、及びシフトカム50を有する。また、変速段設定機構139は、シフトフォーク53a〜53c及びフォークガイド軸60を有する。
シフトカム50の外周面には、カム溝52a〜52cが形成されている。カム溝52a〜52cには、それぞれシフトフォーク53a〜53cの一部が受け入れられる。シフトフォーク53a〜53cの一部は、シフトカム50の回転に伴ってシフトフォーク53a〜53cがカム溝52a〜52cに案内されて軸方向に移動するように、カム溝52a〜52cに受け入れられる。
シフトペダル501の操作によってシフトカム50が回転すると、シフトフォーク53a〜53cが、カム溝52a〜52cに応じて軸方向に移動する。これにより、ドグリング37a〜37cが、シフトフォーク53a〜53cと共に軸方向に移動する。ドグリング37a〜37cが移動して被駆動ギア341〜346のいずれかと係合することにより、動力の伝達の経路が選択される。このとき、変速段設定機構139で選択されたドグリング37a〜37cに設けられた第2ドグD2と、被駆動ギア341〜346の第1ドグD1とが、周方向で当たることによってドグ係合する。
図4(A)は、加速用ポール、減速用ポール、ドグリング、及び被駆動ギアを軸方向に見た模式図であり、(B)は、被駆動ギア及びドグリングの一部を周方向に展開して示す部分断面図である。
図4には、1〜6速のうち一例として2速に対応する加速用ポール35c、減速用ポール36c、ドグリング37c、及び被駆動ギア342が示されている。図4に示す基本的な構造は、他の変速段についても同じである。
図4(A)では、動作を把握し易くするため、加速用ポール35c及び減速用ポール36cを周方向に並べて示している。
矢印Rは、鞍乗型車両1の走行時に被駆動ギア342が回転する回転方向を示す。矢印Rは、エンジン11(図1参照)から出力された動力が被駆動ギア342から出力軸30に伝達される向きを示す。即ち、矢印Rは、加速方向を示す。
第1ドグD1は、被駆動ギア342に、周方向に間隔を空けて配置された複数の突部である。周方向は、被駆動ギア342及びドグリング37cの回転方向Rに沿った方向である。第1ドグD1は、被駆動ギア342から、出力軸30の軸方向に突出している。図4には、2つの第1ドグD1が示されている。第1ドグD1には、見やすさのためハッチングが付されている。第2ドグD2は、ドグリング37cに、周方向に間隔を空けて配置されている。詳細には、周方向に並んだ第2ドグD2の間隔には、穴が設けられている。即ち、第2ドグD2は、周方向においてドグリング37cに設けられた穴を画定している。
第1ドグD1は、図4(B)に示すように周方向に並んだ第2ドグD2の間隔(穴)に入り込むことによって、第1ドグD1に周方向で当たっている。即ち、第1ドグD1と第2ドグD2とがドグ係合している。これによって、被駆動ギア342からドグリング37cに、加速方向Rの動力が伝達される。即ち、被駆動ギア342とドグリング37cがドグ係合している。
加速用ポール35cが径方向外側に起立しているとき、ドグリング37cから、加速用ポール35cを介して出力軸30に加速方向Rの動力が伝達される。この一方、加速用ポール35cが伏倒しているとき、ドグリング37cから出力軸30への加速方向Rの動力は伝達されない。
鞍乗型車両1の減速中には、エンジン11から負のトルクが出力される。言い換えると、エンジン11は、車輪5から多段変速機13を介してエンジン11に回転方向のトルクが伝達される。エンジン11の動力軸90は車輪5から伝達されたトルクに抗するように回転する。いいわゆるエンジンブレーキが動作する。
鞍乗型車両1の走行中に、エンジン11から出力されるトルクが負になる場合、被駆動ギア342からドグリング37cに、加速方向Rとは反対方向(減速方向)の動力が伝達される。
この場合、減速用ポール36cが起立しているとき、ドグリング37cから減速用ポール36cを介して出力軸30に、加速方向Rとは反対方向の動力が伝達される。
このことを車輪5(図1参照)の視点で言い替えると、エンジン11から出力されるトルクが負になる場合、出力軸30が車輪5(図1参照)によって駆動される。減速用ポール36cが起立しているとき、出力軸30から減速用ポール36cを介してドグリング37cに加速方向Rの動力が伝達される。
減速用ポール36cが伏倒しているとき、ドグリング37cから出力軸30への減速方向の動力は伝達されない。
ラチェット機構400は、ポール35c,36cの起立及び伏倒を利用して、第2速に対応する被駆動ギア342を介して出力軸30を通る加速方向又は減速方向の動力の伝達を機械的に且つ選択的に有効に設定する。
上述したように、ポール35c,36cは、シフトカム50の回転に応じて起立又は伏倒する。従って、ラチェット機構400は、シフトカム50の回転に応じて、第2速に対応する被駆動ギア342を介して出力軸30を通る動力の伝達を機械的に且つ選択的に有効に設定する。
ラチェット機構400は、第2速以外の変速段についても、第2速の場合と同じく動力の伝達を機械的に且つ選択的に有効に設定する。
ラチェット機構400及びドグ係合機構138を有する変速段設定機構139は、ドグ係合又は係合解除、並びに、加速用ポール35a〜35c及び減速用ポール36a〜36cによる加速方向又は減速方向の動力伝達の制御によって、出力軸30を通る動力の伝達を機械的に且つ選択的に有効に設定する。
図5は、減速中のシフトダウンにおける、ドグ及びポールの動作を説明する図である。
図5のパート(a)〜(e)のそれぞれには、加速用ポール、減速用ポール、ドグリング、及び被駆動ギアを軸方向に見た模式図が示されている。パート(a)〜(e)には、シフトカム50の回転に伴う動作が順に示されている。
図5を参照して、鞍乗型車両の減速時で多段変速機が第3速から第2速にシフトダウン(パワーオフダウンシフト)する場合のポールとドグの動作を説明する。図5のパート(a)〜(e)のそれぞれには、第2速と第3速に関する動作を対比するため、下半分に第2速に関する部材が示され、上半分に第3速に関する部材が示されている。また、下半分と上半分とで、被駆動ギア342,343は同じ大きさに合わせて示されている。
図5のパート(a)は、シフトダウンの前の初期状態を示している。鞍乗型車両1の減速時に、第3速に対応する第3速被駆動ギア343から出力軸30への負の動力の伝達が有効となっている。鞍乗型車両1の減速時、エンジン11が車輪5からの駆動力を受ける。即ち、鞍乗型車両1の減速時、エンジン11から車輪5に負の動力が伝達される。つまり、第3速被駆動ギア343から出力軸30へ負の動力が伝達される。負の動力は、被駆動ギア343の回転方向Rとは逆向きの動力である。
なお、図5のパート(a)に示す現象を車輪5の観点から言い換えると、鞍乗型車両1の減速時、車輪5からエンジン11に回転方向Rの動力が伝達されている。即ち、車輪5からの動力でエンジン11が駆動されている。但し、本実施形態では、図5のパート(a)に示す現象をエンジン11の観点で、負の動力(回転方向Rとは反対方向の動力)として説明する。
第3速被駆動ギア343の第1ドグD1は、ドグリング37aの第2ドグD2とドグ係合している。第3速被駆動ギア343の負の動力は、第1ドグD1から、ドグリング37aの第2ドグD2を介してドグリング37aへ伝達される。この負の動力は、ドグリング37aから、第3速減速用ポール36aを介して出力軸30へ伝達される。
一方、第2速に対応する第2速被駆動ギア342の第1ドグD1は、ドグリング37cの第2ドグD2とドグ係合していない。このため、第2速被駆動ギア342の動力は、出力軸30へ伝達されない。
次に、運転者の操作に応じて、シフトカム50(図3参照)が回転すると、図5のパート(b)に示すように、加速用ポール35a,35cが伏倒する。
次に、運転者の操作に応じて、シフトカム50(図3参照)がさらに回転すると、図5のパート(c)に示すように、第2速に対応する第2速被駆動ギア342の第1ドグD1が、ドグリング37cの第2ドグD2とドグ係合する。この結果、第2速被駆動ギア342の負の動力が、第2速被駆動ギア342の第1ドグD1から、ドグリング37cの第2ドグD2介してドグリング37cへ伝達される。負の動力は、ドグリング37cから第2速減速用ポール36cを介して出力軸30へ伝達される。これによって、変速先の変速段(第2速)に対応する被駆動ギア342を介した入力軸20から出力軸30への動力の伝達が開始される。
第2速被駆動ギア342の第1ドグD1が、ドグリング37cの第2ドグD2とドグ係合する結果として、第2速及び第3速の双方でドグ係合の状態が生じる。加速用ポール35a,35cが伏倒しているので、出力軸30がドグリング37aと異なる回転速度で回転することが許容される。
加速用ポール35a,35cが伏倒することによって、多段変速機13で動力伝達が切断されることなく、且つ、エンジン11(図1参照)から出力される動力を減少させることなく、第3速から第2速にシフトダウンが行われる。
次に、運転者の操作に応じて、シフトカム50(図3参照)がさらに回転すると、図5のパート(d)に示すように、第3速被駆動ギア343の第1ドグD1と、ドグリング37aの第2ドグD2とのドグ係合が解除される。このため、第3速被駆動ギア343の動力は、ドグリング37aへ伝達されない。
次に、運転者の操作に応じて、シフトカム50(図3参照)がさらに回転すると、図5のパート(e)に示すように、加速用ポール35a,35cが起立する。
このようにして、多段変速機13で動力伝達が切断されることなく、且つ、エンジン11(図1参照)から出力される動力を減少させることなく、変速段が変更される。即ち、シームレスシフトが行われる。
なお、鞍乗型車両1の加速中に多段変速機13が第2速から第3速にシフトアップ(パワーオンアップシフト)する場合、上述した動作とは逆の動作が行われる。第3速に関する第1ドグD1及び第2ドグD2がドグ係合した後、第2速に関する第1ドグD1及び第2ドグD2のドグ係合が解除される。また、シフトアップでは、加速用ポール35a,35cの代わりに減速用ポール36a,36cが伏倒及び起立する。
上述した動作は、第2速及び第3速以外の変速段についても同じである。即ち、上述した動作は、第n速及び第n+1速において共通である。
図6は、減速中のシフトアップにおける、ドグ及びポールの動作を説明する図である。
図6のパート(a’)を含むパート(a)〜(e)のそれぞれには、加速用ポール、減速用ポール、ドグリング、及び被駆動ギアを軸方向に見た模式図が示されている。パート(a)〜(e)には、シフトカム50の回転に伴う動作が順に示されている。
図6を参照して、鞍乗型車両の減速時で多段変速機が第2速から第3速にシフトアップ(パワーオフアップシフト)する場合のポールとドグの動作を説明する。
図6のパート(a)は、シフトアップの前の初期状態を示している。鞍乗型車両1の減速時に、第2速に対応する第2速被駆動ギア342から出力軸30への負の動力の伝達が有効となっている。鞍乗型車両1の減速時、エンジン11から車輪5に負の動力が伝達される。つまり、第2速被駆動ギア342から出力軸30へ負の動力が伝達される。
第2速被駆動ギア342の第1ドグD1は、ドグリング37cの第2ドグD2とドグ係合している。第2速被駆動ギア342の負の動力は、第1ドグD1から、ドグリング37cの第2ドグD2を介してドグリング37cへ伝達される。この負の動力は、ドグリング37cから、第2速減速用ポール36cを介して出力軸30へ伝達される。
一方、第3速に対応する第3速被駆動ギア343の第1ドグD1は、ドグリング37aの第2ドグD2とドグ係合していない。このため、第3速被駆動ギア343の動力は、出力軸30へ伝達されない。
次に、多段変速機13のシフト切替え操作が行われると、制御装置8が、エンジン11の動力即ちエンジン11から出力される動力を増加させる。制御装置8が、エンジン11の動力を増加させる処理の詳細は、後述する。
エンジン11の動力が増加することによって、図6のパート(a’)に示すように、第2速減速用ポール36cが負の動力から解放される。エンジン11の動力が増加することによって第2速減速用ポール36cが負の動力から解放されるので、減速用ポール36cが伏倒しやすくなる。
次に、運転者の操作に応じて、シフトカム50(図3参照)が回転すると、図6のパート(b)に示すように、減速用ポール36a,36cが伏倒する。これによって、第n速段(第2速)における、係合が解除される。なお、減速用ポール36a,36cが伏倒した後、エンジン11の動力の増加は終了する。
次に、運転者の操作に応じて、シフトカム50(図3参照)がさらに回転すると、図6のパート(c)に示すように、第3速に対応する第3速被駆動ギア343の第1ドグD1が、ドグリング37aの第2ドグD2とドグ係合する。この結果、第3速被駆動ギア343の負の動力が、第3速被駆動ギア343の第1ドグD1から、ドグリング37aの第2ドグD2を介して、ドグリング37aへ伝達される。
次に、運転者の操作に応じて、シフトカム50(図3参照)がさらに回転すると、図6のパート(d)に示すように、第2速被駆動ギア342の第1ドグD1(図6のパート(c))と、ドグリング37cの第2ドグD2とのドグ係合が解除される。このため、第2速被駆動ギア342の動力は、ドグリング37cへ伝達されない。
次に、運転者の操作に応じて、シフトカム50(図3参照)がさらに回転すると、図6のパート(e)に示すように、減速用ポール36a,36cが起立する。
第3速被駆動ギア343の負の動力は、第1ドグD1から、ドグリング37aの第2ドグD2を介してドグリング37aへ伝達される。この負の動力は、ドグリング37aから、第3速減速用ポール36aを介して出力軸30へ伝達される。
これによって、変速先の変速段(第3速)に対応する被駆動ギア343を介した入力軸20から出力軸30への負の動力の伝達が開始される。
上述した動作は、第2速及び第3速以外の変速段についても同じである。即ち、上述した動作は、第n速及び第n+1速において共通である。
本実施形態の制御装置8は、減速時のシフトアップ及びシフトダウンが行われる場合、エンジン11の動力を増加させる。そして、制御装置8は、エンジン11の動力の増加の後、制御装置8は、エンジン11の動力の増加を終了させる。
図7は、図1に示す制御装置8の構成を示すブロック図である。
制御装置8は、プログラムを実行するプロセッサ8a、並びにプログラム及びデータを記憶する記憶装置8bを備えている。制御装置8では、記憶装置8bに記憶されたプログラムをプロセッサ8aが実行することにより、エンジン11を制御する。
制御装置8には、シフトカム角度検出器55、アクセル検出器7c、クラッチ検出器12a、スロットル開度検出器191、燃料噴射装置106、スロットルモータ108、点火プラグ107、及び動力軸速度検出器192が接続されている。アクセル検出器7cは、アクセル操作子7b(図2参照)の操作量を検出する。クラッチ検出器12aは、クラッチ12(図1参照)の操作量を検出する。点火プラグ107は図示しない点火装置を介して制御装置8と接続されている。また、制御装置8には、シフトペダル荷重検出器730、入力軸速度検出器27、及び出力軸速度検出器28が接続されている。
制御装置8は、スロットルモータ108、燃料噴射装置106、及び点火プラグ107を制御することにより、エンジン11の動力を制御する。
図8は、図7に示す制御装置8の機能ブロックを示すブロック図である。
制御装置8は、変速制御部801及びエンジン制御部802を備えている。変速制御部801及びエンジン制御部802のそれぞれは、図7に示す記憶装置8bに記憶されたプログラムをプロセッサ8aが実行することにより実現される。
変速制御部801には、シフト荷重、シフトカム位相、動力軸回転速度、入力軸回転速度、出力軸回転速度、車両速度、クラッチ操作量、及びスロットル開度が入力される。変速制御部801は、多段変速機13の状態に応じて、エンジン11の動力の大きさを変更する。具体的には、変速制御部801は、エンジントルク補正値を出力する。
エンジン制御部802には、エンジントルク目標値が入力される。エンジントルク目標値は、基本エンジントルク目標値がエンジントルク補正値で補正された値である。基本エンジントルク目標値は、車輪5の回転速度と、アクセル検出器7cで検出されたアクセル操作子7bの操作量に基づく値である。エンジン制御部802は、エンジントルク目標値に応じて、エンジン11の動力の大きさを制御する。具体的には、エンジン制御部802は、スロットル開度目標値、点火角度目標値、及び燃料供給量を出力する。スロットル開度目標値はスロットルモータ108の動作に対する目標値である。点火角度目標値は、点火プラグ107についての目標値である。燃料供給量は、燃料噴射装置106についての目標値である。
図9は、鞍乗型車両1の減速中でのシフトダウン時における鞍乗型車両1の動作を概略的に示すタイムチャートである。
図9には、動力軸回転速度、多段変速機13の入力軸トルク、エンジンの出力トルク、点火角度、スロットル開度、シフトペダル501のシフト荷重、シフトカム角度が示されている。図9には、多段変速機13の第n+1速から第n速へのシフトダウン切替え操作が行われる場合の挙動が示されている。
動力軸回転速度は、エンジン11の動力軸90の回転速度である。動力軸回転速度は、例えば動力軸速度検出器192で検出される回転速度である。鞍乗型車両1は減速中であるため、動力の伝達経路が切り替わる一部の期間を除いて、エンジン11の動力軸90の回転速度は時間経過に伴い減少している。
入力軸トルクは、多段変速機13の入力軸が受けるトルクである。鞍乗型車両1の減速中、エンジン11が車輪5からの駆動力を受ける。即ち、鞍乗型車両1の減速中、エンジン11から車輪5に負の動力が伝達される。図9に示されている入力軸トルクは、すべて負の値である。
出力トルクは、エンジン11の動力軸90から出力されるトルクである。トルクは実質的に動力を表している。図9には、制御装置8における出力トルクの目標値と、実際にエンジン11の動力軸90から出力されるトルクが示されている。点火の時期の変更は、点火が行なわれるエンジン11の燃焼行程で有効になる。このため、目標値の変化に応じて点火プラグ107の点火時期が変更される場合、実際の出力トルクの変化は、目標値の変化に対し遅れを有する。
点火角度は、エンジン11の点火プラグ107の点火時期を表す。スロットル開度は、スロットルバルブ105の開度を表す。
シフト荷重は、シフトペダル501の運転者の足の操作によって受ける荷重を表している。シフトカム角度は、シフトカム50の回転角度を示している。シフトカム角度として、シフトカム50の60度周期内での位相が示されている。
図9には、鞍乗型車両1の減速中に、多段変速機13がシフトダウンする場合の各状態が示されている。より詳細には、図9には、鞍乗型車両1の減速中に、多段変速機13が第3速から第2速へシフトダウン(パワーオフダウンシフト)する場合の状態が示されている。図3及び図6も参照して、変速段の切替え及び動力軸90の回転速度の制御について説明する。
変速段の変更前(時刻t11より前)、多段変速機13のドグリング37a〜37c及びポール35a〜35c,36a〜36cは、図5のパート(a)に示す初期状態にある。即ち、第3速に対応する第3速被駆動ギア343から出力軸30への負の動力の伝達が有効となっている。
運転者による変速段切替えの操作が開始されると、足の操作による荷重がシフトペダル荷重検出器730で検出される。
時刻t11で、足の操作による荷重が検出される。この時、シフトカム50の回転は開始していない。従って、時刻t11で、ドグリング37a〜37bの移動、又はポール35a〜35c,36a〜36cの状態の変化は開始しない。
つまり、制御装置8は、シフトペダル501が足の操作による荷重を受け、且つ、シフトカム50のカム部が変速段設定機構に前記動力の機械的な係合状態の変更を開始させる程度に回転する時点又はより前で、前記エンジンの吸気量を増加させる増加処理、並びに、吸気量の増加に伴うエンジン11の動力の増加を抑えるようなエンジンの点火遅角及び/若しくは燃料減量を開始する。
多段変速機13のパワーオフダウンシフトにおいて、本実施形態の制御装置8は、エンジン11の動力を増加させる(時刻t13)。
制御装置8は、動力の増加の前処理として、スロットル開度を増加すると共に点火角度を遅延させる処理を行う。具体的には、制御装置8は、運転者の足の操作による荷重がシフトペダル荷重検出器730で検出されると、下記(i)の動作を開始する。
(i)エンジン11の吸気量を増加させる増加処理、並びに、吸気量の増加に伴うエンジン11の動力の増加を抑えるようなエンジン11の点火遅角。
より詳細には、制御装置8は、スロットルバルブ105を開くことによってエンジン11の吸気量を増加させる。単に吸気量のみが増加すると、エンジン11の動力が増大する。制御装置8は、吸気量の増加によるエンジン11の動力の増大を抑えるようにエンジン11の点火時期を遅らせる。より詳細には、制御装置8は、吸気量の増加によるエンジン11の動力の増大を補償するようにエンジン11の点火時期を遅らせる。従って、(i)の動作により、エンジン11の出力は実質的に変動しない。
運転者の足による操作に応じてシフトカム50が回転を開始する。シフトカム角度が時間の経過に伴い徐々に増大する。シフトカム50が回転を開始する時刻t12よりも後で、図5のパート(b)に示すように、加速用ポール35a,35cが伏倒する。
時刻t14で、図5のパート(c)に示すように、第2速に対応する第2速被駆動ギア342の第1ドグD1が、ドグリング37cの第2ドグD2とドグ係合する。この結果、第2速被駆動ギア342の負の動力が、第2速被駆動ギア342の第1ドグD1から、ドグリング37cの第2ドグD2、及び第2速減速用ポール36cを介して出力軸30へ伝達される。つまり、変速先の第2速に対応する駆動ギア242及び被駆動ギア341を介して負の動力が入力軸20から出力軸30へ伝達される。
時刻t14におけるドグ係合より前の時点で、第3速被駆動ギア343は、第2速被駆動ギア342より大きな回転速度で回転している。即ち、ドグ係合より前の時点で、第2速被駆動ギア342は、第3速被駆動ギア343と係合したドグリング37aより小さな回転速度で回転している。つまり、ドグ係合より前の時点で、第2速被駆動ギア342は、ドグリング37a、出力軸30、及びドグリング37cより小さな回転速度で回転している。
ドグリング37cより小さな回転速度で回転している第2速被駆動ギア342が、時刻t14でドグリング37cと係合する。
第2速被駆動ギア342及びこの第2速被駆動ギア342と同期して運動する部材は、慣性(イナーシャ)を有している。このため、時刻t14で、ドグリング37cが第2速被駆動ギア342から回転速度差に応じたイナーシャ力を受ける。(この反対に、第2速被駆動ギア342及び入力軸20に、ドグリング37c及び出力軸30から負の動力が伝達される。従って、図9の時刻t14に示すように、入力軸トルクが減少する。また、動力軸回転速度が増加する。)
ドグリング37cが第2速被駆動ギア342から受けるイナーシャ力は、出力軸30を介して車輪5に伝達される。イナーシャ力は、出力軸30及び車輪5の回転速度を減少させる力である。この結果、図には示さないが、車輪5の回転速度が低下する。
車輪5の動力及び速度を低下させるためのエネルギーは、第2速被駆動ギア342、及びこの第2速被駆動ギア342と連動して運動する部材の慣性(イナーシャ)に起因している。ここで、第3速被駆動ギア342と連動して運動する部材は、例えば、第2速駆動ギア242、入力軸20、クラッチ12、動力軸90、及びピストン103である。時刻t14以降、動力軸回転速度の増大に伴い、出力軸30から出力される動力の急峻な減少が、イナーシャ相ショックとなる。
第2速被駆動ギア342と連動して運動する部材が有する慣性エネルギーが消費されイナーシャ力が0になると、入力軸トルクは変速段の切替え前の値に戻る。また、動力軸回転速度の上昇は停止する。また、車輪回転速度の一時的な減少も終了する。
ここで、イナーシャ相ショックは、エンジン11からの動力伝達経路における多段変速機13よりも上流にある動力軸90の回転速度の変化の観点から次のように説明される。
多段変速機13における動力伝達が変速前の変速段に対応するギアを介して行われる状態における動力軸90の回転速度と、変速後の変速段に対応するギアを介して行われる状態における動力軸90の回転速度は異なる。動力軸90の回転速度は、変速前の変速段に対応する現段動力軸回転速度から、変速後の変速段に対応する次段動力軸回転速度まで変化する。例えば、変速段が第3速から第2速に切り替えられると、動力軸90の回転速度は、第3速に対応するギア比に応じた回転速度から、第3速に対応するギア比に応じた回転速度まで増大する。
動力軸90及びこの動力軸90と連動して運動する部材は、慣性(イナーシャ)を有している。これら慣性を有する部材は、慣性によるエネルギーを放出しながら、第3速に対応する回転速度から第2速に対応する回転速度まで徐々に増大する。慣性によるエネルギーの一部が、イナーシャ力として出力軸30から出力される。出力軸30から出力されるエネルギーの一部が、車輪5の回転速度の一時的な減少として現れる。出力軸30から出力される動力の減少が、イナーシャ相ショックとなる。
動力軸90からのエネルギーの放出は、動力軸90の回転速度が、第2速に対応する次段動力軸回転速度に同期した時(時刻t16)に終了する。
変速段切替えの操作による変速後の変速段に対応するギアを介して動力が入力軸20から出力軸30へ伝達され始めた時(時刻t14)から、動力軸90の回転速度が次段動力軸回転速度に同期した時(時刻t16)までの期間をイナーシャ相とも称する。
本実施形態では、制御装置8がエンジン11の動力を増加することによって、イナーシャ相ショックが抑えられる。
制御装置8は、シフトダウン切替え操作が行われる場合、エンジン11の動力を増大させる。詳細には、制御装置8は、鞍乗型車両1の減速中にエンジン11から入力軸20への動力伝達が切断されることなく多段変速機13の第3速から第2速へのシフトダウン操作が行われた場合、エンジン11の動力を増大させる。より詳細には、制御装置8は、シフトカム50の回転開始(時刻t12)より後に、エンジン11の動力の減少を増大する処理を実行する。
具体的には、制御装置8は、上記(i)の動作によって、エンジン11の吸気量を増加させる増加処理を行っている時、下記(ii)の動作を開始する。
(ii)エンジン11の動力を増加させるよう、エンジン11の点火遅角を終了する。
詳細には、制御装置8は、時刻t13で、エンジン11の点火遅角を終了する。これによって、エンジン11の出力トルクが増加する。
点火遅角の終了によるエンジン11の動力の増大は、エンジン11に供給される吸気量の増大による動力の増大と比べて短時間で実施することができる。従って、多段変速機13における動力伝達の経路の変化に応じて、エンジン11の動力を増大することができる。
本実施形態の制御装置8は、動力伝達が切り替えられる時刻t14より前の時刻t13で、エンジン11の動力を増大する処理を開始する。
制御装置8は、時刻t13でエンジン11の動力の増大を開始した後、時刻t15で動力の増大を終了する。詳細には、制御装置8は、第2速に対応する駆動ギア242及び被駆動ギア342を介した動力の伝達が開始した後で、エンジン11の動力の増大を終了する処理を実行する。即ち、制御装置8は、下記(iii)の処理を行なうようにエンジンの動力を制御する。
(iii)エンジン11の吸気量を増加させる増加処理を行っている時に、動力の増加を終了させるよう、エンジン11の点火遅角を再開する(時刻t15)。
これによって、エンジン11の動力の増加が終了する。つまり、エンジンの動力が減少する。
またさらに、制御装置8は、下記(iv)の処理を行なうようにエンジンの動力を制御する。
(iv)エンジン11の動力の増加を終了させた後、エンジン11の吸気量を増加させる増加処理、並びに、エンジン11の点火遅角を終了する(時刻t15の後)。制御装置8は、吸気量の増加の停止に伴うエンジン11の動力の減少を抑えるように、エンジン11の点火遅角を終了する。
上記(iii)(iv)の処理によって、エンジン11の動力の増加を短時間で終了するとともに、エンジン11の動力の減少が抑えられるように吸気量の増加が終了する。

続いて、鞍乗型車両1の減速中のシフトアップにおけるエンジン11の動力の制御について説明する。
図10は、鞍乗型車両1の減速中でのシフトアップ時における鞍乗型車両1の動作を概略的に示すタイムチャートである。
図10には、多段変速機13の第n速から第n+1速へのシフトアップ切替え操作が行われる場合の動作が示されている。詳細には、図10には、鞍乗型車両1の減速中に、多段変速機13が第2速から第3速へシフトアップ(パワーオフアップシフト)する場合の各状態が示されている。
鞍乗型車両1の減速中にエンジン11から入力軸20への動力伝達が切断されることなく多段変速機13の第2速から第3速へのシフトアップ操作が行われる場合、制御装置8は、エンジン11の吸気量を増加させる増加処理を開始する(時刻t21)。また、制御装置8は、増加処理を行なっている時、下記(ii)の動作を開始する。
(ii)エンジン11の動力を増加させるよう、エンジン11の点火遅角を終了する。
制御装置8は、動力伝達が切り替えられる時刻t24より前の時刻t23で、エンジン11の動力を増加させる処理を開始する。
エンジン11の動力が増加することによって、図6のパート(b)に示すように、第2速減速用ポール36cが負の動力から解放されるので、減速用ポール36cが伏倒しやすくなる。即ち、第2速における係合が解除されやすくなる。
制御装置8は、エンジン11の動力を増加させる前に、エンジン11の吸気量を増加させる増加処理を開始する(時刻t21)。吸気量の増加処理では、スロットル開度を増加すると共に点火角度を遅延させる処理を行う。即ち、制御装置8は、時刻t21で、下記(i)の動作を開始する。
(i)エンジン11の吸気量を増加させる増加処理、並びに、吸気量の増加に伴うエンジン11の動力の増加を抑えるようなエンジン11の点火遅角。
制御装置8は、時刻t21でスロットル開度を増加するとともに点火角度を遅延させる。これによって、エンジン11の出力トルクが維持される。
また、制御装置8は、増加処理を行なっている時、下記(ii)の動作を開始する。
(ii)エンジン11の動力を増加させるよう、エンジン11の点火遅角を終了する。 制御装置8は、時刻t23でエンジン11の動力の増加を開始する時、エンジンの点火遅角を終了する。これによって、エンジン11の動力の増大が開始する。
また、制御装置8は、時刻t23でエンジン11の動力を増加させた後、時刻t24で動力の増加を終了させる。即ち、制御装置8は、下記(iii)の処理を行なうようにエンジンの動力を制御する。
(iii)エンジン11の吸気量を増加させる増加処理を行っている時に、動力の増加を終了させるよう、エンジン11の点火遅角を再開する(時刻t24)。
これによって、エンジン11の動力の増加が終了する。つまり、エンジンの動力が減少する。
またさらに、制御装置8は、下記(iv)の処理を行なうようにエンジンの動力を制御する。
(iv)エンジン11の動力の増加を終了させた後、時刻t26でエンジン11の吸気量を増加させる増加処理、並びに、エンジン11の点火遅角を終了する(時刻t25)。制御装置8は、吸気量の増加の停止に伴うエンジン11の動力の減少を抑えるように、エンジン11の点火遅角を終了する。
図11は、制御装置8の変速制御の動作を説明するフローチャートである。
図11には、制御装置8の変速制御部801及びエンジン制御部802の処理が示されている。変速制御部801の処理及びエンジン制御部802の処理は、実質的に並行して実行される。また、エンジン制御部802は、変速制御部801が出力するトルク補正値をエンジン11の制御に反映させる。そこで、変速制御部801の処理及びエンジン制御部802の処理を、単に、制御装置8の処理として説明する。
変速制御において、制御装置8は、操作の検出を行う(S11)。
制御装置8は、運転者によって、多段変速機13の変速段の変更の操作が行われたか否かを検出する。制御装置8は、例えば、シフトペダル501への荷重を検出するシフトペダル荷重検出器730の検出結果に基づいて、変更の操作が行われたか否かを検出する。詳細には、制御装置8は、シフトペダル荷重検出器730で検出される荷重の大きさが所定の判定値を超えると、運転者の足の操作による荷重があると判定する。
例えば図9に示す時刻t11又は図10に示す時刻t21において、制御装置8は、運転者の足の操作による荷重があると判定する。
次に、制御装置8は、多段変速機13における動作種類の判別を行う(S12)。
制御装置8は、例えば、シフトペダル荷重検出器730で検出されたシフトペダル501への荷重の向きによって、シフトアップ又はシフトダウンを判別する。なお、制御装置8は、シフトカム角度検出器55で検出されたシフトカム角度に基づいて、シフトアップ又はシフトダウンを判別することも可能である。
また、制御装置8は、アクセル検出器7cで検出されたアクセル操作子7b(図2参照)の操作量、又は、スロットル開度検出器191で検出されたスロットルバルブ105の開度に基づいて、鞍乗型車両1が加速中か又は減速中かを判別する。
制御装置8は、ステップS12で、次の4つの動作種類を判別する。
(1)鞍乗型車両1の加速時でシフトアップ(パワーオンアップシフト)
(2)鞍乗型車両1の加速時でシフトダウン(パワーオンダウンシフト)
(3)鞍乗型車両1の減速時でシフトダウン(パワーオフダウンシフト)
(4)鞍乗型車両1の減速時でシフトアップ(パワーオフアップシフト)
また、制御装置8は、ステップS12で、クラッチ検出器12aでクラッチ12(図1参照)の操作が検出された場合、動作種類の判別を行わず、図11に示す変速制御を終了する。従って、以下で説明するステップS13以降の処理は、動力源11と入力軸20との間の動力伝達がクラッチ12によって切断されない場合に実施される。
次に、制御装置8は、前処理を行う(S13)。前処理は、所定の条件が成立する場合に、制御装置8がエンジン11の出力の増加に先だって行なう処理である。
制御装置8は、ステップS13の前処理において、所定の条件が成立する場合、エンジン11の吸気量を増加させる処理、並びに、吸気量の増加に伴うエンジン11の出力の増加を抑えるようなエンジン11の点火遅角を開始する処理を行う。
ステップS13の処理の詳細については後述する。
次に、制御装置8は、係合解除補助を行う(S14)。
上記(4)鞍乗型車両1の減速時にシフトアップする場合、又は、上記(2)鞍乗型車両1の加速時にシフトダウンする場合、多段変速機13では、変更前の現行の変速段に係る動力伝達を解除するため、エンジン11の出力を変化させることが求められる。制御装置8は、エンジン11の出力を変化させることによって、変更前の現行の変速段に係る動力伝達を解除する。ステップS14の処理によって、変更前の変速段の動力伝達を行なうポール35a〜35c,36a〜36c又はドグD1,D2の係合解除が容易になる。
例えば、上記(2)鞍乗型車両1の加速時で第n+1段から第n段にシフトダウンの場合、本実施形態の多段変速機13では、変更前の第n+1段に係る加速用ポール35a〜35cを伏倒させるため、エンジン11の出力を減少することが求められる。
また、上記(4)鞍乗型車両1の減速時で第n段から第n+1段にシフトアップの場合、本実施形態の多段変速機13では、変更前の第n段に係る減速用ポール36a〜36cを伏倒させるため、エンジン11の出力を増加することが求められる。
動作種類が、上記(2)鞍乗型車両1の加速時にシフトダウンする場合、又は、上記(4)鞍乗型車両1の減速時にシフトアップする場合、制御装置8は、このステップS14において、係合解除補助のためエンジン11の出力を変化させる。具体的には、動作種類が、上記(2)鞍乗型車両1の加速時にシフトダウンする場合、制御装置8は、エンジン11の出力を減少する。また、動作種類が、上記(4)鞍乗型車両1の減速時にシフトアップする場合、制御装置8は、エンジン11の出力を増加する。
このステップS14の処理によって、変更前の現行の変速段に係る動力伝達が解除可能となる。
なお、制御装置8は、現行の変速段に係る動力伝達が解除した後、このステップS14において、エンジン11の出力の変化を元に戻す。
また、本実施形態では、上記(2)鞍乗型車両1の加速時にシフトダウン、又は、上記(4)鞍乗型車両1の減速時にシフトアップする場合にステップS14において制御装置8はエンジン11の出力を変化させる。但し、多段変速機13がシームレス変速機ではない場合、上記(2)及び(4)に加え、例えば、上記(1)鞍乗型車両1の加速時でシフトアップ、又は、上記(3)鞍乗型車両1の減速時でシフトダウンの場合にも、制御装置8は、係合解除補助のためエンジン11の出力を変化させる。
ステップS14の係合解除補助の詳細については後述する。
次に、制御装置8は、動力制御開始の処理を行う(S15)。
制御装置8は、このステップS15で、イナーシャ相ショックの影響を低減するため、動作種類に応じてエンジン11の出力を減少又は増加する。
制御装置8は、鞍乗型車両1の加速中にエンジン11から入力軸20への動力伝達が切断されることなく多段変速機13の第n速から第n+1速へのシフトアップ操作が行われた場合、エンジン11の動力を減少する。
また、制御装置8は、鞍乗型車両1の減速中にエンジン11から入力軸20への動力伝達が切断されることなく多段変速機13の第n+1速から第n速へのシフトダウン操作が行われた場合、エンジン11の動力を増加する。
ステップS15の処理の詳細については後述する。
次に、制御装置8は、動力制御及び制御終了の処理を行う(S16)。制御装置8は、ステップS15で開始した動力制御を終了する。
即ち、多段変速機13において第n速から第n+1速へのシフトアップ操作が行われた場合、制御装置8は、本ステップS16で、エンジン11の動力の減少を終了する。
また、多段変速機13において第n+1速から第n速へのシフトダウン操作が行われた場合、制御装置8は、本ステップS16で、エンジン11の動力の減少を終了する。
次に、制御装置8は、後処理を行う(S17)。
制御装置8は、先のステップS13で、前処理として、エンジン11の吸気量を増加させる増加処理、並びに、吸気量の増加に伴うエンジン11の出力の増加を抑えるようなエンジンの点火遅角を開始している。制御装置8は、上記前処理で実行した処理を、このステップS17で終了する。例えば、制御装置8は、このステップS17で、後処理として、エンジン11の吸気量の増加を終了させる処理、並びに、吸気量の増加の終了に伴うエンジン11の出力の減少を抑えるようなエンジンの点火遅角を終了する処理を行う。
図12は、図11に示す前処理を説明するフローチャートである。
制御装置8は、図12の前処理において、後に実行されるエンジン11の出力の増加に先立ち、エンジン11の吸気量を増加させる処理、並びに、吸気量の増加に伴うエンジン11の出力の増加を抑えるようなエンジンの点火遅角を開始する処理を行う。
具体的には、制御装置8は、鞍乗型車両1の減速中の場合(S21でYes)、変速段の変更前の予備動作として、ステップS22の吸気量増加処理を実行する。制御装置8は、鞍乗型車両1の減速中にクラッチ12が切られることなく多段変速機のシフト切替え操作が行われている場合、ステップS22の吸気量増加処理を実行する。
即ち、図11に示すステップS12で判別された動作種類が、上記(3)鞍乗型車両1の減速時でシフトダウンの場合、又は、上記(4)鞍乗型車両1の減速時でシフトアップの場合、制御装置8は吸気量増加処理を実行する。また、制御装置8は、図11に示すステップS11の判別の結果、足の操作による荷重がシフトペダル荷重検出器730で検出された場合、ステップS22の吸気量増加処理を実行する。
ステップS22の吸気量増加処理において、制御装置8は、エンジン11の吸気量を増加させる増加処理、並びに、吸気量の増加に伴うエンジン11の出力の増加を抑えるようなエンジンの点火遅角を開始する(図9の時刻t11又は図10の時刻t21)。
単にエンジン11の吸気量が増加する場合、エンジン11の出力は増加する。単にエンジン11の点火遅角が行われる場合、エンジン11の出力は減少する。
本実施形態におけるステップS22において、制御装置8は、吸気量を増加させるとともに、エンジンの点火遅角を行う。これによって、処理前のエンジン11の出力における変化が維持される。
図13は、図11に示す係合解除補助の処理を説明するフローチャートである。
制御装置8は、多段変速機13における動作の種類がパワーオフアップシフトか否か判別する(S31)。制御装置8は、図11に示すステップS12で判別された動作種類が、上記(4)鞍乗型車両1の減速時でシフトアップであるか否かを判別する。
動作の種類がパワーオフアップシフトである場合(S31でYes)、制御装置8は、シフト操作が確定したか否かを判別する(S32)。制御装置8は、足の操作による荷重が、吸気量増加処理の前の足の操作による荷重よりも増加した場合、シフト操作が確定したと判別する。より詳細には、制御装置8は、足の操作による荷重が、所定の判定値を超えた場合に、シフト操作が確定したと判別する。この所定の判定値は、足の操作による荷重の検出(図11のS11)において操作を検出する判定値よりも大きい値である。
シフトカム角度の大きさが所定の判定値を超えた場合(S32でYes)、制御装置8は、エンジン11の動力を増加させるよう、エンジン11の点火遅角を終了する処理を開始する(S33)。
ステップS33で、制御装置8がエンジン11の点火遅角を終了する処理を開始する時点ですでに、ステップS22(図12)の吸気量増加処理によってエンジン11の吸気量を増加させる増加処理が実行されている。詳細には、例えば図10の時刻t21からt23に示されるように、スロットル開度の増加によってエンジン11の吸気量が増加するとともに、吸気量の増加に伴うエンジン11の出力の増加を抑えるようなエンジンの点火遅角が行なわれている。
ステップS33で、エンジン11の点火遅角を終了することによって、図10の時刻t23に示されるように、エンジン11の出力トルクが増加する。
エンジン11の点火遅角が終了してエンジン11の出力トルクが増加することによって、図6のパート(a’)に示すように、第2速減速用ポール36cが負の動力から解放される。エンジン11の出力が増加することによって第2速減速用ポール36cが負の動力から解放されるので、減速用ポール36cが伏倒しやすくなる。従って、図6に示す一連のシフトの動作が円滑に実行されやすくなる。
ステップS33でエンジン11の点火遅角を終了した後、制御装置8は、遅角を再開する(S34)。制御装置8は、例えば、シフトカム角度が所定の判定値を超えた場合に遅角を再開する。判定値は、点火遅角が終了した時点でのシフトカム角度よりも大きい。ただし、制御装置8は、シフトカム角度によらず遅角を再開してもよい。制御装置8は、例えば、エンジン11の点火遅角の終了から所定の期間経過後に遅角を再開してもよい。
遅角が再開することによって、図10の時刻t24に示すように、エンジン11から出力されるトルクが減少する。
上記ステップS32で操作が確定しない場合(S32でNo)、制御装置8は、足の操作によって受ける荷重が減少したか否かを判別する(S36)。荷重が減少した場合(S36でYes)、制御装置8は、予備動作として実行していた吸気量増加処理(図12のS22)を中止する(S37)。
具体的には、シフトペダル荷重検出器730で検出された荷重がエンジン11の吸気量を増加させた時点(図11のS11、図10の時刻t21)での荷重よりも減少した場合、制御装置8は、エンジンの吸気量を増加させる増加処理、並びに、吸気量の増加に伴うエンジン11の動力の増加を抑えるようなエンジンの点火遅角を中止する。これによって、エンジンの吸気量が減少するとともに、エンジンの点火角度が遅角位置から戻る。その後、制御装置8は、図11に示す変速制御を始めから再実行する(S38)。
例えば、運転者の操作の意図なしに荷重が加えられた場合でも、図12に示す吸気量増加処理(S22)で、エンジンの吸気量が増加する。本実施形態によれば、操作の意図なしの場合、後で荷重が減少する場合がある。このような場合に、エンジンの吸気量及びエンジンの点火時期の変更が元に戻る。この時にも、エンジン11の動力の変化が抑えられる。
図14は、図11に示す動力制御開始の処理を説明するフローチャートである。
動力制御開始の処理において、制御装置8は、多段変速機13における動作の種類を判別する(S42)。
制御装置8は、図11に示す動作種類の判別(図11のS12)の結果に基づいて、判別を行う。
動作種類が、パワーオンアップシフト、即ち上記(1)の鞍乗型車両1の加速時にシフトアップする場合(S42でYes)、制御装置8は、動力減少開始のための処理を行う。制御装置8は、ドグ係合のタイミングを計算する(S43)。
制御装置8は、シフトカム50の回転速度に応じて、ドグ係合のタイミングを計算する。第1ドグD1及び第2ドグD2は、シフトカム50の回転に応じてドグリング37a〜37cが軸方向に移動することによって係合する。制御装置8は、運転者の足の操作力によって回転するシフトカム50の回転速度に応じてドグ係合のタイミングを計算する。
次に、制御装置8は、上記ステップS43で計算されたドグ係合タイミングのmサイクル前のタイミングが到来したか否か判別する(S44)。ここで、サイクルは、エンジン11の燃焼サイクルである。
制御装置8は、出力軸30への動力伝達が第n+1速に対応する駆動ギア及び被駆動ギアを介して行われる状態へ切り替えられるタイミングの前にエンジン11の動力の減少を開始する処理を実行する。例えば、mが1の場合、ドグ係合タイミングの1サイクル前のタイミングが到来すると(S44でYes)、動力減少開始処理が行われる(S46)。
制御装置8は、このステップS46で、エンジン11の動力の減少を開始する。制御装置8は、エンジン11の点火遅角を開始する。
計算されたドグ係合タイミングより前のタイミングでエンジン11の動力の減少を開始することにより、ドグ係合によって生じるイナーシャ相ショックを低減するように、エンジン11の動力が減少する。従って、イナーシャ相ショックの影響が抑えられる。
ドグ係合タイミングに対するmサイクル前のタイミングが到来しない場合(S44でNo)、制御装置8は、シフトカム50の回転角度が、所定の制限値を超えているか否か判別する(S45)。所定の制限値は、ドグ当たり角度である。ドグ当たり角度は、第1ドグと第2ドグが軸方向で接触する場合における、シフトカム50の回転角度である。ドグ当たり角度は、ドグリング37a〜37cがドグ当たりする場合における、シフトカム50の角度である。ドグリング37a〜37cがドグ当たりする場合、ドグリング37a〜37cは、動力伝達を行うことなく被駆動ギア341〜346と接触する。具体的には、ドグリング37a〜37cがドグ当たりする場合、ドグリング37a〜37cに設けられた第2ドグD2と、被駆動ギア341〜346に設けられた第1ドグD1とが軸方向で当たる。
ステップS45で、シフトカム50の回転角度が制限値を超えると判別される場合に(S45でYes)、制御装置8が動力減少処理を開始する(S46)。これによって、動力減少処理の開始タイミングからドグ係合タイミングまでの時間間隔が確保される。従って、運転者による操作の途中で、操作の速度が増大するような場合にもイナーシャ相ショックの影響が抑えられる。
ドグ係合タイミングのmサイクル前のタイミングが到来せず(S44でNo)、且つ、シフトカム50の回転角度が、制限値を超えていない場合(S45でNo)、制御装置8は、動力減少処理(S46)を開始しない。
図14の動力制御開始の処理において、動作種類が、パワーオフダウンシフト、即ち上記(3)の鞍乗型車両1の減速時でシフトダウン(S42でNo、S52でYes)である場合、制御装置8は、動力増加開始のための処理を行う(S53〜S56)。
動力増加開始のためのステップS53〜S56の処理は、上述したステップS43〜S46と略同じである。但し、ステップS56の動力増加開始の処理内容が異なる。
具体的には、制御装置8は、ドグ係合のタイミングを計算する(S53)。
制御装置8は、シフトカム50の回転速度に応じて、ドグ係合のタイミングを計算する。制御装置8は、運転者の足の操作力によって回転するシフトカム50の回転速度に応じてドグ係合のタイミングを計算する。例えば図9に示す時刻t14は、ドグ係合のタイミングである。
次に、制御装置8は、上記ステップS53で計算されたドグ係合タイミングのmサイクル前のタイミングが到来したか否か判別する(S54)。
mは、例えば1である。なお、mは、多段変速機13の性能及び鞍乗型車両1の種類に応じて異なる値に設定されることが可能である。mとして、例えば、1/2、又は1/4といった、0より大きい値が採用可能である。
制御装置8は、出力軸30への動力伝達が第n速に対応する駆動ギア及び被駆動ギアを介して行われる状態へ切り替えられるタイミングの前にエンジン11の動力の増加を開始する処理を実行する(S56)。
制御装置8は、このステップS56で、エンジン11の動力の増加を開始する。制御装置8は、エンジン11の点火遅角を終了する。
図9に示す時刻t13において、制御装置8は、エンジン11の動力の増加を開始する。
計算されたドグ係合タイミングより前のタイミングでエンジン11の動力の増加を開始することにより、ドグ係合によって生じるイナーシャ相ショックを低減するように、エンジン11の動力が増加する。従って、イナーシャ相ショックの影響が抑えられる。
ドグ係合タイミングに対するmサイクル前のタイミングが到来しない場合(S54でNo)、制御装置8は、シフトカム50の回転角度が、所定の制限値を超えているか否か判別する(S55)。所定の制限値は、ドグ当たり角度である。
ステップS45で、シフトカム50の回転角度が制限値を超えると判別される場合に、制御装置8が動力増加処理を開始する。これによって、動力増加処理の開始タイミングからドグ係合タイミングまでの時間間隔が確保される。従って、運転者による操作の途中で、操作の速度が増大するような場合にもイナーシャ相ショックの影響が抑えられる。
ドグ係合タイミングのmサイクル前のタイミングが到来せず(S54でNo)、且つ、シフトカム50の回転角度が、制限値を超えていない場合(S45でNo)、制御装置8は、動力増加処理(S56)を開始しない。
鞍乗型車両1の減速時でシフトダウンの場合に、計算されたドグ係合タイミングより前のタイミングでエンジン11の動力の増加を開始することにより、ドグ係合によって生じるイナーシャ相ショックを低減するように、エンジン11の動力が増加する。従って、イナーシャ相ショックの影響が抑えられる。
図9の動力軸回転速度及び入力軸トルクのチャートには、上述した動力増加処理が実施されない比較例の動力軸回転速度及び入力軸トルクが破線で示されている。例えば、図9に示す時刻t14以降の入力軸トルクの低下量は、イナーシャ相ショックに対応する。より詳細には、イナーシャ相ショックのエネルギーは、トルクの変化量の時間積分と相関を有する。このため、図9に示す、入力軸トルクが低下している期間は、イナーシャ相ショックの大きさに対応する。
本実施形態における制御装置8は、時刻t13で上述した動力増加処理を実行するため、実線で示されるように、入力軸トルクが低下している期間が比較例と比べて短い。従って、イナーシャ相ショックの影響が抑えられる。
以上説明した、本実施形態における制御装置8は、鞍乗型車両1の減速中にシフトダウン操作が行われた場合(図11のS12でパワーオフダウンシフトと判別された場合)、下記(i)、(ii)を行うように、エンジン11の動力を制御する。
(i)エンジン11の吸気量を増加させる増加処理、並びに、吸気量の増加に伴うエンジン11の動力の増加を抑えるようなエンジンの点火遅角を開始する(図9の時刻t11。図12のS22)
(ii)エンジンの吸気量を増加させる増加処理を行っている時に(図9の時刻t11〜t13)、エンジン11の動力を増加させるよう、エンジン11の点火遅角を終了する処理を開始する(図9の時刻t13。図14のS46)。
制御装置8は、足の操作による荷重がシフトペダル荷重検出器730で検出されてから(図9の時刻t11)、変速先の第2速に対応する駆動ギア242及び被駆動ギア342を介して動力が入力軸20から出力軸30へ伝達される(図9の時刻t14)までの間に、上記(i)、(ii)を行うように、エンジン11の動力を制御する。
また、制御装置8は、鞍乗型車両1の減速中にシフトアップ操作が行われた場合(図11のS12でパワーオフアップシフトと判別された場合)にも、下記(i)、(ii)を行うように、エンジン11の動力を制御する。但し、詳細な制御のタイミングはシフトアップと異なる。
(i)エンジン11の吸気量を増加させる増加処理、並びに、吸気量の増加に伴うエンジン11の動力の増加を抑えるようなエンジン11の点火遅角を開始する(図10の時刻t21。図12のS22)
(ii)エンジン11の吸気量を増加させる増加処理を行っている時に(図10の時刻t21〜t23)、エンジン11の動力を増加させるよう、エンジン11の点火遅角を終了する処理を開始する(図19の時刻t23。図13のS33)。
制御装置8は、足の操作による荷重がシフトペダル荷重検出器730で検出されてから(図10の時刻t21)、変速先の第3速に対応する駆動ギア243及び被駆動ギア343を介して動力が入力軸20から出力軸30へ伝達される(図10の時刻t24)までの間に、上記(i)、(ii)を行うように、エンジン11の動力を制御する。
運転者の足の操作による荷重の検出に基づいてエンジン11の吸気量の増加が開始する。このため、時間が掛かるエンジン11の吸気量の増加を、足の操作による荷重の検出に基づいて早期に開始することができる。
足の操作による荷重は、例えば手の操作によるシフトレバーの操作とは異なり、運転者がシフト操作を意図しない場合にも検出される場合がある。
もしも、エンジン11の出力の変化を、変速段の変更に先立ってあまり早期に開始させるように制御すると、シフト操作が意図されない場合に、変速段の変更がなく、出力の変化だけが生じるおそれがある。この場合、変速段の変更を伴わない不要な振動が生じやすい。
本実施形態によれば、エンジン11の吸気量を増加させる増加処理において、エンジン11の出力の増加が抑えられる。このため、シフトペダル501に対する足の操作による荷重が運転者によるシフト操作を意図しない場合であっても、エンジン11の動力の変動が抑えられる。
また、図13のステップS36について説明したように、制御装置8は、吸気量を増加させる処理を開始した後、動力を増加させる処理の前に検出される荷重が減少した場合、吸気量を増加させる処理を中止する。より詳細には、制御装置8がエンジン11の吸気量を増加させる増加処理を開始した後(S22)、エンジン11の動力を増加させる処理(図13のS33又は図14のS56)を開始する前に(図9の時刻t13の前又は図10の時刻t23の前)、シフトペダル荷重検出器730で検出される荷重がエンジンの吸気量の増加を開始させた時点の荷重よりも減少した場合、制御装置8が吸気量を増加させる処理を中止する。
例えば、操作の意図なしに偶発的に荷重がシフトペダル501に加えられた場合のように、荷重が運転者の操作の意図なしに加えられた荷重の検出によって吸気量が増加しても、荷重が減少した場合には、吸気量を増加させる処理が中止する。吸気量を増加させる処理では、出力の増加が抑えられる。このため、操作の意図なしに荷重が加えられたり、その後、荷重が減少したりしても、エンジン11の動力の変動が抑えられる。従って、時間が掛かるエンジン11の吸気量の増加を、足の操作による荷重の検出に基づいて早期に開始することとともに、意図なしに荷重が加えられた場合に動力について変動を抑えることができる。
1 鞍乗型車両
5 車輪
8 制御装置
11 エンジン
12 クラッチ
13 多段変速機
20 入力軸
30 出力軸
50 シフトカム
90 動力軸
138 ドグ係合機構
139 変速段設定機構
241〜246 駆動ギア
341〜346 被駆動ギア
501 シフトペダル

Claims (7)

  1. 鞍乗型車両であって、
    回転可能に配置され、動力が入力される入力軸と、
    前記入力軸と平行な軸線上に回転可能に配置される出力軸と、
    前記入力軸に設けられ、前記入力軸と常に共に回転するか又は前記入力軸と相対回転可能であるように構成され、それぞれが各変速段に対応する複数の駆動ギアと、
    前記出力軸に設けられ、前記出力軸と常に共に回転するか又は前記出力軸と相対回転可能であるように構成され、対応する前記駆動ギアと常時噛み合う複数の被駆動ギアと、
    鞍乗型車両のライダーの足で操作されるシフトペダルと、
    前記シフトペダルの足での操作に応じていずれか一つの変速段に係る前記駆動ギア及び前記被駆動ギアを介した前記入力軸から前記出力軸への動力伝達を機械的に且つ選択的に有効に設定するように構成された変速段設定機構と、を有し、
    前記変速段設定機構は、第n速に対応する第n速被駆動ギア又は第n+1速に対応する第n+1速被駆動ギアのいずれか一方を通る動力の前記出力軸への伝達を機械的な係合状態を変更することによって選択的に有効にするための係合機構を含む、多段変速機と、
    前記多段変速機の前記入力軸に供給される動力を出力するエンジンと、
    前記エンジンと前記入力軸との間に設けられ、前記エンジンと前記入力軸との間で伝達される動力を断続するクラッチと、
    前記シフトペダルに加えられた足の操作による荷重を検出するシフトペダル荷重検出器と、
    前記鞍乗型車両の減速中に前記クラッチが切られることなく前記多段変速機のシフト切替え操作が行われているときに、前記足の操作による荷重が前記シフトペダル荷重検出器で検出されてから、変速先の変速段に対応する駆動ギア及び被駆動ギアを介して動力が前記多段変速機の前記入力軸から前記出力軸へ伝達されるまでの間に、下記(i)、(ii)を行うように、前記エンジンの動力を制御する制御装置であって、
    (i)エンジンの吸気量を増加させる増加処理、並びに、吸気量の増加に伴うエンジンの動力の増加を抑えるようなエンジンの点火タイミング及び/若しくは燃料量の変更を開始し、
    (ii)前記エンジンの吸気量を増加させる増加処理を行っている時に、前記エンジンの動力を増加させるよう、前記エンジンの前記点火タイミング及び/若しくは前記燃料量を変更する、制御装置と、
    を備えた鞍乗型車両。
  2. 請求項1記載の鞍乗型車両であって、
    前記(i)における点火タイミング及び/若しくは燃料量の変更の開始は、エンジンの点火遅角及び/若しくは燃料減少を開始することであり、
    前記(ii)におけるエンジンの点火タイミング及び/若しくは燃料量の変更は、前記(i)において開始されたエンジンの点火遅角及び/若しくは燃料減少を終了するか又は低減し始めることである。
  3. 請求項1又は2記載の鞍乗型車両であって、
    前記変速段設定機構は、周方向に延びるカム部が外周面に形成され、足の操作による前記シフトペダルの操作に応じて、シフトアップ時の回転方向とシフトダウン時の回転方向とが反対になるようにシフトアップ時及びシフトダウン時に回転するように構成され、回転に伴って、前記第n速に対応する前記第n速被駆動ギア又は前記第n+1速に対応する前記第n+1速被駆動ギアのいずれか一方を通る動力の前記出力軸への伝達を選択的に有効にするシフトカムを備え、
    前記制御装置は、前記シフトペダルが足の操作による荷重を受け、且つ、前記シフトカムが前記変速段設定機構に前記動力の機械的な係合状態の変更を開始させる程度に回転する時点より前に、前記(i)を行うように前記エンジンの動力を制御する。
  4. 請求項1から3いずれか1項に記載の鞍乗型車両であって、
    前記制御装置は、
    前記鞍乗型車両の減速中に前記エンジンから前記入力軸への動力伝達が切断されることなく前記多段変速機の第n+1速段から第n速段へのシフトダウン操作が行われた場合、前記エンジンの吸気量を増加させる増加処理を行っている時に、前記入力軸から前記出力軸への動力伝達が、第n+1速段に対応する駆動ギア及び被駆動ギアを介して行われる状態から、当該動力伝達が途切れることなく、第n速段に対応する駆動ギア及び被駆動ギアを介して行われる状態へ切り替えられる前に、前記(ii)として、前記エンジンの動力を増加させるよう、前記(i)において開始されたエンジンの点火タイミング及び/若しくは燃料量の変更を終了する。
  5. 請求項1から3いずれか1項に記載の鞍乗型車両であって、
    前記制御装置は、
    前記鞍乗型車両の減速中に前記エンジンから前記入力軸への動力伝達が切断されることなく前記多段変速機の第n速段から第n+1速段へのシフトアップ操作が行われた場合、前記エンジンの吸気量を増加させる増加処理を行っている時に、前記シフトペダル荷重検出器で検出された、前記足の操作による荷重が、前記エンジンの吸気量を増加させる増加処理の前の前記足の操作による荷重よりも増加した場合に、前記(ii)を行う。
  6. 請求項1から5いずれか1項に記載の鞍乗型車両であって、
    前記制御装置は、前記(i)を実行した後、前記(ii)を実行する前に、前記シフトペダル荷重検出器で検出される荷重が前記(i)を実行した時点の荷重よりも減少した場合、前記(ii)を中止する。
  7. 請求項1から6いずれか1項に記載の鞍乗型車両であって、
    前記係合機構は、第n速に対応する第n速被駆動ギア又は第n+1速に対応する第n+1速被駆動ギアのいずれか一方を介して前記出力軸を通る動力の伝達を機械的に且つ選択的に有効に設定するためのラチェット機構であり、
    前記ラチェット機構は、
    起立時に前記入力軸から前記出力軸へ前記第n速に対応する駆動ギア及び被駆動ギアを通る加速する向きの動力を伝達する一方、伏倒時に動力を伝達しないように構成される第n速加速用ポールと、
    起立時に前記入力軸から前記出力軸へ前記第n速に対応する駆動ギア及び被駆動ギアを通る減速する向きの動力を伝達する一方、伏倒時に動力を伝達しないように構成される第n速減速用ポールと、
    起立時に前記入力軸から前記出力軸へ前記第n+1速に対応する駆動ギア及び被駆動ギアを通る加速する向きの動力を伝達する一方、伏倒時に動力を伝達しないように構成される第n+1速加速用ポールと、
    起立時に前記入力軸から前記出力軸へ前記第n+1速に対応する駆動ギア及び被駆動ギアを通る減速する向きの動力を伝達する一方、伏倒時に動力を伝達しないように構成される第n+1速減速用ポールと、を含み、
    前記変速段設定機構は、さらに、周方向に延びるカム部が外周面に形成され、シフトアップ時の回転方向とシフトダウン時の回転方向とが反対になるようにシフトアップ時及びシフトダウン時に回転するように構成され、回転に伴って、前記第n速加速用ポールと、前記第n速減速用ポールと、前記第n+1速加速用ポールと、前記第n+1速減速用ポールと、を伏倒又は起立させるシフトカムを備える。
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