<実施の形態1>
(基本構成)
図1は、この発明の実施の形態1における安全運転支援システムの装置構成及びその接続関係を模式的に示す説明図である。なお、本明細書中において、特に、断りがない場合、実施の形態2以降においても、図1で示した安全運転支援システムが適用され、図1で示した装置及び装置間の関係は共通とする。
実施の形態1の安全運転支援システムは、車両50に設置された車載安全制御装置1(1A〜1D)、路側移動体検出装置2、路側通信装置3(3D)、交通信号制御装置4、及び中央装置5を基本構成としている。
路側移動体検出装置2は車線に沿って設置され、例えば、画像センサ、超音波センサ、光学センサ等のセンス機能を有することにより、検出範囲Ldにおける車両を含む移動体6の位置、速度等を検出し、検出した位置、速度を指示する移動体情報I1を路側通信装置3に出力する。
さらに、路側移動体検出装置2は、路側移動体検出装置2自体の性能(例えば、検出範囲、検出精度)を指示する移動体検出装置情報I2を路側通信装置3に出力する。
交通信号制御装置4は、信号機の灯色(青、黄、赤)および灯色変化(所定秒後に黄に変化)および赤信号時の対象停止線(停止線の位置、2輪用または4輪用の停止線種別)を示す、信号機に関する情報である信号情報I3を生成して、路側通信装置3に出力する。
路側無線装置3は、中央装置4と接続することにより、中央装置4から後述する道路形状情報I4を取得できる。路側通信装置3は、上述した移動体情報I1、移動体検出装置情報I2、信号情報I3及び道路形状情報I4を含む通信情報TM3を車載安全制御装置1に出力可能である。
図2は、図1に示す実施の形態1の安全運転支援システムを右直事故衝突防止サービスに適用した場合のシステム構成例を模式的に示す説明図である。右直事故衝突防止サービスとは、交差点で右折しようとしている車両である右折車51のドライバーに対して、接近する対向車(移動体61〜6n)との衝突危険性の有無を右折車51に通知するサービスである。すなわち、実施の形態1の車載安全制御装置1Aは、左側通行で車線21上を運行している進行右折車51が、対向する車線22上を運行している対向車である移動体61〜6nそれぞれを対象移動体として、車線23に右折する際における右折車51と対象移動体との衝突の危険性を警告する。
(本実施の形態におけるサービス適用例)
実施の形態1の安全運転支援システムでは、図2で示す右折車51に車載安全制御装置1が搭載されていることを前提としている。
また、対向車(移動体61〜6n)が右折車51と衝突する危険性のある位置(衝突事故発生予測位置P点(所定の予測位置))を交差点中心CCとし、路側移動体検出装置2は、交差点中心CCから未検出範囲(距離)Lwだけ上流側に離れた位置から、上流側に検出範囲(距離)Ldに存在する対向車を検出できるものとする。なお、図2において、対向車の進行方向を上流(図中左側)から下流(図中右側)に向かう方向とする。
したがって、交差点中心CCに至る車線22において、車線22を通過する移動体6(対象移動体となる移動体61〜6n)の進行方向に沿って、移動体6の速度及び位置が検出可能な検出範囲Ld、検出不可能な未検出範囲Lwの順で存在する。
路側移動体検出装置2は、検出した対向車(移動体61〜6n)の位置を、交差点中心CCを原点(“0”)とした相対距離(交差点中心CCを通過後の距離を負値で表現)で表し、この値(速度)を指示する移動体情報I1として路側通信装置3に出力する。すなわち、対向車(対象移動体)の位置は、交差点中心CCから下流側が負値、交差点中心CCより上流側が正値で示される。
また、路側移動体検出装置2は、検出した対向車の速度(時速(km/h)または秒速(m/s)を指示する情報を移動体情報I1として路側通信装置3に出力する。路側通信装置3は、少なくとも交差点及びその付近に位置する、右折車51内の車載安全制御装置1Aと常時通信できるものとする。
以降、実施の形態1の安全運転支援システムが提供する右直事故衝突防止サービス内容について説明する。
(車載安全制御装置1の説明)
図3は、実施の形態1の安全運転支援システムの特徴部である車載安全制御装置1Aの構成を示すブロック図である。
同図に示すように、車載安全制御装置1Aは、情報提供装置10A、情報再生装置20A及び通信装置30Aから構成される。
通信装置30Aは路側通信装置3より通信情報TM3を受ける。前述したように、通信情報TM3には、移動体情報I1、移動体検出装置情報I2、信号情報I3及び道路形状情報I4が含まれる。なお、実施の形態1の車載安全制御装置1Aは道路形状情報I4を利用しない。
情報提供装置10Aは、情報提供装置10Aが取得した通信情報TM3から、移動体情報I1(例えば、対象移動体の速度及び位置等を指示する情報)、移動体検出装置情報I2、及び信号情報I3を取得し、安全運転支援情報SJ1(たとえば、画像または音声情報)を情報再生装置20Aに出力するシステム構成となっている。
(情報提供装置10Aの構成)
情報提供装置10Aは、移動体情報取得部11、移動体検出装置情報取得部12、信号情報取得部13、TTC演算モデル判定部14A、TTC演算処理部15A及び情報出力判定部16から構成される。
移動体情報取得部11、移動体検出装置情報取得部12及び信号情報取得部13は、通信装置30Aから移動体情報I1、移動体検出装置情報I2及び信号情報I3を取得する。したがって、通信装置30A、移動体情報取得部11、移動体検出装置情報取得部12、及び信号情報取得部13により、少なくとも外部情報I1〜I3を受ける外部情報取得部を構成する。
移動モデル判定部であるTTC演算モデル判定部14Aは移動体情報取得部11、移動体検出装置情報取得部12、及び信号情報取得部13を介して得られる移動体情報I1、移動体検出装置情報I2、及び信号情報I3の内容に基づき、TTCの演算用の移動モデルを判定して、移動モデルを指示する判定結果情報RD1をTTC演算処理部15Aに出力する。なお、移動体情報I1,動体検出装置情報I2,信号情報I3も判定結果情報RD1に併せてTTC演算処理部15Aに出力される。
TTC演算処理部15Aは、移動体情報I1、移動体検出装置情報I2、信号情報I3及び判定結果情報RD1に基づき、TTC演算処理を行ってTTC演算結果RT1を情報出力判定部16に出力する。
情報出力判定部16は、TTC演算結果RT1に基づき、ドライバーに通知する安全運転支援情報の内容、安全運転支援情報の出力の開始および終了契機を判定して、その判定結果に基づく安全運転支援情報SJ1を情報再生装置20Aに出力する。
情報再生装置20Aは安全運転支援情報SJ1に基づく内容を音声出力、あるいは画像表示等で再生する。
なお、実施の形態1では、路側通信装置3から提供される通信情報TM3に含まれる移動体情報I1は、図2における対向車(対象移動体となる移動体61〜6n)の位置と速度を示すものとする。
(TTC演算モデル判定部14Aの処理概要)
図4は、TTC演算モデル判定部14Aの移動モデル判定動作を示すフローチャートである。以下、図4を参照して、情報提供装置10Aの特徴部であるTTC演算モデル判定部14Aの動作について説明する。
まず、ステップS11において、移動体情報取得部11、移動体検出装置情報取得部12及び信号情報取得部13より、移動体情報I1、移動体検出装置情報I2及び信号情報I3を取得する。なお、移動体情報I1には対向車(対象移動体となる移動体61〜6n)の速度と位置についての情報が含まれ、移動体検出装置情報I2には路側移動体検出装置2の検出範囲に関連する情報が含まれ、信号情報I3には対象移動体となる対向車の進行方向に設置されている信号機(交通信号制御装置4)の灯色(青、黄、赤)内容が含まれる。
次に、ステップS12において、移動体情報I1、移動体検出装置情報I2、信号情報I3に基づき、移動体6(移動体61〜6n)の移動モデル(加速モデル、等速モデル)を判定して、判定した移動モデルを指示する判定結果情報RD1を得る。
その後、ステップS13において、ステップS12で得た判定結果情報RD1、ステップS11で得た移動体情報I1、移動体検出装置情報I2及び信号情報I3をTTC演算処理部15Aに出力する。ここで、移動体情報I1により速度及び位置が指示される移動体が、車載安全制御装置1Aを搭載して左側通行している右折車51が交差点中心CC付近で右折する際における衝突の危険性の警告対象である対象移動体となる。
(移動体の挙動を判定する具体的な処理内容)
図4のステップS12の処理であるTTC演算モデル判定部14Aによる具体的な移動モデルの判定方法について、以下、詳細に説明する。
TTC演算モデル判定部14Aは、路側移動体検出装置2が検出した移動体6(対象移動体)で、かつ、所定時間Th経過後に検出範囲Ld外に移動するものと判定される移動体(仮想移動体)が存在する場合、当該対象移動体の進行方向に設置されている信号機の灯色が赤から青に変化する時点において、当該対象移動体の速度が基準速度Va以下である場合に、当該対象移動体を停止状態または徐行状態から発進を開始した加速中の移動体(加速モデル)として判定する。なお、信号機の灯色が赤から青に変化する時点は、信号情報I3より得られ、この時点は対象移動体の進行を不許可から許可に切り換えるタイミング時に相当する。
それ以外の場合、すなわち、路側移動体検出装置2が検出した対象移動体の進行方向に設置されている信号機の灯色が赤から青に変化した時点において、当該対象移動体の速度が基準速度Vaより大きい場合は、検出された速度(移動体情報I1が示す速度)にて等速走行をしている移動体(等速モデル)として判定する。
以下、上述の仮想移動体の判定方法について、図2を用いて説明する。実施の形態1において、衝突事故発生予測位置(P点)を交差点中心CCとし、移動体情報I1の示す移動体6の位置は、交差点中心CCを原点(0)とした相対距離(交差点中心CC通過後の距離を負値表現)である移動体位置認識用距離Lnとして表すものとする。
そして、移動体検出装置情報取得部12から取得した移動体検出装置情報I2に路側移動体検出装置2の未検出範囲(距離)Lwが含まれているものとする。未検出範囲Lwは、交差点中心CCを原点(0)とした相対距離(上流方向を正値表現)で示されるものとする。
移動体6の現在位置から検出範囲外までの距離を範囲外到達距離Lhとすると、範囲外到達距離Lhは以下の式(1)で表される。
そして、路側移動体検出装置2が検出した対象移動体の速度を検出移動体速度Vnとすると、当該対象移動体が検出移動体速度Vnで上記した所定時間Th、等速走行した場合の距離が、移動体の検出範囲外までの範囲外到達距離Lhを越える場合、当該対象移動体が所定時間Th後に検出範囲外に移動する移動体、すなわち、仮想移動体と判定する。
なお、所定時間Thに関しては、実験および評価値から予め与えられた所定の値を利用するものとするが、移動体検出装置情報I2に検出遅延時間Tdhが含まれる場合は、以下の式(2)に示すように、検出遅延時間Tdhを所定時間Thとして設定しても良い。
(移動モデルの判定処理の適用範囲)
TTC演算モデル判定部14Aは、上述の判定処理を、移動体情報取得部11から取得した移動体情報I1の全て(複数の移動体情報I1が取得できる場合がある)に対して実施する。すなわち、検出範囲Ld内に検出された複数の(対象)移動体それぞれについての移動体情報I1に対して、ステップS12の移動モデル判定処理を行う。その後、移動体情報I1と判定した移動モデルを指示する判定結果情報RD1とがTTC演算処理部15Aに出力されることになる。
なお、上述のTTC演算モデル判定部14Aの判定処理では、路側移動体検出装置2が検出した対象移動体の進行方向に設置されている信号機の灯色が赤から青に変化した時点を判定タイミングとしているが、信号機の灯色が赤から青に変化した時点の前後の余裕時間Ta内において判定タイミングを設定としても良い。この時、余裕時間Taは実験および評価値から予め与えられた所定の値を利用するものとする。このように、対象移動体の進行を不許可から許可に切り換えるタイミング時を余裕時間Taの幅を持たせて設定しても良い。
最後に、TTC演算モデル判定部14Aは、移動体情報I1に基づき判定した移動モデル(加速モデルまたは等速モデル)を指示する判定結果情報RD1と対応する対象移動体に関する移動体情報I1とをペアにして出力するとともに、ステップS11で取得した、移動体検出装置情報I2、及び信号情報I3をTTC演算処理部15Aに通知する(図4のステップS13)。
(TTC演算処理部15Aの処理概要)
TTC演算処理部15Aは、TTC演算モデル判定部14Aから取得した判定結果情報RD1と判定結果情報RD1に対応する対象移動体に関する移動体情報I1に基づき、当該移動体情報I1で示される対象移動体が、衝突事故発生予測位置P点に到達する到達予測時間Tpを演算する。
図5はTTC演算処理部15Aの演算処理内容を示すフローチャートである。以下、同図を参照して、TTC演算処理部15Aの演算動作について説明する。
まず、ステップS21において、移動体6と衝突事故発生予測位置P点(交差点中心CC)間の相対距離(衝突判定距離Lp)を計算する。
実施の形態1では、前述したように、衝突事故発生予測位置(P点)を交差点中心CCとし、移動体情報I1の示す対象移動体の位置は、交差点中心CCを原点(0)とした相対距離(交差点中心CC通過後の距離を負値表現)で表すものとする。
したがって、実施の形態1においては、移動体情報I1の示す対象移動体の位置が、そのまま衝突判定距離Lpと等価(移動体情報I1の示す対象移動体の位置=衝突判定距離Lp)となる。
次に、ステップS22において、TTC演算モデル判定部14Aから通知された判定結果情報RD1の指示内容(加速モデル、または、等速モデル)に基づき到達予測時間Tpの計算を行う。
具体的には、TTC演算モデル判定部14Aにて、加速モデルと判定された検出速度Voの対象移動体は、加速度αで交差点直進通過時の目標速度Vtまで加速し、目標速度Vtに達した以降は目標速度Vtで等速走行するものとする。
上述の検出速度Voは、移動体情報I1から得られた当該対象移動体の速度とし、等速モデルと判定された対象移動体は検出速度Voで等速走行をするものとする。
実施の形態1の場合、例えば、加速モデルと判定された対象移動体の到達予測時間Tpは、以下の式(3-1),式(3-2)により導き出される。なお、式(3-1)において、加速運行時間Tp1は目標速度Vtまで加速するための所要時間を意味し、等速運行時間Tp2は目標速度Vtまで加速した後、衝突事故発生予測位置P点まで等速走行する時間を意味する。
なお、等速運行時間Tp2は、対象移動体が目標速度Vtまで加速した時点で、当該対象移動体が衝突事故発生予測位置P点に到達していない場合(目標速度Vtまで加速完了後、衝突事故発生予測位置P点まで目標速度Vtで等速走行する距離がある場合)のみ有効(Tp2>0)となる。
このとき、衝突事故発生予測位置P点(交差点中心CC)まで目標速度Vtで等速走行する距離を等速運行距離L2、対象移動体が目標速度Vtまで加速完了するまで必要な走行距離を加速運行距離L1とすると、等速運行時間Tp2は相対距離Lp(対象移動体の交差点中心CCまでの相対距離)に基づき以下の式(4-1)〜(4-3)より導出される。
なお、対象移動体が加速中に衝突事故発生予測位置P点に到達する場合(Tp2≦0)はTp2=0となる。
また、等速モデルと判定された対象移動体の到達予測時間Tpは、検出速度Voで衝突事故発生予測位置P点まで等速走行する所要時間である等速運行時間Tp3とすると、以下の式(5)で現れる。
最後に、ステップS23において、TTC演算処理部15Aは、上述の演算処理を、TTC演算モデル判定部14Aから通知された移動体情報I1の全て(複数の移動体情報I1が通知される場合がある)に対して実施して、全ての対象移動体に対するTTC演算結果RT1を得る。その後、TTC演算処理部15Aは全ての対象移動体に対するTTC演算処理結果(到達予測時間Tpの値)を指示するTTC演算結果RT1を、情報出力判定部116に出力する。
(情報出力判定部16の処理概要)
情報出力判定部16は、TTC演算処理部15Aより取得したTTC演算結果RT1が指示するTTC演算処理結果(到達予測時間Tpの値)に基づき、所定の基準時間Tx内に衝突事故発生予測位置P点に到達する危険な車両(危険車両)が存在するか(実施の形態1では交差点中心CCまで基準時間Tx内に到達する対向車(対象移動体)の有無)を判定し、危険車両が存在する場合、情報再生装置20Aに安全運転支援情報SJ1(例えば、画像または音声情報)を出力する。すると、情報再生装置20Aが安全運転支援情報SJ1に基づく内容を再生(危険車両の存在を音声、または画像で出力)することにより、車載安全制御装置1Aを搭載した右折車51のドライバーに接近する危険車両の存在に対する注意喚起を行うことができる。
(効果)
従来の技術(特許文献1)では、路側移動体検出装置2の検出範囲Ld外の対象移動体の運行状況(例えば、実施の形態1記載する加速動作など)を考慮していないため、検出範囲Ld内に衝突事故発生予測位置P点(交差点中心CC)がなければ、当該衝突事故発生予測位置P点までの対象移動体の到達予測時間Tpを正確に取得できなかった。
しかし、実施の形態1においては、検出範囲Ld外に衝突事故発生予測位置P点(交差点中心CC)がある場合においても、高い精度で到達予測時間Tpを取得することを可能にした点において従来技術より優れている。
結果として、実施の形態1における車載安全制御装置1Aは、路側移動体検出装置2の検出範囲によらず、適切なタイミング(危険な対象移動体が存在するのに、存在しないと信頼性の低い情報をドライバーに通知する事は無く)でドライバーに安全運転が可能な交通情報を提供することができる効果を奏する。
実施の形態1の車載安全制御装置1A、移動モデル判定部であるTTC演算モデル判定部14Aによって、未検出範囲Lwにおける対象移動体(対向車となる移動体6)の運行状況である移動モデル(加速モデル、等速モデル)を判定し、この移動モデルに基づき最終的に交差点中心CCにおける移動体6との衝突危険性度合を指示する安全運転支援情報SJ1を情報出力判定部16により出力している。
したがって、安全運転支援情報SJ1によって、検出範囲Ld外に存在する交差点中心CCにおける、対象移動体との衝突危険性度合を高い精度で、車載安全制御装置1Aを搭載した右折車51のユーザに警告することができる効果を奏する。
すなわち、車載安全制御装置1Aを搭載し左側通行で運行している右折車51が、右折する際の交差点中心CC付近における対向車(対象移動体)となる移動体6との衝突に関し、高い精度で、車載安全制御装置1Aを搭載した車両のユーザに警告することができる効果を奏する。
また、実施の形態1のTTC演算モデル判定部14Aは、判定する移動モデルとして加速モデル及び等速モデルとを設定することによって、対象移動体である移動体6の進行を不許可から許可に切り換えるタイミング時における移動モデルを精度よく設定することができる。
<実施の形態2>
実施の形態2は、実施の形態1で判定した加速モデル、等速モデルに加えて、左折車の減速モデルをも考慮した安全運転支援システムである。
実施の形態1では、衝突事故発生予測位置P点(交差点中心CC)が路側移動体検出装置2の検出範囲Ld外にある場合において、検出範囲Ld外で対象移動体(対向車)が加速する場合でも、対象移動体が当該衝突事故発生予測位置P点まで到達する到達予測時間Tpを高い精度で推定する方法について述べた。
実施の形態2では、実施の形態1で判定した加速モデルとは逆に、検出範囲外で対象移動体(対向車)が減速することが想定される減速モデルをもモデル化可能なTTC演算モデル判定部14B及びTTC演算処理部15Bを有している。
図6は、実施の形態2の安全運転支援システムに用いられる車載安全制御装置1Bの構成を示すブロック図である。
同図に示すように、車載安全制御装置1Bは、情報提供装置10B、情報再生装置20B、及び通信装置30Bから構成される。情報提供装置10Bは、実施の形態1の10Aの構成部12〜16に加え、さらに、道路形状情報取得部17を有している。
通信装置30Bは路側通信装置3より通信情報TM3を受ける。通信情報TM3は、道路形状情報I4を含んでいる。道路形状情報I4は、法廷速度、交差点中心CC位置、車線数、車線毎の通行許可方向(右折、直進、左折可など)、停止線位置等を含む情報を意味する。図1に示すように、道路形状情報I4は中央装置5より得られる。
したがって、実施の形態2においては、移動体情報I1、移動体検出装置情報I2、及び信号情報I3に加えて道路形状情報I4も利用する。
移動体情報取得部11、移動体検出装置情報取得部12、信号情報取得部13及び道路形状情報取得部17は、通信装置30Bから移動体情報I1、移動体検出装置情報I2、信号情報I3及び道路形状情報I4を取得する。したがって、通信装置30B、移動体情報取得部11、移動体検出装置情報取得部12、及び信号情報取得部13及び道路形状情報取得部17により、少なくとも外部情報I1〜I4を受ける外部情報取得部を構成する。
(減速モデルの判定方法に関する具体的な処理)
(TTC演算モデル判定部14B)
図7は、TTC演算モデル判定部14Bの動作を示すフローチャートである。以下、図7を参照して、TTC演算モデル判定部14Bの移動モデル判定動作について説明する。
まず、ステップS31において、移動体情報取得部11、移動体検出装置情報取得部12、信号情報取得部13及び道路形状情報取得部17より、移動体情報I1、移動体検出装置情報I2、信号情報I3及び道路形状情報I4を取得する。
次に、ステップS32において、移動体情報I1、移動体検出装置情報I2、信号情報I3及び道路形状情報I4に基づき、移動体6(移動体61〜6n)の運行状況における移動モデル(加速モデル、等速モデル,減速モデル)を判定して、判定モデルを指示する判定結果情報RD2を得る。
その後、ステップS33において、ステップS32で得た判定結果情報RD2、ステップS31で得た移動体情報I1、移動体検出装置情報I2、信号情報I3及び道路形状情報I4をTTC演算処理部15Bに出力する。
以下、図7のステップS32の処理について詳述する。TTC演算モデル判定部14Bは、路側移動体検出装置2が検出した対象移動体の進行方向に設置されている信号機の灯色が左折可であり(青または左折許可矢印が点灯している場合)、かつ、当該対象移動体が左折専用車線を走行しており、所定時間Th後に検出範囲外に移動するものと判定される移動体(仮想移動体)である場合、当該対象移動体が左折時の目標速度Vt2まで減速度βで減速した後、当該目標速度Vt2で左折する車両(減速モデル)として判定する。なお、仮想移動体の判定方法については、実施の形態1のTTC演算モデル判定部14Aと同様に行う。なお、信号機の灯色が左折可である場合は、信号情報I3より認識でき、この場合が対象移動体の左折を許可する時間帯となる。
それ以外の場合の移動モデル判定(加速モデル,等速モデル)においては、図3で示した実施の形態1のTTC演算モデル判定部14Aの処理と同様に行う。
したがって、TTC演算モデル判定部14Bは、実施の形態1のTTC演算モデル判定部14Aと同様に、上述の判定処理を、移動体情報取得部11から取得した移動体情報I1の全て(複数の移動体情報I1が取得できる場合がある)に対して実施した後、移動体情報I1と判定結果情報RD2とをペアにしてTTC演算処理部15Bに出力する(図7のステップS33に相当)。
なお、実施の形態2において、対象移動体が左折専用車線を走行している場合を判定する方法としては、道路形状情報I4から、移動体情報I1に含まれる対象移動体の走行車線に該当する通行許可方向を取得して、この情報に基づく方法が考えられる。
例えば、移動体情報I1により該当する対象移動体の走行車線が第1車線として示された場合、道路形状情報I4にて、第1車線が左折可とのみ示されれば、当該対象移動体が走行している車線は、左折専用車線と判定することができる。
(TTC演算処理部15B)
実施の形態2におけるTTC演算処理部15Bの具体的な処理について、以下に記載する。
TTC演算処理部15Bは、TTC演算モデル判定部14Bの判定結果情報RD2が減速モデルを指示する場合の移動体情報I1に関する処理以外、すなわち、判定結果情報RD2が加速モデルあるいは等速モデルを指示する場合は、実施の形態1のTTC演算処理部15Aと同様にして到達予測時間Tpを求める。
以降、TTC演算モデル判定部14Bからの判定結果情報RD2が減速モデルを指示し、これに対応づけられた移動体情報I1が通知された場合におけるTTC演算処理部15Bの到達予測時間Tpの導出方法について説明する。
まず、対象移動体と衝突事故発生予測位置P点間の相対距離(衝突判定距離Lp)を計算する(図5のステップS21に相当)。
実施の形態2では、衝突事故発生予測位置(P点)を対象移動体前方の停止線SL(図2参照)とし、移動体情報I1の示す対象移動体の位置は、交差点中心CCを原点(0)とした相対距離(交差点中心CC通過後の距離を負値表現)で表すものとする。
したがって、移動体情報I1の示す対象移動体の位置を示す移動体位置認識用距離Ln、停止線SL〜交差点中心CC間の停止線・交差点間距離Lcsを用いて、移動体位置認識用距離Lnから停止線・交差点間距離Lcsを引いた値が衝突判定距離Lp2(停止線〜移動体間の相対距離)となり、以下の式(6)で表される。
なお、実施の形態2においては、停止線SL〜交差点中心CC間の停止線・交差点間距離Lcsは、実験および評価から得られた所定の値を利用するものとする。
次に、対象移動体が衝突事故発生予測位置P点(停止線SL)に到達する到達予測時間Tpを計算する(図5のステップS22に相当する)。
減速度β、移動体情報I1の示す対象移動体の検出速度Vo(初速度とする)、左折時の目標速度Vt2まで減速する時間を減速時間Tp21、目標速度Vt2まで減速した後、停止線まで目標速度Vt2で等速走行する時間である等速時間Tp22を用いて、到達予測時間Tpは以下の式(7-1),(7-2)により導き出される。
等速時間Tp22は、検出速度Voの対象移動体が目標速度Vt2まで減速するために必要な走行距離を減速距離L21とすると、以下の式(8-1),(8-2)により導き出される。
なお、対象移動体が減速中に衝突事故発生予測位置P点(停止線SL)に到達する場合(Tp22≦0)はTp22=0となる。
最後に、TTC演算処理部15Bは、上述の演算処理を、TTC演算モデル判定部14Bから通知された移動体情報I1の全て(複数の移動体情報I1が通知される場合がある)に対して実施する。その後、TTC演算処理部15Bは、全ての対象移動体に対するTTC演算処理結果(到達予測時間Tpの値)を指示するTTC演算結果RT2を、情報出力判定部16に出力する(図5のステップS23に相当する)。
その後、情報出力判定部16は、TTC演算結果RT2に基づき、ドライバーに通知するための安全運転支援情報SJ2を情報再生装置20Bに出力する。そして、情報再生装置20Bが安全運転支援情報SJ2に基づく内容を再生(危険車両の存在を音声、または画像で出力)することにより、車載安全制御装置1Bを搭載した右折車51のドライバーに接近する危険車両の存在に対する注意喚起を行うことができる。
(補足:停止線の位置の取得方法)
実施の形態2では、交差点中心CCから停止線SLの位置は、情報提供装置10Bから取得した道路形状情報I4から交差点中心CCおよび停止線SLの絶対座標位置(例えば、緯度・経度)に基づき、交差点中心CCからから所定の距離Lcs離れた位置に停止線SLがあるものとした。しかし、対象移動体の絶対座標(緯度・経度など)が取得できる場合は、絶対座標の差分から計算される停止線〜対象移動体間の相対距離Lgpsを直接計算して求めても良いものとする。その場合、式(6)の相対距離Lp2として上記相対距離Lgpsをそのまま用いることができる。
(効果)
従来の技術(特許文献1)では、対象移動体の進行方向(右折、直進、左折)を考慮した移動体モデル(例えば、加速モデルや減速モデルなど)を考慮していないため、当該衝突事故発生予測位置P点までの対象移動体の到達予測時間Tpを正確に取得できなかった。
しかし、実施の形態2の安全運転支援システムでは、対象移動体の進行方向(右折、直進、左折)から対象移動体の運行状況(加速、減速)を推定することにより、高い精度で到達予測時間Tpを求めることができる点において従来技術より優れている。
このように、実施の形態2における車載安全制御装置1Bは、実施の形態1の車載安全制御装置1Aと同様に、路側移動体検出装置2の検出範囲Ldによらず、適切なタイミング(危険な対象移動体が存在するのに、存在しないと信頼性の低い情報をドライバーに通知する事は無く)でドライバーに安全運転が可能な交通情報を提供することができる効果を奏する。
加えて、実施の形態2の安全運転支援システムは、実施の形態1に比べ、減速モデルの判定が可能な分、到達予測時間Tpの精度を高めることができる効果を奏する。
すなわち、実施の形態2の車載安全制御装置1Bは、移動モデルとして減速モデルを設定することによって、対象移動体の左折を許可する時間帯における移動モデルを精度よく設定することができる効果を奏する。
したがって、車載安全制御装置1Bを搭載し左側通行で運行している右折車51が、右折する際の停止線SL付近にける対向車あるいは左折車となる移動体6(対象移動体)との衝突に関し、高い精度で、車載安全制御装置1Bを搭載した右折車51のユーザに警告することができる効果を奏する。
<実施の形態3>
実施の形態1、実施の形態2では、対象移動体(対向車または左折車)が、前方の信号の灯色が直進または左折可であることを示している場合における安全運転支援システムであった。
本実施の形態3では、さらに、ジレンマゾーン(信号変化時にドライバーに直進するか否か迷いが生じる距離)に対して、対象移動体の前方の信号が通行不可を示す場合(赤または黄色の場合)の移動モデルが判定可能なTTC演算モデル判定部14CとTTC演算処理部15Cを有している。の処理について記載する。
なお、実施の形態3の車載安全制御装置1Cは、図3で示す車載安全制御装置1Aの構成を基本とした場合、TTC演算モデル判定部14A及びTTC演算処理部15Aが以下で述べるTTC演算モデル判定部14C及びTTC演算処理部15Cに置き換わる点を除き、車載安全制御装置1Aと同様の構成を呈する。
一方、車載安全制御装置1Cは、図6で示す車載安全制御装置1Bの構成を基本とした場合、TTC演算モデル判定部14B及びTTC演算処理部15Bが以下で述べるTTC演算モデル判定部14C及びTTC演算処理部15Cに置き換わる点を除き、車載安全制御装置1Bと同様の構成を呈する。
なお、実施の形態3では、実施の形態2と同様、衝突事故発生予測位置(P点)を対象移動体前方の停止線SL(図2参照)としている。
(TTC演算モデル判定部14C)
実施の形態3におけるTTC演算モデル判定部14Cの具体的な移動体モデルの判定方法について、以下に説明を記載する。
TTC演算モデル判定部14Cは、路側移動体検出装置2が検出した対象移動体の前方の信号が通行不可を示す状態になった場合(赤または黄色になった場合)、当該対象移動体が、前方の停止線SLの位置から、上流側に向かってジレンマ減速判定距離Lj以上離れた位置に存在し、所定時間Th後に検出範囲外に移動するものと判定される移動体(仮想移動体)である場合、当該対象移動体を、減速度βで減速し、停止線SL前で停止するものとする移動体(停止モデル)として判定する。なお、仮想移動体の判定方法については、実施の形態1のTTC演算モデル判定部14Aと同様に行う。
なお、ジレンマ減速判定距離Ljとは、ジレンマゾーン(信号変化時にドライバーに直進するか否か迷いが生じる距離)で定義される距離を意味する。なお、信号機の灯色が赤または黄に変化する場合は、信号情報I3より得られ、この時点は対象移動体の進行を不許可にする時間帯に相当する。
TTC演算モデル判定部14Cは、上記以外の場合、すなわち、前方の停止線位置から上流側にジレンマ減速判定距離Ljより設定された位置から、下流側(交差点内部側)に位置に存在する対象移動体の移動モデルに関しては、実施の形態1のTTC演算モデル判定部14Aあるいは実施の形態2のTTC演算モデル判定部14Bと同様の処理を行う(ステップS12(図4),ステップS32(図7)に相当する)。
路側移動体検出装置2が検出した移動体6が停止線SLから上流側にジレンマ減速判定距離Lj以上離れた位置に存在することを判定する具体的な方法を以下に述べる。
信号情報I3による灯色情報の黄色の点灯時間をY、ドライバーの反応時間をτとすると、移動体6の減速度β、移動体6の検出速度Voを用いてジレンマ減速判定距離Ljは以下の式(9)の関係を満足する。
したがって、移動体6と衝突事故発生予測位置P点(停止線SL)間の相対距離を相対距離Lp2とすると、停止モデルの判定条件は、移動体6が停止線SLから上流側に向かって確実にジレンマ減速判定距離Lj以上離れた位置に存在することであるため、相対距離Lp2が以下の式(10)を満足することである。
最後に、TTC演算モデル判定部14Cは、実施の形態1のTTC演算モデル判定部14A、あるいは実施の形態2のTTC演算モデル判定部14Bと同様に、移動体情報取得部11から取得した移動体情報I1の全て(複数の移動体情報I1が取得できる場合がある)に対して判定処理を実施する。その後、移動体情報I1と当該移動体情報I1に関する移動モデルを指示する判定結果情報RD3をTTC演算処理部15Cに出力する(実施の形態1のステップS13(図4)、実施の形態2のステップS33(図7)に相当)。
(TTC演算処理部15C)
実施の形態3におけるTTC演算処理部15Cの具体的な処理について、以下に説明する。
TTC演算処理部15Cは、TTC演算モデル判定部14Cからの判定結果情報RD3が停止モデルを指示する場合以外は、実施の形態1のTTC演算処理部15Aあるいは実施の形態2のTTC演算処理部15Bと同様の処理(到達予測時間Tpの演算処理)を行う。以下では判定結果情報RD3が停止モデルを指示する場合について説明する。
まず、実施の形態2のTTC演算処理部15Bと同様にして、対象移動体と衝突事故発生予測位置P点(停止線SL)間の相対距離(衝突判定距離Lp2)を計算する(図5のステップS21に相当)。
次に、対象移動体が衝突事故発生予測位置P点(停止線SL)に到達する到達予測時間Tpを計算する(図5のステップS22に相当)。
具体的には、実施の形態2のTTC演算処理部15Bと同様に、検出速度Voの対象移動体が減速度βで停止するのに必要な時間Tp31、検出速度Voの対象移動体が減速度βで停止するのに必要な距離である停止所要距離(減速所要距離)L31を用いて、停止所要距離L31は以下の式(11-1),(11-2)により求められる。
対象移動体〜停止線間の距離である相対距離Lp2(式(6)参照)が、停止所要距離L31より大きい場合(L31<Lp2の場合)は、当該移動体6は停止線SLからの相対距離が停止所要距離L31になった時点で減速を開始するものとし、それ以前は移動体情報I1が示す検出速度Voで等速度運動するものとする。
それ以外の場合(L31≧Lp2)は、当該移動体6は常に減速度βで減速しているものとする。
よって、到達予測時間Tpは、「L31<Lp2」の場合、到達予測時間Tpは、{対象移動体が減速開始する前まで等速走行する時間}と減速所要時間(Tp31)との和となることから、以下の式(12-1)により導き出され、「L31≧Lp2」の場合、到達予測時間Tpは、減速所要時間(Tp31)となることから以下の式(12-2)により導き出される。
最後に、TTC演算処理部15Cは、上述の演算処理を、TTC演算モデル判定部14Cから通知された移動体情報I1の全て(複数の移動体情報I1が通知される場合がある)に対して実施する。その後、TTC演算処理部15Cは、全ての対象移動体に対するTTC演算処理結果(到達予測時間Tpの値)であるTTC演算結果RT3を情報出力判定部16に出力する(図5のステップS23に相当する)。
(効果)
従来の技術(特許文献1)では、対象移動体が停止する場合の当該衝突事故発生予測位置P点までの対象移動体の到達予測時間Tpを取得する具体的な方法が示されていなかった。
しかし、この第3の実施形態では、実施の形態2と同様、停止線SL(衝突事故発生予測位置P点)で停止する対象移動体を精度よく抽出し、抽出した対象移動体の停止線までの到達予測時間Tpの取得を可能とするとする点で従来技術より優れている。
その結果、実施の形態2における車載安全制御装置1Cは、実施の形態1及び実施の形態2と同様に、路側移動体検出装置2の検出範囲Ldによらず、適切なタイミング(危険な移動体が存在するのに、存在しないと信頼性の低い情報をドライバーに通知する事は無く)でドライバーに安全運転が可能な交通情報を提供することができる効果を奏する。
加えて、実施の形態3の安全運転支援システムは、実施の形態1及び実施の形態2に比べ、停止モデルの判定が可能な分、到達予測時間Tpの精度を高めることができる効果を奏する。
すなわち、実施の形態3の車載安全制御装置1Cは、移動モデルとして停止モデルを設定することによって、対向車となる移動体6(対象移動体)の進行を許可から不許可に切り換えるタイミング時における移動モデルを精度よく設定することができる効果を奏する。
<実施の形態4>
実施の形態1〜実施の形態3では、衝突事故発生予測位置(P点)が交差点中心CCまたは停止線SLなど固定位置としていたが、P点が走行中の前方車両の末尾位置など動的に変化する場合がある。実施の形態4の安全運転支援システムはP点が動的に変化する場合も考慮する。
図8は、図1に示す安全運転支援システムを、直進しようとしている車両(直進車)のドライバーに対して、前方車両との衝突危険性の有無を通知する追突事故防止サービスに適用した場合のシステム構成を模試的に示した説明図である。すなわち、実施の形態4の安全運転支援システムは上記追突事故防止サービスが提供可能なシステムである。
(実施の形態4におけるサービス適用例)
実施の形態4では、図8で示す車線22上を運行する直進車70に車載安全制御装置1Dが搭載されているものとする。なお、全体構成は図1で示す構成と同様であり、路側通信装置3D(図1の路側通信装置3に相当)と車載安全制御装置1Dの内部構成が実施の形態1〜実施の形態3とは異なる。路側通信装置3D及び車載安全制御装置1Dの詳細については後述する。
また、実施の形態4の安全運転支援システムでは、前方車両がと衝突する危険性のある位置(衝突事故発生予測位置P点)を停止線SLや前方車両の末尾としている。そして、路側移動体検出装置2は、交差点中心CCから上流側(直進車の進行方向と逆方向。図8を参照)に向かって検出開始オフセット距離Ldw(図1の未検出範囲Lwに相当)に離れた位置から、検出範囲Ld内に存在する移動体6(移動体61〜6n)を検出できるものとする。
したがって、停止線SLに至る車線22において、車線22を通過する移動体6(移動体61〜6n,6p)の進行方向に沿って、移動体6の速度及び位置が検出不可能な未検出範囲Lw1(第1の未検出範囲)、移動体6の速度及び位置が検出可能な検出範囲Ld、検出不可能な検出開始オフセット距離Ldw(第2の未検出範囲Lw)の順で存在する。
路側移動体検出装置2は、図8に示すように、検出した対象移動体となる前方車両(移動体6)の位置を、路側無線装置3の設置位置を原点(0)とした相対距離(路側無線装置3の設置位置から下流側に向かって正値表現)で表し、移動体情報I1として路側通信装置3Dに出力する。
また、路側移動体検出装置2は、検出した前方車両の速度(時速(km/h)または秒速(m/s))を指示する情報を移動体情報I1として路側通信装置3Dに出力する。
また、路側通信装置3Dから出力される通信情報TM4に含まれる信号情報I3には、当該路側通信装置3Dが設置されている道路の下流側にある、信号が停止を所望する停止線SLの位置(当該信号情報I3で示される灯器が赤の時に停止する位置)が含まれ、当該停止線SLの位置は路側通信装置3Dの設置位置を原点(0)とした相対距離(下流方向を正)で示されるものとする。
同様に、路側通信装置3Dから出力される通信情報TM4に含まれる道路形状情報I4には、当該路側通信装置3Dが設置されている道路の下流側にある交差点の位置(例えば、交差点の中心)が含まれ、交差点の位置は路側通信装置3Dの設置位置を原点(0)とした相対距離(下流方向を正)で示されるものとする。
路側通信装置3Dは、当該路側通信装置3Dの設置位置直下の通信範囲Laにおいて車両とリアルタイム性のある(例えば、通信遅延が100msec以内の)双方向通信が実現できるものとする。車両がETCや光ビーコン車載器等を搭載することにより、特に車載安全制御装置1Dを搭載していなくとも上記双方向通信が可能である。
以降、実施の形態4の安全運転支援システムによる追突事故防止サービスの動作について説明する。
実施の形態4による本追突事故防止サービスは、前方移動体(例えば、図8の移動体P)に衝突する可能性がある車両(例えば、図8の直進車70)のドライバーに前方注意喚起を促すことにより、同一の道路(車線22)の同一方向に走行する移動体間における衝突事故の発生を抑制するものである。
図9に、実施の形態4の安全運転支援システムで用いる路側通信装置3Dの内部構成を示すブロック図である。
路側通信装置3Dは、路側無線通信装置入力部31、移動体情報変換部32、移動体情報出力部33、TTC演算モデル判定部34、路側無線通信装置35、路側装置情報取得部38及び路側装置情報蓄積部39から構成される。
路側装置情報取得部38は、路側移動体検出装置2、交通信号制御装置4及び中央装置5から移動体情報I1、移動体検出装置情報I2、信号情報I3、道路形状情報I4などを取得する。
路側無線通信装置入力部31(通信装置用入力部)は、上記双方向通信可能な車両から通信範囲Laの通過時にアップリンク情報AJ(車両ID、走行車線)を取得する。
移動体情報変換部32は、路側無線通信装置入力部31が取得したアップリンク情報AJに基づき第1の仮想移動体情報PM1を生成する。
TTC演算モデル判定部34(通信装置用移動体情報判定部)は、路側装置情報取得部301が取得した信号情報I3および道路形状情報I4に基づき、第1の仮想移動体情報PM1(により指示される仮想移動体)の移動モデル(等速、減速・停止)を判定して第1の仮想移動体情報PM1と共に判定結果情報RD4を出力する。
移動体情報出力部33(通信装置用移動体情報出力部)は判定結果情報RD4に基づき第2の仮想移動体情報PM2を生成・出力する。
路側装置情報蓄積部39は、路側装置情報取得部38が取得した移動体情報I1、移動体検出装置情報I2、信号情報I3、道路形状情報I4、および、移動体情報出力部33から通知された第2の仮想移動体情報PM2を蓄積する。
路側無線通信装置35は、車載安全制御装置1Dの情報提供装置10Dに対して、移動体情報I1、移動体検出装置情報I2、信号情報I3、道路形状情報I4及び第2の仮想移動体情報PM2を含む通信情報TM4を無線出力配信する。
図10は、実施の形態4の安全運転支援システムの特徴部である車載安全制御装置1Dの構成を示すブロック図である。車載安全制御装置1Dは図3で示した車載安全制御装置1Aを基本的に含み、かつ追加機能を付加した形で構成されている。
同図に示すように、車載安全制御装置1Dは、情報提供装置10D、情報再生装置20D、通信装置30D及び車載センサ装置47から構成される。
通信装置30Dは路側通信装置3Dより通信情報TM4を受ける。前述したように、通信情報TM4には、移動体情報I1、移動体検出装置情報I2、信号情報I3及び道路形状情報I4が含まれ、さらに、第2の仮想移動体情報PM2が含まれる。
情報提供装置10Dは、情報提供装置10Dが取得した通信情報TM4から、移動体情報I1(例えば、対象移動体の速度及び位置等)、移動体検出装置情報I2、及び信号情報I3を取得し、安全運転支援情報SJ4(たとえば、画像または音声情報)を情報再生装置20Dに出力するシステム構成となっている。
なお、他の実施の形態と異なり、移動体情報取得部11は通信装置30Dより第2の仮想移動体情報PM2をも取得し、TTC演算モデル判定部14Dに出力する。
情報提供装置10Dは、車載センサ装置47(例えば、車速パルス発生装置やGPS装置など)から車両の速度と位置のそれぞれを取得する自車速度情報取得部118と、自車位置情報取得部119を備えている。この点が実施の形態1〜実施の形態3における車載安全制御装置1A〜1Cと異なる点である。
なお、TTC演算モデル判定部14D、TTC演算処理部15D及び情報出力判定部16Dについては後に詳述する。また、通信装置30Dにおいて、路側通信装置3Dに対してアップリンク情報AJ(車両ID、走行車線)を通知する通信機能を具備しても良い。
図11は、路側通信装置3Dによる第2の仮想移動体情報PM2の生成・配信処理を示すフローチャートである。以下、図11を参照して、本路側通信装置3Dのポイントとなる動作である第2の仮想移動体情報PM2の生成・配信処理を説明する。
まず、ステップS41において、ETCや光ビーコン車載器等のアップリンク情報AJ送信用の通信機器を搭載した(対象)移動体と、通信範囲Laにおいて路側通信装置3Dと通信を開始し、路側無線通信装置入力部31が移動車からアップリンク情報AJを取得し、取得したアップリンク情報AJを移動体情報変換部32に出力する。
次に、ステップS42において、移動体情報変換部32は、ステップS41で当該アップリンク情報AJを第1の仮想移動体情報PM1に変換して、TTC演算モデル判定部34に出力する。
その後、ステップS43において、TTC演算モデル判定部34は、第1の仮想移動体情報PM1に基づき、対象移動体の移動モデル(等速、減速・停止)を判定し、判定した移動モデルを支持する判定結果情報RD4を第1の仮想移動体情報PM1に関連づけて移動体情報出力部33に出力する。
なお、TTC演算モデル判定部34による第1の仮想移動体情報PM1に基づく移動モデルの判定処理ニア用は後述する。
そして、ステップS44において、移動体情報出力部33は、判定結果情報RD4を参照して、第1の仮想移動体情報PM1に基づき第2の仮想移動体情報PM2を生成し、路側無線通信装置(出力部)35に対して出力する。
最後に、ステップS45において、路側無線通信装置35は、路側装置情報取得部38が取得している移動体情報I1,移動体情報I1、信号情報I3等を含む情報、あるいは移動体情報出力部33が取得している第2の仮想移動体情報PM2を逐次配信する。その結果、車載安全制御装置1Dを搭載した車両は路側通信装置3Dからの通信情報TM4を通信装置30Dにて受信することができる。
なお、路側装置情報取得部38が取得した情報(例えば、上述の実施の形態1〜実施の形態3で利用している移動体検出装置情報I2、信号情報I3、信号情報I3、道路形状情報I4等)は、路側装置情報蓄積部39に蓄積されており、移動体情報変換部32、TTC演算モデル判定部34、移動体情報出力部33のそれぞれから蓄積している情報を参照できる。
また、上述の第1の仮想移動体情報PM1および第2の仮想移動体情報PM2は、路側通信装置3D内で生成するという点でのみ、路側移動体検出装置2から路側通信装置3Dの路側装置情報取得部38に入力される移動体情報I1と異なり、情報の電文形式(フォーマット)は移動体情報I1,第1及び第2の仮想移動体情報PM1及びPM2間で同じものとする。
上述のステップS42における移動体情報変換部32が路側無線通信装置入力部31で取得したアップリンク情報AJを第1の仮想移動体情報PM1に変換する方法について、以下に具体的に説明する。
なお、実施の形態4において、原則、上述のアップリンク情報AJには車両IDと走行車線のみが含まれるものとし、対象移動体の速度や位置が含まれないものとする。
ここで、実施の形態4では移動体の位置は、前述したように、路側通信装置3Dの位置近傍を原点(0)とした相対距離(路側通信装置3Dの設置位置から下流側に向かって正値表現)で表すものとする。
移動体情報変換部32は、路側無線通信装置入力部31が取得したアップリンク情報AJを路側通信装置3Dに通知したアップリンク情報AJ送信用の通信機器を備えた対象移動体の速度を、道路形状情報I4に含まれる当該対象移動体が走行している道路の設定移動体速度Vdとして設定する。すなわち、対象移動体からのアップリンク情報AJの受信をトリガとして移動体情報変換部32は第1の仮想移動体情報PM1への変換処理を行う。
アップリンク情報AJを通信した対象移動体の位置に関し、前述したように、路側通信装置3Dの設置位置近傍を原点(“0”)としてし、当該対象移動体の進行方向を正とした座標軸(x)で移動体の位置を示すものとし、アップリンク情報AJは路側通信装置3Dの設置位置から、通信範囲Laだけ対象移動体の進行方向手前(すなわち、x=−La)で取得できるものとする(図8参照)。
この時、路側通信装置3Dの路側無線通信装置入力部31が、アップリンク情報AJを取得してから、移動体情報変換部32に通知されるまでの時間をアップリンク情報伝達時間Tdとすると、対象移動体の初期位置である移動体位置(距離)Lmは以下の式(13)により求められる。
移動体情報変換部32は、上述の演算を行うことで、アップリンク情報AJを第1の仮想移動体情報PM1(設定移動体速度Vd、移動体位置Lm)に変換し、この第1の仮想移動体情報PM1をTTC演算モデル判定部34に出力する。
次に、上述のステップS43におけるTTC演算モデル判定部34が、第1の仮想移動体情報PM1で示される対象移動体の移動モデルの判定処理について、以下に具体的に説明する。
TTC演算モデル判定部34は、第1の仮想移動体情報PM1が入力された時点において、路側装置情報取得部38が取得した信号情報I3の内容が、第1の仮想移動体情報PM1の進行方向に設置されている信号が「(1) 直進可」の灯色であると指示している場合、以下のように演算する。
すなわち、第1の仮想移動体情報PM1の示す移動体は、設定移動体速度Vdで等速走行するものとして判定し、判定結果(等速モデル)を指示する判定結果情報RD4と第1の仮想移動体情報PM1とを関連づけて移動体情報出力部33に出力する。
一方、信号情報I3が上記信号が「(1) 直進不可」の灯色であると指示している場合、以下のように演算する。
すなわち、第1の仮想移動体情報PM1の示す対象移動体は、当該対象移動体の進行方向にある減速・停止位置(実施の形態4では、図8の停止線SLとする)で停止するものとして判定し、判定結果(減速・停止モデル)を指示する判定結果情報RD4と第1の仮想移動体情報PM1とを関連づけて移動体情報出力部33に出力する。なお、判定結果情報RD4には減速・停止位置に関する情報が含まれる。
最後に、上述のステップS44における移動体情報出力部33における第2の仮想移動体情報PM2を生成処理について具体的な処理内容を説明する。
まず、移動体情報出力部33がTTC演算モデル判定部34から第1の仮想移動体情報PM1を取得した時点の時刻をTe=“0”とする。
ここで、時刻Teにおける第1の仮想移動体情報PM1で示される対象移動体の位置L(Te)とすると、移動体情報出力部33は、TTC演算モデル判定部34から入力された判定結果情報RD4が「(1) 等速モデル」を指示する場合、以下の式(14)により位置L(Te)を演算する。
また、等速モデルと判定された対象移動体が停止線SLまで到達するのに必要な時間を到達予測時間Tpとすると、以下の式(15)で表される。
移動体情報出力部33は、式(14)で求めた対象移動体の位置L(Te)が図8で示す未検出範囲Lw1(第1の未検出範囲)内に存在する場合、「L(Te)<Lw」において、周期的(例えば100msec周期)に仮想移動体の位置L(Te)を式(15)に沿って算出した値で更新し、更新した値を指示する情報を第2の仮想移動体情報PM2として生成して、路側無線通信装置35を介して通信情報TM4に含ませて車載安全制御装置1Dの情報提供装置10Dに対して無線出力する。
一方、移動体情報出力部33は、TTC演算モデル判定部34から入力された判定結果情報RD4が「減速・停止モデルの場合」を指示する場合、は以下のように演算を行う。
すなわち、第1の仮想移動体情報PM1で示される対象移動体は、減速度βで減速開始してから減速度で減速・停止位置(実施の形態4は、図8の停止線SL)で停止するのに必要な距離を制動距離L41、減速度βで停止するのに必要な時間を時間Tp41とすると、実施の形態3で用いた式(11-1),(11-2)と同様にして、以下の式(16-1),(16-2)で表される。
したがって、対象移動体の位置が「L(Te)≦Ls―L41」である場合は、設定移動体速度Vdで等速走行するものとして、上述の等速モデルと同様にして対象移動体の位置を更新し、対象移動体の位置が「L(Te)>Ls―L41」である場合は、速度βで減速を開始するものとして扱う。
すなわち、減速を開始した時刻を時刻Tp42、当該対象移動体が停止線まで到達する時間を時間Tpとすると、時間Tp42は以下の式(17)により求められる。
時間Tp42は、検出した対象移動体が減速を開始するまで等速運動を継続する時間と等価であることから、到達予測時間Tpは以下の式(18)で表される。
この時、時刻Teと減速開始時刻Tp42との大小関係によって以下の式(19-1),(19-2)によって移動車の位置L(Te)を求めることができる。なお、式(19-1)は式(14)と同じになる。
移動体情報出力部33は、対象移動体の位置が図8の未検出範囲Lw1内に存在する場合、すなわち、「L(Te)<Lw1」において、周期的(例えば100msec周期)に当該第1の仮想移動体情報PM1の位置を上述の式(19-1),(19-2)に沿って算出した値で更新した第2の仮想移動体情報PM2を生成して、路側無線通信装置35を介して車載安全制御装置1Dの情報提供装置10Dに対して無線出力する。
なお、正確には、路側無線通信装置35は路側装置情報取得部38より得られる移動体情報I1、移動体検出装置情報I2、信号情報I3及び道路形状情報I4を含む情報と、移動体情報出力部33より得られる第2の仮想移動体情報PM2を併せた通信情報TM4を車載安全制御装置1Dに対して無線出力する。
次に、第2の仮想移動体情報PM2を受信した車載安全制御装置1DのTTC演算モデル判定部14DとTTC演算処理部15Dの具体的な処理について記載する。
(TTC演算モデル判定部14Dの処理概要)
TTC演算モデル判定部14Dは、受信する路側通信装置3Dで生成した第2の仮想移動体情報PM2と路側移動体検出装置2で生成された移動体情報I1との選択は、演算される対象移動体の位置が移動体検出装置情報I2に含まれる未検出範囲Lw1に存在するか否かで判別するものとする。
すなわち、図8において対象移動体の位置Lが、「(1)L ≧ Li-Ldw-Ld」の場合、路側移動体検出装置2で生成された移動体情報I1(=検出範囲Ld及び検出開始オフセット距離Ldw内の対象移動体)を選択し、「(2)L < Li-Ldw-Ld」の場合、路側通信装置3Dで生成した第2の仮想移動体情報PM2(=未検出範囲Lw1内の対象移動体)を選択する。そして、TTC演算モデル判定部14Dは、選択した移動体情報(第2の仮想移動体情報PM2あるいは移動体情報I1)に基づき、モデル判定処理を行う。
なお、上記(1)の場合は、TTC演算モデル判定部14Dは、実施の形態1〜実施の形態3のTTC演算モデル判定部14A,14Bと同様の移動モデル判定処理を行って選択判定結果情報RD1Sを出力し、上記(2)の場合は、実施の形態4のTTC演算モデル判定部34と同様な移動モデル処理を行い、等速モデル、あるいは減速・停止モデルを指示する選択判定結果情報RD1Sを出力する。
なお、図8における検出開始オフセット距離Ldw(第2の未検出範囲)は、上記(1)において検出範囲Ld内と判定された対象移動体に関し、実施の形態1〜3における未検出範囲Lw(図2参照)と実質的に同等の意味を持つものとする。
(TTC演算処理部15Dの処理概要)
実施の形態4におけるTTC演算処理部15Dの具体的な処理について以下に記載する。なお、実施の形態4において、衝突事故発生予測位置P点は停止線SLとする。
TTC演算モデル判定部14Dから通知された選択判定結果情報RD1Sが「(1)路側移動体検出装置2で生成された移動体情報I1」に基づき得られた場合、実施の形態1〜実施の形態3の場合と同様に処理し、対象移動体が停止線SLに到達する所要時間(到達予測時間Tp)を計算する(式(3-2)、式(5)、式(7-2)、式(12-1),(12-2)を参照)。そして、この到達予測時間Tpを指示するTTC演算結果RT4を情報出力判定部16に出力する。
ただし、実施の形態1においては、衝突事故発生予測位置P点を交差点中心CCとしているため、実施の形態1における移動体情報I1の示す衝突判定距離Lpは、実施の形態2と同様にして停止線基準に変更する必要がある。
すなわち、式(6)から求められる衝突判定距離Lp2(停止線〜対象移動体間の相対距離)を実施の形態1における衝突判定距離Lpとして利用する必要がある。
なお、式(6)における停止線・交差点間距離Lcs値は、図8において(Li−Ls)と等価となる。
一方、TTC演算モデル判定部14Dから通知された選択判定結果情報RD1Sが「(2)路側通信装置3Dで生成した第2の仮想移動体情報PM2」に基づき得られた場合、TTC演算モデル判定部14Dにて対象移動体の移動モデルの判定が、等速モデルとして判定されている場合は式(15)を用いて、減速・停止モデルとして判定されている場合は式(18)を用いて、到達予測時間Tpを計算する。そして、この到達予測時間Tpを指示するTTC演算結果RT4を情報出力判定部16に出力する。
(情報出力判定部16Dの処理概要)
情報出力判定部16Dは、TTC演算処理部15Dより通知された対象移動体のTTC演算処理結果(到達予測時間Tpの値)RT4から、自車が前方の車両に追突するか危険性があるかを判定し、追突する可能性がある場合は、情報再生装置20Dに安全運転支援情報(例えば、画像または音声情報)SJ4を出力し、情報再生装置20Dが当該安全運転支援情報SJ4を再生することにより、ドライバーに前方の車両に対する注意喚起を行う。
この時、情報出力判定部16Dにおいて、自車(例えば、図8の直進車70)が前方車両(例えば、図8の移動体6p)に追突するかを判定する具体的な方法を以下に記載する。
情報出力判定部16Dは、まず、自車の位置Loと検出速度Voを自車速度情報取得部118および自車位置情報取得部119からそれぞれ取得する。
このとき、自車の位置は移動体情報I1,第2の仮想移動体情報PM2と同様に路側通信装置3Dの設置位置を原点として表されるものとする。
したがって、自車が停止線SLで到達する所要時間Txは、以下の式(20)によって表される。
自車が前方車両に追突する危険がある場合とは、自車が前方車両に追いつく可能性がある場合である。すなわち、「Tx≦Tp」となる前方車両が存在する場合に、自車が当該前方車両に追突する危険性があるものと判定する。
なお、上述のステップS42においてアップリンク情報AJに対象移動体の位置と速度が含まれる場合は、アップリンク情報AJに含まれる位置と速度を移動体情報変換部32で生成する第1の仮想移動体情報PM1の位置と速度の値として利用してもよい。
また、上述の実施の形態4においては、衝突事故発生予測位置P点を停止線SLとしていたが、進行方向の信号が赤など直進不可を示す場合において、前方移動体の停止位置としても良い。
図12は前方移動体の停止位置の求め方について説明するための説明図である。同図に示すように、移動体6p(移動体P)の進行方向に他の移動体がN台(ここでは4台と仮定)存在する場合、移動体6の停止位置SMは、停止線SLから移動体の想定車長Lv×Nの距離(=停止線オフセット距離Ls_offset)だけ当該道路の上流側(移動体の進行方向と逆向き)の位置するものとして扱う。すなわち、検出範囲Ldにおける対象移動体の最後尾位置に基づく可変停止位置である停止位置SMを衝突事故発生予測位置P点とする。
この時、TTC演算処理部15Dにおいては、対象移動体の位置を停止線SLからの相対距離で表し(図12の相対距離Lp2)、対象移動体が停止線に到達する所要時間(到達予測時間Tp)を計算していたが、対象移動体の位置を停止位置SMからの相対距離Lp3で表すことで、対象移動体が停止位置に到達する所要時間(到達予測時間Tp)を計算する。なお、対象移動体〜停止位置間の相対距離Lp3は以下の式(21)により表される。
また、進行方向に存在する対象移動体の台数が不明である場合、上述の停止線オフセット距離Ls_offsetを評価実験で予め求められた所定の値をとしても良い。
なお、進行方向に存在する対象移動体の台数が不明である場合とは、例えば、移動体検出装置情報取得部12が取得した移動体検出装置情報I2に含まれる路側移動体検出装置2の検出精度(例えば、対象移動体の検出確率、検出範囲に対象移動体が10台存在する場合に、5台検出している場合は検出確率50%の場合等)が低い場合などを指す。
(効果)
上述した実施の形態1〜実施の形態3では、衝突事故発生予測位置(P点)が、路側移動体検出装置2の検出範囲Ldの下流側(検出した対象移動体の進行方向)に配置されており、危険な事象が発生する前に、すなわち衝突可能性が生じる前、衝突する可能性のある危険な車両を事前に検出できる構成となっていた。
しかし、図8や図12に示すような危険な車両が前方に存在する場合は、当該危険車両が路側移動体検出装置2の検出範囲Ldに進入するまでその存在が検出されず、例えば、当該危険車両と車間距離が十分に無い場合においては、前方の危険車両の存在が当該路側移動体検出装置2にて検出された後、車載安全制御装置1A〜1Cによりドライバーに注意喚起しても、危険を確実に回避することが出来ない場合が生じる。
また、衝突事故発生予測位置(P点)が交差点中心CCまたは停止線SLなど所定の固定位置となっていたが、走行中の前方車両の最後尾の位置など動的に変化する場合について考慮していなかったため、例えば、信号が赤の場合に前方車両の位置に到達する時間を正確に計算できず、適切なタイミングで前方車両との衝突可能性をドライバーに通知できなかった。
しかし、実施の形態4の安全運転支援システムでは、路側通信装置3Dにおいて、上述の検出範囲Ld外に衝突事故発生予測位置P点が移動した場合(すなわち、図8の未検出範囲Lw1に対象移動体が存在する場合)においても、衝突事故発生予測位置(P点)の位置を推定し、車両に配信することを可能とするとともに、車載安全制御装置1Dにおいて、信号情報I3を考慮しつつ前方車両の最後尾位置に基づく停止位置SMを推定し、前方移動体との衝突可能性を判定する点において、実施の形態1〜実施の形態3より優れている。
その結果、実施の形態4における安全運転支援システムは、適切なタイミング(前方に追突する危険性のある車両が存在する場合に、ドライバーに注意喚起しないことは無く)でドライバーに安全運転支援を実施することを実現する。
このように、実施の形態4の安全運転支援システムにおける車載安全制御装置1Dは、TTC演算モデル判定部14Dによって、検出開始オフセット距離Ldw(第2の未検出範囲)における前方車の移動体6の運行状況である移動モデルを判定し、この移動モデルに基づき最終的に停止線SL、あるいは停止位置SM付近における前方車との衝突危険性度合を指示する安全運転支援情報SJ4を情報出力判定部16Dにより出力している。
したがって、安全運転支援情報SJ4によって、前方車が検出範囲Ld外に存在しても、衝突危険性度合を高い精度で、車載安全制御装置1Dを搭載した直進車70のユーザに警告することができる効果を奏する。
さらに、実施の形態4の安全運転支援システムにおける路側通信装置3Dは、TTC演算モデル判定部34によって、未検出範囲Lw1(第1の未検出範囲)における前方車の運行状況である移動モデルを判定し、この移動モデルに基づき未検出範囲Lw1における前方車の仮想位置を指示する第2の仮想移動体情報PM2を含む通信情報TM4を車載安全制御装置1Dに伝達している。
したがって、車載安全制御装置1D、第2の仮想移動体情報PM2に基づき、未検出範囲Lw1における前方車の仮想位置をも認識することにより、前方車との衝突危険性度合をより高い精度で得ることができる。
すなわち、車載安全制御装置1Dを搭載している直進車70の前方車となる対象移動体との衝突に関し、高い精度で、直進車70のユーザに警告することができる効果を奏する。
また、TTC演算モデル判定部34は、アップリンク情報AJの受信タイミングをトリガとしているにすぎないため、ETCや光ビーコン車載器等の普及度が高い通信装置からの送信信号をアップリンク信号として用いることができ、ほぼ全ての移動体6からアップリンク情報AJを取得することが期待できる。
さらに、実施の形態4の安全運転支援システムは、検出範囲Ldにおける前方車の最後尾位置に基づく停止位置SMをパラメータとすることにより、対象移動体である前方車との衝突に関し、より高い精度で、車載安全制御装置1Dを搭載した直進車70のユーザに警告することができる効果を奏する。