JP5247502B2 - 屋内ダニよけスプレー剤 - Google Patents

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Description

本発明は、屋内ダニよけスプレー剤に関するものである。
近年、居住環境の変化により、屋内にコナダニ、ヒョウヒダニ、ホコリダニ等の屋内塵性ダニ類が大発生し、不快感を与えるばかりでなく、アレルギー性喘息や皮疹を惹起する等の問題を生じている。
そこで、カーペットや寝具等に処理するための屋内用殺ダニ剤が求められてきたが、屋内では直接肌に接触する使用場面が多いためにより安全性の高い薬剤の開発が必要とされ、今なお的確な防除法は確立されていない。更に、アレルギー性喘息を引き起こすヒョウヒダニ類は、虫体の死骸そのものでもアレルギーの原因になることが明らかとなってきた。
かかる状況を背景として、屋内塵性ダニ類を殺すのではなく、人や患者にダニを近づけないようにする技術も模索され、これまでにいくつかの提案がなされている。例えば、特開平3−264504号公報には、オイゲノールやn−ヘキシルベンゾエート等を有効成分とする殺ダニまたはダニ忌避剤が開示されている。また、特開平6−16515号公報は、室内用ダニ防除剤の有効成分として、ベチバー油、パチョウリ油、クローブ油などの植物精油を、そして、特開2001−31508号公報は、1,8−シネオール、又はこの成分が多く含まれるユーカリオイルを開示し、天然産志向と安全性への配慮を謳っているが、屋内塵性ダニ類に対する忌避効果は満足するものとは言えない。
一方、本発明者らは、先に酢酸シンナミルや桂皮酸メチル等の桂皮酸誘導体がダニ忌避剤として有用であることを知見し、水性液剤に関する製剤特許を出願した(特開2006−89424号公報)。そして、この製剤の好ましい適用例として、水性液剤を吸い上げる吸液芯とこの吸液芯の上部に位置し吸い上げた水性液剤を放散させる蒸発部を備えた吸液芯タイプの屋内塵性ダニ防除品を提示した。このダニ防除品は、桂皮酸誘導体の揮散作用によりダニの嫌がる空間を造ることができ実用性の高いものであるが、対象物を速やかに直接処理する用途には適さない。
特開平3−264504号公報 特開平6−16515号公報 特開2001−31508号公報 特開2006−89424号公報
本発明は、ダニよけ成分として人畜に対する安全性の高い桂皮酸誘導体を用い、コナダニ、ヒョウヒダニ、ホコリダニ、ツメダニ等などに対して速効的な忌避効果を奏し得るとともに、忌避効果の持続性にも優れた屋内ダニよけスプレー剤を提供することを目的とする。
本発明は、以下の構成が上記目的を達成するために優れた効果を奏することを見出したものである。
(1)(a)ダニよけ成分である酢酸シンナミル、(b)消臭成分が天然の植物由来物質である柿抽出物、及び(c)炭素数1〜3の低級アルコールを含むダニ忌避剤組成物を、トリガーポンプにて塗布面に噴霧する屋内ダニよけスプレー剤であって、噴霧時の噴霧粒子径が50〜150μmである屋内ダニよけスプレー剤。
本発明の屋内ダニよけスプレー剤は、ダニよけ成分として有用な桂皮酸誘導体を用い、これに消臭成分を配合することによって、屋内塵性ダニ類に対して速効的な忌避効果を示し、しかもその持続性にも優れるのでその実用性は極めて高い。
本発明で(a)ダニよけ成分として用いる桂皮酸類縁体としては、例えば酢酸シンナミル、蟻酸シンナミル、桂皮酸メチル、桂皮酸エチル、p−メチル桂皮酸メチル、桂皮アルデヒド、α−ヘキシル桂皮アルデヒド、及び桂皮油などから選ばれた1種又は2種以上があげられる。これらの化合物のなかでは、酢酸シンナミル、桂皮酸メチル、桂皮アルデヒド、及び桂皮油が好ましく、なかんずく酢酸シンナミルが好適である。
桂皮酸誘導体の配合量は、ダニ忌避剤組成物全体量に対して0.1〜4.0質量%程度が適当であり、0.1質量%未満であると所望の効果が得られないし、一方4.0質量%を超えるとダニ忌避剤組成物の液性に問題を生じる場合がある。なお、前記化合物に幾何異性体や光学異性体が存在する場合、それらの各々やそれらの任意の混合物も本発明に包含されることはもちろんである。
本発明では、前記桂皮酸誘導体に加え、ダニよけ成分として、ベンズアルデヒド類及び/又はオイゲノール類から選ばれた1種又は2種以上を加えることによって忌避効果の増強を図ることができる。このような化合物としては、例えば、ヘリオトロピン、p−アニスアルデヒド、m−アニスアルデヒド、ペリラアルデヒド、オイゲノール、イソオイゲノール、ジヒドロオイゲノール、及びオイゲニルアセテートなどがあげられる。
本発明の屋内ダニよけスプレー剤には(b)消臭成分が配合される。(b)消臭成分は、カーペットや寝具類等、塗布対象物の嫌な臭いを消臭するのみならず、ダニ類が好む皮脂、汗といった餌の臭いを消臭してダニ類が寄り付くのを抑え、更に(a)ダニよけ成分と協働して忌避効果の持続性向上に効果的であることが認められた。
(b)消臭成分としては、カキノキ科、イネ科、ツバキ科(茶など)、イチョウ科、モクセイ科(シナレンギョウなど)、クワ科(イチジクなど)、ミカン科、キントラノオ科(アセロラなど)の中から選ばれる1種以上の天然の植物由来物質が好ましく、なかんずく、柿抽出物が好ましい。
このような植物由来物質もしくは植物抽出物、例えばポリフェノール類は、消臭成分として公知であるが、本発明で用いるダニよけ成分の効力増強成分として作用するという知見は全く新規なものである。その理由としては、ダニよけ成分の揮散性に何らかの相互作用を及ぼしているものと推定される。
(b)消臭成分の配合量は、天然物であれば抽出溶剤を留去した植物抽出物として、ダニ忌避剤組成物中0.005〜2.0質量%程度が適当であり、しかもダニよけ成分に対する比率として0.01〜0.5倍量程度であれば忌避効果の持続性向上作用を発揮する。
本発明で用いるダニ忌避剤組成物は、更に(c)炭素数1〜3の低級アルコールを含有する。かかる低級アルコールとしては、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)等があげられ、なかでもエタノールは速乾性に優れるためカーペットや寝具等の処理に好適である。低級アルコールの含有量は適宜決定できるが、水を混合してエタノール液とすれば火気に対する危険性を低減できるのでより好ましい。
本発明では、前記成分のほか、本発明の効果に支障を来たさない限りにおいて必要に応じ、他の溶剤、界面活性剤、可溶化剤、分散剤、ダニアレルゲン低減化剤、環状シリコーン等の衣類保護剤、安定化剤、着色剤、香料等を適宜配合してもよいことはもちろんである。
溶剤としては、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコールなどの炭素数3〜6のグリコール、これらのグリコールエーテル、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、灯油などの炭化水素系溶剤などがあげられる。
また、界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル類(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等の非イオン系界面活性剤や、ラウリルアミンオキサイド、ステアリルアミンオキサイド、ラウリル酸アミドプロピルジメチルアミンオキサイド等の高級アルキルアミンオキサイド系界面活性剤を例示することができる。
更に、本発明の屋内ダニよけスプレー剤は、カチオン系界面活性剤又はアニオン系界面活性剤を含有するダニアレルゲン低減化剤を配合してもよい。すなわち、生存ダニを対象区域から遠ざける一方、残った死亡ダニやダニの糞等についてはアレルゲン活性を低減化し、ダニアレルゲンに悩まされない清潔環境を効率的に提供しえるものである。
カチオン系界面活性剤としては、ジ長鎖アルキルジ短鎖アルキル型4級アンモニウム塩(ジステアリルジメチルアンモニウム塩、ジステアリルメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩、ジオレイルジメチルアンモニウム塩等)、モノ長鎖アルキルトリ短鎖アルキル型4級アンモニウム塩(ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルジメチルベンジルアンモニウム塩等)、トリ長鎖アルキルモノ短鎖アルキル型4級アンモニウム塩(トリラウリルメチルアンモニウムクロライド、トリステアリルメチルアンモニウムクロライド等)があげられる。なお、適量のカチオン系界面活性剤の配合は、処理繊維体に柔軟性を付与できるというメリットも有する。
一方、アニオン系界面活性剤としては、ラウリルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩などがあげられ、これらにフェノール系高分子を加えてダニアレルゲン低減化剤を構成してもよい。
ダニアレルゲン低減化剤の配合量は、0.2〜10重量%が適当であり、過度の施用は繊維体の感触を損ねる恐れを有するので好ましくない。なお、ダニアレルゲン低減化剤の配合を考慮する場合には、エタノールと水の混合溶剤(例えば、エタノール/水=50/50〜60/40)が適している。
本発明は、液剤、乳剤、水溶剤等の形態に調製されたダニ忌避剤組成物をトリガーポンプに充填し、噴霧時の噴霧粒子径が50〜150μmである屋内ダニよけスプレー剤を提供する。
噴霧粒子径が50μm未満であると、飛散噴霧粒子が多くなって塗布面への付着効率が低下し、その結果、消臭成分によるダニ忌避効果の持続性向上作用を期待できなくなるので好ましくない。
トリガーポンプは、その用途、使用目的等に応じて、適宜噴口、ノズル等の形状を選択すればよく、例えば、広角ノズル付きのタイプを用いれば、一度の操作で広い範囲を処理することが可能となり便利である。
こうして得られた本発明の屋内ダニよけスプレー剤は、リビングや和室、玄関などの室内で、畳、カーペット、ベッド、布団、枕、クッション、縫いぐるみ、布製ソファーなどに使用すれば、塗布面に付着、もしくは周囲に揮散したダニよけ成分が、生息するコナダニ、ヒョウヒダニ、ホコリダニ、ツメダニ等のダニ類に対して優れた忌避効果を奏するとともに、これらのダニ類を塗布面に寄せ付けない。しかも、消臭成分が対象塗布面の消臭効果のみならず、ダニよけ成分の忌避効果の持続性向上にも有効なので極めて実用的である。そして、用いるダニ忌避剤組成物が速乾性に優れるため、対象塗布面のシミやベタツキの心配がなく、利便性が高いというメリットも有する。
次に具体的な実施例に基づき、本発明の屋内ダニよけスプレー剤について更に詳細に説明する。
酢酸シンナミルを1.0質量%、柿抽出液を0.5質量%、(カキタンニンとして0.025質量%:酢酸シンナミルの0.025倍量)、95%エタノールを54質量%、及び水44.5質量%を含有するダニ忌避剤組成物を調製し、この水性液剤350mLをプラスチック樹脂製トリガーポンプに充填して本発明の屋内ダニよけスプレー剤を得た。本剤は消防法上の非危険物に該当し、噴霧時の平均噴霧粒子径は98μmであった。
この屋内ダニよけスプレー剤を、リビングのカーペットに対して1m2あたり約10mLスプレーしたところ、約1ケ月間にわたり屋内塵性ダニ類がカーペットに寄り付くことがなかった。本剤は速乾性に優れ、カーペットにシミやベタツキを生じなかった。
実施例1に準じて、表1に示す各種屋内ダニよけスプレー剤を調製し、ダニ忌避効果を評価した。
[ダニ忌避効力試験]
1000cm2の方形綿布に供試スプレー剤を1mL噴霧処理し、風乾後直径4cmの円形に裁断した。これを直径4cmのシャーレにはめ込み、その中央部に誘引用培地50mgを置いた。別に、直径9cmのシャーレに供試ヤケヒョウヒダニを培地とともに約10000匹放ち、この中央部に先に用意した直径4cmのシャーレを置いた。
同様に、噴霧処理しない綿布を用いて無処理区とした。
24時間後に綿布上に侵入したダニ数を計数し、次式に従って忌避率を算出した。
なお、試験は噴霧処理直後の綿布とこれを30日間室内に放置後の綿布について行った。

忌避率(%)=[無処理区の侵入ダニ数−処理区の侵入ダニ数]/無処理区の侵入ダニ数
×100
Figure 0005247502


試験の結果、本発明の屋内ダニよけスプレー剤は、ダニよけ成分として桂皮酸誘導体を含有し、これと消臭成分、及び炭素数1〜3の低級アルコールを組み合わせたダニ忌避剤組成物を用いることによって、屋内塵性ダニ類に対して速効的な忌避効果を示し、しかもその忌避効果が長期間持続することが認められた。
これに対し、ダニよけ成分として桂皮酸誘導体を用いた場合でも、比較例1のように、消臭成分を配合しないと、特に忌避効果の持続性の点で劣る傾向を示した。また、エタノールの替わりに灯油を用いた比較例2や、エアゾール形態となして噴霧粒子径を小さくした比較例3は、消臭成分を配合することによる前記効果を十分発揮し得なかった。なお、比較例2のスプレー剤は、塗布面に著しいベタツキを生じ実用的と言えなかった。更に、桂皮酸誘導体以外のダニよけ成分であるラベンダー油は、桂皮酸誘導体に較べて忌避効果が非常に低く、本発明の目的に合致し得なかった。このように、ダニよけ成分として桂皮酸誘導体を採用し、これと消臭成分、及び炭素数1〜3の低級アルコールを組み合わせてなる本発明の屋内ダニよけスプレー剤が、顕著な有用性並びに実用性を有することは明らかである。
本発明の屋内ダニよけスプレー剤は、屋内塵性ダニ類だけでなく、ゴキブリ等の屋内害虫にも適用できる可能性がある。

Claims (1)

  1. (a)ダニよけ成分である酢酸シンナミル、(b)消臭成分が天然の植物由来物質である柿抽出物、及び(c)炭素数1〜3の低級アルコールを含むダニ忌避剤組成物を、トリガーポンプにて塗布面に噴霧する屋内ダニよけスプレー剤であって、噴霧時の噴霧粒子径が50〜150μmであることを特徴とする屋内ダニよけスプレー剤。
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