従来、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の製品に代表される各種画像形成装置は、一般的に普通紙、葉書、ボール紙、封書、OHP用のプラスチック製薄板等のシート材を搬送させながらシート材表面上に画像を形成する装置である。また、スキヤナーや電子ファイリングシステム等の画像読取装置は、原稿を固定又は搬送させながらイメージスキャナーを用いて原稿上の画像情報を読み取る装置である。
画像形成装置の主な方式として、
(1)トナーを現像剤として用い、静電的な画像形成手段によってシート材、例えば紙の上にトナー像を形成した後、定着手段によって加熱及び加圧することにより、紙上にトナー像を溶融固着させて画像形成する電子写真方式。
(2)インクを現像剤として用い、機械的又は熱的反応を利用して微小なオリフィスを有するノズルを多数用いて構成された記録ヘッドから高速でインクを吐出させて紙上に画像を形成するインクジェット方式。
(3)インクリボンを現像剤として用い、サーマルヘッドを用いてインクリボンからインクを紙上に熱転写させて画像形成する熱転写方式。
がある。
これらの各画像形成装置において、画像記録材として使用するシート材、例えば紙の特性は、いずれの方式においても画像品質を確保するうえで重要である。主な支配的特性として、
・紙表面の粗さ
・紙の厚さ
の2種類が重要である。
画像形成時に加熱工程を有する電子写真方式と熱転写方式ではこれらの特性は各々熱抵抗と熱容量に関係するため画像形成後の画像の定着性に影響し、インクジェット方式では共にインクの浸透性に関係するため画像形成後の画像の濃度やにじみに影響する。このために、画像形成装置には、画像形成前の紙の表面の粗さと厚さを検知する機能の付与が望まれる。
一方、原稿搬送型画像読取装置においては、1枚ずつ搬送すべきシート材としての原稿が誤って複数枚重なったまま搬送された場合(以後、「重送」と称する。)、以下の問題がある。つまり、背後になった原稿の画像を読み取れないまま処理したり、原稿の搬送抵抗が増して搬送不良を招く重送問題がある。
これは画像形成装置においても、重なったままのシート材に画像を形成した場合の転写不良や定着不足など画質劣化や、同じく搬送抵抗が増して搬送不良を招くなどの共通の課題として存在する。
いずれの装置においても重送が発生した場合に装置の停止や速やかな使用者への重送の発生通知を行うことが望まれ、このために連続搬送中の紙の厚みが急激に増えたかどうかを検知する機能の付与が望まれる。
これらの機能を付与するには装置内で搬送中のシート材の表面粗さと、厚さ又は厚さ変化を高速高精度に検知して装置の制御にフィードバックさせる必要がある。
しかし、近年、この種の装置は、その製品の普及と共に、市場において小型化とコストダウンが強く求められており、既存の表面粗さ計や紙厚測定器のような大規模、高コストのシート特性検知システムを内蔵させることは困難である。また、表面粗さを高速に検知すること自体、技術的に困難であった。
本発明者は、既にこの課題解決のための手段として、圧電素子を形成したS字型の特殊なプローブを画像形成工程前の紙搬送路に設けて圧電信号の波形から紙の表面粗さと厚さを同時に検知可能な紙種検知センサを提案している(特許文献1及び2参照)。
以下に、このセンサの応用例として、電子写真方式の画像形成装置に用いた場合について説明する。
先ず、電子写真方式を用いたプリンタ(画像形成装置)の基本構成を図8に示す。
図8は、従来の電子写真方式の画像形成装置200の要部の概略構成図である。該画像形成装置200においては、帯電ローラ(帯電手段)1で感光ドラム(像担持体)2の表面を一様に所定の極性に帯電させた後、レーザー等の露光手段3によって感光ドラム2を露光した領域のみを除電して感光ドラム2上に静電潜像を形成する。そして、この潜像は、現像器(現像手段)4のトナー(現像剤)5によって現像されてトナー像として顕像化される。
つまり、現像器4のトナー5を現像ブレード(規制部材)4aと現像スリーブ(現像剤担持体)4bの間で感光ドラム2の帯電表面と同極性に摩擦帯電させる。また、感光ドラム2と現像スリーブ4bが対向する現像ギャップ部SにおいてDCとACバイアスを重畳印加し、電界の作用によってトナー5を浮遊振動させつつ感光ドラム2の潜像形成部に選択的に付着させ、トナー像とする。その後、このトナー像は、転写ローラ6と感光ドラム2で形成される転写ニップ部Nまで感光ドラム2の回転によって搬送する。
一方、画像が記録される、例えばシート材としての紙7は、給紙部を構成する紙収納箱7aから給紙ローラ対7cによって垂直搬送ローラ対7dまで先端部が給紙される。その後、この垂直搬送ローラ対7dによってシート材搬送ローラであるレジストローラ対7eまで搬送される。又は、紙7は、手差しトレイ7bから給紙ローラ対7cによってレジストローラ対7eまで搬送される。このように、紙7は、いずれかの経路を通して搬送される。
このレジストローラ対7eでは、紙7は、不図示のクラッチ機構或いは不図示のシャッター機構によって瞬間的に先端部の搬送を停止し、その際に紙先端部の平行性が補正される。その後、次の画像形成工程部へ再搬送され、転写上ガイド板9a及び転写下ガイド板9bの間に沿って予め規定された進入角度で転写ニップ部Nまで搬送される。
この転写前搬送ローラ7eから転写ニップ部Nまで紙7が搬送されるまでの間には、紙7がこの領域に搬送されて来るまでに接触した種々の部材との摺擦によって該紙7の表面が帯電している可能性がある。これは、静電的記録を行うに際して画像を乱す要因となる。従って、このような不要な帯電を取り除くための除電ブラシ8が搬送中の紙7の背面側に接するように設けられ、接地されている。
転写ニップ部Nにおいて感光ドラム2上のトナー像を形成するトナー5を静電的に引き付けて紙7側に移動させるためにトナー5と逆極性の高電圧が紙7背面の転写ローラ(転写手段)6に印加される。これにより、紙7の表面にトナー5が静電的に引き付けられてトナー像が紙7に転写される。紙7の裏面はトナー5と逆極性に帯電され、転写されたトナー5を保持し続けるための転写電荷が紙7の裏面に付与される。
最後に、トナー像が転写された紙7は、加熱回転体13と定着ニップ部Fを形成する加圧ローラ14で構成される定着器(定着手段)12まで搬送される。紙7は、ニップ部Fで予め設定されている定着温度を保持するように加熱回転体13側に設けられたヒータによって温度制御されながら加熱及び加圧されてトナー像が定着される。
尚、トナー像転写後の感光ドラム2の表面には極性の異なるトナー等の付着物が僅かに残る。そのため、転写ニップ部Nを通過した後の感光ドラム2の表面は、クリーニング容器(クリーニング手段)10で感光ドラム2表面にカウンター当接されるクリーニングブレード10aによって付着物が掻き落とされて清掃される。その後、感光ドラム2は、次の画像形成に備えて待機する。
以上の各構成において、上記帯電ローラ1、感光ドラム2、現像器4、クリーニング容器10の各構成要素は、交換周期が比較的短いため、これらを一体化したプロセスカートリッジ11の単位で交換可能にしたカートリッジ交換方式の装置として普及している。
この他にも、複数色のトナーを用いるカラー画像形成装置の普及も近年、その低価格化と共に進んでいる。例えば、一つの感光ドラムと複数の4色のカラー現像器を回転運動によって切り替えてさせて使用するロータリー現像方式や4つの感光ドラムと4色のカラー現像器を用いる4ドラム方式等がある。更に、4ドラム方式にも中間転写ベルト上に画像を多重転写した後に紙上に一括転写する中間転写方式と、紙自体を静電転写ベルトで保持搬送しながら直接紙上に多重転写を行う直接転写方式がある。しかし、基本的に紙の給紙部からレジストローラまでの機構は大差ない。従って、紙の特性検知に関する本発明を説明する本願明細書においては、これらの装置の詳細は省略する。
ここで、図8のレジストローラ対7eの下流側の転写上ガイド板9aと転写下ガイド板9bの間に設けられた部材が、紙の表面粗さ(シート材表面粗さ)と厚さ(シート厚)を同時に検知可能なシート材表面粗さ検知手段15である。本例では、シート材表面粗さ検知手段15は、圧電接触式センサ、即ち、S字型圧電接触式紙種検知センサとされる。
この位置にセンサ15を設ける理由は、紙カセット部7aからの給紙と、手差しトレイ部7bからの給紙のいずれの方向から給紙されても1つのセンサで検知できるように両者の搬送路の合流部に設けるためである。更には、レジストローラ対7eによる搬送力が十分作用して紙搬送状態が安定しているためである。
図9(a)は、このS字型圧電接触式紙種検知センサ15の断面拡大模式図である。
圧電接触式センサ15は、幅4mm、長さ10mm、厚さ0.2mmの短冊状SUS板金を所定の長さ、角度、曲率でS字型に折り曲げたS字型板金プローブ15aと、その平坦部に接着したシート状の圧電素子、即ち、圧電素子シート15bとを有する。更に、センサ15は、プローブ15aを保持する軸受け付きプローブホルダー15c、プローブ15aとホルダー15cの着脱を自在とする固定ネジ15d、回転軸15e、固定軸受け15fなどで構成される。斯かる構成のセンサ15は、転写上ガイド板9a上に固定され、プローブ15aは、シート材押さえ手段を構成する不図示のバネの作用により矢印方向に略0.1Nの力で回転軸15eを中心として回転可能に転写下ガイド板9bに当接されている。
このように設定されたセンサ当接部に上流側から紙7が進入してくると紙自体の搬送力を利用してプローブ15aの先端部は、紙表面を摺擦走査し、紙の表面粗さに応じて異なる摩擦抵抗力に対応する振動強度差がプローブ15aに発生する。その結果として圧電素子15bに紙の表面粗さに応じて異なる圧電信号差が生じ、これをもとに紙7の表面粗さを検知することが可能となる。
さらに、このセンサ15において、図9(b)に示すように、転写上ガイド板9aと下ガイド板9bの双方の下流側端部9a1、9b1を紙の搬送方向を折り曲げ、シート材をループさせるループ形成手段を形成することができる。つまり、本例にて、ループ形成手段は、屈曲構造9a1、9b1を設けた屈曲転写上ガイド板9a上と屈曲転写下ガイド板9bにて構成される。この構成にて、屈曲部9a1、9b1によって形成される紙7のループ形状差から紙の厚さを検出することが可能となる。
すなわち、薄紙7aのような紙では剛性が低いため、屈曲部9a1、9b1においても紙のループ高さは余り大きくならずプローブ15aの当接圧変化は少ない。一方、厚紙7bのような紙では剛性が高いため、屈曲部9a1、9b1において紙のループ高さは大きくなる。その結果として紙がプローブ先端部を上方向の矢印方向に持ち上げるように作用し、不図示のバネ(シート材押さえ手段)による下方向の矢印方向への加圧力に逆らう圧力を生じる。そのため、プローブ先端部と紙表面の当接圧は相対的に増大し、摩擦強度が増大してより強い圧電信号が発生するようになり、これを紙の厚さ情報として先の粗さ信号に重畳して検知することが可能となる。
以上の構成において、上記センサ15を取り付ける転写上ガイド板9aと対向配置される下ガイド板9bは、具体的には、図10に示すように、紙搬送ブロック16cの下流側表面16c1を流用している。紙搬送ブロック16cは、レジストローラ対7eの下側ローラ(固定ローラ)18を収納する固定ローラ保持部材としても機能している。センサ15を取り付けられた上ガイド板9aは、不図示の軸受けによってレジストローラ対7eの上ローラ、即ち、変位ローラ20の芯金20aに回転可能に取り付けられている。そして、上ガイド板9aは、不図示の加圧バネによって、搬送ブロック平面の紙搬送方向と直角方向の左右端部に設けられた不図示の3mm厚の搬送ギャップ確保用スペーサを介して、搬送ブロック16cに当接されている。このとき、上ガイド板9aの搬送ブロック16cへの当接圧は、センサプローブ15aの当接圧より1桁以上強い略1.5Nの力とされる。従って、万一、センサ15で紙が搬送不良を起こしてジャムした場合には、使用者が上ガイド板9aごとセンサ15を矢印R方向に持ち上げてジャムした紙を容易に除去出来るように構成されている。
ここで、このレジストローラ対7eの構成をより詳しく説明する。
図11(a)は、ローラ全体の斜視図である。図11(b)は正面図、図11(c)は上面図である。図12(a)は、レジストローラの軸受けを外した状態の端部を示す斜視図で、図12(b)は、側面図である。
ローラ駆動ギア17によって駆動される固定ローラとしてのレジスト下ローラ18は、下ローラ芯金18aに6つに分割されたゴムローラ18bを有し、下ローラ全体は芯金18aの端部のオイル含浸真鍮軸受け18cを介して下軸受板金18dで支持されている。この下軸受板金18dは、ネジ穴20d1を介して紙搬送ブロック16c(図11、図12には図示せず。図10参照)にネジ止めされているので、下ローラ全体は回転可能に紙搬走路に固定される。上記下軸受板金18d及び紙搬送ブロック16cは、固定ローラ保持部材を構成する。
一方、変位ローラとしてのレジスト上ローラ20は、上ローラ芯金20aに6つに分割された樹脂ローラ20b(20b1〜20b6)を有している。より詳細には、中央の4つの樹脂ローラ20b2〜20b5は、芯金20aに対して、個々に独立して回転自在に保持されている。また、各樹脂ローラ20bの左右部にはローラ間スペーサ20bsが設けられて各ローラ20bの軸方向位置を維持するようになっている。
上ローラ20全体は、芯金端部の樹脂軸受け20cを介して上軸受板金20dで支持されている。この上軸受板金20dは、ネジ穴20d1を介して下軸受板金18dと共に紙搬送ブロック16cに固定されている。この樹脂軸受け20cには加圧用コイルバネ19がアーチ状に取り付けられている。樹脂軸受け20cを取り付ける下軸受板金18dの取り付け穴18eは、図12(a)に示すように上下方向への長穴形状に加工されており、この穴18eの長手方向長さは、樹脂軸受け20cの上下方向高さより長くなっている。従って、図12(b)に示すように、紙が紙面の右手方向上流側からレジスト入り口ガイド21を介して進入し、上下ローラニップRN部に導かれてローラ間に挟持されると、その紙の厚さ分だけ樹脂軸受け20c及び上ローラ20全体が矢印Z上方向に持ち上がる。そして、紙が通過し終わると再び矢印Z下方向に戻るという動作を繰り返す。
このため、厳密にはこの上ローラ芯金20aに取り付けられている転写上ガイド板9aもシート搬送に伴って回転軸部側端部に上下動が生じ、加圧当接されている下流側先端部9a1の当接角度が変化するはずである。しかし、回転軸15eの変位は想定している紙厚の最大値が300μm程度でわずかなため、回転軸15eから数mm離れているセンサプローブ15aが取り付けられている部分の当接角度変化はほとんど無視できる。
以上のように構成され、配置されたセンサ15が検知する対象の紙の特性と画像形成装置における定着条件としては、図13に示すようになっている。図13の横軸は、坪量順に並べた紙の表面が比較的滑らかな平滑紙の種類を示しており、各紙の名前の先端のFは平滑、F’は平滑紙の再生紙を表し、その後の数字は坪量を示している。左の縦軸は紙の厚さとその紙の定着に必要な温度を表し、右の縦軸は紙の表面粗さRaを表している。グラフ中の各シート座における棒の種類にはベタ黒画像を定着させるために必要な温度と所定のパターンで構成されたハーフトーン(HT)画像の定着に必要な温度の2通りが示されている。このグラフから表面粗さRaが3μm程度以下の比較的平滑な紙同士では定着に必要な温度はほぼ紙の厚さに比例して増加し、同じ紙でもベタ黒画像よりハーフトーン画像の方が高い温度を必要とすることがわかる。
一方、図14は、表面の粗い紙種や表面の非常に滑らかなOHP用紙を含めた各種の紙に対して同様のグラフを作成した結果である。横軸は、同じく坪量順に並べた紙の種類を示し、新規の先端アルファベットの内、OはOHP用紙、Rは紙表面全体の繊維が荒れた状態で製造されたラフ紙、R’は平滑紙の表面に波状の形状加工を施された凹凸の激しいラフ紙を各々表している。このグラフから、定着に必要な温度は、基本的には紙厚に比例しつつもRaが3μmを超える粗さの紙になると紙表面の粗さのほうが支配的になることが分かる。また、最適な温度条件で制御するには紙の粗さと厚さの両方を知る必要があることが分かる。
この要求に対し、上記のループ形成手段としての屈曲部9a1を備えた屈曲ガイド板9aに取り付けたS字型圧電接触式紙種検知センサ15の基本性能を検証した。先ず、粗さ検知性能として、坪量が同じ(ほぼ紙厚も同じ)で表面粗さRaが3段階に分かれるような紙を選別して、紙を266mm/秒の速度で搬送して検知させた。その結果、紙の実際の粗さと検知信号の間には図15のような良好な相関が得られた。逆に、粗さがほぼ同じ(ほぼ紙厚も同じ)で厚さが3段階に分かれるような紙を選別して検知させると、図16のような良好な相関を得ることが可能であることが確認できている。
一方、上記圧電接触式センサ15を開発する以前には、画像形成装置などの紙搬送手段を有する装置に搭載されていた紙識別センサとしては、表面粗さを検知するセンサの開発例は少なく、主に紙の厚さのみを検知するセンサが開発、検討されている。
シート厚さ検知センサのみを使用する画像形成装置の例としては、シートの厚さに応じて転写条件を調整するという目的のために次に構成のものがある。
つまり、画像形成装置内の紙搬送手段であるローラ対の一方を紙搬送時に揺動可能としてこの揺動可能なローラを弾性部材と金属の複合材料で構成する。これにより、弾性部材部分で紙の搬送力を確保しつつ、金属部分の上方から赤外光を照射して反射光を受光素子で受けることで光学的にローラ変位を検知することでローラの変位量すなわち紙の厚さを算出する構成とされる(特許文献3参照)。
他の例としてレジストローラ部において瞬間的に停止されたシート先端部のたわみ量がシート厚さによって微妙に異なるため、その後の画像形成工程においてシート先端余白部の長さが異なる事を防止するという目的のために次の構成とされる。
つまり、レジストローラ部の直前のシート搬送路中央部にレバーを設けてレバーの一方の端を搬送路上に露出させる。また、他方の端を搬送路下側に設けられた磁気式(可動コアと2つのコイルを用いる方式)の変位センサに当接させる構成である(特許文献4参照)。
また、具体的なセンサ構成は示されていないが、特許文献5には、次の構成が示されている。
つまり、輪転式カメラのシートの重送検知を目的としてシート搬送ローラの片側軸受け部のみ変位可能なローラのシャフト部に直接変位センサを当接してシート厚を検知させる構成である。
特開2002−340518号公報
特開2005−170640号公報
特開平7−117890号公報
特開2003−118889号公報
特開平5−294511号公報
以下、本発明に係るシート厚識別装置、画像形成装置及び画像読取装置を図面に則して更に詳しく説明する。
実施例1
図1〜図3を参照して、本発明に係るシート厚識別装置の第一の実施例について説明する。本実施例にて、本発明のシート厚識別装置100は、先に図8を参照して説明した電子写真方式のプリンタとされる画像形成装置に採用されている。特に、本実施例では、シート材搬送ローラ対としてのレジストローラ対7eにて具現化されている。
従って、画像形成装置の全体構成及びその作動については、先の説明を援用し、詳しい説明は省略する。以下、シート厚識別装置100を構成する紙厚検知機能付きのレジストローラ対7eについて説明する。
ここで、図1は、本実施例における紙厚検知機能付きレジストローラ対7eの斜視図であり、図2(a)は、レジストローラ端部検知部の拡大斜視図であり、図2(b)はレジストローラ端部検知部の正面断面図である。また、図3(a)は、レジストローラ検知部内側側面図であり、図3(b)は、レジストローラ検知部外側側面図である。
尚、図1に示すレジストローラ対7eは、先に図11を参照して説明したレジストローラ対7eと同様の構成とされ、従って、図11に示した,固定ローラ18と変位ローラ20を備えたレジストローラ対7eと同一の構成及び機能をなす部材には同一符号を付している。
なお、シート材搬送ローラ対としてのレジストローラ対7eは、好ましくは、ローラ中央部から端部にかけて太鼓状のクラウン形状を有する。このような構成とすることにより、シート材搬送ローラ対は、ローラ中央部から端部にかけて太鼓状中央部のみに圧力が集中して長手方向にたわみが生じることを防止できる。従って、このようなたわみによって端部に設けたセンサの検知変位量と中央部の実際のシート材厚による変位量との誤差が生じることを防止できる。
本実施例では、図1に示すように、上述した電子写真方式の画像形成装置200(図8)に設けられている従来と同様のレジストローラ対7eの反駆動側の上ローラ(変位ローラ)20の少なくとも片側端部の軸受け部に磁気式変位センサ22を付設している。
従って、本実施例におけるシート厚識別装置100は、全体としてこのレジストローラ対7eのニップ部RNに搬送される紙の厚さを検知する紙厚センサとしての機能を有する紙厚検知レジストローラとして構成されている。
磁気式変位センサ22について詳細に説明する。
変位センサ22は、図2(a)に示すように、センサ用に改造された磁気式変位センサ用軸受け(変位部材付き軸受け)22aを有している。センサ22は、この軸受け22aに設けられた磁石取り付け穴22a1に、上から矢印Z方向にスライド調整固定可能に挿入される、変位ローラ20の変位量測定用の変位部材、即ち、磁石22c付き磁石支持板(磁石付き変位部材)22bを備えている。磁石22cは、前記変位ローラの変位方向と平行に表裏方向に着磁されている。更に、センサ22は、図2(b)に示すように、挿入後の上記磁石22cの表面と対向して、磁石付き変位部材22bの変位方向と平行に配置され、パッケージに納められた2つのホール素子であるホールIC22e付きホールIC基盤(支持板)22fを備えている。即ち、ホールIC2eを構成する2つのホール素子は、磁石22cの表面に平行な対向面上に変位部材22b及び変位ローラ20の変位方向に並べられている。
更に、センサ22は、このホールIC支持板22fを保持して軸方向(X方向)にスライド調整固定可能な、変位センサホルダー(即ち、ホール素子ホルダー)としてのIC支持板ホルダー22dを備えている。ホルダー22dには、上記ホールIC支持板22fをこのIC支持板ホルダー22dに取り付ける際の縦方向基準高さを有する台座22d1が設けられている。
このセンサ22の組み立て及び取り付け手順について説明する。
先ず、対をなす2つのホール素子にて構成されるホールIC22eを、配線パターンを形成されたホールIC基盤22fに半田等で取り付け、IC支持板ホルダー22dに台座22d1を接着又はネジ止め固定する。この台座22d1の上面にホールIC22eの下面を突き当てながらホールIC基盤22f全体をIC支持板ホルダー22dの垂直壁面に接着又はネジ止め固定する。
次に、通常の軸受けの代わりにレジストローラ端部に、変位部材付き軸受けとしての磁気式変位センサ用軸受け22aを取り付ける。そして、磁石取り付け穴22a1に上から矢印Z方向(図2(a))へと磁石付き変位部材である磁石支持板22bを挿入すると共に、IC支持板ホルダー22dを右側から矢印X方向(図2(a))にスライドさせていく。即ち、軸受け22aは、変位ローラ20の変位量測定用の変位部材22bを備えた変位部材付き軸受けである。
同時に、正面側から2軸方向スペーサ22gを矢印Y方向(図2(a))に挿入し、このスペーサ22gを中心として幅G1のスペーサ22gの壁の両面に磁石22c表面とホールIC22e表面を突き当て、高さG2の段差部上面に磁石22c下面を突き当てる。また、2軸方向スペーサ22g自体の下面を台座下基準面に突き当てるように各部材を圧接させながら磁石支持板上部に設けられた高さ調整用長穴22b1にネジを通して軸受け上部に設けられたネジ穴22a2で固定する。そして、IC支持板ホルダー22dに設けられたギャップ調整用長穴22d2にネジを通して上軸受板金20d及び下軸受板金18dと共に紙搬送ブロック16c(図2(a)、(b)には図示せず。図10参照)に固定する。その後、この2軸方向スペーサ22gを元の方向に引き抜いて取り付けを完了させる。
つまり、上記構成とされる本実施例によれば、変位部材付き軸受け22aは、変位ローラ20の軸方向の少なくとも片側端部の軸受けの変位方向と平行な端面上で変位方向に対して磁石取り付け位置を所定位置に可変に固定可能とされる。そして、ホール素子ホルダー22dは、磁石22cとの対向方向に対して所定位置に可変に固定可能とされる。これによって、詳しくは後述するように、初期設定位置として対をなすホール素子22eの中間位置と磁石中心を略一致させることができる。このため、磁石の変位方向両端位置と、対をなす2つのホール素子22eのホール素子間距離に応じて予め求められた変位量分解能が最も高くなる対向距離を得るように位置調整しながら固定することが可能となる。
また、互いに直交する変位方向(Z方向)と対向方向(X方向)の2軸方向に直交する第3の軸方向(Y方向)から挿入して変位方向及び対向方向の各所定位置に位置調整可能となるように2軸方向に所定厚さを有する2軸方向スペーサ22gを用いる。これにより、変位方向に対するホール素子対22eの中間位置と磁石中心位置合わせと対向方向に対する磁石22cとホール素子対22eの対向位置を位置決めを1つのスペーサ22gで容易に行うことができる。
このように、本実施例の構成によれば、変位部材付き軸受け22aは、少なくとも変位部材22bを変位方向と平行な方向に所定の範囲内で任意の位置に固定可能である。従って、対向配置させる磁石22c、変位センサ22eとの初期位置を自在に設定でき、所定の測定範囲及び測定精度を得るために最適な初期配置調整が容易となる。
また、本実施例において、上述のように、変位部材、即ち、磁石支持版22bを軸受け22aに固定した後、変位方向に対する変位部材22bと変位センサ22eとの位置調整を変位センサホルダー22d側にて行い得る構成とされるので、センサの設計自由度が高められる。
尚、上記構成において磁気式変位センサ用軸受け22aと2軸方向スペーサ22gには帯電しにくく且つ摺動摩擦の少ない導電性POMを使用している。
本実施例にて、磁石22cの形状及びサイズは1辺の長さ≦5mm(通常1mm〜5mm)の角型で厚さ2mm以下(通常1mm〜2mm)とされ、対をなす2つのホール素子22eの形状及びサイズは1辺の長さ≦5.2mm(通常1.24mm〜5.2mm)の角型で厚さ≦1mm(通常0.55mm〜1mm)のパッケージに収められたホールICとされる。つまり、本実施例では、磁石22cとしては5mm×5mm×2mmの大きさで表裏方向に着磁され、表面から3.1mm離れた位置における磁束密度が500Gとなるネオジウム磁石を用いている。ホールIC22eについては後述する。
上述のように、本実施例によれば、変位部材付き軸受け22aは、表裏方向に着磁された磁石22cを変位方向と同一平面内の軸受け端面に有する磁石付き軸受けとされる。
また、変位センサ22として上記磁石22cの表面と所定の空隙を隔てて平行な対向面内に変位方向と平行に並べた少なくとも2つのホール素子22eを内蔵するホールIC(サイズ=5mm×4.4mm×1mm)を用いている。これによって、レジストローラ対7eの軸端部の5mm×5mm×5mm程度のわずかな空間内に高精度の変位センサ22を構築できる。また、全体として元のレジストローラ対7eの搬送安定性や耐久性に依存して性能が決まる紙厚センサを容易に実現することが出来る。
このように、ホールIC22eと、対向配置された磁石22cで構成される変位センサ22としての磁気式変位センサが紙厚検知レジストローラ20に取り付けられる。この紙厚検知レジストローラ20の上記対向ギャップ中央部を境として内側方向を見た場合の断面構成は、図3(a)に示す通りである。又、外側方向を見た場合の断面構成は、図3(b)のようになっている。
図3(a)から分かるように、このレジストローラ対7e(固定ローラ20、変位ローラ18)のニップ部RNに紙が進入すると紙の厚さに応じて上ローラ20が持ち上がる。同時に端部の軸受け全体も持ち上げられるので中央に固定された磁石22cも持ち上がる。
ここで、軸受け22a及び磁石22cを取り付けている磁石支持板22bは、導電材とされる。本実施例では、アルミ製とされる。
また、本実施例によれば、少なくとも、軸受け22a、磁石付き変位部材(磁石支持板)22b、ホール素子ホルダー22dは、非磁性材質で構成されている。従って、周囲の磁性部材による磁束密度の部分的な変動が無くなり、ホール素子で検出する磁石22cの変位方向の両端部における磁束密度変化を純粋に磁石の変位の影響に基づく変化のみにして検知できるようになるので測定信頼性を高めることが出来る。
磁石支持板22bは、ネジ止め部に非磁性金属リング(図示せず)を挟みこみ、この金属リングに接続された配線の他方の端部をGND線22hを介してGNDに接地されている。従って、軸受け22a及び磁石支持板22bは、全体の電位をGNDに落とすように構成されている。これは、導電性とはいえ高速で回転するローラ端部と軸受け部の摺動摩擦帯電量が無視できない。更に、ローラに電気的に高抵抗の紙が通紙された場合、ローラ表面との摩擦及び剥離時の剥離帯電の影響がこの磁石支持板部22bまで達し、近接対向配置されているホールIC22eが静電破壊することを防止するためである。
このとき、このGND線の配線長としては上ローラ20の変位分を見込んだ余裕のある長さを選ぶと共に可能な限り剛性の低いしなやかな線材を選ぶ事は当然である。他の方法としてGNDに落とされた接点付き板バネ(図示せず)を磁石支持板表面に当接させても良い。ただし、その際には板バネの接触抵抗が軸受けのスムーズな変位運動を妨げないように加圧力や接触面積を調整する必要がある。
一方、図3(b)に示すように、磁石22cに対向するホールIC22e側の構成は、IC支持板ホルダー22d及び台座22d1を介して下固定ローラ18と共に搬送ブロック16c(図3(b)には図示せず。図10参照)に固定されている。
ホールIC22eの内部構成としては、本実施例によれば、上述のように、対をなす2つのホール素子H1、H2の形状及びサイズは、1辺の長さ≦5mmの角型で厚さ≦1mmのパッケージに収められたホールIC22eとされる。具体的には、ホールIC22eの中央縦方向にホール素子H1とホール素子H2が両素子の中心間距離として3.1mmを隔ててホールIC基盤22fに並べられており、ICパッケージのサイズとしては5mm×4.4mm×1mmである。
以上のように構成された電磁式変位センサ22の具体的な検知原理と検知結果について、図4〜図6を参照して、以下に説明する。
図4は、本発明の実施例1に係る紙厚検知機能付きレジストローラ対7eに用いた磁気式変位センサ22の信号処理ブロック図である。図5(a)は、変位量と検知信号の相関図であり、図5(b)は、2つのホール素子H1、H2の信号差分と変位量の相関図であり、図6は、実測紙厚と検知結果の相関図である。
先ず、信号処理及び制御動作の流れとしては、図4のブロック図に示すように、表裏方向に着磁され、上下に変位可能な磁石22cのN極表面に対してホール素子H1、H2が磁石22cの変位方向と平行に並べられている。磁石中心と両ホール素子H1、H2間の中心位置をほぼ一致させた状態で変位方向に対して磁石22cの上下端部から大きく離れないような位置に収まるように両ホール素子H1、H2間距離を決めて両ホール素子H1、H2を配置する。既存のホールICに合わせて磁石サイズを決めても良い。
磁石22cを上下方向に変位させると、一方のホール素子から遠ざかるときには他方のホール素子には近づく。従って、ホール素子H1とH2の出力信号レベルは、図5(a)に示しように、磁石中心とホール素子間中心が一致する場合のほぼ同じ信号レベルを境としてその左右の磁石変位領域で大小関係がほぼ対象に入れ替わる特性となる。このときの両ホール素子H1、H2の検知信号の差分を演算すると、図5(b)のように非常に直線性の高い信号特性が得られる。更に、この差分結果には磁束密度の絶対値が含まれていないので、初期位置が多少ずれていても検知結果には大きな影響が生じないというメリットがある。
このため、本実施例では、図4に示すように、ホール素子H1とH2が検知した各信号を取り込んだ演算処理部22iにて、まず、事前準備としてレジストローラニップ部RNに通紙が進入する前の両ホール素子H1とH2の検知信号の差分を演算する。次に、厚さが分かっている基準シートをレジストローラニップ部RNに通紙して同じく両ホール素子H1とH2の検知信号の差分を演算する。更に、これら2つの差分結果同士のさらに差分を演算した結果を内部に予め記憶させておく。次に、実際にレジストローラニップ部RNに紙厚不明の任意の紙が進入する前後の各状態に対して上記演算方法と同様に各状態の差分結果同士の差分を演算する。そして、先に記憶させておいた厚さが分かっている基準シートに対して同様に演算した結果に対する比率を演算する。これによって、任意の紙の厚さを把握することが出来るようになる。
次に、制御処理部22jにおいて、この任意の紙に対する紙厚検知結果を予め紙厚に応じて制御量が求められている紙厚と制御量の相関テーブルに照らし合わせることにより定着器12を制御することが可能となる。
以上の構成において、変位センサ単体としての変位量検知精度として、1μm程度の分解能を得ることは理論上可能である。しかし、実際のローラには偏心や紙搬送中の振動などの外乱の影響が避けられない。従って、検知精度を向上させるために、各ホール素子H1、H2の検知時には瞬間的な検知結果を用いないのが好ましい。つまり、少なくとも上下ローラ18、20の最大外径部が1回転以上回転する間の検知信号の積分値又は平均値を演算してこれらの演算結果に対して上記の差分演算を行うことが好ましい。
さらに、演算処理部では周囲の温度変化による検知精度の低下を防止する演算を行うことも可能である。すなわち、紙の進入前(シート材進入前)のホール素子H1の積算値又は平均値の演算結果をH1b、ホール素子H2の積算値又は平均値の演算結果をH2bとして算出する。そして、紙を挟持搬送中(シート材挟持搬送中)のホール素子H1の積算値又は平均値の演算結果をH1a、ホール素子H2の積算値又は平均値の演算結果をH2aとして算出する。そして、下記計算式(1)、
{(H1a−H2a)−(H1b−H2b)}/(H1a+H2a) ・・・・(1)
を演算する。
すなわち、各ホール素子H1、H2の検知信号の差分の紙の進入前後の差分結果と紙の進入前後の検知信号の和との比を取ることで信号差と信号和の双方に同等に含まれる温度依存性を相殺することが可能となる。
つまり、本実施例によれば、少なくともレジストローラ対7eの内の最大直径部のローラ1周分以上のシート材搬送時間における各ホール素子H1、H2の検知信号の積算値又は平均値を演算手段にて演算する。上記演算式(1)を演算する演算手段にて演算した結果の絶対値をシート厚識別信号として用いることにより、常にシートが無い状態における信号レベルを基準としてシート搬送中の信号の相対的変化を捉えることができる。これによって、長期使用中の信号レベルの変動成分の影響を除去しつつ、ローラ1周分以上の平均値を用いることで搬送ローラ自体の偏心及びギアや加圧バネによる振動などシート厚測定に対してノイズとなる成分を平均化して削減することができる。また、2つのホール素子H1、H2の信号差分を信号和と比に演算して変換することによりホール素子自体が有する温度特性をキャンセルして測定中の周囲の環境変化に対しても安定した結果が得られるようになる。
尚、上記計算式では分母とした信号和として紙の進入時の検知信号のみを用いたが、短時間に温度変化が激しい場合にはさらにこの分母において紙の進入前との差分を演算しても良い。
図6は、以上の構成を用いて周辺温度の影響も加味して演算した結果と実際の紙の厚さとの相関を求めたグラフである。
このグラフから分かるように、本実施例の構成による紙厚検知性能は、検知条件として紙のバタツキや機械的振動などノイズの多い装置内での高速紙搬送中の測定であったにも関わらず、良好であった。
つまり、紙厚測定器で静止状態の紙厚を測定した実際の紙厚(熊谷理機工業社製のJIS紙厚計を使用、1枚の紙の3箇所を測定し、各紙種ごとに2枚ずつ測定した結果の平均値)との相関が非常に高かった。
また、比較のためこの測定と同時にレジストローラの上から市販のレーザ変位計(KEYENCE社製 LK−G30)を用いて求めた上ローラ変位量との相関を確認した結果、図7のようになった。すなわち、本実施例のセンサの検知性能はこのグラフと比べても遜色なく、レーザ変位計とほぼ同等の性能であることが確認できた。
以上のように、本実施例の紙厚センサ22を用いれば、既存の電子写真方式の画像形成装置のレジストローラ端部の軸受けを交換して安価な磁石22cとホールIC22eを取り付ける程度の簡単な変更を行うだけでよい。そのため、大幅な装置の大型化やコストUPを招くことはない。
また、検知部は紙や変位部材と非接触に設けられているので、センサの耐久性はレジストローラの耐久性に準じて装置寿命まで使用可能であるうえ、市販のレーザ変位計並みの測定精度で装置内部に搬送される紙の厚さを検知することが可能となる。そのため、従来の紙の表面粗さ(シート材表面粗さ)と紙厚(シート厚)を重畳検知する圧電接触式センサと組み合わせて使用することができる。これにより、各紙種に応じて必要最小限の電力で定着を制御する際、紙厚に応じて定着条件を変更する要素の信頼性の飛躍的な向上とよりきめ細かな制御を可能とする。従って、省エネと高品位の定着画質を促進することが出来るようなる。
尚、圧電接触式センサと組み合わせて使用する際の形態としては、次の形態が考えられる。
(1)圧電接触式センサを粗さ専用センサに設定する場合:
圧電接触式センサの搬送路当接部において紙にループが生じないように搬送路形状やセンサ周囲の紙押さえ部材の押さえ力を強化する。そして、圧電接触式センサで紙の粗さ情報、紙厚検知機能付きレジストローラで紙の厚さ情報を各々分担して検知し、演算部において両情報を総合的に処理して制御を行う。
(2)圧電接触式センサ自体の厚さ検知情報も利用する場合:
圧電接触式センサの搬送路当接部において紙にループが全く生じない構成にするよりもループが生じることを許容して安価に構成する。そして、圧電接触式センサの検知結果と、紙厚検知機能付きレジストローラによる紙の厚さ情報を比較する。これによって、圧電接触式センサが同一レベルの信号を検知した場合、紙厚検知機能付きレジストローラで検知した紙の厚さの割に圧電接触式センサの信号レベルが高い場合にはその紙を粗い紙と判断する。逆に、紙厚検知機能付きレジストローラで検知した紙の厚さの割に圧電接触式センサの信号レベルが低い場合には、その紙を平滑紙と判断して、より明確な制御を行う。
などの2通りの形態がある。
また、先の公知例にあるような他の紙厚センサのみを用いる装置の使用目的に対しても本実施例の紙厚センサを使用できることは言うまでもない。これらの従来構成に対して検知精度及び耐久性を飛躍的に向上し、より安価で小型の装置を実現することが出来るようになる。
実施例2
図17〜図19を参照して、本発明に係るシート厚識別装置100の第二の実施例について説明する。本実施例にて、本発明のシート厚識別装置100は、先に図8を参照して説明した電子写真方式のプリンタとされる画像形成装置に採用されている。シート厚識別装置100は、本実施例においても、実施例1と同様に、レジストローラ対7eに具現化されている。
従って、画像形成装置の全体構成及びその作動については、先の説明を援用し、詳しい説明は省略する。以下、シート厚識別装置100を構成する紙厚検知機能付きのレジストローラ対7eについて説明する。
ここで、図17は、本実施例における紙厚検知機能付きレジストローラ対7eの斜視図であり、図18(a)は、レジストローラ端部検知部の拡大斜視図であり、図18(b)はレジストローラ端部検知部の上流側側面図である。また、図19は、レジストローラ検知部の側面図である。
尚、図17に示すレジストローラ対7eは、先に図11(a)〜(c)を参照して説明したレジストローラ対7eと同様の構成とされ、従って、図11に示したレジストローラ対7eと同一の構成及び機能をなす部材には同一符号を付している。
本実施例では、図17に示すように、上述した電子写真方式の画像形成装置に設けられているレジストローラ対7eの反駆動側の上ローラの少なくとも片側の端部に設けた軸受け20cに側面型磁気式変位センサ22Aを付設している。
従って、本実施例におけるシート厚識別装置100は、全体としてこのレジストローラ対7eのニップ部RNに搬送される紙の厚さを検知する紙厚センサとしての機能を有する紙厚検知レジストローラとして構成されている。
側面型磁気式変位センサ22Aについて詳細に説明する。
本実施例にて、センサ22Aは、図17〜図19に示すように、実施例1では上ローラ20の軸方向に対向させていた磁石22cとホールIC22eを、紙の進入方向上流側の軸受け20cの側面に90度移し替えた構成とされる。そして、ホールIC22e側をスライド調整させる構成となっている。
更に説明すると、センサ22Aは、上流側側面部に磁石取り付け面を形成した変位部材付き軸受けとしての側面型磁気式変位センサ用軸受け22Aaを有している。センサ22Aは、この軸受け22Aaの上流側側面22Aa1に固定される磁石22c付き側面磁石支持板(変位部材)22Abと、この磁石22cに対向して配置され上下方向(Z方向)にスライド可能なホールIC22e付き高さ調整機能付きホールIC基盤(支持板)22Afとを備えている。
更に、図18(b)に示すように、センサ22Aは、変位センサホルダーとしての側面型IC支持板ホルダー22Adを備えている。側面型IC支持板ホルダー22Adは、ホールIC支持板22Afを上下方向(Z方向)(図18(a))にスライド調整固定とするためのIC高さ調整用長穴22Ad1と、紙搬送方向(Y方向)(図18(a))にもスライド調整固定可能な側面ギャップ調整用長穴22Ad2を有する。
このセンサの組み立て及び取り付け手順を説明する。
先ず、側面型磁気式変位センサ用軸受け22Aaの上流側側面に磁石22c付き側面磁石支持板22Abを接着固定し、実施例1の上ローラ反駆動側端部軸受け22a(図2(a)、(b)参照)と交換する。
次に、縦方向のスライド調整工程を可能とする差込穴22Ae1を有するホールIC基盤22AfにホールIC22eを半田等で取り付ける。そして、IC支持板ホルダー22Adの垂直壁面にホールIC基盤22Afを上から矢印Z方向(図18(a))に差し込みつつ、IC支持板ホルダー22Ad全体を紙搬送方向下流側の矢印Y方向(図18(a))にスライドさせる。同時に、実施例1と基本的に同様の2軸方向スペーサ22gを磁石22cとホールIC22eの対向部に軸方向(X方向)に向かって挿入する。これによって、各部材を圧接させながらホールIC基盤22AfをIC支持板ホルダー22Adに設けられたIC高さ調整用長穴22Ad1にネジを通してホールIC基盤上部に設けられたネジ穴22Ae2で固定する。そして、IC支持板ホルダー22Adに設けられた側面ギャップ調整用長穴22Ad2にネジを通して上軸受板金20d及び下軸受板金18cと共に紙搬送ブロック16c(図18(a)には図示せず。図10参照)に固定する。その後、この2軸方向スペーサを元の方向に引き抜いて取り付けを完了させる。
本実施例も実施例1と同様に、2軸方向に所定厚さを有する2軸方向スペーサ22gを用いる。そして、スペーサ22gを、互いに直交する変位方向(Z方向)と対向方向(Y方向)の2軸方向に直交する第3の軸方向(X方向)から挿入して磁石22cとホールIC22eを変位方向及び対向方向の各所定位置に位置調整可能とする。これにより、変位方向に対するホールIC22eのホール素子H1、H2の中間位置と磁石中心位置合わせと、対向方向に対する磁石22cとホール素子対22eの対向位置の位置決めを1つのスペーサ22gで容易に行うことができる。
このように、本実施例の構成によれば、変位部材付き軸受け22Aaは、上記構成により、少なくとも変位部材22Abを変位方向と平行な方向に所定の範囲内で任意の位置に固定可能とする。従って、対向配置させる変位センサ22c、ホールIC22eとの初期位置を自在に設定でき、所定の測定範囲及び測定精度を得るために最適な初期配置調整が容易となる。
また、本実施例においても、上記実施例1と同様に、変位部材22Abを軸受け22Aaに固定した後、変位方向に対する変位部材22Abと変位センサ22cとの位置調整を変位センサホルダー22Ad側にて行う構成とされるので、センサの設計自由度が高められる。
上述のように、本実施例では、紙厚センサ22Aもセンサ部自体は非接触のため、耐久性は本体の寿命間で確保されており、汚れに対しても光学式のような欠点がない。従って、メンテナンスフリーで使用でき、特に紙厚の検知精度が高くなるので従来よりきめ細かい制御や誤検知防止を実現できる。
尚、本構成においても、実施例1と同様に、磁気式変位センサ用軸受け22Aaと2軸方向スペーサ22gには帯電しにくく且つ摺動摩擦の少ない導電性POMを使用している。また、磁石22cとしては5mm×5mm×1mmの大きさで表裏方向に着磁され表面から3.1mm離れた位置における磁束密度が500Gとなるネオジウム磁石を用いている。
このように、変位センサとして、ホールIC22eと対向配置された磁石22cで構成される側面型磁気式変位センサ22Aを取り付けられた紙厚検知レジストローラの側面構成は、図19のようになっている。そして、実施例1と同様に磁石支持板22Abは、GNDに接地されている。
本構成を用いた場合のセンサとしての作用効果は、基本的に実施例1の場合と同等である。既存の電子写真方式の画像形成装置のレジストローラ端部の軸受け22a及び支持ホルダー22d(図2(a)参照)を交換して安価な磁石22cとホールIC22eを取り付ける程度の簡単な変更を行うだけでよい。従って、大幅な装置の大型化やコストUPを招くことはない。
また、検知部は、上述のように、紙や変位部材と非接触に設けられているのでセンサの耐久性はレジストローラの耐久性に準じて装置寿命まで使用可能である。その上、市販のレーザ変位計並みの測定精度で装置内部に搬送される紙の厚さを検知することが可能となる。従って、従来の紙の表面粗さと紙厚を重畳検知する圧電接触式センサ15と組み合わせて使用することが可能である。それによって、各紙種に応じて必要最小限の電力で定着を制御する際、紙厚に応じて定着条件を変更する要素の信頼性の飛躍的に向上とよりきめ細かな制御を可能とし、省エネと高品位の定着画質を促進することが出来るようなる。
更に、本実施例の構成の利点として、次のことが上げられる。
つまり、実施例1では万一軸受け22aを交換する作業が必要な際に、一度磁石付き板金22bを取り外して上ローラ芯金20a端部を露出させてから軸受け固定用Eリング20a3(図2(b)参照)を芯金端部から外す。その後、芯金端部から軸受け22aを引き抜く。このように、手間がかかる。
これに対し、本実施例の構成では初めから芯金20a端部は露出しているので、そのままEリング20a3を芯金20aの端部から外して軸受け22Aaを引き抜くだけの作業ですむ。また、この特徴を生かして軸受け成型時に磁石付き磁石支持板22Abを一体で形成することも可能となる。また、軸端部と装置本体フレームの間のスペースが狭い場合にも本実施例の構成であれば軸端部の手前側からアクセスできるのでセンサの調整作業が必要な際の作業性を向上することもできる。
実施例3
図20、図21(a)、(b)、及び、図22(a)、(b)を参照して、本発明に係るシート厚識別装置100の第三の実施例について説明する。本実施例は、上記実施例3のシート厚識別装置100を改良したものである。
図20は、上記実施例2の紙厚検知機能付きレジストローラ対7eの検知部の側面図である。図21(a)及び図21(b)は、それぞれ、本実施例に採用する傾き防止ガイドの側面図及び傾き防止ガイドの斜視図である。図22(a)は、改良後における本実施例3に係る紙厚検知機能付きレジストローラ対7eの検知部の拡大斜視図であり、図22(b)は、改良後の検知部の側面図である。
尚、図20〜図22において、図17〜図19に示したと同一の構成及び作用をなす要素には同一符号を付している。
本実施例では、基本的に構成要素である各部材の材質や形状等は全て実施例2と同じである。
実施例2と同様の構成に対する側面図である図20において、静止している図20の左図の状態では磁石22cとホールIC22eは、ギャップG1=3.1mmで平行に対向している。しかし、ローラが駆動されて回転する際、上下ローラニップ部RNに紙が進入した直後と通過した直後において紙による搬送抵抗の有無差が生じるため微小な回転ムラを招く可能性がある。また、シート搬送ローラ対7eは、本実施例では、レジストローラ対として使用しているため、クラッチ機構を用いる場合にはローラ回転のON/OFFを繰り返す。また、シャッター機構を用いる場合にはシャッターによって瞬間的に搬送抵抗が増大する等の不連続動作を行う。そのため、回転が遅くなった状態及びその状態から復帰する際に、軸受け20c内面と上ローラ芯金20aの摩擦抵抗が瞬間的に増加し、芯金20aの回転に伴って一時的に軸受け20c自体も回転しようとする作用が働く場合がある。
一方、芯金用軸受け20cの左右横方向の幅とこれを保持する変位センサ用軸受板金22Aaの長穴の横方向の幅には、軸受けの取り付け及び上下方向への変位を滑らかに行うために0.02mm前後のわずかな隙間が設けられている。このため、上記の瞬間的な回転力が軸受け20c自体に生じると、軸受け20cはこの軸受板金22Aaの長穴とのわずかな隙間の範囲で微小回転し、軸受け22Aa全体が一時的又は回転動作中継続してわずかに傾くことがある。
上記の傾きが図20の右図に示す矢印R方向に生じた場合、この傾きによって軸受け側面部で磁石22cとホールIC22eの対向部では各々の上端部と下端部の対向距離に変化が生じる。例として軸受け22Aa全体が矢印R方向に2°傾いた場合、初期ギャップ3.1mmに対して、磁石上端部とホールIC上端部間距離は略3.04mm、磁石下端部とホールIC下端部間距離は略3.2mmと変化する。当然ながら、このように磁石22cとホールIC22eが傾いて対向配置された場合には、垂直方向の変位量の測定に誤差が生じることとなり好ましくない。
このため、本実施例では、傾き防止ガイド、即ち、回転規制部材23を用いて上記軸受け傾き対策としている。つまり、回転規制部材23は、図21を参照して、垂直壁23aと、垂直壁23aを支える底壁23bと、垂直壁23a及び底壁23bの一側に配置された側壁23cとを備えている。側壁23cは、図21(a)に示すように、垂直壁23aの上端から底壁23bへと延在し、側面図において台形状とされ、また、垂直壁23aの上部と下部に緩やかな曲面で構成される2つのコブ状突起23a1が水平に且つ互いに平行に形成されている。
また、回転規制部材23は、図21(b)に示す斜視図のように、底壁23bにネジ穴23b1を有している。
この回転規制部材23は、図22(a)の斜視図に示すように、側面型磁気式変位センサ用軸受け22Aaの磁石取り付け面と逆側の左側面部に取り付けられる。その際、回転規制部材23は、図22(b)の側面図に示すように、側面型磁気式変位センサ用軸受け22Aaの左側面部に矢印X方向に適度な加圧力で押し付ける。そして、押し付けながら、この回転規制部材23を回転規制用側面型IC支持板ホルダー22Ad上に固定する。ホルダー22Adの底面には、回転規制部材23をネジ止めするための不図示の長穴が加工されている。
本実施例の構成を用いることにより、紙搬送中に上下ローラ18、20に生じた回転ムラによって万一軸受けに回転力が作用したとしても、上記回転規制部材23が軸受けの傾きを防止するので、軸受けの上下方向の変位量の検知精度の悪化を防止できる。
尚、本構成において、上記回転規制部材23は、軸受け22Aa側面部と上下方向に高速で摺動を繰り返すため、その接触部の摩擦抵抗が大きいと、逆に軸受け22Aaのスムーズな上下方向の変位動作を妨げてしまう恐れがある。その場合には測定信号にノイズとして検知されてしまう。特に一度厚い紙によって高く持ち上げられた後、スムーズに初期位置に戻れず、その高さに保持されたまま次に薄い紙が通紙された際には誤検知してしまう恐れがある。
このため、本実施例の構成の回転規制部材23は、材質として摩擦係数の少ないフッ素樹脂を用い、押し付ける加圧力としても全体で0.5N以下の軽圧で当接している。また、本実施例では上下2箇所のコブ状突起部23a1のみで接触させることで摩擦抵抗を抑えているが、これに替えて回転自在なコロなどの部品を介して当接させても良いことは言うまでもない。
実施例4
図23〜図26を参照して、本発明に係るシート厚識別装置100第四の実施例について説明する。本実施例にて、本発明のシート厚識別装置100は、先に図8を参照して説明した電子写真方式のプリンタとされる画像形成装置200に採用されている。シート厚識別装置100は、本実施例においても、実施例1と同様に、レジストローラ対7eに具現化されている。
従って、画像形成装置200の全体構成及びその作動については、先の説明を援用し、詳しい説明は省略する。以下、シート厚識別装置100を構成する紙厚検知機能付きのレジストローラ対7eについて説明する。
ここで、図23は、本実施例における紙厚検知機能付きレジストローラ対7eの検知部拡大斜視図である。図24(a)は、検知部露出上面図であり、図24(b)は、L型変位板金の斜視図であり、図24(c)は、検知部露出斜視図である。図25は、検知部断面図である。又、図26は、検知部の側面図である。
尚、図23〜図26において、図11及び図12に示したと同一の構成及び作用をなす要素には同一符号を付している。
上記実施例では、上述した電子写真方式の画像形成装置200においては、レジストローラ対7eの反駆動側の上ローラの少なくとも片側の端部に設けた軸受板金20dに、ホールIC22eと磁石22cによる磁気式変位センサ22、22Aが設けられていた。
これに対して、本実施例では、図23に示すように、レジストローラ対7eの反駆動側の上ローラの少なくとも片側の端部軸受板金20dに、上記実施例における磁気式変位センサ22、22Aの代わりに電磁式変位センサ24が設置されている。
つまり、本実施例においては、シート材搬送ローラ対としてのレジストローラ対7eは、電磁式変位センサ24を設けることにより、全体として紙厚検知レジストローラを構成している。つまり、レジストローラ対7eは、レジストローラ対7eのニップ部RNに搬送される紙の厚さを検知する紙厚センサとしての機能を有する。
電磁式変位センサ24の詳細について説明すると、センサ24は、図23に示すように、センサ用に改造された電磁式変位センサ用軸受け24aを備えている。センサ24は、更に、この軸受け24aに設けられた変位板金取り付け穴(ガイド溝)24a1(図24(c))に上から矢印Z方向(図23)にスライド調整固定可能に挿入される変位部材である導電材のL型変位板金(L字型変位部材)24bを有している。センサ24は、この電磁変位センサ24cを保持して軸方向にスライド調整固定可能な変位センサ保持部材としての電磁変位センサホルダー24dを備えている。また、L型変位板金24bは、垂直壁24b1と、底壁24b2とを有し、L形状とされる。従って、軸受け24aに挿入された後のL型変位板金24bの底壁24bの底面と、上記電磁変位センサ24cとは、対向して配置されることとなる。
このセンサ24の組み立て及び取り付け手順を説明する。
先ず、電磁式変位センサ用軸受け24aを軸受けとして通常の軸受けと同様の方法で上ローラ20の端部に取り付けておく。次に、図24(a)に示すように、円盤状の電磁変位センサ24cを変位センサホルダー24dに設けられた取り付け穴部24d1に接着固定などの方法で取り付ける。更に、この変位センサホルダー24d全体は、その取り付け穴部24d1を上軸受板金20d及び下軸受板金18dの各取り付け穴部に重ねて共に紙搬送ブロック16c(図23、図24には図示せず。図10参照)に固定する。
次に、図24(b)に示すように、L字型に折り曲げられ、上部に長穴24b3、中央に角穴24b4を開けられたL型変位板金24bを軸受け24aの上から図24(c)に示す軸受け左右側面部に設けられたガイド溝24a1に沿って挿入する。それと共に、図23に示すように、このL型変位板金24bの底壁24b2の下面と上記円盤状電磁変位センサ24cの上面との間に所定の厚さを有するスペーサ22gを挿入する。そして、スペーサ22gを挟んでL型変位板金24bの底面と円盤状電磁変位センサ24c表面を適度に加圧して各層間を密着させたままL型変位板金の上部長穴24b3にネジを差込む。そして、電磁式変位センサ用軸受け24aの上部に設けられているネジ穴24a2に固定する。
次に、上ローラ20を少し持ち上げてL型変位板金24bを浮かせてスペーサ22gを取り除くと、図25の断面図に示すようなL型変位板金24bの底面24b2とセンサ24c表面との対向部にギャップG3が形成される。
この状態を軸端部の側面から見ると図26のようになり、右手上流側から紙が搬送されて上下ローラ対7eのニップ部RNに侵入する際の上ローラ20の変位に連れて軸受け24a及びL型変位板金24bも矢印Z方向に上下する。そして、対向するセンサ24cとのギャップG3が変化する。
このとき、このセンサ24cは、導電体である対向板金、即ち、L字型導電変位部材24bの変位量を電磁的に検知できるので、結果として通紙された紙の厚さが検知できるようになる。
尚、上記本実施例の構成において電磁式変位センサ用軸受け24aと、不図示のスペーサには帯電しにくく且つ摺動摩擦の少ない導電性POMを使用している。
ここで、図26から分かるように、本実施例の構成においても、変位板金24bは、ネジ止め部に金属リング(図示せず)を挟みこみ、この金属リングにつながれた配線22hの他方の端部をGNDに接地する。これにより、変位板金全体の電位をGNDに落とすように構成されている。これは、やはり導電性とはいえ高速で回転するローラ端部と軸受け部の摺動摩擦帯電量が無視できないからである。更には、ローラに電気的に高抵抗の紙が通紙された場合、ローラ表面との摩擦及び剥離時の剥離帯電の影響がこの変位板金部まで達し、近接対向配置されている電磁変位センサ24cが静電破壊することを防止するためである。
このとき、この配線長としては上ローラの変位分を見込んだ余裕のある長さを選ぶと共に可能な限り剛性の低いしなやかな線材を選ぶことは当然である。他の方法としてGNDに落とされた接点付き板バネを磁石支持板表面に当接させても良い。その際には、板バネの接触抵抗が軸受けのスムーズな変位運動を妨げないように加圧力や接触面積を調整する必要がある。
上述のように、本実施例によれば、固定ローラ18と変位ローラ20のニップ部RNにシート材を挟持させて搬送するシート材搬送ローラ対としてのレジストローラ対7eが設けられる。更に、導電材のL字型変位部材24bと、L字型変位部材24bを、変位ローラ20の軸方向の少なくとも片側端部にL字型変位部材24bの底面24b2が変位ローラ20の変位方向と直交する向きに取り付け可能な軸受け24aとを備えている。ここで、変位センサ24cは、L字型変位部材24bと所定のギャップG3を隔てて平行な対向面を備えた変位センサホルダー24dを介して固定ローラ保持部材18d上に固定される。
このように、本実施例によると、変位ローラ20の軸方向の少なくとも片側端部の軸受け24aに対して、L字型変位部材24bの変位方向に対する取り付け位置は、所定範囲内で任意の位置に可変固定可能とされる。また、L字型変位部材24bの底面24b2が変位方向と直交する向きに、L字型変位部材24bと当接しながらスライドさせて対向面に設けられた平板状電磁変位センサ24cとの間のギャップ調整を一つのスペーサ22gで1次元的に行うことができる。従って、本実施例によれば、容易に初期位置調整ができる。
このように、本実施例においても、上記実施例と同様に、変位部材24bを軸受け24aに固定した後、変位方向に対する変位部材24bと変位センサ24cとの位置調整を変位センサホルダー側にて行う構成とされるので、センサの設計自由度が高められる。
以上の構成に用いた電磁式変位センサの具体的な検知原理と検知結果について以下に説明する。
本実施例によると、電磁変位センサ24cは、図27(a)、(b)に示すように、円盤状コイル部24c1と駆動ICチップ部24c2の2部品で構成される。コイル部24c1の形状及びサイズは、直径(d1)≦15mm(通常7mm〜15mm)で厚さ(t1)≦1mm(通常0.8mm〜1mm)とされる。ICチップ部24c2の形状及びサイズは、封止用樹脂部を含めて1辺の長さ(w1、w2)≦4mm(通常3mm〜4mm)の角型で厚さ(t2)0.8mm〜1.4mm、通常厚さ1mm程度の樹脂で固められている。
更に具体的にいえば、本実施例に用いた電磁センサ(日本システム開発社製DS2001−TS01)24cは、図27(a)、(b)に示すように、円盤状コイル24c1は、サイズが直径(d1)10mm、厚さ(t1)1mmの円盤状とされる。また、円盤状部分24c1の裏面に取り付けられたICチップ24c2は、横幅(w1)3mm、縦幅(w2)4mm、厚さ(t2)1mmの封止用樹脂によって封止された構成とされる。
本実施例にて、ICチップ24c2は、上述のように、発振、増幅回路及びデジタル出力回路を内蔵している。さらに、円盤表面部24c1には、直径8mmのスパイラル状の平板コイル24c3が形成されており、平板コイル24c3の両端はICチップ24c2にスルーホールを介して接続されている。
一方、本実施例によると、図24(b)にて、L字型板金24bの形状及びサイズは、底面の1辺の長さ(w3、w4)≦11mm(通常8mm〜11mm)の角型で高さ(h)≦15mm(通常12mm〜15mm)で厚さ(t3)≦2mm(通常1.5mm〜2mm)とされる。
更に具体的に言えば、本実施例では、L型変位板金24bは、図24(b)、図28に示すように、その底壁24b2のサイズが縦(w3)、横(w4)が(w3、w4)=10mm、厚さ(t3)が1mmのSUS430板金で構成されている。測定分解能を高めるには板金の導電率が高いほど電流が流れやすく有利となるためAL板金を用いても良いが、センサ24cから発信される電波ノイズが強くなるため、本実施例では磁性を有するSUS430を使用した。
つまり、本実施例によれば、上述のように、変位部材付き軸受けとしてL字型板金24bをその底面が変位方向と直交する向きに取り付けられたL字型板金付き軸受けとする。そして、変位センサとしてこのL字型板金の底面と所定の空隙を経て平行な対向面内に固定した電磁変位センサ(サイズ=直径10mm×厚さ2mm)24cを用いることで、レジストローラ対7e軸端部の10mm×10mm×3mm程度のわずかな空間内に高精度の変位センサ24を構築できる。従って、全体として元のシート材搬送ローラ対の搬送安定性や耐久性に依存して性能が決まる紙厚センサを容易に実現することが出来る。
次に、この電磁変位センサ24cの検知原理は、次の通りである。
(1)対向配置された変位可能な導電板24bと平板コイル部24c1のインダクタ間距離G3が短くなると、静電結合によって生じた分布キャパシタのキャパシタンスが増加する。
(2)回路に流れる電流の周波数が高い場合には、分布キャパシタンスを経由して導電板24bに誘起される電流が多くなる。
(3)導電板24bに流れる電流によって発生する磁束と、インダクタ(コイル24c3)に流れる電流によって発生する磁束が電気磁気的に結合し、互いに打ち消しあう。
(4)その結果、2次元状に分布するインダクタ24c3のインダクタンスLは等価的に減少し、発振周波数fが、
つまり、本実施例によれば、L字型導電変位部材24bと直交する面と所定のギャップG3を隔てて平行な対向面に変位センサホルダー24d上に固定される変位センサ24cとを有する。変位センサ24cは、平板コイル24c1と発振回路内蔵IC24c2からなる平板状電磁変位センサである。シート材の厚みに応じて軸受け24aと共に変位するL字型導電変位部材24bの表層に平板コイル24c3から発振される電磁波によって電流を誘起し、変位距離に応じて変化する誘導電流強度に依存して変化する発振周波数変化を基にシート材の厚さを識別する。
すなわち、電磁変位センサ24cは、発振周波数fが導電板24bと平板コイル24c3との距離によって変化することを利用して周波数変化として変位量を検知する。さらに、ICチップ24c2の内臓A/D変換回路によってその周波数をカウント値に変換し、外乱ノイズに強いデジタル出力とすることを特徴とする。従って、元の発振周波数が高ければ高いほど変位量の検知分解能も高くなり、センサ単体としては理論上5nmまで測定可能である。但し、実施例1と同様の理由により、少なくとも上下ローラ18、20の最大外径部が1回転以上回転する間の検知信号の積分値又は平均値を演算することが好ましい。
図28は、本実施例4に係る紙厚検知機能付きレジストローラ対7eに用いた磁気式変位センサの信号処理ブロック図であり、図29は、実測紙厚と検知結果の相関図である。
先ず、信号処理及び制御動作の流れとしては、図28のブロック図に示すように、センサ24cのICチップ24c2に電源24eからの所定の電圧を印加する。そして、信号出力の転送レートの基準となる基準パルス24fと所望の単位測定時間を与えるためのサンプリングパルス24g(このパルスの立ち上がり時間中に継続してデータを取り込む)を入力する。これによって、センサ24cの出力端子からデジタル化されたカウント値(測定時間が1秒以内の短い時間幅でしか設定できないため周波数として検知するには演算処理が必要)が出力される。
実際に検知を行うにはこれらの信号のほかに装置本体の紙搬送タイミングを元にして所定の検知開始タイミング及び繰り返し平均化時間を与えるための検知タイミングパルス24hが必要である。本実施例では、このタイミングパルスを装置本体の給紙タイミングパルスを元に作成している。そして、上記の出力端子から出力されるカウント値と共に演算処理部22iに取り込み、単位測定時間ごとにカウント値として出力される検知結果データをさらに所定の間繰り返し平均化して検知結果とするかを決めている。
本実施例ではこの繰り返し時間として上下ローラ18、20が紙を挟持搬送する際に上ローラ20及び下ローラ18の最大外径部が少なくとも1回転以上する期間を繰り返し時間として設定している。この期間の平均値を演算することでローラ18、20の偏芯等の測定誤差要因を排除してより高精度の検知を可能としている。
搬送された紙の厚さによって初期ギャップG3からギャップ(G3+△G)に変位した際、上記のように検知された紙厚情報は、予め求められ演算処理部内に記憶されている紙厚と最適定着温度及び速度の相関テーブルを参照することで最適な制御条件を割り出す。そして、その結果を制御処理部22jに出力し、さらに制御処理部22jで具体的な制御信号に変換して定着器12を制御する。
尚、上記の検知は、紙が上下ローラ対7eに挟持搬送された際に行われるが、実際の検知時には初期設定条件の経時変化や機械振動などの外乱ノイズを取り除くため、紙搬送直前の紙がまだ上下ローラ対7eに挟持されていない状態で同様の検知を行う。そして、その結果を基準として各紙厚測定時のデータをこの基準データとの差分として検知するようにしている。
図29は、以上の構成を用いて検知した結果と実際の紙の厚さとの相関を求めたグラフである。本実施例の構成による紙厚検知性能は、検知条件として紙のバタツキや機械的振動などノイズの多い装置内での高速紙搬送中の測定であった。しかし、このグラフから分かるように、紙厚測定器で静止状態の紙厚を測定した実際の紙厚との相関が非常に高い。紙厚は、熊谷理機工業社製のJIS紙厚計を使用し、1枚の紙の3箇所を測定し、各紙種ごとに2枚ずつ測定した結果の平均値である。比較のためこの測定と同時にレジストローラの上から市販のレーザ変位計(KEYENCE社製 LK−G30)を用いて求めた上ローラ変位量との相関を確認した結果の図7のグラフと比べても遜色がない。レーザ変位計とほぼ同等の性能であることが確認できた。
実施例5
図30は、本発明に係るシート厚識別装置100を備えた画像形成装置の他の実施例であるインクジェット型画像形成装置の概略構成断面図である。
本実施例では、実施例1の紙厚検知センサ22と、従来のS字型圧電接触式紙種検知センサ15をインクジェットプリンタに応用することにより紙種検知機能付きインクジェット型画像形成装置25を構成している。
従って、本実施例では、紙厚検知センサ22に関しては、実施例1に記載した紙厚検知センサ22の説明を援用し、説明を省略する。また、本実施例で使用するS字型圧電接触式紙種検知センサ15に関しても、図8〜図10を参照して説明したS字型圧電接触式紙種検知センサ15と同じセンサである。従って、本実施例では、同じ構成及び機能をなす部材には、同じ参照番号を付し、先の説明を援用する。
本実施例のインクジェット型画像形成装置25は、給紙トレイ26、インクジェット用給紙ローラ27、紙ガイド28、ピンチローラ対(シート材搬送ローラ対)7e、記録ヘッド29、プラテン30、排紙ローラ対31等で構成されている。
通常、斯かる画像形成装置にて、給紙トレイ26上の紙(シート材)7は、プリント信号を受け取ってから給紙ローラ27によりピンチローラ対7eまで搬送され、ピンチローラ対7eの動作によって必要な送り分だけ紙がプラテン30まで搬送される。対向する記録ヘッド29により現像剤としてのインクを吐出して、その送り分の領域の紙上に画像を形成した後、ピンチローラ対7eの動作によって順次送り出される。記録後の紙は、排紙ローラ対31で挟持搬送され、全体の画像形成が終了した後、最終的に排紙される。
本実施例では、この給紙ローラ対27とピンチローラ対7eの間の紙ガイド28の対向位置にS字型圧電接触式紙種検知センサ15を配置し、紙厚検知センサ22をピンチローラ対7eの少なくとも片側の軸端部に設けている。
尚、本実施例の構成においては、不図示の左右の紙押さえコロによってプローブ15aの先端部に進入してきた紙は、約0.5Nの力で押さえつけられてその搬送中のバタツキを抑えられている。本実施例では、この搬送路には屈曲構造を設けていない。従って、S字型圧電接触式紙種検知センサ15は、ほぼ紙の表面粗さのみを検知するセンサとして機能している。
上記構成で、S字型圧電接触式紙種検知センサ15は、プリント動作初期の給紙部から紙先端部をピンチローラ対7eまで搬送するまでの間の紙表面を摺擦する。この摺擦によりその紙の表面粗さ(又は摩擦抵抗)を検知して紙の表面性を識別し、例えば平滑な紙に対してはインクの吐出量を抑えて画像形成する。これによって、インクの節約と共にインクの不要部分への流れ出しにじみを抑制することができ、逆に表面の粗い紙に対してはインクの紙下層部への染み込みを考慮してインクの吐出量を増やすように制御を切り替える準備をする。
一方、その後ピンチローラ対7eまで進入した紙は、紙厚検知センサ22によってその紙厚を高精度に検知される。従ってこの時点で同じ表面性の紙でも薄紙と厚紙の違いが検知された場合にはさらにインク吐出量を制御し、薄紙ではより少なく、厚紙ではより多くインクが吐出されるように微調整される。
尚、この種の用途のセンサとしては既に一部の機種で光学式センサを用いて紙表面の光沢度差等を検知して紙種の識別を行う装置も開発されている。しかし、光学式センサには光源、レンズやフィルター等の光学系及びフォトダイオードやCCD等の光電変換素子等多数の構成部品が必要である。そのため、各部品の精度にも高精度が要求され、組み立て時にも高精度の取付精度が必要なためにコストが高くなり易く、更に光学系の汚れによって大きく性能が影響され易いという欠点がある。その上、紙の厚さを高精度に検知することは原理的に不可能である。
これに対し、本実施例のセンサ22は、板金や圧電素子、ホール素子等の汎用部材で安価に構成することができる。また、S字型圧電接触式紙種検知センサ15の検知部表面は、通紙の度に自動的に紙表面によって清掃されると共に、その他の部分にゴミや埃が付着しても基本的に性能に影響はない。万一あったとしても発生する振動によって振り落とされるため、汚れによる性能劣化を懸念する必要がない。
つまり、本実施例によれば、圧電素子と板金プローブ15aで構成されてシート材表面の摩擦抵抗を圧電信号に変換して検知する圧電接触式センサ、即ち、S字型圧電接触式紙種検知センサ15は、シート材表面粗さ検知手段として機能する。圧電接触式センサ15は、平坦なシート材搬送路に設けられ且つプローブ周辺に、例えば、紙押さえコロのようなシート材押さえ手段を有することにより、純粋に粗さ信号と厚さ信号を独立に検知して制御することができる。
また、他の変更実施例によれば、圧電接触式センサ15が設定されるシート材搬送路に、図9(b)に示すように、シート材7をループさせる屈曲構造のループ形成手段9aを設けることもできる。この場合は、シート材搬送ローラ対7eにおけるシート材厚さ情報と圧電接触式センサ15の検知情報の比較により、シート材の粗さ情報を算出して制御に用いることにより、簡易な構成で粗さ検知を実現することができる。
上述のように、本実施例では、紙厚センサ22もセンサ部自体は非接触のため、耐久性は本体の寿命間で確保されており、汚れに対しても光学式のような欠点がない。従って、メンテナンスフリーで使用でき、特に紙厚の検知精度が高くなるので従来よりきめ細かい制御や誤検知防止を実現できる。
実施例6
図31は、本発明に係るシート厚識別装置100を備えた画像形成装置の他の実施例である熱転写型画像形成装置の概略構成断面図である。
本実施例では、実施例1の紙厚検知センサ22と、従来のS字型圧電接触式紙種検知センサ15をサーマルヘッドプリンタに応用することにより紙種検知機能付き熱転写型画像形成装置32を構成している。
従って、本実施例では、紙厚検知センサ22に関しては、実施例1に記載した紙厚検知センサ22の説明を援用し、説明を省略する。また、本実施例で使用するS字型圧電接触式紙種検知センサ15に関しても、図8〜図10を参照して説明したS字型圧電接触式紙種検知センサ15と同じセンサである。従って、本実施例では、同じ構成及び機能をなす部材には、同じ参照番号を付し、先の説明を援用する。
本実施例のサーマルヘッド型画像形成装置32は、紙搬送ローラ対(シート材搬送ローラ対)7e、インクリボン35、一対のインクリボン搬送ローラ33、サーマルヘッド34、ヘッド対向板兼紙搬送ガイド36等で構成されている。紙(シート材)7は、通常、プリント信号を受け取ってから紙搬送ローラ対7eによりヘッド対向板兼紙搬送ガイド36と給紙側のインクリボン搬送ローラ33のニップ部まで搬送される。
次いで、紙7は、インクリボン35とガイド36の間に挟持された後、インクリボン35に密着したままインクリボンと共にサーマルヘッド34部まで搬送される。サーマルヘッド34にプリント信号に応じて必要な電力が供給され、紙7の表面には、インクリボン35上のインク層35aが加熱溶融されて熱転写される。これによって、紙上にインク画像35bが形成され、その後、搬送ローラ部の動作によって順次送り出される。
本実施例では、熱転写工程前の紙搬送ローラ対7eに紙厚検知センサ22を設け、紙搬送ローラ対7eとインクリボン搬送ローラ33の間のヘッド対向板兼紙搬送ガイド36の対向位置にS字型圧電接触式紙種検知センサ15を配置している。
尚、本実施例の構成においても、実施例5にて説明したと同様に、S字型圧電接触式紙種検知センサ15のプローブ15aの先端部に進入してきた紙7は、不図示の左右の紙押さえコロによって約0.5Nの力で押さえ付けられる。そして、その搬送中のバタツキを抑えられている。更に、この搬送路には屈曲構造を設けていないので、S字型圧電接触式紙種検知センサ15は、実質的に紙の表面粗さのみを検知するセンサとして機能している。
本実施例では、先ず、搬送ローラ部7eでローラ端部に設けた紙厚センサ22により、使用される紙の厚さを高精度に検知し、その紙厚に応じて予め求められているサーマルヘッド34に供給する電力を選択する。すなわち、熱容量の少ない薄紙に対しては電力を下げ、熱容量の大きい厚紙に対しては電力を上げるという制御を判断する。更に、S字型圧電接触式紙種検知センサ15の当接部において紙の表面性を検知し、同じ紙厚でも表面が滑らかであれば熱の伝導が良くなるため電力をさらに下げる。表面が粗ければ熱の伝導性が低下する上、粗い表面に十分インクを転写するためにはよりインクの粘性を低下させる必要があるため、より高い電力で十分にインクの粘性を低下させるように制御を切り替える。
このようにして、2つのセンサ15、22を用いることで、各紙種に適した電力に制御を切り替えることが可能となり、高画質と省エネの促進が実現できるようになる。特に、紙厚の検知精度が高くなるので従来よりきめ細かい制御や誤検知防止を実現できる。
本実施例においても、実施例5と同様に、圧電素子と板金プローブで構成されてシート材表面の摩擦抵抗を圧電信号に変換して検知する圧電接触式センサ、即ち、S字型圧電接触式紙種検知センサ15は、シート材表面粗さ検知手段として機能する。圧電接触式センサ15は、平坦なシート材搬送路に設けられ且つプローブ15a周辺に、例えば、紙押さえコロのようなシート材押さえ手段を有することにより、純粋に粗さ信号と厚さ信号を独立に検知して制御することができる。
また、他の変更実施例によれば、圧電接触式センサ15が設定されるシート材搬送路に、図9(b)に示すように、シート材7をループさせる屈曲構造のループ形成手段9aを設けることもできる。この場合は、シート材搬送ローラ対7eにおけるシート材厚さ情報と圧電接触式センサ15の検知情報の比較により、シート材の粗さ情報を算出して制御に用いることにより、簡易な構成で粗さ検知を実現することができる。
上述のように、本実施例では、紙厚センサ22もセンサ部自体は非接触のため、耐久性は本体の寿命間で確保されており、汚れに対しても光学式のような欠点がない。従って、メンテナンスフリーで使用でき、特に紙厚の検知精度が高くなるので従来よりきめ細かい制御や誤検知防止を実現できる。
実施例7
本発明の画像形成装置にて、シート厚識別装置100を構成するシート材搬送ローラ対7eは、上記実施例1〜6にて説明したように、シート材搬送ローラ対7eを搬送されたシート材の先端部を画像形成前に整列させるため用いられている。また、このシート材搬送ローラ対7eは、画像形成速度に応じて一定量ずつシート材を搬送させるために設けられた画像形成装置内部の画像形成工程前のシート材搬送ローラ対として用いられている。
本実施例の画像形成装置は、上記構成において、記憶手段300を備えている。記憶手段300を有することによって、予め検知したシート材の厚さ情報を基にシート材の厚さ情報と画像形成条件の対応テーブルを記憶手段300に記憶させておくことができる。これによって、画像形成装置は、自動的に最適画像形成制御条件を選択し、画像形成工程前のシート材搬送ローラ対通過後の画像形成条件を変更することができる。
本実施例に用いる画像形成装置としては、上記実施例にて説明した、給紙部に一度に複数枚の用紙をセットできる装置であれば上記の電子写真方式、インクジェット方式、熱転写方式などいずれの装置でも良い。また、紙厚センサとして上記各実施例のいずれの紙厚センサを用いても良い。
更に具体的に説明すれば、例えば、画像形成装置が現像剤としてトナーを用い、帯電手段、露光手段、像担持手段、転写手段、定着手段を有する電子写真方式の画像形成装置においては、次のように構成することができる。
つまり、先ず、シート厚と、定着温度、定着速度及び定着間隔の各定着条件との相関テーブルを予め求め、記憶手段300に格納する。シート材搬送ローラ対としてレジストローラ対7eを用いることで、レジストローラ対7eにおいて検知したシート材の厚さ情報を基に、上記相関テーブルに従って定着手段の定着温度及び定着速度及び定着間隔を制御することができる。
また、画像形成装置が、現像剤としてインクを用いるインクジェット方式の画像形成装置においては、シート厚と、インクト吐出量及び画像形成速度等の各画像形成条件との相関テーブルを予め求め、記憶手段300に格納する。シート材搬送ローラ対としてピンチローラ対7eを用いることで、ピンチローラ対7eにおいて検知したシート材の厚さ情報を基に、相関テーブルに従ってインクト吐出量及び画像形成速度等の各画像形成条件を制御することができる。
また、画像形成装置が現像剤としてインクリボンを用い、サーマルヘッドを有し、インクリボン上のインクをサーマルヘッドを用いて該シート材上に熱転写させる熱転写方式の画像形成装置においては、次のように構成することができる。
つまり、先ず、シート厚と、熱転写電力及び熱転写速度及び熱転写間隔の各画像形成条件との相関テーブルを予め求め、記憶手段300に格納する。シート材搬送ローラ対としてレジストローラ対7eを用いることで、該ローラ対において検知したシート材の厚さ情報を基に、該相関テーブルに従って熱転写電力及び熱転写速度及び熱転写間隔を制御することができる。
また、他の変更実施例においては、画像形成装置は、記憶手段300と、画像形成工程前にシート材の表面粗さを識別する上述のS字型圧電接触式紙種検知センサ15のようなシート材表面粗さ検知手段と、を有する。そして、記憶手段300に、予め求められたシート材表面粗さ及びシート厚と、各画像形成条件との相関テーブルを求め、そして格納する。シート材搬送ローラ対7eにおいて検知したシート材の厚さ情報と表面粗さ情報を基に、相関テーブルに従って各画像形成条件を制御する。これによって、シート材の厚さと粗さの情報を独立してより詳細に把握し、よりきめ細かな制御を実現できる。
実施例8
図32は、本発明に係る画像形成装置にて紙厚センサを備えたシート厚識別装置100重送防止手段として用いた場合の作動態様を説明するフローチャートである。
本実施例に用いる画像形成装置としては、給紙部に一度に複数枚の用紙をセットできる装置であれば上記の電子写真方式、インクジェット方式、熱転写方式などいずれの装置でも良い。
なお、上記実施例7で説明したように、各実施例の画像形成装置には記憶手段300及び制御手段400が設けられている。また、紙厚センサとして上記各実施例のいずれの紙厚センサを用いても良い。ただし、上記各実施例の構成では説明を省略したが、給紙部にはプリント動作中に紙カセットや給紙トレイ上に紙が無くなったことを使用者に知らせるため、給紙部紙無し検知センサ50が設けられている。給紙部紙無し検知センサ50としては、フォトインタラプタなどの光学式センサとレバーなどとされる。
上述のように、本実施例によれば、シート厚識別装置100を重送検知手段として使用することができる。
つまり、本実施例によれば、画像形成装置は、シート厚識別装置100と、シート材7が2枚以上重なって搬送された場合に使用者に異常を通知する重送通知手段401とを有している。2枚以上のシート材を連続搬送して使用する際、1枚目のシート材の厚さを検知してから2枚目以降のシート材の厚さ検知する。この検知時に、所定値以上、例えば略2倍以上のシート厚を検知した際には、制御手段400により、該シート材が重送していると判断して以後の処理工程を中断して装置を停止する。同時に、重送通知手段401を動作させて使用者に重送を通知する。又は、1枚目のシート材の厚さを検知してから2枚目のシート材の厚さ検知時に、所定値以下、例えば略半分以下のシート材厚を検知した際に1枚目のシート材が重送していたと判断して重送通知手段401を動作させて使用者に1枚目のシート材に重送があったことを通知する。本実施例では、上記いずれかの形態で使用者に重送を通知するので重送が生じた際の作業のやり直しを速やかに促すことができる。
また、本実施例によれば、シート厚識別装置100は、2枚目以降のシート材の厚さ検知時に重送を検知した場合、重送時の信号とそれ以前に搬送されたシート材の厚さ検知時の信号の比を演算して重送枚数を使用者に通知する。又は、1枚目のシート材の重送を検知した場合、1枚目の重送時の信号と2枚目に搬送されたシート材の厚さ検知時の信号の比を演算して重送枚数を使用者に通知する。本実施例では、上記いずれかの形態で使用者に重送枚数を通知するので重送が生じた際の作業のやり直しを速やか且つ正確に促すことができる。
また、本実施例によれば、シート厚識別装置100は、前記シート材の検知厚さが装置の使用限度を超える厚さであった場合、装置を停止すると共に使用者に使用中のシート材が不適切、即ち、シート材の検知厚さが使用限度を超える厚さであることを通知する。これによって、搬送不可能なほど搬送抵抗の高いシート材を無理に装置内に進入させて装置内部を破損してしまうことを事前に防止できる。
以下、本実施例の動作をこのフローチャートに沿って説明する。
先ず、装置の電源がONされた状態で2枚以上のN枚連続プリントジョブ信号が発信されて、給紙をスタートする(S1〜S3)。このときすぐに給紙トレイ上に設けられている紙無し検知センサ50が起動して紙なしか否かを判断する(S4)。紙なしと判断した際には、制御手段400は、1枚目のプリント時に全てのシートが重送したものと判断して直ちにシート搬送を停止し(S5)、使用者に重送シートの除去を指示する(S6)。
1枚目の給紙で紙無しセンサ50が起動しなかった場合、装置内のレジストローラ対7eなどを用いたシート厚識別装置100によってシート厚検知を開始し(S7)、まず、1枚目のシート厚T1を記憶手段300に記憶する(S8)。
次に、T1の厚さが装置で予め定められている搬送限界の厚さより厚いか薄いかを制御手段400で判定し(S9)、限度を超えていれば直ちにシート搬送を停止し(S10)、使用者に重送シートの給紙側への除去を指示する(S11)。
一方、T1の厚さが装置で予め定められている搬送限界の厚さ以下であればそのまま画像形成を進めつつ(S12)、次のシートの給紙も進めて、同様に2枚目以降のシートの厚さを検知して行き(S13)、その都度各シートの厚さをT1と比較する(S14)。この過程において、X枚目のシートの厚さTxがT1と略同等であればそのまま画像形成を継続して順次排紙し(S15、S16)、X=Nまで繰り返してこのプリントジョブを完了する(S17)。
一方、万一、上記ステップS17にて、途中でX枚目のシートの厚さTxがT1と同等でないと判断された場合、次の2通りの処理のいずれかが実行される。
(1)T1<Txの場合:
X枚目のシートの搬送を停止し(S19)、制御手段400の演算部にてTx/T1を演算する(S20)。使用者に、「X枚目のシートに(Tx/T1)枚の重送発生」と「重送シートの給紙側への除去処理」を通知する(S21、S22)。
(2)T1>Txの場合:
Tx/T1を演算する(S23)。使用者に、「1枚目のシートに(T1/Tx)枚の重送発生」を通知し(S24)、そのままプリントジョブを継続する(S15)。
以上、シート厚識別装置100によってシート厚検知可能な装置において上記のフローチャートに従って画像形成を行うことにより、画像形成中に万一シートの重送が生じたとしても、装置が自動的に重送と判断して重送通知手段401により使用者に通知する。そのため、使用者の作業のやり直しを速やかに促すことが可能となり、また、重送したシートの搬送を初期段階で停止できるので装置内部に侵入してから不具合を招くことを防止でき、装置の故障防止に寄与できる。
実施例9
図33は、本発明に係る画像読取装置の一実施例の概略構成断面図である。
本実施例にて、画像読取装置37は、シート材、すなわち、カットシート原稿の読取装置とされる。本実施例のカットシート用画像読取装置37は、コピー機やファクシミリ装置及び書類の電子ファイル化を行うための電子ファイル装置などに用いられる。このような複数のカットシート原稿を連続搬送しながら自動的に読み取る画像読取装置に対し、上記各実施例にて説明した本発明のシート厚識別装置100を適用して、原稿の重送検知機能を付与することができる。紙厚センサとしては、上記各実施例のいずれの紙厚センサを用いても良い。従って、本実施例で使用する紙厚センサの説明は、上記各実施例における紙厚センサの説明を援用し、本実施例での再度の説明は省略する。
図33を参照すると、画像読取装置37は、先ず、給紙トレイ7b上に複数の原稿を1枚目の原稿が一番上になる順に重ねて表側を上にしてセットする。不図示の読み取り開始スイッチをONすると、給紙ローラ7cにより基本的に1枚ずつ原稿が給紙され、実施例1のレジストローラ対7eと同様の原稿搬送ローラ対7eまで搬送される。このとき、原稿搬送ローラ対7eの、少なくとも片側上ローラ20の端部に設けられた紙厚センサ、即ち、磁気式変位センサ22により原稿の厚さが検知される。その後、原稿はU字パス前搬送ローラ対37aを介してU字パス37bへと送給される。U字パス37bにより表面(原稿面)が下向きになるように向きを曲げられ、U字パス後搬送ローラ対37cによって画像読み取り手段を構成する画像読み取り部37dへと搬送される。
本実施例の画像読み取り部37dは、先ず、画像読み取りセンサの方式としてはコンタクトセンサ38を用いる接触読み取り方式である。そのコンタクトセンサ38は、LED光源38a、セルフォックレンズアレイ38b、センサアレイ基盤38cなどの構成要素を筐体内に収めて、原稿と対向する上面はガラス板で構成されている。
一方、その対向面側には、白基準シート39(ポリエチレンテレフタレート製)とこれをコンタクトセンサ表面に押し当てるための負荷棒39a、シート保持フレーム39bなどで構成される白基準面が形成されている。
以上の画像読み取り部37dを通過した原稿7は、排紙ローラ対37eによって排紙トレイ7fへと排紙される。
尚、給紙部にはプリント動作中に紙カセットや給紙トレイ上に紙が無くなったことを使用者に知らせるため給紙部原稿無し検知センサ50が設けられている。給紙部原稿無し検知センサ50は、フォトインタラプタなどの光学式センサとレバーなどによって構成することができる。
本実施例では、上記の構成により、画像読取装置の給紙側の搬送ローラ対7eに本発明の紙厚センサ22を設けることで実施例8と同様のフローチャートに従って原稿の重送を検知して使用者に重送を通知することができる。又、更に、装置を速やかに停止して故障を防止したり、作業のやり直しを容易にするように装置の動作を制御することができる。
つまり、本実施例によれば、シート厚識別装置100と、画像読み取り手段37dとを有する画像読取装置は、シート状の原稿が2枚以上重なって搬送された場合に使用者に異常を通知する重送通知手段を有している。2枚以上の原稿を連続搬送して使用する際、1枚目の原稿の厚さを検知してから2枚目以降の原稿の厚さ検知する。検知時に、初手一以上、所定値以上、例えば略2倍以上の原稿厚を検知した際には、制御手段400により該原稿が重送していると判断して以後の処理工程を中断して装置を停止する。同時に、重送通知手段を動作させて使用者に重送を通知する。又は、1枚目の原稿の厚さを検知してから2枚目の原稿の厚さ検知時に、所定値以下、例えば略半分以下の原稿厚を検知した際に1枚目の原稿が重送していたと判断して前記重送通知手段を動作させて使用者に1枚目の原稿に重送があったことを通知する。本実施例では上記いずれかの形態で使用者に重送を通知することにより画像読取装置における原稿重送時の作業のやり直しを速やかに促すことができる。
また、本実施例によれば、原稿厚識別装置100は、2枚目以降の原稿の厚さ検知時に重送を検知した場合、制御手段400の演算部にて重送時の信号とそれ以前に搬送された原稿の厚さ検知時の信号の比を演算して重送枚数を使用者に通知する。又は、1枚目の原稿の重送を検知した場合、1枚目の重送時の信号と2枚目に搬送された原稿の厚さ検知時の信号の比を演算して重送枚数を使用者に通知する。本実施例では、上記いずれかの形態で使用者に重送枚数を通知することにより、重送が生じた際の作業のやり直しを速やか且つ正確に促すことができる。
また、本実施例によれば、原稿厚識別装置は、シート材(原稿)の検知厚さが装置の使用限度を超える厚さであった場合、装置を停止すると共に使用者に使用中のシート材が不適切、即ち、原稿の検知厚さが使用限度を超える厚さであることを通知する。これによって、搬送不可能なほど搬送抵抗の高いシート材を無理に装置内に進入させて装置内部を反損してしまうことを事前に防止できる。
次に、本実施例の読取装置の動作を図34のフローチャートに沿って説明する。
先ず、装置の電源がONされた状態で2枚以上のN枚連続読み取り開始スイッチがONされて、給紙をスタートする(S1〜S3)。
このときすぐに給紙トレイ7b上に設けられている原稿無し検知センサ50が起動して、原稿のあり、なしを判断する(S4)。原稿なしと判断した際には、制御手段400は、1枚目の画像読み取り時に全ての原稿が重送したものと判断して直ちに原稿搬送を停止し(S5)、使用者に重送原稿の除去を指示する(S6)。
1枚目の給紙で原稿無しセンサが起動しなかった場合、装置内のレジストローラなどを用いたシート厚検知搬送ローラ対によって原稿厚検知を開始し(S7)、まず、1枚目の原稿厚T1を記憶する(S8)。
次に、制御手段400は、T1の厚さが装置で予め定められている搬送限界の厚さより厚いか薄いかを判定し(S9)、限度を超えていれば直ちに原稿搬送を停止し(S10)、使用者に重送原稿の給原稿側への除去を指示する(S11)。
一方、T1の厚さが装置で予め定められている搬送限界の厚さ以下であればそのまま画像読み取りを進めつつ次の原稿の給紙も進めて(S12)、同様に2枚目以降の原稿の厚さを検知して行き(S13)、その都度各原稿の厚さをT1と比較する(S14)。この過程において、X枚目の原稿の厚さTxがT1と略同等であればそのまま画像読み取りを継続して順次排紙し、X=Nまで繰り返してこの画像読み取りを完了する(S15〜S17)。
一方、万一、制御手段400により、上記ステップS14にて、途中でX枚目の原稿の厚さTxがT1と同等でないと判断された場合(S18)、次の2通りの処理のいずれかが実行される。
(1)T1<Txの場合:
X枚目の原稿の搬送を停止し(S19)、Tx/T1を演算する(S20)。使用者に、「X枚目の原稿に(Tx/T1)枚の重送発生」と「重送原稿の給紙側への除去処理」を通知する(S21、S22)。
(2)T1>Txの場合:
Tx/T1を演算する(S23)。使用者に、「1枚目の原稿に(T1/Tx)枚の重送発生」を通知し(S24)、そのままプリントジョブを継続する(S15)。
以上、シート厚検知搬送ローラ対によって原稿厚検知可能な装置において上記のフローチャートに従って画像読み取りを行うことにより、画像読み取り中に万一原稿の重送が生じたとしても、装置が自動的に重送と判断して使用者に通知する。そのため、使用者の作業のやり直しを速やかに促すことが可能となり、また、重送した原稿の搬送を初期段階で停止できるので装置内部に侵入してから不具合を招く事を防止でき、装置の故障防止に寄与できる。
実施例10
図35及び図36に、本発明に係る電子写真方式の画像形成装置の他の実施例を示す。図35は、本実施例の画像形成装置において、印字面を下にするフェースダウン排紙時の状態を示す概略構成断面図であり、また、図36は、印字面を上にするフェースアップ排紙時の状態を示す概略構成断面図である。
なお、本実施例の画像形成装置は、先に、実施例1にて説明した図8に示す画像形成装置と同様の構成とされ、従って、同じ構成及び機能をなす部材には、同じ参照番号を付し、実施例1にて行った説明を援用し、詳しい説明は省略する。
本実施例の画像形成装置は、図8に示した電子写真方式の画像形成装置のレジストローラ対7eの反駆動側の上ローラ20の少なくとも片側の端部軸受け部に磁気式変位センサ22を設置している。
従って、本実施例の画像形成装置では、全体として、このレジストローラ対7eが、レジストローラ対7eのニップ部に搬送される紙の厚さを検知する紙厚センサ(即ち、シート厚識別装置100)としての機能を有している。
本実施例の画像形成装置では、基本構成として、図8の装置では示されていなかった定着器下流側のU字型排紙パス40、及び、本体外装部を兼ねるフェースダウン排紙トレイ(フェースダウン排紙部)41を備えている。また、露光手段3は、レーザーダイオード、ポリゴンミラー、折り返しミラーなどの光学系をユニット化したレーザスキャナーとされる。
さらに本実施例の電子写真方式の画像形成装置では、上記U字型排紙パス40の外側下半分の搬送路40aは、下端部のヒンジ40a1を中心に回転して開閉可能となる可変排紙パス40aとされる。更に、この可変排紙パス40aと連動するフェースアップ排紙トレイ(フェースアップ排紙部)42を備えている。また、このフェースアップ排紙トレイ42は、不図示のソレノイドとバネ及び爪部材等を備えた排紙方向切替手段としてのフェースアップ排紙トレイ開閉手段42aにて開閉動作される。
このような構成により、本実施例ではレジストローラ対7eに設けられた紙厚センサ22を用いて、紙の厚さに応じて排紙トレイ42を自動的に切り替えることを特徴としている。
従来、この種の画像形成装置では、基本的に上記U字型排紙パス40を通ってフェースダウン排紙部41に排紙されることが普通である。そのため、基本的に上記U字型排紙パス40を通過できないほど腰の強い厚紙が紙収納箱7aにセットされた場合には給紙部7aからのU字型給紙パス70も通過できない。そのため、給紙不良を起こしてその後の画像形成工程には進めず、定着部12でジャムを起こすような不具合を生じることはない。しかし、手差しトレイ7bからの搬送パスはほぼ直線であるため、このような厚い紙がセットされた場合にもそのままその後の画像形成工程まで進んでしまい、定着後のU字型排紙パス40で搬送不可能となってジャムを生じてしまっていた。
このため、本実施例ではこのようにフェースダウン排紙できなくなるほど厚い紙を手差しトレイ7bにセットした場合でも、装置が自動的にフェースアップ排紙(図36の状態)に切り替えることでジャムの発生を防止している。
その動作として、先ず、予め求められているフェースダウン排紙不可能な紙厚をTnとして記憶手段300に記憶させておく。そして、手差しトレイ部7bからフェースダウン排紙できなくなるほど厚い紙が給紙されてきた際、直後のレジストローラ部の紙厚センサ機能により、給紙されてきた紙がTn以上の厚さであると検知する。そのときは、制御手段400は、図36に示すように速やかにフェースアップ排紙トレイ開閉手段42aを作動させてこの厚紙が定着部12から排出されてくる前にフェースアップ排紙トレイ42を矢印方向に開き、これに連動して可変排紙パス40aも開く。従って、厚紙は定着後にジャムすることなくフェースアップトレイ42上に排紙される。
以上のように、本実施例の紙厚センサを内蔵する画像形成装置を用いることにより、フェースダウン排紙可能な厚さの紙はフェースダウン排紙、フェースダウン不可能な厚さの紙はフェースアップ排紙へと自動的に切り替えられるようになる。従って、手差しトレイ7b上にどのような厚さの紙がセットされてもジャムすることなくプリント動作を完了することが可能となる。
つまり、本実施例によれば、画像形成装置は、シート材を給紙部7aと略同一側にUターン排紙させるフェースダウン排紙部41と、給紙部7aと逆側に略ストーレート排紙させるフェースアップ排紙部42との2通りの排紙部を有している。使用者が画像形成装置をフェースダウン排紙部41にシート材を排紙させる設定で使用し、且つ、シート厚識別装置100が使用中のシート材がUターン排紙不可能な厚さである事を検知した際、該シート材の搬送を停止する。また、使用者に使用中のシート材がフェースアップ排紙部42に排紙させるべきシートであることを通知手段401にて通知する。従って、装置内部でUターンさせることが出来ないシート材が使用された際に装置内部のUターン搬送路までシート材が侵入してしまうことを防止できる。
また、本実施例によれば、画像形成装置は、シート材を給紙部と略同一側にUターン排紙させるフェースダウン排紙部41と、給紙部7aと逆側に略ストーレート排紙させるフェースアップ排紙部42とを有する。そして、いずれかの排紙部に排紙方向を切り替える排紙方向切替手段42aを有している。シート厚識別装置100が使用中のシート材をUターン排紙不可能な厚さであると検知した場合、排紙方向切替手段42aによって使用中のシート材をフェースアップ排紙部42に排紙させることができる。従って、使用者がシート材の除去作業や設定のやり直しを行う手間を省くことができる。