以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図中同一又は相当する部分には同一符号を付す。
(実施形態1)
図1に、本発明の実施形態1に係る塗布システム1の全体構成を示す。図1に示すように、塗布システム1は、塗布装置10と、端末装置30と、を備える。塗布装置10と端末装置30とは、無線又は有線による通信を介して通信可能に接続されている。
塗布装置10は、塗布対象50上に塗料を塗布することにより、塗布対象50の表面に画像を形成することが可能な装置である。塗布装置10は、いわゆるハンドヘルド方式の装置であって、ユーザによって装置全体が把持され、塗布対象50上における塗料を塗布することを望む任意の位置に設置されて使用される。
より詳細には、塗布装置10は、コンシーラと呼ばれ、皮膚に塗料を塗布することにより、皮膚に存在する染み、アザ、クマ、汚れ等の上から塗料を塗布して目立たなくするための装置である。塗布対象50は、塗布装置10により塗料が塗布される対象であって、具体的には、人間、動物等の皮膚(肌)である。塗料は、塗布対象50に塗布される塗布材であって、具体的には、塗料は皮膚に塗って着色するための化粧料、着色料等である。
図2に示すように、塗布装置10は、制御部11と、記憶部12と、ユーザインタフェース13と、電源部14と、通信部15と、撮像部17と、駆動部18と、塗布部19と、圧力センサ41と、加速度センサ42と、原点検出センサ43と、を備える。
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備える。CPUは、例えばマイクロプロセッサ等であって、様々な処理及び演算を実行する中央演算処理部である。制御部11において、CPUは、システムバスを介して塗布装置10の各部に接続されており、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出して、RAMをワークメモリとして用いながら、塗布装置10全体の動作を制御する制御手段として機能する。また、制御部11は、RTC(Real Time Clock)等の時間を計測する計時部を備える。
また、制御部11は、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)等のような画像処理用のプロセッサと、処理される画像を一時的に保存するバッファメモリと、を備える。制御部11は、画像処理用のプロセッサにより、周知の画像処理の手法を用いて、撮像部17により撮像された画像を処理する。
記憶部12は、フラッシュメモリ、ハードディスク等の不揮発性メモリである。記憶部12は、制御部11が各種処理を行うために使用するプログラム及びデータを記憶する。例えば、記憶部12は、文字、記号、絵文字等のような表示用及び塗布用のデータ、及び、塗布処理における設定を定めたテーブルを格納している。また、記憶部12は、制御部11が各種処理を行うことにより生成又は取得するデータを記憶する。
ユーザインタフェース13は、入力キー、ボタン、スイッチ、タッチパッド、タッチパネル等のような入力受付部と、液晶パネル、LED(Light Emitting Diode)等の表示部と、を備える。ユーザインタフェース13は、入力部を介してユーザから各種の操作指示を受け付け、受け付けた操作指示を制御部11に送信する。また、ユーザインタフェース13は、各種の情報を制御部11から取得して、取得した情報を示す画像を表示部に表示する。
電源部14は、電源IC(Integrated Circuit)等を備え、塗布装置10の動作に必要な電源を作り出して各部に供給する。
通信部15は、塗布装置10が外部の機器と通信するためのインタフェースを備える。外部の機器とは、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等の端末装置である。通信部15は、例えば、USB(Universal Serial Bus)、Wi-Fi(Wireless Fidelity)等の無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)等を介して外部の機器と通信する。通信部15は、制御部11の制御の下、このような有線又は無線による通信を介して、外部の機器から印刷データを含む各種データを取得する。
撮像部17は、いわゆるカメラであって、被写体から射出された光を集光するレンズと、集光した光を受けて被写体の画像を取得するCCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子と、撮像素子から電気信号として送られた撮像画像を示すデータをデジタルデータに変換するA/D(Analog/Digital)変換器と、を備える。撮像部17は、塗布装置10が塗布対象50上に設置された際に、塗布対象50の表面を撮像し、撮像によって得られた撮像画像を制御部11に供給する。撮像部17により得られた撮像画像を解析することにより、皮膚に染み等が存在するか否かを検出することができる。また、撮像部17により得られた撮像画像を解析することにより、塗布装置10が皮膚の上で静止しているか否かを判定することができる。撮像部17は、撮像手段として機能する。
駆動部18は、塗布装置10内で塗布部19を移動させるためのステップモータ等の駆動部材と、これらの駆動部材を駆動する駆動回路と、を備える。駆動回路は、制御部11から送信される制御信号に従って、駆動部材に駆動用のパルス信号を供給する。駆動部18は、駆動回路から供給されたパルス信号に従って駆動部材を駆動させることにより、塗布部19をスライドレールに沿って移動させる。駆動部18は、駆動手段として機能する。
塗布部19は、塗布対象50の表面に塗料を塗布する塗布機構である。塗布部19は、カートリッジに充填された塗料を微滴化し、塗布対象50に対して塗布ヘッドから塗料を直接に吹き付けるいわゆるインクジェット方式で塗布対象50の表面に塗料を塗布する。塗布部19は、塗布手段として機能する。
一例として、塗布部19は、サーマル方式によって塗料を吐出する。具体的に説明すると、塗布部19の塗布ヘッドには、複数のノズルが主走査方向(X方向)及び副走査方向(Y方向)に沿って配列されている。複数のノズル内の塗料は、ヒータによって加熱されることで気泡を生じ、生じた気泡によって、複数のノズルのそれぞれから塗布対象50へ向けて(鉛直下向きに)塗料が吐出される。このような原理によって、塗布部19は、塗布対象50の表面に塗料を塗布する。
圧力センサ41は、静電容量式、歪みゲージ式等の周知の方式で圧力を測定する。圧力センサ41は、塗布装置10が塗布対象50上に置かれた場合に、塗布装置10により塗布面51に加えられる圧力の大きさを測定し、測定された圧力の大きさを電気信号に変換する。これにより、圧力センサ41は、塗布装置10と塗布対象50との間の接触圧を測定する。圧力センサ41により測定される圧力は、塗布装置10が塗布対象50である皮膚から離れればゼロになり、塗布装置10が皮膚に押しつけられると増加する。
加速度センサ42は、塗布装置10に加えられる加速度を測定する。加速度センサ42が加速度を測定することにより、塗布装置10の本体がユーザにより把持されているか否か、重力方向に対する塗布装置10の向き、及び、塗布装置10が静止しているか否かを判定することができる。
原点検出センサ43は、駆動部18によりスライドレールに沿って移動する塗布部19の原点位置を検出する。原点検出センサ43は、例えば発光部と受光部とを備える光学センサであって、発光部から発せられる光が受光部により受光されたか否かにより塗布部19の位置を検出する。
図3及び図4に、塗布装置10の断面を示す。図3は、塗布装置10の断面をX方向から見た様子を示しており、図4は、図3におけるA-A線で切った断面をY方向から見た様子を示している。図3及び図4に示すように、塗布装置10は、筐体20の内部に、電源部14と、撮像部17と、駆動部18と、塗布部19と、スライドレール23と、照明27と、加速度センサ42と、を備える。筐体20は、例えばプラスチック等の硬質合成樹脂を主たる材料として作製されている。
なお、図3及び図4において、X方向は、塗布装置10の短手方向に相当し、Y方向は、塗布装置10の長手方向に相当し、Z方向は、塗布対象50の塗布面に垂直な方向、すなわち塗布部19からインクが吹き出される方向に相当する。X方向とY方向とZ方向とは、互いに直交する。以降の図でも同様である。
塗布部19は、カートリッジ21と、塗布ヘッド22と、を備える。カートリッジ21は、塗布対象50に塗布される塗料を収容している。塗布ヘッド22は、カートリッジ21の下部に搭載されており、カートリッジ21内の塗料をノズルから吐出する。カートリッジ21がカートリッジ収納部に収納された状態で、カートリッジ21内の塗料が塗布ヘッド22から吐出されることで、塗布対象50の表面に塗料が塗布される。ユーザは、塗料の色、材質等に応じてカートリッジ21を交換することにより、塗布対象50に塗布する塗料を自由に変更することができる。
スライドレール23は、図3に示すように、塗布装置10の長手方向(Y方向)に沿って設けられている。また、スライドレール23は、図4に示すように、塗布装置10の短手方向(X方向)に並んで1対設けられており、塗布部19の両端を支えている。塗布部19は、カートリッジ収納部を介してスライドレール23に取り付けられており、駆動部18により駆動されることにより、スライドレール23に沿ってY方向(図3において矢印で示す方向)に往復移動する。
筐体20の底面、すなわち塗布対象50側に向けられる面には、開口25が設けられている。塗布部19は、開口25を通して塗布面51に塗料を塗布する。図5に、筐体20の底面を模式的に示す。図5に示すように、開口25は、筐体20の底面において矩形状に形成されている。開口25の大きさは、塗布部19により塗料が塗布される最低限の領域に相当する大きさである。開口25のX方向における幅は、塗布ヘッド22のノズル全体が開口25から露出するように、ノズルの幅よりも若干大きめに設計されている。
筐体20の底面には、開口25を挟んで対向する位置に、圧力センサ41が2つ設けられている。このように開口25の周囲に設けられた2つの圧力センサ41により、塗布装置10が塗布面51に接触したか否か、及び、塗布装置10が塗布面51に接触した際における開口25の付近に加えられる圧力を検知することができる。
撮像部17は、筐体20の上部において、筐体20の底面に設けられた開口25の直上の位置に設置されており、その撮像の視野29が開口25の方を向くように固定されている。撮像部17は、開口25を通して塗布面51を撮像する。そのため、塗布面51上において開口25により定められる範囲が撮像部17による撮像範囲となる。
図3に示すように、塗布部19が撮像部17の直下に位置している場合、撮像部17の視野29内にカートリッジ21が入っているため、撮像部17は、塗布面51を撮像することができない。そのため、撮像部17による撮像時には、塗布部19は、駆動部18により駆動されて、撮像部17の視野29内から外れた位置に移動する。
図6及び図7に、それぞれ塗布部19が退避位置P1及び塗布位置P2にある時の塗布装置10を示す。退避位置P1は、撮像部17と開口25との間から離れた位置であって、塗布部19が撮像部17による塗布面51の撮像の視野29を遮らない第1の位置である。図6に示すように、撮像部17による撮像時には、塗布部19は、撮像部17による塗布面51の撮像を妨げないように、撮像部17の画角の外側である退避位置P1に移動する。これに対して、塗布位置P2は、撮像部17と開口25との間の位置であって、塗布部19が撮像部17による塗布面51の撮像の視野29を遮る第2の位置である。図7に示すように、塗布面51にインクを塗布する時には、塗布部19は、塗布ヘッド22が開口25の直上に位置するように、撮像部17の画角の内側である塗布位置P2に移動する。
図1に示した塗布システム1において、端末装置30は、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ等であって、ユーザによって操作される端末機器である。図8に示すように、端末装置30は、制御部31と、記憶部32と、入力部33と、表示部34と、通信部35と、を備える。
制御部31は、CPU、ROM及びRAMを備える。CPUは、例えばマイクロプロセッサ等であって、様々な処理や演算を実行する中央演算処理部である。制御部31において、CPUは、システムバスを介して端末装置30の各部に接続されており、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出して、RAMをワークメモリとして用いながら、端末装置30全体の動作を制御する。
記憶部32は、フラッシュメモリ、ハードディスク等の不揮発性メモリである。記憶部32は、OS(Operating System)及びアプリケーションプログラムを含む、制御部31が各種処理を行うために使用するプログラム及びデータを記憶する。また、記憶部32は、制御部31が各種処理を行うことにより生成又は取得するデータを記憶する。
入力部33は、入力キー、ボタン、スイッチ、タッチパッド、タッチパネル等の入力デバイスを備える。入力部33は、ユーザから入力された操作指示を受け付け、受け付けた操作指示を制御部31に送信する。
表示部34は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示デバイスを備える。表示部34は、図示しない表示駆動回路によって駆動されて、状況に応じた様々な画像を表示する。なお、表示部34は、入力部33と重ねて配置され、表示部34と入力部33とでいわゆるタッチパネル(タッチスクリーン)を構成してもよい。表示部34は、表示手段として機能する。
通信部35は、制御部31の制御のもと、図示しないアンテナを介して外部の機器と通信するためのインタフェースを備える。通信部35は、例えば、USB、無線LAN、Bluetooth(登録商標)等を介して塗布装置10と通信する。また、通信部35は、有線又は無線による通信を介してインターネット等の広域ネットワークに接続することができる。
次に、図9を参照して、塗布システム1の機能的な構成について説明する。図9に示すように、塗布装置10は、機能的に、撮像制御部120と、撮像画像送信部130と、取得部140と、設定部150と、濃度情報送信部160と、塗布データ生成部170と、塗布制御部180と、を備える。制御部11において、CPUがROMに記憶されたプログラムをRAMに読み出して実行することにより、これら各部として機能する。また、端末装置30は、機能的に、撮像画像受信部310と、濃度情報受信部320と、表示制御部330と、を備える。制御部31において、CPUがROMに記憶されたプログラムをRAMに読み出して実行することにより、これら各部として機能する。
塗布装置10において、撮像制御部120は、撮像部17による撮像を制御する。具体的に説明すると、撮像部17により塗布面51を撮像する場合、撮像制御部120は、図6に示したように、駆動部18を制御して塗布部19を塗布位置P2から退避位置P1に移動させる。そして、撮像制御部120は、撮像部17の周辺に設けられた照明27を点灯させて、撮像部17に、塗布面51上における開口25を通して見える範囲を撮像させる。これにより、撮像制御部120は、塗布面51上における輝度の分布を示す撮像画像を取得する。撮像制御部120は、制御部11が撮像部17と協働することによって実現される。
一例として、図10に示すように、ユーザが自身の顔や腕等の皮膚に存在する染み52の上に塗料(化粧料)を塗布することを望む場合、ユーザは、塗布装置10の開口25が染み52の直上に位置するように、塗布装置10を塗布面51上に設置する。撮像制御部120は、このように塗布装置10が塗布面51上に設置され、且つ、塗布部19が退避位置P1に移動した状態で、撮像部17に開口25を通して染み52を撮像させる。これにより、撮像制御部120は、例えば図11に示すように、塗布面51上における染み52とその周辺領域との輝度の分布を示す撮像画像60を取得する。
図9に戻って、撮像画像送信部130は、通信部15を介して端末装置30と通信し、撮像部17による撮像により得られた塗布面51の撮像画像60を端末装置30に送信する。撮像画像送信部130は、制御部11が通信部15と協働することにより実現される。撮像画像送信部130は、撮像画像送信手段として機能する。
端末装置30において、撮像画像受信部310は、通信部35を介して塗布装置10と通信し、撮像画像送信部130により送信された塗布面51の撮像画像60を受信する。撮像画像受信部310は、制御部31が通信部35と協働することにより実現される。撮像画像受信部310は、撮像画像受信手段として機能する。
表示制御部330は、撮像画像受信部310により受信された塗布面51の撮像画像60を表示部34に表示させる。具体的に説明すると、表示制御部330は、図11に示したように、塗布面51上に存在する染み52とその周辺領域を示す撮像画像60を表示部34に表示させる。このように撮像画像60を表示することにより、ユーザは、塗布装置10が塗布面51上における所望の位置に正しく設置されているか否かを容易に確認することができる。表示制御部330は、制御部31が表示部34と協働することにより実現される。
塗布装置10において、撮像画像送信部130は、撮像部17により得られた撮像画像60を、予め定められた周期で繰り返し端末装置30に送信する。これにより、撮像画像送信部130は、例えば塗布装置10が動かされて撮像部17により撮像される位置が変化しても、新たな位置における輝度分布を示す撮像画像60を端末装置30に随時送信する。ユーザは、端末装置30に表示される撮像画像60を確認することで、塗布装置10の位置を柔軟に調整することができるため、塗布面51上の所望の位置に塗布装置10を的確に設置することができる。
塗布装置10において、取得部140は、塗布対象50に対する塗布装置10の接触の強さを示す指標値を取得する。塗布対象50に対する塗布装置10の接触の強さとは、ユーザが塗布面51上に塗布装置10を設置した際における、塗布装置10を塗布面51に押し当てる力の強さを意味する。
取得部140は、このような接触の強さを示す指標値として、塗布装置10の底面に設けられた圧力センサ41により測定された圧力の値を取得する。圧力センサ41により測定された圧力の値は、塗布装置10が塗布対象50に接触していない場合にはゼロになり、接触の強さがより強い場合により大きくなる。取得部140は、制御部11が圧力センサ41と協働することによって実現される。取得部140は、取得手段として機能する。
設定部150は、取得部140により取得された圧力の値に基づいて、塗布面51に対する塗布の制御に関する制御情報を設定する。塗布の制御に関する制御情報とは、塗布部19が塗布面51上に塗料をどのように塗布するかを決めるための情報である。具体的には、設定部150は、塗布の制御に関する制御情報として、塗布面51に塗布される塗料の濃度と、塗布面51に塗料の塗布を開始する開始タイミングと、を設定する。設定部150は、制御部11が圧力センサ41と協働することによって実現される。設定部150は、設定手段として機能する。
図12を参照して、塗料の濃度と塗布の開始タイミングとを設定する具体例について説明する。図12の上図は、圧力センサ41により測定された圧力の値の時間変化を示している。図12の下図は、上図のように圧力の値が時間変化した場合において、塗布面51に塗布される塗料の濃度の候補値の時間変化を示している。ここで、塗料の濃度とは、塗布面51上において単位面積当たりに塗布される塗料の量に相当する。
図12において、時刻Aまでの間、ユーザは、塗布装置10を把持し、塗布装置10を塗布面51に接触させながら、塗料を塗布させることを望む塗布位置を探索する。例えば、ユーザは、端末装置30に表示される撮像画像60を見ながら塗布面51上で塗布装置10を動かして、染み52の直上に開口25が位置するように塗布装置10の位置を調整する。このようにして塗布装置10の塗布位置を調整した後、塗布を開始する場合、ユーザは、塗布装置10を塗布面51に押し付ける力を強める。その結果、図12の例では、時刻Aにおいて、塗布装置10による塗布面51に対する圧力が閾値THよりも大きくなる。
取得部140により取得された圧力の値が閾値THよりも大きくなると、設定部150は、塗布面51に塗布する塗料の濃度を設定する処理を開始する。具体的に説明すると、設定部150は、取得部140により取得された圧力の値が閾値THよりも大きくなった後において、取得部140により取得された圧力の値が閾値THよりも大きい値から閾値THよりも小さい値に変化したタイミングに基づいて、塗料の濃度を設定する。圧力の値が閾値THよりも大きい値から閾値THよりも小さい値に変化したタイミングとは、図12の例では、時刻Bにおいてユーザが塗布装置10を塗布面51に押し付ける力を弱めたタイミングに相当する。
設定部150は、圧力の値が閾値THよりも大きい場合、具体的には時刻Aから時刻Bまで、濃度の候補値を時間の経過に応じて変化させる。濃度の候補値は、塗布面51に塗布される塗料の濃度を設定するための候補となる値である。具体的には図12に示すように、設定部150は、予め定められた長さの時間が経過する毎に、濃度の候補値を予め定められた量だけ増加させる。これにより、設定部150は、濃度の候補値を時間の経過と共に段階的に増加させる。
このように濃度の候補値を変化させている状態において、ユーザは、図12における時刻Bにおいて、塗布面51に対する塗布装置10の圧力を閾値THよりも強めた後、塗布装置10と塗布面51に接触させたまま、圧力を閾値TH未満に再び弱める。設定部150は、取得部140により取得された圧力の値が閾値THよりも大きい値から閾値THよりも小さい値に変化した時における候補値に、濃度を設定する。
ここで、濃度の候補値は、時間の経過と共に、すなわち時刻Aから時刻Bまでの時間がより長いほど増加する。そのため、設定部150は、圧力センサ41により測定された圧力の値が閾値THよりも大きくなってから閾値THよりも小さくなるまでの経過時間がより長い場合に、濃度の候補値はより高い値に設定する。このように、圧力の値が閾値THよりも小さくなってからの経過時間に基づいて濃度が設定されるため、ユーザは、塗布装置10を塗布面51に押し付ける圧力を弱めるタイミングを調整することで、塗料の濃度を調整することができる。
このようにして塗料の濃度を設定すると、次に設定部150は、設定された濃度での塗料の塗布を開始するための開始タイミングを設定する。設定部150は、取得部140により取得された圧力の値が閾値THよりも大きい値から閾値THよりも小さい値に変化した時から、塗布面51に対する塗布装置10の接触が維持されたままで規定時間が経過したタイミングを、開始タイミングとして設定する。
具体的に説明すると、ユーザは、図12における時刻Bにおいて塗布面51に対する塗布装置10の圧力を閾値TH未満に弱めた後、塗布装置10を塗布面51に接触させたままで、且つ、塗布装置10の位置を移動させずに保持する。設定部150は、圧力の値が閾値THよりも小さくなってからの経過時間を計測し、圧力センサ41により測定される圧力の値がゼロに下がらずに、且つ、塗布面51上で塗布装置10が有意に移動せずに、規定時間が経過したか否かを判定する。ここで、塗布装置10が移動したか否かは、撮像部17による撮像又は加速度センサ42により判定することができる。判定の結果、圧力の値がゼロに下がらずに、且つ、塗布装置10が有意に移動せずに規定時間が経過した場合、設定部150は、そのタイミング、すなわち図12の例では時刻Cのタイミングを、塗布の開始タイミングとして設定する。
ここで、圧力の値が閾値THよりも小さくなってから規定時間が経過するまでの間に、塗布面51に対する塗布装置10の接触が解除されると、設定部150は、設定された濃度をキャンセルする。ユーザは、例えば設定部150により設定された濃度が高すぎた場合のように、一度設定された濃度を設定し直すことを望む場合、塗布装置10を塗布面51から離し、再び塗布装置10を塗布面51に接触させる。そして、ユーザは、塗布面51に対する塗布装置10の圧力を調整することで、塗布装置10に対する一連の操作をキャンセルし、新たに塗料の濃度を設定することができる。
図9に戻って、濃度情報送信部160は、通信部15を介して端末装置30と通信し、設定部150により設定された、塗布面51に塗布される塗料の濃度を示す濃度情報を端末装置30に送信する。濃度情報送信部160は、制御部11が通信部15と協働することにより実現される。濃度情報送信部160は、濃度情報送信手段として機能する。
より詳細には、濃度情報送信部160は、圧力センサ41により測定された圧力の値が閾値THよりも大きい場合において、設定部150が濃度の候補値を時間の経過に応じて変化させている間、変化する濃度の候補値を示す濃度情報を繰り返し端末装置30に送信する。例えば、濃度情報送信部160は、予め定められた周期で、或いは濃度の候補値が規定値よりも大きく変化する毎に、濃度情報を端末装置30に送信する。これにより、濃度情報送信部160は、塗布面51に塗布される候補となる塗料の濃度の情報を端末装置30に随時通知する。
端末装置30において、濃度情報受信部320は、通信部35を介して塗布装置10と通信し、濃度情報送信部160により送信された濃度情報を受信する。濃度情報受信部320は、制御部31が通信部35と協働することにより実現される。濃度情報受信部320は、濃度情報受信手段として機能する。
表示制御部330は、濃度情報受信部320により受信された濃度情報により示される濃度を表示部34に表示させる。具体的に説明すると、表示制御部330は、濃度情報受信部320により受信された濃度情報により示される濃度で塗料が塗布された場合における塗布画像を生成する。そして、表示制御部330は、生成された塗布画像を表示部34に表示させる。
図13に、図11に示した撮像画像60が撮像部17により撮像された場合における、表示部34に表示される塗布画像61の例を示す。塗布画像61は、濃度情報受信部320により受信された濃度情報により示される濃度で仮に塗料を塗布した場合における、塗布面51の状態を模擬した画像である。
表示制御部330は、撮像画像受信部310により受信された撮像画像60において、輝度が周囲よりも低い領域(すなわち相対的に濃い部分)を識別することにより、染み52の領域を検出する。そして、表示制御部330は、塗布画像61として、検出された染み52の領域に、濃度情報受信部320により受信された濃度情報により示される候補値の濃度で塗料が塗布された様子を表す画像を生成する。塗布画像61を生成すると、表示制御部330は、生成された塗布画像61を、撮像画像受信部310により受信された撮像画像60と1つの表示画面内に並べて、或いは撮像画像60に重ねて、表示部34に表示させる。
より詳細には、表示制御部330は、濃度情報受信部320により新たな濃度情報が受信される毎に、受信された新たな濃度情報に対応する塗布画像61を生成し、表示部34に表示させる。これにより、ユーザは、端末装置30に表示される塗布画像61を確認することにより、時間の経過と共に変化する現在の濃度の候補値で実際に塗布を実行した場合に、塗布面51の状態がどのようになるかを容易に把握することができる。
ユーザは、塗布画像61を確認した結果として、塗布装置10による塗布を開始することを決めた場合、塗布装置10を塗布面51に押し付ける力を弱める。これにより、圧力センサ41により測定された圧力が閾値THよりも大きい値から閾値THよりも小さい値に変化すると、圧力が閾値THよりも小さくなったタイミングにおける濃度の候補値が、塗布面51に塗布される塗料の濃度として設定される。
図9に戻って、塗布装置10において、塗布データ生成部170は、撮像部17により得られた塗布面51の撮像画像60と、設定部150により設定された濃度と、に基づいて、塗布データを生成する。塗布データは、塗布部19のノズルから塗布される塗料の位置及び量を示すノズルデータである。
塗布データ生成部170は、撮像画像60内の各位置における輝度を分析し、撮像画像60における輝度の分布に基づいて、塗料の塗布位置を決定する。具体的に説明すると、塗布データ生成部170は、染み52を目立たなくするため、塗布面51上の染み52が存在する位置を塗料の塗布位置として決定する。そのため、塗布データ生成部170は、撮像画像60において輝度が周囲よりも低い領域(すなわち相対的に濃い部分)を識別することにより、染み52の領域を検出する。そして、塗布データ生成部170は、輝度が周囲よりも低い領域を、塗料の塗布位置として決定する。
塗布位置を決定すると、塗布データ生成部170は、決定した塗布位置に、設定部150により設定された濃度に相当する量の塗料を塗布することを示す塗布データを生成する。このようにして、塗布データ生成部170は、塗布部19から塗布される塗料の位置及び量、すなわち塗布のパターンを示す塗布データを生成する。塗布データ生成部170は、制御部11が記憶部12と協働することにより実現される。塗布データ生成部170は、塗布データ生成手段として機能する。
塗布制御部180は、塗布部19を制御して、塗布ヘッド22から塗料を塗布させる。塗布部19は、撮像部17により得られた塗布面51の撮像画像60に基づいて定められる塗布面51上の位置に、設定部150により設定された制御情報である塗料の濃度及び塗布の開始タイミングに従って、塗料を塗布する。
具体的に説明すると、塗布制御部180は、設定部150により設定された塗布の開始タイミングが到来すると、図7に示したように、駆動部18を制御して塗布部19を退避位置P1から塗布位置P2に移動させる。そして、塗布制御部180は、塗布データ生成部170により生成された塗布データに従って、塗布ヘッド22から塗料を塗布する。塗布制御部180は、制御部11が塗布部19及び駆動部18と協働することによって実現される。
より詳細には、塗布制御部180は、塗布部19が塗布位置P2にある時に、塗布データ生成部170により生成された塗布データの内容を塗布部19に出力する。そして、塗布制御部180は、塗布部19の通電ドットを制御して、塗布ヘッド22から塗料を吐出させる。このとき、塗布制御部180は、駆動部18を駆動させて塗布位置P2にある塗布部19を徐々に移動させながら、塗布データにより示される各塗布位置に塗布ヘッド22のノズルが到達すると、塗布データにより示される濃度(量)の塗料をノズルから吐出させる。
このようにして、塗布部19は、開口25を通して、塗布データにより定められたパターンで塗布面51に塗料を塗布する。その結果、例えば図14に示すように、塗布面51上に存在する染み52の上から塗料が塗布される。
以上のように構成される塗布システム1において実行される処理の流れについて、図15を参照して説明する。
図15は、塗布装置10と端末装置30との間で実行される処理の流れを示している。ユーザは、図10に示したように、塗布対象50の塗布面51上における塗料を塗布することを望む場所に開口25を合わせるようにして、塗布装置10を塗布面51上に設置する。そして、ユーザが塗布装置10の電源を投入して、塗布装置10が正常に塗料を塗布可能な状態になると、図15に示す処理は開始する。
図15に示す処理を開始すると、塗布装置10において、制御部11は、撮像を開始する(ステップS1)。具体的に説明すると、制御部11は、駆動部18を駆動させて、初期状態では撮像部17の直下である塗布位置P2に位置している塗布部19を、図6に示したように退避位置P1に移動させる。そして、制御部11は、照明27を点灯させて、開口25を通した塗布面51の撮像を開始する。
撮像を開始すると、制御部11は、撮像画像送信部130として機能し、撮像画像60を端末装置30に送信する(ステップS2)。塗布装置10から撮像画像60が送信されると、端末装置30において、制御部31は、撮像画像受信部310として機能し、送信された撮像画像60を受信する。
端末装置30において、制御部31は、撮像画像60を受信すると、表示制御部330として機能し、撮像画像60を表示部34に表示する(ステップS3)。例えば塗布面51上に存在する染み52とその周辺領域が撮像部17により撮像された場合、制御部31は、図11に示した撮像画像60を表示する。
塗布装置10において、制御部11は、撮像画像60を送信すると、塗布面51に対する塗布装置10の接触を検知したか否かを判定する(ステップS4)。具体的に説明すると、制御部11は、取得部140として機能し、圧力センサ41により測定された圧力の値を取得する。そして、制御部11は、圧力の値がゼロよりも大きな値を示した場合に、塗布面51に対する塗布装置10の接触を検知した、すなわち塗布装置10が塗布面51上に設置されたと判定する。
塗布面51に対する塗布装置10の接触を検知した場合(ステップS4;YES)、続いて制御部11は、塗布装置10が静止した状態において、圧力センサ41により閾値THよりも大きい圧力を検知したか否かを判定する(ステップS5)。具体的に説明すると、制御部11は、撮像部17により撮像された画像又は加速度センサ42により測定された加速度に基づいて、接触が検知された塗布面51上で塗布装置10が静止したか否かを判定する。そして、塗布装置10が静止したと判定された場合、制御部11は、圧力センサ41により測定された圧力の値と予め定められた閾値THとの大小関係を判定する。
塗布面51に対する塗布装置10の接触を検知していない場合(ステップS4;NO)、及び、接触を検知した場合であっても、塗布装置10が静止した状態で閾値THよりも大きい圧力を検知していない場合(ステップS5;NO)、制御部11は、処理をステップS2に戻す。そして、制御部11は、塗布面51に対する塗布装置10の接触を検知し、且つ、その接触による圧力が閾値THよりも大きくなるまで、撮像部17により撮像された画像を端末装置30に送信し、圧力センサ41により閾値THよりも大きな圧力が検知されたか否かを判定する処理を繰り返す。
これに対して、塗布装置10が静止した状態で閾値THよりも大きい圧力を検知した場合(ステップS5;YES)、制御部11は、設定部150として機能し、塗布面51に塗布する塗料の濃度の候補値を時間の経過に応じて変化させる(ステップS6)。具体的に説明すると、制御部11は、図12における時刻Aから時刻Bまでの圧力が閾値THを超えている間、濃度の候補値を時間の経過と共に段階的に増加させる。
塗料の濃度の設定値を変化させている間、制御部11は、濃度情報送信部160として機能し、濃度情報を端末装置30に送信する(ステップS7)。具体的に説明すると、制御部11は、濃度情報として、時間の経過に応じて変化させている濃度の候補値を示す情報を、予め定められた周期で繰り返し端末装置30に送信する。塗布装置10から濃度情報が送信されると、端末装置30において、制御部31は、濃度情報受信部320として機能し、送信された濃度情報を受信する。
端末装置30において、制御部31は、濃度情報を受信すると、表示制御部330として機能し、塗布画像61を表示部34に表示する(ステップS8)。具体的に説明すると、制御部31は、例えば図13に示したように、ステップS2で受信された撮像画像60により示される塗布面51に、ステップS7で受信された濃度情報により示される濃度の候補値で塗料が塗布された場合における塗布画像61を生成し、表示部34に表示させる。
塗布装置10において、制御部11は、次に、圧力センサ41により測定された圧力が閾値THよりも小さくなったか否かを判定する(ステップS9)。ユーザは、端末装置30に表示された塗布画像61を確認しながら、例えば図12における時刻Bにおいて、塗布装置10を塗布面51に接触させる力を弱める。制御部11は、このように接触の力が弱められることで、圧力センサ41により測定された圧力が閾値THを下回ったか否かを判定する。
圧力センサ41により測定された圧力が閾値THよりも小さくなっていない場合(ステップS9;NO)、制御部11は、処理をステップS6に戻す。すなわち、閾値THよりも大きい圧力で塗布装置10が塗布面51に押し付けられている間は、制御部11は、塗料の濃度の候補値を時間の経過と共に変化させつつ、濃度情報を端末装置30に送信する処理を繰り返す。端末装置30において、制御部31は、塗布装置10から新たな濃度情報を受信する毎に、新たな濃度情報により示される濃度の候補値に基づいて新たな塗布画像61を生成し、表示部34に表示される塗布画像61を更新する。
これに対して、圧力センサ41により測定された圧力が閾値THよりも小さくなると(ステップS9;YES)、制御部11は、設定部150として機能し、塗布面51に塗布する塗料の濃度を設定する(ステップS10)。具体的に説明すると、制御部11は、圧力が閾値THよりも大きくなってからの経過時間に応じて変化する濃度の候補値のうちの、圧力が閾値THよりも小さくなったタイミングにおける候補値を、塗布面51に塗布される塗料の濃度として決定する。
濃度を設定すると、制御部11は、濃度情報送信部160として機能し、設定された濃度を示す濃度情報を端末装置30に送信する(ステップS11)。塗布装置10から濃度情報が送信されると、端末装置30において、制御部31は、送信された濃度情報を受信する。
端末装置30において、制御部31は、濃度情報を受信すると、表示制御部330として機能し、表示部34に表示されている塗布画像61を更新する(ステップS12)。具体的に説明すると、制御部31は、ステップS8と同様に、受信された濃度情報に基づいて、最終的に設定された濃度での塗布画像61を生成し、表示部34に表示させる。
塗布装置10において、制御部11は、濃度情報を送信すると、塗布データ生成部170として機能し、設定された濃度で塗料を塗布するための塗布データを生成する(ステップS13)。具体的に説明すると、制御部11は、撮像部17により得られた撮像画像60により示される塗布面51の輝度の分布に基づいて、塗布位置を決定する。そして、制御部11は、決定した塗布位置に、ステップS10で設定した濃度で塗料を塗布するための塗布データを生成する。
塗布データを生成すると、制御部11は、設定部150として機能し、生成した塗布データでの塗布の開始タイミングの設定処理を実行する。具体的に説明すると、制御部11は、圧力センサ41により測定された圧力が閾値THを下回ってから規定時間が経過するまでの間、塗布面51に対する塗布装置10の接触が維持されたか否かを判定する(ステップS14)。具体的に説明すると、制御部11は、塗布面51に対する塗布装置10の接触と位置とが保持されたまま、図12における時刻Bから時刻Cまで時間が経過したかを判定する。
圧力が閾値THを下回ってから規定時間が経過するまでに、塗布装置10が塗布面51から離れた、又は別の位置に移動したことが検知された場合(ステップS14;NO)、制御部11は、処理をステップS2に戻す。この場合は、ユーザがステップS10で既に設定された濃度をキャンセルして、塗料の濃度を別の濃度に設定し直す場合に相当する。この場合、制御部11は、上述したステップS2からステップS13までの処理を再び実行することで、塗料の濃度を新たに設定する。
これに対して、圧力が閾値THを下回ってから規定時間が経過するまで接触が維持された場合(ステップS14;YES)、制御部11は、圧力が閾値THを下回ってから規定時間が経過したタイミングを、塗布の開始タイミングとして設定する。そして、制御部11は、設定した開始タイミングにおいて、塗布制御部180として機能し、塗布を開始する(ステップS15)。
具体的に説明すると、制御部11は、図7に示したように、駆動部18を駆動させて、ステップS1で退避位置P1に移動していた塗布部19を、塗布位置P2に移動させる。そして、制御部11は、照明27を消灯させて、塗料の塗布を開始する。制御部11は、駆動部18を駆動させることにより、塗布範囲である開口25の上部で塗布部19を徐々に移動させながら、ステップS11で生成した塗布データに従って塗布ヘッド22から塗料を塗布する。これにより、例えば図14に示したように、塗布面51上に塗料が塗布される。以上により、図15に示した塗布システム1における処理は終了する。
以上説明したように、実施形態1に係る塗布装置10は、塗布面51に対する塗布装置10の圧力の値を取得し、取得された圧力の値に基づいて、塗布面51に対する塗布の制御に関する制御情報として、塗料の濃度及び塗布の開始タイミングを設定する。そして、塗布装置10は、設定された濃度及び開始タイミングに従って、塗布面51に塗料を塗布する。このように、ユーザは、塗布装置10を塗布面51に押し付ける力を変化させることで、塗料の濃度と塗布の開始タイミングとを調整することができる。そのため、ユーザは、塗布装置10を把持している手のみの簡単な操作で塗料を塗布することができる。
例えば従来のように端末装置30を操作して濃度又は開始タイミングを設定する場合、ユーザは、塗布装置10を片手で把持しながら、もう一方の手で端末装置30を操作する必要がある。しかしながら、もう一方の手は、皮膚に塗料を塗布し易くするために皮膚を引っ張る等、別の用途のために塞がっている可能性がある。また、塗布装置10のユーザインタフェース13を介して設定を入力することも可能であるが、塗布装置10の把持のし方によってはユーザインタフェース13を操作しにくい場合も多い。これに対して、実施形態1に係る塗布装置10によれば、たとえユーザの両手がふさがっていたとしても、塗布装置10を塗布面51に押し付ける力を変化させるという簡単な操作で濃度の調整と塗布の実行が可能になる。
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について説明する。実施形態1と同じ構成及び機能については、説明を省略する。
実施形態1では、設定部150は、圧力センサ41により測定された圧力の値が閾値THよりも大きい場合、塗布面51に塗布される塗料の濃度の候補値を時間の経過と共に増加させ、圧力の値が閾値THよりも大きくなってからの経過時間がより長い場合に濃度をより高い値に設定した。これに対して、実施形態2では、設定部150は、圧力センサ41により測定された圧力の値が閾値THよりも大きい場合、塗布面51に塗布される塗料の濃度の候補値を、時間の経過に応じて周期的に変化させる。
図16に、実施形態2における塗料の濃度の候補値の時間変化を示す。図16の見方は、実施形態1において説明した図12と同様である。図16において時刻Aから時刻Bまで取得部140により取得された圧力の値が閾値THよりも大きい場合、設定部150は、濃度の候補値を時間の経過に応じて変化させる。具体的に説明すると、設定部150は、実施形態1と同様に、濃度の候補値を時間の経過と共に段階的に増加させる。
実施形態2では、図16に示すように、設定部150は、濃度の候補値が予め定められた上限値に達すると、濃度の候補値を下限値であるゼロに戻し、再び段階的に増加させる。言い換えると、設定部150は、濃度の候補値を下限値と上限値との間で繰り返しローテーションさせる。
このようにローテーションする濃度の候補値は、実施形態1と同様に端末装置30に送信されて、塗布画像61として表示部34に表示される。ユーザは、端末装置30に表示される塗布画像61を確認しながら、所望のタイミングで塗布装置10を塗布面51に押し付ける力を弱めることで、塗布面51に塗布される塗料の濃度を設定することができる。このように、実施形態2では、濃度の候補値が時間の経過に応じてローテーションするため、実施形態1に比べて塗料の濃度をより設定し易くなる。
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3について説明する。実施形態1、2と同じ構成及び機能については、説明を省略する。
実施形態1、2では、設定部150は、圧力センサ41により測定された圧力の値が閾値THよりも大きい場合、塗布面51に塗布される塗料の濃度の候補値を、時間の経過のみに基づいて変化させた。これに対して、実施形態3では、設定部150は、圧力センサ41により測定された圧力の値が閾値THよりも大きい場合において、濃度の候補値を増加させるか又は減少させるかを、圧力の値が単位時間当たりに変化する変化度に応じて切り替える。
図17に、実施形態3における塗料の濃度の候補値の時間変化を示す。図17の見方は、実施形態1において説明した図12と同様である。図17において時刻Aから時刻Bまで取得部140により取得された圧力の値が閾値THよりも大きい場合、設定部150は、圧力センサ41により測定された圧力の値が単位時間当たりに変化する変化度が規定値よりも大きいか否かを判定する。そして、設定部150は、変化度が規定値よりも小さければ、濃度の候補値を時間の経過に応じて増加させ、変化度が規定値よりも大きければ、濃度の候補値を時間の経過に応じて減少させる。
具体的に図17の例では、時刻Aから時刻A’までの間、圧力の変化度は相対的に小さく、ほぼゼロに近い。この場合、設定部150は、実施形態1と同様に、濃度の候補値を時間の経過と共に段階的に増加させる。これに対して、時刻A’から時刻Bの間、ユーザは、把持している塗布装置10を塗布面51に押し付ける力を、例えば0.3秒程度の周期で周期的に増減させる。これにより塗布面51に対する塗布装置10の圧力の変化度が規定値よりも大きくなると、設定部150は、濃度の候補値を時間の経過と共に段階的に減少させる。
このように増減する濃度の候補値は、実施形態1と同様に端末装置30に送信されて、塗布画像61として表示部34に表示される。ユーザは、端末装置30に表示される塗布画像61を確認しながら、塗布装置10を塗布面51に押し付ける力を短時間で変動させることで、塗布面51に塗布される塗料の濃度を調整することができる。このように、実施形態3では、濃度の候補値が時間の経過に応じて増加するだけでなく、ユーザの操作により濃度の候補値を減少させることができるため、実施形態1に比べて塗料の濃度をより設定し易くなる。
なお、図17に示した濃度の候補値の変化とは逆に、設定部150は、圧力の変化度が規定値よりも小さければ、濃度の候補値を時間の経過に応じて減少させ、圧力の変化度が規定値よりも大きければ、濃度の候補値を時間の経過に応じて増加させても良い。この場合の例を図18に示す。図18において、時刻Aから時刻A’までの間、ユーザは、把持している塗布装置10を塗布面51に押し付ける力を周期的に増減させる。これにより塗布面51に対する塗布装置10の圧力の変化度が規定値よりも大きくなると、設定部150は、濃度の候補値を時間の経過と共に段階的に増加させる。これに対して、時刻A’から時刻Bの間、圧力の変化度は相対的に小さく、ほぼゼロに近い。この場合、設定部150は、濃度の候補値を時間の経過と共に段階的に減少させる。このように、圧力の変化度に応じて濃度の候補値を増加させるか又は減少させるかは自由に定めることができる。
(変形例)
以上に本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、本発明の実施形態は種々の応用が可能であり、あらゆる実施の形態が本発明の範囲に含まれる。
例えば、上記実施形態では、設定部150は、取得部140により取得された指標値に基づいて、塗布面51に塗布される塗料の濃度と、塗布の開始タイミングと、をどちらも設定した。しかしながら、本発明において、設定部150は、取得部140により取得された指標値に基づいて、塗布面51に塗布される塗料の濃度と、塗布の開始タイミングと、のうちの一方のみを設定しても良い。どちらか一方のみを設定する場合であっても、塗布装置10を塗布面51に押し付ける力を調整することで塗料の濃度又は塗布の開始タイミングを設定可能なことで、塗布装置10の操作性を高めることができる。また、塗料の濃度又は塗布の開始タイミングの設定方法は、塗布面51に対する塗布装置10の接触の強さを示す指標値に基づくものであれば、実施形態1から3で説明した方法に限らず、どのような方法で設定されても良い。
上記実施形態では、塗布データ生成部170の機能を、塗布装置10が備えていた。しかしながら、本発明において、塗布装置10は、塗布データ生成部170の機能を備えていなくても良い。例えば、端末装置30が、撮像画像受信部310により受信された撮像画像60と、濃度情報受信部320により受信された濃度情報と、に基づいて塗布データを生成する塗布データ生成部170の機能を備えており、塗布装置10は、端末装置30において生成された塗布データを端末装置30から受信しても良い。
上記実施形態では、取得部140は、圧力センサ41を用いて塗布対象50の塗布面51に対する塗布装置10の接触の強さを示す指標値を取得した。しかしながら、本発明において、取得部140は、圧力センサ41に限らず、どのような手法で接触の強さを示す指標値を取得しても良い。例えば、取得部140は、圧力センサ41の代わりに、又は圧力センサ41と併用して、静電容量センサ、距離センサ等を用いて、接触の強さを示す指標値を取得しても良い。
静電容量センサを用いる場合、静電容量センサは、塗布装置10の底面に設けられ、塗布装置10が塗布対象50上に置かれた際に塗布対象50との間に生じる静電容量を測定する。塗布面51に対する塗布装置10の接触の強さがより強いほど、静電容量センサにより測定される静電容量はより大きくなる。或いは、距離センサを用いる場合、距離センサは、塗布装置10の適宜の場所に設けられ、塗布装置10が塗布対象50上に置かれた際に塗布対象50までの距離を測定する。塗布面51に対する塗布装置10の接触の強さがより強いほど、距離センサにより測定される距離はより小さくなる。
上記実施形態では、塗布装置10は、皮膚等に存在する染み52等の上から塗料を塗布するいわゆるコンシーラであることを例にとって説明した。しかしながら、本発明において、塗布装置10は、印刷用紙等の表面に、文字、記号、図形、絵柄、模様等の任意の画像を印刷することが可能な印刷装置(いわゆるハンディプリンタ)であっても良い。或いは、塗布装置10は、印刷用紙等に描かれた誤記の上からインクを塗布して誤記を修正する用途に用いられても良い。塗布装置10がコンシーラ以外の用途で用いられる場合、塗布対象50は、印刷用紙、段ボール等のような紙媒体であっても良いし、プラスチック、金属、木材等、塗料を付着させることができるものであれば、どのような材質のものであっても良い。また、塗料は、皮膚に塗られる化粧料等であることに限らず、塗布可能なものであればどのような材質で構成されていても良い。
上記実施形態では、塗布装置10は、塗布面51において輝度が周囲よりも低い領域、すなわち染み52等が存在する部分に塗料を塗布した。しかしながら、本発明において、塗布装置10は、特にコンシーラ以外の用途で使用される場合、どのような基準に従って塗料を塗布する位置を決定しても良い。例えば、塗布装置10は、輝度が周囲よりも高い部分を識別し、その部分に塗料を塗布しても良い。或いは、塗布装置10は、塗布面51に文字が描かれている場合、輝度の分布から文字部分と背景部分とを識別し、文字部分と背景部分との境界に塗料を塗布することで縁取りをしても良いし、文字部分の近傍にその文字に対応するルビを振っても良い。
上記実施形態では、塗布部19は、サーマル方式によって塗布ヘッド22から塗料を吐出した。しかしながら、本発明において、塗布部19は、サーマル方式に限らず、他の方式により塗料を吐出しても良い。例えば、塗布部19は、ピエゾ素子を用いたピエゾ方式により塗料を吐出しても良い。また、塗布部19は、インクジェット方式に限らず、熱転写方式等、他の方式により塗布対象50に塗料を塗布しても良い。また、塗布装置10の形状は、図1に示したような四角柱状に限らず、どのような形状をしていても良い。また、撮像部17は、カメラであることに限らず、輝度の分布を検出可能な光学センサ等を用いて、塗布面51における輝度の分布を示す撮像画像を取得しても良い。
上記実施形態では、制御部11,31において、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することによって、図9に示した各部として機能した。しかしながら、本発明において、制御部11,31は、CPUの代わりに、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、各種制御回路等の専用のハードウェアを備え、専用のハードウェアが、図9に示した各部として機能しても良い。この場合、各部の機能それぞれを個別のハードウェアで実現しても良いし、各部の機能をまとめて単一のハードウェアで実現しても良い。また、各部の機能のうち、一部を専用のハードウェアによって実現し、他の一部をソフトウェア又はファームウェアによって実現しても良い。
なお、本発明に係る機能を実現するための構成を予め備えた塗布装置及び端末装置として提供できることはもとより、プログラムの適用により、既存の情報処理装置等を、本発明に係る塗布装置及び端末装置として機能させることもできる。すなわち、上記実施形態で例示した塗布装置10及び端末装置30による各機能構成を実現させるためのプログラムを、既存の情報処理装置等を制御するCPU等が実行できるように適用することで、本発明に係る塗布装置及び端末装置として機能させることができる。
また、このようなプログラムの適用方法は任意である。プログラムを、例えば、フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納して適用できる。さらに、プログラムを搬送波に重畳し、インターネットなどの通信媒体を介して適用することもできる。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS:Bulletin Board System)にプログラムを掲示して配信してもよい。そして、このプログラムを起動し、OS(Operating System)の制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上記の処理を実行できるように構成してもよい。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲とが含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記1)
塗布対象に対する自装置の接触の強さを示す指標値を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記指標値に基づいて、前記塗布対象に対する塗布の制御に関する制御情報を設定する設定手段と、
前記設定手段により設定された前記制御情報に従って、前記塗布対象に塗料を塗布する塗布手段と、
を備えることを特徴とする塗布装置。
(付記2)
前記設定手段は、前記制御情報として、前記塗布対象に塗布される前記塗料の濃度を設定し、
前記塗布手段は、前記設定手段により設定された前記濃度で、前記塗布対象に前記塗料を塗布する、
ことを特徴とする付記1に記載の塗布装置。
(付記3)
前記設定手段は、前記取得手段により取得された前記指標値が閾値よりも大きくなった後において、前記取得手段により取得された前記指標値が前記閾値よりも大きい値から前記閾値よりも小さい値に変化したタイミングに基づいて、前記濃度を設定する、
ことを特徴とする付記2に記載の塗布装置。
(付記4)
前記設定手段は、前記取得手段により取得された前記指標値が前記閾値よりも大きくなってから前記閾値よりも小さくなるまでの経過時間がより長い場合に、前記濃度をより高い値に設定する、
ことを特徴とする付記3に記載の塗布装置。
(付記5)
前記設定手段は、前記取得手段により取得された前記指標値が前記閾値よりも大きい場合、前記濃度の候補値を時間の経過に応じて変化させ、前記取得手段により取得された前記指標値が前記閾値よりも大きい値から前記閾値よりも小さい値に変化した時における前記候補値に、前記濃度を設定する、
ことを特徴とする付記3又は4に記載の塗布装置。
(付記6)
前記設定手段は、前記取得手段により取得された前記指標値が前記閾値よりも大きい場合、前記候補値を時間の経過に応じて周期的に変化させる、
ことを特徴とする付記5に記載の塗布装置。
(付記7)
前記設定手段は、前記取得手段により取得された前記指標値が前記閾値よりも大きい場合、前記候補値を時間の経過に応じて増加させるか又は減少させるかを、前記取得手段により取得された前記指標値が単位時間当たりに変化する変化度に応じて切り替える、
ことを特徴とする付記5又は6に記載の塗布装置。
(付記8)
前記設定手段は、前記制御情報として、前記塗布を開始する開始タイミングを設定し、
前記塗布手段は、前記設定手段により設定された前記開始タイミングで、前記塗布対象に前記塗料の塗布を開始する、
ことを特徴とする付記1から7のいずれか1つに記載の塗布装置。
(付記9)
前記設定手段は、前記取得手段により取得された前記指標値が閾値よりも大きくなった後において、前記取得手段により取得された前記指標値が前記閾値よりも大きい値から前記閾値よりも小さい値に変化した時から、前記接触が維持されたままで規定時間が経過したタイミングを、前記開始タイミングとして設定する、
ことを特徴とする付記8に記載の塗布装置。
(付記10)
前記取得手段は、自装置と前記塗布対象との間の接触圧を示す指標を取得する、
ことを特徴とする付記1から9のいずれか1つに記載の塗布装置。
(付記11)
前記塗布対象を撮像する撮像手段、を更に備え、
前記塗布手段は、前記撮像手段により得られた前記塗布対象の撮像画像に基づいて定められる前記塗布対象上の位置に、前記設定手段により設定された前記制御情報に従って、前記塗料を塗布する、
ことを特徴とする付記1から10のいずれか1つに記載の塗布装置。
(付記12)
付記11に記載の塗布装置と、端末装置と、を備える塗布システムであって、
前記塗布装置は、
前記撮像手段により得られた前記撮像画像を前記端末装置に送信する撮像画像送信手段、を更に備え、
前記端末装置は、
前記塗布装置から送信された前記撮像画像を受信する撮像画像受信手段と、
前記撮像画像受信手段により受信された前記撮像画像を表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする塗布システム。
(付記13)
前記塗布装置は、
前記塗布対象に塗布される前記塗料の濃度を示す濃度情報を前記端末装置に送信する濃度情報送信手段、を更に備え、
前記端末装置は、
前記塗布装置から送信された前記濃度情報を受信する濃度情報受信手段、を更に備え、
前記表示手段は、前記濃度情報受信手段により受信された前記濃度情報により示される前記濃度を表示する、
ことを特徴とする付記12に記載の塗布システム。
(付記14)
塗布対象に対する塗布装置の接触の強さを示す指標値を取得し、
取得された前記指標値に基づいて、前記塗布対象に対する塗布の制御に関する制御情報を設定し、
設定された前記制御情報に従って、前記塗布対象に塗料を塗布する、
ことを特徴とする塗布方法。
(付記15)
塗布装置のコンピュータを、
塗布対象に対する前記塗布装置の接触の強さを示す指標値を取得する取得手段、
前記取得手段により取得された前記指標値に基づいて、前記塗布対象に対する塗布の制御に関する制御情報を設定する設定手段、
前記設定手段により設定された前記制御情報に従って、前記塗布対象に塗料を塗布する塗布手段、
として機能させるためのプログラム。