JP5246119B2 - エンジン制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、アクセル操作部材が操作されていない状態において、バキュームブースタの負圧室の負圧が閾値を超えていることを少なくとも1つの条件として含む所定の条件が満たされた場合に、エンジンへの燃料噴射を停止させるように、エンジンを制御するエンジン制御装置に関する。
近年では、燃費の向上,エミッションの低減等を目的として、エンジンを停止させても問題のない場合、具体的には、例えば、信号待ち等で車両が停止している場合等において、エンジンへの燃料の噴射を停止させるように、エンジンを制御するエンジン制御装置が検討されており、既に実用化され始めている。下記特許文献には、そのようなエンジン制御装置の一例が記載されている。
特開2004−204724号公報
エンジンを停止させても問題のない場合に燃料噴射を停止させるための条件としては、アクセル操作部材が操作されていないこと,ブレーキ操作部材が操作されていること等種々の条件が、通常、採用されており、ブレーキ操作部材に加えられる操作力を倍力するためのバキュームブースタの負圧状態に関する条件が採用される場合も多くある。バキュームブースタは、負圧となっている負圧室の空気圧と大気圧との圧力差を利用して、ブレーキ操作部材に加えられる操作力を倍力する構造とされており、バキュームブースタの負圧室を負圧状態とするための負圧源としては、通常、エンジンの吸気部が採用されている。このため、エンジンが停止してしまうと、バキュームブースタの負圧室の負圧であるブースタ負圧が低くなり、言い換えれば、負圧室の空気圧が高くなり、バキュームブースタがブレーキ操作部材への操作力を倍力し難くなる虞がある。そこで、ブースタ負圧がある程度高い状態にあること、具体的には、ブースタ負圧が設定閾値を超えていることが上記条件として採用されるのである。
この条件は、運転者によるブレーキ操作の操作力の倍力効果を担保するためのものであり、車両を停止させるために必要な制動力を担保するべくブースタ負圧をある程度高い状態に維持しておくためのものである。車両を停止させるために必要な制動力は、車体の重量、詳しく言えば、車両の積載重量(乗員,荷物を含めた積載物の重量)と大きく関係しており、積載重量が大きいほど大きな制動力が必要となる。そこで、上記特許文献に記載のエンジン制御装置においては、積載重量が大きいほど、ブースタ負圧の設定閾値であるブースタ負圧閾値が大きな値に設定されている。このように、積載重量に応じてブースタ負圧閾値を変更することで、積載重量に応じた適切な大きさの制動量を担保することが可能となる。ただし、車両の積載重量は、乗員の乗り降り,荷物の積み下ろし等によって変化するため、積載重量が変化したと想定される毎に取得され更新される必要があるが、センサ等の故障により実際の車両の積載重量を正確に取得できない場合もある。このような場合には、積載重量に応じたブースタ負圧閾値を設定することができず、車両を停止させるために必要な制動力を担保することができなくなる虞がある。本発明は、そのような事情に鑑みてなされたものであり、実際の車両の積載重量を正確に取得できない場合であっても、車両を停止させるために必要な制動力を担保可能なエンジン制御装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明のエンジン制御装置は、アクセル操作部材が操作されていない状態において、ブースタ負圧がブースタ負圧閾値を超えていることを必要条件として、燃料の噴射を停止させるようにエンジンを制御するエンジン制御装置であって、車両の積載重量を取得し、その取得された車両の積載重量が大きいほどブースタ負圧閾値を大きい値に設定するとともに、実際の車両の積載重量を正確に取得できないと推定される場合には、取得された積載重量に拘らず、通常設定される範囲における最高の値にブースタ負圧閾値を設定するように構成される。
本発明のエンジン制御装置においては、実際の車両の積載重量を正確に取得できないと推定される場合には、ブースタ負圧閾値が通常設定される最高の値に設定される。つまり、ブースタ負圧に関する条件を最も厳しい条件とすることで、車両に通常積載される最大の重量が車両に積載されている状態において必要とされるブースタ負圧を確保することが可能となる。したがって、本発明のエンジン制御装置によれば、実際の車両の積載重量を正確に取得できない場合であっても、車両を停止させるために必要な制動力を担保することが可能となる。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
なお、下記(1)項は、請求可能発明の前提となる構成を示した態様に関する項であり、その項の態様に、その項以降に掲げる項のいずれかに記載の技術的特徴を付加した態様が、請求可能発明の態様となる。ちなみに、(1)項を引用する(2)項が請求項1に相当し、請求項1に(3)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項2に、請求項2に(4)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項3に、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに(5)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項4に、請求項1ないし請求項4のいずれか1つに(6)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項5に、それぞれ相当する。
(1)ブレーキ操作部材に加えられた操作力を倍力するバキュームブースタの負圧室に接続される吸気部を備えたエンジンを制御するエンジン制御装置であって、
運転者によるアクセル操作部材の操作量に応じて、前記吸気部への空気の吸気量と燃料の噴射量とを制御することで、エンジンの作動を制御するエンジン作動制御部と、
アクセル操作部材が操作されていない状態において、前記負圧室の負圧であるブースタ負圧がそのブースタ負圧の閾値であるブースタ負圧閾値を超えていることを必要条件として、燃料の噴射を停止させる燃料噴射停止部と、
車両の乗員および積載物の重量である積載重量を取得する積載重量取得部と、
その積載重量取得部によって取得された車両の積載重量である取得積載重量に基づいて、その前記取得積載重量が大きいほど前記ブースタ負圧閾値を大きい値に設定するブースタ負圧閾値設定部と
を備えるエンジン制御装置。
本項に記載の態様は、請求可能発明の前提をなす態様であり、請求可能発明のエンジン制御装置の基本的構成要素を列挙した態様である。本項に記載されたエンジン制御装置においては、燃費の向上,エミッションの低減等を目的として、エンジンを停止させても問題のない場合、具体的には、例えば、信号待ち等で車両が停止している場合等において、エンジンへの燃料の噴射を停止させる制御、いわゆるエコラン制御を実行することが可能とされている。エコラン制御における燃料噴射の停止条件としては、アクセル操作部材が操作されていないこと,ブレーキ操作部材が操作されていること等種々の条件が、通常、採用されており、さらに、倍力装置としてのバキュームブースタの負圧状態に関する条件が採用される場合も多くある。
バキュームブースタは、負圧室の空気圧と大気圧との圧力差を利用して、ブレーキ操作部材に加えられる操作力を倍力する構造とされており、バキュームブースタの負圧室を負圧状態とするための負圧源としては、通常、エンジンの吸気部が採用されている。このため、エコラン制御においてエンジンを停止させてしまうと、バキュームブースタの負圧室の負圧であるブースタ負圧を高くすることができなくなり、バキュームブースタが運転者によるブレーキ操作部材への操作力を倍力し難くなる虞がある。そこで、ブースタ負圧がある程度高い状態にあること、具体的には、ブースタ負圧がそのブースタ負圧の閾値であるブースタ負圧閾値を超えていることがエコラン制御での燃料噴射の停止条件として採用されているのである。
この条件は、運転者によるブレーキ操作の操作力の倍力効果を担保するためのものであり、車両を停止させるために必要な制動力を担保するべくブースタ負圧をある程度高い状態に維持しておくためのものである。車両を停止させるために必要な制動力は、車両の積載重量と大きく関係しており、積載重量が大きいほど大きな制動力が必要となる。本項に記載のエンジン制御装置においては、積載重量が大きいほどブースタ負圧閾値が大きな値に設定されることから、積載重量が大きいほどブースタ負圧を高い状態に維持することが可能となり、積載重量に応じた適切な大きさの制動力を担保することが可能となっている。
本項に記載された「燃料噴射停止部」は、アクセル操作部材が操作されていない状態において、ブースタ負圧がブースタ負圧閾値を超えていることを1つの条件として含む所定の条件を満たした場合に、燃料の噴射を停止させるものであり、その所定の条件として、ブースタ負圧がブースタ負圧閾値を超えていること以外の種々の条件、具体的には、ブレーキ操作部材が操作されていること,車両が停止していること等を採用してもよい。所定の条件として複数の条件が採用される場合には、それら複数の条件全てを満たした場合に、エンジンへの燃料噴射を停止させる。また、本項に記載の「所得積載重量」は、荷重センサ等により積載重量を検出することで取得されるものであってもよく、後に詳しく説明するが、エアスプリングのエア圧等に依拠して積載重量を推定することで取得されるものであってもよい。
(2)前記ブースタ負圧閾値設定部が、
前記積載重量取得部が実際の車両の積載重量を正確に取得できないと推定される場合には、前記取得積載重量に拘らず、前記ブースタ負圧閾値を、通常設定される範囲における最高の値に設定するように構成された(1)項に記載のエンジン制御装置。
車両の積載重量は、乗員の乗り降り,荷物の積み下ろし等によって変化するため、上述のように積載重量に応じてブースタ負圧閾値を変化させる場合には、積載重量が変化したと想定される毎に積載重量を取得し、更新する必要がある。ただし、積載重量を取得するためのセンサ等の故障により実際の車両の積載重量を正確に取得できない場合もあり、このような場合には、積載重量に応じたブースタ負圧閾値を設定することができず、車両を停止させるために必要な制動力を担保することができなくなる虞がある。本項に記載のエンジン制御装置においては、実際の車両の積載重量を正確に取得できないと推定される場合には、ブースタ負圧に関する条件を最も厳しい条件とすることが可能となり、車両に通常積載される最大の重量に対応したブースタ負圧を確保することが可能となる。したがって、本項に記載の制御装置によれば、実際の車両の積載重量を正確に取得できない場合であっても、車両を停止させるために必要な制動力を担保することが可能となる。
本項に記載の「通常設定される範囲における最高の値」は、積載重量のみに依拠して設定されるブースタ負圧閾値のうちで最も高い値を意味するものであり、例えば、車両に設定されている最大積載重量に対応して設定された値である。また、最大積載重量を超えて積載される可能性もあるため、最大積載重量を超えた積載重量に対応してブースタ負圧閾値が設定されているような場合には、その値が「通常設定される最高の値」である。また、本項に記載の「積載重量取得部が実際の車両の積載重量を正確に取得できないと推定される場合」には、積載重量を取得するためのセンサ等が正常に機能していないと推定される場合,車両が安定せず積載重量を正確に取得できないと推定される場合等、種々の場合を適用することが可能である。
(3)前記積載重量取得部が、
全ての車輪に対応して設けられ、それぞれが、自身に対応する車輪にかかる荷重を指標する車輪荷重指標量を検出する複数の検出器を有し、それら複数の検出器によって検出される各車輪の前記車輪荷重指標量に基づいて前記取得積載重量を取得するように構成され、
当該エンジン制御装置が、
前記複数の検出器が正常に機能しているか否かを判定するとともに、前記複数の検出器が正常に機能していないと判定された場合に、前記積載重量取得部が実際の車両の積載重量を正確に取得できないと推定する検出器機能判定部を備えた(2)項に記載のエンジン制御装置。
車体は複数の車輪によって支えられているため、各車輪にかかる荷重を指標する車輪荷重指標量に基づいて車両の積載重量を取得すれば、実際の積載重量を正確に取得することが可能となる。ただし、車輪荷重指標量を取得するためのセンサ等は、通常、車輪の近傍に設けられため、振動,埃,飛び石等のために故障の可能性が高い。つまり、各車輪にかかる車輪荷重指標量に基づいて車両の積載重量を取得する場合には、実際の車両の積載重量を正確に取得できなくなる可能性が高い。したがって、本項に記載のエンジン制御装置では、実際の車両の積載重量を正確に取得できない場合にブースタ負圧に関する条件を最も厳しくする効果が充分に活かされる。
本項に記載の「車輪荷重指標量」とは、車輪にかかる荷重を直接的あるいは間接的に表すパラメータであり、具体的には、車輪にかかる荷重自体を始めとして、タイヤの空気圧,懸架装置にエアスプリングが採用されている場合にはエアスプリングのエア圧,懸架装置にコイルスプリングが採用されている場合にはコイルスプリングの変化量といった種々のものが、車輪荷重指標量に該当する。つまり、荷重センサ,圧力センサ,ストロークセンサといった種々のものが、本項に記載の「検出器」に該当する。
(4)前記検出器機能判定部が、
各車輪の前記車輪荷重指標量のうちの最も大きいものと最も小さいものとの差が設定閾値を超えた場合に、前記複数の検出器が正常に機能していないと判定するように構成された(3)項に記載のエンジン制御装置。
各車輪にかかる荷重は、通常、乗員の搭乗位置,荷物の積載位置等によって異なるが、それぞれの荷重の差は、ある程度想定することが可能であり、極端に大きくなることはない。したがって、本項に記載のエンジン制御装置によれば、検出装置の異常を確実に判定することが可能である。
(5)前記積載重量取得部が実際の車両の積載重量を正確に取得できないと推定される場合における前記通常設定される範囲における最高の値が、
当該エンジン制御装置が搭載される車両について設定されている最大積載重量に対応して設定されたものである(2)項ないし(4)項のいずれか1つに記載のエンジン制御装置。
乗車定員および積載が許容される荷物の重量は、車両毎に規定されており、本項に記載の制御装置においては、その規定された乗員および荷物が載せられた状態の車両の積載重量に対応したブースタ負圧閾値が最高の値に設定されている。
(6)前記ブースタ負圧閾値設定部が、
その取得積載重量の増大に伴って前記ブースタ負圧閾値が増大するとともに、前記取得積載重量が大きいほどその増大の勾配が大きくなるように設定された規則に基づいて、前記ブースタ負圧閾値を設定するように構成された(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載のエンジン制御装置。
バキュームブースタは、負圧室の空気圧と大気圧との圧力差を利用して、ブレーキ操作部材に加えられる操作力を倍力する構造とされおり、ブレーキ操作部材の操作後にその操作が解除された場合には、負圧室に大気が流入し、ブースタ負圧がある程度減少する構造とされている。エコラン制御においてエンジンが停止している際に、ブレーキ操作が解除されると、負圧室内の空気が吸引されない状況下でブースタ負圧が低下する。このため、エコラン制御での上記条件において用いられるブースタ負圧閾値は、ブレーキ操作に伴うブースタ負圧の減少量をも考慮して設定されることが望ましい。
ブレーキ操作時のブースタ負圧の減少量は、後に詳しく説明するが、ブレーキ操作時のブースタ負圧に依拠するものであり、同じようにブレーキ操作がされる場合には、ブースタ負圧が高いほうがブースタ負圧の減少量は多くなる。したがって、積載重量が大きいほどブースタ負圧閾値を高く設定する場合には、積載重量が大きいほどブースタ負圧が高い状態に維持されるため、積載重量が大きいほどブレーキ操作時のブースタ負圧の減少量は多くなる。
本項に記載のエンジン制御装置においては、積載重量が大きいほどブースタ負圧閾値の増大する比率が高くなるように、言い換えれば、積載重量が大きいほど、積載重量の単位増大量あたりのブースタ負圧閾値の増大量が高くなるように、ブースタ負圧閾値を設定している。したがって、本項に記載のエンジン制御装置によれば、エンジン停止時のブレーキ操作時のブースタ負圧の減少量をも考慮して、車両の積載重量に応じたブースタ負圧閾値を設定することが可能となる。また、本項に記載の「設定規則」は、積載重量とブースタ負圧閾値との関係を示すものであり、具体的に言えば、関数,マップデータ等がその設定規則に該当する。
請求可能発明の実施例であるエンジン制御装置を備えた車両用駆動システムを、ブレーキシステムおよびサスペンションシステムと共に概略的に示す図である。 図1のブレーキシステムを概略的に示す図である。 図1および図2のブレーキシステムの備えるバキュームブースタおよびマスタシリンダを示す概略断面図である。 図1のサスペンションシステムの備えるエアスプリングおよびショックアブソーバを示す概略断面図である。 マスタシリンダ圧と最大積載重量対応閾値との関係を示すグラフである。 積載重量と積載重量依拠ゲインとの関係を示すグラフである。 積載重量決定プログラムを示すフローチャートである。 エコラン制御実行プログラムを示すフローチャートである。 エコラン制御プログラムにおいて実行されるブースタ負圧閾値設定サブルーチンを示すフローチャートである。
以下、請求可能発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
<車両用駆動システムの構成>
図1に、車両に設けられた実施例のエンジン電子制御ユニット(以下、単に「エンジンECU」という場合がある)10を備えた車両用駆動システム12を概略的に示す。本駆動システム12は、エンジン20とトルクコンバータ22と変速機24と差動装置26とを備えている。車両前方のエンジンルーム内に設置されたエンジン20は、トルクコンバータ22を介して変速機24に接続されており、その変速機24の出力が差動装置26を介して左右の前輪28FR,FLに伝達される。つまり、本駆動システム12は、エンジン20がトルクコンバータ22,変速機24,差動装置26を介して駆動輪としての前輪28FR,FLを駆動するように構成されている。
エンジンECU10は、エンジン20を制御するためのエンジン制御装置であり、運転者によるアクセル操作部材としてのアクセルペダルの操作量に応じて、エンジン20へ吸い込まれる空気の量を調整する電子制御式のスロットル弁30(図2参照),燃料噴射装置32(図2参照)等を制御することで、エンジン20の作動を制御している。エンジン20の制御方法は、周知の技術であることから、詳しい説明は省略するが、簡単に説明すれば、エンジンECU10は、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体とするコントローラ34,スロットル弁30の駆動源に対応する駆動回路36,燃料噴射装置32の駆動源に対応する駆動回路38を備えている。コントローラ34には、アクセルペダルの操作量を検出するアクセルペダルストロークセンサ[AS]40が接続されており、さらに、上記駆動回路36,38も接続されている。コントローラ34は、アクセルペダルストロークセンサ40からの検出値に基づいて、駆動回路36,38を制御することで、エンジン20への空気の吸気量、および、燃料の噴射量を制御しており、エンジン20の作動を制御している。なお、エンジン20には、スタータモータ44が接続されており、そのスタータモータ44の駆動回路46はコントローラ34に接続されている。停止しているエンジン20を始動する際には、コントローラ34が、その駆動回路46を制御するとともに、上記駆動回路36,38を制御することで、エンジン20が始動させられる。ちなみに、[ ]の文字は、上記センサを図面において表す場合に用いる符号である。
<車両用ブレーキシステムの構成>
また、本駆動システム12を搭載する車両においては、各車輪28に対応して設けられたブレーキ装置50(図1では、右前輪28FRおよび右後輪28RRに設けられたブレーキ装置50のみを図示している)を備えたブレーキシステム52が搭載されている。各ブレーキ装置50は、ディスクブレーキ装置とされており、車輪28と共に回転するブレーキディスク54と、車体に取り付けられるブレーキキャリパ55と、ブレーキキャリパ55に保持されるシリンダ56(図2参照)およびブレーキパッド57(図2参照)とを含んで構成されている。運転者の操作力によって、ブレーキ操作部材であるブレーキペダル58が操作されると、ブレーキペダル58に連結されるバキュームブースタ60によって、操作力が倍力される。さらに、倍力された操作力は、バキュームブースタ60に連結されるマスタシリンダ62に伝えられて、その内部に収容される作動液を加圧する。作動液の液圧の変化は、マスタシリンダ62から作動液配管64a,64bを通じて、各車輪28に設けられたブレーキ装置50のブレーキキャリパ55まで伝達される。ブレーキ装置50の詳しい構造についての説明は省略するが、シリンダ56は、加圧された作動液によって作動し、ブレーキパッド57をブレーキディスク54に押し付ける。したがって、ブレーキ装置50は、ブレーキパッド57とブレーキディスク54との間に生じる摩擦によって、車輪28の回転を抑制させて車両を減速させるための制動力を発生させることが可能となっている。
バキュームブースタ60は、図2に示すように、負圧状態とされる負圧室70を備えており、その負圧室70には、吸引口72が設けられている。吸引口72には、連通路74が接続されており、その連通路74は、インテークマニホルド76の分岐部78に接続されている。インテークマニホルド76は、その両端に開口を持ち、エンジン20に空気を供給するための給気配管として機能する。詳しく説明すると、インテークマニホルド76の一方の開口は、大気から空気を吸い込むための吸込口80となっており、他方の開口は、エンジン20が空気を吸引するための吸気部82に連結されている。また、インテークマニホルド76の吸込口80と分岐部78との間には、上記スロットル弁30が設置されている。スロットル弁30は、上述したように、エンジン20へ吸い込まれる空気の量を調整することが可能とされていることから、インテークマニホルド76の内部におけるスロットル弁30と吸気部82との間は、スロットル弁30の開度,エンジン20の回転数等に応じた負圧状態とされるのである。したがって、分岐部78に接続された連通路74、および、負圧室70も負圧状態とされるのである。つまり、本ブレーキシステム52は、インテークマニホルド76が、負圧室70を負圧状態とするための負圧源となるように構成されているのである。なお、インテークマニホルド76の分岐部78と吸気部82との間には、上記燃料噴射装置32が設けられており、その燃料噴射装置32が燃料を噴射することで、空気と燃料との混合気がエンジン20の燃焼室に吸引されるようになっている。
また、連通路74には、チェック弁88が設けられており、そのチェック弁88は、インテークマニホルド76から負圧室70への負圧の供給は許容するが、負圧室70からインテークマニホルド76への負圧の供給は禁止する構造とされている。言い換えれば、チェック弁88は、インテークマニホルド76から負圧室70への空気の供給は禁止するが、負圧室70からインテークマニホルド76への空気の供給は許容する構造とされている。このため、インテークマニホルド76の負圧であるエンジン負圧が負圧室70の負圧であるブースタ負圧より高い場合、つまり、インテークマニホルド76の絶対気圧が負圧室70の絶対気圧より低い場合には、チェック弁88は開弁し、負圧室70内の空気がインテークマニホルド76へ吸引される。一方、負圧室70の負圧がインテークマニホルド76の負圧より高い場合、つまり、負圧室70の絶対気圧がインテークマニホルド76の絶対気圧より低い場合には、チェック弁88は閉弁し、負圧室70内の空気はインテークマニホルド76へ吸引されない。
図3は、バキュームブースタ60およびマスタシリンダ62の断面図である。バキュームブースタ60は、中空のハウジング90と、ハウジング90内に設けられたパワーピストン92とを含んで構成されている。パワーピストン92は、ハブ94とダイアフラム96とを含んで構成され、ハウジング90の内部は、ハブ94とダイアフラム96とにより、マスタシリンダ62側の負圧室70と、ブレーキペダル58側の変圧室98とに仕切られている。
ハブ94のマスタシリンダ62の側には、凹部100が設けられている。その凹部100にはゴム製のリアクションディスク102が嵌入されており、さらに、プッシュロッド104の一端が凹部100に嵌入されている。プッシュロッド100のもう一端は、マスタシリンダ62の加圧ピストン106aと係合している。また、プッシュロッド104と並列に、圧縮コイルばね108が配設されている。
マスタシリンダ62は、ハウジング110と、2つの加圧ピストン106a,106bとを含んで構成されている。2つの加圧ピストン106a,106bは、ハウジング110の内部において直列に配設されており、ハウジング110にそれの内部を摺動可能に嵌合されている。さらに、マスタシリンダ62には、2つの加圧ピストン106a,106bの各々に隣接して2つの加圧室114a,114bがそれぞれ設けられており、各加圧室114a,114b内には、それぞれ圧縮コイルばね116a,116bが配設されている。
ハブ94のブレーキペダル58の側には、凹部100に連通する段付き穴118が設けられており、その内部にはリアクションロッド120が嵌入されている。リアクションロッド120は、バルブオペレーティングロッド122の一端に係合しており、バルブオペレーティングロッド122のもう一端は、ブレーキペダル58に接続されている。また、ハブ94とリアクションロッド120とは、段付き穴118において板状のストッパキー124によって結合されている。したがって、ブレーキペダル58が操作されると、バルブオペレーティングロッド122、リアクションロッド120を介してハブ94が移動させられて、さらに、ハブ94の移動によって、リアクションディスク102、プッシュロッド100を介して加圧ピストン106aが移動させられる。つまり、負圧ブースタ60とマスタシリンダ62とは、ブレーキペダル58の操作によって加圧ピストン106aが移動させられるように構成されているのである。
ブレーキペダル58の操作によって加圧ピストン106aが移動させられると、加圧室114aには作動液が満たされているため、加圧室114a内の作動液は加圧されて、加圧ピストン106bは、その加圧された作動液によって移動させられる。また、加圧ピストン106a,106bが移動させられて加圧室114a,114b内の作動液の圧力が上昇すると、作動液の圧力上昇は、作動液配管64a,64bを通じて各車輪28のブレーキ装置50へと伝達され、ブレーキ装置50は制動力を発生させるのである。ちなみに、加圧室114aには、作動液配管64aが接続され、加圧室114bには、作動液配管64bが接続されており、作動液の圧力上昇は、2つの配管系統によって、各車輪28のブレーキシリンダ56へと伝達されている。ちなみに、作動液配管64aは、左前輪28FLおよび右後輪28RRに配置された2つのブレーキシリンダ56に接続され、作動液配管64bは、右前輪28FRおよび左後輪28RLに配置された2つのブレーキシリンダ56に接続されている。
ハブ94の内部には、弁機構126が設けられている。詳しい説明は省略するが、弁機構126は、負圧室70と変圧室98との連通または遮断、あるいは、変圧室98と大気との連通または遮断を行えるように構成されている。弁機構126は、ブレーキペダル58の操作に依拠して移動させられるバルブオペレーティングロッド122に連動して、これらの連通および遮断を行うことが可能となっている。制動力を増加させるために、ブレーキペダル58に操作力が加えられている場合には、弁機構126は、負圧室70と変圧室98とを遮断し、変圧室98と大気とを連通させる状態となる。したがって、負圧室70は負圧状態となっているが、変圧室98は大気圧となる。つまり、負圧室70と変圧室98との間に圧力差が発生し、その圧力差による差圧力が、操作力によるパワーピストン92の移動方向と同じ方向に作用するため、ブレーキ操作における運転者の操作力を倍力することができるのである。
一方、ブレーキペダル58に加えられる操作力が解除された場合には、弁機構126は、負圧室70と変圧室98とを連通し、変圧室98と大気とを遮断させる状態になる。したがって、変圧室98から負圧室70へ空気が流入し、負圧室70と変圧室98とは、負圧状態において同じ空気圧となる。つまり、負圧室70と変圧室98との間の圧力差がなくなり、操作力もなくなるため、加圧ピストン106,パワーピストン92等は、圧縮コイルばね108および圧縮コイルばね116a,116bのばね力によって、ブレーキペダル58が操作されていない場合の位置へと戻されるのである。なお、バキュームブースタ60のハウジング90には、負圧室70内の負圧を検出する負圧センサ128が設けられている。
<車両用サスペンションシステムの構成>
さらに、本駆動システム12を搭載する車両においては、図1に示すように、各車輪28に対応して設けられたサスペンション装置130を備えた車両用サスペンションシステム132が搭載されており、サスペンション装置130は、サスペンションスプリングと、ショックアブソーバとが一体化されたスプリング・アブソーバAssy134を含んで構成されている。スプリング・アブソーバAssy134は、図4に示すように、タイヤハウジングに設けられたマウント部136と、車輪28を回転可能に保持するサスペンションアーム138との間に、それらを連結するようにして配設された液圧式のショックアブソーバ140と、それと並列的に設けられた流体式スプリングとしてのエアスプリング142とを備えている。
ショックアブソーバ140は、作動液を収容するハウジング144と、そのハウジング144に液密かつ摺動可能に嵌合されたピストン146と、そのピストン146に下端部が連結されて上端部がハウジング144の上部から延び出すピストンロッド148とを含んで構成されている。ハウジング144は、サスペンションアーム138に連結され、ピストンロッド148は、マウント部136に連結されている。ちなみに、ピストンロッド148は、ハウジング144の上部に設けられた蓋部150を貫通しており、シール152を介してその蓋部150と摺接している。
エアスプリング142は、マウント部136に固定されたチャンバシェル154と、ショックアブソーバ140のハウジング144に固定されたエアピストン筒156と、それらを接続するダイヤフラム158とを含んで構成されている。チャンバシェル154は、それの蓋部160が、防振ゴムを有するスプリングサポート162を介してショックアブソーバ140のピストンロッド148を保持した状態で、蓋部160の上面側においてマウント部136の下面側に固定されている。ダイヤフラム158は、一端部がチャンバシェル154の下端部に固定され、他端部がエアピストン筒156の上端部に固定されており、それらチャンバシェル154とエアピストン筒156とダイヤフラム158とによって圧力室164が区画形成されている。その圧力室164には、流体としての圧縮エアが封入されている。このような構造から、エアスプリング142は、圧縮エアの圧力によって、サスペンションアーム138とマウント部136、つまり、ばね上部とばね下部とを相互に弾性的に支持しているのである。なお、エアピストン筒156には、圧力室164内の圧縮エアの圧力を検出する検出器としての圧力センサ166が設けられている。
<エコラン制御>
本駆動システム12においては、上述したように、運転者のアクセルペダルの操作量に応じてエンジン20の作動を制御している。一方で、運転者がアクセルペダルを操作することなく車両が停止している場合には、通常、エンジン20は、負荷の無い状態においてある特定の低い回転数で回転している状態、つまりアイドリング状態とされるが、本駆動システム12においては、無駄な燃料の消費を抑制するとともに、エミッションの低減を目的として、いわゆるエコラン制御を実行している。エコラン制御とは、交差点等で車両が停止した場合に、運転者の意思によらずに、所定の停止条件の下でエンジンを停止させるとともに、エンジン停止後に、所定の再始動条件の下でエンジンを再始動させる制御である。
エンジンECU10のコントローラ34には、シフトレバーの操作位置、つまり、P(パーキング),N(ニュートラル),R(リバース),D(ドライブ),2(セカンド),L(ロー)の各位置を検出するシフトレバー位置センサ[SR]170と、駐車ブレーキの操作位置、つまり、駐車ブレーキ装置が作動中か解除中かを検出する駐車ブレーキ位置センサ[PB]172と、車両走行速度(以下、「車速」と略す場合がある)を検出する車速センサ174[V]と、マスタシリンダ62の液圧であるマスタシリンダ圧を検出する液圧センサ176[PM]とが接続されている。コントローラ34は、それらの検出値に基づいて、所定のエンジン停止条件,エンジン再始動条件を判定し、スロットル弁30,燃料噴射装置32,スタータモータ44を制御する。
詳しく言えば、エコラン制御において、エンジン20を停止させるための所定の条件として、シフトレーバーの操作位置がN(ニュートラル)とP(パーキング)とのいずれかに位置していること、若しくは、シフトレーバーの操作位置がD(ドライブ)と2(セカンド)とL(ロー)とのいずれかに位置するとともに、駐車ブレーキ装置とブレーキ装置50とのいずれかの装置によって車輪28の回転が禁止され、車両が停止していることが採用されている。また、エンジン20を再始動させるための所定の条件としては、それらいずれかの条件が満たされなくなることが採用されている。
上記エンジン停止条件を満たした場合に、コントローラ34は、エンジン20を停止すべく、スロットル弁30を閉じるとともに、燃料の噴射を停止させるように、スロットル弁30,燃料噴射装置32を制御する。そして、上記エンジン停止条件の1つでも満たさなくなった場合には、エンジン20を再始動すべく、コントローラ34が、スロットル弁30を開け、燃料を噴射するとともに、エンジン20を回転させるように、スロットル弁30,燃料噴射装置32,スタータモータ44を制御する。このようにして、エコラン制御を実行することで、車両の燃費の向上,エミッションの低減等を図っているのである。
また、エンジン20を停止させると、エンジン20によってインテークマニホルド76内の空気が吸気されなくなり、エンジン負圧が低下する。つまり、バキュームブースタ60の負圧源としてのインテークマニホルド76の絶対気圧が大気圧に近づく。エンジン負圧が低下すると、バキュームブースタ60の負圧室70内の空気がインテークマニホルド76へ吸引されなくなり、負圧室70内のブースタ負圧を減少させることができなくなる。ブースタ負圧が低下しすぎると、ブレーキ操作における運転者の操作力を倍力し難くなることから、エコラン制御においてエンジン停止条件として、さらに、ブースタ負圧が設定閾値を超えていることが採用されている。つまり、ブースタ負圧が設定閾値を超えていることが必要条件として採用されている。
この停止条件は、運転者によるブレーキ操作の操作力の倍力効果を担保するためのものであり、車両を停止させるために必要な制動力を担保するべくブースタ負圧をある程度高い状態に維持しておくためのものである。車両を停止させるために必要な制動力は、車体の重量、詳しく言えば、車両の積載重量(乗員,荷物を含めた積載物の重量)と関係しており、積載重量が大きいほど大きな制動力が必要となる。このため、本システム12においては、積載重量が大きいほどブースタ負圧を高い状態に維持するべく、積載重量が大きいほどブースタ負圧の設定閾値であるブースタ負圧閾値を高く設定している。なお、本システム12を搭載した車両は、いわゆる1ボックスカーであり、最大7人乗車可能となっている。このため、運転者のみ乗車している場合と7人乗車している場合とでは、積載重量は大きく異なり、担保すべき制動力も大きく異なる。このように積載重量が大きく変化する車両であっても、本システム12を搭載していれば、積載重量に応じてブースタ負圧閾値を変更することが可能となり、適切な大きさの制動力を担保することが可能となる。
ちなみに、本システム12において、車両の積載重量は、エアスプリング142の圧力室164内の圧縮エアの圧力に基づいて推定される。エアスプリング142は車体の荷重を受けており、圧力室164内の圧縮エアの圧力は積載重量と対応関係にある。そこで、本システムでは、圧力室164内の圧縮エアの圧力を車輪にかかる荷重を指標する車輪荷重指標量として、各車輪に対応する車輪荷重指標量に基づいて積載重量を推定している。具体的には、圧縮エアの圧力をパラメータとする車両の積載重量が、コントローラ34にマップデータとして格納されており、エアスプリング142に設けられた上記圧力センサ166の検出値に基づいて車両の積載重量が推定されるようになっている。なお、積載重量の推定に用いられる検出値は、各車輪のエアスプリング142に設けららた各圧力センサ166の検出値の平均値である。
また、ブレーキペダル58が踏み込まれた後にその踏み込みが解除された場合には、上述したように、大気圧となった変圧室98に負圧室70が連通させられるため、ブースタ負圧は減少する。エコラン制御においては、エンジン停止時にブレーキペダル58の踏み込みが解除される場合があり、負圧室70内の空気が吸引されない状況下でブレーキ操作に伴ってブースタ負圧が低下する。このため、エコラン制御での上記条件において用いられるブースタ負圧閾値は、ブレーキ操作に伴うブースタ負圧の減少量をも考慮して設定されることが望ましい。
ブレーキ操作時のブースタ負圧の減少量は、ブレーキ操作時のブースタ負圧に依拠するものであり、同じようにブレーキ操作がされる場合には、ブースタ負圧が高いほうがブースタ負圧の減少量は多くなる。具体的に説明すれば、例えば、バキュームブースタ60内のハウジング90内の容積、つまり、負圧室70の容積と変圧室98の容積とを合わせたものをVBとし、ハウジング90内の容積に対するブレーキ操作時の変圧室98の容積の比率をα(0<α<1)とした場合には、ブレーキ操作時のブースタ負圧PBSとブレーキ解除後のブースタ負圧PBRとの関係は、次式によって示すことができる。
BS・(1−α)・VB+0・α・VB=PBR・VB
ブレーキペダル58が踏み込まれた場合には、変圧室98に大気が流入し、変圧室98は大気圧、つまり、変圧室98の負圧が0となるためであり、(1−α)・VBはブレーキ操作時の負圧室70の容積を、α・VBはブレーキ操作時の変圧室98の容積を、それぞれ、意味している。
上記式を整理すると、次式に示すようになる。
BS・(1−α)=PBR
ブレーキ操作時のブースタ負圧の減少量は、ブレーキ操作時のブースタ負圧PBSからブレーキ解除後のブースタ負圧PBRを減じたものとなることから、ブレーキ操作時のブースタ負圧の減少量ΔPBは、次式によって示すことができる。
ΔPB=PBS−PBR=PBS−PBS・(1−α)=α・PBS ・・・(1)
この式から解るように、ブレーキ操作時のブースタ負圧PBSが高いほど、ブレーキ操作時のブースタ負圧の減少量ΔPBは多くなる。本システム12では、上述したように、積載重量が大きいほどブースタ負圧を高い状態に維持するべく、積載重量が大きいほどブースタ負圧閾値を高く設定している。このため、積載重量が大きいほどブースタ負圧が高い状態に維持されることで、ブレーキ操作時のブースタ負圧の減少量は多くなる。このため、積載重量が大きいほど、ブレーキペダル58の踏み込みが解除された場合のブースタ負圧は低くなる。したがって、積載重量が大きいほど、ブレーキ操作時のブースタ負圧の減少量の増大をも考慮して、ブースタ負圧閾値を高く設定する必要がある。そこで、本システム12では、積載重量が大きいほどブースタ負圧閾値を高く設定する際には、積載重量が大きいほどブースタ負圧閾値の増大する比率が高くなるように、ブースタ負圧閾値を設定している。言い換えれば、積載重量が大きいほど、積載重量の単位増大量あたりのブースタ負圧閾値の増大量が高くなるように、ブースタ負圧閾値を設定している。
また、ブースタ負圧の減少量ΔPBは、(1)式から解るように、ブレーキ操作時のブースタ負圧PBSに依拠するだけでなく、バキュームブースタ60のハウジング90内の変圧室98の占める比率α、つまり、ブレーキ操作時の変圧室98の容積にも依拠するものであり、その容積が大きいほどブースタ負圧の減少量は多くなる。変圧室98の容積は、バキュームブースタ60のパワーピストン92の移動量と対応関係にあり、パワーピストン92が大きく移動すれば、変圧室98の容積は大きくなる。また、パワーピストン92の移動量とマスタシリンダ62内の液圧とは対応関係にあり、パワーピストン92が大きく移動すれば、マスタシリンダ62内の液圧は高くなる。つまり、マスタシリンダ62内の液圧が高いほど、変圧室98の容積は大きくなり、ブレーキ操作時のブースタ負圧の減少量は多くなる。このため、ブレーキペダル58が踏み込まれている際のマスタシリンダ62内の液圧が高いほど、ブレーキペダル58の踏み込みが解除された場合のブースタ負圧は低くなる。そこで、本システム12では、エンジン停止時にブレーキペダル58の踏み込みが解除されてもブースタ負圧を高い状態に維持するべく、マスタシリンダ62内の液圧が高いほどブースタ負圧閾値を高く設定している。
本システム12におけるブースタ負圧閾値P0の設定方法を具体的に説明すれば、まず、マスタシリンダ62内の液圧であるマスタシリンダ圧PMに基づいて、ブースタ負圧閾値P0を設定する。ただし、上述したように、ブースタ負圧閾値P0は積載重量に応じても変化させる必要があるため、車両に乗車定員、つまり、7人が乗り込み、かつ、この車両に積載が許容されている量の荷物が積載された場合、つまり、積載重量Mが、この車両に設定されている最大積載重量MMAXである場合のブースタ負圧閾値P0を、基準となるブースタ負圧閾値として、マスタシリンダ圧PMに基づいて設定する。詳しく言えば、最大積載重量MMAXに対応するブースタ負圧閾値P0である最大積載重量対応閾値P0MAXは、図5に示すように、マスタシリンダ圧PMをパラメータとして設定されており、ブレーキ操作時のマスタシリンダ圧PMに基づいて設定されるようになっている。そして、その最大積載重量対応閾値P0MAXを基準として、ブースタ負圧閾値P0を積載重量Mに基づいて、次式に従って演算する。
0=KS・P0MAX
ここで、KSは、積載重量Mをパラメータとする積載重量依拠ゲインであり、図6に示すように、積載重量Mが大きくなるほど大きくなり、積載重量Mが最大積載重量MMAXである場合に1となるようにされている。なお、積載重量依拠ゲインKSは、図から解るように、変化する度合が積載重量Mが大きくなるほど次第に大きくなるようにされており、積載重量Mの増大に伴って、積載重量依拠ゲインKSの増大する勾配が大きくなっている。つまり、積載重量Mの増大に伴ってブースタ負圧閾値P0が増大するとともに、積載重量Mが大きいほどブースタ負圧閾値P0の増大する勾配が大きくなる。
このように、積載重量Mに応じてブースタ負圧閾値P0を変化させれば、エコラン制御時においても適切な制動力を確保することが可能となることから、積載重量に応じてブースタ負圧閾値を変化させることは望ましい。しかし、圧力センサ166の故障等により積載重量を適切に推定できない場合、つまり、圧力センサ166によって実際の積載重量を正確に推定できない場合においては、上記最大積載重量MMAXが車両に積載されていると想定し、ブースタ負圧閾値P0を上記最大積載重量対応閾値P0MAXに設定することが望ましい。つまり、ブースタ負圧閾値P0を、積載重量に応じて設定すべきブースタ負圧閾値のうちで最も大きな値に設定することが望ましい。推定された積載重量が正確でないと想定される場合においては、最も厳しい条件を適用させることで、最大積載重量が積載されている状態の車両に応じた制動力を発生させることができるように、ブースタ負圧を高い状態で維持するためである。したがって、本システム12では、圧力センサ166によって実際の積載重量を正確に推定できないような場合には、最大積載重量MMAXが積載されていると想定し、ブースタ負圧閾値P0を通常設定される最高の値である最大積載重量対応閾値P0MAXに設定している。
なお、本システム12では、圧力センサ166によって実際の積載重量を正確に推定できないか否かの判定は、圧力センサ166が正常に機能しているか否かによって判定しており、各圧力センサ166によって検出される各エア圧に基づいて実行される。各車輪にかかる荷重は、乗員の搭乗位置,積載物の積載位置等によって異なるため、各エア圧も異なる。ただし、それぞれのエア圧間の差は想定されるものであり、極端に大きくなるものではない。そこで、本システム12では、各車輪に対応したエア圧のうちで最も大きいエア圧と最も小さいエア圧との差が、設定閾値を超える場合に、圧力センサ166が正常に機能していないため、圧力センサ166によって実際の積載重量を正確に推定できないと判定し、ブースタ負圧閾値P0を最大積載重量対応閾値P0MAXに設定している。
<制御プログラム>
本システム12におけるエコラン制御でのブースタ負圧閾値を設定するために用いられる車両の積載重量は、図7にフローチャートを示す積載重量決定プログラムが、イグニッションスイッチがON状態とされている間、短い時間間隔(例えば、数msec)をおいてエンジンECU10のコントローラ34により繰り返し実行されることによって決定される。また、本システム12において行われるエコラン制御は、図8にフローチャートを示すエコラン制御実行プログラムが、イグニッションスイッチがON状態とされている間、設定された時間間隔ΔT0をおいてエンジンECU10のコントローラ34により繰り返し実行されることによって行われる。以下に、それぞれの制御のフローを、図に示すフローチャートを参照しつつ、簡単に説明する。
i)積載重量決定プログラム
積載重量決定プログラムによる処理では、まず、ステップ1(以下、単に「S1」と略す。他のステップについても同様とする)において、乗員の乗り降り、若しくは、積載物の積み下ろしがあったか否かを判定するべく、ドアの開閉があったか否かが判定される。具体的に言えば、車両の各ドアには開閉センサが設けられており、各開閉センサの検出値によって判定される。いずれかのドアが開閉されたと判定された場合には、S2において、各車輪に対応して設けられた各エアスプリング142の圧力室164のエア圧PAが圧力センサ166によって検出される。次に、S3において、各エアスプリング142のエア圧PAの平均値である平均エア圧PAAが演算され、その平均エア圧PAAに基づいて取得積載重量MSが推定される。エンジンECU10のコントローラ34には、平均エア圧PAAをパラメータとする取得積載重量MSに関するマップデータが格納されており、取得積載重量MSは、そのマップデータを参照することによって推定される。
続いて、S5において、圧力センサ166に異常が生じているか否かが判定される。具体的には、各エア圧PAの最大値と最小値との差が設定閾値を超えているか否かが判定される。各エア圧PAの最大値と最小値との差が設定閾値を超えていると判定された場合には、圧力センサ166に異常が生じていると判定され、S6において、エコラン制御において用いられる積載重量Mが最大積載重量MMAXに決定される。また、各エア圧PAの最大値と最小値との差が設定閾値を超えていないと判定された場合には、圧力センサ166は正常に機能していると判定され、S7において、エコラン制御において用いられる積載重量Mが取得積載重量MSに決定される。以上の一連の処理の後、本プログラムの1回の実行が終了する。なお、エンジン始動直後には実際の積載重量を正確に取得できないと想定されることから、積載重量Mの初期値として、最大積載重量MMAXが採用されている。
ii)エコラン制御実行プログラム
エコラン制御実行プログラムによる処理では、まず、S11において、シフトレバー位置センサ170によってシフトレバーの操作位置が検出され、S12において、車速センサ174によって車速が検出される。さらに、S13において、駐車ブレーキ位置センサ172によって駐車ブレーキ装置が作動中か解除中かが検出され、S14において、液圧センサ176によってマスタシリンダ圧PMが検出される。
次に、S15〜S18において、シフトレーバーの操作位置がN(ニュートラル)とP(パーキング)とのいずれかに位置していること、若しくは、シフトレーバーの操作位置がD(ドライブ)と2(セカンド)とL(ロー)とのいずれかに位置するとともに、駐車ブレーキ装置とブレーキ装置14とのいずれかの装置によって車輪の回転が禁止され、車両が停止していることとのいずれかのエンジン停止条件が満たされているか否かが判定される。いずれかのエンジン停止条件が満たされていると判定された場合には、S19において、そのエンジン停止条件が維持されている時間を計測するための計測時間Tに設定時間ΔT0が加算され、S20において、その計測時間Tが所定時間T1以上か否かが判定される。計測時間Tが所定時間T1以上であると判定されると、S21において、負圧センサ128によってバキュームブースタ60の負圧室70のブースタ負圧PBが検出される。そして、S22において、ブースタ負圧閾値P0を、車両の積載重量およびブレーキ操作に伴うブースタ負圧の減少量を考慮して設定するべく、図9にフローチャートを示すブースタ負圧閾値設定サブルーチンを実行するための処理が実行される。
このサブルーチンにおいては、まず、S31において、マスタシリンダ圧PMに基づいて最大積載重量対応閾値P0MAXが決定される。最大積載重量対応閾値P0MAXは、車両の積載重量Mが最大積載重量MMAXであると仮定した場合のブースタ負圧閾値であり、コントローラ34には、図5に示すようなマスタシリンダ圧PMをパラメータとする最大積載重量対応閾値P0MAXに関するマップデータが格納されており、そのマップデータを参照することによって決定される。次に、S32において、上記積載重量決定プログラムにおいて決定された積載重量Mに基づいて積載重量依拠ゲインKSが決定される。積載重量依拠ゲインKSは、車両の積載重量に基づいて最大積載重量対応閾値P0MAXを調整するためのものであり、積載重量Mが最大積載重量MMAXである場合に1となり、積載重量Mが小さい程小さくなるようにされている。コントローラ34には、図6に示すような積載重量Mをパラメータとする積載重量依拠ゲインKSに関する設定規則としてのマップデータが格納されており、そのマップデータを参照することによって積載重量依拠ゲインKSが決定される。そして、S33において、その積載重量依拠ゲインKSに最大積載重量対応閾値P0MAXを乗じた値にブースタ負圧閾値P0が設定され、このサブルーチンが終了する。
ブースタ負圧閾値設定サブルーチンの実行の後、S23において、ブースタ負圧PBが、そのサブルーチンにおいて設定されたブースタ負圧閾値P0より高いか否かが判定される。ブースタ負圧PBがブースタ負圧閾値P0より高いと判定された場合には、S24において、エンジン20を停止させるように、スロットル弁30および燃料噴射装置32が制御される。また、S15〜S18において上記条件が満たされていないと判定された場合には、S25において、計測時間Tが0にリセットされる。そして、計測時間Tがリセットされた後、若しくは、S20において計測時間Tが所定時間T1未満であると判定された場合、若しくは、S23においてブースタ負圧PBがブースタ負圧閾値P0以下であると判定された場合には、S26において、エンジン20が停止中であるか否かが判定される。エンジン20が停止中であると判定された場合には、S27において、エンジン20を再始動させるように、スロットル弁30,燃料噴射装置32,スタータモータ44が制御される。以上の一連の処理の後、本プログラムの1回の実行が終了する。
<コントローラの機能構成>
上記積載重量決定プログラムおよびエコラン制御実行プログラムを実行するエンジンECU10のコントローラ34は、それの実行処理に鑑みれば、図1に示すような機能構成を有するものと考えることができる。図から解るように、コントローラ34は、上記積載重量決定プログラムを実行する機能部、つまり、積載重量Mを取得する機能部として、積載重量取得部180を、エコラン制御実行プログラムを実行する機能部、つまり、エコラン制御を実行する機能部として、エコラン制御実行部182を、それぞれ備えている。
また、積載重量取得部180は、積載重量決定プログラムのS5の処理を実行する機能部、つまり、検出器としての圧力センサ166が正常に機能しているか否かを判定する機能部として、検出器機能判定部184を有している。一方、エコラン制御実行部182は、エコラン制御実行プログラムのS24の処理を実行する機能部、つまり、所定の条件を満たした場合にエンジンを停止させるべく、エンジンへの燃料噴射を停止させる機能部として燃料噴射停止部186を、エコラン制御実行プログラムのS22の処理を実行する機能部、つまり、ブースタ負圧閾値P0を設定する機能部として、ブースタ負圧閾値設定部188を、それぞれ有している。なお、本システム12においては、上述したように、コントローラ34によって、アクセルペダルの操作量に応じてスロットル弁30,燃料噴射装置32等が制御され、エンジン20の作動が制御されている。つまり、コントローラ34は、さらに、エンジン20の作動を制御する機能部としてエンジン作動制御部190をも備えている。
10:エンジン電子制御ユニット(エンジン制御装置) 20:エンジン 60:バキュームブースタ 70:負圧室 82:吸気部 58:ブレーキペダル(ブレーキ操作部材) 166:圧力センサ(検出器) 180:積載重量取得部 184:検出器機能判定部 186:燃料噴射停止部 188:ブースタ負圧閾値設定部 190:エンジン作動制御部

Claims (5)

  1. ブレーキ操作部材に加えられた操作力を倍力するバキュームブースタの負圧室に接続される吸気部を備えたエンジンを制御するエンジン制御装置であって、
    運転者によるアクセル操作部材の操作量に応じて、前記吸気部への空気の吸気量と燃料の噴射量とを制御することで、エンジンの作動を制御するエンジン作動制御部と、
    アクセル操作部材が操作されていない状態において、前記負圧室の負圧であるブースタ負圧がそのブースタ負圧の閾値であるブースタ負圧閾値を超えていることを必要条件として、燃料の噴射を停止させる燃料噴射停止部と、
    車両の乗員および積載物の重量である積載重量を取得する積載重量取得部と、
    その積載重量取得部によって取得された車両の積載重量である取得積載重量に基づいて、その前記取得積載重量が大きいほど前記ブースタ負圧閾値を大きい値に設定するとともに、前記積載重量取得部が実際の車両の積載重量を正確に取得できないと推定される場合には、前記取得積載重量に拘らず、前記ブースタ負圧閾値を、通常設定される範囲における最高の値に設定するブースタ負圧閾値設定部と
    を備えるエンジン制御装置。
  2. 前記積載重量取得部が、
    全ての車輪に対応して設けられ、それぞれが、自身に対応する車輪にかかる荷重を指標する車輪荷重指標量を検出する複数の検出器を有し、それら複数の検出器によって検出される各車輪の前記車輪荷重指標量に基づいて前記取得積載重量を取得するように構成され、
    当該エンジン制御装置が、
    前記複数の検出器が正常に機能しているか否かを判定するとともに、前記複数の検出器が正常に機能していないと判定された場合に、前記積載重量取得部が実際の車両の積載重量を正確に取得できないと推定する検出器機能判定部を備えた請求項1に記載のエンジン制御装置。
  3. 前記検出器機能判定部が、
    各車輪の前記車輪荷重指標量のうちの最も大きいものと最も小さいものとの差が設定閾値を超えた場合に、前記複数の検出器が正常に機能していないと判定するように構成された請求項2に記載のエンジン制御装置。
  4. 前記積載重量取得部が実際の車両の積載重量を正確に取得できないと推定される場合における前記通常設定される範囲における最高の値が、
    当該エンジン制御装置が搭載される車両について設定されている最大積載重量に対応して設定されたものである請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載のエンジン制御装置。
  5. 前記ブースタ負圧閾値設定部が、
    その取得積載重量の増大に伴って前記ブースタ負圧閾値が増大するとともに、前記取得積載重量が大きいほどその増大の勾配が大きくなるように設定された規則に基づいて、前記ブースタ負圧閾値を設定するように構成された請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載のエンジン制御装置。
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