JP5245386B2 - 帯電ローラ - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真方式の画像形成装置に使用される帯電ローラに関する。
電子写真方式の画像形成装置は、静電潜像を担持する像担持体である感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、定着手段等より構成され、これらを作動させてトナー画像を形成してプリント物を提供している。この中で、帯電手段は感光体に電圧を印加して感光体表面を帯電するもので、コロナ放電器による非接触方式の帯電手段の他に、ブラシやローラを用いる接触方式の帯電手段が用いられている。
コロナ放電器による非接触方式の帯電は、安定した帯電が行えることから従来より積極的に利用されてきたが、高電圧の印加を行うため、イオン化した酸素やオゾン、水分、酸化窒素化合物等の不純物を発生させ易いものであった。帯電時に発生するこれら不純物は感光体を劣化させる原因となることに加え、人体への影響が懸念されるものもある。
この様な背景から、最近では、磁気ブラシやローラに電圧を印加させ、被帯電体である感光体にこれらを接触させて、感光体表面を所定電位に帯電する接触帯電方式の技術が検討される様になってきた(たとえば、特許文献1参照)。接触帯電方式は、前述の非接触帯電方式に比べ、低電圧で帯電が行えるので、オゾン等の不純物の発生量を低減することができる。したがって、感光体の劣化あるいは人体への影響といった懸念を払拭できる技術として期待される。また、コロナ放電器を用いる帯電手段にはオゾン吸引機等の装置も必要になったが、接触帯電方式ではこの様な部材を設ける必要がなくなるので装置のコンパクト化を推進する上でも有効である。
ところで、帯電ローラは、感光体表面と接触しているので、感光体表面に付着していたトナーや紙粉が付着し易い構造になっている。これらトナーや紙粉が帯電ローラの表面に付着すると帯電性能に直接影響を与えることになる。この様な背景から、接触帯電方式の技術では、感光体表面からの汚染物質の付着による帯電ローラの汚染を防止する技術が従来より検討されていた。たとえば、接触帯電部材表面にポリイミドフィルム等の可撓性有機高分子フィルムを当接させることにより、帯電部材表面を常時清掃できる様にした技術がある(たとえば、特許文献2参照)。
特開2001−235880号公報 特開2003−270908号公報
ところで、最近は一般家庭にもプリンタが普及する様になり、画像形成装置のコンパクト化や軽量化、部品点数の低減による構造の簡素化やメンテナンスフリー化が求められている。そして、帯電ローラの汚染防止技術も特許文献2の様に部材を用いて行うのではなく、ローラそのものに汚染防止機能を付与することにより、上記課題を解消できるものといえる。また、使用中の部品劣化による画質への影響を懸念することがないので、いままで以上にユーザフレンドリーな画像形成装置を実現できる。本発明は、除去フィルムの様な部品を用いずに、トナーや紙粉等の汚染物質の帯電ローラ表面への付着を防止して、安定した帯電性能を発現することが可能な帯電ローラの提供を目的とするものである。具体的には、連続プリント作製を行っても帯電ローラ表面がトナーや紙粉で汚染されず、感光体表面をムラなく帯電することにより、濃度ムラや画像ぬけのない安定した画像形成がいつでも行える帯電ローラを提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題が下記の構成により解消できるものであることを見出した。
請求項1に記載の発明は、
『電子写真方式の画像形成に用いられる感光体に接触し、かつ、回転しながら前記感光体
を帯電する帯電ローラであって、
前記帯電ローラは、
その表面に相分離構造を形成する樹脂により形成される表面層を有するものであり、
前記表面層を形成する樹脂が、ドメイン相を形成するポリジメチルシロキサン成分とマトリクス相を形成するスチレンアクリル共重合体成分より構成されるジブロック共重合体あることを特徴とする帯電ローラ。』というものである。
本発明によれば、前述の特許文献2に開示された技術の様に、除去フィルム等の部品を用いることなく、トナーや紙粉等の汚染物質の帯電ローラ表面への付着防止を実現し、安定した帯電性能を発現する帯電ローラの提供を可能にした。その結果、連続プリントを行っても、濃度ムラや画像欠陥のない良好な画質のプリントを安定して作製することが可能になった。
本発明は、電子写真方式の画像形成に用いられる感光体に接触し、かつ、回転しながら前記感光体を帯電する帯電ローラに関する。そして、本発明に係る帯電ローラは、その表面に表面層を有し、その表面層が、側鎖にフッ素原子を有する重合体成分、または、主鎖にシロキサン結合を有する重合体成分のいずれかを含有するブロック共重合体を用いて形成されたものである。
本発明に係る帯電ローラについて説明する。図1は、本発明に係る帯電ローラの層構造を示す概略図である。図1に示す様に、本発明に係る帯電ローラ10は、導電性のシャフト11と、シャフト11上に弾性層12が設けられている。図1(a)に示すものは、弾性層12の上に中間層13と表面層14が順番に積層形成された構造を有するものであり、図1(b)に示すものは、弾性層12の上に直接表面層14が形成されたものである。
さらに、図1(c)に示すものは、中間層13の厚みを図1(a)のものよりも増やしたものである。
シャフト11は、導電性の部材で構成され、具体的には、SUS304等のステンレス鋼、鉄、アルミニウム、ニッケル、アルミニウム合金、ニッケル合金等の金属材料が好ましい。また、前述した金属の粉体物やカーボンブラック等の導電性材料を樹脂中に充填させた導電性樹脂も使用可能である。
弾性層12は、弾性を発現する公知の発泡材料やゴム材料中にカーボンブラック等の導電性付与剤を含有した構造を有し、体積抵抗率を1×103〜1×105Ωcm、硬度を10〜40度(Hs:JIS A)に調整することにより、導電性と弾性を発現させる。弾性層12は、帯電ローラ10が感光体に対して良好な帯電付与性能を発現する上で低抵抗であることが求められ、感光体に対して適度な密着性を発現する上である程度の弾性を有することが求められる。また、弾性により画像形成時に発生する振動を吸収して感光体に対して安定した帯電付与性能を発現することができる。
弾性層を形成する際、発泡材料を用いるとスポンジ構造の弾性層12を形成するので、オイルや加硫剤等を使用せずに、あるいは、少量の使用で弾性を発現することができ、ゴム材料に比べて弾性層12の形成に必要な材料を低減できるメリットがある。弾性層12の形成が可能な発泡材料としては、帯電ローラとしての特性を満たすことが可能なゴム発泡体や樹脂発泡体等の公知の各種発泡材料が挙げられる。具体的には、ポリウレタン樹脂等の樹脂材料に特開平7−295331号公報に記載の有機発泡剤や無機発泡剤等の発泡剤を混合させたものや、発泡性のゴム組成物や樹脂組成物等がある。
また、弾性層12は公知のゴム材料を用いて形成することも可能である。ゴム材料を使用する場合、使用可能なゴム材料の種類が発泡材料に比べて多いので材料の選択幅が広く、オイルや加硫剤等の添加により硬度を自由に調整することができるメリットがある。具体的には、ポリノルボルネンゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。これらのゴム組成物は、単独で使用する他に、2種以上のゴム組成物を混合して混合ゴムとして使用することも可能である。
上記ゴム組成物の中でもエチレン−プロピレンゴムが好ましく、特に、エチレン単量体とプロピレン単量体に加えて、第3成分としてブタジエン等のジエン系単量体を用いて形成される三次元共重合体のEPDMと呼ばれるゴム組成物が好ましい。EPDMは、市場で入手し易いことに加え、分子構造中にジエン成分が共重合されていることからジエン成分を介して加硫が行い易く、カーボンブラック等の導電性付与剤を含有させるベース層の高耐久化を実現する上で好ましいものである。
また、ゴム材料を用いて弾性層12を形成する場合、弾性層12に10〜40度の硬度を付与する上で、平均分子量が300〜2,000の炭化水素系化合物からなるオイルをゴム組成物中に含有させることが可能である。オイルの種類としては、たとえば、パラフィン鎖炭素数が全炭素中の50%以上を占めるパラフィン系オイル、ナフテン環炭素数が30〜45%を占めるナフテン系オイル、芳香族炭素数が30%以上を占める芳香族系オイル等が挙げられる。通常、これら3者を組み合わせた混合物からなるオイルが好適に用いられるが、パラフィン系オイルを用いたものが特に好ましい。オイルの含有量は、ゴム組成物全体に対して、10〜50質量%が好ましく、成形性の観点から20〜40質量%が特に好ましい。
また、ゴム材料を用いて弾性層12を形成する場合には、必要に応じて、加硫剤、加硫促進助剤、加硫促進剤、劣化防止剤等の公知のゴム用薬品やゴム添加剤を配合することができる。加硫剤の具体例としては、硫黄やパーオキサイド等が挙げられ、加硫促進助剤の具体例としては、酸化亜鉛やステアリン酸化合物等が、加硫促進剤の具体例としては、スルフェンアミド系、チラウム系、チアゾール系、グラニジン系等の化合物が挙げられる。また、劣化防止剤の具体例としては、たとえば、アミン系、フェノール系、硫黄系、リン系等の化合物が挙げられる。さらに、酸化防止剤や紫外線吸収剤、オゾン劣化防止剤、粘着付与剤等を使用することもできる他に、各種補強剤や摩擦係数調整剤、シリカ、タルク、クレイ等の無機充填剤も使用することができる。
また、弾性層12には導電性を付与する導電性付与剤が含有される。具体的な導電性付与剤としては、アセチレンブラックやファーネスブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、アルミニウム粉末や銅粉末等の金属粉末、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ等の金属酸化物粉末がある。この中でもカーボンブラックは、ゴム組成物中に配合したときに均一に分散し、かつ、ゴム組成物や加硫剤等の添加物の影響を受けずに、その導電性を安定して発現することから好ましい。また、上記カーボンブラックの中でもアセチレンブラックは弾性層12で不純物として作用する官能基が少なく、凝集を起こしにくい性質を有することから特に好ましいものである。導電性付与剤の添加量は、弾性層を構成する樹脂材料あるいはゴム材料に対して5〜50質量部とすることが好ましい。
次に、中間層13は、公知のゴム材料中に導電剤や帯電防止剤等が含有され、その体積抵抗率が1×107〜1×1010Ωcmの範囲となる様に調整されている。中間層13により、帯電ローラ10中に電気的に抵抗の高い領域が形成され、帯電ローラ10の耐電圧性(耐リーク性)を適度に制御することができる。
中間層13に使用可能なゴム材料としては、たとえば、エピクロルヒドリンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体ゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム等が挙げられる。また、導電剤としては、前述のカーボンブラックの他に過塩素酸塩等に代表されるイオン導電剤が挙げらられる。過塩素酸塩の具体例としては、たとえば、トリメチルオクタデシルアンモニウムパークロレートやベンジルトリメチルアンモニウムクロリド等の過塩素酸第4級アンモニウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カリウム等が挙げられる。また、帯電防止剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、リン酸エステル、脂肪族アルコールサルフェート塩、脂肪族多価アルコール、BN錯体等が挙げられる。これらは、それぞれ適宜に選択され、公知技術に基づく適度な配合比率で用いられる。
また、中間層13は、弾性層12からのオイルの浸み出しを防止し、弾性層12表面における抵抗調整を行うことで帯電ローラ10表面の抵抗の均一化に寄与している。さらには、帯電ローラ10の硬度も中間層13に使用するゴム材料を選択することにより調整することが可能である。
次に、表面層14は、感光体表面に接触する領域で、その体積抵抗率は1×107Ωcm〜1×1015Ωcmの範囲になる様に調整され、表面層14の体積抵抗率を前記範囲とすることにより、感光体表面を所定電位に帯電することができる。前述した様に、感光体表面には画像形成によりトナーや紙粉が付着し易く、トナーや紙粉が帯電ローラ表面に付着していると、帯電ローラの帯電性能に直接影響を与えることになる。本発明では、表面層14にこれらの物質が付着しにくい性質の樹脂を用いることで、安定した帯電性能が発現される様にしている。すなわち、側鎖にフッ素原子を有する成分を含有するブロック共重合体樹脂、あるいは、主鎖にシロキサン結合を有する成分を含有するブロック共重合体樹脂を用いて表面層14を形成することにより、この課題を解消したのである。
この様に、上記構成のブロック共重合体を表面層14に用いることにより、帯電ローラ表面にトナーや紙粉が付着しなくなった理由は以下の様に考えられる。すなわち、ブロック共重合体を構成する「側鎖にフッ素原子を有する成分」や「主鎖にシロキサン結合を有する成分」が帯電ローラ表面で規則的に配列し、これにより帯電ローラ表面のエネルギー準位を低減させて汚染物の付着を抑制しているものと考えられる。
また、表面エネルギー準位が低いこれら成分のみで表面層を形成することは、これら成分の物性から極めて困難であり、ブロック共重合体とすることで、これら成分による帯電ローラ表面におけるエネルギー準位の低減化が実現できたものと考えられる。
また、表面層14を後述する手順により透過型電子顕微鏡観察を行うと、表面層14にはマトリクス相とドメイン相から構成される相分離構造を有する樹脂が存在することが確認される。つまり、帯電ローラ表面に「側鎖にフッ素原子を有する成分」あるいは「主鎖にシロキサン結合を有する成分」で構成されるドメイン相が規則的に配列し、エネルギー準位の低い領域の存在により、トナーや紙粉等の汚染物質の付着を回避しているものと考えられる。図2は、表面層14を形成する樹脂で発現されるマトリクス相とドメイン相から構成される相分離構造の模式図である。
図2に示すマトリクス相とドメイン相から構成される相分離構造は、前述した様に、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察を行うことで確認が可能である。具体的には、倍率が50,000倍の透過型電子顕微鏡装置(TEM)を用い、帯電ローラ10表面より厚さ80nm〜200nmの測定用切片試料を作製する。これを透過型電子顕微鏡装置(TEM)により観察し、得られる顕微鏡写真から、表面層14がマトリクス相とドメイン相から構成される相分離構造を有する樹脂を含有するものであることが確認できる。
透過型電子顕微鏡装置(TEM)の具体例としては、たとえば、「H−9000NAR」(日立製作所社製)、「JEM−200FX」(日本電子社製)等が挙げられる。
また、前述した透過型電子顕微鏡による観察方法は、現像ローラ断面測定を行う際に行われる通常の方法で行われる。たとえば、以下の様な手順で行うことが可能である。先ず、観察用試料を作製する。常温硬化性のエポキシ樹脂中に現像ローラを包埋、硬化させてブロックを作製する。作製したブロックをダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用い、厚さ80〜200nmの薄片状に切り出して測定用試料を作製する。
次に、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて現像ローラの断面構造を写真撮影をする。当該写真より現像ローラの断面構造を目視で確認することができる。また、「ルーゼックスF(ニレコ社製)」等の画像処理装置を透過型電子顕微鏡装置に接続し、得られた画像情報を演算処理することで、粒子13の平均粒径が算出される。また、測定用試料は場合によっては四酸化ルテニウム、または四三酸化オスミウム等で染色してもよい。
表面層14に用いられる「側鎖にフッ素原子を有する重合体成分」または「主鎖にシロキサン結合を有する重合体成分」のいずれかを含有するブロック共重合体についてさらに説明する。本発明で使用されるブロック共重合体は、ブロック共重合体分子の片側端部の位置に「側鎖にフッ素原子を有する重合体成分」あるいは「主鎖にシロキサン結合を有する重合体成分」が配置されるものが相分離構造を形成する上で好ましい。すなわち、ブロック共重合体分子の末端部にこれら重合体成分を配置させることにより、樹脂形成時にこれら重合体成分の自由度からドメイン相の形成が行い易くなるものと考えられる。
本発明では、上述したブロック共重合体分子における各重合体分子の配置を実現し易い構造のブロック共重合体として、2種類の重合体成分から構成されるジブロック共重合体が特に好ましい。すなわち、片方の重合体成分が「側鎖にフッ素原子を有する重合体」あるいは「主鎖にシロキサン結合を有する重合体」のいずれかの重合体であり、もう片方の重合体成分が後述する「他の重合体成分」より構成されるものである。重合体成分が2種類からなるジブロック共重合体は、共重合体分子の片側端部の位置に「側鎖にフッ素原子を有する重合体成分」あるいは「主鎖にシロキサン結合を有する重合体成分」が確実に配置される分子構造をとることができるので相分離構造を形成し易いメリットがある。図4にジブロック共重合体の分子構造の模式図を示す。また、ジブロック共重合体を構成する重合体としては後述する様にアクリル重合体を用いたものが特に好ましい。
上述したジブロック共重合体をはじめとするブロック共重合体の「他の重合体成分」の具体例としては以下のものが挙げられる。すなわち、ブロック共重合体を構成する他の重合体成分としては、スチレンアクリル共重合体、ポリアクリル酸エステル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート等が挙げられ、この中でも、スチレンアクリル共重合体に代表されるアクリル重合体が特に好ましく、また、ポリカーボネートも「他の重合体成分」として好ましい。ここで「他の重合体成分」と呼ぶ重合体成分にアクリル重合体を用いると、ブロック共重合体樹脂よりなる表面層14の樹脂層12上への接着性向上が実現される。つまり、他の重合体成分を介して表面層14が樹脂層12から剥離することのない強固な接着性が得られ、帯電ローラ10の耐久性を向上させ感光体に対し安定した帯電付与が行える。
また、表面層14の形成に使用されるブロック共重合体樹脂が相分離構造を形成する場合、「他の重合体成分」と呼ぶ重合体成分がマトリクス相を形成することになる。そして、「側鎖にフッ素原子を有する重合体成分」あるいは「主鎖にシロキサン結合を有する重合体成分」と呼ぶ重合体成分がドメイン相を形成することになる。
表面層14に用いられるブロック共重合体樹脂は公知の合成法により作製することができる。ここで、ラジカル重合法により表面層14に使用されるブロック共重合体を作製する例として「主鎖にシロキサン結合を有する重合体成分」を含有するブロック共重合体の作製を説明する。
(1)アゾ基を含有する下記ポリジメチルシロキサン化合物を重合開始剤に用いる。
Figure 0005245386
(2)上記重合開始剤とともにアクリル酸エステルやスチレン等の重合性単量体を溶媒に溶解してラジカル重合を行う。
以上の手順により、スチレンアクリル共重合体成分と分子末端にポリジメチルシロキサン成分を配置した分子構造を有するブロック共重合体樹脂を形成することができる。
なお、上記アゾ基を含有するポリジメチルシロキサン化合物は、高分子アゾ重合開始剤(MAI;Macro Azo Initiator)と呼ばれる重合開始剤である。高分子アゾ重合開始剤は、上述した様に、ラジカル重合性ビニル系重合性単量体と重合することにより、ポリジメチルシロキサン成分を有するブロック共重合体を形成することができる。高分子アゾ重合開始剤は、高分子セグメントとアゾ基が繰り返し結合した構造を有し、1分子中に複数個のラジカル発生点が存在するので、ブロック化効率の高い共重合体を作製することができる。また、高分子アゾ重合開始剤は、種々の溶剤に可溶なことから種々のラジカル重合形態(たとえば、溶液重合、懸濁重合、乳化重合)に対応できるので、ブロック共重合体を構成する重合性単量体を拡く選択することができる。ポリジメチルシロキサン成分を含有する高分子アゾ重合開始剤の具体例としては、たとえば、ポリジメチルシロキサン成分の数平均分子量が5000の「VPS−0501」や数平均分子量が10000の「VPS−1001」(いずれも和光純薬(株)製)がある。
また、ポリカーボネート樹脂等の縮合系高分子成分を含有するブロック共重合体樹脂は、たとえば、以下の手順で作製することができる。
(1)2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン等のビスフェノール化合物のアルカリ溶液を用い、ホスゲン法により、ポリカーボネートオリゴマーを作製する。作製したポリカーボネートオリゴマーは塩化メチレンに溶解させて溶液にする。
(2)ポリカーボネートオリゴマーの塩化メチレン溶液と2−ベンゾイル−5−(3−ポリジメチルシロキサンプロポキシ)フェノール、及び、酸化防止剤である4−tert−ブチルフェノールを混合し、さらに、水酸化ナトリウムを添加して反応処理を行う。
以上の手順により、ポリカーボネート成分と分子末端にポリジメチルシロキサン成分を配置した分子構造を有するブロック共重合体樹脂を形成することができる。
上述した手順により、表面層14に用いられる「主鎖にシロキサン結合を有する重合体成分」を含有するブロック共重合体が作製される。表面層14に使用可能な「主鎖にシロキサン結合を有する重合体成分」を含有するブロック共重合体の具体例を、表1の1〜7に示す。
Figure 0005245386
表1に示すブロック共重合体は、共重合体全体の分子量が数平均分子量(Mn)で18500である。また、マトリクス相構成成分のうち、スチレンメチルメタクリレート共重合体、スチレンメチルアクリレート共重合体のスチレン単位とアクリル酸エステル単位の組成比は、質量比でスチレン単位/アクリル酸エステル単位=65/35である。
また、マトリクス相を構成する成分であるDM型、Z型、DM−Z型のポリカーボネートの構造はそれぞれ下記に示すものである。
Figure 0005245386
また、表面層14に用いられる「側鎖にフッ素原子を有する重合体成分」を含有するブロック共重合体に使用される「側鎖にフッ素原子を有する重合体成分」としては、具体的には、ポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。「側鎖にフッ素原子を有する重合体成分を含有するブロック共重合体樹脂」の具体例を以下及び表1の8に示す。
Figure 0005245386
上記ブロック共重合体は、ポリアクリル酸エステルが「他の重合体成分」に該当するもので、メチルメタクリレートとブチルメタクリレートを用いた共重合体である。また、「側鎖にフッ素原子を有する重合体成分」は、ポリフッ化ビニリデンとポリテトラフルオロエチレンからなる共重合体である。なお、上記「側鎖にフッ素原子を有する重合体成分」を含有するブロック共重合体は、共重合体全体の分子量が数平均分子量(Mn)で18500である。
表面層14に含有されるブロック重合体は、側鎖にフッ素原子を有する重合体成分、または、主鎖にシロキサン結合を有する重合体成分の割合を5.1質量%以上45質量%以下にすることが好ましい。すなわち、前記重合体成分の割合を5.1質量%以上45質量%以下としたブロック共重合体を用いて表面層14を形成することにより、帯電ローラ10表面にトナーや紙粉等が付着しにくく、かつ、下層に強固に接着した表面層14が得られることから好ましい。
また、側鎖にフッ素原子を有する重合体成分、または、主鎖にシロキサン結合を有する重合体成分の割合が5.1質量%以上45質量%以下のブロック共重合体であれば、相分離構造を形成したときに、これらの樹脂相がドメイン相を形成することになる。
次に、帯電ローラ10の製造方法について説明する。
本発明に係る帯電ローラ10は、公知の方法で作製することが可能で、たとえば、下記の手順に基づくいて作製することが可能である。
先ず、円筒状成形空間を有する成形型内に金属製のシャフト(芯金)11を入れた後、成形型内に弾性層12を形成する前述した材料よりなる弾性層形成材料混合物を充填し、加硫を行うことによりシャフト11の外周面に弾性層12を形成する。
次に、弾性層12を形成したシャフト11を成形型から取り出し、その一方で、ウレタン樹脂等の樹脂材料や導電付与剤等を配合し、この配合物をボールミル等を用いて混合、撹拌することにより中間層形成材料混合物を調製する。そして、中間層形成材料混合物をディップ法、ロールコート法、スプレイコーティング法等により、弾性層12表面に均一な厚みになる様に塗布する。塗布を実施後、乾燥処理を経て加熱硬化処理を施すことにより、弾性層12上に中間層13が形成される。
さらに、中間層13を形成後、少なくとも、側鎖にフッ素原子を有する重合体成分、または、主鎖にシロキサン結合を有する重合体成分のいずれかを含有するブロック共重合体を溶媒に溶解させて、表面層形成用塗布液を調製する。そして、中間層13を形成する時と同様に、ディップ法、ロールコート法、スプレイコーティング法等の公知の塗布方法により、中間層13表面に均一な厚みになる様に、表面層形成用塗布液を塗布する。塗布を実施後、乾燥処理を経て必要に応じて硬化処理等を施すことにより、表面層14を形成する。なお、表面層14を形成する際に使用するブロック重合体を溶解する溶媒としては、「他の重合体成分」と呼ぶ重合体成分に対して良溶媒になるものが好ましい。これは、表面層14に強固な接着性を付与する上で、「他の重合体成分」の相が帯電ローラ上に分布させることが好ましく、具体的には、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、トルエン等がこの成分をよく溶解する溶媒として挙げられる。
この様な手順で、本発明に係る帯電ローラ10を作製することが可能である。
次に、帯電ローラを用いた電子写真方式の画像形成装置について説明する。図3は、帯電ローラ10により感光体ドラム20表面を帯電する画像形成装置1の断面図である。
図3の画像形成装置1では、帯電ローラ10により帯電された感光体ドラム20上に露光光Lが照射されて静電潜像が形成される。感光体ドラム20上に形成された静電潜像は、感光体ドラム20の近傍に配置された現像装置30の現像剤担持体である現像スリーブ31より供給されるトナーにより現像されてトナー画像となる。
次に、除電ランプ40により感光体ドラム20上の電荷が除電されると、トナー画像は感光体ドラム20と転写ローラ50とが近接する転写部で転写紙P上に転写される。転写紙Pは、給紙カセットより搬送ローラ60によって搬送されてきたもので、転写ローラ50によりトナーと逆極性の電荷が付与され、この逆極性の電荷の静電作用により転写紙P上にトナー画像が転写される。
トナー画像が転写された転写紙Pは、感光体ドラム20より分離された後、搬送ベルト70により図示しない定着装置へ搬送される。定着装置は加熱ローラと押圧ローラ等の定着手段を有し、転写紙P上のトナー画像を溶融した後、転写紙Pに定着させる。
この様な手順により、画像形成装置1の感光体ドラム20上に形成された静電潜像はトナー画像に顕像化され、形成されたトナー画像は転写紙P上に転写、定着されることによりプリント物が作製される。
また、帯電ローラ10は、以下の手順により感光体ドラム20を帯電する。すなわち、図2に示す様に、帯電ローラ10は電源80より直流(DC)成分と交流(AC)成分からなるバイアス電圧の印加を受けて感光体ドラム20の帯電が行える。帯電ローラ10を用いるいわゆる接触方式の帯電は、オゾンの発生が極めて少ない状態で感光体ドラム20を帯電させることができる。帯電ローラ10に印加されるバイアス電圧は、通常、直流成分である±500〜1000VのDCバイアスと、交流成分である100Hz〜10kHz、200〜3500V(p−p)のACバイアスとを重畳させてなるものである。
なお、図3中の転写ローラ50も帯電ローラ10と同様、電源110より直流(DC)成分と交流(AC)成分からなるバイアス電圧の印加を受け、転写部位でトナー画像の転写紙Pへの転写を行っている。転写ローラ50に印加されるバイアス電圧も帯電ローラ10に印加されるバイアス電圧と同様、通常、直流成分の±500〜1000VのDCバイアスと、交流成分の100Hz〜10kHz、200〜3500V(p−p)のACバイアスとを重畳させたものである。
帯電ローラ10及び転写ローラ50は、感光体ドラム20に圧接した状態で従動あるいは強制回転している。これらのローラの感光体ドラム20への押圧力は、通常、9.8×10-2〜9.8×10-1N/cmであり、また、ローラの回転速度は、通常、感光体ドラム20の周速の1〜8倍とされる。なお、前記ローラの感光体ドラム20への押圧力は、帯電ローラ10の両端に1.0N〜10.0N程度の押圧力を加えることで実現される。
なお、転写紙Pへのトナー画像の転写を終えた感光体ドラム20は、クリーニング装置90に設けられたクリーニングブレード91によりクリーニングされて、次の画像形成に供せられる。
図3に示す電子写真方式の画像形成装置1では、感光体20と帯電ローラ10、像露光ユニット、現像装置30等の構成要素をユニット化したいわゆるプロセスカートリッジ、あるいは、イメージングカートリッジと呼ばれるユニット構造物としてもよい。この様に、複数の構成物をユニット化し、これを画像形成装置本体に対し着脱自在に構成することが可能になる。また、像露光ユニット、現像装置30、転写ローラ50あるいは分離手段の少なくとも1つを感光体ドラム20とともに一体に支持したユニット構造物として、装置本体に着脱自在の単一ユニットとすることも可能である。この様な単一ユニットを装置本体にレール等の案内手段を設けることで、着脱自在の構成にすることも可能である。
以下、実施例を挙げて本発明の実施態様を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
1.「帯電ローラ1〜8」の作製
以下の手順により、「帯電ローラ1〜8」を作製した。
(1)「帯電ローラ1」の作製
下記に示す原料成分を、バンバリーミキサーで分散練りして弾性層作製用原料となる混練り品を作製した。
EPDM「EPT4045(三井石油化学(株)製)」 100質量部
酸化亜鉛 5質量部
ステアリン酸 1質量部
パラフィンオイル「プロセスオイルPW380(出光興産(株)製)」
30質量部
カーボンブラック「3030B(三菱化学(株)製)」 30質量部
上記原料成分よりなる混練り品100質量部に対して、下記加硫剤をオープンロールにより分散練りし、未加硫練り生地を作製した。
加硫促進剤 ジベンゾチアゾールジスルフィド 2質量部
加硫促進剤 テトラメチルチウラムモノサルファイド 1質量部
イオウ 1質量部
上記未加硫練り生地を厚さ2.5mmのチューブ形状に成形する押出成形機で押出成形を行い、得られたチューブをカッターで長さ320mmに切断した。切断したチューブに仮シャフトを挿入し、加硫トレイに装着して、直接蒸気加硫方式による一次加硫を行った。なお、一次加硫の条件は、圧力9.8×105Pa、温度140℃、処理時間20分で行った。
一次加硫実施後、さらに、温度180℃の熱風処理を15分間行って二次加硫を行い、その後、チューブより仮シャフトを引き抜き、直径6mm、長さ340mmのSUS304製シャフトを挿入して、直接蒸気加硫方式により三次加硫を行った。この様にして、前記シャフト上に弾性層を形成してなるローラを作製した。
次に、前記ローラのベース層上に、下記組成からなる塗布液を、乾燥時の厚さが500μmになる様にディップ塗布を行って中間層を形成した。
エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体 100質量部
トリメチルオクタデシルアンモニウムパークロレート 0.2質量部
ステアリン酸 1質量部
カーボンブラック「3030B(三菱化学(株)製)」 30質量部
エチレンチオウレア 1.5質量部
メチルエチルケトン 100質量部
さらに、前記ローラに設けられた前記中間層上に、下記組成からなる塗布液をディップ塗布して、表面層を形成した。
表1のブロック共重合体樹脂8 14質量部
テトラヒドロフラン 70質量部
以上の手順により、外径が14mmの「帯電ローラ1」を作製した。
(2)「帯電ローラ2〜8」の作製
前記「帯電ローラ1」の作製において、前記「表1のブロック共重合体8」に代えて、「表1のブロック共重合体共重合体1〜7」をそれぞれ用いた他は同様の手順で、「帯電ローラ2〜8」を作製した。
2.画質評価実験
次に、上記「帯電ローラ1〜8」を画像形成装置に搭載し、10000枚の連続プリントを行って画質変動を評価した。具体的には、図2に示す構成の画像形成装置として、デジタルプリンタ「Sitios7075(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製)」のコロナ帯電器を上記「帯電ローラ1〜8」に変更したプリンタで評価を行った。
また、プリント作製に使用する現像剤は、特開2000−214629号公報の段落0112〜0119に記載される乳化重合会合法により作製された個数平均粒径5.7μmの黒色トナー(同文献でいうトナー14)を用いた。すなわち、このトナー14をシリコン樹脂コートキャリアと混合し、トナー濃度6質量%の2成分系現像剤を用いて行った。
連続プリントは、常温常湿環境(23℃、50%RH)で、A4版の上質紙(65g/m2)上に、画素率が7%の文字画像(3ポイント、5ポイント)、反射濃度0.5のハーフトーン画像、べた白画像、べた画像がそれぞれ1/4等分された画像を出力した。
連続プリント実施中の1000枚目、5000枚目、及び、10000枚目のプリントについて、「ハーフトーン画像上の濃度ムラ」、「文字画像の中抜け」、「べた画像部の白ぬけ」について、下記基準で評価を行った。
さらに、10000枚の連続プリントを行った帯電ローラ表面に市販のセロハンテープを貼り付け、これを剥離することにより、汚染状態の評価を行った。
〈ハーフトーン画像上の濃度ムラ〉
作製したプリント上のハーフトーン画像上の任意の7点を、反射濃度計「RD−918(マクベス社製)」を用いて測定し、その画像濃度差が0.04以下となったものを合格とした。
〈文字画像の中抜け〉
作製したプリント上の文字画像を、ルーペで拡大観察し、文字画像上の中抜け発生を目視評価した。評価は、以下の基準で行い、◎と○を合格とした。
評価基準
◎:10000枚目のプリントまで、中抜け発生なし
○:5000枚目のプリント終了まで、中抜け発生なし
×:1000枚目のプリントで、顕著な中抜け発生あり。
〈べた画像部の白抜け〉
作製したプリント上のべた画像部に、長径0.4mm以上の白抜け発生の有無を評価した。なお、白抜け長径はビデオプリンタ付き顕微鏡で測定し、評価は以下の基準として、◎と○を合格とした。
評価基準
◎:0.4mm以上の白抜けの発生が見られなかった
○:0.4mm未満の白抜けがあったが、実用上問題なし
×:0.4mm以上の白抜けが発生した。
結果を表2に示す。
Figure 0005245386
表2に示す様に、いずれの帯電ローラも連続プリント中に大きな画質変動は見られなかった。また、1万枚の連続プリント実施後も、帯電ローラ表面にトナーや紙粉の付着による汚染はほとんど見られないか、あるいは、非常に軽微なものであった。この様に、実施例の結果から明らかな様に、本発明の構成を有する帯電ローラは連続プリントを行っても帯電ローラ表面にトナーや紙粉等の付着せず、安定したプリント作製が行えることが確認された。
帯電ローラの概略図と層構造を示す断面図である。 マトリクス相とドメイン相から構成される相分離構造の模式図である。 帯電ローラを有する画像形成装置の一例である。 ジブロック共重合体の分子構造を表す模式図である。
符号の説明
1 画像形成装置
10 帯電ローラ
11 シャフト(芯金)
12 弾性層
13 中間層
14 表面層
20 感光体ドラム
30 現像装置
31 現像スリーブ
40 除電ローラ
50 転写ローラ
60 搬送ベルト
70 搬送ローラ
80、110 バイアス電源
90 クリーニング装置
91 クリーニングブレード

Claims (1)

  1. 電子写真方式の画像形成に用いられる感光体に接触し、かつ、回転しながら前記感光体を帯電する帯電ローラであって、
    前記帯電ローラは、
    その表面に相分離構造を形成する樹脂により形成される表面層を有するものであり、
    前記表面層を形成する樹脂が、ドメイン相を形成するポリジメチルシロキサン成分とマトリクス相を形成するスチレンアクリル共重合体成分より構成されるジブロック共重合体あることを特徴とする帯電ローラ。
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