JP5242303B2 - リフレクター装置、太陽光発電システム - Google Patents

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Description

本発明は光反射鏡及びその製造方法、リフレクター装置、太陽光発電システムに関する。
近年、世界的な温暖化現象により環境に対する意識が高まり、炭酸ガス等の温暖化ガスを発生しない新しいエネルギーシステムが関心を集めている。太陽電池発電や風力発電等の環境にやさしい再生可能なエネルギーは、炭酸ガス等の温暖化を誘発するといわれているガスを排出しないため、クリーンなエネルギーとして研究開発が盛んに行われており、安全性や扱いやすさに優れることから、太陽電池発電が家庭用エネルギー源だけでなく、産業用エネルギーとして注目を浴びている。なかでも、アメリカやヨーロッパを中心に太陽光で蒸気を作製し、熱電変換により電気エネルギーを得るいわゆる太陽光発電が盛んに検証されている。
このように注目されている太陽光発電には、いろいろな発電方式があり、代表的な発電方法としては集中方式(中央タワー式)、分散方式(パラボリックトラフ)、ディッシュ/スターリング方式の3種類がある。集中方式(中央タワー式)、分散方式(パラボリックトラフ)は数百MW領域の出力が期待でき、従来の発電技術と組み合わせて、ハイブリッド化することも可能である。また、ディッシュ/スターリング方式は、出力領域が5〜50kWであるため、発展途上国において単独で使用する場合に適している。
いずれの方式においても太陽光を反射鏡によって一部分に集光し、その集光熱によって熱電変換により電気エネルギーを得るので、ロスなく光を集光することがカギであるが、効率を大きく左右する要因として、反射鏡の汚れによる反射率の低下が特に問題になっている。今までにいわゆる“鏡”に関する表面改質として以下の技術が開示されている。
例えば、特許文献1には、アナターゼ型酸化チタン含有層上に、アンモニア水に溶解させたタングステン酸と蒸留水を加えたコーティング液を塗布し、700℃で焼付け処理を施して酸化タングステンからなる層を形成して、表面層を形成する技術が開示されている。
この塗布品では、光触媒機能を有するアナターゼ型酸化チタン含有層によって、表面層に付着した有機物が分解されて表面が親水性を呈すると共に、酸化タングステンからなる層により表面の親水性が維持される。これにより、表面に付着した凝集水や水滴が表面一面に広がる易くなることから、表面の曇りを防止することができる。
特開平10−114545号公報
ところで、従来の開示されている技術では、酸化チタン等の光触媒粒子を含有する塗料組成物を塗布した後、安定した塗膜を形成するためには500〜800℃で焼結する必要があった。そして、この様な焼結により得られた塗膜は、表面の親水性を長期に維持し、耐汚染性を長期に発揮させる観点から、なお改良の余地があった。
そこで、本発明の目的は、光触媒機能を有する無機物質の特徴である親水性を長期に維持することができ、耐汚染性を長期に発揮しうる光反射鏡を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討した結果、本発明の目的を達成する光反射鏡を発明するに至った。すなわち、本発明は下記の通りである。
(1)反射基材層と、当該反射基材層又は当該反射基材層上に形成された透明中間層の上に積層された光触媒機能を有する透明無機物質層と、を備える光反射鏡であって、透明無機物質層は、2000時間促進耐候性試験前及び後において、水に対する表面接触角が20°以下である、光反射鏡。
なお、「2000時間促進耐候性試験」とは、スガ試験器製のサンシャインウェザーメーターを使用して曝露試験(ブラックパネル温度63℃、降雨18分/2時間)を曝露2000時間行うことを意味する。
(2)透明無機物質層は、二酸化珪素及び/又は酸化チタンを含有する、(1)に記載の光反射鏡。
(3)反射基材層及び/又は透明中間層は、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂及び環状ポリオレフィン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含有する、(1)又は(2)に記載の光反射鏡。
(4)(1)〜(3)のいずれか一つに記載の光反射鏡が太陽光発電用反射鏡であると共に、当該光反射鏡と、当該光反射鏡を支持する支持体とを備える、リフレクター装置。
(5)(4)に記載のリフレクター装置と、当該リフレクター装置により集光された太陽光により熱媒体を加熱する加熱装置と、当該加熱装置により加熱された熱媒体の熱エネルギーを電気エネルギーに変換する変換装置とを備える、太陽光発電システム。
(6)(1)〜(3)のいずれか一つに記載の光反射鏡を製造する製造方法であって、反射基材層又は反射基材層上に形成された透明中間層の上に、光触媒機能を有する無機物質と分散媒とを含むコート液を塗布し、分散媒を揮発させる、製造方法。
(7)分散媒は、光照射熱により揮発される、(6)に記載の製造方法
本発明の光反射鏡は、表面の親水性を長期に維持することができ、耐汚染性を長期に発揮しうる。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る光反射鏡の一例を示す図である。光反射鏡1は、反射基材層3と、反射基材層3又は透明中間層5の上に積層された透明無機物質層7と、を備える。
(反射基材層)
反射基材層3は、太陽光Lの光入射面(反射面)となる平面状又は曲面状の反射面3aを有している。反射面3aは、発電効率を高い状態で維持するために、太陽光Lの反射機能を有する反射率の高い金属等を用いて形成されることが好ましい。反射面3aは、例えば基材上に金属をメッキ、コート、貼り合わせ等することで形成することができる。
反射基材層の素材としては、通常、金属やガラス等が好ましく用いられる。また、軽量化等の観点より、プラスチック素材を用いても良い。プラスチック素材としては、好ましくは耐候性、耐衝撃性の観点より、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂の単独又は複合素材が好ましい。なお、基材は、金属、ガラス、プラスチックを単独又は2種以上含んでいても良い。また、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂には、耐候性を付与する目的で、耐候剤等を更に練り込んでも良い。
(透明中間層)
透明中間層5は、反射基材層3の反射面3a上に積層される光透過性を有する透明な中間層である。本実施形態に係る光反射鏡1は、透明中間層5を有していても、有していなくてもよい。透明中間層5を有する場合、反射面3aを強度的に保持することができる他、反射基材層3を保護し得る。なお、本実施形態において「透明」とは、ASTM D−1003に準拠して測定されたHaza値として10%以下であることを意味する。
透明中間層の素材としては、例えば、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂及び環状ポリオレフィン樹脂が挙げられる。これらは組み合わせて用いることもできる。
透明中間層の膜厚は50μm〜10mmが好ましいが、材質や必要な力学的強度や透明性の観点によって適宜選択しても良い。また形成方法として、ガラスの場合、フローティング成形法等によって整形したり、樹脂の場合、溶融キャスト法、押出しシーティング法等の公知の方法が用いることができる。
(透明無機物質層)
透明無機物質層7は、反射面3a上、又は、透明中間層5の上に積層された光触媒機能及び光透過性を有する透明な無機物質層である。
2000時間促進耐候性試験前及び後において、透明無機物質層表面の水に対する表面接触角は、20°以下であり、好ましくは15°以下であり、より好ましくは13°以下である。ここで、「2000時間促進耐候性試験」とは、スガ試験器製のサンシャインウェザーメーターを使用して曝露試験(ブラックパネル温度63℃、降雨18分/2時間)を曝露2000時間行う試験をいう。2000時間促進耐候性試験前及び後において、表面接触角を20°以下とすることにより、耐汚染性を長期に発揮させることができる。また、表面接触角をこの様な範囲とすることは、水によって表面を洗浄することで汚れを容易に洗い流すことが可能となる観点からも好ましい。この現象は、表面接触角が低いことにより、洗浄に使用した水が粒滴状に流れるのでなく、表面全体をぬらした状態である程度の面積を保ったまま水が流れるためである。そのため、水を流すことにより、透明無機物質層の表面の汚れを効率的に、かつ、全面的に洗い流すことが可能である。更に、2000時間促進耐候性試験前及び後において、透明無機物質層の水に対する表面接触角が20°以下の親水性を有する表面は、降雨等の水による自己浄化能(セルフクリーニング)に富む傾向となり好ましい。
本実施形態に係る透明無機物質層は、反射基材層の上記反射面上又は透明中間層上に、光触媒機能を有する物質を含むコート液を塗布・乾燥して形成することができる。なお、本明細書では、「塗膜」という表現を使用しているが、必ずしも連続膜である必要はなく、不連続膜、島状分散膜等の態様であっても構わない。本実施形態の光反射鏡は、光触媒機能を有する無機物質を含むコート液を基材上に塗布し、太陽光への曝露(光照射熱)により分散媒を揮発させて無機化することが好ましい。この様な方法を採用することは、詳細は明らかではないが、堅牢な表面を有する透明無機物質層をより早期に形成する観点から好ましく、高い耐候性、耐擦過性を実現する観点から好ましい。
〈コート液〉
本実施形態に係るコート液としては、金属酸化物(A)、又は、重合体エマルジョン粒子(B)若しくはその原料を含む組成物であることが好ましい。重合体エマルジョン粒子(B)は、例えば、加水分解性金属化合物(b1)、及び、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)を水及び乳化剤の存在下で重合して得ることができる。このような組成物から形成される透明無機物質層は、金属酸化物(A)又は重合体エマルジョン粒子(B)を含む。
以下、金属酸化物(A)と、重合体エマルジョン粒子(B)若しくはその原料とを含む組成物を、有機・無機複合組成物と記載する。本実施形態に係る有機・無機複合組成物において、金属酸化物(A)は、重合体エマルジョン粒子(B)又はその原料と相互作用し、重合体エマルジョン粒子(B)又はその原料の硬化剤として働く。そのため、金属酸化物(A)は、重合体エマルジョン粒子(B)と密接に相互に関与することとなり、本実施形態に係る有機・無機複合組成物からは、耐候性、耐薬品性、光学特性、更には防汚性、防曇性、帯電防止性等に優れた有機・無機複合体を形成し得て好ましい。
ここで、上記金属酸化物(A)と重合体エマルジョン粒子(B)との相互作用としては、例えば金属酸化物(A)が有する水酸基と重合体エマルジョン粒子(B)が有する2級及び/又は3級アミド基との水素結合や、金属酸化物(A)が有する水酸基と重合体エマルジョン粒子(B)に含まれる加水分解性金属化合物(b1)の重合生成物との縮合(化学結合)等を例示することができる。
〈金属酸化物(A)〉
金属酸化物(A)としては、例えば二酸化珪素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化鉛、酸化鉄、珪酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化セリウム及びそれらの複合酸化物等を例示することができる。それらの中でも、表面水酸基の多い二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化アンチモン及びそれらの複合酸化物等が好ましい。より好ましくは二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタンであり、更に好ましくは二酸化珪素、酸化チタンである。また、これらの金属酸化物(A)は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
また、上記金属酸化物(A)として光触媒(a1)を選択すると、有機・無機複合組成物から形成される有機・無機複合体は、光照射により光触媒活性及び/又は親水性を発現するため非常に好ましい。
ここで、光触媒(a1)とは、光照射によって酸化、還元反応を起こす物質のことを言う。すなわち伝導帯と価電子帯との間のエネルギーギャップよりも大きなエネルギー(すなわち短い波長)の光(励起光)を照射したときに、価電子帯中の電子の励起(光励起)が生じて、伝導電子と正孔を生成しうる物質である。このとき、伝導帯に生成した電子の還元力、及び/又は、価電子帯に生成した正孔の酸化力を利用して、種々の化学反応を行うことができる。
また、光触媒活性とは、光照射によって酸化、還元反応を起こすことを言う。これらの光触媒活性は、例えば光照射時の材料の表面における色素等の有機物の分解性を測定することにより判定することができる。光触媒活性を有する材料の表面は、優れた汚染有機物質の分解活性や耐汚染性を発現する。
本実施形態に係る金属酸化物(A)として好適に使用できる光触媒(a1)としては、バンドギャップエネルギーが好ましくは1.2〜5.0eV、より好ましくは1.5〜4.1eVの半導体化合物を挙げることができる。バンドギャップエネルギーが1.2eVより小さいと、光照射による酸化・還元反応を起こす能力が非常に弱くなる傾向がある。バンドギャップエネルギーが5.0eVより大きいと、正孔と電子を生成させるのに必要な光のエネルギーが非常に大きくなる傾向がある。
上記光触媒(a1)の例としては、例えば、TiO、ZnO、SrTiO、BaTiO、BaTiO、BaTi、KNbO、Nb、Fe、Ta、KTaSi、WO、SnO、Bi、BiVO、NiO、CuO、RuO、CeO等、更にはTi、Nb、Ta、Vから選ばれた少なくとも1種の元素を有する層状酸化物を挙げることができる。
これらの光触媒(a1)の中でTiOは無害であり、化学的安定性にも優れるため好ましい。TiOとしては、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型のいずれも使用できる。
また、本実施形態に係る金属酸化物(A)に好適に使用できる光触媒(a1)として、可視光(例えば約400〜800nmの波長)の照射により光触媒活性及び/又は親水性を発現することができる可視光応答型光触媒を選択することができる。この場合、可視光応答型光触媒を含む有機・無機複合組成物から形成される透明無機物質層は、室内等の紫外線が十分に照射されない場所等における環境浄化効果や防汚効果が非常に大きなものとなるため好ましい。これらの可視光応答型光触媒のバンドギャップエネルギーは、好ましくは1.2〜3.1eVであり、より好ましくは1.5〜2.9eVであり、更に好ましくは1.5〜2.8eVである。
上記可視光応答型光触媒は、可視光で光触媒活性及び/又は親水性を発現するものであれば全て使用することができるが、例えばTaON、LaTiON、CaNbON、LaTaON、CaTaON等のオキシナイトライド化合物や、SmTi等のオキシサルファイド化合物、CaIn、SrIn、ZnGa、NaSb等のd10電子状態の金属イオンを含む酸化物、アンモニアや尿素等の窒素含有化合物存在下でチタン酸化物前駆体(オキシ硫酸チタン、塩化チタン、アルコキシチタン等)や高表面酸化チタンを焼成して得られる窒素ドープ酸化チタン、チオ尿素等の硫黄化合物存在下にチタン酸化物前駆体(オキシ硫酸チタン、塩化チタン、アルコキシチタン等)を焼成して得られる硫黄ドープ酸化チタン、酸化チタンを水素プラズマ処理や真空下で加熱処理することによって得られる酸素欠陥型の酸化チタン、更には光触媒粒子をハロゲン化白金化合物で処理や、タングステンアルコキシドで処理することによって得られる表面処理光触媒等を好適に挙げることができる。上記可視光応答型光触媒の中でオキシナイトライド化合物、オキシサルファイド化合物は可視光による光触媒活性が大きく、特に好適に使用することができる。
特に好適に使用できるオキシナイトライド化合物は、遷移金属を含むオキシナイトライドであり、光触媒活性が大きいものとして、好ましくは遷移金属がTa、Nb、Ti、Zr、Wからなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とするオキシナイトライドであり、より好ましくはアルカリ、アルカリ土類及びIIIB族の金属からなる群より選択される少なくとも1つの元素を更に含むことを特徴とするオキシナイトライドであり、更に好ましくはCa、Sr、Ba、Rb、La、Ndからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属元素を更に含むことを特徴とするオキシナイトライドである。
上記遷移金属を含むオキシナイトライドの例としては、LaTiON、LaCaTiON(v+w=3)、LaCaTaON(v+w=3)、LaTaON、CaTaON、SrTaON、BaTaON、CaNbON、CaWON、SrWON等の一般式AMO(A=アルカリ金属、アルカリ土類金属、IIIB族金属の少なくとも1つの元素;M=Ta、Nb、Ti、Zr、W;x+y=3)で表される化合物や、TaON、NbON、WON、LiLaTaN等を挙げることができる。これらの中で、LaTiON、LaCaTiON(v+w=3)、LaCaTaON(v+w=3)、TaONが可視光での光触媒活性が非常に大きいため好ましい。
特に好適に使用できるオキシサルファイド化合物は、遷移金属を含むオキシサルファイドであり、光触媒活性が大きいものとして、好ましくは遷移金属がTa、Nb、Ti、Zr、Wからなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とするオキシサルファイドであり、より好ましくは、アルカリ、アルカリ土類及びIIIB族の金属からなる群より選択される少なくとも1つの元素を更に含むことを特徴とするオキシサルファイドであり、更に好ましくは希土類元素を更に含むことを特徴とするオキシサルファイドである。
上記遷移金属を含むオキシサルファイドの例としては、SmTi、NdTi、LaTi、PrTi、SmNbS等を挙げることができる。これらの中で、SmTi、NdTiが可視光での光触媒活性が非常に大きいため非常に好ましい。
更に、上述した光触媒(a1)は、Pt、Rh、Ru、Nb、Cu、Sn、Ni、Fe等の金属及び/又はこれらの酸化物を添加あるいは固定化したり、シリカや多孔質リン酸カルシウム等で被覆したりして好適に使用することもできる。
有機・無機複合組成物において、透明性、強度、耐候性等に優れた有機・無機複合体を形成するために、金属酸化物(A)の粒子径は1〜400nmであることが好ましい。より好ましくは1〜100nm、更に好ましくは5〜50nmの粒子径を有する金属酸化物(A)が好適に選択される。
金属酸化物(A)の形態としては、粉体、分散液、ゾルのいずれでも用いることができる。ここで、金属酸化物(A)ゾル及び金属酸化物(A)分散液とは、光触媒粒子が水及び/又は親水性有機溶媒中に0.01〜80質量%、好ましくは0.1〜50質量%で一次粒子及び/又は二次粒子として分散されたものである。
ここで、上記金属酸化物(A)ゾル又は金属酸化物(A)分散液に使用される上記親水性有機溶媒としては、例えばエチレングリコール、ブチルセロソルブ、n‐プロパノール、イソプロパノール、n‐ブタノール、エタノール、メタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド、ニトロベンゼン等、更にはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
金属酸化物(A)の形態が、有機・無機複合体の光学特性等の機能発現にとって重要な因子となる。好適に使用される金属酸化物(A)としては、1次粒子と2次粒子との混合物(1次粒子、2次粒子いずれかのみでも良い)の数平均分散粒子径が1〜400nmの金属酸化物(A)ゾル又は金属酸化物(A)分散液が好ましい。特に数平均分散粒子径が1〜100nmの金属酸化物(A)ゾル又は金属酸化物(A)分散液を使用した場合、本実施形態に係る有機・無機複合組成物からは透明性に優れた有機・無機複合体を得ることができるためより好ましい。更に好ましくは数平均分散粒子径が5〜80nm、特に好ましくは5〜50nmの金属酸化物(A)ゾル又は金属酸化物(A)分散液が好適に選択される。なお、本実施形態における数平均分散粒子径は、試料中の固形分含有量が1〜20質量%になるように溶媒を加えて希釈し、湿式粒度分析計(日機装製マイクロトラックUPA−9230)を用いて測定した。
〈重合体エマルジョン粒子(B)〉
重合体エマルジョン粒子(B)は、加水分解性金属化合物(b1)、及び、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)を水及び乳化剤の存在下で重合することにより得ることができる。
このようにして得られる重合体エマルジョン粒子(B)は、加水分解性金属化合物(b1)の重合生成物が有する水酸基と、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)の重合生成物とが水素結合により複合化されたものとなる。
この際、加水分解性金属化合物(b1)、及び、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)の質量比[(b1)/(b2)]は、5/95〜95/5であり、好ましくは10/90〜90/10である。
重合体エマルジョン粒子(B)の製造に用いる上記加水分解性金属化合物(b1)としては、下記式(1)で表される化合物やその縮合生成物、又はそのキレート化物を例示することができる。
MRx−n (1)
(式中、Mは金属原子を表す。Rは、直鎖状又は分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、及び置換されていないか或いは炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のアルコキシ基、又はハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基から選ばれる少なくとも1種の炭化水素基を表す。Wは、炭素数1〜20のアルコキシ基、水酸基、炭素数1〜20のアセトキシ基、ハロゲン原子、水素原子、炭素数1〜20のオキシム基、エノキシ基、アミノキシ基、アミド基から選ばれた少なくとも1種の基を表す。xは金属原子Mの原子価、nは1以上x以下の整数を示す。)
好ましく用いることができる加水分解性金属化合物(b1)としては、塗膜強度の補強効果、取り扱いの容易さ、材料コスト等の観点から、珪素アルコキシド、シランカップリング剤、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、及びそれらの縮合生成物、又は、それらのキレート化物を例示することができる。
上記珪素アルコキシド及びシランカップリング剤の具体例としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ‐n‐プロポキシシラン、テトラ‐i‐プロポキシシラン、テトラ‐ブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n‐プロピルトリメトキシシラン、n‐プロピルトリエトキシシラン、‐プロピルトリメトキシシラン、i‐プロピルトリエトキシシラン、n‐ブチルトリメトキシシラン、n‐ブチルトリエトキシシラン、n‐ペンチルトリメトキシシラン、n‐ヘキシルトリメトキシシラン、n‐ヘプチルトリメトキシシラン、n‐オクチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリールトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3‐クロロプロピルトリメトキシシラン、3‐クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3‐トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3‐トリフロロプロピルトリエトキシシラン、3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、2‐ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2‐ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2‐ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2‐ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3‐ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3‐ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3‐メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3‐メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3‐イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3‐イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3‐グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2‐(3,4‐エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2‐(3,4‐エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3‐(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3‐(メタ)アタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3‐(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリn‐プロポキシシラン、3‐(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリ‐i‐プロポキシシラン、3‐ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3‐ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ‐n‐プロピルジメトキシシラン、ジ‐n‐プロピルジエトキシシラン、ジ‐i‐プロピルジメトキシシラン、ジ‐i‐プロピルジエトキシシラン、ジ‐n‐ブチルジメトキシシラン、ジ‐n‐ブチルジエトキシシラン、ジ‐n‐ペンチルジメトキシシラン、ジ‐n‐ペンチルジエトキシシラン、ジ‐n‐ヘキシルジメトキシシラン、ジ‐n‐ヘキシルジエトキシシラン、ジ‐n‐ヘプチルジメトキシシラン、ジ‐n‐ヘプチルジエトキシシラン、ジ‐n‐オクチルジメトキシシラン、ジ‐n‐オクチルジエトキシシラン、ジ‐n‐シクロヘキシルジメトキシシラン、ジ‐n‐シクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3‐(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等のジアルコキシシラン類;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のモノアルコキシシラン類等を挙げることができる。また、これらの珪素アルコキシドやシランカップリング剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
上記珪素アルコキシドの中では、フェニル基を有する珪素アルコキシド、例えばフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等が、水及び乳化剤の存在下における重合安定性に優れるため非常に好ましい。
上記珪素アルコキシドやシランカップリング剤が縮合生成物として使用されるとき、該縮合生成物のポリスチレン換算重量平均分子量(GPC法による。本明細書において他の部分も同様)は、好ましくは200〜5000であり、より好ましくは300〜1000である。
また、上記チタンアルコキシドの具体例としては、例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ-i-プロポキシチタン、テトラ-n-プロポキシチタン、テトラ-n-ブトキシチタン、テトラ-sec-ブトキシチタン、テトラ-tert-ブトキシチタン等が挙げられる。
上記チタンアルコキシドが縮合生成物として使用されるとき、該縮合生成物のポリスチレン換算重量平均分子量は、好ましくは200〜5000であり、より好ましくは300〜1000である。
また、上記ジルコニウムアルコキシドの具体例としては、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラ‐i‐プロポキシジルコニウム、テトラ‐n‐プロポキシジルコニウム、テトラ‐n‐ブトキシジルコニウム、テトラ‐sec‐ブトキシジルコニウム、テトラ‐tert‐ブトキシジルコニウム等が挙げられる。
上記ジルコニウムアルコキシドが縮合生成物として使用されるとき、該縮合生成物のポリスチレン換算重量平均分子量は、好ましくは200〜5000であり、より好ましくは300〜1000である。
また、遊離の金属化合物に配位させてキレート化物を形成するのに好ましいキレート化剤としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;アセチルアセトン;アセト酢酸エチル等であって分子量1万以下のものを例示することができる。これらのキレート化剤を用いることにより、加水分解性金属化合物(b1)の重合速度を制御することができ、水及び乳化剤の存在下における重合安定性を優れたものにするため非常に好ましい。この際、キレート化剤は、これを配位させる遊離の金属化合物の金属原子1モル当たり、0.1モル〜2モルの割合で用いると効果が大きく好ましい。
加水分解性金属化合物(b1)は、単独で又は2種以上を混合して、あるいは複合加水分解性金属化合物として用いることができる。
加水分解性金属化合物(b1)の中で、3‐(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3‐(メタ)アタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3‐(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3‐(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリn‐プロポキシシラン、3‐(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリ‐i‐プロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリールトリメトキシシラン、2‐トリメトキシシリルエチルビニルエーテル等の二重結合を有するシランカップリング剤や、3‐メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3‐メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のチオール基を有するシランカップリング剤は、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)と共重合あるいは連鎖移動反応により、化学結合を生成することが可能である。このため、二重結合やチオール基を有するシランカップリング剤を単独又は上述した珪素アルコキシド、シランカップリング剤、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、及びそれらの縮合生成物、又は、それらのキレート化物と混合や複合化させて用いた場合、本実施形態に係る重合体エマルジョン粒子(B)に含まれる加水分解性金属化合物(b1)の重合生成物と2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)の重合生成物は、水素結合に加えて化学結合により複合化できる。このような重合体エマルジョン粒子(B)を含有する本実施形態に係る有機・無機複合組成物からは、耐候性、耐薬品性、光学特性、強度等に優れた有機・無機複合体を形成することができるため、非常に好ましい。
本実施形態に係る重合体エマルジョン粒子(B)の製造に用いる上記2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)としては、N‐アルキル又はN‐アルキレン置換(メタ)アクリルアミドを例示することができ、具体的には、例えばN‐メチルアクリルアミド、N‐メチルメタアクリルアミド、N‐エチルアクリルアミド、N,N‐ジメチルアクリルアミド、N,N‐ジメチルメタアクリルアミド、N,N‐ジエチルアクリルアミド、N‐エチルメタアクリルアミド、N‐メチル‐N‐エチルアクリルアミド、N‐メチル‐N‐エチルメタクリルアミド、N‐イソプロピルアクリルアミド、N‐n‐プロピルアクリルアミド、N‐イソプロピルメタクリルアミド、N‐n‐プロピルメタクリルアミド、N‐メチル‐N‐n‐プロピルアクリルアミド、N‐メチル‐N‐イソプロピルアクリルアミド、N‐アクリロイルピロリジン、N‐メタクリロイルピロリジン、N‐アクリロイルピペリジン、N‐メタクリロイルピペリジン、N‐アクリロイルヘキサヒドロアゼピン、N‐アクリロイルモルホリン、N‐メタクリロイルモルホリン、N‐ビニルピロリドン、N‐ビニルカプロラクタム、N,N’‐メチレンビスアクリルアミド、N,N’‐メチレンビスメタクリルアミド、N‐ビニルアセトアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタアクリルアミド等を挙げることができる。
上記2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)の中で、特にN,N‐ジエチルアクリルアミドは、水及び乳化剤の存在下における重合安定性に非常に優れるとともに、上述した加水分解性金属化合物(b1)の重合生成物の水酸基や金属酸化物(A)の水酸基と強固な水素結合を形成することが可能であるため非常に好ましい。
また、上記2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)の重合を、これと共重合可能な他のビニル単量体(b2’)と共に行うと、生成する重合生成物の特性(ガラス転移温度、分子量、水素結合力、極性、分散安定性、耐候性、加水分解性金属化合物(b1)の重合生成物との相溶性等)を制御することが可能となり好ましい。この際、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)は、全ビニル単量体中の0.5質量%以上を使用することが好ましく、より好ましくは5質量%、更に好ましくは20質量%以上である。
上記ビニル単量体(b2’)としては、アクリル酸エステル、メタ(アクリル)酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル類の他、カルボキシル基含有ビニル単量体、水酸基含有ビニル系単量体、グリシジル基含有ビニル単量体、カルボニル基含有ビニル単量体、アニオン型ビニル単量体のような官能基を含有する単量体等を挙げることができる。
上記(メタ)アクリル酸エステルの例としては、アルキル部の炭素数が1〜50の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n‐ブチル、(メタ)アクリル酸2‐エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレートの具体例としては、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。ここで、「(メタ)アクリル」とは、メタアクリル(又はメタクリル)又はアクリルを簡便に表記したものである。
(メタ)アクリル酸エステルの使用量は、1種又は2種以上の混合物として、全ビニル単量体中において好ましくは0〜99.9質量%、より好ましくは5〜80質量%である。
上記カルボキシル基含有ビニル単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、無水マレイン酸、あるいはイタコン酸、マレイン酸、フマール酸等の2塩基酸のハーフエステル等である。カルボン酸基含有のビニル単量体を用いることによって、重合体エマルジョン粒子(B)にカルボキシル基を導入することができ、エマルジョンとしての安定性を向上させ、外部からの分散破壊作用に抵抗力をもたせることが可能となる。この際、導入したカルボキシル基は、一部又は全部を、アンモニアやトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミン類やNaOH、KOH等の塩基で中和することもできる。
カルボキシル基含有ビニル単量体の使用量は、1種又は2種以上の混合物として、全ビニル単量体中において好ましくは0〜50質量%、より好ましくは0.1〜10質量%、更に好ましくは0.1〜5質量%である。50質量%以下とすることは、塗膜の耐水性を向上させる観点から好ましい。
また、上記水酸基含有ビニル単量体としては、例えば2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシプロピリ(メタ)アクリレート、3‐ヒドロキシプロピリ(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3‐ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4‐ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルやジ‐2‐ヒドロキシエチルフマレート、モノ‐2‐ヒドロキシエチルモノブチルフマレート、アリールアルコールやエチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート、更には、「プラクセルFM、FAモノマー」[ダイセル化学(株)製の、カプロラクトン付加モノマーの商品名]や、その他のα,β‐エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類等を挙げることができる。上記(ポリ)オキシエチレン(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。また、(ポリ)オキシプロピレン(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール等が挙げられる。水酸基含有ビニル単量体を用いることによって、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)との重合生成物の水素結合力を制御することが可能となるとともに、重合体エマルジョン粒子(B)の水分散安定性を向上させることが可能となる。
上述した水酸基含有ビニル単量体の使用量は、1種又は2種以上の混合物として、全ビニル単量体中において好ましくは0〜80質量%、より好ましくは0.1〜50質量%、更に好ましくは0.1〜10質量%である。
また、上記グリシジル基含有ビニル単量体としては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、アリールグリシジルエーテル、アリールジメチルグリシジルエーテル等を挙げることができる。
上記カルボニル基含有ビニル単量体としては、例えばアクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、アクリルオキシアルキルプロパナール類、メタクリルオキシアルキルプロパナール類、ジアセトンアクリレート、ジアセトンメタクリレート、アセトニルアクリレート、2‐ヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、ブタンジオールアクリレートアセチルアセテート、アセトンジカルボン酸、ジヒドロキシアセトン、モノヒドロキシアセトン、及びジヒドロキシベンズアルデヒド等が挙げられる。ただし、カルボン酸及びエステル類のもつカルボニル基を含有するビニル単量体は除外する。
グリシジル基含有ビニル単量体や、カルボニル基含有ビニル単量体を使用すると、重合体エマルジョン粒子(B)が反応性を有し、ヒドラジン誘導体やカルボン酸誘導体、イソシアネート誘導体等により架橋させて耐溶剤性等の優れた有機・無機複合体の形成が可能となる。グリシジル基含有ビニル単量体や、カルボニル基含有ビニル単量体の使用量は、全ビニル単量体中において好ましくは0〜50質量%である。
また、上記以外のビニル単量体(b2’)の具体例としては、例えば(メタ)アクリルアミド、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、ブタジエン等のジエン類、塩化ビニル、塩化ビニリデンフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン等のハロオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n‐酪酸ビニル、安息香酸ビニル、p‐t‐ブチル安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2‐エチルヘキサン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類、酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル等のカルボン酸イソプロペニルエステル類、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類、スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物、酢酸アリール、安息香酸アリール等のアリールエステル類、アリールエチルエーテル、アリールフェニルエーテル等のアリールエーテル類、更に4‐(メタ)アクリロイルオキシ‐2,2,6,6,‐テトラメチルピペリジン、4‐(メタ)アクリロイルオキシ‐1,2,2,6,6,‐ペンタメチルピペリジン、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピロメチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アリール等やそれらの併用が挙げられる。
2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)[必要に応じてこれと共重合可能な上記ビニル単量体(b2’)を用いても良い]の重合生成物の分子量を制御する目的で、連鎖移動剤を使用しても良い。
上記連鎖移動剤の具体例としては、n‐オクチルメルカプタン、n‐ドデシルメルカプタン、t‐ドデシルメルカプタンの如きアルキルメルカプタン類;ベンジルメルカプタン、ドデシルベンジルメルカプタンの如き芳香族メルカプタン類;チオリンゴ酸の如きチオカルボン酸あるいは、それらの塩もしくは、それらのアルキルエステル類、又はポリチオール類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジ(メチレントリメチロールプロパン)キサントゲンジスルフィド及びチオグリコール、更にはα‐メチルスチレンのダイマー等のアリール化合物等を挙げることができる。
これら連鎖移動剤の使用量は、全ビニル単量体に対して好ましくは0.001〜30質量%、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲で用いることができる。
重合体エマルジョン粒子(B)の合成に用いることができる乳化剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸等の酸性乳化剤、酸性乳化剤のアルカリ金属(Li、Na、K等)塩、酸性乳化剤のアンモニウム塩、脂肪酸石鹸等のアニオン性界面活性剤や、例えばアルキルトリメチルアンモニウムブロマイド、アルキルピリジニウムブロマイド、イミダゾリニウムラウレート等の四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩型のカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル等のノニオン型界面活性剤やラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤等を例示することができる。
これらの乳化剤の中で、ラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤を選択すると、重合体エマルジョン粒子(B)の水分散安定性が非常に良好になると共に、該重合体エマルジョン粒子(B)を含有する有機・無機複合組成物からは、耐水性、耐薬品性、光学特性、強度等に優れた有機・無機複合体を形成することができるため非常に好ましい。
上記ラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤としては、例えば、スルホン酸基又はスルホネート基を有するビニル単量体、硫酸エステル基を有するビニル単量体やそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、ポリオキシエチレン等のノニオン基を有するビニル単量体、4級アンモニウム塩を有するビニル単量体等を挙げることができる。
スルホン酸基又はスルホネート基を有するビニル単量体の塩の具体例としては、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつスルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基、炭素数6又は10のアリール基及びコハク酸基からなる群より選ばれる置換基を有する化合物であるか、スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基が結合しているビニル基を有するビニルスルホネート化合物である。
上記スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換されたコハク酸基を有する化合物の具体例としては、アリールスルホコハク酸塩が挙げられる。これらの具体例として、例えば、エレミノールJS‐2(商品名)(三洋化成(株)製)、ラテムルS‐120、S‐180A又はS‐180(商品名)(花王(株)製)等を挙げることができる。
また、上記スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数2〜4のアルキルエーテル基又は炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基を有する化合物の具体例として、例えばアクアロンHS‐10又はKH‐1025(商品名)(第一工業製薬(株)製)、アデカリアソープSE‐1025N又はSR‐1025(商品名)(旭電化工業(株)製)等を挙げることができる。
その他、スルホネート基により一部が置換されたアリール基を有する化合物の具体例として、p‐スチレンスルホン酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩等が挙げられる。
上記スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基が結合しているビニル基を有するビニルスルホネート化合物としては、例えば、2‐スルホエチルアクリレート等のアルキルスルホン酸(メタ)アクリレートやメチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、アリールスルホン酸等のアンモニウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩が挙げられる。
硫酸エステル基を有するビニル単量体の塩の具体例としては、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつ硫酸エステル基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基及び炭素数6又は10のアリール基からなる群より選ばれる置換基を有する化合物である。
また、上記の硫酸エステル基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩により一部が置換された炭素数2〜4のアルキルエーテル基又は炭素数2〜4のポリアルキエーテル基を有する化合物としては、例えばスルホネート基により一部が置換されたアルキルエーテル基を有する化合物等がある。
また、ノニオン基を有するビニル単量体の具体例としては、α‐〔1‐〔(アリールオキシ)メチル〕‐2‐(ノニルフェノキシ)エチル〕‐ω‐ヒドロキシポリオキシエチレン(商品名:アデカリアソープNE‐20、NE‐30、NE‐40等、旭電化工業(株)製)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル(商品名:アクアロンRN‐10、RN‐20、RN‐30、RN‐50等、第一製薬工業(株)製)等を挙げることができる。
上記乳化剤の使用量は、重合体エマルジョン粒子(B)100質量部に対して、10質量部以下が適切であり、なかでも、0.001〜5質量部となる範囲内が好ましい。
また、上記乳化剤以外に、重合体エマルジョン粒子(B)の水分散安定性を向上させる目的で分散安定剤を使用することもできる。分散安定剤としては、ポリカルボン酸塩及びスルホン酸塩からなる群より選ばれる各種の水溶性オリゴマー類や、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、澱粉、マレイン化ポリブタジエン、マレイン化アルキッド樹脂、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリルアミド、水溶性あるいは水分散性アクリル樹脂等の合成あるいは天然の水溶性あるいは水分散性の各種の水溶性高分子物質が挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合物を使用することができる。
上記分散安定剤の使用量は、重合体エマルジョン粒子(B)100質量部に対して、10質量部以下が適切であり、なかでも、0.001〜5質量部となる範囲内が好ましい。
上述したように、本実施形態に係る有機・無機複合組成物に用いる重合体エマルジョン粒子(B)は、水及び乳化剤の存在下に加水分解性金属化合物(b1)、及び、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)[必要に応じてこれと共重合可能な他のビニル単量体(b2’)を用いても良い]を、好ましくは重合触媒存在下で重合することにより得ることができる。
加水分解性金属化合物(b1)、及び、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)の重合は、重合触媒存在下で実施するのが好ましい。
ここで、加水分解性金属化合物(b1)の重合触媒としては、塩酸、フッ酸等のハロゲン化水素類、酢酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸等のカルボン酸類、硫酸、p‐トルエンスルホン酸等のスルホン酸類、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸等の酸性乳化剤類、酸性あるいは弱酸性の無機塩、フタル酸、リン酸、硝酸のごとき酸性化合物類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、酢酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エタノールアミン類、γ‐アミノプロピルトリメトキシシラン、γ‐(2‐アミノエチル)‐アミノプロピルトリメトキシシランのごとき塩基性化合物類;ジブチル錫オクチレート、ジブチル錫ジラウレートのような錫化合物等を挙げることができる。
これらの中で、加水分解性金属化合物(b1)の重合触媒としては、重合触媒のみならず、乳化剤としての作用を有する酸性乳化剤類、特に炭素数が5〜30のアルキルベンゼンスルホン酸(ドデシルベンゼンスルホン酸等)が非常に好ましい。
一方、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)の重合触媒としては、熱又は還元性物質等によってラジカル分解してビニル単量体の付加重合を起こさせるラジカル重合触媒が好適であり、水溶性又は油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物等が使用される。その例としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t‐ブチルハイドロパーオキサイド、t‐ブチルパーオキシベンゾエート、2,2‐アゾビスイソブチロニトリル、2,2‐アゾビス(2‐ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、2,2‐アゾビス(2,4‐ジメチルバレロニトリル)等があり、その量としては全ビニル単量体100質量部に対して、0.001〜5質量部の配合が好ましい。なお、重合速度の促進、及び70℃以下での低温の重合を望むときには、例えば重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸塩、ロンガリット等の還元剤をラジカル重合触媒と組み合わせて用いると有利である。
ここで、加水分解性金属化合物(b1)、及び、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)の重合は、別々に実施することも可能であるが、同時に実施することにより水素結合等によるミクロな有機・無機複合化が達成できるので好ましい。
また、重合体エマルジョン粒子(B)の数平均分散粒子径は、10〜800nmであることが好ましく、50〜300nmであることがより好ましい。このような粒子径の範囲に調整し、粒子径が1〜400nmの金属酸化物(A)と組み合わせて有機・無機複合組成物とすることにより、耐候性、耐薬品性、光学特性、更には防汚性、防曇性、帯電防止性等に優れた有機・無機複合体を形成することが可能となる。また、重合体エマルジョン粒子(B)のゾル又は分散液における数平均分散粒子径も10〜800nmであることが好ましく、より好ましくは50〜300nmである。
このような粒子径の重合体エマルジョン粒子(B)を得る方法として、乳化剤がミセルを形成するのに十分な量の水の存在下で、加水分解性金属化合物(b1)、及び、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)を重合する、いわゆる乳化重合が最も適した方法である。
乳化重合のやり方としては、例えば、加水分解性金属化合物(b1)、及び、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)[必要に応じてこれと共重合可能な他のビニル単量体(b2’)]は、そのまま若しくは乳化した状態で、一括若しくは分割、或は連続的に反応容器中に滴下し、上記重合触媒の存在下、好ましくは圧力が大気圧から必要により10MPa、反応温度が約30〜150℃の温度で重合させれば良い。場合によっては、これ以上の圧力、あるいは、これ以下の温度条件でも重合させても差し支えない。加水分解性金属化合物(b1)及び全ビニル単量体量の総量と水との比率は最終固形分量が0.1〜70質量%、好ましくは1〜55質量%の範囲になるように設定するのが好ましい。又、乳化重合をするにあたり粒子径を成長もしくは制御するために、予め水相中にエマルジョン粒子を存在させ重合させるシード重合法を用いても良い。重合反応は、系中のpHが好ましくは1.0〜10.0、より好ましくは1.0〜6.0の範囲で進行させればよい。pHの調節は、リン酸2ナトリウムやボラックスあるいは、炭酸水素ナトリウム、アンモニア等のpH緩衝剤を用いて調節することが可能である。
また、重合体エマルジョン粒子(B)を得る方法として、加水分解性金属化合物(b1)を重合するために必要な水及び乳化剤の存在下に加水分解性金属化合物(b1)及び2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)を、必要により溶剤存在下で重合した後、重合生成物がエマルジョンとなるまで水を添加する手法も適用できるが、上述した乳化重合方法と比べ、得られる重合体エマルジョン粒子(B)の粒子径制御が困難である。
重合体エマルジョン粒子(B)がコア/シェル構造であると、重合体エマルジョン粒子(B)を含有する有機・無機複合組成物からは機械的物性(強度と柔軟性のバランス等)に優れた有機・無機複合体を形成することが可能となり好ましい。
上記コア/シェル構造の重合体エマルジョン粒子(B)を製造する方法として、多段乳化重合が非常に有用である。
ここで、多段乳化重合とは、2種類以上の異なった組成の加水分解性金属化合物(b1)や2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)[必要に応じてこれと共重合可能な他のビニル単量体(b2’)]を調整し、これらを別々の段階に分けて重合することを意味する
以下に、多段乳化重合の中で最も単純で有用な2段乳化重合による重合体エマルジョン粒子(B)の合成を例に、多段乳化重合による重合体エマルジョン粒子(B)の合成について説明する。
2段乳化重合による重合体エマルジョン粒子(B)の合成として、例えば水及び乳化剤の存在下にビニル単量体(C)及び/又は加水分解性金属化合物(b1)を重合して得られるシード粒子存在下に、加水分解性金属化合物(b1)及び2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)を重合する方法を例示できる。
ここで、ビニル単量体(C)とは、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)及び/又は上述した他のビニル単量体(b2’)を意味する。
上記2段乳化重合による重合体エマルジョン粒子(B)の合成は、第1系列[ビニル単量体(C)及び/又は加水分解性金属化合物(b1)]を供給して乳化重合する第1段の重合と、第1段に引き続き、第2系列{加水分解性金属化合物(b1)及び2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)[必要に応じてこれと共重合可能な他のビニル単量体(b2’)]}を供給し、水性媒体中において乳化重合する第2段の重合からなる2段階の重合行程により得られる。この際、第1系列中の固形分質量(M1)と第2系列中の固形分質量(M2)との質量比は、好ましくは(M1)/(M2)=9/1〜1/9、より好ましくは8/2〜2/8、更に好ましくは7/3〜3/7である。
好ましいコア/シェル構造の重合体の特徴としては、第1段の重合で得られたシード粒子の粒子径が、粒径分布(体積平均粒子径/数平均粒子径)の大きな変化なしに(好ましくは単分散の状態で)、第2段の重合によって大きくなる(粒子径の増大)ことを挙げることができる。
また、コア/シェル構造は、例えば、透過型電子顕微鏡等による形態観察や粘弾性測定による解析等により確認することが可能である。
また、上述したコア/シェル構造の重合体エマルジョン粒子(B)において、コア相のガラス転移温度(Tg)が0℃以下、すなわち上記シード粒子のガラス転移温度が0℃以下のものは、それを含有する有機・無機複合組成物からは、室温における柔軟性に優れ、割れ等が生じにくい有機・無機複合体を形成することが可能となり好ましい。
コア相のガラス転移温度(Tg)が0℃以下で耐候性に優れた重合体エマルジョン粒子(B)の製造方法として、水及び乳化剤の存在下に加水分解性珪素化合物(b1)及び/又は環状シロキサンオリゴマーを重合して得られるシード粒子存在下に、加水分解性金属化合物(b1)、及び、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)を重合する方法を好適に例示できる。
ここで、環状シロキサンオリゴマーとしては、下記式(2)で表される化合物を例示することができる。
(R’SiO) (2)
(式中、R’は、水素原子、直鎖状又は分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、及び置換されていないか或いは炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のアルコキシ基、又はハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基から選ばれる少なくとも1種を表す。mは整数であり、2≦m≦20である。)
上記環状シロキサンオリゴマーの中で、反応性等の点からオクタメチルシクロテトラシロキサン等の環状ジメチルシロキサンオリゴマーが好ましい。
上記環状シロキサンオリゴマーの重合には、加水分解性金属化合物(b1)の合成に用いられる重合触媒として例示したものを好適に使用することができる。
3段以上の多段乳化重合を実施する場合は、上述した2段重合による重合体エマルジョン粒子(B)の合成例を参考に、重合する系列の数を増加させれば良い。
本実施形態に係る有機・無機複合組成物は、上述した粒子径が1〜400nmの金属酸化物(A)と、水及び乳化剤の存在下に加水分解性金属化合物(b1)及び2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b2)を重合して得られる粒子径が10〜800nmである重合体エマルジョン粒子(B)を含んでなることを特徴とする。
ここで、金属酸化物(A)と重合体エマルジョン粒子(B)の質量比(A)/(B)は、1/99〜99/1、好ましくは5/95〜90/10、更に好ましくは10/90〜80/20である。
該有機・無機複合組成物は、無溶媒の状態であっても水に分散した状態であっても良く、特に制限はないが、コーティング剤として用いる場合は、粘度調整の観点から水に分散した状態が好ましい。この際、有機・無機複合組成物の固形分は、好ましくは0.01〜60質量%、より好ましくは1〜40質量%である。その時の粘度は、20℃において好ましくは0.1〜100000mPa・s、より好ましくは1〜10000mPa・sである。
また、本実施形態に係る有機・無機複合組成物には、水素結合等による金属酸化物(A)と重合体エマルジョン粒子(B)の相互作用を制御する目的で、アルコール類を添加することもできる。アルコールの添加により、貯蔵安定性等が非常に向上する。
上記アルコール類としては、メタノール、エタノール、1‐プロパノール、2‐プロパノール、1‐ブタノール、2―ブタノール、変性エタノール、グリセリン、アルキル鎖の炭素数が3〜8のモノアルキルモノグリセリルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル又はジないしテトラエチレングリコールモノフェニルエーテルが好ましい。これらの中で、エタノールが環境上最も好ましい。
また、本実施形態に係る有機・無機複合組成物には、その用途ならびに使用方法等に応じて、通常、塗料や成型用樹脂に添加配合される成分、例えば、増粘剤、レベリング剤、チクソ化剤、消泡剤、凍結安定剤、艶消し剤、架橋反応触媒、顔料、硬化触媒、架橋剤、充填剤、皮張り防止剤、分散剤、湿潤剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レオロジーコントロール剤、消泡剤、成膜助剤、防錆剤、染料、可塑剤、潤滑剤、還元剤、防腐剤、防黴剤、消臭剤、黄変防止剤、静電防止剤あるいは帯電調整剤等をそれぞれの目的に応じて選択、組み合わせて配合することができる。
コート液の塗布方法は基材上に均一に被覆することが可能ないかなる公知の技術も用いることができる。例えば、噴霧するスプレー方法、メイヤーバー等を用いたバーコート方法、フローコーティング方法、ロールコート方法、刷毛塗り方法、ディップコーティング方法、スピンコーティング方法、スクリーン印刷方法、キャスティング印刷方法、グラビア印刷方法、フレキソ印刷方法、グラビア印刷方法、インクジェット印刷方法等が挙げられる。
コート液に用いられる溶媒としては、水系溶媒及び有機系溶媒のいずれであってもよい。水系溶媒を用いた場合には、設置現場にて基材にコート液を容易に塗布することができると共に、環境負荷を低減することができる。水系溶媒にて光触媒機能を有する無機物質を分散する場合、保存時の安定性の観点から、通常、乳化剤を用いてエマルジョン状態とすることが好ましい。
透明無機物質層となる有機・無機複合体を基材上に塗膜状として形成させる場合、該塗膜の厚みは、好ましくは0.05〜100μm、より好ましくは0.1〜10μmである。透明性の観点から100μm以下の厚みであることが好ましく、防汚性、防曇性、帯電防止性、光触媒活性等の機能を十分に発現するためには0.05μm以上の厚みであることが好ましい。
(リフレクター装置及び太陽光発電システム)
次に、図2を用いて、本実施形態に係るリフレクター装置11及び太陽光発電システム21について説明する。図2は、太陽光発電システムの一例を示した図である。
本実施形態に係る太陽光発電システム21は、複数の本実施形態に係るリフレクター装置11と、当該リフレクター装置11により集光された太陽光Lにより熱媒体を加熱する加熱装置23と、当該加熱装置23により加熱された上記熱媒体の熱エネルギーを電気エネルギーに変換する変換装置35とを備える。
本実施形態に係るリフレクター装置11は、本実施形態に係る光反射鏡1と、当該光反射鏡1を支持する支持体13とを備える。支持体13は、例えば板状部材であり、光反射鏡1を固定又は回転可能に支持している。この支持の方法としては、集中方式(中央タワー式)、分散方式(パラボリックトラフ)、ディッシュ/スターリング方式等の方式があり、支持体13は通常、ステンレスやSUS合金等の金属製を用いてつくられる。また、強風等に構造上強度を保つために支持体13を3ないし4方より鋼鉄等の金属ワイヤーで補強する場合がある。
加熱装置23は、例えば、低温タンク25と、高温タンク27と、頂頭部に集熱器29が取り付けられた塔31とを有している。低温タンク25及び高温タンク27には、熱媒体が貯蔵されている。熱媒体は、熱を伝達可能であると共に、耐熱性を有する液体であればよく、水、オイル、溶融塩等が挙げられる。集熱器29は、各リフレクター装置11の光反射鏡1に反射した太陽光Lが集光されることにより熱せられる。
変換装置35は、加熱された上記熱媒体の熱エネルギーを電気エネルギーに変換するものであればよく、例えば蒸気発生器及び発生した蒸気を使用してタービン等を回し、電気エネルギーに変換するもの等を用いることができる。
本実施形態に係る太陽光発電システム21では、低温タンク25及び高温タンク27のそれぞれが集熱器29及び変換装置35に接続されており、熱媒体は、低温タンク25、集熱器29、高温タンク27、変換装置35の順に循環する。低温タンク25から集熱器29に送られた熱媒体は、集熱器29において生じた熱により熱せられて高温となり、高温タンク27へ送られる。熱媒体は、更に高温タンク27から変換装置35へ送られ、変換装置35において熱エネルギーが電気エネルギーに変換され、熱媒体は低温となる。低温の熱媒体は、低温タンク25へ送られ、再び集熱器29へ送られる。以上のように、熱媒体が太陽光発電システム21内を循環することにより、太陽光発電システム21では太陽光から電気エネルギーが得られる。
本実施形態に係るリフレクター装置11は、本実施形態に係る光反射鏡1を太陽光発電用反射鏡として用いているため、光触媒機能を有する無機物質の特徴である親水性による防曇性、防汚性、自己洗浄性を維持したまま、低温、短時間の焼成により、もしくは焼付け処理なしに安定した表面層を形成し、優れた耐擦過性を有することとなる。
本実施形態に係る光反射鏡1は、2000時間促進耐候性試験前及び後において、透明無機物質層7の水に対する表面接触角が低いため、水洗浄によって表面の汚れを容易に取り除くことにより、汚れにより低下した太陽光反射率を容易に元に戻すことができる。また、透明無機物質層7が光触媒機能を有する無機物質を含むことにより、透明無機物質層7の表面に付着した有機物を光によって光分解することができる。このように、水洗浄や光触媒機能により、太陽光発電の発電効率に直接的に大きな影響を与える太陽光の表面における反射率を高く維持することができる。したがって、長期にわたって高い発電効率を維持することができる。また、透明無機物質層7の表面の反射率を降雨や太陽光により容易に高く維持することができるため、光反射鏡1自体に自己浄化能(セルフクリーニング)による耐汚染性を具備させることができる。
また、本実施形態に係る光反射鏡1は、成膜において低温、短時間の焼成により、もしくは焼付け処理なしに安定した表面層を形成することができるため、基材としてガラスのみならず、樹脂材料を用いることができる。樹脂材料を用いた場合には、光反射鏡1を軽量化することができる。また、耐候性を有するコート液を用いて形成されるため、透明無機物質層7に耐破壊性を付与することができる。
以下の実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
(塗液)
[塗液1]
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する反応容器に、イオン交換水1750g、ドデシルベンゼンスルホン酸4gを投入した後、撹拌下で温度を80℃に加温した。これに、ジメチルジメトキシシラン185g、フェニルトリメトキシシラン117gの混合液を反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて滴下し、その後、反応容器中の温度が80℃の状態で約1時間撹拌を続行した。次にアクリル酸ブチル86g、フェニルトリメトキシシラン133g、3‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン13gの混合液と、ジエチルアクリルアミド197g、アクリル酸3g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR‐1025」、旭電化(株)製、固形分25%水溶液)13g、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液40g、イオン交換水1950gの混合液を、反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて反応容器中に同時に滴下した。更に反応容器中の温度が80℃の状態で約2時間撹拌を続行した後、室温まで冷却し、100メッシュの金網で濾過した後、イオン交換水で固形分を10.0質量%に調整し、数平均粒子径130nmの塗液1を得た。
[塗液2]
アナターゼ型酸化チタンゾル56質量部(日産化学社製TA−15)とシリカゾル33質量部(日本合成ゴム社製グラスカA)を混合し、水及びエタノール混合溶液(アルコール混合比率30%)で希釈後、メチルトリメトキシシラン11質量部(日本合成ゴム社製グラスカB)を添加し、酸化チタン含有塗液である塗液2を得た。
[塗液3]
界面活性剤としてグリセリン脂肪酸エステル製剤(太陽化学社製チラバゾールKN−20)を精製水で30倍に希釈して塗液3を得た。
[塗液4]
アナターゼ型酸化チタン酸ゾル(石原産業STS−11)1gと25%アンモニア水2gに溶解させたタングステン酸を混合し、更に蒸留水2gを加えて塗液4を得た。
<基材>
ガラス基材としては、白板ガラス(AGC社製:厚さ3mm)を用いた。アクリル系基材(表1〜3中の表記:PMMA)としては、デラグラス(旭化成テクノプラス社製:厚さ3mm)を用いた。ポリカーボネート系基材(表1〜3中の表記:PC)としては、ユーピロンシート(三菱エンジニアリングプラスチック社製:厚さ3mm)を用いた。環状ポリオレフィン系基材(表1〜3中の表記:COP)としては、日本ゼオン社製ゼオノア樹脂1600をシート成形して厚さ3mmとしたものを用いた。各基材には、片面に無電解銀メッキを施し、その上に酸化防止処理、コロナ処理を順に施した。
[実施例1〜8、参考例9〜16]
実施例1〜8、参考例9〜16について、表1〜2に記載の基材、塗液及び塗布方法を用いて、それぞれ反射鏡を作製した。基材のコロナ処理を施した面上に、各塗液を塗布・乾燥(場合により焼成)した。
[比較例1〜7]
比較例1〜7について、表3に記載の基材、塗液及び塗布方法を用いて、それぞれ反射鏡を作製した。基材のコロナ処理を施した面上に、各塗液を塗布・乾燥(場合により焼成)した。
[比較例8]
塗膜硬度の経時変化の測定用として、無電解銀メッキを施すことなく、直接塗液1を実施例1と同様に白板ガラス上に塗布し、乾燥させ、光透過型のサンプルを作製した(表4中、実施例1は無電解銀メッキが施されたものであり、「光反射型」と記載されている)。実施例1と比較例8のサンプルを屋外にて太陽光に曝露した場合の、塗膜硬度変化をまとめたのが表4である。
実施例及び比較例において作製した反射鏡の各種の物性について、下記の方法で測定した。
(1.塗膜厚さ)
反射鏡を切断し、断面を顕微鏡で観察して、塗膜の膜厚を測定した。
(2.塗膜硬度)
JIS‐K5400に準じ、鉛筆硬度(塗膜のすり傷)を測定した。また、実施例1(光反射型)及び比較例8(光透過型)の反射鏡を太陽光に曝露される位置に設置し、塗膜硬度の経時変化を測定した。
(3.汚れ洗浄性)
カーボンブラック(東海カーボン社製、トーカブラック#7050:平均算出粒子径66nm)を反射鏡表面に振り撒き、水道口にホースをつなぎ、ホース先より水道水を流して反射鏡表面を洗浄した。
〈評価基準〉
〇:カーボンブラックがほとんど取り除かれた
△:一部のカーボンブラックが付着したまま(許容範囲内)
×:多くのカーボンブラックが付着したまま
(4.接触角)
塗膜の表面に脱イオン水の滴を乗せ、20℃で1分間放置した後、協和界面科学製CA‐X150型接触角計を用いて表面接触角を測定した。なお、塗膜に対する水の接触角が小さいほど、塗膜表面は親水性が高い。
(5.反射率)
ウシオ電機社製の分光反射率計URE−30を使用して、反射率を測定した。
(6.耐汚染性)
各反射膜を一般道路(トラック通行量500〜1000台/日程度)に面したフェンスに3ケ月間張りつけた後、汚染の度合いを目視にて評価した。
〈評価基準〉
〇:ほとんど汚れなし
△:汚れがあるが許容範囲
×:汚れ付着
(7.表面状態)
マイクロスコープキーエンス社製VHX−900によって、耐候性評価をした後の表面状態を目視確認し、クラックや汚れの有無を観察した。
〈評価基準〉
◎:まったくクラックなし、汚れなし。
〇:一部にクラックがあるが許容範囲、ほぼ汚れなし。
△:まったくクラックはないが、汚れ付着
×:クラックが入り、クラックの裂け目に汚れ付着。
(8.初期、又は耐候性評価後)
スガ試験器製のサンシャインウェザーメーターを使用して曝露試験(ブラックパネル温度63℃、降雨18分/2時間)を行った。曝露試験開始前を「初期」、曝露試験2000時間経過後を「耐候性評価後」と記載した。
上記の各測定の測定結果を、表1〜4に示す。
Figure 0005242303
Figure 0005242303
Figure 0005242303
Figure 0005242303
実施例1〜8、参考例9〜16は、いずれも耐候性評価後においても低い良好な接触角を維持していた。そのため、汚れ洗浄性、耐汚染性の結果が優れていた。
比較例1〜7では、初期状態においてはいずれも低い良好な接触角を示したが、耐候性評価後においては接触角が高い値となった。そのため、汚れ洗浄性、耐汚染性において結果が悪かった。また、塗液4においては、焼付け処理によって表面状態、耐汚染性(初期)が改善されたが、高温での焼付け処理が必要であり、樹脂に応用することは到底不可能であることが示唆された。
また、実施例1においては、比較例8に比べ、塗膜が速く強化されて効率よく強靭な塗膜が形成できた。
本実施形態に係る光反射鏡を示す断面図である。 本実施形態に係る太陽光発電システムを示す概略図である。
符号の説明
1…光反射鏡、3…反射基材層、3a…反射面、5…透明中間層、7…透明無機物質層、11…リフレクター装置、13…支持体、21…太陽光発電システム、23…加熱装置、25…低温タンク、27…高温タンク、29…集熱器、31…塔、35…変換装置、L…太陽光。

Claims (2)

  1. 太陽光発電用反射鏡である光反射鏡と、当該光反射鏡を支持する支持体とを備えるリフレクター装置であって、
    前記光反射鏡は、反射基材層と、当該反射基材層又は当該反射基材層上に形成された透明中間層の上に積層された光触媒機能を有する透明無機物質層と、を備え
    前記反射基材層及び/又は前記透明中間層は、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂及び環状ポリオレフィン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含有し、
    前記透明無機物質層は、二酸化珪素及び/又は酸化チタンと、重合体エマルジョン粒子とを含有する有機・無機複合体を含むと共に、2000時間促進耐候性試験前及び後において、水に対する表面接触角が20°以下である、リフレクター装置
  2. 請求項に記載のリフレクター装置と、当該リフレクター装置により集光された太陽光により熱媒体を加熱する加熱装置と、当該加熱装置により加熱された前記熱媒体の熱エネルギーを電気エネルギーに変換する変換装置とを備える、太陽光発電システム。
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