JP2012256640A - 太陽電池モジュール及びそのコーティング方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】機能性膜に汚れやキズがない太陽電池モジュールを効率的に製造するのに有用であり、機能性膜に含まれる成分が他の材料に影響を及ぼすことを十分に防止できるコーティング方法を提供する。
【解決手段】太陽光が入射する表面をなす透明基板1と裏面をなすバックシートとの間に、直列に接続された複数の発電素子が封止材によって封止された積層構造からなるモジュール本体と、モジュール本体が嵌め込まれる外枠とを備えた太陽電池モジュールを対象とするものであり、太陽電池モジュールの外枠7から離隔した位置に又は外枠に接するように、マスキング材20を配置するマスキング工程と、マスキング材を配置した状態において透明基板の表面にコーティング剤を塗布して機能性膜を製膜するコーティング工程と、コーティング工程後、外枠からマスキング材を取り除くマスキング除去工程とを備える。
【選択図】図2

Description

本発明は、太陽電池モジュール及びそのコーティング方法に関する。
近年、世界的な温暖化現象により環境に対する意識が高まり、炭酸ガス等の温暖化ガスを発生しない新しいエネルギーシステムが関心を集めている。太陽電池発電や風力発電等の環境に優しい再生可能なエネルギーは、炭酸ガス等の温暖化を誘発するといわれているガスを排出しないため、クリーンなエネルギーとして研究開発が盛んに行われている。中でも、太陽電池や太陽熱発電は、安全性や扱いやすさに優れることから、注目を浴びている。
太陽電池は、表面をなす透明基板と裏面をなすバックシートとの間に、直列に接続された複数の発電素子が封止材によって封止された積層構造のモジュールからなる。太陽光が透明基板の表面で反射して隣接する家屋の中を照らすなどの光公害を防止するため、透明基板の表面に防眩膜を形成する技術が知られている(特許文献1の段落[0007]参照)。特許文献1の図3の(a)−(c)には、透明ガラス基板1の表面に防眩膜11を製膜した後、透明ガラス基板1の端部からはみ出した充填材9及び背面カバーフィルム10の周縁部をトリミングして太陽電池モジュールを製造する過程が示されている。
特開2001−177126号公報
ところで、太陽電池の電力コストを低下させるため、モジュール製造コストの削減に向けた取り組みがなされている。例えば、簡便に電力コストを低下させる技術として、ガラス表面に反射防止膜を製膜して出力を向上させる方法の検討がなされている。しかし、例えば特許文献1に記載の技術のように、太陽電池モジュールの製造過程において透明基板の表面に反射防止膜を製膜すると、製膜した反射防止膜に汚れが付着したりキズが生じたりしないように特別な配慮をしながら積層体を次の工程に搬送する必要が生じる。これに加え、その後の工程において反射防止膜に含まれる成分が他の材料に影響を及ぼすおそれがある。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、反射防止や防眩、防汚などを目的に透明基板の表面に形成される膜(以下、「機能性膜」という。)に汚れやキズがない太陽電池モジュールを効率的に製造するのに有用であり、機能性膜に含まれる成分が他の材料に影響を及ぼすことを十分に防止できるコーティング方法を提供することを目的とする。また、本発明は、このコーティング方法によって製膜された機能性膜を備える太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
本発明に係るコーティング方法は、表面をなす透明基板と裏面をなすバックシートとの間に、直列に接続された複数の発電素子が封止材によって封止された積層構造からなるモジュール本体と、モジュール本体が嵌め込まれる外枠とを備えた太陽電池モジュールを対象とするものであり、太陽電池モジュールの外枠から離隔した位置に又は外枠に接するように、マスキング材を配置するマスキング工程と、マスキング材を配置した状態において透明基板の表面にコーティング剤を塗布して機能性膜を製膜するコーティング工程と、コーティング工程後、外枠からマスキング材を取り除くマスキング除去工程とを備える。
上記コーティング方法によれば、外枠を装着した状態の太陽電池モジュールを対象とするため、機能性膜の製膜後において外枠を保持するなどして搬送を実施できる。このため、外枠がない状態で搬送等を実施する場合と比較して機能性膜に汚れやキズなどの欠陥が生じることを十分に防止できる。また、積層構造を有するモジュール本体の周縁部を外枠が覆った状態であり且つ外枠をマスキングした状態でコーティングを実施するため、コーティング剤に含まれる成分がモジュール本体内に浸入して他の材料に影響を及ぼすことを高度に防止できる。更に、外枠をマスキングした状態でコーティングを実施するため、太陽電池モジュールの外枠の塗装汚れを防止でき、優れた外観の太陽電池モジュールを効率的に製造できる。
本発明において使用するコーティング剤は、いわゆる低温硬化タイプのものが好ましい。より具体的には、塗膜を100℃以下の温度で乾燥することによって透明基板上に機能性膜を製膜可能なものが好ましい。
マスキング材にコーティング剤が付着するのを抑制し、マスキング材の洗浄を容易にする観点から、マスキング材においてコーティング剤が接触する部分は水接触角が30度以上の材料からなることが好ましい。
本発明においては、マスキング工程において外枠から離隔した上方の位置にマスキング材を配置し、コーティング工程においてマスキング材よりも上方の位置から下方に向けてコーティング剤を噴射すること又はコーティング剤を膜状に流下させることが好ましい。かかる構成を採用することにより、製造ラインを用いて太陽電池モジュールをより効率的に量産することが可能となる。この場合、マスキング材の上面は、内縁側から外縁側に向けて低くなる傾斜部及び上方からのコーティング剤が溜まる液溜まり部の少なくとも一方を有することが更に好ましい。かかる構成を採用することにより、マスキング材に付着したコーティング剤が太陽電池モジュールの外枠上に液ダレして外観上の欠陥が生じることをより確実に防止できる。
本発明に係る太陽電池モジュールは、上記コーティング方法によって製膜された機能性膜を備える。この太陽電池モジュールは、外枠をマスキングした状態でコーティングが実施されたものであるため、優れた外観を有する。
本発明によれば、透明基板表面の機能性膜に汚れやキズがない太陽電池モジュールを効率的に製造でき、また機能性膜に含まれる成分が他の材料に影響を及ぼすことも十分に防止できる。更に本発明によれば、機能性膜を製膜するに際し、太陽電池モジュールの外枠に対する塗装汚れを防止でき、優れた外観の太陽電池モジュールを効率的に製造できる。
本発明に係る太陽電池モジュールの一実施形態を模式的に示す断面図である。 太陽電池モジュールの外枠から上方に離隔した位置にマスキング材を配置した状態を模式的に示す斜視図である。 (a)は図2に示すIII−III線における端面図であり、(b)は複数の溝を有する傾斜面を部分的に示す上面図である。 (a)及び(b)はマスキング材の他の態様をそれぞれ示す端面図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
<太陽電池モジュール>
図1は、本発明に係る太陽電池モジュールの一実施形態を模式的に示す断面図である。同図に示す太陽電池モジュール10は、表面をなす透明基板1と裏面をなすバックシート2との間に、直列に接続された複数の発電素子3が封止材4によって封止された積層構造からなるモジュール本体5と、モジュール本体5が嵌め込まれる外枠7とを備える。太陽電池モジュール10において太陽光Lは、透明基板1側から入射して発電素子3に到達する。
透明基板1は、発電素子3等を保護するためのものである。透明基板1の表面には後述のコーティング方法によって製膜された機能性膜1aが形成されている。表面に機能性膜1aを有する透明基板1は太陽光を透過する光透過性基板として機能する。
透明基板1及び機能性膜1aは、耐候性、撥水性、耐汚染性、機械強度をはじめとして、太陽電池モジュール10の屋外暴露における長期信頼性を確保できるための性能を具備することが好ましく、また太陽光を有効に活用するために、光学ロスの小さい、透明性の高い部材であることが好ましい。
透明基板1の材料としては、ガラス基板;ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、環状オレフィン(共)重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等からなる樹脂フィルム等が好ましく、これらの中でも、耐候性、耐衝撃性、コストのバランスの観点からガラス基板がより好ましい。
透明基板1としてガラス基板を用いる場合には、波長350〜1400nmの光の全光線透過率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。かかるガラス基板としては赤外部の吸収の少ない白板ガラスを使用するのが一般的であるが、青板ガラスであっても厚さが3mm以下であれば太陽電池モジュールの出力特性への影響は通常少ない。また、ガラス基板の機械的強度を高めるために熱処理により強化ガラスを得ることができるが、熱処理無しのフロート板ガラスを用いてもよい。
透明基板1として樹脂フィルムを用いる場合には、透明性、強度、コスト等の観点から、その材質はポリエステル樹脂が好ましく、とりわけポリエチレンテレフタレート樹脂がより好ましい。また、耐侯性が特に良好なフッ素樹脂も好適である。具体的には、四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニル樹脂(PVF)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリ四フッ化エチレン樹脂(TFE)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、ポリ三フッ化塩化エチレン樹脂(CTFE)が挙げられる。耐候性の観点からはポリフッ化ビニリデン樹脂が好ましいが、耐候性及び機械的強度の両立をする観点からは四フッ化エチレン−エチレン共重合体が好ましい。
バックシート2としては、特に限定はないが、太陽電池モジュールの最表層に位置するため、上述の透明基板1と同様に、耐候性、機械強度等の諸特性を有することが好ましい。したがって、透明基板1と同様の材質でバックシートを構成してもよい。すなわち、透明基板1において用いることができる上述の各種材料を、バックシートにおいても用いることができる。特に、ポリエステル樹脂、及びガラス基板を好ましく用いることができ、中でも、耐候性、コストの観点から、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)がより好ましい。
バックシート2は、太陽光の通過を前提としないため、透明基板1で求められる透明性(透光性)は必ずしも要求されない。そこで、図示はしないが、太陽電池モジュール10の機械的強度を増す目的や、温度変化による歪や反りを防止する目的で、補強板を張り付けてもよい。例えば鋼板、プラスチック板、FRP(ガラス繊維強化プラスチック)板等を好ましく使用することができる。
バックシート2は、2層以上からなる多層構造を有していてもよい。多層構造としては、例えば中央層の両面に、中央層に対して対称の配置となるように同一成分の層が1又は2以上積層された構造等が挙げられる。そのような構造を有するものとしては、例えばPET/アルミナ蒸着PET/PET、PVF(商品名:テドラー)/PET/PVF、PET/AL箔/PET等が挙げられる。
発電素子3は、半導体の光起電力効果を利用して発電できるものであれば特に限定されず、例えばシリコン(単結晶系、多結晶系、非結晶(アモルファス)系)、化合物半導体(3−5族、2−6族、その他)等を用いることができ、中でも、発電性能とコストとのバランスの観点から、多結晶シリコンが好ましい。
封止材4は、発電素子3を封止可能な部材であればよく、その種類は特に限定されず、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の樹脂を含む樹脂封止シート等が挙げられる。このような樹脂封止シートを熱溶融させることで封止対象である発電素子3等に密着し、封止することができる。かかる封止材を用いることで発電素子のクリープを防止できるとともに、透明基板1やバックシート2に対して優れた接着性を発揮することができる。
外枠7は、モジュール本体5の周縁部を覆うように配置されており、太陽電池モジュール10を住宅の屋根などに設置する際に利用される。外枠7の材質は特に限定されず、アルミニウム、ステンレス及び樹脂材料などを採用できるが、強度や軽量性の観点からアルミニウムが好ましい。特に、黒色や茶色などの濃色のアルミニウム製外枠は、高級感があるため住宅用の太陽電池モジュールに好まれて使用されている。
太陽電池モジュール10の各部材の厚さは特に限定されないが、透明基板1の厚さは耐候性、耐衝撃性の観点から3mm以上が好ましく、機能性膜1aの厚さは透明性及び機能性(例えば、反射防止機能、防汚機能、帯電防止機能)の観点から0.1〜1μmが好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。バックシート2の厚さは、絶縁性の観点から75μm以上が好ましい。発電素子3の厚さは、発電性能とコストのバランスの観点から140μm〜250μmが好ましい。封止材4の全体の厚さは、クッション性及び封止性の観点から250μm以上が好ましい。
太陽電池モジュール10は、後述のコーティング方法によって透明基板1の表面に機能性膜1aを製膜するプロセス以外は公知の手法によって製造することができる。例えば透明基板1/封止材4/発電素子3/封止材4/バックシート2の順に重ね、真空ラミネート装置を用いて150℃、15分間の条件で真空ラミネートしてモジュール本体5を作製する。このモジュール本体5の周縁部に外枠7を取り付けた後、透明基板1の表面に機能性膜1aを製膜することによって太陽電池モジュール10が完成する。
<コーティング方法>
本実施形態に係るコーティング方法は、モジュール本体5に外枠7を取り付けた状態の太陽電池モジュール10Aを対象とするものであり(図2参照)、太陽電池モジュール10Aの外枠7から離隔した上方の位置にマスキング材20を配置するマスキング工程と、マスキング材20を配置した状態においてマスキング材20よりも上方の位置から下方に向けてコーティング剤を噴射して透明基板1の表面に機能性膜1aを製膜するコーティング工程と、コーティング工程後、外枠7の上方の位置からマスキング材を取り除くマスキング除去工程とを備える。
コーティング方法の説明に先立ち、コーティング剤について詳細に説明する。従来公知の反射防止用コーティング剤、親水性コーティング剤などが使用できる。外枠7が装着された太陽電池モジュール10Aに塗装することを勘案し、有機溶媒の含有量が少なく、100℃以下の温度で乾燥、硬化可能な低温硬化タイプのコーティング剤であることが好ましい。
なお、本発明において親水性とは、好ましくは20℃での水の接触角が60°以下である場合を言うが、特に水の接触角が30°以下の親水性を有する表面は、降雨等の水による自己浄化能(セルフクリーニング)による耐汚染性を発現するので好ましい。さらに優れた耐汚染性発現や防曇性発現の点からは表面の水の接触角は20°以下であることが好ましく、更に好ましくは10°以下であり、よりさらに好ましくは5°以下である。
低温硬化タイプのコーティング剤としては、国際公開2007/069596号に記載のコーティング剤が好ましい。当該コーティング剤は、粒子径が1〜400nmの金属酸化物(A)と、水及び乳化剤の存在下に加水分解性珪素化合物(b1)及び、2級アミド基及び3級アミド基の少なくとも一方を有するビニル単量体(b2)を重合して得られる粒子径が10〜800nmである重合体エマルジョン粒子(B)を含むものである。
上記コーティング剤において、金属酸化物(A)は、重合体エマルジョン粒子(B)と相互作用することにより重合体エマルジョン粒子(B)の硬化剤として働く。このことにより、上記コーティング剤からは、耐候性、耐薬品性、光学特性、更には防汚性、防曇性、帯電防止性等に優れた有機・無機複合体を形成することが可能となる。
ここで、上記金属酸化物(A)と重合体エマルジョン粒子(B)との相互作用としては、例えば金属酸化物(A)が有する水酸基と重合体エマルジョン粒子(B)が有する2級及び/又は3級アミド基との水素結合や、金属酸化物(A)が有する水酸基と重合体エマルジョン粒子(B)を構成する加水分解性金属化合物(b1)の重合生成物との縮合(化学結合)等を例示することができる。
上記金属酸化物(A)としては、例えば二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化鉛、酸化鉄、珪酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化セリウム及びそれらの複合酸化物等を例示することができる。それらの中でも、表面水酸基の多い二酸化珪素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化アンチモン及びそれらの複合酸化物等が好ましい。
また、本実施形態において、上記金属酸化物(A)として光触媒を選択すると、上記コーティング剤から形成される有機・無機複合体は光照射により光触媒活性及び/又は親水性を発現するため非常に好ましい。
ここで、光触媒とは、光照射によって酸化、還元反応を起こす物質のことを言う。すなわち伝導帯と価電子帯との間のエネルギーギャップよりも大きなエネルギー(すなわち短い波長)の光(励起光)を照射したときに、価電子帯中の電子の励起(光励起)が生じて、伝導電子と正孔を生成しうる物質であり、このとき、伝導帯に生成した電子の還元力及び/又は価電子帯に生成した正孔の酸化力を利用して、種々の化学反応を行うことができる。
また、光触媒活性とは、光照射によって酸化、還元反応を起こすことを言う。これらの光触媒活性は、例えば材料表面の光照射時における色素等の有機物の分解性を測定することにより判定することができる。光触媒活性を有する表面は、優れた汚染有機物質の分解活性や耐汚染性を発現する。
上記金属酸化物(A)として有用に使用できる光触媒としては、バンドギャップエネルギーが好ましくは1.2〜5.0eV、更に好ましくは1.5〜4.1eVの半導体化合物を挙げることができる。バンドギャップエネルギーは、光照射による酸化、還元反応を十分に起こすという観点から、1.2eV以上が好ましく、正孔と電子を生成させるのに必要な光のエネルギー量の観点から5.0eV以下が好ましい。
上記光触媒の例としては、例えば、TiO、ZnO、SrTiO、BaTiO、BaTiO、BaTi、KNbO、Nb、Fe、Ta、KTaSi、WO、SnO、Bi、BiVO、NiO、CuO、RuO、CeO等、さらにはTi、Nb、Ta、Vから選ばれた少なくとも1種の元素を有する層状酸化物(例えば特開昭62−74452号公報、特開平2−172535号公報、特開平7−24329号公報、特開平8−89799号公報、特開平8−89800号公報、特開平8−89804号公報、特開平8−198061号公報、特開平9−248465号公報、特開平10−99694号公報、特開平10−244165号公報等参照)を挙げることができる。
これらの光触媒の中でTiO(酸化チタン)は無害であり、化学的安定性にも優れるため好ましい。酸化チタンとしては、アナターゼ、ルチル、ブルッカイトのいずれも使用できる。
また、上記金属酸化物(A)に使用する光触媒として、可視光(例えば約400〜800nmの波長)の照射により光触媒活性及び/又は親水性を発現することができる可視光応答型光触媒を選択すると、光触媒組成物で処理された光触媒部材は、室内等の紫外線が十分に照射されない場所等における環境浄化効果や防汚効果が非常に大きなものとなるため好ましい。これらの可視光応答型光触媒のバンドギャップエネルギーは、好ましくは1.2〜3.1eV、より好ましくは1.5〜2.9eV、更に好ましくは1.5〜2.8eVである。
更に、上述した光触媒は、好適にPt、Rh、Ru、Nb、Cu、Sn、Ni、Feなどの金属及び/又はこれらの酸化物を添加又は固定化したり、シリカや多孔質リン酸カルシウム等で被覆したり(例えば特開平10−244166号公報参照)して使用することもできる。
光触媒はその粒子の形状については、光触媒粒子に比表面積の観点及び粒子の配向効果の観点から、粒子長(l)と粒子直径(d)の比(l/d)が、1/1から20/1の範囲にあることが好ましい。より好ましい(l/d)は1/1から15/1の範囲であり、さらに好ましい(l/d)は1/1から10/1の範囲である。
また、本実施形態において、上記金属酸化物(A)として導電性を有する金属酸化物を選択すると、上記コーティング剤から形成される有機・無機複合体は、導電性能、帯電防止性能、電磁波遮断性能、面発熱性能を発現するため非常に好ましい。金属酸化物(A)として有用に使用できる導電性を有する金属酸化物としては、例えば錫をドープした酸化インジウム(ITO)、アンチモンをドープした酸化錫(ATO)、酸化スズ、酸化亜鉛等を挙げることができる。
上記コーティング剤において、透明性、強度、耐候性等に優れた有機・無機複合体を形成するために、金属酸化物(A)の粒子径は好ましくは1〜400nmであり、より好ましくは、1〜100nm、更に好ましくは5〜50nmである。
上記金属酸化物(A)の形態としては、粉体、分散液、ゾルのいずれでも用いることができる。ここで、本実施形態において用いる金属酸化物(A)ゾル及び金属酸化物(A)分散液とは、光触媒粒子が水及び/又は親水性有機溶媒中に好ましくは0.01〜80質量%、より好ましくは0.1〜50質量%で、一次粒子及び/又は二次粒子として分散されたものである。
ここで、上記金属酸化物(A)ゾル又は金属酸化物(A)分散液に使用される上記親水性有機溶媒としては、例えばエチレングリコール、ブチルセロソルブ、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エタノール、メタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド、ニトロベンゼン等、さらにはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
本実施形態においては、用いる金属酸化物(A)の形態が、有機・無機複合体の光学特性等の機能発現にとって重要な因子となる。本実施形態に好適に使用される金属酸化物(A)としては、1次粒子と2次粒子との混合物(1次粒子、2次粒子何れかのみでもよい)の数平均分散粒子径が1〜400nmの金属酸化物(A)ゾル又は金属酸化物(A)分散液が望ましい。特に数平均分散粒子径が1〜100nmの金属酸化物(A)ゾル又は金属酸化物(A)分散液を使用した場合、上記コーティング剤からは透明性に優れた有機・無機複合体を得ることができるため非常に好ましい。より好ましくは数平均分散粒子径が3〜80nm、さらに好ましくは5〜50nmの金属酸化物(A)ゾル又は金属酸化物(A)分散液が好適に選択される。
本実施形態において、式(1)で表されるトリオルガノシラン単位、式(2)で表されるモノオキシジオルガノシラン単位、式(3)で表されるジオキシオルガノシラン単位、式(4)で表されるトリオキシシラン単位、及びジフルオロメチレン単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位を有する化合物類からなる群から選ばれる少なくとも1種の変性剤化合物で上記金属酸化物(A)を変性処理することにより、溶媒に対する分散安定性、化学的安定性、耐久性等において非常に優れた変性金属酸化物(A’)が得られる。
Si− (1)
(式中、Rは各々独立に直鎖状又は分岐状の炭素数1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜30個のフルオロアルキル基、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基、フェニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、又は水酸基を表す。)
−(RSiO)− (2)
(式中、Rは式(1)で定義した通りである。)
Figure 2012256640

(式中、Rは式(1)で定義した通りである。)
Figure 2012256640

また、上記変性剤化合物として表面エネルギーの小さい化合物(例えば、上記式(1)〜(4)におけるR基が、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜30個のアルキル基、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜30個のフルオロアルキル基、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基から選ばれる少なくとも1種である化合物、及び/又はジフルオロメチレン単位を有する化合物)を選択すると、得られる変性金属酸化物(A’)の表面エネルギーが小さくなり、自己傾斜機能を有することが可能となる。
ここで、自己傾斜性とは、該変性金属酸化物(A’)と重合体エマルジョン粒子(B)及び金属酸化物(A)を含む上記コーティング剤から後述する有機・無機複合体を基材上に形成して機能性複合体を製造する際、その形成過程において変性金属酸化物(A’)が、有機・無機複合体が接する界面の性状(特に親水/疎水性)に対応して、変性金属酸化物(A’)の濃度勾配を有する構造を自律的に形成することを意味する。
本実施形態において、金属酸化物(A)として上記光触媒を選択した場合、表面エネルギーの小さい構造を有する上述した変性剤化合物で変性処理された変性光触媒(D)を含有する上記コーティング剤からは、該変性光触媒(D)が空気と接する有機・無機複合体表面に多く存在し、基材と有機・無機複合体の界面での該変性光触媒(D)の存在量が少なくなるため、高い光触媒活性を示し、かつ基材を分解しない、優れた光触媒機能を有する機能性複合体を得ることができるので非常に好ましい。
また、本実施形態において、変性処理とは、上記変性剤化合物を金属酸化物(A)の表面に固定化することを意味する。上記の変性剤化合物の金属酸化物(A)表面への固定化は、ファン・デル・ワールス力(物理吸着)又は化学結合によるものと考えられる。特に、化学結合を利用した変性は、変性剤化合物と金属酸化物(A)との相互作用が強く、変性剤化合物が金属酸化物(A)粒子の表面に強固に固定化されるので好ましい。
本実施形態において、金属酸化物(A)の変性剤化合物(b)による変性処理は、水及び/又は有機溶媒の存在、あるいは非存在下において、前述した金属酸化物(A)と、同じく前述した変性剤化合物(b)を好ましくは質量比(A)/(b)=1/99〜99.99/0.01、より好ましくは(A)/(b)=10/90〜99.5/0.5の割合で混合し、好ましくは0〜200℃、より好ましくは10〜80℃にて加熱したり、(減圧)蒸留等により該混合物の溶媒組成を変化させる等の操作をすることにより得ることができる。
ここで上記変性処理を行う場合、使用し得る有機溶媒としては、例えばトルエンやキシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類、エチレングリコール、ブチルセロソルブ、イソプロパノール、n−ブタノール、エタノール、メタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素等のハロゲン化合物類、ジメチルスルホキシド、ニトロベンゼン等やこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
本実施形態の金属酸化物(A)を変性処理するのに好適に使用される上記変性剤化合物としては、例えばSi−H基、加水分解性シリル基(アルコキシシリル基、ヒドロキシシリル基、ハロゲン化シリル基、アセトキシシリル基、アミノキシシリル基等)、エポキシ基、アセトアセチル基、チオール基、酸無水物基等の光触媒粒子(a)と反応性を有する、ケイ素化合物、フルオロアルキル化合物、フルオロオレフィン重合体等を挙げることができる。これらの化合物は金属酸化物(A)と化学結合することが可能であり、金属酸化物(A)の表面に強固に固定化されるのでより好ましい。
上記変性剤化合物の中でフルオロアルキル化合物の具体例を示すと、式(5)で表されることができる化合物を挙げることができる。
CF(CF)g−Y−(V)w (5)
(式中、gは0〜29の整数を表す。Yは分子量14〜50000のw価の有機基を表す。wは1〜20の整数である。Vは、エポキシ基、水酸基、アセトアセチル基、チオール基、環状酸無水物基、カルボキシル基、スルホン酸基、ポリオキシアルキレン基、リン酸基、及び下式(6)で表される基からなる群から選ばれた少なくとも1つの官能基を表す。
−SiWxRy(6)
(式中、Wは炭素数1〜20のアルコキシ基、水酸基、炭素数1〜20のアセトキシ基、ハロゲン原子、水素原子、炭素数1〜20のオキシム基、エノキシ基、アミノキシ基、アミド基から選ばれた少なくとも1種の基を表す。Rは、直鎖状又は分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、及び置換されていないか、或いは炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のアルコキシ基、又はハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基から選ばれる少なくとも1種の炭化水素基を表す。xは1以上3以下の整数であり、yは0以上2以下の整数である。また、x+y=3である。))
上記コーティング剤に用いる重合体エマルジョン粒子(B)は、水及び乳化剤の存在下に、加水分解性珪素金属化合物(b1)及び2級アミド基及び3級アミド基の少なくとも一方を有するビニル単量体(b2)を重合することにより得ることができる。
この際、加水分解性珪素化合物(b1)の配合量は、重合安定性の観点から、重合体エマルジョン粒子(B)100質量部に対して好ましくは0.01/100〜80/100、より好ましくは0.1/100〜70/100、さらには0.2/100〜40/100である。加水分解性珪素化合物(b1)に対する2級アミド基及び3級アミド基の少なくとも一方を有するビニル単量体(b2)の質量比(b2)/(b1)は、5/95〜95/5、好ましくは10/90〜90/10である。
このようにして得られる重合体エマルジョン粒子(B)は、加水分解性珪素化合物(b1)の重合生成物が有する水酸基と、2級アミド基及び3級アミド基の少なくとも一方を有するビニル単量体(b2)の重合生成物とが、水素結合により複合化されたものとなる。
本実施形態の重合体エマルジョン粒子(B)を製造するのに用いる上記加水分解性珪素化合物(b1)としては、下記式(5)で表される化合物やその縮合生成物、シランカップリング剤を例示することができる。
SiWxRy (5)
(式中、Wは炭素数1〜20のアルコキシ基、水酸基、炭素数1〜20のアセトキシ基、ハロゲン原子、水素原子、炭素数1〜20のオキシム基、エノキシ基、アミノキシ基、アミド基から選ばれた少なくとも1種の基を表す。Rは、直鎖状又は分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、及び置換されていないか又は炭素数1〜20のアルキル基若しくは炭素数1〜20のアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基から選ばれる少なくとも1種の炭化水素基を表す。xは1以上4以下の整数であり、yは0以上3以下の整数である。また、x+y=4である。)
ここでシランカップリング剤とは、ビニル重合性基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基、イソシアネート基等の有機物と反応性を有する官能基が分子内に存在する、加水分解性珪素化合物(b1)を表す。
上記珪素アルコキシド及びシランカップリング剤の具体例としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリn−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等のジアルコキシシラン類;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のモノアルコキシシラン類等を挙げることができる。また、これらの珪素アルコキシドやシランカップリング剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
上記珪素アルコキシドやシランカップリング剤が縮合生成物として使用されるとき、該縮合生成物のポリスチレン換算重量平均分子量は、好ましくは200〜5000、さらに好ましくは300〜1000である。
上記珪素アルコキシドの中では、フェニル基を有する珪素アルコキシド、例えばフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等が、水及び乳化剤の存在下における重合安定性に優れるため非常に好ましい。
本実施形態において用いることができる加水分解性珪素化合物(b1)の中で、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリn−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、2−トリメトキシシリルエチルビニルエーテル等のビニル重合性基を有するシランカップリング剤や、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のチオール基を有するシランカップリング剤は、上述した2級アミド基及び3級アミド基の少なくとも一方を有するビニル単量体(b2)との共重合又は連鎖移動反応により化学結合を生成することが可能である。このため、ビニル重合性基やチオール基を有するシランカップリング剤を、単独で又は上述した珪素アルコキシド、シランカップリング剤、及びそれらの縮合生成物と混合若しくは複合化させて用いた場合、本実施形態の重合体エマルジョン粒子(B)を構成する加水分解性珪素化合物(b1)の重合生成物と2級アミド基及び3級アミド基の少なくとも一方を有するビニル単量体(b2)の重合生成物は、水素結合に加えて化学結合により複合化できる。この様な重合体エマルジョン粒子(B)を含有する上記コーティング剤は、耐候性、耐薬品性、光学特性、強度等に優れた有機・無機複合体を形成することができるため、非常に好ましい。
本実施形態において、加水分解性珪素化合物(b1)としてビニル重合性基を有するシランカップリング剤を用いることが耐候性の面から特に好ましく、その配合量は重合体エマルジョン粒子(B)100質量部に対して0.01以上20質量部以下であることが重合安定性の面から好ましい。さらに好ましくは、0.1以上10質量部以下である。
また、ビニル重合性基を有するシランカップリング剤の配合量は、重合安定性の面から、2級アミド基及び3級アミド基の少なくとも一方を有するビニル単量体(b2)100質量部に対して好ましくは0.1以上100質量部以下であり、より好ましくは0.5以上50質量部以下である。
本実施形態においては、上述した加水分解性珪素化合物(b1)に環状シロキサンオリゴマーを併用して用いる事が可能である。環状シロキサンオリゴマーの併用により、上記コーティング剤からは、柔軟性等に優れた有機・無機複合体を形成することができる。
上記環状シロキサンオリゴマーとしては、下記式(6)で表される化合物を例示することができる。
(R’SiO)m (6)
(式中、R’は、水素原子、直鎖状又は分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、及び置換されていないか又は炭素数1〜20のアルキル基若しくは炭素数1〜20のアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基から選ばれる少なくとも1種を表す。mは整数であり、2≦m≦20である。)
上記環状シロキサンオリゴマーの中で、反応性等の点からオクタメチルシクロテトラシロキサン等の環状ジメチルシロキサンオリゴマーが好ましい。
また、本実施形態において、上述した加水分解性珪素化合物(b1)にチタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、及びそれらの縮合生成物、又は、それらのキレート化物を併用して用いることもできる。これらの化合物の併用により、上記コーティング剤からは、耐水性、硬度等に優れた有機・無機複合体を形成することができる。
上記チタンアルコキシドの具体例としては、例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラ−tert−ブトキシチタン等が挙げられる。
上記チタンアルコキシドが縮合生成物として使用されるとき、該縮合生成物のポリスチレン換算重量平均分子量は、好ましくは200〜5000、さらに好ましくは300〜1000である。
また、上記ジルコニウムアルコキシドの具体例としては、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−sec−ブトキシジルコニウム、テトラ−tert−ブトキシジルコニウム等が挙げられる。
上記ジルコニウムアルコキシドが縮合生成物として使用されるとき、該縮合生成物のポリスチレン換算重量平均分子量は、好ましくは200〜5000、さらに好ましくは300〜1000である。
また、遊離の金属化合物に配位させてキレート化物を形成するのに好ましいキレート化剤としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;アセチルアセトン;アセト酢酸エチルなどであって分子量1万以下のものを例示することができる。これらのキレート化剤を用いることにより、加水分解性金属化合物(b1)の重合速度を制御することができ、水及び乳化剤の存在下における重合安定性を優れたものにするため非常に好ましい。この際、キレート化剤は、これを配位させる遊離の金属化合物の金属原子1モル当たり、0.1モル〜2モルの割合で用いると効果が大きく好ましい。
本実施形態の重合体エマルジョン粒子(B)を製造するのに用いる2級アミド基及び3級アミド基の少なくとも一方を有するビニル単量体(b2)としては、N-アルキル又はN-アルキレン置換(メタ)アクリルアミドを例示することができ、具体的には、例えばN-メチルアクリルアミド、N-メチルメタアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-エチルメタアクリルアミド、N-メチル-N-エチルアクリルアミド、N-メチル-N-エチルメタアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-n-プロピルアクリルアミド、N-イソプロピルメタアクリルアミド、N-n-プロピルメタアクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N-アクリロイルピロリジン、N-メタクリロイルピロリジン、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-アクリロイルヘキサヒドロアゼピン、N-アクリロイルモルホリン、N-メタクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N,N’-メチレンビスメタクリルアミド、N-ビニルアセトアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタアクリルアミド等を挙げることができる。
本実施形態の重合体エマルジョン粒子(B)を製造するのに2級アミド基及び3級アミド基の少なくとも一方を有するビニル単量体(b2)を用いるが、中でも3級アミド基を有するビニル単量体を用いると水素結合性が強まり好ましい。
上記2級アミド基及び3級アミド基の少なくとも一方を有するビニル単量体(b2)の中で、特にN,N-ジエチルアクリルアミドは、水及び乳化剤の存在下における重合安定性に非常に優れるとともに、上述した加水分解性珪素化合物(b1)の重合生成物の水酸基や金属酸化物(A)の水酸基と強固な水素結合を形成することが可能であるため、非常に好ましい。
上記2級アミド基及び3級アミド基の少なくとも一方を有するビニル単量体(b2)の使用量は、得られる重合体エマルジョン粒子(B)に対する質量比(b2)/(B)として0.1以上0.5以下であることが好ましく、また上述した金属酸化物(A)に対する質量比(b2)/(A)が0.1以上1.0以下であることが好ましい。この範囲で(b2)が存在した場合、水素結合力と、金属酸化物(A)との配合安定性が両立して好ましい。
また、本実施形態において、上記2級アミド基及び3級アミド基の少なくとも一方を有するビニル単量体(b2)の重合を、これと共重合可能な他のビニル単量体(b3)と共に行うと、生成する重合生成物の特性(ガラス転移温度、分子量、水素結合力、極性、分散安定性、耐候性、加水分解性珪素化合物(b1)の重合生成物との相溶性等)を制御することが可能となり好ましい。
該ビニル単量体(b3)としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル類の他、カルボキシル基含有ビニル単量体、水酸基含有ビニル系単量体、グリシジル基含有ビニル単量体、カルボニル基含有ビニル単量体、アニオン型ビニル単量体のような官能基を含有する単量体等を挙げることができる。
上記(メタ)アクリル酸エステルの例としては、アルキル部の炭素数が1〜50の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、エチレンオキシド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレートの具体例としては、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。
なお、本明細書中で、(メタ)アクリルとはメタアクリル又はアクリルを簡便に表記したものである。
(メタ)アクリル酸エステルの使用量は、1種又は2種以上の混合物として、全ビニル単量体中において好ましくは0〜99.9質量%、より好ましくは5〜80質量%である。ここで、全ビニル単量体とは、2級アミド基及び3級アミド基の少なくとも一方を有するビニル単量体(b2)とこれと共重合可能な他のビニル単量体(b3)の総量である。
上記カルボキシル基含有ビニル単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、無水マレイン酸、又はイタコン酸、マレイン酸、フマール酸などの2塩基酸のハーフエステル等である。カルボン酸基含有のビニル単量体を用いることによって、重合体エマルジョン粒子(B)にカルボキシル基を導入することができ、エマルジョンとしての安定性を向上させ、外部からの分散破壊作用に抵抗力を持たせることが可能となる。この際、導入したカルボキシル基は、一部又は全部を、アンモニアやトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミン類やNaOH、KOH等の塩基で中和することもできる。
カルボキシル基含有ビニル単量体の使用量は、1種又は2種以上の混合物として、全ビニル単量体中において0〜50質量%である事が耐水性の面から好ましい。より好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜5質量%である。
また、上記水酸基含有ビニル単量体としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピリ(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピリ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルや、ジ−2−ヒドロキシエチルフマレート、モノ−2−ヒドロキシエチルモノブチルフマレート、アリルアルコールやエチレンオキシド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート、さらには、「プラクセルFM、FAモノマー」(ダイセル化学(株)製の、カプロラクトン付加モノマーの商品名)や、その他のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類などを挙げることができる。上記(ポリ)オキシエチレン(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。また、(ポリ)オキシプロピレン(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール等が挙げられる。水酸基含有ビニル単量体を用いることによって、2級アミド基及び3級アミド基の少なくとも一方を有するビニル単量体(b2)との重合生成物の水素結合力を制御することが可能となるとともに、重合体エマルジョン粒子(B)の水分散安定性を向上させることが可能となる。
上述した水酸基含有ビニル単量体の使用量は、1種又は2種以上の混合物として、全ビニル単量体中において好ましくは0〜80質量%、より好ましくは0.1〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%である。
また、上記グリシジル基含有ビニル単量体としては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルジメチルグリシジルエーテル等を挙げることができる。
グリシジル基含有ビニル単量体や、カルボニル基含有ビニル単量体を使用すると、重合体エマルジョン粒子(B)が反応性を有し、ヒドラジン誘導体やカルボン酸誘導体、イソシアネート誘導体等により架橋させて耐溶剤性等の優れた有機・無機複合体の形成が可能となる。グリシジル基含有ビニル単量体や、カルボニル基含有ビニル単量体の使用量は、全ビニル単量体中において好ましくは0〜50質量%である。
また、上記以外のビニル単量体(b3)の具体例としては、例えば(メタ)アクリルアミド、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、ブタジエン等のジエン類、塩化ビニル、塩化ビニリデンフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン等のハロオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n−酪酸ビニル、安息香酸ビニル、p−t−ブチル安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類、酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル等のカルボン酸イソプロペニルエステル類、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類、スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物、酢酸アリル、安息香酸アリル等のアリルエステル類、アリルエチルエーテル、アリルフェニルエーテル等のアリルエーテル類、さらに4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6,−ペンタメチルピペリジン、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピロメチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アリル等やそれらの併用が挙げられる。これらのビニル単量体の使用量は、1種又は2種以上の混合物として、全ビニル単量体中において好ましくは0.001〜30質量%であり、より好ましくは0.05〜10質量%であり、更に好ましくは0.1〜5質量%である。
本実施形態においては、2級アミド基及び3級アミド基の少なくとも一方を有するビニル単量体(b2)(必要に応じてこれと共重合可能な上記ビニル単量体(b3)を用いてもよい)の重合生成物の分子量を制御する目的で、連鎖移動剤を使用してもよい。
かかる連鎖移動剤の一例としては、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンのようなアルキルメルカプタン類;ベンジルメルカプタン、ドデシルベンジルメルカプタンのような芳香族メルカプタン類;チオリンゴ酸のようなチオカルボン酸又はそれらの塩若しくはそれらのアルキルエステル類、又はポリチオール類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジ(メチレントリメチロールプロパン)キサントゲンジスルフィド及びチオグリコール、さらにはα−メチルスチレンのダイマー等のアリル化合物等を挙げることができる。
これら連鎖移動剤の使用量は、全ビニル単量体に対して好ましくは0.001〜30質量%、さらに好ましくは0.05〜10質量%の範囲で用いることができる。
本実施形態において、重合体エマルジョン粒子(B)の合成に用いることができる乳化剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸等の酸性乳化剤、酸性乳化剤のアルカリ金属(Li、Na、K等)塩、酸性乳化剤のアンモニウム塩、脂肪酸石鹸等のアニオン性界面活性剤や、例えばアルキルトリメチルアンモニウムブロミド、アルキルピリジニウムブロミド、イミダゾリニウムラウレート等の四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩型のカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル等のノニオン型界面活性剤やラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤等を例示することができる。
これらの乳化剤の中で、ラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤を選択すると、本実施形態の重合体エマルジョン粒子(B)の水分散安定性が非常に良好になると共に、該重合体エマルジョン粒子(B)を含有する上記コーティング剤からは、耐水性、耐薬品性、光学特性、強度等に優れた有機・無機複合体を形成することができるため、非常に好ましい。
上記ラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤としては、例えばスルホン酸基又はスルホネート基を有するビニル単量体、硫酸エステル基を有するビニル単量体やそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、ポリオキシエチレン等のノニオン基を有するビニル単量体、4級アンモニウム塩を有するビニル単量体等を挙げることができる。
上記反応性乳化剤の具体例として、スルホン酸基又はスルホネート基を有するビニル単量体の塩を例にとると、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつスルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基、炭素数6又は10のアリール基及びコハク酸基からなる群から選ばれる置換基を有する化合物であるか、スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基が結合しているビニル基を有するビニルスルホネート化合物である。硫酸エステル基を有するビニル単量体は、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつ硫酸エステル基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基及び炭素数6又は10のアリール基からなる群から選ばれる置換基を有する化合物である。
上記スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換されたコハク酸基を有する化合物の具体例としては、アリルスルホコハク酸塩が挙げられる。これらの具体例として、例えば、エレミノールJS−2(商品名)(三洋化成(株)製)、ラテムルS−120、S−180A又はS−180(商品名)(花王(株)製)等を挙げることができる。
また、上記スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数2〜4のアルキルエーテル基又は炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基を有する化合物の具体例として、例えばアクアロンHS−10又はKH−1025(商品名)(第一工業製薬(株)製)、アデカリアソープSE−1025N又はSR−1025(商品名)(旭電化工業(株)製)等を挙げることができる。
その他、スルホネート基により一部が置換されたアリール基を有する化合物の具体例として、p−スチレンスルホン酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩等が挙げられる。
上記スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基が結合しているビニル基を有するビニルスルホネート化合物として例えば、2−スルホエチルアクリレート等のアルキルスルホン酸(メタ)アクリレートやメチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、アリルスルホン酸等のアンモニウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩が挙げられる。
また、上記の硫酸エステル基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩により一部が置換された炭素数2〜4のアルキルエーテル基又は炭素数2〜4のポリアルキエーテル基を有する化合物としては、例えばスルホネート基により一部が置換されたアルキルエーテル基を有する化合物等がある。
また、ノニオン基を有するビニル単量体の具体例としては、α−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン(商品名:アデカリアソープNE−20、NE−30、NE−40等、旭電化工業(株)製)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル(商品名:アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50等、第一製薬工業(株)製)等を挙げることができる。
上記乳化剤の使用量としては、重合体エマルジョン粒子(B)100質量部に対して、10質量部以下となる範囲内が適切であり、なかでも、0.001〜5質量部となる範囲内が好ましい。
また、上記乳化剤以外に、本実施形態の重合体エマルジョン粒子(B)の水分散安定性を向上させる目的で分散安定剤を使用することもできる。該分散安定剤としては、ポリカルボン酸及びスルホン酸塩からなる群から選ばれる各種の水溶性オリゴマー類や、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、澱粉、マレイン化ポリブタジエン、マレイン化アルキッド樹脂、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリルアミド、水溶性又は水分散性アクリル樹脂などの合成又は天然の水溶性又は水分散性の各種の水溶性高分子物質が挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合物を使用することができる。
これらの分散安定剤を使用する場合、その使用量としては、重合体エマルジョン粒子(B)100質量部に対して、10質量部以下となる範囲内が適切であり、なかでも、0.001〜5質量部となる範囲内が好ましい。
本実施形態において、加水分解性珪素化合物(b1)及び2級アミド基及び3級アミド基の少なくとも一方を有するビニル単量体(b2)の重合は、重合触媒存在下で実施するのが好ましい。
ここで、加水分解性珪素化合物(b1)の重合触媒としては、塩酸、フッ酸等のハロゲン化水素類、酢酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸等のカルボン酸類、硫酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸等の酸性乳化剤類、酸性又は弱酸性の無機塩、フタル酸、リン酸、硝酸のような酸性化合物類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、酢酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エタノールアミン類、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシランのような塩基性化合物類;ジブチル錫オクチレート、ジブチル錫ジラウレートのような錫化合物等を挙げることができる。
これらの中で、加水分解性珪素化合物(b1)の重合触媒としては、重合触媒のみならず乳化剤としての作用を有する酸性乳化剤類、特に炭素数が5〜30のアルキルベンゼンスルホン酸(ドデシルベンゼンスルホン酸等)が非常に好ましい。
一方、2級アミド基及び3級アミド基の少なくとも一方を有するビニル単量体(b2)の重合触媒としては、熱又は還元性物質などによってラジカル分解してビニル単量体の付加重合を起こさせるラジカル重合触媒が好適であり、水溶性又は油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物等が使用される。その例としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ヒドロクロリド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等があり、その量としては全ビニル単量体100質量部に対して、0.001〜5質量部の配合が好ましい。なお、重合速度の促進、及び70℃以下での低温の重合を望むときには、例えば重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸塩、ロンガリット等の還元剤をラジカル重合触媒と組み合わせて用いると有利である。
上述したように、上記コーティング剤に用いる重合体エマルジョン粒子(B)は、水及び乳化剤の存在下に加水分解性珪素化合物(b1)及び2級アミド基及び3級アミド基の少なくとも一方を有するビニル単量体(b2)(必要に応じてこれと共重合可能な他のビニル単量体(b3)を用いてもよい)を、好ましくは重合触媒存在下で重合することにより得ることができる。
ここで、加水分解性珪素化合物(b1)及び2級アミド基及び3級アミド基の少なくとも一方を有するビニル単量体(b2)の重合は、別々に実施することも可能であるが、同時に実施することにより水素結合等によるミクロな有機・無機複合化が達成できるので好ましい。
また、本実施形態において、重合体エマルジョン粒子(B)の粒子径が10〜800nmであることが好ましい。この様な粒子径の範囲に調整し、粒子径が1〜400nmの金属酸化物(A)と組み合わせてコーティング剤とすることにより、耐候性、耐薬品性、光学特性、更には防汚性、防曇性、帯電防止性等に優れた有機・無機複合体を容易に形成することが可能となる。また、重合体エマルジョン粒子(B)の粒子径は50〜300nmであると、得られる塗膜の透明性が向上しより好ましい。
このような粒子径の重合体エマルジョン粒子(B)を得る方法として、乳化剤がミセルを形成するのに十分な量の水の存在下に加水分解性金属化合物(b1)及び2級アミド基及び3級アミド基の少なくとも一方を有するビニル単量体(b2)を重合する、いわゆる乳化重合が最も適した方法である。
乳化重合のやり方としては、例えば、加水分解性珪素化合物(b1)及び2級アミド基及び3級アミド基の少なくとも一方を有するビニル単量体(b2)(必要に応じてこれと共重合可能な他のビニル単量体(b3))は、そのまま、又は乳化した状態で、一括若しくは分割で、又は連続的に反応容器中に滴下し、前記重合触媒の存在下、好ましくは大気圧から必要により10MPaの圧力下で、約30〜150℃の反応温度で重合させればよい。場合によっては、これ以上の圧力で、又はこれ以下の温度条件で重合を行っても差し支えない。加水分解性珪素化合物(b1)及び全ビニル単量体量の総量と水との比率は最終固形分量が0.1〜70質量%、好ましくは1〜55質量%の範囲になるように設定するのが好ましい。また、乳化重合をするにあたり粒子径を成長又は制御させるために、予め水相中にエマルジョン粒子を存在させて重合させるシード重合法によってもよい。重合反応は、系中のpHが好ましくは1.0〜10.0、より好ましくは1.0〜6.0の範囲で進行させればよい。pHは、燐酸二ナトリウムやボラックス、又は、炭酸水素ナトリウム、アンモニアなどのpH緩衝剤を用いて調節することが可能である。
また、本実施形態の重合体エマルジョン粒子(B)を得る方法として、加水分解性珪素化合物(b1)を重合させるのに必要な水及び乳化剤の存在下に、加水分解性金属化合物(b1)及び2級アミド基及び3級アミド基の少なくとも一方を有するビニル単量体(b2)を、必要により溶剤存在下で重合した後、重合生成物がエマルジョンとなるまで水を添加する手法も適用できるが、上述した乳化重合方法と比べ、得られる重合体エマルジョン粒子(B)の粒子径制御が困難である。
本実施形態において、重合体エマルジョン粒子(B)が2層以上の層から形成されるコア/シェル構造であると、該重合体エマルジョン粒子(B)を含有する上記コーティング剤からは機械的物性(強度と柔軟性のバランス等)に優れた有機・無機複合体を形成することが可能となり好ましい。特に、その最内層の、加水分解性珪素化合物(b1)に対する2級アミド基及び3級アミド基の少なくとも一方を有するビニル単量体(b2)の質量比(b2)/(b1)が1.0以下であり、かつ最外層の質量比(b2)/(b1)が0.1以上5.0以下であると、得られる複合体は耐候性、機械的物性が共に特に良好であり好ましい。
上記コア/シェル構造の重合体エマルジョン粒子(B)を製造する方法として、多段乳化重合が非常に有用である。
ここで、多段乳化重合とは、2種類以上の異なった組成の加水分解性珪素化合物(b1)や2級アミド基及び3級アミド基の少なくとも一方を有するビニル単量体(b2)(必要に応じてこれと共重合可能な他のビニル単量体(b3))を調整し、これらを別々の段階に分けて重合することを意味する。
以下に、多段乳化重合の中で最も単純で有用な2段乳化重合による重合体エマルジョン粒子(B)の合成を例に、本実施形態の多段乳化重合による重合体エマルジョン粒子(B)の合成について説明する。
本実施形態において、2段乳化重合による重合体エマルジョン粒子(B)の合成として、例えば水及び乳化剤の存在下に2級アミド基及び3級アミド基の少なくとも一方を有するビニル単量体(b2)(必要に応じてこれと共重合可能な他のビニル単量体(b3))及び/又は加水分解性珪素化合物(b1)を重合してシード粒子を得て、このシード粒子の存在下に、加水分解性珪素化合物(b1)及び2級アミド基及び3級アミド基の少なくとも一方を有するビニル単量体(b2)を重合する方法を例示できる。
上記2段乳化重合による重合体エマルジョン粒子(B)の合成は、第1系列(2級アミド基及び3級アミド基の少なくとも一方を有するビニル単量体(b2)(必要に応じてこれと共重合可能な他のビニル単量体(b3))及び/又は加水分解性金属化合物(b1))を供給して乳化重合する第1段の重合と、第1段に引き続き、第2系列(加水分解性金属化合物(b1)並びに2級アミド基及び3級アミド基の少なくとも一方を有するビニル単量体(b2)(必要に応じてこれと共重合可能な他のビニル単量体(b3)))を供給し、水性媒体中において乳化重合する第2段の重合からなる2段階の重合行程により行われる。この際、第1系列中の固形分質量(M1)と第2系列中の固形分質量(M2)の質量比は、好ましくは(M1)/(M2)=9/1〜1/9、より好ましくは8/2〜2/8である。
本実施形態において、好ましいコア/シェル構造の重合体の特徴は、第1段の重合で得られたシード粒子の粒子径が、粒径分布(体積平均粒子径/数平均粒子径)の大きな変化なしに(好ましくは単分散の状態で)、第2段の重合によって大きくなる(粒子径の増大)ことを挙げることができる。
また、コア/シェル構造の確認は、例えば、透過型電子顕微鏡等による形態観察や粘弾性測定による解析等により実施することが可能である。
重合体エマルジョン粒子(B)を、水及び乳化剤の存在下に加水分解性珪素化合物(b1)を重合して得られるシード粒子の存在下に加水分解性珪素化合物(b1)及び2級アミド基及び3級アミド基の少なくとも一方を有するビニル単量体(b2)を重合した場合は重合安定性に優れており好ましい。
また、上述したコア/シェル構造の重合体エマルジョン粒子(B)において、コア相のガラス転移温度(Tg)が0℃以下、すなわち上記シード粒子のガラス転移温度が0℃以下のものは、それを含有するコーティング剤からは室温における柔軟性に優れ、割れ等が生じにくい有機・無機複合体を形成することが可能となり、好ましい。
本実施形態において、3段以上の多段乳化重合を実施する場合は、上述した2段重合による重合体エマルジョン粒子(B)の合成例を参考に、重合する系列の数を増加させればよい。
金属酸化物(A)と重合体エマルジョン粒子(B)の質量比(A)/(B)は、好ましくは1/99〜99/1、より好ましくは5/95〜90/10、さらに好ましくは9/91〜83/17である。この範囲で配合された有機・無機複合組成物からは、透明性、耐汚染性に優れた有機・無機複合体を得ることができ好ましい。
本実施形態のコーティング剤は、無溶媒の状態であっても水に分散した状態であってもよく、特に制限はないが、コーティング剤として用いる場合は、粘度調整の観点から水に分散した状態が好ましい。この際、コーティング剤の固形分は、好ましくは0.01〜60質量%、より好ましくは1〜40質量%である。その時の粘度は、好ましくは20℃において0.1〜100000mPa・s、好ましくは1〜10000mPa・sである。
また、本実施形態のコーティング剤には、水素結合等による金属酸化物(A)と重合体エマルジョン粒子(B)の相互作用を制御する目的で、アルコール類を添加することもできる。アルコールの添加により、貯蔵安定性等が非常に向上する。
上記アルコール類としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2―ブタノール、変性エタノール、グリセリン、アルキル鎖の炭素数が3〜8のモノアルキルモノグリセリルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル又はジないしテトラエチレングリコールモノフェニルエーテルが好ましい。これらの中で、エタノールが環境上最も好ましい。
本実施形態のコーティング剤には、紫外線吸収剤として、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤からなる群から選ばれる少なくとも1種、光安定剤として、ヒンダードアミン系光安定剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。紫外線吸収剤及び/又は光安定剤は、重合体エマルジョン粒子(B)の質量に対して0.1質量%〜5質量%用いることが好ましい。また、紫外線吸収剤として、分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性紫外線吸収剤、光安定剤として、分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性光安定剤を用いることもできる。また、紫外線吸収剤と光安定剤を併用した方が、得られる有機・無機複合組成物を用いて複合体を形成した際に、耐候性に優れるため好ましい。
これらの紫外線吸収剤、光安定剤は、金属酸化物(A)と重合体エマルジョン粒子(B)と単に配合することも可能であるし、重合体エマルジョン粒子(B)を合成する際に共存させることも可能である。
本実施形態において使用できる紫外線吸収剤としては、紫外線吸収能の高いベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。
本実施形態において使用できるヒンダードアミン系光安定剤としては、塩基性が低いものが好ましく、具体的には塩基定数(pKb)が8以上のものが好ましい。
また、本実施形態のコーティング剤には、その用途及び使用方法などに応じて、通常、塗料や成型用樹脂に添加配合される成分、例えば、増粘剤、レベリング剤、チクソ化剤、消泡剤、凍結安定剤、艶消し剤、架橋反応触媒、顔料、硬化触媒、架橋剤、充填剤、皮張り防止剤、分散剤、湿潤剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レオロジーコントロール剤、消泡剤、成膜助剤、防錆剤、染料、可塑剤、潤滑剤、還元剤、防腐剤、防黴剤、消臭剤、黄変防止剤、静電防止剤又は帯電調整剤等をそれぞれの目的に応じて選択、組み合わせて配合することができる。
本実施形態のコーティング剤は、塗料、建材の仕上げ材、接着剤、粘着剤、紙加工剤又は織布、不織布の仕上げ材、更にはシーリング剤、接着剤、インキ、コーティング材、注型材、エラストマー、フォームやプラスチック原料、繊維処理剤など広範に使用可能である。
本実施形態のコーティング剤からは、皮膜状、シート状、繊維状又は成形体の様態である有機・無機複合体を形成することができる。
本実施形態の有機・無機複合体は耐候性、耐薬品性等に非常に優れ、また23℃における水接触角が60°以下で防汚性にも優れる。特に、金属酸化物(A)として二酸化珪素及び/又は光触媒活性を有する金属酸化物(光触媒)を用いた場合は、23℃における水接触角が30°以下となり、防汚性、防曇性、帯電防止性等に優れたものになる。
また、金属酸化物(A)として光触媒を用いた場合の有機・無機複合体は、それに含まれる光触媒のバンドギャップエネルギーよりも高いエネルギーの光を照射することにより優れた汚染有機物質の分解活性や耐汚染性、さらには光電変換機能を示す。
ここで、光触媒のバンドギャップエネルギーよりも高いエネルギーの光の光源としては、太陽光や室内照明灯等の一般住宅環境下で得られる光の他、ブラックライト、キセノンランプ、水銀灯、LED等の光が利用できる。
また、金属酸化物(A)として導電性を有する金属酸化物を用いた場合の有機・無機複合体は、優れた導電性能、帯電防止性能、電磁波遮断性能、面発熱性能を示す。
本実施形態においては、金属酸化物(A)が重合体エマルジョン粒子(B)の硬化剤として有効に働いた状態で有機・無機複合体を形成しているのが好ましい。この様な好ましい有機・無機複合体の例として、金属酸化物(A)が、重合体エマルジョン粒子(B)と相互作用しながら重合体エマルジョン粒子(B)の粒子間に連続層を形成して存在している形態を挙げることができる。このような形態の有機・無機複合体は、特に耐薬品性、光学特性等に優れたものになる。
上述したような形態の有機・無機複合体を形成するためには、コーティング剤における金属酸化物(A)と重合体エマルジョン粒子(B)の質量比(A)/(B)を最適範囲にすることが最も有効である。該質量比(A)/(B)の最適範囲は、例えば質量比(A)/(B)を変化させたコーティング剤から生成する有機・無機複合体の透明性を測定し、相対的に透明性が良好な質量比(A)/(B)の範囲として求めることができる。ここで、使用する金属酸化物(A)と重合体エマルジョン粒子(B)の最適な質量比(A)/(B)の範囲は、金属酸化物(A)の表面積(SA)と重合体エマルジョン粒子(B)の表面積(SB)の桁数の差が3桁以内となるのが好ましい。該表面積は、金属酸化物(A)及び重合体エマルジョン粒子(B)の各々の粒径、及び各々の配合質量数から計算することができる。
本実施形態において、有機・無機複合体の最も好ましい形態は、重合体エマルジョン粒子(B)がコア/シェル構造であり、そのシェル相が金属酸化物(A)と相互作用した状態で連続層を形成し、粒子状のコア相が該連続層中に存在するものである。このような形態の有機・無機複合体は、耐薬品性、光学特性に優れるばかりか、機械的特性(強度と柔軟性のバランス等)にも優れたものになる。
次に、図2,3を参照しながら、本実施形態に係るコーティング方法について説明する。まず、太陽電池モジュール10Aの外枠7から離隔した上方の位置にマスキング材20を配置する(マスキング工程)。マスキング材20は、図2に示すように、外枠7に対応する形状を有し、外枠7を覆うように外枠7から離隔した上方の位置に配置される。コーティング剤を噴射する条件(例えば、位置や単位時間当たりの噴射量)にもよるが、マスキング材20と外枠7の間の距離は好ましくは0.1〜300mm程度であり、より好ましくは5〜50mm程度である。なお、マスキング材20は透明基板1の表面はなるべく覆わないことが好ましいが、透明基板1の表面のうち周縁部(外枠7の近傍)を覆ってもよい。
マスキング材20は、図3の(a)に示すように、上面20aが内縁20b側から外縁20c側に向けて低くなるように傾斜していることが好ましい。またマスキング材20は、外枠7よりも一回り大きいサイズに設計されていることが好ましい(図2参照)。これらの構成を採用すると、マスキング材20の上方からコーティング剤を噴射してコーティングを実施しても、マスキング材20に付着したコーティング剤が外枠7上に液ダレして外枠7に外観上の欠陥が生じることを防止できる。
マスキング材20にコーティング剤が付着するのを抑制してマスキング材20の洗浄を容易にする観点から、図3の(b)に示すように傾斜面である上面20aに内縁20b側から外縁20c側に向けて溝21を形成してもよい。また、同様の観点から、マスキング材20においてコーティング剤が接触する部分を水接触角が30度以上の材料で構成することが好ましい。このような撥水性を有する材料としては樹脂、金属、ガラス、木材又は厚紙などが挙げられる。なお、マスキング材20を樹脂、金属、ガラス、木材又は厚紙などによって構成し、その表面にシリコン系塗料によるコーティング処理やテフロン(登録商標)シートなどの貼り合わせのような撥水加工を施してもよい。
マスキング材20の態様は図3に示すものに限られず、図4に示すような断面形状を有するものであってもよい。図4の(a)に示すマスキング材は、噴射されたコーティング剤が溜まる液溜まり部20dを有する。図4の(b)に示すマスキング材は、内縁20b側から外縁20c側に向けて低くなる傾斜部20e及びコーティング剤が溜まる液溜まり部20fを有する。
マスキング材20を上述の配置した状態においてマスキング材20よりも上方の位置から下方に向けてコーティング剤を噴射して透明基板1の表面に機能性膜1aを製膜する(コーティング工程)。このような場合、市販されているスプレーガンなどの塗装機を用いることができる。スプレーガンは、塗液を供給する供給手段と、上記供給手段から供給される塗液を吹き出す吐出ノズルとを少なくとも具備する。塗液吐出ノズルの先端口径は0.5〜3.0mmとすることが好ましく、1.0〜2.0mm程度の範囲がより好ましく、1.0〜1.5mm程度の範囲がさらに好ましい。塗液吐出ノズルの吐出圧は0.01〜0.098MPaとすることが好ましい。この範囲にすることで均一に塗装することができる。
塗装機の供給手段としては吹上げ式、重力式、圧送式など従来の手段を用いることができるが、圧送式の供給ポンプを用いるのが好ましい。
塗液吐出ノズルからの吐出量は30〜200ml/分が好ましく、50〜100ml/分程度がより好ましい。吐出量が30ml/分より小さいと、水滴に近い液滴径をつなぎ合わせることが困難で斑点の原因となり好ましくなく、吐出量が200ml/分を超えると、塗布中に液ダレなどが発生して形成膜厚に著しい部分差が生じ、塗膜には虹彩色等の外観不良が発生し易い傾向となり好ましくない。供給ポンプなどの供給手段と塗液吐出ノズルは直接あるいはホースや管で連結され塗装機を構成し、供給手段により供給され塗液吐出ノズルから吹き出された塗液は被塗面まで運ばれ付着する。
更に好適な塗装機としては、塗液を供給する供給手段と、エアーを供給するブロアと、上記供給手段から供給される塗液と上記ブロアから供給されるエアーとを一緒に吹き出すガンとを少なくとも具備したものが挙げられる。上記ガンは、その先端の内側に塗液吐出ノズルを、その塗液吐出ノズルの外周側にエアー吹出口を有し、吐出した塗液の周辺を囲むようにエアーカーテンを発生させる。供給ポンプなどの供給手段とガン(塗液吐出ノズル)は直接あるいはホースや管で連結され、また、ブロアとガン(エアー吹出口)もホースや管で連結され塗装機を構成し、供給手段により供給され塗液吐出ノズルから吹き出された塗液は、その外側のブロアにより供給されエアー吹出口から吹き出される大量のエアーの流れ(これをエアーカーテンという)によって囲まれて被塗面まで運ばれ付着する。このようなエアーカーテンを発生させるブロアを備えた塗装機を用いることにより、塗液吐出ノズルから吹き出された塗液は、その外側がエアーによって囲まれているため周辺への飛散が少なく、作業者の健康阻害要因が激減し、塗液の無駄が減り、大掛かりなマスキングが不要になる。
エアー吹出口から吹き出されるエアーは、低圧とし風量を多くするとより十分なエアーカーテンが得られるため好ましい。このため、エアーカーテンを発生させるためのブロアは、ブロア送風圧力を0.01〜0.098MPaとするのが好ましく、0.01〜0.05MPaとするのがより好ましく、0.015〜0.04MPa程度とするのがさらに好ましい。ブロア送風圧力が前記範囲であると十分な風量のエアーカーテンを発生させることができるため好ましく、ブロア送風圧力が0.01MPaより低いとエアーカーテンの発生が不十分になり好ましくなく、また、0.098MPaより高いとエアー風量が大きくなりすぎて好ましくない。エアー風量は500〜5000リットル/分程度が好ましく、1000〜3000リットル/分程度がより好ましい。エアーの温度は塗装環境温度より少なくとも10℃高くするのが好ましく、10〜50℃程度高くするのがより好ましく、10〜25℃程度高くするのがさらに好ましい。エアー温度を塗装環境温度より高く設定することにより塗膜の乾燥、硬化をあわせて行うことができる。塗装環境温度より高い温度のエアーを発生させるためには、高回転型タービンを備えたブロアを用いるのが好ましく、その回転摩擦熱によりエアーの温度を高めることができる。高回転型タービンの回転数は通常毎分21000〜25000回転程度であるが、その回転数を適宜調節することによりエアー温度を調整することができ、このようにすると特別な温風発生手段を備えなくても良い。このような塗装機としてはチロン社製の温風低圧塗装機(SG−2500、SG−2000、SG−91など)、ワグナー社製のスプレーガンなどを好ましく用いることができる。エアー温度を30℃以上高くする場合において高回転型タービンで不充分な際には所定温度の温風を発生させるための加温手段を備えることもできる。
上記のようなコーティング工程を実施した後、外枠7の上方の位置からマスキング材を取り除く(マスキング除去工程)。その後、必要に応じて塗膜を乾燥させるなどの処理を施すことによって太陽電池モジュール10が完成する。
本実施形態に係るコーティング方法によれば、外枠7を装着した状態の太陽電池モジュール10Aを対象とするため、機能性膜1aの製膜後において外枠7を保持するなどして搬送を実施できる。このため、機能性膜1aに汚れやキズなどの欠陥が生じることを十分に防止できる。また、積層構造を有するモジュール本体5の周縁部を外枠7が覆った状態であり且つ外枠7をマスキングした状態でコーティングを実施するため、コーティング剤に含まれる成分がモジュール本体5内に浸入して他の材料に影響を及ぼすことを高度に防止できる。更に、外枠7をマスキングした状態でコーティングを実施するため、外枠7の塗装汚れを防止でき、優れた外観の太陽電池モジュール10を効率的に製造できる。
上記実施形態は、マスキング工程において外枠7から離隔した上方の位置にマスキング材20を配置するため、マスキング材20の配置及び除去が容易であり、製造ラインを用いて太陽電池モジュール10を量産するのに適している。また、外枠7とマスキング20が接しないため、これらを接触させた場合に両者の界面にコーティング剤が表面張力で溜まることに起因する欠陥が生じず、優れた外観の太陽電池モジュール10を製造できる。
以上、発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、外枠7にマスキング材20を接触させない場合を例示したが、外枠7にコーティング剤が付着するのをより高度に防止する観点から、マスキング工程において外枠7に接するようにマスキング材20を配置してもよい。この場合、マスキング材として、マスキングテープを使用してもよい。マスキングテープとしては、粘着性が強くないが剥がした後の粘着材の付着が無いものが好ましい。マスキングテープの粘着力は、対ステンレス板粘着力(N/18mm)として0.5以上20以下が好ましく、上限値はより好ましくは6であり、更に好ましくは4である。粘着力が20を超えると剥がす際に剥がしにくく、0.5未満であると粘着力が不足する。例えば、日東電工社製マスキングテープ(No.720,720A,727,7286,7235,7239、7500,395N)を使用できる。
また、上記実施形態においては、コーティング工程をスプレーコートによって実施する場合を例示したが、塗装方法はスプレーコートに限られるものではない。例えば、マスキング材よりも上方の位置から下方に向けてコーティング剤を膜状に流下させて機能性膜を形成するフローコートを採用してもよい。フローコートはカーテンフローコーターなどを使用して実施できる。コーティング剤を流下させる条件(例えば、位置や単位時間当たりの流下量)にもよるが、マスキング材20と外枠7の間の距離は好ましくは0.1〜300mm程度であり、より好ましくは5〜50mm程度である。
スプレーコートやフローコートの代わりに、ロールコート又は刷毛塗りなど方法を採用してもよい。なお、これらの塗装方法を採用する場合、マスキング材の種類及び位置は選択した塗装方法に適したものとすればよい。
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各種物性は下記の方法で評価した。また、本実施例において、特に断りがない限り、「%」及び「部」は質量基準である。
(数平均粒子径)
試料中の固形分含有量が0.1〜20質量%となるように溶媒を加えて希釈し、湿式粒度分析計(日機装製マイクロトラックUPA−9230)を用いて測定した。
(水接触角)
試料の表面(コーティング剤の塗工面)に脱イオン水の水滴を乗せ、23℃で1分間放置した後、接触角測定装置(協和界面科学製 DM−501型接触角計)を用いて測定した。
<重合体エマルジョン粒子(LTX−1)水分散体の合成>
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水1600g、ドデシルベンゼンスルホン酸4gを投入した後、撹拌下で温度を80℃に加温した。これに、ジメチルジメトキシシラン185g、フェニルトリメトキシシラン117gの混合液を反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて滴下し、その後、反応容器中の温度が80℃の状態で約1時間撹拌を続行した。次に、アクリル酸ブチル150g、テトラエトキシシラン30g、フェニルトリメトキシシラン145g、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.3gの混合液とジエチルアクリルアミド165g、アクリル酸3g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−1025」、旭電化社製、固形分25質量%水溶液)13g、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液40g、イオン交換水1900gの混合液とを、反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて同時に滴下した。さらに熱養生として、反応容器中の温度が80℃の状態で約4時間撹拌を続行した。その後室温まで冷却し、100メッシュの金網で濾過し固形分14.08質量%、水相成分8.91質量%、数平均粒子径131nmの重合体エマルジョン粒子(LTX−1)水分散体を得た。
(実施例1)
表1に示す配合量でエタノール、水、と1%n−ドデシルベンゼンスルホン酸を混合した後にテトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(三菱化学社製「MS−56」)を25℃で加え、1%塩酸水溶液でpH4に調整した。1時間撹拌した後、表1に示す配合量で数平均粒子径8nmの粒子を有する水分散コロイダルシリカ(商品名「スノーテックスOS」、日産化学工業社製、固形分20質量%、以下「ST−OS」とも記す。)と重合体エマルジョン粒子(LTX−1)とを加え、30分撹拌してコーティング剤を得た。
Figure 2012256640
アルミフレームが装着されたモジュールのガラス表面前処理として市販のメラミン樹脂性スポンジを用いて汚染物質、油分の十分な除去を行なった後、更に工業用アルコール(ソルミックスA7(日本アルコール販売社製)にて洗浄を行った。更に、コロナ処理を14kwで30秒実施した。その時の基材の水接触角は10度であった。
次に太陽電池のアルミフレームにメンディングテープ(日東電工社製マスキングテープNo.720A:粘着力2.4N/18mm)を貼り付けて塗装から保護した(マスキング工程)。その後、スプレー式温風低圧塗装機を用いてスプレー塗布し、常温乾燥した(コーティング工程)。塗装機として、高回転型タービンのブロアを備えたスプレー式温風低圧塗装機(チロン社製SG−91)を用いて、次の条件で運転した。
(1)塗液吐出ノズルの先端口径:1.2mm、
(2)吐出圧:0.018MPa、
(3)吐出量:70ml/分、
(4)ブロア送風圧力:0.018MPa、
(5)エアーカーテンのエアー風量:2200リットル/分、
(6)エアーカーテンのエアー温度:塗装作業の環境温度より15℃高い温度、
(7)塗装速度:被塗物の幅1mを3秒間で塗装機を移動させた。
塗装終了後、先に貼ったマスキングテープを剥がしてガラス表面が塗装された太陽電池モジュールが得られた(マスキング除去工程)。マスキングテープは容易に剥がされ太陽電池モジュールのアルミフレームにコーティング剤の付着も無く、外観が綺麗であった。
(実施例2)
アルミフレームが装着されたモジュールのガラス表面前処理として市販のメラミン樹脂性スポンジを用いて汚染物質、油分の十分な除去を行なった後、更に工業用アルコール(ソルミックスA7(日本アルコール販売社製)にて洗浄を行った。更に、コロナ処理を14kwで30秒実施した。その時の基材の水接触角は10度であった。
次に太陽電池のアルミフレーム上に図2に示す塗装保護部材をセットした以外は実施例1と同様にして、ガラス表面が塗装された太陽電池モジュールを得た。得られた太陽電池モジュールのアルミフレームにコーティング剤の付着も無く、外観が綺麗であった。
(比較例1)
マスキングテープを使用しなかった以外は実施例1と同様に塗装した。得られた太陽電池モジュールのアルミフレームに付着したコーティング剤が目視で観察できた。
本発明のコーティング方法で得られた太陽電池モジュールは、アルミフレームの塗装汚れが十分に少なく外観に優れる。特に濃色のアルミフレームを用いた太陽電池材モジュールは高級感があり住宅用に好まれて使用されているが、そのような濃色アルミフレームに対して特に塗装後であっても外観が良好な太陽電池モジュールをとして好適に用いることができる。
1…透明基板、1a…機能性膜、2…バックシート、3…発電素子、4…封止材、5…モジュール本体、7…外枠、10…太陽電池モジュール(外枠あり)、10A…太陽電池モジュール(外枠なし)、20…マスキング材、20a…マスキング材の上面、20b…マスキング材の内縁、20c…マスキング材の外縁、20d,20f…液溜まり部、20e…傾斜部。

Claims (7)

  1. 表面をなす透明基板と裏面をなすバックシートとの間に、直列に接続された複数の発電素子が封止材によって封止された積層構造からなるモジュール本体と、前記モジュール本体が嵌め込まれる外枠とを備えた太陽電池モジュールを対象とするものであり、
    前記太陽電池モジュールの前記外枠から離隔した位置に又は前記外枠に接するように、マスキング材を配置するマスキング工程と、
    前記マスキング材を配置した状態において前記透明基板の表面にコーティング剤を塗布して機能性膜を製膜するコーティング工程と、
    前記コーティング工程後、前記外枠から前記マスキング材を取り除くマスキング除去工程と、
    を備えるコーティング方法。
  2. 前記コーティング剤は、塗膜を100℃以下の温度で乾燥することによって前記透明基板上に前記機能性膜を製膜可能である、請求項1に記載のコーティング方法。
  3. 前記マスキング材において前記コーティング剤が接触する部分は水接触角が30度以上の材料からなる、請求項1又は2に記載のコーティング方法。
  4. 前記マスキング工程において前記外枠から離隔した上方の位置に前記マスキング材を配置し、前記コーティング工程において前記マスキング材よりも上方の位置から下方に向けてコーティング剤を噴射する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコーティング方法。
  5. 前記マスキング工程において前記外枠から離隔した上方の位置に前記マスキング材を配置し、前記コーティング工程において前記マスキング材よりも上方の位置から下方に向けてコーティング剤を膜状に流下させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコーティング方法。
  6. 前記マスキング材の上面は、内縁側から外縁側に向けて低くなる傾斜部及び上方からの前記コーティング剤が溜まる液溜まり部の少なくとも一方を有する、請求項4又は5に記載のコーティング方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載のコーティング方法によって製膜された機能性膜を備える太陽電池モジュール。
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