以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
[装置構成]
図1に本実施形態に係る制御装置を適用したハイブリッド車両の概略構成を示す。図1の例は、機械分配式2モータ型と称されるハイブリッド車両であり、エンジン(内燃機関)1、第1のモータジェネレータMG1、第2のモータジェネレータMG2、動力分配機構20を備える。動力源に相当するエンジン1と、第1のモータジェネレータMG1とが動力分配機構20に連結されている。動力分配機構20の駆動軸3には、駆動軸3のトルク(駆動力)又はブレーキ力のアシストを行うための動力源である第2のモータジェネレータMG2が連結されている。さらに、駆動軸3は最終減速機8を介して左右の駆動輪9に連結されている。第1のモータジェネレータMG1と第2のモータジェネレータMG2とは、バッテリ、インバータ、又は適宜のコントローラ(図1参照)を介して、もしくは直接的に電気的に接続され、第1のモータジェネレータMG1で生じた電力で第2のモータジェネレータMG2を駆動するように構成されている。
エンジン1は燃料を燃焼して動力を発生する熱機関であり、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジンなどが挙げられる。第1のモータジェネレータMG1はエンジン1からトルクを受けて回転することにより主として発電を行うものであり、発電に伴うトルクの反力が作用する。この第1のモータジェネレータMG1が本発明におけるモータジェネレータとして機能する。
第2のモータジェネレータMG2は、駆動力又はブレーキ力を補助(アシスト)する装置である。駆動力をアシストする場合、第2のモータジェネレータMG2は電力の供給を受けて電動機として機能する。一方、ブレーキ力をアシストする場合には、第2のモータジェネレータMG2は、駆動輪9から伝達されるトルクにより回転させられて電力を発生する発電機として機能する。
動力分配機構20は、いわゆるシングルピニオン型の遊星歯車機構であり、リングギヤR1、キャリアC1、サンギヤS1、を備える。キャリアC1は、リングギヤR1とサンギヤS1との両方に噛み合っているピニオンギヤCP1を保持している。
エンジン1の出力軸2は第1の遊星歯車機構のキャリアC1に連結されている。第1のモータジェネレータMG1のロータ11の一端は第1の遊星歯車機構のサンギヤS1に連結されている。リングギヤR1は駆動軸3に連結されている。
第1のモータジェネレータMG1のロータ11の他端はロック機構7に連結されている。ロック機構7は、クラッチ7a、アクチュエータ7b、を有する。クラッチ7aは、互いに係合する一対の係合要素を有している。一対の係合要素のうち、一方の係合要素はケースなどに固定され、他方の係合要素は第1のモータジェネレータMG1のロータ11に連結されている。ロック機構7は、アクチュエータ7bを用いて、クラッチ7aにおける係合要素同士を係合及び解放することが可能に構成されている。具体的には、アクチュエータ7bは、例えば油圧による押圧力によりクラッチ7aを係合する。ロック機構7は、クラッチ7aを係合することにより、第1のモータジェネレータMG1のロータ11を固定し、動力分配機構20のサンギヤS1を固定する。また、ロック機構7は、クラッチ7aの係合を解放することにより、第1のモータジェネレータMG1のロータ11を解放し、動力分配機構20のサンギヤS1を解放する。つまり、クラッチ7aは、動力分配機構20のサンギヤS1を固定するブレーキとして機能する。ロック機構7は、ECU4から送信された制御信号Sig5に基づいて、アクチュエータ7bを制御することにより、クラッチ7aの係合/解放を制御する。
ロック機構7がクラッチ7aを解放している状態では、サンギヤS1が解放され、第1のモータジェネレータMG1の回転数を連続的に変化させることによりエンジン1のエンジン回転数が連続的に変化する無段変速モードが実現される。一方、ロック機構7がクラッチ7aを係合している状態では、サンギヤS1が固定され、動力分配機構20により決定される変速比がオーバードライブ状態(即ち、エンジン1のエンジン回転数が駆動軸3の回転数より小さくなる状態)に固定される固定変速モードが実現される。
電源ユニット30は、インバータ31、コンバータ32、HVバッテリ33及びコンバータ34を備える。第1のモータジェネレータMG1は電源線37によりインバータ31に接続されており、第2のモータジェネレータMG2は電源線38によりインバータ31に接続されている。また、インバータ31はコンバータ32に接続され、コンバータ32はHVバッテリ33に接続されている。さらに、HVバッテリ33はコンバータ34を介して補機バッテリ35に接続されている。
インバータ31は、モータジェネレータMG1及びMG2との間で電力の授受を行う。モータジェネレータの回生時には、インバータ31はモータジェネレータMG1及びMG2が回生により発電した電力を直流に変換し、コンバータ32へ供給する。コンバータ32は、インバータ31から供給される電力を電圧変換し、HVバッテリ33を充電する。一方、モータジェネレータの力行時には、HVバッテリ33から出力される直流電力はコンバータ32により昇圧されてインバータ31へ供給され、電源線37又は38を介してモータジェネレータMG1又はMG2へ供給される。
HVバッテリ33の電力はコンバータ34により電圧変換されて補機バッテリ35に供給され、各種の補機の駆動に使用される。
インバータ31、コンバータ32、HVバッテリ33及びコンバータ34の動作はECU4により制御されている。ECU4は制御信号Sig4を送信することにより、電源ユニット30内の各要素の動作を制御する。また、電源ユニット30内の各要素の状態などを示す必要な信号は制御信号Sig4としてECU4に供給される。具体的には、HVバッテリ33のバッテリ残存容量を示すSOC(State Of Charge)及びバッテリの入出力制限値などは制御信号Sig4としてECU4に供給される。
ECU4は、エンジン1、第1のモータジェネレータMG1及び第2のモータジェネレータMG2との間で制御信号Sig1〜Sig3を送受信することにより、それらを制御し、ロック機構7に制御信号Sig5を送信することにより、ロック機構7を制御する。例えば、ECU4は、アクセル開度センサ23からの検出信号に基づいてアクセル開度を検出し、車速センサ22からの検出信号に基づいて車速を検出する。ECU4は、検出されたアクセル開度及び車速に基づいて駆動力を算出し、算出された当該駆動力となるように、エンジン1、第1のモータジェネレータMG1及び第2のモータジェネレータMG2を制御する。
また、ECU4は、検出された車速と、算出された駆動力とに基づいて、ロック機構7を制御する。従って、ECU4は、本発明における切換制御手段として機能する。さらに、運転席には切換スイッチ21が取り付けられている。運転者は当該切換スイッチ21を操作することにより、固定変速モード時におけるアクセル開度に対する駆動力の変化の割合(駆動力特性)の変更を行うことが可能である。ECU4は、切換スイッチ21からの検出信号に基づいて、固定変速モード時における駆動力特性を変更する。従って、切換スイッチ21は、本発明における入力手段として機能し、ECU4は、本発明における駆動力特性設定手段として機能する。
次に、図2を参照して、無段変速モード及び固定変速モードにおけるハイブリッド車両の動作状態について説明する。図2は、無段変速モード及び固定変速モードにおける共線図の一例を示している。図2(a)、(b)において、上下方向は回転数に対応しており、上方向が正回転に対応し、下方向が負回転に対応する。また、図2(a)、(b)において、上方向に向かうトルクは正トルクに対応し、下方向に向かうトルクは負トルクに対応する。
図2(a)における直線A1a、A1b、A1cは無段変速モードにおける共線図の一例を示している。無段変速モードの場合には、エンジン1のエンジントルクTKEに対応する反力トルクが、第1のモータジェネレータMG1よりトルクTK1として出力される。なお、ここで、図2(a)より分かるように、エンジントルクTKEは正トルクとなっており、トルクTK1は負トルクとなっている。なお、トルクTK2は、第2のモータジェネレータMG2より出力されるトルクを示している。無段変速モードでは、第1のモータジェネレータMG1の回転数を増減変化させることにより、エンジン1のエンジン回転数を連続的に制御することが可能である。駆動軸3の回転数がN1であるとした場合において、例えば、第1のモータジェネレータMG1の回転数を白丸m1、m2、m3と順次変化させた場合には、エンジン1のエンジン回転数は、白丸Ne1(>N1)、Ne2(=N1)、Ne3(<N1)と順次変化する。つまり、エンジン1のエンジン回転数は、駆動軸3の回転数よりも高い値、等しい値及び低い値に順次変化する。このとき、第1のモータジェネレータMG1は発電し、インバータ31を介して、駆動軸3のアシストを行う第2のモータジェネレータMG2に電力を供給する。つまり、無段変速モードでは、エンジン1からの出力は、動力分配機構20を介して駆動軸3に直接伝達されるルートと、第1のモータジェネレータMG1から駆動軸3のアシストを行う第2のモータジェネレータMG2へ電気的に伝達されるルートと、の2つのルートで駆動軸3へ伝達される。
図2(b)における直線A2は固定変速モードにおける共線図の一例を示している。固定変速モードの場合には、ロック機構7が第1のモータジェネレータMG1のロータ11を固定するとともにサンギヤS1を固定している状態となるため、動力分配機構20により決定される変速比がオーバードライブ状態(即ち、エンジン1のエンジン回転数Ne4が駆動軸3の回転数N1より小さくなる状態)に固定される。このとき、ロック機構7のクラッチ7aが、エンジン1のエンジントルクに対応する反力トルクを受け持つこととなる。第1のモータジェネレータMG1は発電機及び電動機のいずれとしても機能しないため、第1のモータジェネレータMG1から第2のモータジェネレータMG2へは電力が供給されない。従って、固定変速モードでは、エンジン1からの出力は、動力分配機構20を介して駆動軸3に直接伝達されるルートでのみ、駆動軸3へ伝達される。
[制御方法]
次に、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御方法について具体的に説明する。
図3は、一般的なハイブリッド車両の制御方法における駆動力線図を示し、縦軸が駆動力を示し、横軸が車速を示している。図3には、アクセル開度が20%、40%、60%、80%、100%の場合の各駆動力線が示されている。ECU4は、アクセル開度と車速とを基に、図3に示す関係を用いて、駆動力を算出し、算出された当該駆動力になるようにエンジン1やモータジェネレータを制御する。例えば、車速がVexとなっている場合において、アクセル開度が40%となっている場合には、駆動力はTexと算出される。
図3において、ハッチングされた領域SAは固定変速モードに設定されるロック領域を示している。ロック領域SAは、車速と駆動力とに応じて設定されている。また、図3において、車速及び駆動力で規定される車両の動作点(車両動作点)の一例を白丸で示している。ECU4は、ロック領域SAに車両動作点が位置する場合には、ロック機構7のクラッチ7aを係合して、変速モードを固定変速モードに設定する。一方、ECU4は、ロック領域SA外に車両動作点が位置する場合には、ロック機構7のクラッチ7aを解放して、変速モードを無段変速モードに設定する。
一般的なハイブリッド車両の制御方法では、運転者がアクセルを踏み込むと、アクセル開度が上昇し、当該アクセル開度に比例して駆動力も上昇する。例えば、矢印W1に示すように、所定の車速Vaにおいて、運転者がアクセルを踏み込むことにより、アクセル開度が上昇して20%を超えると、ロック領域SA外からロック領域SA内へと車両動作点が移動する。このとき、ECU4は、無段変速モードから固定変速モードへと変速モードを切り換える。そして、矢印W2に示すように、アクセル開度が更に上昇して40%を超えると、ロック領域SA内からロック領域SA外へと車両動作点が移動する。このとき、ECU4は、ロック機構7のクラッチ7aを解放して、固定変速モードから無段変速モードへと変速モードを切り換える。アクセル開度が40%を超えた後では、アクセル開度が更に上昇しても、ECU4は変速モードを無段変速モードのままにする。
上述したことから分かるように、固定変速モードに変速モードが設定されるのは、アクセル開度が20%から40%の間の比較的短い範囲にある場合である。言い換えると、図3に示す例では、固定変速モードに変速モードが設定される駆動力の範囲Tsaの割に、アクセル開度に対する駆動力の変化の割合が比較的大きくなっている。これは、無段変速モード及び固定変速モードのどちらの場合であっても、アクセル開度に対する駆動力の変化の割合が同じに設定されているためである。このため、固定変速モードに変速モードが設定された場合において、運転者がアクセル開度を調整することにより駆動力を調整することが難しく、駆動力が一意に決まってしまう。
固定変速モードに変速モードが設定された場合において、駆動軸3の回転数と比例する車速が決まるとエンジン回転数が決まり、駆動力が決まるとエンジントルクが決まる。図3に示す例では、固定変速モードに変速モードが設定された場合において、駆動力が一意に決まるので、車速に応じて、エンジントルクとエンジン回転数とで規定されるエンジン動作点も一意に決まる。ここで、エンジントルクとエンジン回転数とで規定されるマップ上では、騒音防止や排気のエミッションの観点から、エンジン動作点は制約を受ける。つまり、車両動作点がロック領域SA内に移動して、固定変速モードに変速モードが設定された場合であっても、そのときに決まったエンジン動作点の位置によっては、ECU4は、ロック機構7のクラッチ7aを解放して無段変速モードに変速モードを切り換える必要が出てくる。このような場合には、車両動作点がロック領域SAに位置する場合でも、固定変速モードから無段変速モードに変速モードが切り換えられるため、燃費が悪化する恐れが有る。
また、アクセル開度が20%から40%の間の比較的短い範囲で固定変速モードに設定されるので、無段変速モードから固定変速モードへと変速モードが切り換えられた場合であっても、変速モードが切り換えられたことを運転者が気付かない可能性がある。さらに、固定変速モードに変速モードが設定されている場合であっても、運転者が荒いアクセル操作を行うと、駆動力を出すことを意図していないにもかかわらず、車両動作点がロック領域SA内から直ぐに外れて、固定変速モードから無段変速モードに変速モードが切り換わってしまう可能性がある。このような場合には、運転者が駆動力を出すことを意図していない場合であっても、燃費が悪化する恐れがある。
そこで、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御方法では、ECU4は、無段変速モード及び固定変速モードのそれぞれの場合における駆動力特性を異ならせることとする。具体的には、ECU4は、無段変速モードの場合におけるアクセル開度に対する駆動力の変化の割合よりも、固定変速モードの場合におけるアクセル開度に対する駆動力の変化の割合を小さくすることとする。以下で具体的に説明する。
図4は、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御方法における駆動力線図であり、縦軸が駆動力を示し、横軸が車速を示している。図4には、無段変速モードの場合のアクセル開度と固定変速モードの場合のアクセル開度とがそれぞれ示されている。
先の図3に示した例では、運転者がアクセルを踏み込んで、アクセル開度が20%を超えると、ECU4は、無段変速モードから固定変速モードへと変速モードを切り換えるものの、アクセル開度に対する駆動力の変化の割合を、固定変速モードの場合と無段変速モードの場合とで同じにしていた。そのため、ECU4は、固定変速モードに変速モードが設定されている場合において、アクセル開度が20%から40%へと変化したときに、固定変速モードの駆動力の範囲Tsa分、駆動力を変化させていた。
それに対し、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御方法では、ECU4は、無段変速モードの場合におけるアクセル開度に対する駆動力の変化の割合よりも、固定変速モードの場合におけるアクセル開度に対する駆動力の変化の割合を小さくしている。例えば、図4に示す例では、ECU4は、固定変速モードに変速モードを設定するアクセル開度の範囲を20%から80%の間で設定している。より詳細には、ECU4は、無段変速モードから固定変速モードへと変速モードを切り換えた場合において、アクセル開度が20%から40%、40%から60%、60%から80%へと変化したときにそれぞれ、範囲Tsaよりも小さい範囲Tsam分ずつ駆動力を変化させている。つまり、ECU4は、アクセル開度が20%から80%へと変化したときに、固定変速モードの駆動力の範囲Tsa分、駆動力を変化させている。ECU4は、アクセル開度が80%を超えると、固定変速モードから無段変速モードへと変速モードを切り換える。
このように、固定変速モードの場合には、アクセル開度に対する駆動力の変化の割合を小さくすることにより、運転者はアクセル開度を調整することで駆動力を調整することが可能となる。これにより、固定変速モードの場合におけるエンジン動作点を任意に設定することができるようになるので、車両動作点がロック領域SAに位置する場合において、エンジン動作点の制約による無段変速モードへの切り換えを行う必要がなくなり、燃費を向上させることができる。
また、図4に示す例では、変速モードが切り換えられた場合にアクセル開度に対する駆動力が変化するので、変速モードが切り換えられたことを運転者は容易に認識することができる。また、固定変速モードの場合において、アクセル開度に対する駆動力の変化の割合を小さくすることにより、運転者が荒いアクセル操作を行った場合であっても、直ぐに無段変速モードに切り換わることがなくなり、燃費を向上させることができる。
また、アクセル開度の変化を無視して駆動力を変化させないヒステリシス領域をロック領域SAの周囲に設ける制御方法と比較して、本実施形態に係る制御方法では、アクセル開度の変化に応じて駆動力を常に変化させる。従って、ヒステリシス領域をロック領域SAの周囲に設ける制御方法と比較して、本実施形態に係る制御方法によれば、運転者は、アクセルを踏み込んだ際に違和感を覚えずに済む。
なお、ここで、固定変速モードの場合において、駆動力を範囲Tsa分変化させるのに、アクセル開度を20%から80%まで変化させるとしているがこれに限られるものではない。つまり、固定変速モードの場合におけるアクセル開度の最大値は80%に限られるものではないのは言うまでもない。
例えば、固定変速モードの場合におけるアクセル開度の最大値を60%とし、駆動力を範囲Tsa分変化させるのに、アクセル開度を20%から60%まで変化させるとしても良い。この場合には、固定変速モードの場合におけるアクセル開度の最大値を80%とした上述の例と比較して、固定変速モードの場合におけるアクセル開度に対する駆動力の変化の割合が大きくなる。また、例えば、固定変速モードの場合におけるアクセル開度の最大値を90%とし、駆動力を範囲Tsa分変化させるのに、アクセル開度を20%から90%まで変化させるとしても良い。この場合には、固定変速モードの場合におけるアクセル開度の最大値を80%とした上述の例と比較して、固定変速モードの場合におけるアクセル開度に対する駆動力の変化の割合が小さくなる。
ただし、ここで、固定変速モードの場合におけるアクセル開度の最大値は100%よりも小さくされるのが好ましい。これにより、運転者がアクセルを踏み込むことでアクセル開度が当該最大値を超えた場合に、固定変速モードから無段変速モードへと変速モードを切換えることができる。
次に、上述の本実施形態に係るハイブリッド車両の制御処理の例について図5、図6のフローチャートを用いて説明する。
まず、図5に示すハイブリッド車両の制御処理について説明する。この制御処理では、ECU4は、切換スイッチ21からの検出信号に基づいて、固定変速モードの場合における駆動力特性を無段変速モードの場合における駆動力特性と異ならせるか否かを決定することとする。
ステップS101において、ECU4は、切換スイッチ21からの検出信号に基づいて、切換スイッチ21がオンになっているか否かについて判定する。ECU4は、切換スイッチ21がオフになっていると判定した場合には(ステップS101:No)、固定変速モードの場合の駆動力特性を変更せずに、無段変速モード及び固定変速モードのそれぞれの場合におけるアクセル開度に対する駆動力の変化の割合を同じとする(図3参照)。この後、ECU4は本制御処理を終了する。
一方、ECU4は、切換スイッチ21がオンになっていると判定した場合には(ステップS101:Yes)、ステップS102の処理へ進み、固定変速モード専用の駆動力特性を設定する。即ち、ECU4は、図4に示したように、無段変速モード及び固定変速モードのそれぞれの場合におけるアクセル開度に対する駆動力の変化の割合を互いに異ならせることとする。具体的には、ECU4は、無段変速モードの場合と比較して、固定変速モードの場合には、アクセル開度に対する駆動力の変化の割合を小さくすることとする。この後、ECU4は、本制御処理を終了する。
上述のハイブリッド車両の制御処理によれば、固定変速モードの場合における駆動力特性を無段変速モードの場合における駆動力特性と異ならせるか否かを、運転者の意思に応じて決定することができる。例えば、ドライバビリティを優先した場合には、運転者は切換スイッチ21をオフにすることで、無段変速モード及び固定変速モードのそれぞれの場合におけるアクセル開度に対する駆動力の変化の割合を同じにすることができ、ショックレスな変速モードの切り換えを行うことができる。一方、燃費を優先した場合には、運転者は切換スイッチ21をオンにすることにより、無段変速モードの場合におけるアクセル開度に対する駆動力の変化の割合よりも、固定変速モードの場合におけるアクセル開度に対する駆動力の変化の割合を小さくすることができ、先に述べたように、燃費の向上を図ることができる。
次に、図6に示すハイブリッド車両の制御処理について説明する。この制御処理では、固定変速モード専用の駆動力特性を複数設定しておき、ECU4は、切換スイッチ21からの検出信号に基づいて、設定された複数の駆動力特性の中から、固定変速モードの場合における駆動力特性を選択することとする。
図6に示す例では、固定変速モード専用の駆動力特性として、駆動力特性P1、P2の2つが設定されているものとする。ここで、駆動力特性P1は、無段変速モード場合と比較して、アクセル開度に対する駆動力の変化の割合が小さく設定されている。駆動力特性P2は、駆動力特性P1と比較して、アクセル開度に対する駆動力の変化の割合が更に小さく設定されている。
ステップS201において、ECU4は、切換スイッチ21からの検出信号に基づいて、切換スイッチ21がオンになっているか否かについて判定する。ECU4は、切換スイッチ21がオフになっていると判定した場合には(ステップS201:No)、駆動力特性を変更せずに、無段変速モード及び固定変速モードのそれぞれの場合におけるアクセル開度に対する駆動力の変化の割合を同じとする(図3参照)。この後、ECU4は本制御処理を終了する。
ステップS201において、ECU4は、切換スイッチ21がオンになっていると判定した場合において(ステップS201:Yes)、切換スイッチ21がモードSW1に設定されていると判定した場合には、ステップS202の処理へ進み、固定変速モード専用の駆動力特性として駆動力特性P1に設定する。一方、ECU4は、切換スイッチ21がモードSW1でなく、モードSW2に設定されていると判定した場合には、ステップS203の処理へ進み、固定変速モード専用の駆動力特性として駆動力特性P2に設定する。ECU4は、ステップS202、S203の処理の後、本制御処理を終了する。
図6に示すハイブリッド車両の制御処理によれば、図5に示したハイブリッド車両の制御処理の効果に加えて、運転者は、固定変速モードにおける駆動力特性を任意に選択することが可能となる。例えば、ECU4は、駆動力特性P1を選択した場合には、駆動力特性を変更しない場合と比較して、燃費効果を大きくすることができ、駆動力特性P2を選択した場合と比較して、変速モードの切り換えに伴う駆動力変化を小さくしてショックを和らげることができる。一方、ECU4は、駆動力特性P2を選択した場合には、駆動力特性P1を選択した場合と比較して、燃費効果をより大きくすることができる。つまり、図6に示すハイブリッド車両の制御処理によれば、運転者は、固定変速モードにおける駆動力特性を任意に選択することが可能となり、燃費向上とドライバビリティの向上との両立を図ることが可能となる。
なお、以上に述べた例では、切換スイッチ21が設けられるとしているが、これに限られるものではない。このようにする代わりに、切換スイッチ21を設けないこととし、無段変速モードから固定変速モードへと変速モードが切り換わった場合に、固定変速モード専用の駆動力特性が自動的にECU4により設定されるとしても良いのは言うまでもない。
以上に述べたことから分かるように、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御方法では、ECU4は、無段変速モードの場合におけるアクセル開度に対する駆動力の変化の割合よりも、固定変速モードの場合におけるアクセル開度に対する駆動力の変化の割合を小さくしている。このようにすることで、固定変速モードにおけるエンジン動作点を任意に設定することができ、燃費の向上を図ることができる。
[変速モード切換制御方法]
次に、本実施形態に係る変速モード切換制御方法について説明する。無段変速モードから固定変速モードへと変速モードの切り換えが行われる場合には、ロック機構7のクラッチ7aの係合を行うために、当該クラッチ7aの回転数同期制御、正確には、クラッチ7aにおける係合要素同士の回転数同期制御が行われる。また、上述したように、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御方法によれば、無段変速モードから固定変速モードへと変速モードの切り換えが行われるとアクセル開度に対する駆動力が変化する。従って、本実施形態に係るハイブリッド車両において、無段変速モードから固定変速モードへと変速モードを切り換えるには、回転数同期制御だけでなく、駆動力制御も行う必要がある。ここで、回転数同期制御と駆動力制御とを同時に行うことは難しい。そこで、以下では、このような場合における変速モードの切換制御方法について説明する。
まず、変速モードを切り換える第1の変速モード切換制御方法について図7、8を用いて説明する。
図7(a)は、エンジントルクとエンジン回転数とで決まるエンジン動作点の移動の様子を示す図であり、縦軸がエンジントルクを示し、横軸がエンジン回転数を示している。具体的には、無段変速モードから固定変速モードへと変速モードが切り換えられるときのエンジン動作点の移動の様子を示している。
図7(a)において、実線Lcは、無段変速モードの場合におけるエンジン1の動作線(以下、「CVT動作線」と称する)を示している。CVT動作線Lcは、例えば、燃費の向上の観点から最適となるように規定されている。図7(a)に示すように、CVT動作線Lc上では、エンジン1のエンジントルクはトルクTKecが最大値となっている。このトルクTKecは、第1のモータジェネレータMG1の最大定格トルクに反力トルクが等しくなるときのエンジントルクを示している。言い換えると、エンジントルクがトルクTKecを超えると、当該エンジントルクに対応する反力トルクが第1のモータジェネレータMG1の最大定格トルクを超える。以下では、トルクTKecを「反力上限エンジントルク」と称することもある。CVT動作線Lc上の点Pecは、無段変速モード時におけるエンジン動作点を示している。
また、図7(a)において、トルクTKemは、エンジン1自体が出力可能なエンジントルクの最大値(以下、「最大エンジントルク」と称する)を示している。二点鎖線Lcmaxは、エンジン1より最大エンジントルクを出力させるときの動作線(以下、「最大エンジントルク動作線」と称する)を示している。破線Lsは、固定変速モードの場合におけるエンジン1の動作線の一例を示し、一点鎖線Lpは等パワー線を示している。点Pesp、Pesは、固定変速モード時におけるエンジン動作点を示している。
図7(b)は、このときの共線図の変化の様子を示している。図7(a)、(b)において、エンジン動作点が点Pecとなっているときのエンジン回転数をPecNとして示し、エンジン動作点が点Pesp、Pesとなっているときのエンジン回転数をPesNとして示している。
図7(a)では、ECU4は、無段変速モード時における動作点Pecから固定変速モード時における動作点Pesへとエンジン動作点を移動させることとする。まず、ECU4は、エンジントルクを低下させるとともにエンジン回転数を上昇させることにより、CVT動作線Lc上の点Pecから動作線Ls上の点Pespへと等パワー線Lp上に沿ってエンジン動作点を移動させる。このとき、図7(b)に示すように、共線図は、直線Acから直線Asへと変化する。つまり、このとき、ECU4は、ロック機構7のクラッチ7aの回転数同期制御を行うため、第1のモータジェネレータMG1を、負回転している状態から回転数「0」となるように制御する。その後、ECU4は、ロック機構7のクラッチ7aを係合した後、エンジントルクを低下させることにより、点Pespから点Pesへとエンジン動作点を移動させる。
図8は、図7(a)において点Pecから点Pesへとエンジン動作点が移動する場合における変速モード切り換え制御のタイミングチャートを示している。図8において、縦軸は上から順に、車速、アクセル開度、ロック指令フラグ、エンジン回転数、第1のモータジェネレータMG1の回転数(MG1回転数)、エンジントルク、第1のモータジェネレータMG1のトルク(MG1トルク)、ロック機構7のクラッチ7aの係合トルク、駆動力(実駆動力)を示しており、横軸は時間を示している。
なお、図8を含む以下に述べるタイミングチャートにおいて、MG1回転数、第2のモータジェネレータMG2の回転数(MG2回転数)について、正の値は正回転であることを示し、負の値は負回転であることを示すものとする。なお、エンジン回転数は常に正回転となっている。また、エンジントルク、MG1トルク、第2のモータジェネレータMG2のトルク(MG2トルク)についても、正の値は正トルクであることを示し、負の値は負トルクであることを示すものとする。また、以下において、トルク及び回転数が上昇又は低下といった場合には、特に断りが無い限り、トルク及び回転数の大きさ、即ち、絶対値が上昇又は低下することを示すものとする。
ECU4は、図4に示した、車速及びアクセル開度と変速モードとの関係を変速モード判定マップとしてメモリなどに保持している。ECU4は、車速及びアクセル開度を基に、変速モード判定マップより、無段変速モードから固定変速モードへと変速モードを切換えると判定した場合には、ロック指令フラグをオフからオンにする(時刻T1)。ECU4は、ロック指令フラグがオンになったのを確認すると、変速モードの切り換えを開始する。
ECU4は、時刻T1からT2にかけて、時刻T1のときのエンジントルクから、エンジントルクを徐々に低下させる制御を行う。また、ECU4は、時刻T1からT2にかけて、第1のモータジェネレータMG1を制御して、エンジントルクに対応する反力トルクと等しくなるようにMG1トルクを徐々に低下させつつ、MG1回転数を負回転時の回転数から「0」に近づける。MG1回転数が負回転時の回転数から「0」に近づくことにより、図7(b)に示すように、エンジン回転数は上昇する。これにより、図7(a)においてエンジン動作点が点Pecから点Pespへと移動する。なお、ここで、先にも述べたように、ECU4は、等パワー線Lp上に沿ってエンジン動作点を点Pecから点Pespへと移動させるため、時刻T1からT2にかけて駆動力は一定に保たれる。
ECU4は、MG1回転数が「0」になったときに(時刻T2)、アクチュエータ7bの押圧力を増加させてクラッチ7aを完全に係合させるとともに、MG1トルクを低下させて「0」にする。ECU4は、ロック機構7のクラッチ7aを係合した後、時刻T3からT4にかけて、エンジントルクを低下させる。これにより、図4より算出された固定変速モード時の駆動力を目標駆動力として、実際の駆動力が当該目標駆動力まで低下する。これにより、図7(a)においてエンジン動作点が点Pespから点Pesへと移動する。なお、ここで、このようにする代わりに、ECU4は、ロック機構7のクラッチ7aを係合すると同時に、エンジントルクを低下させるとしても良い。
以上に述べたように、第1の変速モード切換制御方法によれば、ECU4は、エンジン動作点を等パワー線上に沿って移動させつつロック機構7のクラッチ7aの回転数同期制御を行う。そして、ECU4は、ロック機構7のクラッチ7aを係合する係合制御を行うとともに、固定変速モード時の目標駆動力に応じてエンジントルクを変化させている。このように、回転数同期制御を行ってから駆動力制御を行うことで、無段変速モードから固定変速モードへと変速モードを切り換える際において、駆動力を容易に変化させることが可能となる。また、第1の変速モード切り換え方法によれば、回転数同期制御の際には、エンジン動作点を等パワー線上に沿って移動させるので、変速モード切り換えの際におけるドライバビリティの低下をも抑えることができる。
次に、変速モードを切り換える第2の変速モード切換制御方法について図9、10を用いて説明する。
図9(a)は、エンジントルクとエンジン回転数とで決まるエンジン動作点の移動の様子を示す図であり、縦軸がエンジントルクを示し、横軸がエンジン回転数を示している。具体的には、無段変速モードから固定変速モードへと変速モードが切り換えられるときのエンジン動作点の移動の様子を示している。図9(a)には、CVT動作線Lc、固定変速モードの場合におけるエンジン1の動作線のLs、等パワー線Lp、最大エンジントルク動作線Lcmaxが示されている。図9(b)は、このときの共線図の変化の様子を示している。
図9(a)では、ECU4は、無段変速モード時における動作点Pecから固定変速モード時における動作点Pesへとエンジン動作点を移動させることとする。しかしながら、図9(a)を見ると分かるように、点Pecにおけるエンジントルクは反力上限エンジントルクTKecとなっており、点Pesにおけるエンジントルクは、反力上限エンジントルクTKecを超えたトルクTKeswとなっている。つまり、点Pecから点Pesへとエンジン動作点を直線的に移動させると、第1のモータジェネレータMG1の最大定格トルクを反力トルクが超えてしまう。そこで、第2の変速モード切り換え方法では、ECU4は、エンジン動作点を点Pec、点PecA、点PecB、点Pesの順に矢印に沿って移動させることとする。
まず、ECU4は、反力上限トルクTKecからトルクTKecAへとエンジントルクを低下させることにより、点Pecから点PecAへと矢印に沿ってエンジン動作点を移動させる。その後、ECU4は、エンジン回転数を低下させることにより、点PecAから点PecBへと矢印に沿ってエンジン動作点を移動させる。このとき、図9(b)に示すように、共線図は、直線Acから直線Asへと変化する。つまり、このとき、ECU4は、第1のモータジェネレータMG1を、正回転している状態から回転数「0」となるように制御している。その後、ECU4が、ロック機構7のクラッチ7aを係合するとともに、エンジントルクをトルクTKecAからトルクTKeswへと上昇させることにより、点PecBから点Pesへとエンジン動作点を移動させる。
図10は、図9(a)において点Pecから点Pesへとエンジン動作点が移動する場合における変速モード切り換え制御のタイミングチャートを示している。図10において、縦軸は上から順に、車速、アクセル開度、ロック指令フラグ、エンジン回転数、MG1回転数、エンジントルク、MG2トルク、MG1トルク、ロック機構7のクラッチ7aの係合トルク、駆動力(実駆動力)を示しており、横軸は時間を示している。
ECU4は、図4に示した、車速及びアクセル開度と変速モードとの関係を変速モード判定マップとしてメモリなどに保持している。ECU4は、車速及びアクセル開度を基に、変速モード判定マップより、無段変速モードから固定変速モードへと変速モードを切換えると判定した場合には、ロック指令フラグをオフからオンにする(時刻T1)。ECU4は、ロック指令フラグがオンになったのを確認すると、変速モードの切り換えを開始する。
時刻T1において、エンジン動作点は点Pecにあるため、エンジントルクは反力上限エンジントルクTKecとなっている。ECU4は、時刻T1において、エンジントルクを反力上限エンジントルクTKecからトルクTKecAへ低下させるとともに、MG1トルクを最大定格トルクTKmgxからトルクTKmgAへと低下させる。また、このとき、ECU4はMG2トルクも低下させる。これにより、図9(a)においてエンジン動作点が点Pecから点PecAへと移動する。
ECU4は、時刻T1からT2において、エンジントルクをトルクTKecAに保持するとともに、MG1トルクをトルクTKmgAに保持する。また、ECU4は、時刻T1からT2において、MG2トルクを徐々に低下させる。ここで、ECU4は、時刻T1からT2において、MG1回転数の同期制御を行う。具体的には、第1のモータジェネレータMG1を制御して、MG1回転数を低下させ「0」に近づける。これにより、図7(a)においてエンジン動作点が点PecAから点PecBへと移動する。
ECU4は、MG1回転数が「0」になったときに(時刻T2)、ロック機構7のクラッチ7aを係合するとともに、エンジントルクをトルクTKecAからトルクTKeswへと上昇させる。これにより、図4より算出された固定変速モードにおける駆動力を目標駆動力として、駆動力が当該目標駆動力まで上昇する。このとき、図9(a)においてエンジン動作点が点PecBから点Pesへと移動する。
以上に述べたように、第2の変速モードの切換制御方法によれば、ECU4は、エンジントルクを一旦低下させてクラッチ7aの回転数同期制御を行う。そして、ECU4は、ロック機構7のクラッチ7aを係合する係合制御を行うとともに、固定変速モード時の目標駆動力に応じてエンジントルクを変化させている。このようにすることで、固定変速モード時におけるエンジントルクが反力上限エンジントルクを超えるような場合であっても、即ち、変速モード切換え中にMG1トルクが出力制限を超える可能性がある場合であっても、MG1トルクが出力制限を超えることなく、変速モードの切り換えを行うことができる。逆に言うと、この第2の変速モード切り換え方法によれば、MG1トルクの出力を制限することが可能となるので、第1のモータジェネレータMG1の発熱を抑えることができる。
さらに、第2の変速モード切換制御方法では、エンジントルクを一旦低下させた後で、回転数を変化させているので、このときの運転者の感覚としては、オートマチック車のアップシフトのときと同様の感覚となる。従って、運転者は違和感を覚えずに済む。
次に、変速モード切換制御処理について図11に示すフローチャートを用いて説明する。この変速モード切換制御処理では、ECU4は、変速モード切り換え中にMG1トルクが出力制限を超える可能性があるか否かに応じて、変速モードの切換制御を決める。
ステップS301において、ECU4は、車速及びアクセル開度を基に、図4に示す変速モード判定マップより、ロック領域SAに車両動作点が位置するか否か、即ち、無段変速モードから固定変速モードに変速モードを切り換えるか否かについて判定する。ECU4は、ロック領域SAに車両動作点が位置せず、固定変速モードに変速モードを切り換えないと判定した場合には(ステップS301:No)、本制御処理を終了する。一方、ECU4は、ロック領域SAに車両動作点が位置し、固定変速モードに変速モードを切り換えると判定した場合には(ステップS301:Yes)、ステップS302の処理へ進む。
ステップS302において、ECU4は、変速モード切り換え中にMG1トルクが出力制限を超える可能性があるか否か、例えば、固定変速モード時におけるエンジントルクが反力上限トルクTKecを超えているか否か、について判定する。
ステップS302において、ECU4は、変速モード切り換え中にMG1トルクが出力制限を超える可能性がないと判定した場合には(ステップS302:No)、ステップS303の処理へ進む。ステップS303において、ECU4は、第1の変速モード切換制御を行う。即ち、ECU4は、図7、図8に示したように、エンジン動作点を等パワー線上に沿って移動させつつロック機構7のクラッチ7aの回転数同期制御を行った後で、ロック機構7の係合制御を行うとともに、固定変速モード時の目標駆動力に応じてエンジントルクを変化させる。このようにすることで、駆動力を容易に変化させることが可能となるとともに、変速モード切り換えの際におけるドライバビリティの低下も抑えることができる。この後、ECU4は、本制御処理を終了する。
ステップS302において、ECU4は、変速モード切り換え中にMG1トルクが出力制限を超える可能性があると判定した場合には(ステップS302:Yes)、ステップS304の処理へ進む。ステップS304において、ECU4は、第2の変速モード切換制御を行う。即ち、ECU4は、図9、図10に示したように、エンジントルクを一旦低下させてクラッチ7aの回転数同期制御を行った後で、ロック機構7の係合制御を行うとともに、固定変速モード時の目標駆動力に応じてエンジントルクを変化させる。このようにすることで、変速モード切り換え中にMG1トルクが出力制限を超える可能性がある場合であっても、MG1トルクが出力制限を超えることなく、変速モードの切り換えを行うことができる。この後、ECU4は、本制御処理を終了する。
以上に述べたように、第1及び第2の変速モード切換制御方法によれば、無段変速モードから固定変速モードへと変速モードを切り換える際において、回転数同期制御と駆動力制御とを両立することができる。
[変形例]
なお、本発明は上記の各形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内において種々の形態にて実施できる。例えば、本発明を適用することが可能なハイブリッド車両の機構としては、第1のモータジェネレータMG1のロータをロックすることにより固定変速モードを実現する機構を有するものには限られない。代わりに、例えば、動力分配機構の回転要素のうち、いずれか一つをブレーキによりロックすることで固定変速モードを実現する機構を有するものであっても、本発明を適用することが可能である。例えば、上述の動力分配機構20に加えて、動力分配機構20と連結された新たな動力分配機構が設けられ、当該新たな動力分配機構のうち、いずれか一つの回転要素をブレーキによりロックすることが可能に構成されたハイブリッド車両にも本発明を適用可能である。言い換えると、図2に示した第1のモータジェネレータMG1、エンジン1、駆動軸3の3つの点に加えて、ブレーキを示す点が新たに追加された共線図の性質を有するハイブリッド車両にも本発明を適用可能である。
さらに、上述の各機構に加えて、複数の変速段を有する固定変速装置を更に備える所謂マルチモードタイプのハイブリッド車両の機構であっても、本発明を適用することが可能である。また、本発明を適用可能な車両としてはハイブリッド車両には限られるものではない。例えば無段変速機と固定変速機を有する車両のように、固定変速モードと無段変速モードを有する車両であれば本発明を適用可能である。このような車両においても、無段変速モードの場合におけるアクセル開度に対する駆動力の変化の割合よりも、固定変速モードの場合におけるアクセル開度に対する駆動力の変化の割合を小さくすることにより、固定変速モードにおけるエンジン動作点を任意に設定に設定できるようになり、燃費の向上を図ることができる。