しかしながら、上述のような従来の排気還流装置の異常検出装置にあっては、全閉固着時に誤って正常判定することを確実に防止するために特定の診断条件が成立する状態が十分に継続されたときに正常か異常かの判定を実行するものであったため、その判定に長い時間がかかり、異常検出処理の実行頻度が低くなってしまうという問題があった。
また、EGRガス温度(還流ガス温度)をエンジン冷却水温や吸気温と比較しながら正常か異常かを判定する場合、異常検出に要する時間が長くなるばかりか、安定した車両走行状態である必要から、検出頻度が非常に低くなっていた。例えば、図7に示すように、EGRバルブが開いた状態が継続される場合にEGRガス温度が収束するときの温度を検出すれば、信頼度の高い異常判定が可能になるが、その場合、車両の定常走行中に例えば30秒程度の時間が必要になり、ある程度高車速での走行中のような限られた運転状態に限られていた。
さらに、EGRガス温度をエンジン冷却水温や吸気温と比較する場合に、その水温や外気温が低くなると、誤判定となる可能性があり、加減速が多い一般道路上の走行時のようにEGRバルブの開閉が繰り返される場合に、検出期間前の水温の低下や外気温度の低下が今回の異常検出処理に影響することで、異常判定の精度が低下していた。
加えて、異常検出のためのEGRバルブの開度が小さいと、排気還流系へのデポジットの堆積等によってEGR流量が低下した場合に、EGRバルブが開いても十分な温度変化が検出されず、誤判定の可能性も高くなっていた。
また、一旦異常が検出された後に正常に戻り、正常判定が繰り返されるといった場合には、異常が検出されたことをドライバに警告出力するMIL(Malfunction Indicator Lamp)の点灯状態を解除するといったことが考えられるが、異常検出処理の実行頻度が低いためにそのような処理が困難になるという問題もあった。
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、異常検出処理の実行頻度を大幅に増加させることができる高検出精度の排気還流装置の異常検出装置を提供することを目的とする。
本発明に係る排気還流装置の異常検出装置は、上記目的達成のため、(1)内燃機関の排気部と吸気部の間に介在する排気還流制御バルブを介して前記内燃機関の排気ガスの一部を前記吸気部側に還流させる排気還流装置に異常が発生したとき、前記排気還流制御バルブの作動状態と前記吸気部に還流する排気ガスの温度の変化とに基づいて前記異常を検出する排気還流装置の異常検出装置において、前記排気還流制御バルブが開弁状態であって前記吸気部に還流する排気ガスの温度が第1設定温度以上であるとき、前記排気還流装置が正常であると判定するための第1条件が成立するか否かを判定し、該第1条件が成立しないときには保留と判定する第1判定手段と、前記第1判定手段により前記保留と判定されたことを保留履歴として記憶保持する保留履歴保持手段と、前記保留履歴保持手段に前記保留履歴が記憶保持され、かつ、前記排気還流制御バルブが閉弁状態から特定開度以上の開弁状態に切り替えられたとき、該切り替えの時点から予め定めた異常判定時間内に、前記排気還流装置が異常であるための第2条件が成立するか否かを判定する第2判定手段と、前記特定開度を標準大気圧と現在地の気圧との差に応じて補正する補正係数を更新可能に設定する補正係数設定手段と、前記補正係数設定手段により前記補正係数が更新されたことを更新履歴として記憶保持する更新履歴保持手段と、を備え、前記第2判定手段は、前記切り替えの時点から前記異常判定時間内に、前記吸気部に還流する排気ガスに予め設定された温度変化量を超える温度変化が生じないとき、前記第2条件が成立すると判定することを特徴とするものである。
この構成により、吸気部に還流する排気ガス(以下、単に還流ガスともいう)の温度が第1設定温度以上であれば、排気還流制御バルブが開弁状態となったときには第1判定手段による第1条件が成立する正常か第1条件が成立しない保留かの判定処理が実行されることになり、第1条件が成立しない保留判定の履歴が生じた後に、第2判定手段による第2条件が成立する異常か否かの判定処理が実行されることになる。したがって、第1判定手段により正常でない状態を検出できる判定が高頻度に実行されるとともに、正常判定に至らないことを示す保留判定の履歴が生じると、第2判定手段により第1条件以外の第2条件を基に迅速な異常判定がなされることで、高検出精度の異常検出が実行されることになる。
また、排気還流制御バルブの開弁直後の還流ガスの温度変化を基に異常判定がなされることになり、排気還流制御バルブの開弁継続による収束ガス温度を検出する場合のように還流ガスの温度を長時間モニタする必要がなくなり、異常検出頻度を十分に高めることができる。しかも、特定開度を正常判定処理時より大きい開度値(例えば正常判定時の開度値の3倍程度)に設定することで、デポジットの付着や堆積等によって還流ガスの還流量にある程度の低下が生じても、十分な温度変化を生じさせることができ、還流ガス温度の大きな変化が確実に得られるから、異常検出精度をも高めることができる。加えて、車両が高地に移動して気圧が低下したような場合でも、排気還流制御バルブが閉弁状態から開弁状態に切り替えられたときに、十分な還流ガス温度の変化が生じるような補正がなされることになり、誤った異常判定が未然に防止される。
本発明の排気還流装置の異常検出装置においては、好ましくは、(2)前記第2判定手段は、前記排気還流制御バルブが前記閉弁状態から予め設定された制限時間内に前記特定開度以上の開弁状態に切り替えられたときにのみ、前記第2条件が成立するか否かを判定するものである。
この構成により、制限時間内の排気還流制御バルブの急な開弁によって還流ガスの温度変化が急峻で明確なものとなり、異常検出精度をも高めることができる。しかも、排気還流制御バルブが閉弁状態から制限時間内に特定開度以上の開弁状態に切り替えられる頻度が車両用内燃機関において高くなるように制限時間を設定すれば、還流ガス温度の急峻な変化が得られ、検出頻度を高めることができる。
本発明の排気還流装置の異常検出装置においては、(3)前記保留履歴保持手段は、前記第1判定手段により前記第1条件が成立するか否かの判定が実行される度に1回分の実行履歴データを記憶保持し、前記第2判定手段は、前記保留履歴保持手段により複数回分の前記実行履歴データが記憶保持されているときに、前記第2条件が成立するか否かを判定するのが好ましい。
この構成により、正常判定前の還流ガス温度の条件は成立するものの、正常判定には至らなかった保留判定の判定精度が高められ、その判定後に異常判定を実行することで、異常検出精度が高められる。
本発明の排気還流装置の異常検出装置においては、(4)前記第2判定手段は、前記吸気部に還流する排気ガスの温度が、前記第1設定温度より低い第2設定温度を超え、かつ、前記第1設定温度に達しない第2判定可能温度範囲内にあるときに、前記第2条件が成立するか否かを判定するのが好ましい。
この構成により、第1設定温度および第2設定温度を適宜設定し、通常運転域での的確な異常検出を行うことができる。
本発明の排気還流装置の異常検出装置においては、(5)前記第2判定手段は、前記異常判定時間を複数に分割した分割検出時間ごとに、前記吸気部に還流する排気ガスの温度を検出し、前記分割検出時間ごとに検出された温度の変化量を積算して、前記異常判定時間内における前記排気ガスの温度変化量を算出するのが好ましい。
この構成により、還流ガス温度のノイズ的な変動の影響を排除することができることに加えて、異常判定時間の分割検出時間ごとに検出された温度の変化量を絶対値で積算するようにすれば、総温度変化量を算出することができ、第2判定手段の判定精度を高めることができる。例えば、排気還流制御バルブが閉弁状態から開弁状態に切り替えられたときに排気還流量が少ないために還流ガス温度の変化に遅れが生じ、開弁直後に還流ガス温度が一時的に低下するといったことがあり得るが、そのような場合でも、その総温度変化量を精度良く把握できる。
本発明の排気還流装置の異常検出装置においては、(6)前記内燃機関が燃料カット状態から通常の燃料噴射状態に復帰したときの該復帰時点から予め設定された禁止時間内においては、前記第2判定手段は、前記第2条件が成立するか否かの判定を禁止するのが好ましい。
この構成により、燃料カット状態から通常の燃料噴射状態に復帰したときのように排気ガスおよび還流ガスの温度および圧力が変動しやすい運転領域では異常検出が禁止され、誤った異常検出が未然に防止される。
本発明の排気還流装置の異常検出装置においては、(7)前記内燃機関が特定空燃比よりリッチ側になるよう燃料噴射量を増量補正する第1の制御状態から前記特定空燃比に復帰する第2の制御状態に復帰したとき、該復帰時点から予め設定された禁止時間内においては、前記第2判定手段は、前記第2条件が成立するか否かの判定を禁止するのが好ましい。
この構成により、燃料噴射量が変化し空燃比が大きく変化したときのように排気ガスおよび還流ガスの温度および圧力が変動しやすい運転領域では異常検出が禁止され、誤った異常検出が未然に防止される。
本発明の排気還流装置の異常検出装置においては、(8)前記第2判定手段が、前記内燃機関の完全暖機後に作動するのがよい。
この構成により、通常は排気還流がなされないアイドリング時に誤って異常判定する可能性をなくすことができる。
本発明の排気還流装置の異常検出装置においては、(9)前記第1判定手段は、前記排気還流制御バルブが開弁状態にあるとき、予め定めた正常判定時間ごとに前記吸気部に還流する排気ガスに予め設定された正常温度変化量を超える温度変化が生じたか否かを判定し、該正常温度変化量を超える温度変化が生じたとき、前記第1条件が成立すると判定するのが好ましい。
この構成により、還流ガス温度が第1設定温度以上で排気還流制御バルブが開いていれば、正常判定時間ごとに、還流ガスの温度に正常温度変化量を超える温度変化が生じた場合、正常と判定される。したがって、正常温度変化量を適宜設定して、的確な正常判定ができる。
上記(9)に記載の排気還流装置の異常検出装置においては、(10)前記第1判定手段は、前記正常判定時間中に前記吸気部に還流する排気ガスの温度が第1設定温度未満に低下した場合でも、前記正常判定時間中の前記低下後に前記吸気部に還流する排気ガスの温度が前記第1設定温度以上に達したときには、前記第1条件が成立するか否かを判定するのが好ましい。
この構成により、還流ガス流量が少なく還流ガス温度の変化に遅れが生じ、還流ガス温度が一旦は第1設定温度未満に低下した場合であっても、正常判定時間内に第1設定温度以上に達したときに的確な正常判定がなされることになる。
上記(9)、(10)に記載の排気還流装置の異常検出装置においては、(11)前記第1判定手段は、前記正常判定時間を複数に分割した分割検出時間ごとに、前記吸気部に還流する排気ガスの温度を検出し、前記分割検出時間ごとに検出された温度の変化量を積算して、前記正常判定時間内における前記排気ガスの温度変化量を算出するのが好ましい。
この構成により、還流ガス温度のノイズ的な変動の影響を排除することができることに加えて、正常判定時間の分割検出時間ごとに検出された温度の変化量を絶対値で積算するようにすれば、総温度変化量を算出することができ、第1判定手段の判定精度を高めることができる。例えば、排気還流制御バルブが閉弁状態から開弁状態に切り替えられたときに排気還流量が少ないために還流ガス温度の変化に遅れが生じ、開弁直後に還流ガス温度が一時的に低下するといったことがあり得るが、そのような場合でも、その総温度変化量を精度良く把握できる。
なお、ここにいう異常判定時間と正常判定時間とは、独立して任意の値に設定可能であり、好ましくは互いに異なる時間に設定される。また、排気還流制御バルブが閉弁状態から開弁状態に切り替えられ、第2判定手段での判定処理が開始される時点での排気還流制御バルブの開度、例えば特定開度は、排気還流制御バルブが閉弁状態から開弁状態に切り替えられ、第1判定手段での判定処理が開始される時点の排気還流制御バルブの開度よりも大きく設定されるのがよい。さらに、排気還流量が多くなる運転領域、例えば負荷が60%程度以上、機関回転数が1600rpm程度以上で、各判定手段の判定処理が実行されるのがよい。
本発明によれば、第1判定手段により正常でない状態を検出できる判定が高頻度に実行されるとともに、正常判定に至らないことを示す保留判定の履歴が生じると、第2判定手段により第1条件以外の第2条件を基に迅速な異常判定がなされるようにしているので、異常検出処理の実行頻度を大幅に増加させることができる高検出精度の排気還流装置の異常検出装置を提供することができる。
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
(第1実施形態)
図1〜図4は、本発明の第1実施形態に係る排気還流装置の異常検出装置の概略の構成を示している。なお、図1中では直接噴射式のエンジンとして示すが、ポート噴射式あるいはデュアル噴射式のものであってもよい。
まず、その構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態の車両用内燃機関の制御装置は、自動車に搭載される多気筒の内燃機関、例えば4気筒の4サイクルガソリンエンジン(図1中には1気筒のみ図示している;以下単にエンジンという)1に装備されるもので、そのエンジン1の各気筒1aにはピストン2によって燃焼室3が形成され、吸気バルブ4と排気バルブ5が図示しない動弁機構により開閉駆動可能に装備されるとともに、燃焼室3内に露出するよう点火プラグ6が配置されている。また、吸気管7内には電子制御式のスロットルバルブユニット8が設けられており、このスロットルバルブユニット8より燃焼室3側には吸気管7と一体に吸気部を形成するとともに所定の容積を有するサージタンク9が設けられている。
エンジン1の複数の気筒1aにはそれぞれ筒内噴射用のインジェクタ11(燃料噴射弁)が設けられており、これらのインジェクタ11は複数の気筒1aに燃料を供給するデリバリパイプ12に接続されている。このデリバリパイプ12には、車両に搭載された燃料タンク15から燃料ポンプ16により汲み出された燃料(例えばガソリン)が、燃料通路Lを通して供給されるようになっている。エンジン1の排気管18には排気浄化用の触媒コンバータ19(例えば3元触媒を内蔵する触媒装置)が装着されている。
エンジン1においては、ピストン2のストロークに応じて吸気バルブ4および排気バルブ5が開閉し、圧縮行程で空気が圧縮された燃焼室3内にインジェクタ11から燃料、例えばガソリンが噴射されるとともに点火プラグ6により火花点火がなされ、燃焼室3内での爆発・燃焼行程後の排気ガスが排気管18に排気され、触媒コンバータ19により浄化される。なお、エンジン1は、ガソリンのみならず、バイオエタノール燃料やガス燃料(LPGまたはLNG)等の燃料を用いるものあってもよい。
一方、エンジン1には、排気ガスの一部を排気管18から吸気管7側に還流させる排気還流装置としてのEGR装置50が装着されており、EGR装置50は、排気管18(排気部)と吸気管7(吸気部)との間に介在するEGRパイプ51(排気還流管)と、EGRパイプ51の管路を開閉するとともにその開度を変化させることができる開度可変のEGRバルブ52(排気還流制御バルブ)とを備えており、EGRバルブ52は、例えばステップモータ52mと、これによりバルブ開度を変化させる図示しない弁体とを有している。EGRパイプ51は、その一部または全部がシリンダヘッドや吸気マニホールドを構成する大型部品に一体に形成されてもよい。
EGRバルブ52の近傍には、排気管18からEGRバルブ52側に還流される排気ガスの一部(以下、還流ガスという)の温度を検知する還流ガス温度センサ48が設けられている。この還流ガス温度センサ48は、EGRバルブ52の開弁時に排気管18からEGRバルブ52側に還流され、さらに吸気管7側、例えばサージタンク9内もしくはそれより吸気バルブ4側(吸気ポート側)に還流される還流ガスの温度を、EGRバルブ52の近傍で検知するようになっており、EGRバルブ52のハウジング内に配置されてもよい。
インジェクタ11および点火プラグ6は、それぞれ対応する燃焼室3の近傍に配置されており、これらインジェクタ11および点火プラグ6の作動は、エンジン1を電子制御するECU30(電子制御ユニット)からの燃料噴射信号Pingおよび点火時期制御信号Pignによってそれぞれ制御されるようになっている。
ECU30は、詳細なハードウェア構成を図示しないが、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ等からなるバックアップ用メモリに加えて、A/D変換器等を含む入力インターフェース回路と、ドライバ回路を含む出力インターフェース回路等を含んで構成されている。なお、ECU30にはキースイッチ37のON/OFF信号が取り込まれるとともに、図示しないバッテリからの電源供給がなされる。
また、このECU30の入力インターフェース回路には、エアフローメータ41、クランク角センサ42、スロットル開度センサ43、車速センサ44、水温センサ45、アクセルポジションセンサ46、酸素センサ47および前述の還流ガス温度センサ48等のセンサ群が接続されており、これらセンサ群41〜48からのセンサ情報がECU30に取り込まれるようになっている。また、ECU30の出力インターフェース回路には、インジェクタ11の他に、各点火プラグ6を駆動する図示しないイグナイタ、スロットルバルブユニット8のモータ部8m、ステップモータ52m、燃料ポンプ16をON/OFFさせる図示しないリレースイッチ回路等が接続されている。
ECU30のCPUは、主としてROMに格納された制御プログラムに従って、RAMおよびバックアップメモリとの間でデータを授受しながら、入力インターフェース回路から取り込んだセンサ情報や予め設定された設定値情報、マップデータ等に基づいて所定の演算処理を実行し、その結果に応じて出力インターフェース回路からの制御信号出力を行うことで、エンジン1の電子制御を実行するようになっている。
すなわち、ECU30は、例えばエアフローメータ41およびクランク角センサ42のセンサ情報から得られるエンジン1の1回転当りの吸入空気量に基づいて、基本燃料噴射量に相当するインジェクタ11の基本燃料噴射時間を演算し、この基本燃料噴射時間に最適空燃比となるよう各センサ信号に基づく補正処理を加えて、適正な燃料噴射量で噴射時期として設定されたクランク角に達する時点でインジェクタ11からの燃料噴射を実行するために、複数の制御値を算出する。また、ECU30は、エンジン1の運転状態に応じて、適正な点火時期やスロットル開度、EGR量(排気還流量)等を実行するための複数の制御値をそれぞれ算出する。そして、ECU30は、その出力インターフェース回路からインジェクタ11を駆動し、エンジン1内での燃料噴射量を目標噴射量に制御するための燃料噴射信号Pinjや、イグナイタを介して所定の点火時期に点火プラグ6を点火させる点火時期制御信号Pign、スロットルバルブユニット8のモータ部8mやEGRバルブ52のステップモータ52mへの開度指令信号、あるいは燃料ポンプ16をON/OFFさせる前記リレースイッチの切替信号等をそれぞれ出力する。
また、ECU30は、EGRバルブ52の作動状態と吸気管7側に還流する排気ガスの温度の変化とに基づいて、EGR装置50が正常であるか異常が発生しているかを判定して異常を検出する処理と、EGR装置50の異常が検出されたことをドライバに警告出力する手段、例えばMILを点灯させる処理とを実行するようになっている。
具体的には、図5、図6に示すフローチャートを用いて後述するが、ECU30は、複数の機能部として、EGRバルブ52が開弁状態であって吸気管7に還流する還流ガスの温度gamthg(図2参照)が第1設定温度thg1以上であるとき、EGR装置50が正常であると判定するための第1条件が成立するか否かを判定し、その第1条件が成立しないときには保留と判定する第1判定部31(第1判定手段)と、この第1判定部31により保留と判定されたことを保留履歴として記憶保持する履歴保持部32と、履歴保持部32に保留履歴が記憶保持されているときに、EGR装置50が異常であるための第2条件が成立するか否かを判定する第2判定部33(第2判定手段)と、を備えている。
ECU30の第1判定部31は、図2に示すように、還流ガスの温度gamthgが第1設定温度thg1以上であってEGRバルブ52が第1特定開度okcndstep以上の開弁状態にあるとき、判定実行フラグecprengcndをセットして、予め定めた正常判定時間t1ごとに吸気管7側に還流する排気ガスに予め設定された正常温度変化量(図5中のΔthgok)を超える温度変化が生じたか否かを判定して、その正常温度変化量を超える温度変化が生じたときに第1条件が成立すると判定するようになっている。
ここにいうEGRバルブ52の第1特定開度以上の開弁状態とは、例えば閉弁時をゼロとし開弁方向へのステップモータ52mのステップ数で与えられるバルブ開度値(図5、図6中のeegrrq)が予め設定されたステップ数okcndstep(例えば、10ステップ)以上である状態をいう。この場合、第1特定開度とは、後述する異常判定処理のための第2特定開度よりも小さい開度値となっている。また、第1判定部31は、正常判定時間t1中に吸気管7に還流する排気ガスの温度、すなわち還流ガス温度gamthgが低下し、第1設定温度thg1未満に低下してしまった場合でもその正常判定時間t1中であってその低下時点後に還流ガスの温度gamthgが第1設定温度thg1以上に達したときには、第1条件が成立するか否かの判定を実行するようになっている。
また、第1判定部31は、正常判定時間t1を複数に分割した分割検出時間(図5中のtmd1;例えば、500msec)ごとに、吸気管7に還流する還流ガスの温度gamthgを検出し、その分割検出時間tmd1ごとに検出された温度の変化量Δthg1を積算し、正常判定時間t1内における還流ガスの総温度変化量である正常判定用の軌跡長(=Σ|tmd1ごとのΔthg1|;図5中のethgintok)を算出して、この正常判定用の軌跡長ethgintokが正常温度変化量Δthgok以上であるか否かによって第1条件が成立する(正常である)か否かを判定するようになっている。
ECU30の第2判定部33は、EGRバルブ52が略閉弁状態から第2特定開度(図6中のngcndstep)以上の開弁状態に切り替えられ、その切り替えの時点から予め定めた異常判定時間(図6中のt4)内に吸気管7に還流する排気ガスに予め設定された温度変化量(図6中のΔthgng)を超える温度変化が生じないとき、第2条件が成立する(異常である)と判定する。なお、ここにいう第2条件が成立するのは、例えばEGRバルブ52がデポジット等によって全閉固着した場合やそれに近い略閉弁状態で固着している場合である。また、EGRバルブ52の略閉弁状態とは、開度ゼロに近い低開度、例えば閉弁時をゼロとし開弁方向へのステップモータ52mのステップ数で与えられるバルブ開度値(図5、図6中のeegrrq)が予め設定されたステップ数clstp(例えば、5ステップ)未満である状態をいう。また、第2特定開度とは、例えば70%以上の大きなバルブ開度、本実施形態では、前述のバルブ開度値eegrrqがステップ数ngcndstep(例えば、30ステップ)以上となる開弁状態である。
また、第2判定部33は、EGRバルブ52が閉弁状態から予め設定された制限時間t3内に第2特定開度以上の開弁状態に切り替えられたときにのみ、第2条件が成立するか否かを判定するようになっている。この制限時間t3は、正常判定用の制限時間t0に比べて十分に短い時間、例えば半分程度の時間に設定されている。すなわち、EGRバルブ52が開度大の開弁状態に比較的急に開かれるときに、EGRバルブ52が正常に動作している限り、その急な開弁によって還流ガスの温度変化が急峻で明確なものとなり、かつ、十分な流量で十分な温度変化が生じるように設定されている。
ECU30の履歴保持部32は、第1判定部31により第1条件が成立するか否かの判定が実行される度に1回分の実行履歴データを記憶保持する保留履歴保持手段の機能を有しており、第2判定部33は、この履歴保持部32により複数回分の実行履歴データが記憶保持されているときに、第2条件が成立するか否かを判定できるようになっている。
ECU30は、また、第1特定開度および第2特定開度の設定値を標準大気圧と車両の現在地の気圧との差に応じて補正する補正係数kpaを更新可能に設定する補正部34(補正係数設定手段)を備えており、この補正部34は、大気圧変化によってEGR開度指令値に対し実際のEGR率(還流排気ガス量と新気の吸気量との比)が変化するのを防止するようEGR開度指令値に対する補正係数kpaを可変設定、すなわち更新するようになっている。なお、ECU30のROMには、同一要求負荷(スロットル開度)に対して同一出力が得られるスロットル開度の変化に基づいて、標準大気圧からの気圧の変化量を把握し、現在の気圧を推定するためのプログラムが格納されている。また、このECU30は、例えばエンジン回転数およびスロットル開度に応じてROM内に予め格納されたEGR量(排気還流量)設定マップを基に、特定のエンジン回転数およびスロットル開度の近傍領域となるEGR量大の運転領域からエンジン回転数または/およびスロットル開度が外れるほどEGR量小となるようにEGR量を算出するようになっている。
ECU30の履歴保持部32は、前述の保留履歴保持手段の機能の他に、この補正部34により補正係数kpaが更新されたことを更新履歴として記憶保持する更新履歴保持手段の機能を併有している。
さらに、第2判定部33は、吸気管7に還流する還流ガスの温度gamthgが、第1設定温度thg1より低い第2設定温度thg2を超え、かつ、第1設定温度thg1に達しない第2判定可能温度範囲(例えば、75°C≦還流ガス温度gamthg≦120°C)内にあるときに、第2条件が成立するか否かを判定するようになっている。また、第2判定部33は、履歴保持部32に更新履歴が記憶保持され、かつ、EGRバルブ52が閉弁状態から特定開度以上の開弁状態に切り替えられたとき、その切り替えの時点から予め定めた異常判定時間(図6中のt4)内に、第2条件が成立するか否かを判定する。
加えて、第2判定部33は、図4に示すように、異常判定時間t4を複数に分割した分割検出時間tmd2(例えば、500msec)ごとに、吸気管7に還流する還流ガスの温度を検出し、その分割検出時間tmd2ごとに検出された温度の変化量Δthg2を積算して、異常判定時間t4内における還流ガスの総温度変化量である異常判定用の軌跡長(=Σ|tmd2ごとのΔthg2|;図6中のethgintng)を算出するようになっている。
前述の正常判定時間t1と異常判定時間t4は、異なる時間に設定されており、具体的には、正常判定時間t1よりも異常判定時間t4の方が短い時間になっている。また、正常判定用の軌跡長ethgintokを基に正常判定するための判定閾値である正常温度変化量Δthgokは、異常判定用の軌跡長ethgintngを基に異常判定するための判定閾値である温度変化量Δthgngより大きくなっている。これらの判定時間t1、t4および温度変化量Δthgok、Δthgngは、それぞれエンジン1の仕様に応じてそれぞれの標準値を設定されるとともに、各エンジン1ごとに適合調整される。
ECU30の第2判定部33は、エンジン1がいわゆる減速燃料カット処理等による燃料カット状態から通常の燃料噴射状態に復帰したときのその復帰時点から予め設定された禁止時間内において、さらに、エンジン1が特定空燃比よりリッチ側になるよう燃料噴射量を増量補正する第1の制御状態から特定空燃比に復帰する第2の制御状態に復帰したときのその復帰時点から予め設定された禁止時間内において、それぞれ第2条件が成立するか否かの判定を禁止するようになっている。
また、ECU30は、水温センサ45の検知水温情報ethw(図3参照)やクランク角センサ42の検出情報から得られるエンジン回転数情報ene[rpm]を基に、エンジン1が完全暖機状態に達したか否かを判定し、その完全暖機後に第1判定部31および第2判定部33を作動させ、それぞれの判定処理を実行可能な状態とするようになっている。
ところで、第2条件が成立する場合、例えばEGRバルブ52がデポジット等によって全閉固着した場合やそれに近い略閉弁状態で固着している場合には、EGRバルブ52がそのステップモータ52mの発生トルクによって固着状態から脱出し得ることもある。
そこで、ECU30は、EGR装置50の異常をMILの点灯によりドライバに警告する出力を行った後に正常判定が予め定めた複数回だけ繰り返される状態に至った場合に、MILの点灯状態を解除する処理を実行することもできるようになっている。
なお、低圧補正係数kpaや高温補正係数ka1による補正は、例えば第1特定開度okcndstepのベース値Sbst1が10ステップであるとき、12ステップや15ステップといった具合に増加させる方向のものであり、第2特定開度ngcndstepのベース値Sbst2が30ステップであれば、40ステップにするといった具合に増加させる補正係数である。
次に、ECU30に上述のように異常検出の機能を持たせる制御プログラムについて説明する。
図5および図6は、ECU30で実行される制御プログラムの概略処理手順を示すフローチャートであり、この制御プログラムにより、エンジン1の運転中、以下に述べるようにEGR装置50の動作についての正常判定処理と異常判定処理とがそれぞれ並行して所定時間ごと(例えば、数10ミリ秒ごと)に繰り返されるようになっている。
まず、ECU30によりエンジン1が完全暖機状態に達したとの判定がなされると、図5に示す本プログラムが開始され、最初に、正常判定処理と異常判定処理とに共通する共通前提条件が成立するか否かがチェックされる(ステップS11)。
ここでの共通前提条件とは、例えばエンジン回転数eneが暖機回転数を超え、さらに排気還流量が比較的多くなるエンジン回転数域に達していること、要求負荷がEGR装置50による排気還流を停止させる程度の高負荷(例えば60%を超える高負荷)の要求状態でないこと、吸気温度が予め設定された通常吸気温度範囲内であること、燃料噴射量の増量補正中でないこと、エンジン1の始動後の経過時間が予め設定された待ち時間以上であることといった条件である。
この共通前提条件が成立すると(ステップS11でYESの場合)、次いで、正常判定処理と異常判定処理とが並行して実行される。
正常判定処理では、まず、還流ガスの温度であるガス温gamthgが第1設定温度thg1(例えば110°Cあるいは120°C)に達したか否かの判定がなされ(ステップS12)、第1設定温度thg1に達していれば、それ以降の処理が実行される。
この場合、まず、正常判定処理を行うための第1特定開度okcndstepが、そのベース値Sbst1に気圧の低下に応じて大きくなる低圧補正係数kpaと吸気温が高温になるほど大きくなる高温補正係数ka1をかけて算出される(ステップS13)。
次いで、EGRバルブ52が閉弁状態から第1特定開度okcndstep以上の開弁状態に達するまでの待ち時間(正常判定ディレー)が既に経過しているか否かが、正常判定ディレーフラグexclsdlyがONにセットされているか否かで判定され(ステップS14)、セットされていなければ、次ステップでEGR目標開度となるバルブ開度値(以下、EGRバルブ開度という)eegrrqが第1特定開度okcndstep以上か否かが判定され(ステップS15)、第1特定開度okcndstepにまだ達していなければ(ステップS15でNOの場合)、最初のステップS11に戻る。
ステップS15でEGRバルブ開度eegrrqが第1特定開度okcndstepに達していれば、次いで、正常状態の検出の前提となる条件が成立しているときにカウントアップされる正常検出前提条件成立カウンタ(のカウント値)ecokcndがカウントアップされるとともに、還流ガスの総温度変化量である正常判定用の軌跡長ethgintokが算出され(ステップS16)、次いで、この正常判定用の軌跡長ethgintokが正常温度変化量Δthgok(例えば1.6°C)以上であるか否かがチェックされる(ステップS17)。
このとき、正常判定用の軌跡長ethgintokが正常温度変化量Δthgok以上になっていれば、第1条件が成立し、正常と判定される(ステップS24)。
一方、このとき、正常判定用の軌跡長ethgintokがまだ正常温度変化量Δthgok以上になっていなければ、次いで、正常検出前提条件成立カウンタecokcndが制限時間t0(例えば3000msec)に対応するカウント値Ct0以上になったか否かが判別される(ステップS18)。そして、このとき、まだカウント値Ct0に達していなければ、最初のステップS11に戻る。
ステップS18での判別結果がYESであるとき、すなわち、正常検出前提条件成立カウンタecokcndが制限時間t0に対応するカウント値Ct0以上になっているときには、次いで、正常判定ディレーフラグexclsdlyがONにセットされ(ステップS19)、次いで、正常検出前提条件成立カウンタecokcndが正常判定時間t1(例えば7000msec)に対応するカウント値Ct1以上になったか否かが判別される(ステップS20)。そして、このとき、まだカウント値Ct1に達していなければ、最初のステップS11に戻る。
ステップS20で、正常検出前提条件成立カウンタecokcndがカウント値Ct1以上になっていれば、正常判定時間t1が経過したことになり、次いで、正常判定条件成立履歴カウンタecjegrokがカウントアップされ(ステップS21)、次いで、正常判定時間t1中における総温度変化量に相当する正常判定用の軌跡長ethgintokが、正常判定の閾値である正常温度変化量Δthgok以上であるか否かが判断される(ステップS22)。そして、このとき、正常温度変化量Δthgok以上になっていれば、第1条件が成立し、正常と判定される(ステップS24)。
正常判定時間t1内に正常判定用の軌跡長ethgintokが正常温度変化量Δthgok以上にならなければ、次いで、正常判定ディレーフラグexclsdlyがOFFにセットされるとともに、正常検出前提条件成立カウンタecokcndがクリアされ、さらに、正常判定用の軌跡長ethgintokの値がリセットされ(ステップS23)、次いで、保留判定がなされた後(ステップS25)、最初のステップS11に戻る。
なお、この保留判定時には、正常判定条件成立履歴カウンタecjegrokがカウントアップされたままであり、正常判定条件成立履歴カウンタecjegrokによって今回の正常判定処理の履歴が記憶保持される。すなわち、この正常判定条件成立履歴カウンタecjegrokは、履歴保持部32の一部として機能する。
一方、異常判定処理においては、まず、異常判定処理を実行するための前提条件(以下、異常判定実行条件という)が成立するか否かが判定される(ステップS31)。
ここでの異常判定実行条件は、例えば正常判定条件成立履歴カウンタecjegrokに記憶保持されている正常判定条件成立履歴が複数回、例えば5回に達していること、低圧補正係数kpaの学習に必要な最低時間以上の間その学習条件が成立したこと、および還流ガスの温度gamthgが予め設定された温度範囲内であること、すなわち、吸気管7に還流する還流ガスの温度gamthgが、第1設定温度thg1より低い第2設定温度thg2を超え、かつ、第1設定温度thg1に達しない第2判定可能温度範囲(例えば、75°C≦還流ガス温度gamthg≦120°C、あるいは、80°C≦還流ガス温度gamthg≦100°C)内にあること、といった条件である。
この前提条件が成立すると(ステップS31でYESの場合)、まず、異常判定処理を行うための第2特定開度ngcndstepが、そのベース値Sbst2に低圧補正係数kpaと高温補正係数ka1とをかけた値として算出される(ステップS32)。
次いで、EGRバルブ開度eegrrqが低開度のバルブ開度値clstp(例えば、5ステップ)未満であるか否か、すなわち閉弁状態に近い状態か否かがチェックされる(ステップS33)。このとき、異常判定の前提条件となる閉弁状態に近い状態になければ(ステップS33でNOの場合)、異常判定前提条件成立カウンタecprengcndがクリアされた後(ステップS34)、異常判定のための基準ガス温度更新(後述する)や異常検出時間リセット等がされてから制限時間t0が経過したときにセットされる異常判定前条件フラグexprengcndがONにセットされているか否かが判別され(ステップS35)、セットされていなければ(ステップS35でNOの場合)、今回の異常判定処理を抜けて、共通前提条件判定処理ステップS11に戻る。
一方、ステップS35でYESの場合、すなわち、異常判定前条件フラグexprengcndがセットされている場合には、次いで、異常検出累積時間カウンタecngcndのカウントアップが開始されるとともに、還流ガスの温度変化量である異常判定用の軌跡長ethgintngが算出される(ステップS36)。
次いで、異常判定のためにEGRバルブ52が略閉弁状態から第2特定開度ngcndstep以上の開弁状態に移行していることを示す異常判定開度変化フラグexdlstepがONにセットされているか否かが判別され(ステップS37)、セットされていなければ(ステップS37でNOの場合)、次いで、異常検出累積時間カウンタecngcndが制限時間t0の半分程度の制限時間t3に対応するカウント値Ct3以下であるか否かが判別され(ステップS38)、その結果がYESであれば、EGRバルブ開度eegrqが第2特定開度ngcndstep以上であるか否かが判別される(ステップS39)。これらの判別ステップS38、S39のいずれかでの判別結果がNOとなった場合、今回の異常判定処理を抜けて、共通前提条件判定処理ステップS11に戻る。
EGRバルブ開度eegrqが第2特定開度ngcndstep以上である場合(ステップS39でYESの場合)、異常判定開度変化フラグexdlstepがONにセットされる(ステップS40)。
次いで、あるいは、ステップS37で異常判定開度変化フラグexdlstepがONにセットされていた場合、EGRバルブ開度eegrqが第2特定開度ngcndstep未満に低下していないかチェックされた後(ステップS41)、異常検出累積時間カウンタecngcndが制限時間t0より長く正常判定時間t1より短い異常判定時間t4(例えば、5000msec)に対応するカウント値Ct4以上になったか否かが判別される(ステップS42)。そして、このときまだカウント値Ct4に達していなければ、最初のステップS11に戻る。また、ステップS41でEGRバルブ開度eegrqが第2特定開度ngcndstep未満に低下している場合には、今回の異常判定をクリアする処理(ステップS44)の後、最初のステップS11に戻る。
ステップS42で、異常検出累積時間カウンタecngcndがカウント値Ct4以上になっていれば(ステップS42でYESの場合)、次いで、異常判定時間t4中における総温度変化量に相当する異常判定用の軌跡長ethgintngが、異常と判定するための判定閾値である温度変化量Δthgng(例えば0.5度)以下であるか否かが判断される(ステップS43)。そして、このとき、異常判定用の軌跡長ethgintngが異常判定用の温度変化量Δthgng以下になっていれば、すなわち、EGRバルブ52が第2特定開度ngcndstepで大きく開弁しても有意の温度変化が生じないときには第2条件が成立し、異常と判定される(ステップS51)。一方、このとき、異常判定用の軌跡長ethgintngが異常判定用の温度変化量Δthgngを超えている場合、今回の異常判定をクリアする処理(ステップS45)の後、保留と判定してから(ステップS52)、最初のステップS11に戻る。
次に、作用について説明する。
上述のような本実施形態の排気還流装置の異常検出装置では、吸気管7に還流する還流ガスの温度gamthgが第1設定温度thg1以上であれば、EGRバルブ52が開弁状態となったときには、第1判定部31による第1条件が成立する正常なEGR作動状態か第1条件が成立しない保留状態かの判定処理が実行されることになり、第1条件が成立しない保留判定の履歴が生じた後に、第2判定部33による第2条件が成立する異常か否かの判定処理が実行されることになる。したがって、第1判定部31により正常でない状態を検出できる判定が高頻度に実行されるとともに、正常判定に至らないことを示す保留判定の履歴が生じると、第2判定部33により第1条件以外の第2条件を基に迅速な異常判定が開始されることで、高検出精度の異常検出が実行されることになる。
また、EGRバルブ52が閉弁状態から第2特定開度ngcndstep以上の開弁状態に切り替えられ、その切り替え時点から異常判定時間内に還流ガスに予め設定された温度変化量Δthgngを超える温度変化が生じないときに、第2条件が成立すると判定するので、EGRバルブ52の開弁直後の還流ガスの温度変化を基に異常判定がなされることになり、開弁継続による収束ガス温度を検出する場合(図7参照)のように還流ガスの温度を長時間モニタする必要がなくなり、異常検出頻度を十分に高めることができる。しかも、第2特定開度ngcndstepを正常判定処理時より大きい開度値に設定することで、デポジットの付着や堆積等によって還流ガスの還流量にある程度の低下が生じても、十分な温度変化を生じさせることができ、例えばその大開度での通常の還流量に対して70%程度に還流量が低下していたとしても、還流ガス温度の大きな変化が確実に得られるから、異常検出精度をも高めることができる。
さらに、第2判定部33は、EGRバルブ52が閉弁状態から予め設定された制限時間t3内に第2特定開度ngcndstep以上の開弁状態に切り替えられたときにのみ、第2条件が成立するか否かを判定するので、エンジン1の運転状態に応じたEGR制御に対して、EGRバルブ52が閉弁状態から高開度での開弁状態に切り替えられる頻度が高くなるように比較的短時間の制限時間t0を設定することで、還流ガス温度の急峻な変化が高頻度に得られるようにして、検出頻度を高めることができる。
例えば、図3中に、エンジン回転数ene[rpm]、負荷eklsm[%]、車速[km/h]、EGRバルブ開度[ステップ]および水温ethw[°C]のそれぞれの変化で示すような標準的な実路走行パターンおよび車速域において、還流ガス温度gamthg[°C]には、還流ガス温度gamthgの急峻な上昇が頻繁に見られることになる。
また、第2判定部33は、履歴保持部32により複数回分の実行履歴データが記憶保持されているときに、第2条件が成立するか否かを判定するので、正常判定に至らなかった保留判定の判定精度が高められ、その判定後に異常判定を実行することで、異常検出精度が高められる。
しかも、第2判定部33は、吸気管7への還流ガス温度が第1設定温度thg1より低い第2設定温度thg2を超え、かつ、第1設定温度thg1に達しない第2判定可能温度範囲内にあるときに、第2条件が成立するか否かを判定するので、第1設定温度thg1および第2設定温度thg2を適宜設定し、通常運転域での的確な異常検出を行うことができる。
加えて、第1特定開度okcndstepおよび第2特定開度ngcndstepを、標準大気圧と現在地の気圧との差に応じて補正する補正係数kpaを更新可能に設定する補正部34が設けられるとともに、その更新の履歴を記憶保持する履歴保持部32が設けられ、第2判定部33は、EGRバルブ52が閉弁状態から第2特定開度ngcndstep以上の開弁状態に切り替えられたとき、その切り替えの時点から異常判定時間t4内に、第2条件が成立するか否かを判定するので、車両が高地に移動して気圧が低下したような場合でも、EGRバルブ52が閉弁状態から開弁状態に切り替えられたときに、十分な還流ガス温度gamthgの変化が生じるような補正がなされることになり、誤った異常判定が未然に防止されることになる。さらに、例えば車両が高地に移動した際にバッテリ電圧が低下し、ECU30の保持した更新履歴がいわゆるバッテリクリアによって初期化され失われてしまったような場合でも、低圧補正係数kpaの更新前に温度変化量(異常判定軌跡長ethgintng)が小さいと判断し、誤った異常判定をしてしまうといったことが防止できる。
また、本実施形態では、図4に示すように、第2判定部33が、分割検出時間tmd2ごとに検出された還流ガス温度の変化量Δthg2を積算して、異常判定時間t4内における排気ガスの総温度変化量を異常判定用の軌跡長ethgintngとして算出するようにしているので、還流ガス温度gamthgのノイズ的な変動の影響を排除しながらも、異常判定時間t4の分割検出時間tmd2ごとに検出された温度の変化量Δthg2を絶対値で積算することで、還流ガスの総温度変化量である異常判定用の軌跡長ethgintngを的確に算出することができ、第2判定部33の判定精度を高めることができる。例えば、図4中の(2)単調増加や(3)単調減少の場合とは違って、(1)EGR流量減の場合には、EGRバルブ52が閉弁状態から開弁状態に切り替えられたときに排気還流量が少ないために還流ガス温度gamthgの変化に遅れが生じ、開弁直後に還流ガス温度が一時的に低下するといった状態が生じている。このような場合、判定時間の終期に温度を比較するだけでは、異常と判定されてしまうところ、本実施形態では、(1)EGR流量減の場合に対応する異常判定用の軌跡長ethgintng(1)´が判定閾値Δthgngを大きく上回り、異常判定領域から外れることになる。したがって、このように温度上昇の応答遅れがあっても十分な温度上昇((1)の破線の谷からの温度上昇)がある場合に、その総温度変化量を精度良く把握できることになり、誤って異常と判定することを防止できることになる。
また、本実施形態では、燃料カット状態から通常の燃料噴射状態に復帰したときのように排気ガスおよび還流ガスの温度および圧力が変動しやすい運転領域では異常検出が禁止され、誤った異常検出が未然に防止されるとともに、燃料噴射量が変化し空燃比が大きく変化したときのように排気ガスおよび還流ガスの温度および圧力が変動しやすい運転領域では異常検出が禁止され、誤った異常検出が未然に防止される。しかも、通常は排気還流がなされないアイドリング時にEGR装置50の異常と誤判定する可能性をなくすことができる。
さらに、第1判定部31についても、還流ガス温度が第1設定温度thg1以上でEGRバルブ52が開弁状態にあるとき正常判定時間t1ごとに還流ガスに正常温度変化量Δthgokを超える温度変化が生じたか否かを判定するので、正常温度変化量thgokを適宜設定しながら、的確な正常判定ができる。また、第1判定部31は、正常判定時間中に吸気管7に還流する排気ガスの温度が第1設定温度thg1未満に低下した場合でも、正常判定時間t1中の低下後に排気ガス温度が第1設定温度thg1以上に達したときには、第1条件が成立するか否かを判定するので、還流ガス流量が少なく還流ガス温度の変化に遅れが生じ、還流ガス温度が一旦は第1設定温度thg1未満に低下した場合であっても、正常判定時間t1内に第1設定温度thg1以上に達したときには、的確な正常判定がなされることになる。
また、第1判定部31は、正常判定時間t1を複数に分割した分割検出時間tmd1ごとに、還流ガスの温度gamthgを検出し、分割検出時間tmd1ごとに検出された温度の変化量Δthg1を積算して、正常判定時間内における排気ガスの温度変化量を算出するので、還流ガス温度gamthgのノイズ的な変動の影響を排除することができることに加えて、正常判定時間t1の分割検出時間tmd1ごとに検出された温度の変化量を絶対値で積算するので、総温度変化量を算出することができ、第1判定部31の判定精度を高めることができる。
このように、本実施形態によれば、第1判定部31によりEGR装置50の正常でない状態を検出できる判定が高頻度に実行されるとともに、正常判定に至らないことを示す保留判定の履歴が生じると、第2判定部33により第1条件以外の第2条件を基に迅速な異常判定がなされるようにしているので、異常検出処理の実行頻度を大幅に増加させることができる高検出精度の排気還流装置の異常検出装置を提供することができる。
なお、上述の一実施形態においては、異常判定時間と正常判定時間とは、互いに異なる時間に設定されていたが、両判定時間は、独立して任意の値に設定可能である。また、EGRバルブ52が閉弁状態から開弁状態に切り替えられ、第2判定部33での判定処理が開始される時点でのEGRバルブ52の開度、すなわち第2特定開度ngcndstepは、EGRバルブ52が閉弁状態から開弁状態に切り替えられ、第1判定部31での判定処理が開始される時点のEGRバルブ52の第1特定開度okcndstepよりも大きく設定されるのが好ましいが、同等な開度設定も可能である。さらに、排気還流量が多くなる運転領域、例えば負荷が60%程度以上、機関回転数が1600rpm程度以上で、各判定手段の判定処理が実行されるのがよい。
以上説明したように、本発明は、第1判定手段により正常でない状態を検出できる判定が高頻度に実行されるとともに、正常判定に至らないことを示す保留判定の履歴が生じると、第2判定手段により第1条件以外の第2条件を基に迅速な異常判定がなされるようにしているので、異常検出処理の実行頻度を大幅に増加させることができる高検出精度の排気還流装置の異常検出装置を提供することができるという効果を奏するものであり、排気還流装置の異常検出装置、特に、車両用内燃機関の排気再循環のための排気還流装置の異常を検出する排気還流装置の異常検出装置全般に有用である。