しかしながら、従来の空調システムにおいては、空調機で温度調節される空気の温度は、常に、各室内の設定温度のうちの最低設定温度に合わせているため、他の室内では、それぞれの設定温度に合わせて空調機で温度調節された空気を再加熱する必要があった。つまり、一旦、空調機において取り込んだ空気を温度調節した後、該温度調節された空気を各室内に供給される前に加熱することで各室内に供給される空気の温度を各室内の設定温度に調節していた。これにより、各室内へ供給する空気を設定温度に調節する再加熱に際して多量のエネルギーが使われているという問題があった。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、少ないエネルギーでもって複数の室内に対する個別温度調節を行うことを目的とする。
第1の発明は、取り込み空気を所定温度に一括調節する空調機(11)と、該空調機(11)からの調和空気を複数の室内(B,C,D)に分配供給する供給路(33a,33b,33c)と、該供給路(33a,33b,33c)に設けられ、空調機(11)の調和空気を各室内(B,C,D)の設定温度に個別調節する温調機(31a,31b,31c)とを備えた空調システムであって、上記空調機(11)は、各室内(B,C,D)の設定温度の中間温度(Tc)に取込空気を温調制御する制御部(18)を備え、上記温調機(31a,31b,31c)は、温調部(35a)と排熱部(35b)とを備えて該温調部(35a)で空調機(11)の調和空気を温度調節する熱電素子(35)を備える一方、上記各温調機(31a,31b,31c)の熱電素子(35)の排熱部(35b)に接続され、各排熱部(35b)の間で熱交換する熱媒体が循環する熱媒体回路(40)を備えている。
上記第1の発明では、まず、制御部(18)は、空調機(11)を制御して取り込み空気の温度を各室内(B,C,D)の室内空気の設定温度の中間温度(Tc)に調節する。空調機(11)で中間温度(Tc)に調節された調和空気は供給路(33a,33b,33c)を流通する。次に、室内空気の設定温度が上記中間温度(Tc)よりも低い場合、熱電素子(35)の温調部(35a)は中間温度(Tc)に調節された調和空気を上記設定温度まで冷却する一方、排熱部(35b)は熱媒体へ放熱する。また、室内空気の設定温度が上記中間温度(Tc)よりも高い場合、熱電素子(35)の温調部(35a)は中間温度(Tc)に調節された調和空気を上記設定温度まで加熱する一方、排熱部(35b)は熱媒体から吸熱する。そして、各温調機(31a,31b,31c)は、熱電素子(35)の温調部(35a)で温度調節された調和空気を各室内(B,C,D)へ供給する。熱媒体回路(40)では、熱媒体が熱電素子(35)に対して放熱、又は吸熱しながら循環する。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記熱媒体回路(40)は、上記各熱電素子(35,35,35)に対して設けられる熱交換器(41,42,43)と、該各熱交換器(41,42,43)の上部側に接続されてガス状の熱媒体が流通する第1流体通路(46)と、上記各熱交換器(41,42,43)の下部側に接続されて液状の熱媒体が流通する第2流体通路(47)とを備えている。
上記第2の発明では、各室内(B,C,D)において、室内空気の設定温度が上記中間温度(Tc)よりも低い場合、熱電素子(35,35,35)は供給路(33a,33b,33c)内の空気を上記設定温度まで冷却する一方、排熱部(35b)は熱交換器(41,42,43)を介して熱媒体へ放熱する。熱媒体回路(40)では、熱媒体が熱交換器(41,42,43)を介して熱電素子(35,35,35)から吸熱して蒸発する。蒸発した熱媒体は、第1流体通路(46)を流通する。また、室内空気の設定温度が上記中間温度(Tc)よりも高い場合、熱電素子(35,35,35)は供給路(33a,33b,33c)内の空気を上記設定温度まで加熱する一方、排熱部(35b)は熱交換器(41,42,43)を介して熱媒体から吸熱する。熱媒体回路(40)では、熱媒体が熱交換器(41,42,43)を介して熱電素子(35,35,35)へ放熱して凝縮する。凝縮した熱媒体は、第2流体通路(47)を流通する。そして、各温調機(31a,31b,31c)は、熱電素子(35,35,35)の温調部(35a)で温度調節された調和空気を各室内(B,C,D)へ供給する。
第3の発明は、上記第2の発明において、上記熱媒体回路(40)は、熱交換器(41,42,43)が全て同一の高さ位置に設けられている。
上記第3の発明では、各室内(B,C,D)において、室内空気の設定温度が上記中間温度(Tc)よりも低い場合、熱電素子(35,35,35)は供給路(33a,33b,33c)内の空気を上記設定温度まで冷却する一方、排熱部(35b)は熱交換器(41,42,43)を介して熱媒体へ放熱する。熱媒体回路(40)では、熱媒体が熱交換器(41,42,43)を介して熱電素子(35,35,35)から吸熱して蒸発する。蒸発した熱媒体は、蒸発による体積膨張によって搬送力を得て第1流体通路(46)を流通する。また、室内空気の設定温度が上記中間温度(Tc)よりも高い場合、熱電素子(35,35,35)は供給路(33a,33b,33c)内の空気を上記設定温度まで加熱する一方、排熱部(35b)は熱交換器(41,42,43)を介して熱媒体から吸熱する。熱媒体回路(40)では、熱媒体が熱交換器(41,42,43)を介して熱電素子(35,35,35)へ放熱して凝縮する。凝縮した熱媒体は、蒸発側の熱交換器(41,42,43)との液面高さの差によって搬送力を得て第2流体通路(47)を流通する。そして、各温調機(31a,31b,31c)は、熱電素子(35,35,35)の温調部(35a)で温度調節された調和空気を各室内(B,C,D)へ供給する。
第4の発明は、上記第1〜3の発明の何れか1つにおいて、上記熱電素子(35)は、ペルチェ素子に構成されている。
上記第4の発明では、供給路(33a,33b,33c)では、室内空気の設定温度が上記中間温度(Tc)よりも低い場合、ペルチェ素子に構成された熱電素子(35)の温調部(35a)は中間温度(Tc)に調節された調和空気を上記設定温度まで冷却する一方、排熱部(35b)は熱媒体へ放熱する。また、室内空気の設定温度が上記中間温度(Tc)よりも高い場合、ペルチェ素子に構成された熱電素子(35)の温調部(35a)は中間温度(Tc)に調節された調和空気を上記設定温度まで加熱する一方、排熱部(35b)は熱媒体から吸熱する。
上記第1の発明によれば、熱電素子(35)と、熱媒体回路(40)とを設けたため、熱電素子(35)の温調部(35a)が空調機(11)の調和空気を温度調節する一方、熱媒体回路(40)で熱電素子(35)の排熱を処理することができる。また、制御部(18)を設けたため、空調機(11)の調和空気の温度を各室内(B,C,D)の設定温度の中間温度(Tc)にすることができる。したがって、熱媒体回路(40)の全体では、熱媒体が熱電素子(35)の排熱部(35b)から吸収する吸熱量と、排熱部(35b)に放熱する放熱量とが等しくなる。つまり、一の熱電素子(35)の排熱部(35b)において吸収した排熱を熱媒体によって熱媒体回路(40)を循環させて他の熱電素子(35)の排熱部(35b)において放熱させることができる。この結果、少ないエネルギーでもって、複数の室内(B,C,D)に対する個別温度調節を行うことができる。
上記第2の発明によれば、熱媒体回路(40)が、熱交換器(41,42,43)と、第1流体通路(46)と、第2流体通路(47)とを設けたため、熱電素子(35)との間で熱交換してガス状となった熱媒体を第1流体通路(46)に流通させると共に、液状となった熱媒体を第2流体通路(47)に流通させることができる。これにより、熱媒体回路(40)では、加熱動作をした熱電素子(35)に対して放熱した熱媒体の放熱量と、冷却動作をした熱電素子(35)から吸熱した熱媒体の吸熱量とが同熱量となるため、熱媒体を自然循環させることができる。この結果、少ないエネルギーでもって、複数の室内(B,C,D)に対する個別温度調節を行うことができる。
上記第3の発明では、熱媒体回路(40)が、熱交換器(41,42,43)を全て同一の高さ位置に設けるようにした。このため、熱電素子(35)に対して放熱して凝縮した液状の熱媒体を、熱電素子(35)から吸熱して蒸発して液状の熱媒体が減少した熱交換器(42,43)に向かって液面高さの差によって生ずる重力差により移動させる一方、熱電素子(35)から吸熱して蒸発したガス状の熱媒体を、熱電素子(35)に対して放熱してガス状の熱媒体が減少した熱交換器(41)に向かって蒸発による体積膨張によって移動させることができる。これにより、外部から駆動力を加えることなく、熱媒体回路(40)内において、熱媒体を自然循環させることができる。この結果、少ないエネルギーでもって、複数の室内(B,C,D)に対する個別温度調節を行うことができる。
上記第4の発明によれば、熱電素子(35)としてペルチェ素子を用いたため、その加熱側と冷却側とを簡易的に切り換えることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜3に示すように、本実施形態に係る空調システム(10)は、例えば住宅等の全室空調を行うものである。この空調システム(10)は住宅(1)に設置され、空調機(11)と、温調装置(31)とを備えている。また、この空調システム(10)が設置される住宅(1)には、リビングや寝室等として利用される居室(A〜D)が設けられている。尚、各居室(B〜D)には、それぞれに室内においてユーザが所望する空気温度を設定する操作パネル(25,26,27)が設置されている。
上記空調機(11)は、室内ユニット(12)と、吸込ユニット(20)と、室外ユニット(16)とを備え、居室(A)内の空気(R.A)を吸い込んでその空気温度を調節するものである。
上記室内ユニット(12)は、直方体状の室内ケーシング(13)に室内熱交換器(14)を収容して構成され、住宅(1)の屋根裏の空間に設置されている。室内熱交換器(14)は、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器であって、一対の連絡配管(15)を介して室外ユニット(16)と接続されている。つまり、室内熱交換器(14)は室内ユニット(12)の室内ケーシング(13)内に吸い込まれた居室(A)の室内空気(R.A)と熱交換して該空気の温度を所定の設定温度に調節するよう構成されている。室内熱交換器(14)で熱交換された空気は、吹出ダクト(23)及び第1〜3供給ダクト(33a,33b,33c)を介して各居室(B〜D)に供給される。吹出ダクト(23)は、内部を空気が流通する空気配管に構成され、その入口端が室内ユニット(12)における室内熱交換器(14)の下流側に接続されて各居室(B〜D)の天井の位置まで延びている。
上記室外ユニット(16)は、室外ケーシング(17)内に、図示はしないが、圧縮機や室外熱交換器を収容して構成されている。これらの圧縮機等が連絡配管(15)によって室内熱交換器(14)と接続されて、閉回路の冷媒回路(19)が形成されている。この冷媒回路(19)では、冷媒が相変化しつつ循環して蒸気圧縮式冷凍サイクルが行われる。そして、この冷媒回路(19)には、空調コントローラ(18)が接続されている。
空調コントローラ(18)は、空調機(11)と温調機(31)とを制御するためのものであって、本発明に係る制御部を構成している。また、空調コントローラ(18)は、冷媒回路(19)の冷媒循環動作を制御するものである。空調コントローラ(18)には、空調機(11)の冷媒回路(19)と、各居室(B〜D)内にそれぞれ設けられる操作パネル(25,26,27)と、後述する温調装置(31)の各温調ユニット(31a,31b,31c)とに接続されている。具体的に、空調コントローラ(18)は、ユーザが各操作パネル(25,26,27)で設定する各居室(B,C,D)の設定温度に基づき、全ての設定温度の中間となる温度(中間温度(Tc))を求めると共に、空調機(11)で調節される空気の温度を上記中間温度(Tc)に調節すると共に、温調装置(31)の後述する電源部を制御して中間温度(Tc)に調節された空気を各室内(B,C,D)のそれぞれの設定温度に調節する。
上記吸込ユニット(20)は、直方体状の箱体に形成され、その底部に、図示はしないが、吸込口が形成されている。吸込ユニット(20)は、居室(A)の天井に設置されている。吸込ユニット(20)は、居室(A)の天井の開口及び吸込口を通じて吸込ユニット(20)内に居室(A)の室内空気(R.A)を取り込む。また、吸込ユニット(20)には、エアフィルタ(21)が設けられている。このエアフィルタ(21)は、吸込ユニット(20)に取り込まれた居室(A)の室内空気から埃などを取り除くためのものである。
上記吸込ユニット(20)は、吸込ダクト(22)を介して室内ユニット(12)に接続されている。吸込ダクト(22)は、その入口端が吸込ユニット(20)におけるエアフィルタ(21)の下流側に接続され、その出口端が室内ユニット(12)における室内熱交換器(14)の上流側に接続されている。
上記温調装置(31)は、図1〜3に示すように、上記空調機(11)で温度調節された調和空気が、各室内(B,C,D)の室内空気の設定温度になるよう上記調和空気の温度を調節するものである。温調装置(31)は、ユニットケーシング(32,32,32)内に収容された第1〜3温調ユニット(31a,31b,31c)で構成されている。また、各温調ユニット(31a,31b,31c)は、熱媒体回路(40)に接続されている。尚、各温調ユニット(31a,31b,31c)は、本発明に係る温調機を構成している。
上記各ユニットケーシング(32,32,32)は、それぞれが居室(B〜D)の天井となる位置に一つずつ設置されている。ユニットケーシング(32)は、直方体状の箱体に形成され、その上部に空気を取り入れる空気吸込口(図示なし)が形成される一方、その下部に温度調節した空気を吹き出す吹出口(図示なし)が形成されている。各ユニットケーシング(32,32,32)は、内部に温調ユニット(31a,31b,31c)を収容している。
上記第1温調ユニット(31a)は、ペルチェ素子(35)と、第1排熱用熱交換器(41)とで構成されている。第1温調ユニット(31a)は、居室(B)の天井に設置されたユニットケーシング(32)内に収容されている。第1温調ユニット(31a)のユニットケーシング(32)は、第1供給ダクト(33a)を介して吹出ダクト(23)に接続されている。第1供給ダクト(33a)は、内部を空気が流通する空気配管に構成され、その入口端が吹出ダクト(23)の概ね空気の上流側に接続され、その出口端が第1温調ユニット(31a)のユニットケーシング(32)に接続されている。第1供給ダクト(33a)は、内部に吹出ファン(34)が設置されている。
上記第2温調ユニット(31b)は、ペルチェ素子(35)と、第2排熱用熱交換器(42)とで構成されている。第2温調ユニット(31b)は、居室(C)の天井に設置されたユニットケーシング(32)内に収容されている。第2温調ユニット(31b)のユニットケーシング(32)は、第2供給ダクト(33b)を介して吹出ダクト(23)に接続されている。第2供給ダクト(33b)は、内部を空気が流通する空気配管に構成され、その入口端が吹出ダクト(23)における第1供給ダクト(33a)の接続位置の空気の下流側に接続され、その出口端が第2温調ユニット(31b)のユニットケーシング(32)に接続されている。第2供給ダクト(33b)は、内部に吹出ファン(34)が設置されている。
上記第3温調ユニット(31c)は、ペルチェ素子(35)と、第3排熱用熱交換器(43)とで構成されている。第3温調ユニット(31c)は、居室(D)の天井に設置されたユニットケーシング(32)内に収容されている。第3温調ユニット(31b)のユニットケーシング(32)は、第3供給ダクト(33c)を介して吹出ダクト(23)に接続されている。第3供給ダクト(33c)は、内部を空気が流通する空気配管に構成され、その入口端が吹出ダクト(23)における第2供給ダクト(33b)の接続位置の空気の下流側に接続され、その出口端が第3温調ユニット(31c)のユニットケーシング(32)に接続されている。第3供給ダクト(33c)は、内部に吹出ファン(34)が設置されている。尚、各温調ユニット(31a,31b,31c)は、それぞれが住宅(1)の天井において同一の高さとなるように位置づけられている。
上記吹出ファン(34)は、遠心型の多翼ファン(いわゆるシロッコファン)である。吹出ファン(34)は、各供給ダクト(33a,33b,33c)内に設置されている。そして、吹出ファン(34)を運転すると、吹出ダクト(23)を流通する空気が第1〜3供給ダクト(33a,33b,33c)を介して各温調ユニット(31a,31b,31c)のユニットケーシング(32,32,32)内に吸引される。
上記ペルチェ素子(35)は、平板状に形成されたペルチェ素子であって、本発明に係る熱電素子を構成している。ペルチェ素子(35)は、各ユニットケーシング(32,32,32)内に設置されている。そして、ペルチェ素子(35)は、ユニットケーシング(32)内において、後述する排熱用熱交換器(41,42,43)の周りを囲んで配設されている。ペルチェ素子(35)は、その外側面が供給ダクト(33a,33b,33c)から供給された空気と接触する一方、その内側面が排熱用熱交換器(41,42,43)と接触している。つまり、ペルチェ素子(35)は、その外側面が本発明の温調部を構成する温調面(35a)を形成する一方、その内側面が本発明の排熱部を構成する排熱面(35b)を形成している。
ペルチェ素子(35)は、図示はしないが、電源部に接続されている。ペルチェ素子(35)は、所定極性の電圧を切り換えて付与することで、温調面(35a)に加熱面を形成して排熱面(35b)に冷却面を形成する加熱モードと、温調面(35a)に冷却面を形成して排熱面(35b)に加熱面を形成する冷却モードとを切り換わる。具体的には、居室(B〜D)のうち、設定温度が上記中間温度(Tc)よりも高い居室では、空調コントローラ(18)は、ペルチェ素子(35)の温調面(35a)を加熱面として排熱面(35b)を冷却面に形成するようペルチェ素子(35)への印加電圧極性を設定する一方、居室(B〜D)のうち、設定温度が上記中間温度(Tc)よりも低い居室では、ペルチェ素子(35)の温調面(35a)を冷却面として排熱面(35b)を加熱面に形成するようペルチェ素子(35)への印加電圧極性を設定する。
上記熱媒体回路(40)は、本発明に係る熱媒体を構成する冷媒が循環する熱媒体回路に構成され、第1〜3排熱用熱交換器(41,42,43)と、上部側冷媒管(46)と、下部側冷媒管(47)とを備えている。
上記各排熱用熱交換器(41,42,43)は、それぞれが一組のヘッダ(44,45)と、複数の伝熱管(図示なし)とを備えている。上記一組のヘッダ(44,45)は、円筒状に形成された上部ヘッダ(44)と下部ヘッダ(45)とで形成され、上記各排熱用熱交換器(41,42,43)の上下両端部に取り付けられる。上記両ヘッダ(44,45)には、それぞれに冷媒管(46,47)が接続され、排熱用熱交換器(41,42,43)に冷媒が導入または導出されるように構成されている。上記伝熱管は、図示はしないが、管状に形成され、上部ヘッダ(44)及び下部ヘッダ(45)の長手方向(図3では奥行き方向)に所定の間隔(ピッチ)を持って複数個並設され、上部ヘッダ(44)と下部ヘッダ(45)との間に亘って取り付けられている。上記伝熱管の内部は、上部ヘッダ(44)及び下部ヘッダ(45)の内部に連通し、冷媒が両ヘッダ(44,45)の間を、上記伝熱管を通じて流通するよう構成されている。第1排熱用熱交換器(41)は、第1温調ユニット(31a)のユニットケーシング(32)内のペルチェ素子(35)の内側で該ペルチェ素子(35)と接触した状態で設置される。第2排熱用熱交換器(42)は、第2温調ユニット(31b)のユニットケーシング(32)内のペルチェ素子(35)の内側で該ペルチェ素子(35)と接触した状態で設置される。第3排熱用熱交換器(43)は、第3温調ユニット(31c)のユニットケーシング(32)内のペルチェ素子(35)の内側で該ペルチェ素子(35)と接触した状態で設置される。
上記上部側冷媒管(46)は、第1及び第2排熱用熱交換器(41,42)を繋ぐ冷媒管から1つの分岐管が分岐され、この分岐した冷媒管が第3排熱用熱交換器(43)に接続されている。上部側冷媒管(46)は、各排熱用熱交換器(41,42,43)の上部ヘッダ(44,44,44)に接続されている。この上部側冷媒管(46)は、各排熱用熱交換器(41,42,43)において蒸発したガス状冷媒が循環するよう構成されている。
上記下部側冷媒管(47)は、2つの排熱用熱交換器(41,42)を繋ぐ冷媒管から1つの分岐管が分岐され、この分岐した冷媒管が第3排熱用熱交換器(43)に接続されている。下部側冷媒管(47)は、各排熱用熱交換器(41,42,43)の下部ヘッダ(45,45,45)に接続されている。この下部側冷媒管(47)は、各排熱用熱交換器(41,42,43)において凝縮した液状冷媒が循環するよう構成されている。
−運転動作−
空調機(11)の運転中には、冷媒回路(19)で冷媒が循環して蒸気圧縮式冷凍サイクルが行われる。冷房運転時には、室内熱交換器(14)が蒸発器となる。この場合、室内熱交換器(14)では、冷媒が空気から吸熱して蒸発し、空気の冷却が行われる。一方、暖房運転時には、室内熱交換器(14)が凝縮器となる。この場合、室内熱交換器(14)では、冷媒が空気へ放熱して凝縮し、空気の加熱が行われる。
まず、各吹出ファン(34,34,34)を運転すると、居室(A)の室内空気(R.A)が吸込口を介して吸込ユニット(20)内に取り込まれる。吸込ユニット(20)では流入した室内空気(R.A)を、エアフィルタ(21)で浄化した後に、吸込ダクト(22)を通じて室内ユニット(12)に送り込む。ここで、空調コントローラ(18)は各居室(B,C,D)の操作パネル(25,26,27)のそれぞれの設定値に基づいて中間温度(Tc)を求めると共に、室内ユニット(12)に取り込まれた居室(A)の室内空気(R.A)の温度が中間温度(Tc)と同温度になるよう空調機(11)を運転する。室内ユニット(12)では、取り込んだ居室(A)の室内空気(R.A)を室内熱交換器(14)に通過させて該空気を中間温度(Tc)まで冷却又は加熱する。ここで、本実施形態では、一例として居室(A)の室内空気(R.A)の温度を24℃とし、居室(B)、居室(C)及び居室(D)の設定温度を、それぞれ25℃、20℃及び21℃とする。したがって、室内ユニット(12)では、居室(A)から取り込んだ室内空気(室温=24℃)を冷却して、居室(B〜D)の中間温度である22℃(=Tc)に温度調節した上で該温度調節した空気を吹出ダクト(23)へ供給する。室内ユニット(12)から吹き出された空気は、その全てが吹出ダクト(23)へ流入する。そして、吹出ダクト(23)に流入した空気は、第1〜3供給ダクト(33a,33b,33c)のそれぞれにほぼ均等に流入する。
上記第1供給ダクト(33a)を流れる空気は、第1温調ユニット(31a)のユニットケーシング(32)内に流入する。室内ユニット(12)から供給される空気の温度は22℃に調節され、且つ居室(B)の設定温度は25℃に設定されているため、空調コントローラ(18)は、電源部を制御して第1温調ユニット(31a)のペルチェ素子(35)を加熱モードに設定する。具体的に、第1温調ユニット(31a)では、電源部がペルチェ素子(35)に所定極性の電圧を印加して該ペルチェ素子(35)の温調面(35a)を加熱面に形成する一方、排熱面(35b)を冷却面に形成する。そして、ペルチェ素子(35)は、ユニットケーシング(32)内に流入した空気を加熱する一方、第1排熱用熱交換器(41)を介して冷媒から吸熱する。第1排熱用熱交換器(41)では、内部の冷媒がペルチェ素子(35)に対して放熱するため、該冷媒が凝縮して液状に状態変化する。このため、その後、第1排熱用熱交換器(41)内の液冷媒量が増加する。そして、第1温調ユニット(31a)は、25℃まで加熱された空気(S.A)を居室(B)に供給する。
上記第2供給ダクト(33b)を流れる空気は、第2温調ユニット(31b)のユニットケーシング(32)内に流入する。室内ユニット(12)から供給される空気の温度は22℃に調節され、且つ居室(C)の設定温度は20℃に設定されているため、空調コントローラ(18)は、電源部を制御して第2温調ユニット(31b)のペルチェ素子(35)を冷却モードに設定する。具体的に、第2温調ユニット(31b)では、電源部がペルチェ素子(35)に所定極性の電圧を印加して該ペルチェ素子(35)の温調面(35a)を冷却面に形成する一方、排熱面(35b)を加熱面に形成する。そして、ペルチェ素子(35)は、ユニットケーシング(32)に流入した空気を冷却する一方、第2排熱用熱交換器(42)を介して冷媒へ放熱する。第2排熱用熱交換器(42)では、内部の冷媒がペルチェ素子(35)から吸熱するため、該冷媒が蒸発してガス状に状態変化する。このため、第2排熱用熱交換器(42)内のガス冷媒量が増加する。そして、第2温調ユニット(31b)は、20℃まで冷却された空気(S.A)を居室(C)に供給する。
上記第3供給ダクト(33c)を流れる空気は、第3温調ユニット(31c)のユニットケーシング(32)内に流入する。室内ユニット(12)から供給される空気の温度は22℃に調節され、且つ居室(D)の設定温度は21℃に設定されているため、空調コントローラ(18)は、電源部を制御して第3温調ユニット(31c)のペルチェ素子(35)を冷却モードに設定する。具体的に、第3温調ユニット(31c)では、ペルチェ素子(35)に所定極性の電圧を印加して該ペルチェ素子(35)の温調面(35a)を冷却面に形成する一方、排熱面(35b)を加熱面に形成する。そして、ペルチェ素子(35)は、ユニットケーシング(32)に流入した空気を冷却する一方、第3排熱用熱交換器(43)を介して冷媒へ放熱する。第3排熱用熱交換器(43)では、内部の冷媒がペルチェ素子(35)から吸熱するため、該冷媒が蒸発してガス状に状態変化する。このため、第3排熱用熱交換器(43)内のガス冷媒量が増加する。そして、第3温調ユニット(31c)は、21℃まで冷却された空気(S.A)を居室(D)に供給する。
熱媒体回路(40)では、第1排熱用熱交換器(41)において、凝縮した冷媒が液冷媒となるため液面高さが高くなりガス冷媒が少なくなると共に、第2及び第3排熱用熱交換器(42,43)において、蒸発した冷媒がガス冷媒となってガス冷媒が多くなると共に、液冷媒が少なくなって液面高さが低くなる。このため、熱媒体回路(40)では、第1排熱用熱交換器(41)で増加した液冷媒の液面高さが、第2及び第3排熱用熱交換器(42,43)の液冷媒の液面高さよりも高くなる。したがって、第1排熱用熱交換器(41)の液冷媒が、液面高さの差による重力差によって搬送力を得て下部側冷媒管(47)を流れて第2及び第3排熱用熱交換器(42,43)に分配される。また、第2及び第3排熱用熱交換器(42,43,)で増加した高温のガス冷媒の冷媒量が、第1排熱用熱交換器(41)のガス冷媒の冷媒量より多くなる。したがって、第2及び第3排熱用熱交換器(42,43)のガス冷媒が、蒸発による体積膨張によって搬送力を得て上部側冷媒管(46)を流れて第1排熱用熱交換器(41)に分配される。つまり、熱媒体回路(40)では、液冷媒が、その液面高さの差によって自然循環すると共に、ガス冷媒が、その冷媒温度差によって自然循環するよう構成されている。
−実施形態の効果−
上記実施形態によれば、温調ユニット(31a〜31c)を設けたため、ペルチェ素子(35)が空調機(11)から供給される空気を各室内(B〜D)の設定温度に調節する一方、熱媒体回路(40)でペルチェ素子(35)の排熱を処理することができる。また、空調コントローラ(18)を設けたため、空調機(11)からの供給空気の温度を各室内(B,C,D)の設定温度の中間温度(Tc)にすることができる。したがって、熱媒体回路(40)の全体では、冷媒がペルチェ素子(35)の排熱面(35b)から吸熱する吸熱量と、排熱面(35b)に放熱する放熱量とが等しくなる。つまり、一のペルチェ素子(35)の排熱面(35b)において吸収した排熱を冷媒によって熱媒体回路(40)を循環させて他のペルチェ素子(35)の排熱面(35b)において放熱させることができる。
また、熱媒体回路(40)が、全て同一の高さに位置付けられる第1〜3排熱用熱交換器(41〜43)と、上部側冷媒管(46)と、下部側冷媒管(47)とを設けたため、ペルチェ素子(35)との間で熱交換してガス状となった冷媒を上部側冷媒管(46)に流通させると共に、液状となった冷媒を下部側冷媒管(47)に流通させることができる。つまり、第1排熱用熱交換器(41)でペルチェ素子(35)に対して放熱して凝縮した液状の冷媒が、ペルチェ素子(35)から吸熱して蒸発して液状の冷媒が減少した第2及び第3排熱用熱交換器(42,43)に向かって液面高さの差によって生ずる重力差により下部側冷媒管(47)を移動する一方、第2及び第3排熱用熱交換器(42,43)でペルチェ素子(35)から吸熱して蒸発したガス状の冷媒が、ペルチェ素子(35)に対して放熱してガス状の冷媒が減少した熱交換器(41)に向かって蒸発による体積膨張によって上部側冷媒管(46)を移動する。これにより、熱媒体回路(40)では、加熱モードのペルチェ素子(35)に対して放熱した冷媒の放熱量と、冷却モードのペルチェ素子(35)から吸熱した冷媒の吸熱量とが同熱量となるため、冷媒を熱媒体回路(40)で自然循環させることができる。この結果、少ないエネルギーでもって、複数の居室(B,C,D)に対する個別温度調節を行うことができる。
さらに、熱電素子としてペルチェ素子(35)を用いたため、その加熱側と冷却側とを簡易的に切り換えることができる。
〈その他の実施形態〉
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
本実施形態では、本発明を住宅(1)に対して適用するようにしたが、本発明はダクト空調を行う建物全般に対しても適用することができる。
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。