以下、図面を参照して、本発明の第1乃至第4の実施形態となる運転操作支援装置及びその動作(運転操作支援方法)について説明する。
〔第1の実施形態〕
始めに、本発明の第1の実施形態となる運転操作支援装置の構成について説明する。
〔運転操作支援装置の構成〕
本発明の第1の実施形態となる運転操作支援装置は、図1に示すように、前輪の操舵量を制御可能な操舵システムを有する車両1に搭載され、ステレオカメラ2a,2b、加速度センサ3、ヨーレートセンサ4、車輪速センサ5a,5b,5c,5d、操舵角センサ6,EPS(電動式パワーステアリング)モータ7、EPSコントローラ8、及びマイクロプロセッサ9を主な構成要素として備える。
ステレオカメラ2a,2bは、車室内前方に設けられ、車両1前方の画像を撮影する。ステレオカメラ2a,2bは、車両1前方の画像に対し画像処理を施すことにより車両1前方の障害物,車両1と障害物間の距離,道路(走行路),道路境界(白線等)等の車両1の外界環境情報を検出し、検出結果をマイクロプロセッサ9に入力する。ステレオカメラ2a,2bは、図2に示す障害物検出手段11及び道路境界検出手段12を含む本発明に係る外界環境検出手段13として機能する。
加速度センサ3は、圧電素子等により形成される公知の加速度検出装置により構成され、車両1に発生する特定方向の加速度を検出する。加速度センサ3は、検出値をマイクロプロセッサ9に入力する。本実施形態では、加速度センサ3は、車両1の前後方向及び車幅方向に発生する加速度を検出し、所定時間間隔で検出値を積分することにより、車両1の前後方向及び車幅方向の速度も検出可能なように構成されている。
ヨーレートセンサ4は、水晶振動子や半導体装置等により形成される公知のヨーレート検出装置により構成され、車両1の重心位置に発生するヨーレートを検出する。ヨーレートセンサ4は、検出値をマイクロプロセッサ9に入力する。車輪速センサ5a,5b,5c,5dは、車両1の前後左右輪のホイール回転に応じて発生するパルス信号に基づいて車速を検出し、検出値をマイクロプロセッサ9に入力する。
操舵角センサ6は、ラック・ピニオン方式で構成される前輪操舵機構のピニオン側に設置されたエンコーダにより構成され、車両1のステアリングの操舵角(回転角度)を検出する。操舵角センサ6は、検出値をマイクロプロセッサ9に入力する。加速度センサ3、ヨーレートセンサ4、車輪速センサ5a,5b,5c,5d、及び操舵角センサ6は、図2に示す本発明に係る自車両状態検出手段14として機能する。
EPSモータ7は、EPSコントローラ8からの制御信号に従ってステアリングトルクを制御する。EPSコントローラ8は、ステアリングの捩れ度合いを検出するトルクセンサ(図示せず)の情報に基づいてアシストトルクを算出し、算出結果に基づいてEPSモータ7を制御する。本実施形態では、EPS制御によりステアリングトルクを制御することとしたが、油圧制御によりステアリングトルクを制御するようにしてもよい。EPSモータ7及びEPSモータコントローラ8は、図2に示す本発明に係る自車制御手段17として機能する。
マイクロプロセッサ9は、A/D変換回路,D/A変換回路,中央演算処理装置,メモリ等により形成される集積回路により構成され、ステレオカメラ2a,2b、加速度センサ3、ヨーレートセンサ4、車輪速センサ5a,5b,5c,5d、及び操舵角センサ6から入力された情報に基づきEPSコントローラ8の動作を制御する。マイクロプロセッサ9は、内部のCPUが制御プログラムを実行することにより、図2に示す本発明に係る接触危険度判定手段18を含む評価関数設定手段15と最適操作量算出手段16として機能する。
〔運転操作支援処理〕
このような構成を有する運転操作支援装置では、マイクロプロセッサ9が以下に示す運転操作支援処理を実行することにより、回避制御に対し運転者が感じる違和感を低減する。以下、図3に示すフローチャートを参照して、この運転操作支援処理を実行する際のマイクロプロセッサ9の動作について説明する。
図3に示すフローチャートは、車両1のイグニッションスイッチがオフ状態からオン状態に切り替えられたタイミングで開始となり、運転操作支援処理はステップS1の処理に進む。なお以下では、図4に示すような、車両1が片側1車線の直線道路を走行している際に車両1の走行車線前方の右側から左側へ向けて障害物Oが横断する走行シーンを例として運転操作支援処理を実行する際のマイクロプロセッサ9の動作を説明する。
ステップS1の処理では、マイクロプロセッサ9が、ステレオカメラ2a,2bの撮影画像及び各センサの検出値を内部のメモリにロードし、車両1,障害物O,及び道路境界の位置情報を同じ座標系で記述するために、ステレオカメラ2a,2bの撮影画像に基づいて以後の処理において用いる座標系を確定する。本実施形態では、マイクロプロセッサ9は、図4に示すように車両1の進行方向をX軸、そのX軸と垂直な方向をY軸とする座標系を設定する。そしてマイクプロセッサ9は、設定された座標系における車両1の重心位置Gの座標(Xv,Yv)、障害物Oの後部中心位置Gの座標G(XB,YB)、左右の道路境界のY座標YL,YR、及び道路の中央線のY座標YCを算出する。またマイクロプロセッサ9は、設定した座標系における車両1と障害物Oの移動速度を算出する。本実施形態では、車両1はX軸方向に沿って走行しているので、車両1の速度(VVx,VVy)は車輪速センサ5a,5b,5c,5dの検出値から(VV,0)と算出される。また障害物OはY軸方向に沿って移動しているので、障害物Oの速度(VBx,VBy)は今回取得した障害物の位置情報と前回取得した障害物の位置情報との差分値に基づいて(0,VB)と算出される。これにより、ステップS1の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS2の処理に進む。
ステップS2の処理では、マイクロプロセッサ9が、ステップS1の処理により算出された座標値に基づいて、所定時間内に車両1が障害物Oと接触する可能性があるか否かを判別する(判別処理)。判別の結果、所定時間内に車両1が障害物Oと接触する可能性がない場合、マイクロプロセッサ9は運転操作支援処理をステップS1の処理に戻す。一方、所定時間内に車両1が障害物Oと接触する可能性がある場合には、マイクロプロセッサ9は運転操作支援処理をステップS3の処理に進める。なおこの判別処理の詳細については図5に示すフローチャートを参照して後述する。
ステップS3の処理では、マイクロプロセッサ9が、評価関数を構成する評価項目の重みを設定する(評価重み設定処理)。具体的には、マイクロプロセッサ9は、時刻t0を評価開始時刻、評価開始時刻t0から時間Tf先の時刻t0+Tfを評価終了時刻とし、この区間を適当な分割数Nで離散化し、この分割数Nに対応した各評価項目のN個の時系列データに対し評価重みを設定する。なお評価関数や評価重み設定処理の詳細については図7に示すフローチャートを参照して後述する。これにより、ステップS3の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS4の処理に進む。
ステップS4の処理では、マイクロプロセッサ9が、ステップS3の処理により設定された評価重みを用いて評価関数を設定し、設定された評価関数を用いて最適化計算を行うことにより、回避制御の開始時刻から終了時刻までの車両操作量を算出する(評価関数設定処理及び最適化計算処理)。この評価関数設定処理及び最適化計算処理の詳細については図9に示すフローチャートを参照して後述する。これにより、ステップS4の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS5の処理に進む。
ステップS5の処理では、マイクロプロセッサ9が、ステップS4の処理により算出された回避制御の開始時刻から終了時刻までの車両操作量を指令値としてEPSモータコントローラ8に出力し、EPSモータコントローラ8は、マイクロプロセッサ9から出力された指令値に従ってEPSモータ7の動作を制御することにより、車両1が障害物に接触することを回避するための回避制御を実行する。これにより、ステップS5の処理は完了し、一連の運転操作支援処理は終了する。
〔判別処理〕
次に、図5に示すフローチャートを参照して、上記ステップS2の判別処理を詳しく説明する。
ステップS11の処理では、マイクロプロセッサ9が、現在時刻t0における車両1の重心位置G(Xv,Yv)と予めメモリ内に格納されている車両1の大きさに基づいて、車両1の四隅の位置座標を算出する。またマイクロプロセッサ9は、障害物Oの後部中心位置G(XB,YB)とステレオカメラ2a,2bの撮影画像から推測される障害物Oの大きさに基づいて、障害物Oの四隅の位置座標を算出する。そしてマイクロプロセッサ9は、車両1及び障害物Oの四隅の位置座標に基づいて、ステップS1の処理により設定された座標系における車両1の領域Sv(t0)と障害物Oの領域SB(t0)を算出する。
なお本実施形態では、車両1の左前座標を(Xv1,Yv1)、右前座標を(Xv2,Yv2)、左後座標を(Xv3,Yv3)、右後座標を(Xv4,Yv4)と表記し、障害物Oの左前座標を(XB1,YB1)、右前座標を(XB2,YB2)、左後座標を(XB3,YB3)、右後座標を(XB4,YB4)と表記する。以下では、車両1又は障害物Oの座標を表す変数の添え字は、「1」の場合は左前位置、「2」の場合は右前位置、「3」の場合は左後位置、「4」の場合は右後位置を表すものとする。これにより、車両1及び障害物Oの四隅の位置座標は、車両1の重心位置G(XB,YB)からフロント側面までの長さをdVxf、車両1の重心位置G(XB,YB)からリア側面までの長さをdVxr、車両1の横幅を2dVy、障害物Oの縦幅及び横幅共に2dBとすることにより、以下の数式1〜4のように表される。従って以下の数式1〜4により算出される現在時刻t0における車両1及び障害物Oの四隅の座標から現在時刻t0における車両1の領域Sv(t0)と障害物Oの領域SB(t0)を算出することができる。これにより、ステップS11の処理は完了し、判別処理はステップS12の処理に進む。
ステップS12の処理では、マイクロプロセッサ9が、以下の数式5に基づいて、時刻tにおいて車両1の領域Sv(t)と障害物Oの領域SB(t)が重なる領域が存在するか否かを判定する。具体的には、時刻tにおいて以下の数式5が成り立たない場合、マイクロプロセッサ9は、重なる領域が存在し、車両1と障害物Oが接触する可能性があると判定する。一方、時刻tにおいて以下の数式5が成り立つ場合には、マイクロプロセッサ9は、重なる領域が存在せず、車両1と障害物Oが接触する可能性は低いと判定する。そして判定の結果、重なる領域が存在する場合、マイクロプロセッサ9は、時刻t=t0+TTC(時間TTC:車両1が障害物Oと接触するまでの時間)と設定した後、判別処理をステップS3の処理に進める。一方、重なる領域が存在しない場合には、マイクロプロセッサ9は判別処理をステップS13の処理に進める。
ステップS13の処理では、マイクロプロセッサ9が、以下の数式6,7が成立するか否かを判別することにより、時刻tを時間tCJ進めた時、時刻tが現在時刻t0を所定時間TCJ進めた時刻よりも前の時刻であるか否かを判別する。判別の結果、以下の数式6,7が成立する場合、マイクロプロセッサ9は、時刻tが現在時刻t0を所定時間TCJ進めた時刻よりも前の時刻であると判定し、判別処理をステップS14の処理に進める。一方、以下の数式6,7が成立しない場合には、マイクロプロセッサ9は、時刻tが現在時刻t0を所定時間TCJ進めた時刻よりも前の時刻ではないと判定し、判別処理をステップS1の処理に戻す。
ステップS14の処理では、マイクロプロセッサ9が、時刻tにおける車両1と障害物Oの速度情報から時刻tにおける車両1の領域Sv(t)と障害物Oの領域SB(t)を算出する。具体的には、図4に示す走行シーンでは車両1は道路を直進し、障害物Oは道路を横断しているので、各々の四隅座標は以下の数式8〜11のように表される。従ってマイクロプロセッサ9は、以下の数式8〜11を用いて時刻tにおける車両1の領域Sv(t)と障害物Oの領域SB(t)を算出する。
なお時刻tにおける速度情報に基づいた軌跡予測方法よりも車両1の軌跡を精密に予測する方法として、車両1の運動を表す車両モデルを用いて車両1の軌跡を予測する方法がある。以下の数式12〜18はこの車両モデルの一例を示す。数式中のパラメータθ,ν,β,γ,δWはそれぞれ、図6に示すように車両1のヨー角,速度,すべり角,ヨーレート,前輪転舵角を示し、車両1の重心位置G(Xv,Yv)と合わせて本実施形態における車両1の状態変数として扱う。またパラメータδS,alonはそれぞれ操舵角度と車両前後方向の加減速度を示し、本実施形態における車両入力として扱う。またパラメータM,I,Lf,Lr,NG,TSはそれぞれ車両質量,ヨーイナーシャ,車両1の重心位置G(Xv,Yv)から前輪軸までの距離,車両1の重心位置G(Xv,Yv)から後輪軸までの距離,ステアリングギア比,ステアリング系時定数を示し、本実施形態における車両パラメータである。
一般にタイヤ横力はタイヤすべり角に対し非線形特性を有するが、タイヤすべり角が小さい場合には線形と仮定することができる。図4に示す走行シーンのような通常走行の領域であれば、タイヤすべり角は小さいと見なすことができるので、前輪後輪のすべり角をそれぞれαf,αr、前輪後輪のコーナリングパワーをそれぞれKf,Krとすると、車両1の前輪及び後輪のタイヤ横力Fyf,Fyrは以下の数式19〜22のように表すことができる。
以上の数式12〜22に示す車両モデルを用いた場合、車両1の運動状態DVは7次元のベクトル、車両を操作する入力uVは2次元のベクトルとして以下の数式23〜25のように表される。
数式23に示す車両モデルの初期状態ベクトルDV(t0)の各要素は以下のようにして得られる。要素XV,YVはステップS1の処理により算出されている座標値XV,YVとなる。要素γはヨーレートセンサ4の検出値から得られる。要素θは、ある時点での車両姿勢を基準としてヨーレートセンサ4の検出値を積分する方法又はステレオカメラ2a,2bの撮影画像から車両1と車両1の走行路がなす角度から決定する方法により得られる。要素δWは、操舵角δSをギア比NGで除算することにより得られる。要素βは車両1の前後及び車幅方向の速度νX,νYとして以下の数式26により得られる。
車両1の前後及び車幅方向の速度νX,νYとしては、車両1に取り付けられた加速度センサ3により検出された車両前後方向及び車幅方向の加速度を積分した値を使用できる。またすべり角βが微小であると仮定すると車速ν=νXと近似できる。以上の処理により車両モデルの初期状態ベクトルDV(t0)を取得することができる。この初期状態にある車両モデルに数式24に示す入力uVを一定で与え続けると、車両1の重心位置G(Xv,Yv)の軌跡を求めることができる。そして将来時刻tにおける重心座標(Xv(t),Yv(t))と車両姿勢θ(t)を用いて、将来時刻における車両1の四隅の位置座標は以下の数式27〜30のように表される。この位置座標を利用して車両1の領域Sv(t)と障害物Oの領域SB(t)を算出して接触判定を行うことにより、数式8,9を利用して車両1の領域Sv(t)と障害物Oの領域SB(t)を算出して接触判定を行う場合よりも信頼性の向上が期待できる。これにより、ステップS14の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS12の処理に戻る。
〔評価重み設定処理〕
次に、図7に示すフローチャートを参照して、ステップS3の評価重み設定処理を詳しく説明する。
本実施形態では、評価関数は、現在時刻t0から所定推定時刻t0+Tfまでの間に車両1に加えた入力uVに対する車両状態ベクトルDVの予測値に基づいて、以下の数式31のように表すことができる。ここで数式31の右辺の第1項は所定推定時刻t0+Tfにおける車両運動状態を評価する式(終端評価式)、第2項は現在時刻t0から所定推定時刻t0+Tfまでの区間内における車両運動状態を評価する式(区間評価式)である。
一般に、時間Tfが大きいほど、より長い将来を予測することができるが、時間Tfを大きくした場合にはマイクロプロセッサ9の演算負荷が大きくなる。そこでマイクロプロセッサ9は、以下の評価項目(1)〜(4)にそれぞれパラメータ w1,w2,w3,w4を用いて重み付けをする。
(1)終端評価項目1:時間Tf後、車両姿勢が道路方向に向くようにする。以下の数式32に示す評価式ψ1(t0+Tf)により表される。数式32中、パラメータθ*は現在時刻t0で得た道路情報から設定される、時刻t0から時間Tf後における目標姿勢角を示す。
(2)区間評価項目2:時間Tf間、前方障害物に近づかないようにする。以下の数式33に示す評価式L2(τ)により表される。数式33中、パラメータσX,σYは関数の形状を表すパラメータを示す。
(3)区間評価項目3:時間Tf間、車両が道路境界を逸脱しないようにする。以下の数式34に示す評価式L3(τ)により表される。数式34中、パラメータΔは道路境界に接近する余裕幅を示す。
(4)区間評価項目4:時間Tf間、車両の操舵制御入力をできるだけ小さくする。以下の数式35に示す評価式L4(τ)により表される。
これにより、数式31の第1項及び第2項はそれぞれ以下の数式36,37のように表される。
この評価関数を最小にするような時刻t0から所定推定時刻t0+Tfまでの操舵操作入力の時系列データδSR *を以下の数式38に示す。また数式38により表される操舵操作入力の時系列データδSR *に関する評価重みwfを以下の数式39に示す。
ここでパラメータNが大きいほどサンプル時間間隔が短くなり、精度の良い予測操舵操作量が算出できるが、その分計算に使われるデータ数が大幅に増加するため、マイクロプロセッサ9の計算負荷が高くなってしまう。従ってパラメータNはサンプル時間間隔が10〜100msec程度になるように設定することが望ましい。以下、図8に示すフローチャートを参照して、数式39の導出方法を詳しく説明する。
ステップS21の処理では、マイクロプロセッサ9が、操舵操作入力の時系列データδSR *に関する評価重みwfがとりうる最大値wfMAXと最小値wfMINを設定する。これによりステップS21の処理は完了し、導出処理はステップS22の処理に進む。
ステップS22の処理では、マイクロプロセッサ9が、車両1が障害物Oに接触するまでの時間から緊急度が高いと想定される時間をTEMとして予め設定し、ステップS2の処理において用いた時間TTCから時間TEMを差し引いた時刻を評価時刻に対応付ける。これにより、ステップS22の処理は完了し、導出処理はステップS23の処理に進む。
ステップS23の処理では、マイクロプロセッサ9が、時間TTCと時間TEMが以下の数式40に示す条件を満足するか否かを判別する。判別の結果、条件を満足する場合、マイクロプロセッサ9は導出処理をステップS24の処理に進める。一方、条件を満足しない場合には、マイクロプロセッサ9は導出処理をステップS25の処理に進める。
ステップS24の処理では、マイクロプロセッサ9が、現在の走行シーンにおける緊急度が高いと判断し、図8(a)に示すように操舵操作入力の時系列データδSR *に関する評価重みwfの全ての要素を最小値wfMINに設定する。これにより、ステップS24の処理は完了し、一連の導出処理は終了する。
ステップS25の処理では、マイクロプロセッサ9が、評価重みwfの各要素を算出するための設定パラメータTwfを算出する。具体的には、設定パラメータTwfは、操舵操作入力の時系列データδSR *に関する評価重みwfの最大値wfMAXから最小値wfMINまで一次遅れで立ち下がるとした場合の時定数であるので、マイクロプロセッサ9は、図8(b)に示すように、 操舵操作入力の時系列データδSR *に関する評価重みwfの最大値wfMAXから最小値wfMINまでの間を100%とした時、時刻t0から一次遅れで立下り、時刻TTC−TEMの時にQ%に達するような設定パラメータTwfを算出する。なお時刻TTC−TEMの時には既に緊急度が高い走行シーンになっていると想定しているので、Q%は75〜95%程度の範囲内で設定することが望ましい。これにより、ステップS25の処理は完了し、導出処理はステップS26の処理に進む。
ステップS26の処理では、マイクロプロセッサ9が、ステップS25の処理により算出された設定パラメータTwfを用いて評価重みwfの各要素を決定する。具体的には、マイクロプロセッサ9は、以下の数式41に示すように評価開始時刻である時刻t0での評価重みをwfMAXと設定した後、以下の数式42に基づいて時刻t=TTC−TEMとなるまでの各要素の値を算出する。これにより、ステップS26の処理は完了し、一連の設定処理は終了する。
〔評価関数設定処理及び最適化計算処理〕
次に、図9に示すフローチャートを参照して、ステップS4の評価関数設定処理及び最適化計算処理を詳しく説明する。
ステップS31の処理では、マイクロプロセッサ9が、評価関数の最適化計算を行う上で必要となる車両モデルと障害物モデルを設定する。車両モデルはステップS2の処理において設定した車両モデルを使用することができる。すなわち車両モデルDVは以下の数式43〜45のように表される。なお車両モデルはステップS2の処理において設定したものとは別のものを使用することができるが、この場合、新しく追加される車両状態を検出又は推定するための手段を設ける必要がある。数式44式中、示すパラメータalonは、現在の前後方向加速度を示し、一定であるとする。詳細な車両モデルの内容は数式12〜22により表される。
障害物モデルDBは以下の数式46,47に示す微分方程式により記述される。
障害物の動きをより詳細に検出することができれば、数式46,47に示す障害物モデルDBをより複雑にすることができるが、車両モデルDV同様、マイクロプロセッサ9の計算負荷を抑えるために、本実施形態では以下の数式48,49に示すような最も単純なモデルとした。これにより、ステップS31の処理は完了し、ステップS32の処理が開始される。
ステップS32の処理では、マイクロプロセッサ9が、回避操作量を算出するために用いる評価関数を設定する。具体的な内容はS3の処理において説明したので省略する。これにより、ステップS32の処理は完了し、ステップS33の処理が開始される。
ステップS33の処理では、マイクロプロセッサ9が、ステップS31,S32の処理により設定された車両モデルDV,障害物モデルDB,及び評価関数に基づいて数式42で表される評価関数を最小にする最適化計算を行う。数式42で表される評価関数を最小にするような操作量を求める問題は、一般に最適制御問題と呼び、その数値解を求めるために様々なアルゴリズムが知られている。公知技術としては文献(T.Ohtsuka,"A continuation/GMRES method for fastcomputation of nonlinear receeding horizon control",Automatica, vol,40, 563/574, 2004.)を例示できる。このようなアルゴリズムを使用して最適操作量を算出すると、本実施形態の場合、入力uvについてはパラメータalonを一定としているので、数式44により操舵角δSが最適化の対象となり、以下の数式50に示すように時刻t0から時刻t0+Tfまでの操舵角δSR *の時系列変化のデータが算出される。そしてマイクロプロセッサ9は、回避開始時刻から終了時刻までの操舵角δSR *の時系列変化のデータを回避操作量として算出し、時刻に応じてこの操作量を指令値としてEPSコントローラ8に出力する。これにより、ステップS33の処理は完了し、一連の運転操作支援処理は終了する。
最後に、図10を参照して、本願発明と従来技術とを比較する。図10中、点線は従来技術の最適化計算結果を示し、実線は本願発明の最適化計算結果を示す。図10に破線で示すように、従来技術では時刻t0の時点でゼロからステップ状の信号を指令するため、回避性能が高い反面、運転者に大きな操作違和感を与えてしまう。これに対して本願発明では時刻t0での操舵評価の重みが大きいため、実線に示すように、初動で不必要に大きな指令を行わないようになっているが、時間経過に伴って重みが減少することにより、従来技術のような大きな操舵指令が徐々に可能となる。このため、回避可能な範囲で回避性能を犠牲にしながら運転者に与える違和感を抑えることができる。
以上の説明から明らかなように、本発明の第1の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロプロセッサ9が、ステレオカメラ2a,2b、加速度センサ3、ヨーレートセンサ4、車輪速センサ5a,5b,5c,5d、及び操舵角センサ6から入力された情報に基づいて、操舵操作入力の時系列データδSR *に関する評価重みwfを相対的に変更するので、車両1の外界環境や車両状態に応じた適切な操舵操作量が算出されることにより、回避制御に対し運転者が感じる違和感を低減できる。
また本発明の第1の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロプロセッサ9は、予測時間毎に操舵操作入力の時系列データδSR *に関する評価重みwfを相対的に変更するので、予測時間に応じて操舵操作入力の時系列データδSR *に関する評価重みwfを適切に設定することでより現実的な操舵操作量を算出することができる。
また本発明の第1の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロプロセッサ9は、障害物と接触する危険度が低いほど、図8(a)に示すように、操舵操作入力の時系列データδSR *に関する評価重みwfを相対的に大きくするので、不必要に大きな制御介入を抑えた回避操作支援を行うことができる。
また本発明の第1の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロプロセッサ9は、障害物と接触する危険度が低いほど、図8(b)に示すように、初期の評価重みwfの重みを相対的に大きくするので、突然大きな回避制御が介入することが抑制され、運転者が回避制御に対し違和感を感じることを抑制できる。
また本発明の第1の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロプロセッサ9は、障害物の移動軌跡に対する自車両の接近度合に関する評価項目を含めて評価関数を設定するので、障害物の移動を考慮して回避制御を行うことができる。
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態となる運転操作支援装置の構成について説明する。
〔運転操作支援装置の構成〕
本発明の第2の実施形態となる運転操作支援装置の構成は、図11に示すように、接触危険度判定手段18に回避経路評価手段19が含まれる点以外、上記第1の実施形態となる運転操作支援装置と同じ構成になっている。
〔運転操作支援処理〕
このような構成を有する運転操作支援装置では、マイクロプロセッサ9が以下に示す運転操作支援処理を実行することにより、回避制御に対し運転者が感じる違和感を低減する。以下、この運転操作支援処理を実行する際のマイクロプロセッサ9の動作について説明する。なお以下では既述の図4に示す走行シーンを例として運転操作支援処理を実行する際のマイクロプロセッサ9の動作を説明する。また本実施形態における運転操作支援処理は、重み設定処理の内容が上記第1の実施形態における運転操作支援処理と異なるだけであるので、以下では、図12に示すフローチャートを参照して、評価重み設定処理についてのみ説明する。
〔評価重み設定処理〕
ステップS41の処理では、マイクロプロセッサ9が、バッファメモリに格納されている情報から1サンプル時間前の時刻において回避操作量計算が行われているか否かを判別する。判別の結果、回避操作量計算が行われていない場合、マイクロプロセッサ9はステップS42の処理を開始する。一方、回避操作量計算が行われている場合には、マイクロプロセッサ9はステップS48の処理を開始する。なおステップS42〜ステップS47の処理は図7に示すステップS21〜S26の処理と同じあるので以下ではその説明を省略する。
ステップS48の処理では、マイクロプロセッサ9が、1サンプル時間前の時刻における回避操作量を用いて回避経路を算出する。具体的には、マイクロプロセッサ9は、数式50により表される時刻t0より1サンプル前の時刻t0’において最適化計算により算出された操舵パターンを現在時刻に合わせるために1サンプル時間分進める。1サンプル時間をTsとし、1サンプル時間Ts進めた分、足りなくなった要素を0とすると、操舵パターンは以下の数式51のように表される。
そしてマイクロプロセッサ9は、数式23に示した現在時刻における車両状態ベクトルDvを各種センサによって取得し、数式12〜25に示す車両モデルを用いて回避経路を算出する。このときの経路算出結果を以下の数式52,53に示す。
同様にマイクロプロセッサ9は、数式49に示した現在時刻における障害物の状態ベクトルDBを取得して障害物経路を算出する。このときの経路算出果を以下の数式54,55に示す。これにより、ステップS48の処理は完了し、マイクロプロセッサ9はステップS49の処理を開始する。
ステップS49の処理では、マイクロプロセッサ9が、数式52〜55を用いて評価関数の中で使用した数式33,34に示す評価式を算出し、算出結果を用いて障害物Oとの接触危険度が高いと判断される時刻まで評価重みを下げるように補正する。以下、この処理を図13を用いて詳しく説明する。いま数式33の算出結果を評価式L2’,数式34の算出結果を評価式L3’として以下の数式56,57のように表す。
始めにマイクロプロセッサ9は、図13(a),(b)に示すように、緊急度を表す評価式L2’,L3’の閾値をL2TH’,L3TH’として予め設定し、以下の数式58,59に示すように評価式L2’,L3’の各要素と比較する。
数式58,59では、各要素の値は−1又は1となり、1である時刻の間は障害物Oとの接触又は道路逸脱の恐れが高い時刻となる。次にマイクロコンピュータ9は、図13(c),(d)に示すように、評価式L2”,L3”について一番遅く要素の値が1となる時刻をそれぞれ時刻t0+TL2,t0+TL3と設定し、時刻t0+TL2と時刻t0+TL3を比較し、より大きい時刻を時刻t0+TCOMに設定する。ここで評価式L2”において全ての要素が−1の場合は、時間TL2=0とする。また評価式L3”に関しても同様に、全ての要素が−1の場合は、時間TL3=0とする。これにより、ステップS49の処理は完了し、マイクロプロセッサ9はステップS50の処理を開始する。
ステップS50の処理では、マイクロプロセッサ9が、ステップS49の評価結果に基づいて1サンプル時間前に算出された操舵操作入力の時系列データδSR *に関する評価重みwfを補正する。ここで図14を参照して、その補正係数の決定方法を説明する。図14(b)に示すように補正係数KCは、時刻t0から障害物との接触又は道路逸脱の恐れが高いとみなされた最終時刻t0+TCOMまでの間は0から1までの値Q’を想定し、以降は徐々に値が増加し、最終時刻t0+TCOMから所定の時刻ΔTだけ先の時刻最終時刻t0+TCOM+ΔTの時に補正係数KC=1となり、時刻t0+Tfまで1を保つように設定される。ここでQ’の大きさは、以下の数式60に示すように、ステップS49の処理により算出された評価式L2”と評価式L3”の最大値によって決まるものとする。
上記数式60で表される関数は評価式L2’と評価式L3’の最大値が小さいほど回避余裕が高いと見なせるので、1に近い値となり、逆に大きいほど回避余裕が低いので、0に近い値となる。以上より補正係数KCは以下の数式61により算出される。
そして時刻t0より1サンプル時間前の時刻t0’において算出された評価重みwfは、現時刻に合わせるため1サンプル分時間を進め、足りなくなった要素をwf(t0+Tf((N−1)/N))とすると、以下の数式62のように表される。そして数式62の評価重みwf’に数式61の補正係数KCをかけたものが、現時刻における操舵操作入力の時系列データδSR *に関する評価重みwfとして新たに設定される。これにより、ステップS50の処理は完了し、運転支援処理はステップS4の処理に進む。
いま図15(a)において、1サンプル時間前の最適化計算結果を基に算出された現時刻における車両の軌跡を、接触を回避できているがもう少し障害物から離れて回避した方が良いと判断されたとする。このような時に図15(b)に示すように評価重みwfの補正が行われ、1サンプル前の時よりも操舵操作量の評価重みwfが小さくなり、1サンプル前の時よりも大きな操舵で回避を行うことができる。また自車モデルと実際の動きの違いや障害物の急な動きの変化に対してもこの逐次更新によって補うことができる。
以上の説明から明らかなように、本発明の第2の実施形態となる運転操作支援装置によれば、マイクロプロセッサ9が、所定時間毎に演算を繰り返し、運転支援量を更新するので、障害物Oの動きが変化した場合であっても適切な回避支援を行うことができる。また本発明の第2の実施形態となる運転操作支援装置によれば、マイクロプロセッサ9が、現時刻より前の時点で算出された時系列の運転操作量を現時刻において実行した場合の車両の走行経路を評価し、評価結果に基づいて、障害物及び道路境界部との接触危険度が高い時刻までの運転操作量に関する評価項目の重みを相対的に小さくするので、更新時にはもう少し大きな操作量で回避した方が障害物との接触や路外逸脱を防げる場合にも適切に対応することができる。
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態となる運転操作支援装置の構成について説明する。
〔運転操作支援装置の構成〕
本発明の第3の実施形態となる運転操作支援装置は、図16に示すように、第1の実施形態の運転操作支援装置の構成に加えて、車両1の前後左右輪のブレーキ21a,21b,21c,21dと、車両1のヨー方向の運動を制御するためにブレーキ21a,21b,21c,21dを制御するDYC(Direct Yaw-moment Control)コントローラ22を備える。このDYCコントローラ22は、図2に示す本発明に係る自車制御手段16として機能する。なお本発明は各輪独立制動によるDYCに限定されることはなく、例えば各輪制動モータによるDYCであってもよい。
〔運転操作支援処理〕
このような構成を有する運転操作支援装置では、マイクロプロセッサ9が以下に示す運転操作支援処理を実行することにより、回避制御に対し運転者が感じる違和感を低減する。以下、この運転操作支援処理を実行する際のマイクロプロセッサ9の動作について説明する。なお以下では、図17に示すような、車両1が走行する道路の前方が曲線を描き、この曲線部に差し掛かる位置に障害物Oが停止している走行シーンを例として運転操作支援処理を実行する際のマイクロプロセッサ9の動作を説明する。また運転操作支援処理の流れは図3に示すフローチャートと同じであるので、以下では図3に示すフローチャートを参照して本実施形態における運転操作支援処理の流れを説明する。
ステップS1の処理では、マイクロプロセッサ9が、各種センサの検出値を読み込み、座標系の確定する。本実施形態では、座標系として、図17に示すように、第1及び第2の実施形態で用いたXY座標に加えて道路の中心線上に進行方向に沿って設定されるS座標軸及びS座標軸と直交するR座標軸によるSR座標系を設定する。なお道路方向は、ステレオカメラ2a,2bの撮影画像から得ることができるので、XY座標とSR座標との間の座標変換式は以下の数式63,64のように表すことができる。これにより、ステップS1の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS2の処理に進む。
ステップS2の処理では、マイクロプロセッサ9が、車両1の前方に接触する可能性がある障害物Oが存在するか否かを判別する。ここで車両モデルによる接触判定を行う場合、各輪ブレーキ21a,21b,21c,21dによるモーメントが発生するために、以下の数式65〜71に示すように車両モデルを変更する必要がある。
パラメータMYは、左右輪の一方のみに通常の制動量よりも強い制動を掛けることにより発生するヨーモーメントを表す。ヨーモーメントMYについて、図18に示す矢印方向を正すると、ヨーモーメントMYが正の時は左輪の制動力が増加し、ヨーモーメントMYが負の時は右輪の制動力が増加するということになる。以上より、本実施形態に用いる車両モデルは以下の数式72〜74のように表される。これにより、ステップS2の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS3の処理に進む。
ステップS3の処理では、マイクロプロセッサ9が、各操作量の評価重みを決定する。ここで、本実施形態で想定した車両モデルの操作入力は数式71により操舵角δS,前後方向加速度alon,ヨーモーメントMYの3つであり、この中で最適化の対象となる操作入力を操舵角δS,ヨーモーメントMYの2つとする。以下、図19に示すフローチャートを参照して、このステップS3の処理を詳しく説明する。
ステップS51の処理では、マイクロプロセッサ9が、バッファメモリに格納されている情報から1サンプル時間前の時刻において回避操作量計算が行われているか否かを判別する。判別の結果、回避操作量計算が行われていない場合、マイクロプロセッサ9はステップS52の処理を開始する。一方、回避操作量計算が行われている場合には、マイクロプロセッサ9はステップS58の処理を開始する。なおステップS52〜ステップS57の処理は基本的に図8に示すステップS21〜S26の処理と同じあるので以下ではその詳細な説明を省略する。すなわち操舵角δSR *に関する評価重みwfについては図8に示すステップS21〜S26の処理と同じ処理により算出できる。またヨーモーメントMYに関する評価重みwMについてはステップS24,S26の時点で予め設定しておいた以下の数式75に示すような固定値として設定する。
ステップS58の処理では、マイクロプロセッサ9が、1サンプル時間前の時刻における回避操作量の時系列データを用いて回避経路を算出する。具体的には、始めに、マイクロプロセッサ9は、時刻t0より1サンプル時間前の時刻t0’秒において最適化計算によって算出された操舵パターンを現時刻に合わせるために1サンプル時間分進める。1サンプル時間をTsとし、1サンプル時間Ts進めた分、足りなくなった要素を0とすると、操舵パターンは以下の数式76,77のように表される。数式76,77中、パラメータδSR’は最適化計算によって得られた回避操舵パターン、パラメータMY’は最適化計算によって得られたヨーモーメントパターンを示す。
次に、マイクロプロセッサ9は、数式72に示す現在時刻における車両状態ベクトルDVを各種センサによって取得し、数式65〜71に示すような車両モデルを用いて回避経路を算出する。このときの経路算出結果を(Xv,Yv)として数式52,53と同様の形で表し、また車両姿勢については以下の数式78のように表す。これにより、ステップS58の処理は完了し、マイクロプロセッサ9はステップS59の処理を開始する。
ステップS59の処理では、マイクロプロセッサ9が、数式52〜数式55を用いて評価関数の中で使用した数式33,34に示す評価式を計算する。ここで算出された補正係数をKC1とする。補正係数KC1は、第2の実施形態と同様、図20(b)に示すような形状で表すことができる。これにより、ステップS59の処理は完了し、マイクロプロセッサ9はステップS60の処理を開始する。
ステップS60の処理では、マイクロプロセッサ9が、数式78により表される終端車両姿勢を用いて図22に示すように前サンプル時刻t0’における評価関数の終端評価項目1で用いた目標車両姿勢θ’(t0’) と比較する。そしてマイクロプロセッサ9は、以下の数式79に示すΔθ(図21参照)の値が大きい程、回避後の復帰姿勢が困難なシーンと判断できるので、数式52〜55により表される自車両予測軌跡と障害物予測軌跡から障害物Oの横を通過すると予測される時刻を算出する。これにより、姿勢に基づいた重み補正係数KC2は、図20(c)に示すように、評価初期は1だが、時刻t0+TRECを過ぎた時点でQ”まで下がるような形で表すことができる。このQ”の大きさは0から1までの値をとり、数式79に示すΔθが大きいほどゼロに近い値に設定される。これにより、ステップS60の処理は完了し、マイクロプロセッサ9はステップS61の処理を開始する。
ステップS61の処理では、マイクロプロセッサ9が、ステップS59,S60の処理により算出された補正係数KC1,KC2に基づいて評価重みを補正する。なお評価重みを補正することにより1サンプル前の指令値と比べて現時刻の指令値が大きく変化する恐れがあるため、本実施形態では、運転者に与える違和感をより少なくするために、ヨーモーメントの評価重みwMのみ補正する。具体的には、マイクロプロセッサ9は、以下の数式80に示すように、ステップS69の処理により算出された補正係数KC1,KC2を掛けることで現在時刻t0におけるヨーモーメントの評価重みwMを算出する。またマイクロプロセッサ9は、現在時刻t0における操舵操作の評価重みwfとしては数式81に示すように1サンプル前の時刻t0’で算出された評価重みの要素を1サンプル分進めたものを用いる。これにより、ステップS61の処理は完了し、マイクロプロセッサ9はステップS4の処理を開始する。
ステップS4の処理では、マイクロプロセッサ9が、ステップS3の処理により設定された評価重みを用いて評価関数を設定し、最適化計算を行う。なおこのステップS4の処理の流れは第1の実施形態におけるステップS4の処理の流れと同じであるので、以下では図9に示すフローチャートを参照して、このステップS4の処理を説明する。
ステップS31の処理では、マイクロプロセッサ9が、最適化計算を行う上で必要となる車両モデルと障害物モデルを設定する。本処理は第1の実施形態におけるステップS31の処理と同じであるので、詳細な説明は省略する。これにより、ステップS31の処理は完了し、ステップS32の処理が開始される。
ステップS32の処理では、マイクロプロセッサ9が、回避操作量を算出するために用いる評価関数を設定する。評価関数は、第1の実施形態における評価関数と同様、数式31のような終端評価項目と区間評価項目とで分類されるが、本実施形態では、以下のような評価項目となる。評価項目(1),(2),(4)は第1の実施形態における評価項目(1),(2),(4)と同じものである。評価項目(3)は、道路曲線部分では道路の中心からの距離はY座標ではなくR座標で表されるので、以下の数式82のように表される。また新たな評価対象となる区間評価項目(5)は以下の数式83により表される。
(1)終端評価項目1:時間Tf後、車両姿勢が道路方向に向くようにする
(2)区間評価項目2:時間Tf間、前方障害物に近づかないようにする。
(3)区間評価項目3:時間Tf間、自車が道路境界を逸脱しないようにする
(4)区間評価項目4:時間Tf間、自車の操舵制御入力はできるだけ小さくする
(5)区間評価項目5:時間Tf間、自車のヨーモーメント入力はできるだけ小さくする
ここで、数式82中、パラメータrLは道路中心から左側道路境界のR軸距離を表し、パラメータrRは道路中心から右側道路境界のR軸距離を表す。またSR座標で表現された数式34に示す評価式をXY座標に対応させるために数式63を使用する。以上より数式42の第1項及び第2項は以下の数式84,85のように表される。これにより、ステップS32の処理は完了し、ステップS33の処理が開始される。
ステップS33の処理では、マイクロプロセッサ9が、ステップS31,S32の処理により設定された車両モデル,障害物モデル,及び評価関数に基づいて最適化計算を行う。本実施形態においても最適化アルゴリズムは第1の実施形態におけるステップS33の処理で使用したものと同様のアルゴリズムを使用できる。このようなアルゴリズムを使用して最適操作量を算出すると、本実施形態の場合、入力uvについては車両前後方向加速度alonを一定としているので、操舵角δsとヨーモーメントMYが最適化対象となり、以下の数式86,87に示すように、時刻t0から時刻t0+Tfまでの各操作量が時系列で算出される。
そしてマイクロプロセッサ9は、回避開始時刻から終了時刻までの回避操作量を算出し、時刻に応じてこの操作量を指令値としてEPSコントローラ8とDYCコントローラ22に出力する。なお本実施形態では、操舵角δsに対して逐次更新による補正を行っていないが、ヨーモーメントMYに対して逐次更新による補正が行われているため、操舵指令の変化によって運転者に与える違和感を抑えつつ、ヨーモーメントMYで回避性能を補うことができる。これにより、ステップS33の処理は完了し、一連の運転操作支援処理は終了する。
以上の説明から明らかなように、本発明の第3の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロプロセッサ9は、道路境界を逸脱する危険度が高いほど、ヨーモーメントMYの評価重みwMを相対的に大きくするので、路外逸脱を抑制しながら車両の姿勢復帰を行うことができる。
また本発明の第3の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロプロセッサ9は、自車両1の走行経路の評価結果に基づいて回避後に車両の姿勢復帰が困難であるか否かを判別し、自車両1の姿勢復帰が困難である場合、ヨーモーメントMYの評価重みwMを相対的に小さくするので、障害物との接触を回避した後に大きな姿勢変化を伴う場合であっても、回避操作から円滑に操作移行することができる。
〔第4の実施形態〕
最後に、本発明の第4の実施形態となる運転操作支援装置について説明する。
〔運転操作支援装置の構成〕
本発明の第4の実施形態となる運転操作支援装置の構成は、上記第2の実施形態となる運転操作支援装置と同じ構成になっている。
〔運転操作支援処理〕
このような構成を有する運転操作支援装置では、マイクロプロセッサ9が以下に示す運転操作支援処理を実行することにより、回避制御に対し運転者が感じる違和感を低減する。以下、この運転操作支援処理を実行する際のマイクロプロセッサ9の動作について説明する。なお以下では、図4に示す走行シーンを例として運転操作支援処理を実行する際のマイクロプロセッサ9の動作を説明する。また本実施形態における運転操作支援処理は、評価重み設定処理の内容が上記第1の実施形態における運転操作支援処理と異なるだけであるので、以下では、図22に示すフローチャートを参照して、評価重み設定処理についてのみ説明する。
〔評価重み設定処理〕
本実施形態では、マイクロプロセッサ9が、第1の実施形態におけるステップS3の処理と同様に評価重みを設定するが、評価重みの逐次更新に伴い処理の流れが変化する。具体的には、現在時刻t0を評価開始時刻、評価開始時刻t0から時間Tf秒先の将来時刻t0+Tfを評価終了時刻とし、この区間を適当な分割数Nで離散化し、この分割数Nに対応したN個の評価重みを算出するのだが、第1乃至第3の実施形態は操作量に対する評価重みを決めていたのに対し、本実施形態は障害物と道路境界に対する評価重みを決める。ここで実際に評価関数の設定する処理はステップS4の処理だが、先に評価関数について説明する。評価関数は、現在時刻t0から所定推定時刻t0+Tfまでに車両1に対して加えた入力ベクトルuVに対する車両状態ベクトルDVの予測値に基づいて数式31と同様の形で表すことができる。本実施形態で使用する評価項目は以下の通りである。なお第1実施形態との違いは右側の道路境界と左側の道路境界とで評価を分けた点である。
(1)終端評価項目1:Tf秒後、車両姿勢が道路方向に向くようにする。
(2)区間評価項目2:Tf秒間、前方障害物に近づかないようにする
数式中、パラメータσ
X,σ
Yは関数の形状を表すパラメータである。
(3)区間評価項目3−1:Tf秒間、車両1が右側道路境界を逸脱しないようにする。
数式中、パラメータΔは道路境界に接近する余裕幅を示す。
(4)区間評価項目3−2:Tf秒間、車両1が左側道路境界を逸脱しないようにする。
数式中、パラメータΔは道路境界に接近する余裕幅を示す。
(5)区間評価項目4:Tf秒間、車両1の操舵制御入力はできるだけ小さくする。
そして上記評価項目にそれぞれパラメータw1,wb(τ),wrL(τ),wrR(τ),w4を用いて重み付けをする。以上より、数式31で表される評価関数の第1項及び第2項は以下に示す数式93,94のように表される。
以下、図22に示すフローチャートを参照して、評価重みwb(τ),wrL(τ),wrR(τ)の設定方法を説明する。
ステップS71の処理では、マイクロプロセッサ9が、バッファメモリに格納されている情報を参照して1サンプル前の時刻において回避操作量計算が行われているか否かを判別する。判別の結果、回避操作量計算が行われていない場合、マイクロプロセッサ9は重み設定処理をステップS72の処理に進める。一方、回避操作量計算が行われている場合には、マイクロプロセッサ9は重み設定処理をステップS75の処理に進める。
ステップS72の処理では、マイクロプロセッサ9が、障害物Oに対する評価重みwb(τ)を決定する。本実施形態では、マイクロプロセッサ9は、ステップS2の処理により算出された回避シーンの緊急度を示すパラメータTTCを用いて図23に示すように障害物Oに対する評価重みwbを決定する。図23においてパラメータwbHIGHは、パラメータTTCによって決まる値であり、パラメータTTCが小さいほど大きな値になる。またパラメータwbLOWは予め設定された固定値を示し、パラメータΔT’は障害物領域の大きさと自車速度に基づいて時刻t0+TTCから自車両1が障害物領域を通過するまでの時刻を目安に決定される。従って障害物に対する評価重みwb(τ)は以下に示す数式95のように表される。これにより、ステップS72の処理は完了し、重み設定処理はステップS73の処理に進む。
ステップS73の処理では、マイクロプロセッサ9が、右側道路境界に対する評価重みwrR(τ)を算出する。以下、図24に示すフローチャートを参照して、右側道路境界に対する評価重みwrR(τ)を算出する際の処理の流れについて説明する。
ステップS81の処理では、マイクロプロセッサ9が、以下に示す数式96を用いて、ステップS2の処理により算出された時刻t0+TTCにおける障害物との接触を回避するための右方向への自車両1の横移動量LVB#Rを算出する。これにより、ステップS81の処理は完了し、算出処理はステップS82の処理に進む。
ステップS82の処理では、マイクロプロセッサ9が、第1の実施形態と同様の処理により車両モデルの初期状態Bv(t0)を取得する。これにより、ステップS82の処理は完了し、算出処理はステップS83の処理に進む。
ステップS83の処理では、マイクロプロセッサ9が、指令舵角δrefを設定し、車両モデルに一定入力した時の車両1の軌跡を予測する。具体的には、現在の操舵角δS(t0)から角度ΔδSだけ右にハンドルを切る場合、指令舵角δrefは以下に示す数式97のように表される。
従ってマイクロプロセッサ9は、数式97に示す指令舵角δrefを一定入力、加速度alonを現時刻のまま一定入力した場合の自車両1の運動状態を数式12〜25を用いて算出する。これにより、ステップS83の処理は完了し、算出処理はステップS84の処理に進む。
ステップS84の処理では、マイクロプロセッサ9が、算出された自車両1の運動モデルを参照して、以下に示す数式98を用いて、接触予想時刻TTCにおける自車両1の横移動量が目標横移動量LVB#Rより大きいか否かを判定する。判別の結果、自車両1の横移動量が目標横移動量LVB#Rより大きい場合、マイクロプロセッサ9は算出処理をステップS86の処理に進める。一方、自車両1の横移動量が目標横移動量LVB#Rより小さい場合には、マイクロプロセッサ9は算出処理をステップS85の処理に進める。
ステップS85の処理では、マイクロプロセッサ9が、以下に示す数式99を用いて、指令舵角δrefよりハンドルをさらに角度ΔδSだけ右に切った操舵角を指令舵角δrefに再設定し、指令舵角δrefを一定入力、加速度alonを現時刻のまま一定入力した場合の自車両1の運動モデルを数式12〜25を用いて再度算出する。これにより、ステップS85の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS84の処理に戻る。
ステップS86の処理では、マイクロプロセッサ9が、自車横移動量が目標横移動量LVB#Rより大きくなる指令舵角δrefと車両モデルを用いて、自車両1が指令舵角δrefの一定操舵を行った時の右側道路境界を逸脱する時刻を算出する。具体的には、マイクロプロセッサ9は、以下に示す数式100が成立する最小の時間TXRを路外逸脱時刻として算出する。これにより、ステップS86の処理は完了し、算出処理はステップS87の処理に進む。
ステップS87の処理では、マイクロプロセッサ9が、右側道路境界に対する評価重みwrRを図25に示すように決定する。図26における右側道路境界に対する評価重みwrRの最大値wrHighは、ステップS86の処理により算出された路外逸脱時刻TXRに基づいて算出される。路外逸脱時間TXRが小さいということは、障害物を回避した後、車両姿勢を復帰させる時間が短いということなので、最大値wrHighは大きな値に設定される。また右側道路境界に対する評価重みwrRの最小値wrLowは、障害物Oに対する評価重みwbwbLowの最小値と同様、予め設定された固定値とする。従って、右側道路境界の評価重みの時系列データwrRは以下に示す数式101のように表される。これにより、ステップS87の処理は完了し、一連の算出処理は終了する。
ステップS74の処理では、マイクロプロセッサ9が、左側道路境界に対する評価重みwrLを算出する。具体的には、マイクロプロセッサ9が、以下の数式102により、ステップS2の処理により算出された時刻t0+TTCでの障害物との接触を回避するための左方向への横移動量LVB#Lを算出する。
次にマイクロプロセッサ9は、第1の実施形態と同様の処理により車両モデルの初期状態Bv(t0)を取得する。次にマイクロプロセッサ9は、指令舵角δrefを設定し、車両モデルに一定入力した時の車両1の軌跡を予測する。具体的には、現在の操舵角δS(t0)から角度ΔδSだけ左にハンドルを切る場合、指令舵角δrefは以下に示す数式103のように表される。
従ってマイクロプロセッサ9は、数式103に示す指令舵角δrefを一定入力、加速度alonを現時刻のまま一定入力した場合の自車両運動を数式12〜25を用いて算出する。次にマイクロプロセッサ9は、以下に示す数式104を用いて、接触予想時刻TTCでの自車両1の横移動量が目標横移動量LVB#Rより大きいか否かを判定する。
判別の結果、自車両1の横移動量が目標横移動量LVB#Rより小さい場合、マイクロプロセッサ9は、以下の数式105を用いて指令舵角δrefよりさらに角度ΔδSだけハンドルを左に切った操舵角を指令舵角δrefに再設定し、指令舵角δrefを一定入力、加速度alonを現時刻のまま一定入力した場合の自車両1の運動モデルを数式12〜25を用いて再度算出する。そして再び上述の判定処理が行われる。
一方、自車両1の横移動量が目標横移動量LVB#Rより大きい場合、マイクロプロセッサ9は、自車両1の横移動量が目標横移動量LVB#Lより大きくなる指令舵角δrefと車両モデルを用いて、自車両1が指令舵角δrefの一定操舵を行った時の左側道路境界を逸脱する時刻を算出する。具体的には、マイクロプロセッサ9は、以下に示す数式106が成立する最小の時間TXLを道路逸脱時刻TXLとして算出する。
次にマイクロプロセッサ9は、右側道路境界に対する評価重みwrRと同様の方法により、以下の数式107に示すような左側道路境界に対する評価重みwrLを算出する。これにより、ステップS74の処理は完了し、一連の重み設定処理は終了する。
ステップS75の処理では、マイクロプロセッサ9が、1サンプル時間前の時刻における回避操作量の時系列データを用いて回避経路を算出する。具体的には、マイクロプロセッサ9は、第2の実施形態におけるステップS48の処理と同様の処理により回避経路を算出する。従って自車両軌跡と障害物軌跡は数式52〜55のように表すことができる。これにより、ステップS75の処理は完了し、重み設定処理はステップS76の処理に進む。
ステップS76の処理では、マイクロプロセッサ9が、数式52〜55を用いて評価関数の中で使用した数式89〜91を計算することにより各評価項目の単独評価を行い、各評価重みを更新する。以下、図26に示すフローチャートを参照して、各評価項目の評価方法について説明する。
ステップS91の処理では、マイクロプロセッサ9が、1サンプル時間前の計算結果から自車両1が障害物Oを右に避けようとしているのか否かを判別する。判別の結果、自車両1が障害物Oを右に避けようとしている場合、マイクロプロセッサ9は評価処理をステップS92の処理に進める。一方、車両1が障害物を左に避けようとしている場合には、マイクロプロセッサは評価処理をステップS94の処理に進める。
ステップS92の処理では、マイクロプロセッサ9が、数式89,90に基づいて以下の数式108,109に示すように障害物との接触危険度と右側道路境界に対する路外逸脱可能性を評価する。具体的には、マイクロプロセッサ9は、評価式L2’の閾値をL2TH、評価式L3’の閾値をL3THとして予め設定しておき、以下の数式110,111に示すように閾値L2TH,L3THと評価式L2’,L3’の各要素とを比較する。
数式110,111の各要素の値は−1又は1となり、1である時刻の間は、障害物との接触又は道路逸脱の恐れが高い時刻となる。そしてマイクロプロセッサ9は、評価式L2”,L3”について、最も将来の時刻で要素の値が1となる時刻をそれぞれ時刻t0+TL2,t0+TL3とする。なお評価式L2”において、全ての要素が−1の場合は、時刻TL2=0とする。また評価式L2”においても同様に、全ての要素が−1の場合は、時刻TL3=0とする。これにより、ステップS92の処理は完了し、評価処理はステップS93の処理に進む。
ステップS93の処理では、マイクロプロセッサ9が、ステップS92の評価処理結果に基づいて各評価重みを更新する。具体的には、障害物に対する評価重みwbは、図27(c)に示すように、時刻t0から時刻t0+TL2まで一定とし、時刻t0+TL2から時刻t0+TL2+ΔTの間は最小値wbLOWになるまで単調減少し、以降は最小値wbLOWで一定となる。また最小値wbLOWは、予め設定された固定値で、以下の数式112に示すパラメータL2M’が大きいほど最大値wbHIGHは大きい値に設定される。
一方、右側道路境界に対する評価重みwrRは、図27(d)に示すように、時刻t0から時刻t0+TL3まで最小値wrLOWで一定とし、時刻t0+TL3から時刻t0+TL3+ΔTの間は最大値wrHIGHになるまで単調増加し、以降は最大値wrHIGHで一定となる。また最小値wrLOWは予め設定された固定値で、以下の数式113に示す評価式L3M’が大きいほど最大値wrHIGHは大きい値に設定される。
このような処理によれば、障害物に対する評価重みwbと右側道路境界に対する評価重みwrRの時系列データが決定するが、このとき左側道路境界に対する評価重みwrLは最小値wrLOWの固定値とする。これにより、ステップS93の処理は完了し、一連の評価・更新処理は終了する。
ステップS94,ステップS95の処理は、数式89,91に基づいて障害物との接触危険度と左側道路境界に対する路外逸脱可能性を評価し、評価結果に基づいて障害物に対する評価重みwbと左側道路境界に対する評価重みwrLを更新する処理であり、上記ステップS92,93の処理と同様にして行うことgできるので、以下ではその説明を省略する。
以上の説明から明らかなように、本発明の第4の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロプロセッサ9は、障害物と接触する危険度が高いほど、障害物に対する評価重みwbを相対的に大きくするので、障害物との接触を回避できる余裕度に応じた回避操作支援を行うことができる。また本発明の第4の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロプロセッサ9は、障害物と接触する危険度が高いほど、障害物に接近する間における障害物に対する評価重みwbを相対的に大きくするので、障害物に対する回避支援が必要な時に特に障害物に注目した回避支援を行うことができる。
また本発明の第4の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロプロセッサ9は、道路境界を逸脱する危険度が高いほど、右側道路境界に対する評価重みwrR又は左側道路境界に対する評価重みwrLを相対的に大きくするので、道路境界を逸脱する可能性に応じた回避支援を行うことができる。
また本発明の第4の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロプロセッサ9は、自車両1の走行経路の評価結果に基づいて障害物との接触危険度と道路境界との接触危険度を比較し、接触危険度が高い対象物に関する評価項目の重みを相対的に大きくするので、前方環境に適した重み付けを行うことができる。
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。