JP5238888B2 - 燃料電池用膜電極接合体およびそれを用いた燃料電池 - Google Patents

燃料電池用膜電極接合体およびそれを用いた燃料電池 Download PDF

Info

Publication number
JP5238888B2
JP5238888B2 JP2011536044A JP2011536044A JP5238888B2 JP 5238888 B2 JP5238888 B2 JP 5238888B2 JP 2011536044 A JP2011536044 A JP 2011536044A JP 2011536044 A JP2011536044 A JP 2011536044A JP 5238888 B2 JP5238888 B2 JP 5238888B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cathode
fuel cell
water
composite layer
layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2011536044A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2011045933A1 (ja
Inventor
英之 植田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Panasonic Corp
Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Panasonic Corp
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Panasonic Corp, Matsushita Electric Industrial Co Ltd filed Critical Panasonic Corp
Priority to JP2011536044A priority Critical patent/JP5238888B2/ja
Publication of JPWO2011045933A1 publication Critical patent/JPWO2011045933A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5238888B2 publication Critical patent/JP5238888B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01MPROCESSES OR MEANS, e.g. BATTERIES, FOR THE DIRECT CONVERSION OF CHEMICAL ENERGY INTO ELECTRICAL ENERGY
    • H01M4/00Electrodes
    • H01M4/86Inert electrodes with catalytic activity, e.g. for fuel cells
    • H01M4/8663Selection of inactive substances as ingredients for catalytic active masses, e.g. binders, fillers
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01MPROCESSES OR MEANS, e.g. BATTERIES, FOR THE DIRECT CONVERSION OF CHEMICAL ENERGY INTO ELECTRICAL ENERGY
    • H01M4/00Electrodes
    • H01M4/86Inert electrodes with catalytic activity, e.g. for fuel cells
    • H01M4/8605Porous electrodes
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01MPROCESSES OR MEANS, e.g. BATTERIES, FOR THE DIRECT CONVERSION OF CHEMICAL ENERGY INTO ELECTRICAL ENERGY
    • H01M8/00Fuel cells; Manufacture thereof
    • H01M8/10Fuel cells with solid electrolytes
    • H01M8/1007Fuel cells with solid electrolytes with both reactants being gaseous or vaporised
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01MPROCESSES OR MEANS, e.g. BATTERIES, FOR THE DIRECT CONVERSION OF CHEMICAL ENERGY INTO ELECTRICAL ENERGY
    • H01M8/00Fuel cells; Manufacture thereof
    • H01M8/10Fuel cells with solid electrolytes
    • H01M8/1009Fuel cells with solid electrolytes with one of the reactants being liquid, solid or liquid-charged
    • H01M8/1011Direct alcohol fuel cells [DAFC], e.g. direct methanol fuel cells [DMFC]
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/30Hydrogen technology
    • Y02E60/50Fuel cells

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Electrochemistry (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Manufacturing & Machinery (AREA)
  • Sustainable Development (AREA)
  • Sustainable Energy (AREA)
  • Inert Electrodes (AREA)
  • Fuel Cell (AREA)

Description

本発明は、燃料電池用膜電極接合体に関し、具体的には、燃料電池用膜電極接合体のカソード拡散層の改善に関する。
従来より、地球温暖化、大気汚染等の環境問題および資源枯渇の問題を解決し、持続可能な循環型社会を実現させる方策として、燃料電池を用いたエネルギーシステムが提案されている。
燃料電池としては、工場、住宅等に設置する定置型の燃料電池だけでなく、自動車、携帯電子機器などの電源として用いられる非定置型の燃料電池が挙げられる。特に、近年、ACアダプターからの充電が不要であり、燃料を補給すれば機器を継続して利用することができるため、ユビキタスモバイル用電源として、燃料電池を早期に実用化することが期待されている。
このような燃料電池の中でも、メタノール、ジメチルエーテル等の有機燃料を水素に改質せずに、アノードに直接供給して酸化し発電する直接酸化型燃料電池が注目され、活発な研究開発が行われている。その理由として、有機燃料は理論エネルギー密度が高いこと、さらに有機燃料は貯蔵が容易であり、有機燃料を用いることにより燃料電池システムを簡素化できることが挙げられる。
直接酸化型燃料電池は、膜電極接合体(以下、MEAと称す)をセパレータで挟み込んだ単位セルを有している。一般的に、MEAは、固体高分子電解質膜と、その両側にそれぞれ配置されたアノードおよびカソードを含む。アノードおよびカソードは、それぞれ触媒層と拡散層を含む。この直接酸化型燃料電池は、アノードに燃料と水を供給し、カソードに酸化剤(例えば酸素ガス)を供給することで発電する。
例えば、燃料としてメタノールを用いる直接メタノール型燃料電池(以下、DMFCと称す)の電極反応は、以下の通りである。
アノード:CH3OH+H2O → CO2+6H++6e-
カソード:3/2O2+6H++6e- → 3H2
すなわち、アノードでは、メタノールと水が反応して、二酸化炭素、プロトンおよび電子が生成する。アノードで生成されたプロトンは電解質膜を通ってカソードに到達し、電子は外部回路を経由してカソードに到達する。カソードでは、酸素、プロトンおよび電子が結合して、水が生成される。
このDMFCのような直接酸化型燃料電池の実用化には、いくつかの問題点が存在している。
その一つは、耐久性に関する。カソード触媒層の細孔内部、カソード触媒層とカソード拡散層との界面部分、およびカソード拡散層の細孔内部には、発電時間の経過とともに、反応生成水および/またはアノードから移動してきた水が蓄積される。この水により、カソード内における酸化剤の拡散性が低下して、カソードの濃度過電圧が増加する。このことが主原因となって、直接酸化型燃料電池の発電性能の初期劣化が生じる。
特に、カソード拡散層の細孔内部、カソード触媒層とカソード拡散層との界面部分に、水が蓄積され続けた場合には、細孔内部に存在する水をその外部に排出することができず、電極反応場である三相界面に、細孔を介して、酸化剤が供給されることが阻害される。その結果、発電を維持することが困難となる。
さらに、前記初期劣化は、有機燃料が未反応のまま電解質膜を通過しカソードに達する現象である燃料のクロスオーバーの影響を強く受ける。特にメタノールが未反応のまま電解質膜を通過しカソードに達する現象は、メタノールクロスオーバー(以下、MCOと称す)と呼ばれる。
すなわち、カソード触媒層では、本来のカソード電極反応である酸素の還元反応以外に、メタノールのような有機燃料の酸化反応が同時に起こる。このため、特に、高濃度の有機燃料を用いる場合には、発電時間の経過とともに、有機燃料のクロスオーバー量が増加するため、カソード活性化過電圧が著しく増大する。しかも、発生した二酸化炭素により、酸化剤の拡散性がさらに低下し、発電性能が大幅に低下する。
これらの問題を回避するために、多量の酸化剤をカソードに供給することが考えられるが、空気ポンプ、ブロワ等の酸化剤供給装置の駆動電力の増大および/または大型化が必要となるために好ましくない。しかも、酸化剤の供給量を多くしすぎると、単位セルを構成している電解質膜およびカソード触媒層中の高分子電解質が乾燥し、プロトン伝導性が低下する。この場合にも、発電特性が大幅に低下する。
そこで、上記従来の問題を解決するために、カソード拡散層自体の構造を改良する数多くの提案がなされている。
例えば、特許文献1には、細孔径の分布において、水の排出パスとなる細孔径のピークとガスの拡散パスとなる細孔径のピークとを有するガス拡散層が開示されている。特許文献1は、それにより、フラッディング(水閉塞)現象を防止しつつ、ガスの拡散性を充分に確保することができるガス拡散層を提供することを目的としている。
特許文献2には、ガス拡散層に貫通孔を設けるとともに、前記貫通孔は、その内壁面が貫通孔軸心に対して所定の角度で傾斜した多角錐状であり、かつ前記貫通孔の断面積を触媒層側からセパレータ側に向かって増加させることが開示されている。特許文献2の発明は、生成水を効率的に排出し、触媒へのガスの供給を良好にすることを目的としている。
特許文献3には、ガス拡散層内に、含水状態に応じてガス拡散層内の細孔径が変化するように吸水性樹脂材料を配置することが開示されている。特許文献3は、フラッディング(水閉塞)現象およびドライング(過乾燥)現象の発生を抑制するとともに、生成水の排水性を向上させることが可能な燃料電池を提供することを目的としている。
特開2007−87651号公報 特開2008−108507号公報 特開2008−147145号公報
しかしながら、前記のような従来の技術では、カソード触媒層の細孔内部、カソード触媒層とカソード拡散層との界面部分、およびカソード拡散層の細孔内部に蓄積される液体の水を効率的に排出することはできない。よって、前記従来の技術を用いたとしても、酸化剤の拡散性を長期間確保することのできる、耐久性に優れた燃料電池を提供することは困難である。
特許文献1に開示される技術の場合には、拡散層における水の排出パスとなる細孔径のピークとガスの拡散パスとなる細孔径のピークとを、水銀圧入法を用いて測定された「貫通していない細孔部分」を含んだ細孔分布で規定している。そして、水の排出パスとなる細孔径のピークは、ガスの拡散パスとなる細孔径のピークよりも小さく設定されている。このため、粘性流としての水の排水機能と拡散流としての空気の透過機能とを兼ね備えた最適な細孔構造を形成させているとは言い難い。
特許文献2に開示されている技術の場合には、拡散層の排水性改善のための貫通孔の形状を規定しているものの、空気拡散性に寄与する細孔径には言及していない。さらに、前記貫通孔は断面積が大きい。このため、電解質膜およびカソード触媒層中の高分子電解質が乾燥して、プロトン伝導性が悪化し、その結果、発電特性が大幅に低下することが懸念される。
特許文献3に開示される技術の場合には、カソードに存在する多量の液体の水、またはメタノールのような親水性の有機燃料を用いる場合にはクロスオーバーした有機燃料により、拡散層内の吸水性樹脂材料が膨潤して、細孔の空隙体積を減少させる。そのため、発電特性が著しく低下する。
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、カソードに蓄積される液体の水を効率的に排出させることにより、酸化剤の拡散性を長期間確保することのできる、耐久性に優れた燃料電池を提供することを目的とする。
本発明の一局面は、アノードと、カソードと、アノードとカソードとの間に配置された電解質膜とを含み、カソードは、カソード触媒層、およびカソード触媒層に積層されたカソード拡散層を含み、カソード拡散層は、導電性多孔質基材、および前記導電性多孔質基材の一方の表面に配置された多孔質複合層を有し、多孔質複合層は、導電性炭素粒子および撥水性結着材料を含み、カソード拡散層は、複数の貫通孔を有し、ハーフドライ/バブルポイント法により測定された制限細孔径分布において、最大細孔直径が15〜20.5μmの範囲にあり、平均流量細孔直径が3〜10.5μmの範囲にある燃料電池用膜電極接合体に関する。
また、本発明の他の一局面は、上述した燃料電池用膜電極接合体、前記アノードに接するアノード側セパレータ、および前記カソードに接するカソード側セパレータを備える少なくとも1つの単位セルを有する燃料電池に関する。
本発明の新規な特徴を添付の請求の範囲に記述するが、本発明は、構成および内容の両方に関し、本発明の他の目的および特徴と併せ、図面を照合した以下の詳細な説明によりさらによく理解されるであろう。
本発明によれば、カソード拡散層内部に、粘性流としての液体の水の排出機能と拡散流としての酸化剤ガスの透過機能とを兼ね備えた最適な細孔構造を形成させることができる。このため、カソード触媒層の細孔内部、カソード触媒層とカソード拡散層との界面部分、およびカソード拡散層の細孔内部に蓄積される凝縮水を効率的に排出して、酸化剤ガスの拡散性を長期間確保することが可能となる。よって、本発明により、耐久性に優れた燃料電池を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る燃料電池の構造を模式的に示す縦断面図である。 図1に示した燃料電池に含まれるカソード拡散層19を部分的に拡大した模式図である。 カソード拡散層19の貫通孔を模式的に示した説明図である。 パームポロメータによる制限細孔径分布の測定の原理を説明するための模式図である。 パームポロメータによる制限細孔径分布の測定の原理を説明するためのグラフである。 パームポロメータによる制限細孔径分布の測定の原理を説明するためのグラフである。 パームポロメータにより測定された制限細孔径分布を説明するためのグラフである。
本発明に係る燃料電池用膜電極接合体は、アノードと、カソードと、アノードとカソードとの間に配置された電解質膜とを含み、カソードは、カソード触媒層、およびカソード触媒層に積層されたカソード拡散層を含み、カソード拡散層は、導電性多孔質基材、および前記導電性多孔質基材に積層された多孔質複合層を有し、多孔質複合層は、導電性炭素粒子および撥水性結着材料を含み、カソード拡散層は、複数の貫通孔を有し、ハーフドライ/バブルポイント法により測定された制限細孔径分布において、最大細孔直径が15〜20.5μmの範囲にあり、平均流量細孔直径が3〜10.5μmの範囲にある。
以下、本発明の燃料電池用膜電極接合体およびそれを用いた燃料電池を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池を模式的に示す縦断面図である。
図1の燃料電池1は、電解質膜10と、電解質膜10を挟むアノード11およびカソード12とからなる膜電極接合体(MEA)13、並びにMEA13を挟むアノード側セパレータ14およびカソード側セパレータ15を備える。
アノード11は、電解質膜10に接するアノード触媒層16とアノード側セパレータ14に対向するアノード拡散層17を含む。アノード拡散層17は、導電性多孔質基材および導電性多孔質基材の上に配置された多孔質複合層を有する。導電性多孔質基材はアノード側セパレータ14に接し、多孔質複合層はアノード触媒層16に接している。
一方、カソード12は、電解質膜10に接するカソード触媒層18とカソード側セパレータ15に対向するカソード拡散層19を含む。カソード拡散層19は、導電性多孔質基材および導電性多孔質基材上に配置された多孔質複合層を有する。導電性多孔質基材はカソード側セパレータ15に接し、多孔質複合層はカソード触媒層18に接している。
アノード側セパレータ14は、アノード11と対向する面に、燃料を供給し、未使用燃料および反応生成物を排出する流路20を有する。カソード側セパレータ15は、カソード12と対向する面に、酸化剤を供給し、未使用酸化剤および反応生成物を排出する流路21を有する。酸化剤としては、例えば、酸素ガス、または空気のような酸素ガスを含む混合ガスが用いられる。通常は、空気を酸化剤として用いることが多い。
アノード11の周囲には、アノード11を封止するように、アノード側ガスケット22が配置されている。同様に、カソード12の周囲には、カソード12を封止するように、カソード側ガスケット23が配置されている。アノード側ガスケット22とカソード側ガスケット23とは、電解質膜10を介して対向している。アノード側ガスケット22およびカソード側ガスケット23により、燃料、酸化剤、および反応生成物が外部へ漏洩することが防止される。
さらに、図1の燃料電池1は、セパレータ14および15の両側に、それぞれ、集電板24および25、シート状のヒータ26および27、絶縁板28および29、並びに端板30および31を有する。燃料電池1は、締結手段(図示せず)により一体化されている。
図2は、図1に示した燃料電池に含まれるカソード拡散層19を部分的に拡大した模式図である。
図2に示されるように、カソード拡散層19は、導電性多孔質基材19a、および導電性多孔質基材19a上に配置された多孔質複合層19bを含む。多孔質複合層19bは、導電性炭素粒子および撥水性結着材料を含む。図2に示されるカソード拡散層19において、多孔質複合層19bは、導電性多孔質基材19aの一方の主面上に、その全体にわたって配置されている。多孔質複合層19bは、導電性多孔質基材19aの一方の表面を、均一に被覆することが好ましい。
導電性多孔質基材19aとしては、例えば、酸化剤の拡散性、発電により発生した水やアノードから移動してきた水の排出性および電子伝導性を併せ持つ導電性多孔質材料を用いることができる。導電性多孔質材料の具体例としては、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボン不織布等が挙げられる。
導電性多孔質基材の厚みは、例えば、100〜500μm、好ましくは150〜300μm、さらに好ましくは150〜250μmである。
導電性多孔質材料は、撥水処理に供してもよい。撥水処理とは、導電性多孔質材料に撥水性材料を付着させることである。撥水処理は、カソード拡散層の製造過程の任意の段階で行うことができる。具体的には、撥水処理は、導電性多孔質材料に、撥水性材料の溶液又は分散液を、塗布又は含浸させて乾燥した後、焼成(高温焼成)することにより行うことができる。
撥水性材料の具体例としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)等のフッ素樹脂が挙げられる。これらの撥水性材料は一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。
撥水性材料の割合は、導電性多孔膜基材全体に対して、例えば、5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%、さらに好ましくは15〜25重量%である。
多孔質複合層19bは、導電性炭素粒子と、撥水性結着材料とを含む。
導電性炭素粒子として、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなど)、黒鉛などが例示できる。これらの導電性炭素粒子は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。導電性炭素粒子は、カーボンブラックを主体として含むことが好ましい。カーボンブラックとしては、ストラクチャーが高度に発達しており、しかも比表面積が200〜300m2/g程度であることが好ましい。
撥水性結着材料としては、例えば、フッ素樹脂を用いることができる。フッ素樹脂の具体例としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。フッ素樹脂の中では、ポリテトラフルオロエチレンが好ましい。ポリテトラフルオロエチレンは、化学的に安定なC−F結合を多数有するため、少量で、多孔質複合層19bの細孔内部を、水分子との間の相互作用が小さい表面、いわゆる撥水表面とすることができる。
導電性多孔質基材19a上に配置された多孔質複合層19bの投影単位面積あたりの量は、例えば、0.8〜2.7mg/cm2、好ましくは1〜2.5mg/cm2、さらに好ましくは1.2〜2.2mg/cm2、特に1.5〜2mg/cm2である。多孔質複合層19bの量を、前記範囲とすることにより、カソード12に含まれる多孔質複合層19bの基本的な機能:(1)カソード触媒層の乾燥防止、(2)カソード触媒層と導電性多孔質基材との界面接触抵抗の低減、(3)導電性多孔質基材が触媒層と電解質膜を貫通することによる内部短絡の防止、に加えて、多孔質複合層19bに、(4)選択的に排水経路が形成されることによる排水性のコントロール、といった新たな機能を付与することができる。
多孔質複合層19bの量が少なすぎる場合には、多孔質複合層19bが導電性多孔質基材19a表面を均一に被覆することが困難となり、前記のような多孔質複合層19bの機能を充分に発揮することができないことがある。多孔質複合層19bの量が多すぎる場合には、多孔質複合層19bに亀裂が発生しやすくなる。この場合にも、前記のような多孔質複合層19bの機能を充分に発揮することができないことがある。
ここで、導電性多孔質基材19a上に配置された多孔質複合層19bの投影単位面積あたりの量とは、多孔質複合層19bの主面を法線方向から見た場合の輪郭形状を用いて計算される面積で、多孔質複合層19bの全重量を除した値のことである。例えば、前記法線方向から見た場合の多孔質複合層19bの輪郭形状が矩形の場合には、多孔質複合層19bの面積は、(縦の長さ)×(横の長さ)により計算することができ、多孔質複合層19bの投影単位面積あたりの量は、多孔質複合層19aの全重量を、前記面積で除することにより得られる。
多孔質複合層19b中の撥水性結着材料の割合は、好ましくは5〜65重量%、さらに好ましくは20〜50重量%または35〜45重量%である。撥水性結着材料の割合を前記範囲とすることにより、多孔質複合層19bの電子伝導性を確保するとともに、多孔質複合層19bの細孔内部の撥水性を確保することができる。
撥水性結着材料の割合が少なすぎる場合には、多孔質複合層19bの細孔内部の撥水性が低くなるため、細孔内部に液体の水が蓄積しやすい。このため、多孔質複合層19bにおける酸化剤ガスの浸透性が低下することがある。撥水性結着材料の割合が多すぎる場合には、多孔質複合層の電子伝導性を確保することが困難となることがある。
カソード拡散層19は、図3に示すように複数の貫通孔50を有し、それぞれの貫通孔50は、孔が狭窄して直径が最も小さい部分である狭窄部50aを有する。この狭窄部50aの直径は、水および酸化剤ガスの透過性に大きく影響する。この狭窄部50aの直径の分布の度合いは、ハーフドライ/バブルポイント法(ASTM E1294-89およびF316-86)を用いたパームポロメータにより測定された制限細孔径分布により求められる。ここで、制限細孔径とは、貫通孔の最小断面(狭窄部の断面)と同じ面積の円の直径のことをいう。
そして、カソード拡散層19は、制限細孔径分布において、最大細孔直径が15〜20.5μmの範囲にあり、平均流量細孔直径が3〜10.5μmの範囲にある複数の貫通孔50を有する。水のような液体は、最大細孔直径かそれに近い直径を有する貫通孔を選択的に透過する粘性流の挙動を示し、酸化剤ガスのような気体は、前記以外の貫通孔を拡散流の挙動により透過すると考えられる。最大細孔直径は、排水性に関与する。また、平均流量細孔直径は、酸化剤ガスの拡散性に関与するとともに、酸化剤ガスがカソード拡散層からカソード触媒層に供給されることによる、電極反応場である三相界面の形成にも関与する。
制限細孔径分布において、最大細孔直径は、好ましくは15〜20μm、さらに好ましくは16.5〜20μm、特に16.5〜19.5μmである。制限細孔径分布において、最大細孔直径が15μm未満の範囲にある場合、カソード拡散層の水の排出機能が低下する。また、最大細孔直径が20.5μmを超える範囲にある場合、水の排出機能は向上するが、カソード触媒層中の高分子電解質が乾燥しやすくなり、その結果、カソード触媒層のプロトン伝導性が悪化する。
また、制限細孔径分布において、平均流量細孔直径は、好ましくは3〜10μm、さらに好ましくは4〜10μm、特に4.5〜8μmである。制限細孔径分布において、平均流量細孔直径が3μm未満の範囲にある場合、カソード触媒層に酸化剤を均一に供給することが困難となる。また、平均流量細孔直径が10.5μmを超える範囲にある場合、カソード触媒層の酸化剤入口側の部分に含まれる高分子電解質が乾燥しやすく、その結果、プロトン伝導性が悪化する。
本実施形態に係る燃料電池用膜電極接合体においては、カソード拡散層の「貫通していない細孔部分」を含んだ細孔径分布ではなく、貫通孔の細孔径の分布を最適化することにより、カソード拡散層に、粘性流である水の排出に適した細孔直径を有する貫通孔と、拡散流である酸化剤ガスの拡散に適した細孔直径を有する貫通孔とを確保させている。このような構成により、カソード拡散層の細孔内部、カソード触媒層とカソード拡散層との界面部分、およびカソード拡散層中に液体状態で蓄積されている水により、カソード拡散層における酸化剤の拡散性が低下することを抑制することができる。その結果、カソード過電圧が小さく、耐久性に優れた燃料電池を提供することが可能となる。
最大細孔直径および平均流量細孔直径は、多孔質材料用の自動細孔径分布測定システム(以下、パームポロメータと称す)を用いて測定することができる。以下、最大細孔直径および平均流量細孔直径の測定方法を説明する。
(i)最大細孔直径
本発明において、最大細孔直径は、以下のようにして測定することができる。
まず、カソード拡散層を所定のサイズに打ち抜き、測定用試料を得る。得られた測定用試料を、表面張力の小さなGalwick試薬中に浸漬し、減圧環境下で、測定用試料に、Galwick試薬を20分間含浸させて、測定用試料の貫通孔にGalwick試薬を充填させる。
次に、Galwick試薬を充填した測定用試料を、パームポロメータに取り付ける。測定用試料に空気を供給し、空気圧力を連続的に増加させる。このとき、図5に示される、空気透過流量がゼロから増加し始める瞬間の圧力(バブルポイント圧力)P(=P0)を計測する。得られたP値から、以下の式(1):
D=(C×γ)/P (1)
を用いて、カソード拡散層の貫通孔の最大細孔直径D(=D0)を算出できる。なお、式(1)において、γはGalwick試薬の表面張力であり、Cは比例定数(2.86)である。
(ii)平均流量細孔直径
平均流量細孔直径は、以下のようにして測定することができる。
上記と同様に、まず、カソード拡散層を所定のサイズに打ち抜き、測定用試料を得る。得られた測定用試料を、表面張力の小さなGalwick試薬中に浸漬し、減圧環境下で、測定用試料に、Galwick試薬を20分間含浸させて、測定用試料の貫通孔にGalwick試薬を充填させる。
次に、Galwick試薬を充填した測定用試料を、パームポロメータに取り付け、前記測定用試料に空気を供給する。図4の(a)に示されるように、空気圧力PがP0に達する前までは、Galwick試薬51は、貫通孔50から押し出されることはない(領域I)。空気圧力PがP0以上となると、図4の(b)に示されるように、Galwick試薬51が貫通孔50から押し出されて、空気透過流量が増加する。このとき、細孔直径の大きい貫通孔から順に、Galwick試薬が押し出される(領域II)。空気圧力をさらに増加させると、図4の(c)に示されるように、全ての貫通孔50から、Galwick試薬51が押し出される(領域III)。領域I〜IIIにおいて、空気圧力を連続的に増加させたときの空気透過量を測定し、図5に示される濡れ流量曲線Aを求める。本測定においては、空気透過流量が200L/minに到達するまで、空気の供給圧力を増加させる。なお、図5において、P1/2は、濡れ流量曲線Aにおける空気透過量Lwが、乾き流量線Bにおける空気透過量Ldの1/2となる圧力である。
次に、同じ測定用試料をそのまま用いて、空気圧力を連続的に増加させたときの空気透過流量を測定する。この場合にも、空気透過流量が200L/minに到達するまで、空気圧力を増加させる。このようにして、図5に示される乾き流量線Bを求める。
そして、図5で示した濡れ流量曲線Aについて、上記式(1)により空気圧力Pを細孔直径Dに換算し、細孔直径Dに対して、Lw/Ldをプロットすることにより、図6に示すようなグラフを得る。Lw/Ldは所定の細孔直径Dにおける、乾き流量に対する濡れ流量の割合の積算値を示している。そして、図6に示すグラフにおいて、Lw/Ldが1/2のときの細孔径が制限細孔径分布における平均流量細孔直径D1/2である。なお、Lw/Ldが0のときの細孔径が制限細孔径分布における最大細孔直径D0である。このようにして求められた平均流量細孔直径D1/2は、直径がD1/2以上である貫通孔を透過する空気透過量が、カソード拡散層を透過する全空気透過量の1/2を占めることを意味する。なお、図6の積算値を示すグラフを細孔直径ごとの寄与度を示すグラフに換算することにより、例えば、図7のようなグラフが得られる。
貫通孔を液体が透過する場合でも、気体が透過する場合でも、その透過量は、貫通孔の最も狭い部分の影響を受ける。よって、上記測定方法で得られる最大細孔直径および平均流量細孔直径は、貫通孔の最も狭い部分の直径を反映している。
また、図2に示されるように、多孔質複合層19bは、導電性多孔質基材19aの内部に侵入しており、多孔質複合層19bの導電性多孔質基材19aへの侵入深さA1は、導電性多孔質基材19aの厚さB1に対して、7%以下(例えば、0.1〜5%)、好ましくは3%以下(例えば、0.5〜3%)、さらに好ましくは1〜2.5%である。
多孔質複合層19bの導電性多孔質基材19aへの侵入深さが深くなるほど、導電性多孔質基材19aの面方向における酸化剤ガスの拡散性が低下することがある。この場合、カソード触媒層全面に、酸化剤ガスを均一に供給できない可能性が生じる。
しかしながら、多孔質複合層19bの導電性多孔質基材19aへの侵入深さA1を、導電性多孔質基材19aの厚さB1の上記の範囲とすることにより、導電性多孔質基材19aの面方向における酸化剤ガスの拡散性の低下を回避することができる。
多孔質複合層19bの導電性多孔質基材19aへの侵入深さA1は、例えば、以下のようにして測定することができる。カソード拡散層19を切断し、試験片を得る。得られた試験片をエポキシ樹脂に包埋し、前記エポキシ樹脂の試験片が露出した表面を、サンドペーパーによる湿式研磨およびバフ琢磨布(アルミナ混濁液含浸)による鏡面仕上げに供する。「多孔質複合層/導電性多孔質基材」からなる断面の所定の10箇所を電子顕微鏡により観察し、導電性多孔質基材19aの多孔質複合層19b側の端と、導電性多孔質基材19a内に侵入した多孔質複合層19bの端までの垂直距離aを測定する。10箇所で測定された前記垂直距離aを平均して、侵入深さA1を得ることができる。
また、導電性多孔質基材19aの厚さB1は、その断面の所定の10箇所を電子顕微鏡により観察し、得られた値を平均することにより得ることができる。
水がカソード拡散層を通過するときに要する空気の圧力(排水圧)は、例えば、5〜17kPa、好ましくは6.5〜16kPa、さらに好ましくは7〜12kPaまたは10〜15kPaであることが好ましい。
前記排水圧を有するカソード拡散層を用いることにより、カソード触媒層とカソード拡散層との界面部分に蓄積されている液体の水を、カソード拡散層を介して外部に効果的に排出させることが可能となる。さらには、前記液体の水は、主に直径の大きな貫通孔から排出されるために、カソード拡散層中に酸化剤ガスの供給経路を十分に確保することもできる。
排水圧が小さすぎると、カソード拡散層の細孔内部の撥水性(疎水性)が低いために、貫通孔内部に液体の水が蓄積する場合がある。この場合、酸化剤ガスのカソード拡散層への浸透性が低下することがある。前記排水圧が大きすぎる場合、カソード拡散層における液体の水の排水機能が低下することがある。
排水圧は、以下のようにして求めることができる。具体的には、カソード拡散層を所定のサイズに打ち抜き、測定用試料を得る。前記測定用試料を、パームポロメータに取り付ける。この後、測定用試料の上部表面全体に、水の膜(単位面積当たりの水の重量:0.35g/cm2)を形成する。その水膜に、空気をその圧力を連続的に増加させながら供給し、空気透過流量がゼロから増加し始める瞬間の圧力、すなわち、水がカソード拡散層の細孔内部に浸入して透過するときの臨界圧力を計測する。本発明においては、前記圧力を、排水圧とする。
カソード拡散層19の最大細孔直径および平均流量細孔直径は、例えば、導電性多孔質基材19a表面への多孔質複合層19bの被覆状態、導電性多孔質基材19a表面に配置された多孔質複合層19bの量、多孔質複合層19b中の撥水性結着材料の含有割合などを変化させることにより、制御することができる。前記被覆状態は、例えば、導電性多孔質基材19a表面に配置された多孔質複合層19bの量、侵入深さ等を適宜調節することにより、制御することができる。
なお、多孔質複合層19bに亀裂が生じることにより、最大細孔直径および平均流量細孔直径が大きくなる。導電性多孔質基材19a上に配置された多孔質複合層19bの量を調節することにより、多孔質複合層19bに生じる亀裂のサイズを制御することができる。
さらには、分散媒の水含有率が多い場合には、多孔質複合層19bに気泡が生じる。つまり、多孔質複合層19bの空隙率が大きくなる。よって、多孔質複合層19bを作製するときに用いるペーストに含まれる分散媒の水含有率を変化させることによっても、最大細孔直径および平均流量細孔直径を制御することができる。
排水圧は、例えば、多孔質複合層19bに含まれる撥水性結着材料の量、多孔質複合層19bの導電性多孔質基材19aへの侵入深さ等を調節することにより、制御することができる。多孔質複合層19bの導電性多孔質基材19aへの侵入深さは、例えば、導電性多孔質基材19aに含まれる撥水性材料の量など調節することにより、制御することができる。
カソード拡散層は、慣用の方法により作製できる。例えば、導電性多孔質基材の一方の表面に、導電性炭素粒子および撥水性結着材料を含む分散液を塗布し、塗膜を乾燥した後、焼成(高温焼成)して、多孔質複合層を形成することにより、カソード拡散層が得られる。焼成の温度は、例えば、350〜400℃、好ましくは360〜380℃である。
導電性炭素粒子および撥水性結着材料を分散させる分散媒としては、水、エタノール、イソプロパノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールなどのC1-6アルカノールなどが例示できる。これらの分散媒は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。分散媒は、水を含むのが好ましく、水と水溶性アルカノール(特に、C3-4分岐アルカノールなど)との混合溶媒などが好ましい。
導電性炭素粒子および撥水性結着材料を含む分散液に使用する分散媒において、水の含有量は、例えば、20〜60重量%から選択でき、好ましくは25〜55重量%、さらに好ましくは30〜50重量%である。水の含有量が多すぎると、上述のように、多孔質複合層に気泡が生じ、空隙率が必要以上に大きくなり、カソード拡散層に形成される貫通孔の最大細孔直径および平均流量細孔直径が大きくなりすぎる場合がある。また、水の含有量が少なすぎると、分散液中の導電性炭素粒子の分散性安定性が低下し、塗工ムラや塗工スジが発生する場合や、カソード拡散層に形成される貫通孔の最大細孔直径および平均流量細孔直径が小さくなり、排水性および空気拡散性が低下する場合がある。
本発明において、カソード拡散層19以外の構成要素については、特に限定されない。図1を参照しながら、カソード拡散層19以外の構成要素について以下に説明する。
電解質膜10は、プロトン伝導性、耐熱性、化学的安定性、耐メタノール膨潤性等に優れていることが好ましい。電解質膜10を構成する材料(高分子電解質)は、電解質膜10が前記特性を有すれば、特に限定されない。
電解質膜10は、通常、燃料電池の分野で使用されるイオン交換樹脂(例えば、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基などの強酸性基を有する陽イオン交換樹脂など)を含有する。イオン交換樹脂としては、スルホン酸基を有するパーフルオロアルキル基を有する樹脂、スルホン化ポリエーテルケトン樹脂(スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトンなど)、スルホン化ポリイミドなどが例示できる。電解質膜10は、イオン交換樹脂で形成された多孔膜であってもよく、多孔質基材(ポリマー製の多孔質基材など)に、イオン交換樹脂が塗布または含浸された多孔膜であってもよい。
アノード触媒層16は、触媒金属微粒子を担持した導電性炭素粒子または触媒金属微粒子と、高分子電解質とを主成分とする。触媒金属微粒子としては、例えば、白金(Pt)−ルテニウム(Ru)合金微粒子を用いることができる。アノード触媒層16に含まれる投影単位面積あたりの触媒金属微粒子の量は、3〜7mg/cm2であることが好ましい。
カソード触媒層18は、触媒金属微粒子を担持した導電性炭素粒子と、高分子電解質とを主成分とする。触媒金属微粒子としては、例えば、白金(Pt)微粒子を用いることができる。カソード触媒層18に含まれる投影単位面積あたりの触媒金属微粒子の量は、1〜2mg/cm2であることが好ましい。
ここで、各触媒層に含まれる投影単位面積あたりの触媒金属微粒子の量とは、触媒層の主面を法線方向から見た場合の輪郭形状を用いて計算される面積で、各触媒層に含まれる触媒金属微粒子の重量を除した値のことである。例えば、前記法線方向から見た場合の触媒層の輪郭形状が矩形の場合には、触媒層の面積は、(縦の長さ)×(横の長さ)により計算することができ、投影単位面積あたりの触媒金属微粒子の量は、触媒層に含まれる触媒微粒子の重量を、前記面積で除することにより得られる。
アノード触媒層16およびカソード触媒層18に含まれる高分子電解質は、プロトン伝導性、耐熱性、化学的安定性、耐メタノール膨潤性等に優れていることが好ましい。高分子電解質としては、電解質膜10の材料として例示した高分子電解質などが使用できる。アノード触媒層16およびカソード触媒層18に含まれる高分子電解質は、電解質膜10を構成する材料と同一であってもよいし、異なってもよい。
カソード拡散層19と同様に、アノード拡散層17は、導電性多孔質基材、および導電性多孔質基材上に配置された多孔質複合層を有する。多孔質複合層は、導電性炭素粒子および撥水性結着材料を含む。アノード拡散層17において、導電性多孔質基材表面に配置される多孔質複合層の量は、2〜3mg/cm2であることが好ましい。なお、前記量は、多孔質複合層の投影単位面積(1cm2)あたりの値である。
アノード拡散層用の導電性多孔質基材としては、燃料の拡散性、発電により発生した二酸化炭素の排斥性、電子伝導性を併せ持つ導電性多孔質材料を用いることが好ましい。このような材料としては、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボン不織布等が挙げられる。導電性多孔質材料の厚みは、例えば、150〜400μmである。
さらに、アノード拡散層用の導電性多孔質材料は、撥水処理に供してもよい。撥水処理とは、導電性多孔質材料に撥水性材料を付着させることである。具体的には、撥水処理は、導電性多孔質材料に、撥水性材料の溶液又は分散液を、塗布又は含浸させて乾燥した後、焼成(高温焼成)することにより行うことができる。焼成の温度は、例えば、350〜400℃、好ましくは360〜380℃である。
前記撥水性材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)等のフッ素樹脂が挙げられる。これらの撥水性材料は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。撥水性材料の割合は、特に制限されず、例えば、1〜50重量%程度の範囲から適宜選択できる。
アノード拡散層用の多孔質複合層に含まれる導電性炭素粒子としては、前記例示のカーボンブラック、黒鉛などが例示できる。導電性炭素粒子は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。導電性炭素粒子は、カーボンブラックを主体として含むことが好ましい。カーボンブラックは、ストラクチャーが高度に発達しており、しかも比表面積が200〜300m2/g程度であることが好ましい。
アノード拡散層用の多孔質複合層に含まれる撥水性結着材料としては、上記のようなフッ素樹脂を用いることができる。
セパレータ14および15は、気密性、電子伝導性および電気化学的安定性を有すればよく、その材質は、特に限定されない。また、流路20および21の形状についても特に限定されない。
集電板24および25、シート状のヒータ26および27、絶縁板28および29、並びに端板30および31の構成材料には、当該分野で公知の材料を用いることができる。
本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、これらの実施例は、本発明を何ら限定するものではない。
(実施例1)
図1および2に示されるような燃料電池を作製した。
<アノード触媒層の作製>
アノード触媒として、平均粒径3nmのPt−Ru合金微粒子(Pt:Ruの重量比=2:1)を用いた。
アノード触媒をイソプロパノールの水溶液中に超音波分散させ、得られた分散液に高分子電解質を5重量%含有した水溶液を添加した。得られた混合物を、ディスパーで攪拌して、アノード触媒インクを調製した。この際、アノード触媒インク中のPt−Ru合金微粒子と高分子電解質の重量比を3:1とした。高分子電解質としては、パーフルオロカーボンスルホン酸イオノマー(旭硝子(株)製のFlemion)を用いた。
次に、得られたアノード触媒インクを、スプレー式塗布装置を用いて電解質膜10の一方の表面の所定領域に塗布し、乾燥して、6cm×6cmのサイズのアノード触媒層16を形成した。アノード触媒層16に含まれるPt−Ru触媒の量は、6.25mg/cm2であった。なお、前記Pt−Ru触媒の量は触媒層の単位面積あたりに含まれるPt−Ru触媒の重量である。電解質膜10としては、15cm×10cmのサイズに切断した炭化水素系電解質膜(ポリフューエル社製、膜厚62μm)を用いた。
<カソード触媒層の作製>
カソード触媒として、平均粒径3nmのPtを担持した平均一次粒子径30nmの導電性炭素粒子を用いた。導電性炭素粒子としては、カーボンブラック(三菱化学(株)製のケッチェンブラックEC)を用い、導電性炭素粒子とPt触媒との合計重量に占めるPt触媒の重量の割合を46重量%とした。
前記カソード触媒をイソプロパノールの水溶液中に超音波分散させ、得られた分散液に高分子電解質を5重量%含有した水溶液を添加した。得られた混合物を、ディスパーで攪拌して、カソード触媒インクを調製した。この際、カソード触媒インク中の導電性炭素粒子の重量に対する高分子電解質の重量の比率を0.44とした。高分子電解質としては、パーフルオロカーボンスルホン酸イオノマー(旭硝子(株)製のFlemion)を用いた。
次に、電解質膜10のアノード触媒層16が形成されている面とは反対側の表面の所定領域に、アノード触媒層16に対向するように、カソード触媒インクを、スプレー式塗布装置を用いて塗布し、乾燥して、6cm×6cmのサイズのカソード触媒層18を形成した。こうして、膜−触媒層接合体(CCM)を得た。カソード触媒層18に含まれるPt触媒量は1.35mg/cm2であった。
<アノード拡散層の作製>
導電性多孔質基材表面に、多孔質複合層を形成することにより、アノード拡散層17を作製した。
導電性多孔質基材を以下のようにして作製した。導電性多孔質材料としてカーボンペーパー(東レ社製TGP−H−090)を用いた。カーボンペーパーを7重量%ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)分散液(ダイキン工業社製D−1Eをイオン交換水で希釈した水溶液)中に1分間浸漬し、次いで、大気中常温で3時間乾燥させた。その後、乾燥したカーボンペーパーを、不活性ガス(N2)中360℃で1時間加熱して界面活性剤を除去した。このようにして、導電性多孔質基材(厚み300μm)を得た。得られた導電性多孔質基材において、PTFE量は導電性多孔質基材の12.5重量%であった。
次に、得られた導電性多孔質基材の表面に、多孔質複合層を、以下のようにして形成した。
まず、導電性カーボンブラック(CABOT社製のVulcanXC−72R)を界面活性剤(Aldrich社製のTritonX−100)が添加された水溶液中で超音波分散させた。次に、得られた分散液に、PTFE分散液(ダイキン工業社製D−1E)を添加し、この後、得られた混合物の高分散化を再度行い、アノード用多孔質複合層ペーストを調製した。このアノード用多孔質複合層ペーストを、ドクターブレードにより、導電性多孔質基材の一方の面の全面に均一に塗布し、大気中常温で8時間乾燥させた。その後、前記導電性多孔質基材を不活性ガス(N2)中360℃で1時間焼成して界面活性剤を除去し、導電性多孔質基材表面に多孔質複合層を形成した。こうして、アノード拡散層17を得た。
得られたアノード拡散層17において、多孔質複合層中のPTFEの割合は40重量%であり、多孔質複合層の導電性多孔質基材の投影単位面積あたりの量は、2.6mg/cm2であった。
<カソード拡散層の作製>
導電性多孔質基材19a表面に、多孔質複合層19bを形成することにより、カソード拡散層19を作製した。
導電性多孔質基材19aを以下のようにして作製した。導電性多孔質材料として、カーボンペーパー(東レ社製TGP−H−060)を用いた。カーボンペーパーを、15重量%ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)分散液(Aldrich社製60%PTFEディスパージョンをイオン交換水で希釈した水溶液)中に1分間浸漬し、次いで、大気中常温で3時間乾燥させた。その後、乾燥したカーボンペーパーを、不活性ガス(N2)中360℃で1時間加熱して界面活性剤を除去した。このようにして、導電性多孔質基材(厚み200μm)を得た。得られた導電性多孔質基材において、PTFE量は導電性多孔質基材の23.5重量%であった。
次に、得られた導電性多孔質基材19aの表面に、多孔質複合層19bを、以下のようにして形成した。
まず、導電性カーボンブラック(CABOT社製のVulcanXC−72R)を、界面活性剤(Aldrich社製のTritonX−100)が添加されたイソプロパノールの水溶液中に投入し、攪拌流動させた状態で前記水溶液を超音波分散した。次に、得られた分散液に、20重量%PTFE分散液(喜多村社製のKD500AS)を添加した後、ディスパーで3時間攪拌して、カソード用多孔質複合層ペースト(分散溶媒中の水含有率40重量%)を調製した。このカソード用多孔質複合層ペーストをドクターブレードにより導電性多孔質基材の一方の表面に均一に塗布し、大気中常温で8時間乾燥させた。その後、導電性多孔質基材を、不活性ガス(N2)中360℃で1時間焼成して界面活性剤を除去し、導電性多孔質基材19a表面に多孔質複合層19bを形成した。このようにして、カソード拡散層19を得た。
得られたカソード拡散層19において、多孔質複合層19b中のPTFEの割合は40重量%であり、多孔質複合層19bの投影単位面積あたりの量は、1.8mg/cm2であった。
<MEAの作製>
まず、アノード拡散層17およびカソード拡散層19を、それぞれ6cm×6cmのサイズに切断した後、膜−触媒層接合体(CCM)の両側に、それぞれ多孔質複合層が触媒層と接するように積層した。次いで、得られた積層体を、130℃、4MPaで、3分間プレスして、触媒層と拡散層とを接合した。このようにして、膜電極接合体(MEA)13を得た。
次いで、MEA13のアノード11およびカソード12の周囲に、アノード側ガスケット22およびカソード側ガスケット23を、電解質膜10を挟み込むように配置した。アノード側ガスケット22およびカソード側ガスケット23としては、ポリエーテルイミド層を中間層として、その両側にシリコーンゴム層を設けた3層構造体を用いた。
ガスケットを配置したMEA13を、図1に示す構造となるように、それぞれ外寸が12cm×12cmのアノード側セパレータ14およびカソード側セパレータ15、集電板24および25、シート状のヒータ26および27、絶縁板28および29、並びに端板30および31で両側から挟み込み、締結ロッドで固定した。締結圧は、セパレータの面積あたりで12kgf/cm2(約1.2MPa)とした。
セパレータ14および15には、厚さが4mmの樹脂含浸黒鉛材(東海カーボン(株)製のG347B)を用いた。各セパレータには、幅1.5mm、深さ1mmのサーペンタイン型流路を予め形成しておいた。集電板24および25としては、金メッキ処理を施したステンレス鋼板を使用した。シート状のヒータ26および27には、サミコンヒータ(坂口電熱(株)製)を用いた。
以上のような方法で得られた燃料電池を、燃料電池Aとした。
(実施例2)
カソード拡散層を作製するときに、多孔質複合層の投影単位面積あたりの量を、0.9mg/cm2とした以外は、実施例1と同様にして、燃料電池Bを作製した。多孔質複合層の量は、カソード用多孔質複合層ペーストを導電性多孔質基材表面に塗布する際のドクターブレードの設定ギャップを減少させることにより調整した。
(実施例3)
カソード拡散層を作製するときに、多孔質複合層の投影単位面積あたりの量を、2.6mg/cm2とした以外は、実施例1と同様にして、燃料電池Cを作製した。多孔質複合層の量は、カソード用多孔質複合層ペーストを導電性多孔質基材表面に塗布する際のドクターブレードの設定ギャップを増加させることにより調整した。
(実施例4)
カソード拡散層の導電性多孔質基材を作製するときに、導電性多孔質基材に含まれるPTFE量を導電性多孔質基材の11.5重量%とした以外は、実施例1と同様にして、燃料電池Dを作製した。PTFE量は、導電性多孔質材料を浸漬するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)分散液の固形分濃度を減少させることにより調整した。
(実施例5)
カソード拡散層を作製するときに、多孔質複合層中のPTFEの割合を10重量%とした以外は、実施例1と同様にして、燃料電池Eを作製した。PTFEの割合は、カソード用多孔質複合層ペーストに添加するPTFE分散液の量を減少させることにより調整した。
(実施例6)
カソード拡散層を作製するときに、多孔質複合層中のPTFEの割合を60重量%とした以外は、実施例1と同様にして、燃料電池Fを作製した。PTFEの割合は、カソード用多孔質複合層ペーストに添加するPTFE分散液の量を増加させることにより調整した。
(比較例1)
カソード拡散層を導電性多孔質基材のみとすること以外、すなわち、導電性多孔質基材表面に多孔質複合層を配置しないこと以外は、実施例1と同様にして、比較燃料電池1を作製した。
(比較例2)
カソード拡散層を作製するときに、多孔質複合層の投影単位面積あたりの量を、0.6mg/cm2とした以外は、実施例1と同様にして、比較燃料電池2を作製した。多孔質複合層の量は、カソード用多孔質複合層ペーストを導電性多孔質基材表面に塗布する際のドクターブレードの設定ギャップを減少させることにより調整した。
(比較例3)
カソード拡散層を作製するときに、多孔質複合層の投影単位面積あたりの量を、3.5mg/cm2とした以外は、実施例1と同様にして、比較燃料電池3を作製した。多孔質複合層の量は、カソード用多孔質複合層ペーストを導電性多孔質基材表面に塗布する際のドクターブレードの設定ギャップを増加させることにより調整した。
(比較例4)
カソード用多孔質複合層ペーストに含まれる分散媒の水含有率を10重量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、比較燃料電池4を作製した。
[評価]
実施例1〜6および比較例1〜4で作製した燃料電池に用いたカソード拡散層について、PMI社製の多孔質材料用の自動細孔径分布測定システム(パームポロメータ)により、制限細孔径分布における、貫通孔の最大細孔直径、貫通孔の平均流量細孔直径、および排水圧の測定を行った。測定方法を以下に示す。
(1)貫通孔の最大細孔直径
カソード拡散層を直径25mmの円形状に打ち抜いて、測定用試料を得た。前記試料を、表面張力γが15.7mN/mのGalwick試薬中に浸漬し、減圧環境下で、前記試料にGalwick試薬を20分間含浸させた。このようにして、前記試料の貫通孔にGalwick試薬を充填させた。
次に、Galwick試薬を充填した試料を、パームポロメータに取り付けた。空気圧力を連続的に増加させた際に、空気透過流量がゼロから増加し始める瞬間の圧力(バブルポイント圧力)P0を計測した。得られたP0値から、上記式(1)を用いて、貫通孔の最大細孔直径D0を算出した。
(2)貫通孔の平均流量細孔直径
上記と同様に、カソード拡散層を直径25mmの円形状に打ち抜いて、測定用試料を得た。前記試料を、表面張力γが15.7mN/mのGalwick試薬中に浸漬し、減圧環境下で、前記試料にGalwick試薬を20分間含浸させた。このようにして、前記試料の貫通孔にGalwick試薬を充填させた。
次に、Galwick試薬を充填した試料を、パームポロメータに取り付けた。空気の圧力を連続的に増加させると、細孔直径が大きい貫通孔から充填されたGalwick試薬が順次押し出されて、空気透過流量が増加する。本測定においては、空気透過流量が200L/minに到達するまで、空気の圧力を増加させた。このようにして、濡れ流量曲線を求めた。
次に、同じ測定用試料をそのまま用いて、空気圧力を連続的に増加させたときの空気透過流量を測定した。この場合にも、空気透過流量が200L/minに到達するまで、空気圧力を増加させた。このようにして、乾き流量線を求めた。
次いで、濡れ流量曲線における空気透過量Lwが、乾き流量線における空気透過量Ldの1/2となる圧力P1/2を求めた。得られたP1/2値から、前記式(1)を用いて、カソード拡散層の貫通孔の平均流量細孔直径D1/2を算出した。
(3)排水圧
また、カソード拡散層を直径25mmの円形状に打ち抜いて、測定用試料を得た。前記試料を、パームポロメータに取り付け、この後、スポイドを用いて、前記試料の上部表面全体に、水の膜(単位面積当たりの水の重量:0.35g/cm2)を形成した。その水膜に、空気をその圧力を連続的に増加させながら供給し、空気透過流量がゼロから増加し始める瞬間の圧力、すなわち、水がカソード拡散層の細孔内部に浸入して透過するときの臨界圧力を計測した。前記圧力を、排水圧とした。
カソード拡散層の貫通孔の、制限細孔径分布における、最大細孔直径、平均流量細孔直径、および排水圧の測定結果を表1に示す。
また、実施例1〜6および比較例1〜4で作製した燃料電池に用いたカソード拡散層について、導電性多孔質基材内部への多孔質複合層の侵入深さを、以下の方法で評価した。
(4)多孔質複合層の侵入深さ
カソード拡散層を所定のサイズに切断し、試験片を得た。得られた試験片をエポキシ樹脂に包埋し、前記エポキシ樹脂の試験片が露出した表面を、サンドペーパーによる湿式研磨およびバフ琢磨布(アルミナ混濁液含浸)による鏡面仕上げに供した。「多孔質複合層/導電性多孔質基材」からなる断面の所定の10箇所を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製のS4500)により観察し、導電性多孔質基材19aの多孔質複合層19b側の端と、導電性多孔質基材19a内に侵入した多孔質複合層19bの端までの垂直距離aを測定した。10箇所で測定された前記垂直距離aを平均して、侵入深さA1を得た。
また、導電性多孔質基材19aの厚さB1は、その断面の所定の10箇所を電子顕微鏡により観察し、得られた値を平均することにより得た。
結果を表1に示す。また、表1には、各実施例および比較例で作製したカソード拡散層について、多孔質複合層の単位面積あたりの量、多孔質複合層における撥水性結着材料の重量割合、および各多孔質複合層を作製するときに用いたペーストに使用される分散媒に含まれる水含有率も示す。
次に、実施例1〜6で作製した燃料電池A〜F、比較例1〜4で作製した燃料電池1〜4について、耐久特性を評価した。評価方法を以下に示す。
燃料である4Mメタノール水溶液を流量0.27mL/minでアノードに供給し、酸化剤である空気を流量0.26L/minでカソードに供給し、0.4Vの定電圧で、各燃料電池を連続発電させた。発電時の電池温度は60℃とした。
発電開始から4時間経過した時点での電流密度値から電力密度値を算出した。得られた値を初期電力密度とした。その後、発電開始から5000時間経過した時点での電流密度値から電力密度値を算出した。
初期電力密度に対する5000時間経過したときの電力密度の比率を電力密度維持率とした。得られた結果を表1に示す。表1において、電力密度維持率は百分率で表現している。
Figure 0005238888
表1から明らかなように、燃料電池A〜Fの電力密度維持率は、非常に高い値を示した。これは、実施例の燃料電池においては、カソード拡散層内部に、粘性流である水の排出機能と拡散流である空気の透過機能とを兼ね備えた最適な細孔構造を形成されているためである。よって、カソード触媒層の細孔内部、カソード触媒層とカソード拡散層との界面部分、およびカソード拡散層の細孔内部に蓄積される液体の水を効率的に排出して、カソードにおける空気の拡散性を長期間確保することができる。このため、非常に優れた耐久特性が得られたと考えられる。
燃料電池A〜Fの中でも、燃料電池Aでは、初期特性および耐久特性が顕著に向上している。燃料電池Aの場合には、導電性多孔質基材表面に配置された多孔質複合層の量、導電性多孔質基材への侵入深さ、および撥水性結着材料の含有量がさらに最適化されている。このため、(1)カソード触媒層の乾燥防止、(2)カソード触媒層と導電性多孔質基材との界面接触抵抗の低減、(3)導電性多孔質基材がカソード触媒層と電解質膜を貫通することによる内部短絡の防止、といった基本的な機能に加えて、(4)カソード拡散層において選択的排水経路が形成されることによる排水性のコントロール、といった新たな機能を充分に発揮することができ、その結果、燃料電池Aでは、初期特性および耐久特性が顕著に向上したと考えられる。
一方で、比較燃料電池1〜4の電力密度維持率は、燃料電池A〜Fの電力密度維持率と比較して顕著に低い値を示した。
比較燃料電池1の場合には、カソード拡散層の導電性多孔質基材表面に多孔質複合層が配置されていない。比較燃料電池2の場合には、多孔質複合層が配置されているものの、不均一である。このため、比較燃料電池1および2では、カソード拡散層における貫通孔の最大細孔直径と平均流量細孔直径が大きくなり、カソード触媒層中の高分子電解質が乾燥する。その結果、カソード触媒層のプロトン伝導性が悪化し、耐久特性が顕著に低下したと推察される。
比較燃料電池3の場合には、多孔質複合層に多数の亀裂が発生したために、カソード拡散層における貫通孔の最大細孔直径と平均流量細孔直径が大きくなった。その結果、前記したカソード拡散層の機能が充分に発揮されず、耐久特性が顕著に低下したと推察される。
比較燃料電池4の場合には、カソード拡散層を作製するときに用いられるカソード用多孔質複合層ペーストに含まれる分散溶媒中の水含有率が小さい。このようなペーストを用いると、他の条件にもよるが、カソード拡散層に形成される貫通孔の最大細孔直径と平均流量細孔直径が小さくなり、排水性と空気拡散性が共に低下する。その結果、耐久特性が顕著に低下したと推察される。
なお、上記実施例では、直接メタノール型燃料電池を作製したが、本発明は、カソードに酸化剤ガスを供給し、水が生成される燃料電池に提供することができる。例えば、本発明は、アノードに水素ガスを供給し、カソードに空気のような酸化剤ガスを供給する燃料電池に適用することもできる。
本発明を現時点での好ましい実施態様に関して説明したが、そのような開示を限定的に解釈してはならない。種々の変形および改変は、上記開示を読むことによって本発明に属する技術分野における当業者には間違いなく明らかになるであろう。したがって、添付の請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、すべての変形および改変を包含する、と解釈されるべきものである。
本発明の燃料電池は、優れた発電特性および耐久性を有するため、例えば、携帯電話、ノートパソコン、ディジタルスチルカメラ等の携帯用小型電子機器用の電源として有用である。さらに、本発明の燃料電池は、電動スクータ、自動車用電源等にも好適に用いることができる。
1 燃料電池
10 電解質膜
11 アノード
12 カソード
13 膜−電極接合体(MEA)
14 アノード側セパレータ
15 カソード側セパレータ
16 アノード触媒層
17 アノード拡散層
18 カソード触媒層
19 カソード拡散層
19a 導電性多孔質基材
19b 多孔質複合層
20、21 流路
22、23 ガスケット
24、25 集電板
26、27 シート状のヒータ
28、29 絶縁板
30、31 端板
50 貫通孔
50a 狭窄部
51 Galwick試薬

Claims (12)

  1. アノードと、カソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置された電解質膜とを含む燃料電池用膜電極接合体であって、
    前記カソードは、カソード触媒層、および前記カソード触媒層に積層されたカソード拡散層を含み、
    前記カソード拡散層は、導電性多孔質基材、および前記導電性多孔質基材の一方の表面に配置された多孔質複合層を有し、
    前記多孔質複合層は、導電性炭素粒子および撥水性結着材料を含み、
    前記カソード拡散層は、複数の貫通孔を有し、ハーフドライ/バブルポイント法により測定された制限細孔径分布において、最大細孔直径が15〜20.5μmの範囲にあり、平均流量細孔直径が3〜10.5μmの範囲にある燃料電池用膜電極接合体。
  2. 前記最大細孔直径が15〜20μmの範囲にあり、前記平均流量細孔直径が3〜10μmの範囲にある請求項1記載の燃料電池用膜電極接合体。
  3. 水が前記カソード拡散層を通過するときの排水圧が5〜17kPaである請求項1または2記載の燃料電池用膜電極接合体。
  4. 前記導電性多孔質基材の表面に配置された前記多孔質複合層の投影単位面積あたりの量が0.8〜2.7mg/cm2である請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池用膜電極接合体。
  5. 前記多孔質複合層が前記導電性多孔質基材の内部に侵入しており、前記多孔質複合層の侵入深さが前記導電性多孔質基材の厚さの7%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池用膜電極接合体。
  6. 前記多孔質複合層中の前記撥水性結着材料の割合が5〜65重量%である請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池用膜電極接合体。
  7. 前記撥水性結着材料がポリテトラフルオロエチレンを含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の燃料電池用膜電極接合体。
  8. 前記多孔質複合層が、前記導電性炭素粒子、前記撥水性結着材および水を含む分散媒を含む分散液を、前記導電性多孔質基材の一方の表面に塗布し、乾燥した後、焼成することにより得られ、前記分散中の水の含有量が、20〜60重量%である請求項1〜7のいずれか1項に記載の燃料電池用膜電極接合体。
  9. 前記焼成の温度が、350〜400℃である、請求項8に記載の燃料電池用膜電極接合体。
  10. 前記導電性多孔質基材が、導電性多孔質材料と、前記導電性多孔質材料に付着した撥水性材料とを含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の燃料電池用膜電極接合体。
  11. 前記撥水性材料の割合が、前記導電性多孔質基材全体に対して、5〜40重量%である請求項10に記載の燃料電池用膜電極接合体。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の燃料電池用膜電極接合体、前記アノードに接するアノード側セパレータ、および前記カソードに接するカソード側セパレータを備える少なくとも1つの単位セルを有する燃料電池。
JP2011536044A 2009-10-16 2010-10-14 燃料電池用膜電極接合体およびそれを用いた燃料電池 Expired - Fee Related JP5238888B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011536044A JP5238888B2 (ja) 2009-10-16 2010-10-14 燃料電池用膜電極接合体およびそれを用いた燃料電池

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009239417 2009-10-16
JP2009239417 2009-10-16
PCT/JP2010/006100 WO2011045933A1 (ja) 2009-10-16 2010-10-14 燃料電池用膜電極接合体およびそれを用いた燃料電池
JP2011536044A JP5238888B2 (ja) 2009-10-16 2010-10-14 燃料電池用膜電極接合体およびそれを用いた燃料電池

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2011045933A1 JPWO2011045933A1 (ja) 2013-03-04
JP5238888B2 true JP5238888B2 (ja) 2013-07-17

Family

ID=43875988

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011536044A Expired - Fee Related JP5238888B2 (ja) 2009-10-16 2010-10-14 燃料電池用膜電極接合体およびそれを用いた燃料電池

Country Status (4)

Country Link
US (1) US20110244359A1 (ja)
EP (1) EP2352194A1 (ja)
JP (1) JP5238888B2 (ja)
WO (1) WO2011045933A1 (ja)

Families Citing this family (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5743762B2 (ja) * 2011-07-08 2015-07-01 本田技研工業株式会社 電解質膜・電極接合体及びその製造方法
JP5843682B2 (ja) * 2012-03-28 2016-01-13 本田技研工業株式会社 燃料電池の拡散層構造
JP5981205B2 (ja) * 2012-04-19 2016-08-31 本田技研工業株式会社 電解質膜・電極構造体
JP6045930B2 (ja) * 2013-02-01 2016-12-14 本田技研工業株式会社 電解質膜・電極構造体
US9461311B2 (en) * 2013-03-15 2016-10-04 Ford Global Technologies, Llc Microporous layer for a fuel cell
JP6412995B2 (ja) * 2013-03-26 2018-10-24 本田技研工業株式会社 電解質膜・電極構造体の製造方法
JP6356436B2 (ja) * 2013-03-26 2018-07-11 本田技研工業株式会社 電解質膜・電極構造体
EP2869382B1 (en) * 2013-10-30 2018-12-12 Basf Se Improved membrane electrode assemblies
KR20180011057A (ko) * 2015-05-21 2018-01-31 후지쿠라 고무 코교 가부시끼가이샤 금속공기전지 및 그 제조방법
JP7114858B2 (ja) * 2017-03-17 2022-08-09 東レ株式会社 ガス拡散電極、および、燃料電池
JP6407349B1 (ja) 2017-05-11 2018-10-17 株式会社キャタラー 排ガス浄化触媒装置
JP6727265B2 (ja) * 2018-09-18 2020-07-22 株式会社キャタラー 燃料電池用アノード触媒層及びそれを用いた燃料電池

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH07176307A (ja) * 1993-12-21 1995-07-14 Fuji Electric Co Ltd 燃料電池
JP2004296176A (ja) * 2003-03-26 2004-10-21 Toray Ind Inc 固体高分子型燃料電池
JP2007220731A (ja) * 2006-02-14 2007-08-30 Sekisui Chem Co Ltd 電池用多孔質体、電池用多孔質体の製造方法、固体電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ及び固体酸化物形燃料電池
JP2008311181A (ja) * 2007-06-18 2008-12-25 Mitsubishi Rayon Co Ltd 膜電極接合体、その製造方法及び該膜電極接合体を用いた燃料電池
JP2009032687A (ja) * 2007-07-04 2009-02-12 Nissan Motor Co Ltd ガス拡散電極及びその製造方法
JP2010244791A (ja) * 2009-04-03 2010-10-28 Panasonic Corp 直接メタノール型燃料電池

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
BR0016442A (pt) * 1999-12-17 2002-10-01 Int Fuel Cells Llc Central de força de célula de combustìvel, e, processo de operação da mesma.
JP4691914B2 (ja) * 2004-06-21 2011-06-01 日産自動車株式会社 ガス拡散電極及び固体高分子電解質型燃料電池

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH07176307A (ja) * 1993-12-21 1995-07-14 Fuji Electric Co Ltd 燃料電池
JP2004296176A (ja) * 2003-03-26 2004-10-21 Toray Ind Inc 固体高分子型燃料電池
JP2007220731A (ja) * 2006-02-14 2007-08-30 Sekisui Chem Co Ltd 電池用多孔質体、電池用多孔質体の製造方法、固体電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ及び固体酸化物形燃料電池
JP2008311181A (ja) * 2007-06-18 2008-12-25 Mitsubishi Rayon Co Ltd 膜電極接合体、その製造方法及び該膜電極接合体を用いた燃料電池
JP2009032687A (ja) * 2007-07-04 2009-02-12 Nissan Motor Co Ltd ガス拡散電極及びその製造方法
JP2010244791A (ja) * 2009-04-03 2010-10-28 Panasonic Corp 直接メタノール型燃料電池

Also Published As

Publication number Publication date
EP2352194A1 (en) 2011-08-03
JPWO2011045933A1 (ja) 2013-03-04
WO2011045933A1 (ja) 2011-04-21
US20110244359A1 (en) 2011-10-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5238888B2 (ja) 燃料電池用膜電極接合体およびそれを用いた燃料電池
JP5064679B2 (ja) 直接メタノール型燃料電池
JP5118372B2 (ja) 直接メタノール型燃料電池
JP5188872B2 (ja) 直接酸化型燃料電池
JPH11288727A (ja) 固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体
KR100773669B1 (ko) 직접형 연료전지 및 직접형 연료전지 시스템
JP5034172B2 (ja) 燃料電池用ガス拡散層、および、これを用いた燃料電池
JP5198044B2 (ja) 直接酸化型燃料電池
JP5151217B2 (ja) 燃料電池
JP2009199988A (ja) 直接メタノール型燃料電池用アノード電極及びそれを用いた直接メタノール型燃料電池
JP5126812B2 (ja) 直接酸化型燃料電池
JP5523633B2 (ja) 直接酸化型燃料電池用膜電極接合体およびそれを用いた直接酸化型燃料電池
JP2007287663A (ja) 直接酸化型燃料電池およびその製造方法
JP2007234359A (ja) 固体高分子型燃料電池用膜電極構造体
JP2011204583A (ja) 燃料電池用膜電極接合体およびそれを用いた燃料電池
JP5023591B2 (ja) 燃料電池用の膜・電極接合体
JP2006085984A (ja) 燃料電池用mea、および、これを用いた燃料電池
KR100907183B1 (ko) 연료전지용 기체확산층, 막-전극 접합체 및 연료전지
JP5339261B2 (ja) 燃料電池
US8778557B2 (en) Membrane electrode assembly for fuel cell and fuel cell using the same
JP2010146765A (ja) 燃料電池用接合体、燃料電池、およびそれらの製造方法
JP5268352B2 (ja) 膜−電極接合体、およびそれを使用した直接酸化型燃料電池
JP2006278193A (ja) 膜−電極接合体および膜−電極接合体の製造方法、並びにそれを使用した燃料電池
JP2005327675A (ja) ガス拡散層、およびこれを用いた燃料電池用mea
JP2010238370A (ja) 直接酸化型燃料電池

Legal Events

Date Code Title Description
TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130314

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130401

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20160405

Year of fee payment: 3

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees