JP5238015B2 - 抗菌・防カビ性塗装金属製品 - Google Patents

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本発明は浴室、厨房、洗面所などの高温多湿な場所や湯水を取り扱う機器、人体の頻繁に触れる対象物などとして使用される抗菌・防カビ性塗装金属製品に関する。
一般に、鉄や非鉄金属、合金鋼、その他の金属基材の表面へ、コーティング材から成る被膜(塗装膜)を長年月に亘って密着させることは難しく、殊更ステンレス鋼の表面には緻密過ぎる結晶の強固な酸化被膜が生成しているため、上記問題は顕著となり、半永久的な耐蝕性や抗菌性、耐候性などの各種性能を付与することができない。
この点、ステンレス基材の表面に塗装するための下地層(第1層)として、クロメート処理による化成被膜を形成することが、下記特許文献1〜4に開示されている。
特開平5−76835号公報 特開平8−229502号公報 特開2004−122409号公報 特開2004−160757号公報
ところが、上記クロメート処理による化成被膜はたとえ黒色であっても、電気分解により析出された多孔質の黒色化成被膜と異なって、塗装膜の密着力に劣り、その塗装膜の剥離するおそれがあるほか、折り曲げ部からクラックを生じるおそれもある。
更に、クロメート処理による化成被膜は耐熱性を有さないため、これを塗装下地層にすると、その上層の塗装膜を焼き付けることが難しくなり、その強制乾燥上制約を受ける問題もある。
本発明はこのような課題の改良を目的としており、その目的を達成するために、請求項1の抗菌・防カビ性塗装金属製品ではステンレス鋼やその他の鉄系金属基材の表面へ塗装下地層として、防錆用のレイデント処理により析出されたクロム微粒子群の集積から成る厚みが1μm〜2μmの多孔質な黒色化成被膜を形成すると共に、
樹脂塗料の固形分100重量%に対して平均粒径2.5μm以下である白色粉末の銀系無機抗菌剤が0.5〜3.0重量%だけ添加された上塗り膜を、上記黒色化成被膜の表面に積層一体化したことを特徴とする。
又、請求項2では上塗り膜とその塗装下地層をなす黒色化成被膜との相互間へ、白色の下塗り膜を介在させることによって、上記黒色化成被膜の表面全体を一旦隠蔽したことを特徴とする。
請求項1の構成によれば、ステンレス鋼やその他の鉄系金属基材の表面に対する上塗り膜の塗装下地層が、レイデント処理による多孔質の黒色化成被膜から成るものとして、優れた防錆力のほか、半永久的な1、2次密着性を発揮するため、その上塗り膜の剥離するおそれはなく、金属基材がステンレス鋼材であっても、冒頭に述べた問題を一切生じない。
つまり、鉄系金属基材のうちでも、特にステンレス鋼材の表面には冒頭に述べた強固な酸化被膜が生成しているため、耐蝕性に優れる反面、塗装膜の密着力に劣る問題があるところ、上記レイデント処理による多孔質の黒色化成被膜は、上塗り膜の密着表面積が非常に広大であるため、その上塗り膜を強固に密着一体化させることができ、併せて半永久的な防錆力や抗菌・防カビ性を確保し得る効果がある。
特に、レイデント処理被膜は通常の化学反応と異なるマイナス温度での電気分解作用(電気化学反応)により、金属基材の表面に析出された無数のアモルファス状(非結晶性)クロム微粒子から成る1μm〜2μmの多孔質な黒色化成被膜であるため、その無数の微細孔にコーティング剤(塗料)があたかも毛細血管の網状に絡らみ付き浸透する如く、その上塗り膜の2次密着性に優れた下地層を形作り、金属基材を折り曲げるも、その折り曲げ部からクラックが発生するおそれもない。
更に、請求項2の構成を採用するならば、上記塗装下地層をなす多孔質の黒色化成被膜が、その文字通りの黒い色調であっても、これを白色の下塗り膜によって一旦全面的に隠蔽しており、その下塗り膜の表面に白色粉末の銀系無機抗菌剤を含む上塗り膜が積層一体化しているため、その両膜の厚みにより白色の塗装ムラを無くすことに役立つ。
抗菌・防カビ性塗装金属製品としての自転車用ハンドルバーを示す斜面図である。 抗菌・防カビ性塗装金属製品としての扉開閉用レバーハンドルを示す斜面図である。 抗菌・防カビ性塗装金属製品としてのスパナを示す斜面図である。 上記金属製品の塗装工程を示す断面図である。 同じく金属製品の別な塗装工程を示す断面図である。
図1〜3は本発明に係る各種抗菌・防カビ性塗装金属製品として、自転車のハンドルバー(ステンレス鋼)や扉開閉用のレバーハンドル(ステンレス鋼)、スパナ(合金工具鋼)を例示しており、その材質を括弧内に記載している。又、図4はステンレス鋼板(SUS304)を金属基材(M)の代表例として、その塗装工程を示す断面図である。
そこで、図4(I)(II) に基いて本発明に係る抗菌・防カビ性塗装金属製品の塗装法を詳述すると、次のとおりである。即ち、金属基材(M)の表面に付着している油脂分や汚れを除去するため、予じめシンナーでの洗浄や脱脂などの処理を行なっておく。
そして、先ず第1工程として上記金属基材(M)の表面にレイデント処理(本出願人の所有する登録商標)を行なう。レイデント処理とは本出願人の技術開発した特殊な金属表面処理であり、主としてクロム酸水溶液に適宜触媒成分を添加し、約マイナス5℃〜約マイナス10℃の冷温(低温)下において直流電解(例えば約6V〜約12Vで約5分〜約60分)を行なうことにより、金属表面にクロム微粒子群の多孔質黒色被膜を約1μm〜約2μmの厚みだけ析出させる方法を意味する。
このようなレイデント処理による多孔質の黒色化成被膜は、その一部が母材である金属基材(M)の内部へ境界面なく拡散して、約1μmの拡散層(合金層)を形成することになるため、著しく優れた密着力と防錆力を発揮し、長年月に亘って剥離したり、発錆したりするそれがないのである。しかも、上記サブミクロン級のアモルファス状クロム微粒子が集積し、無数のピンホールやマイクロクラックを保有する多孔質の被膜として、後述するコーティング剤(塗料)との接触表面積が著しく広大であり、その被膜へコーティング剤があたかも毛細血管の隅々まで網状に浸透する如く、その塗装膜(後述の上塗り膜)の2次密着性に優れた下地層を形作ることができる。
図4(I)(II) の符号(11)はこのようなレイデント処理により金属基材(M)の表面に形成された多孔質の黒色化成被膜を例示しており、これが後述の塗装下地層になる。
上記多孔質の黒色化成被膜(11)を形成できたならば、次に図4(II) の第2工程に示す如く、その黒色化成被膜(11)の表面へスプレー塗装やハケ塗り、浸漬塗装、ロール塗装、フローコーター塗装、その他の適当な方法を用いて、抗菌・防カビ用のトップコートを行ない、その固化後の膜厚が約20μm〜約80μm、好ましくは10μm〜30μmの上塗り膜(12)を形成する。
茲に、上塗り膜(12)を形成するための塗料としては、その上塗り膜形成樹脂(樹脂塗料)の固形分100重量%に対して、平均粒径2.5μm以下である白色粉末の銀系無機抗菌剤(商品名「ゼオミックAJ10N」株式会社シナネンゼオミック製の銀イオン担持ゼオライト)が0.5〜3.0重量%だけ添加されたものを採用し、更に好ましくは上記銀系無機抗菌剤がアクリル樹脂塗料の固形分100重量%に対する2.0重量%だけ添加されたアクリルラッカーを採用する。上記商品名に係る銀系無機抗菌剤の物性を表1に例示する。
Figure 0005238015
その場合、上記樹脂塗料(上塗り膜形成樹脂)の固形分100重量%に対する銀系無機抗菌剤の添加比率が、0.5重量%未満であると、その抗菌効果の低下する傾向になり、他方3.0重量%を越えても、これによって得られる効果が向上せず、却ってコスト高を招来する。その添加比率としては2.0重量%が最適である。
上塗り膜(12)を形成する樹脂塗料としては上記アクリル樹脂塗料のみならず、エポキシ樹脂塗料やポリウレタン樹脂塗料、フッソ樹脂塗料などを広く採用することができ、その溶剤型やエマルジョン型、粉末型などの何れであっても良い。
何れにしても、上記銀系無機抗菌剤は樹脂塗料(上塗り膜形成樹脂)への分散性や耐熱性に優れ、塗装後に沈降することもなく、その無機物質に担持した銀イオンの効果によって、大腸菌や黄色ブドウ球菌、その他の細菌類、カビ類などの広範囲な微生物に対する抗菌作用を、長期間に亘って持続することができ、有機系の抗菌剤に比し安全性も高いため、浴室や厨房、洗面所などの高温多湿になったり、栄養物質が付着たりしやすい場所、湯水を取り扱う各種機器、人体が頻繁に触れる対象物などに使われる塗装金属製品に適用して、著しく有益である。
次に、図5は図4と対応する別な実施形態として、ステンレス鋼板(SUS430)から成る金属基材(M)の塗装工程を示しており、これでは図4に説示した塗装下地層となる多孔質の黒色化成被膜(11)と、抗菌・防カビ性が与えられた上塗り膜(12)との向かい合う相互間へ、白色の下塗り膜(13)を介挿設置している。
つまり、図5(I)の第1工程において、金属基材(M)のレイデント処理により形成した多孔質黒色化成被膜(11)の表面へ、引き続きハケ塗りやスプレー塗装、浸漬塗装、ロール塗装などの適当な塗装法を用いて、好ましくはウッドシーラー(JIS K 5533)を塗工し、図5(II)のような白色の下塗り膜(13)を形成する。その下塗り用のウッドシーラーとしては、白色の顔料が添加された一液反応硬化型水系ウレタン樹脂塗料(大日本塗料の商品名「DNT ビューウレタン」)を採用し、その固化後の膜厚を約10μm〜約30μmに設定することが望ましい。
そして、その後図5(III)に示す如く、上記下塗り膜(13)の表面へやはりハケ塗りやスプレー塗装、浸漬塗装、カーテンフロー塗装、その他の適当な方法により、図4の塗装工程と同じ抗菌・防カビ用の上塗り膜(12)を形成するのである。
そうすれば、第1工程でのレイデント処理により金属基材(M)の表面に形成された多孔質化成被膜(11)の黒色を、引き続き塗工される白色の下塗り膜(13)によって、一旦全面的に隠蔽することができ、その後の上塗り膜(12)に添加されている白色粉末の銀系無機抗菌剤と相俟って、その白色の厚膜な上下2層を得られ、色ムラや塗装ムラなどの防止に役立つ。
(11)・黒色化成被膜
(12)・上塗り膜
(13)・下塗り膜
(M)・金属基材

Claims (2)

  1. ステンレス鋼やその他の鉄系金属基材の表面へ塗装下地層として、防錆用のレイデント処理により析出されたクロム微粒子群の集積から成る厚みが1μm〜2μmの多孔質な黒色化成被膜を形成すると共に、
    樹脂塗料の固形分100重量%に対して平均粒径2.5μm以下である白色粉末の銀系無機抗菌剤が0.5〜3.0重量%だけ添加された上塗り膜を、上記黒色化成被膜の表面に積層一体化したことを特徴とする抗菌・防カビ性塗装金属製品。
  2. 上塗り膜とその塗装下地層をなす黒色化成被膜との相互間へ、白色の下塗り膜を介在させることによって、上記黒色化成被膜の表面全体を一旦隠蔽したことを特徴とする請求項1記載の抗菌・防カビ性塗装金属製品。
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