JP5236790B2 - 射出成形機のスクリュ取り付け構造 - Google Patents
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Description
特許文献1には、スクリュ取付部自体にスクリュを差し込む穴とスクリュ軸方向に直交する穴を設け、スクリュ軸方向に直交する穴からスクリュの切り欠きを通るようにリテーナを差し込む構造が開示されている。
特許文献2には、スクリュにスプラインと切り欠きを設け、溝を切った固定ブッシュがスクリュとスプライン結合し、溝を通して切り欠きに嵌合したリテーナが固定ブッシュの外側に突出している構造が開示されている。
特許文献1に開示される構造では、リテーナによって回転・前後進の両方を固定する方式で、伝達トルクや前後進の動力が大きくなるとスクリュに強度上の制約が発生する。また連結部にスクリュを差し込む穴を設けているため、幅広いスクリュ径に対応することが難しい。
特許文献2に開示される構造では、リテーナ固定部を固定ブッシュより外周側のスクリュ駆動部に設けているため、スクリュ駆動部が固定ブッシュと同程度まで小さくなるとリテーナ固定のためのボルト穴、ピン穴を設けることができなくなり、リテーナを固定できない問題が生じる。
また、リテーナがスクリュ駆動部側に取り付けられていることで固定ブッシュとリテーナ前側に隙間が出来るため、スクリュ後退時にリテーナをリテーナ固定ボルトで支持する形となり、リテーナおよびリテーナ固定ボルトに曲げ方向の力が掛かりやすい。
また、リテーナ固定ボルトを外すとリテーナが脱落する構造となっており作業時にリテーナを落とす心配が生じてくる。さらにリテーナが固定ブッシュの固定ボルトに干渉しないような幅で作られており、固定ボルトの本数が多くなってくるとリテーナの幅が大きくできないという形状の制約が生じてくる。
請求項2に係る発明は、前記リテーナの長孔または切り欠きを通る前記ボルトが前記固定ブッシュを前記スクリュ駆動部に固定するボルトであることを特徴とする請求項1に記載の射出成形機のスクリュ取り付け構造である。
請求項3に係る発明は、前記係合溝のスクリュ外周側方向で前記スクリュと前記固定ブッシュあるいは前記スクリュと前記スクリュ駆動部の間に円筒状空間を備え、前記固定ブッシュのガイド溝の前記リテーナのスライド方向と直交する方向の幅が前記円筒状空間の外径より小さいことを特徴とする請求項1に記載の射出成形機のスクリュの取り付け構造である。
<第1の実施形態>
図1は本発明の第1の実施形態の外観図である。また、図2は図1のスクリュ軸方向部分断面図である。図2ではスクリュ駆動部、リテーナの片側、リテーナ固定ボルト固定ブッシュが断面になって図示されている。また、図2のリテーナは説明のため図の上側がスクリュと係合している状態、下側が外れている状態としている。
まず、スクリュ10には図2に示されるようにその基部(根元)にスプライン11と切り欠き12が設けてある。切り欠き12はスクリュ10の基部(根元)部分に、スクリュ10の中心軸周りに所定の厚みだけ削り取られて溝状に形成される。固定ブッシュ30には中央部にスクリュ10の基部(根元)が貫通する貫通孔が設けられ、該貫通孔の周面にスクリュ10のスプライン11と嵌合するスプラインが設けてある(図15参照)。このように、固定ブッシュ30はスクリュの基部を挿通するためのキーあるいはスプラインが設けられた孔を有しスクリュ10の回転方向の移動をスプラインによって規制する。スクリュ10は根元が固定ブッシュ30を通り抜けてスクリュ駆動部70(図1,図2には一部のみ図示)の嵌合部71の底面71aに突き当たっている。なお、スプライン11は切り欠き12の両側に設けられていることから、スクリュ10を固定ブッシュ30の貫通孔に挿入するとき、該貫通孔の周面に設けられたスプラインが挿入の障害にならない。
また、固定ブッシュ30には回転軸方向に直交する方向(垂直な方向)にガイド溝32が設けられており、リテーナ50はガイド溝32に沿ってスライドし固定ブッシュ30の外側から差し込まれるようにして取り付けられる。なお、リテーナ50をスライドさせる溝は固定ブッシュ30に設けられることに限定されず、スクリュ駆動部70に設けてもよいし、または、固定ブッシュ30とスクリュ駆動部70とに跨がるように設けてもよい。
これによりモータによるスクリュの回転力はスクリュ駆動部70,固定ブッシュ30,スプライン11を介してスクリュ10に伝達され、前後進力はリテーナ50或いはスクリュ駆動部70の嵌合部71の底面71aを介してスクリュ10に伝達される。
さらに、スクリュ後退時にはリテーナ50のリテーナ前側53が固定ブッシュ30に押し当たる形となり、リテーナ50、リテーナ固定ボルト51に曲げ方向の力が掛かり難い。それ故、リテーナ固定ボルト51はサイズを小さく抑えることができる。
図2では動力伝達を分担させる反面、スクリュ10の前進と後退で異なる部材がスクリュ10を押し引きするので公差の設計が難しく、スクリュ10が前後進方向のガタを持ちやすい。一方、図3のような取り付け構造では、スクリュ10とリテーナ50の嵌合部の公差を調整するだけで、スクリュ前後進方向のガタを小さく押さえることができる。設計者は成形機で使用する動力の大きさとスクリュ10の位置制御の精度を考え、図2または図3の構造を選択すればよい。
前述したとおりリテーナ50は2つ1組の部品であり、固定ブッシュ30に設けられたガイド溝32に沿ってスライド可能になっている。また、スクリュ取り付け状態では図4に示すとおり、スクリュ10の外周(スクリュ外周13)より内側にリテーナ50が嵌合している。固定ブッシュ30は固定ブッシュ固定ボルト31でスクリュ駆動部70に取り付けられており、固定ブッシュ固定ボルト31はリテーナ50に干渉しないよう配置されている。
図5ではスクリュ引き抜き可能な位置までリテーナ50をスライドさせた状態で固定できるようリテーナ固定用ボルト孔52(図5の固定ブッシュ半径方向内側のボルト孔52a参照)が設けてある。取り外し位置でリテーナを固定することは必ずしも必要ではないが、リテーナ50の脱落や、自重でリテーナ50がスライドしてしまわないよう固定することは作業性向上に有効である。
スクリュ取り付けの際には逆にスクリュ10を所定の位置まで固定ブッシュ30に差し込み、リテーナ50をスライドさせてスクリュ10に嵌合させた後リテーナ固定ボルト51でリテーナ50を固定すれば作業は完了する。
ところで、リテーナ50と固定ブッシュ30を用いたスクリュ10の取り付け構造では、スクリュ10が大径になり伝達する力も大きくなると、リテーナ50、固定ブッシュ30のサイズもそれに伴って大きくなる。このような場合、スクリュ10を交換する際にリテーナ50が抜け落ちてしまうと、リテーナ50自身や他部品を傷つけてしまう。
そこでリテーナ50を抜け落ちない構造とした第2の実施形態を図6に示す。また、図6のスクリュ軸方向断面図を図7に、リテーナとスクリュ駆動部の接触面をリテーナ方向に望んだ断面を図8、図9に示す。第2の実施形態ではリテーナ50に長孔(リテーナ長孔56)を設けてある。また、リテーナ規制ボルト55は固定ブッシュ30に固定されているが、その先端はリテーナ50のリテーナ長孔56に挿入されている。その他の構造は図2の構造と同等である。リテーナ50のリテーナ長孔56はリテーナ50が少なくともスクリュ10の切り欠き12に嵌合する位置からスクリュ外径より外側になる位置までスライド可能な長さを持っている。
スクリュ脱着の作業としては第1の実施例と同様にリテーナ50の固定ブッシュ固定ボルト31の着け外しとリテーナ50のスライドだけで完了する。この時、第2の実施形態においてリテーナ50はリテーナ長孔56とリテーナ規制ボルト55によってスライドする量が制限されているため、リテーナ50が抜け落ちることなく前述したリテーナ脱落に起因する危険を回避できる。
以上より、第2の実施形態では第1の実施形態と同様にスクリュの脱着が容易に行えることに加えて、リテーナの脱落を防止可能となっている。
第2の実施形態として図7の様な構造を説明したが、図2に対する図3のように図7についてもスクリュ駆動部70の嵌合部71の底面71aとスクリュ10のスクリュの基部(根元)が接触していないような構造になっていてもよく、成形機で使用する動力の大きさとスクリュ10の位置制御の精度を考え選択すればよい。また、第2の実施形態ではリテーナ規制ボルト55を用いたがこの限りではなく、ボルトに代わりピンを用いてリテーナ50のスライドを規制する構造としても同様の効果が得られる。
伝達する力が大きくなると固定ブッシュ固定ボルト31のサイズを大きくしたり、本数を増やして固定ブッシュ30を締結する必要が生じてくる。その様な場合でもリテーナ50が固定ブッシュ固定ボルト31の配置に影響を受けにくい構造を第3の実施形態として図14に示す。第3の実施形態は前述した第2の実施形態の構造とほぼ同様で、図14では図7で示したリテーナ規制ボルト55が固定ブッシュ固定ボルト31に置き換わっている点のみ異なっている。
固定ブッシュ固定ボルト31はリテーナ50のリテーナ長孔56を貫通してスクリュ駆動部70と固定ブッシュ30を締結している。そのため、リテーナ50のリテーナ長孔56を通る固定ブッシュ固定ボルト31はリテーナ50のスライドを規制しているがリテーナ50は固定していない。例えば前述した第2の実施形態における図8の様な配置では、リテーナ規制ボルト55を固定ブッシュ固定ボルト31に置き換えることで最大10本の固定ブッシュ固定ボルト31を使用することができる。
従来の半月状のリテーナ50を使用できるようにした第4の実施形態を以下に説明する。第4の実施形態は構造は第1の実施形態と同等で固定ブッシュ30が図15に示すような形状になっている点のみ異なっている。本発明のスクリュ取り付け構造の実施形態の外観は図1と同様なのでここでは記載していない。なお、図15は固定ブッシュ30をスクリュ駆動部70の取り付け側から見た図である。
図15の固定ブッシュ30はガイド溝32に加えてスクリュ10の回転軸と同心でガイド溝32の幅Lより大きな直径φDなる円筒状空間34を備えている。このような形状の固定ブッシュ30を用いれば今まで述べてきた本発明の実施形態のリテーナ形状に加え、従来一般的に使用されている半月状のリテーナも使用することができる。ボルト孔37は固定ブッシュ固定ボルト31を挿通あるいはねじ込むボルト孔であり、ボルト孔36はリテーナ固定ボルト51を挿通あるいはねじ込むボルト孔である。
円筒状空間34はその外径φDがガイド溝32の幅Lより大きく作られているので、円筒状空間34に対応する外径を持つ半月状リテーナを用いればスクリュ動作時でもガイド溝32からリテーナ50が脱落することがなく使用可能である。半月状リテーナはスクリュ取り付け、取り外し時に固定ブッシュ30を外す必要が生じる反面、安価で製作できるので、スクリュ取り付け、取り外し時の作業性と部品価格に応じて使い分けることが可能となる。
なお、図15では固定ブッシュ30にリテーナ50のスライド用の係合部であるガイド溝32が形成されているため、円筒状空間34はスクリュ10の外周と固定ブッシュ30の内周面とで形成されている。これに対して、リテーナ50のスライド用の係合部がスクリュ駆動部70に形成されている場合には、円筒状空間34に対応する円筒状空間は、スクリュ10の外周とスクリュ駆動部70の内径面とで形成される。
また、第4の実施形態として第1の実施形態と同等の構造を用いて説明したが、第2、第3の実施形態でも図15と同様の形状の固定ブッシュ30を用いることで同じ効果を得ることができる。
また、リテーナの形状を工夫することで、スクリュ取り外し時にリテーナが脱落することを防止したり、固定ブッシュ固定ボルトのサイズを大きくしたり、本数を増やした場合でもリテーナと干渉し難いスクリュ取り付け構造が実現される。
11 スプライン
12 (スクリュ)切り欠き
13 スクリュ外周
30 固定ブッシュ
31 固定ブッシュ固定ボルト
32 (固定ブッシュ)ガイド溝
33 (固定ブッシュ)嵌合部
34 円筒状空間
35 スプライン
36 ボルト孔
37 ボルト孔
50 リテーナ
51 リテーナ固定ボルト
52 リテーナ固定用ボルト孔
53 リテーナ前側
54 リテーナ後側
55 リテーナ規制ボルト
56 リテーナ長孔
57 切り欠き
58 スクリュ挿通部
70 スクリュ駆動部
71 (スクリュ駆動部)嵌合部
71a 底面
Claims (3)
- スクリュに回転力および前後進力を伝達するスクリュ駆動部に前記スクリュを固定する射出成形機のスクリュ取り付け構造であって、
前記スクリュの基部の外周に係合溝を設け、該係合溝にスクリュの軸方向の移動を規制するためのリテーナを係合させると共に、
前記スクリュの基部を挿通するためのキーあるいはスプラインが設けられた孔を有し、前記スクリュの回転方向の移動を規制する固定ブッシュを前記スクリュ駆動部に固定したスクリュの取り付け構造において、
前記固定ブッシュ、前記スクリュ駆動部の何れか、あるいは前記固定ブッシュおよびスクリュ駆動部の双方に前記スクリュの回転軸に直交する方向に設けられた前記リテーナをスライドさせるためのガイド溝と、
該ガイド溝に前記リテーナを挿通し、該リテーナを前記固定ブッシュに固定する部材と該固定ブッシュを前記スクリュ駆動部に固定する部材を共に該固定ブッシュに設け、前記リテーナに長孔または切り欠きを設け、該長孔または切り欠きに挿通されるボルトまたはピンによって前記リテーナをスライドする方向に規制することを特徴とする射出成形機のスクリュ取り付け構造。 - 前記リテーナの長孔または切り欠きを通る前記ボルトが前記固定ブッシュを前記スクリュ駆動部に固定するボルトであることを特徴とする請求項1に記載の射出成形機のスクリュ取り付け構造。
- 前記係合溝のスクリュ外周側方向で前記スクリュと前記固定ブッシュあるいは前記スクリュと前記スクリュ駆動部の間に円筒状空間を備え、前記固定ブッシュのガイド溝の前記リテーナのスライド方向と直交する方向の幅が前記円筒状空間の外径より小さいことを特徴とする請求項1に記載の射出成形機のスクリュの取り付け構造。
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