本発明によるローラ組立体を走行ユニットに組み込まれた全方向移動体である倒立振子型移動体について、図1〜図8を参照して説明する。尚、上下、前後、左右の直交三次元座標軸を、移動体の移動方向に準じて図示のように定義する。
倒立振子型移動体は、図1、図2に示されているように、互いに連結された下部フレーム10と上部フレーム20とを有する。
下部フレーム10は走行ユニット40を支持している。走行ユニット40は、一輪式のものであり、内蔵のジャイロスコープ、荷重センサ等(図示省略)を用いた倒立振子制御のもとに、下部フレーム10と上部フレーム20の全体を起立姿勢に保ち、一輪車として前後左右、斜めの全方向の走行を担う。
下部フレーム10の左右両側には、左右のステップ14L、14Rが跳ね上げ式に格納可能に設けられている。図1は左右のステップ14L、14Rが下部フレーム10の左右両側に形成されたステップ格納部16L、16Rに格納された状態を、図2は左右のステップ14L、14Rがステップ格納部16L、16Rより水平姿勢に繰り出された状態を各々示している。
上部フレーム20の左右両側には左右の湾曲したサドルアーム22L、22Rによって左右個別型のサドル30L、30Rが格納可能に設けられている。また、上部フレーム20では、移動体持ち運び用のハンドル26が格納可能に設けられている。
サドル30L、30Rは、乗員の臀部、大腿部を左右個別に受け持つ乗員用座部であり、平面視で各々円盤状をなしている。図1は左右のサドル30L、30Rが上部フレーム20に左右方向に貫通形成された円筒状空間によるサドル格納部24に格納された状態を、図2は左右のサドル30L、30Rが各々サドルアーム22L、22Rによってサドル格納部24より水平姿勢に繰り出された状態を各々示している。
つぎに、走行ユニット40の詳細を、図3、図4を参照して説明する。下部フレーム10は左右方向に間隔をおいて互いに対向する左側壁部12Lと右側壁部12Rとを有する。走行ユニット40は下部フレーム10の左側壁部12Lと右側壁部12Rとの間に配置されている。
走行ユニット40は、円筒状の左右のマウント部材42L、42Rを有する。左右のマウント部材42L、42Rは、各々、取付ボルト44によって左側壁部12Lと右側壁部12Rの内側に固定装着されている。左右のマウント部材42L、42Rは、左右方向に延在する一つの中心軸線Aを共通の中心軸線としている。すなわち、左右のマウント部材42L、42Rは、中心軸線Aをもって互いに同心に下部フレーム10に固定されている。
左右のマウント部材42L、42Rは、各々、円筒部421L、421Rの外周に、左右の円環状のドライブディスク48L、48Rをクロスローラ軸受46L、46Rによって回転自在に支持している。クロスローラ軸受46L、46Rは、ラジアル荷重とアキシャル荷重(スラスト荷重)を受け持つことができるころがり軸受であり、マウント部材42L、42Rの円筒部421L、421Rの外周と、ドライブディスク48L、48Rの円筒部481L、481Rの内周とに各々ねじ締結された締結リング50、52によってマウント部材42L、42Rとドライブディスク48L、48Rに対してアキシャル方向の定位置に固定されている。
左右のドライブディスク48L、48Rは、各々、円筒部481L、481Rより大きい径の外側円環部482L、482Rを有している。外側円環部482L、482Rは、ドライブディスク48L、48Rの外周部をなしており、外側円環部482L、482Rには、図5に示されているように、ドライブディスク48L、48Rの中心軸線に対して平行でも直交でもない一つの仮想面に沿ったスロット49L、49Rが、ドライブディスク48L、48Rの円周方向に所定間隔、本実施例では等間隔をおいてドライブディスク48L、48Rの中心軸線を対称中心線として回転対称に、切削加工によって複数個形成されている。
各スロット49L、49Rには、支持軸54L、54Rによって左右のドライブローラ56L、56Rが各々回転可能に配置されている。ドライブローラ56L、56Rは、金属や硬質プラスチック等の高剛性材料により構成され、各々、支持軸54L、54Rの中心軸線周りに回転可能になっている。
支持軸54L、54Rは、図5、図6に示されているように、両端をスロット49L、49Rの側壁部47L、47Rにドリル加工あるいはミーリング加工によって貫通形成された軸受孔51に、鍔付きブッシュ53と共に挿入され、前述の仮想面を直交する方向に延在してドライブローラ56L、56Rの中心孔561を貫通し、ドライブローラ56L、56Rを支持している。なお、本実施例では、支持軸54L、54Rは、中心孔561に圧入されていることによりドライブローラ56L、56Rと一体回転し、軸受孔51に対して回転変位する。
なお、支持軸54L、54Rには、図6に示されているように、雌ねじ孔541が形成されている。雌ねじ孔541は支持軸54L、54Rの抜き取り時に用いられるもので、抜き取り工具150のシャンク部152に形成された雄ねじ部151を雌ねじ孔541にねじ係合させて抜き取り工具150によって支持軸54を引き抜くことができる。
支持軸54L、54Rの軸線方向は、軸受孔51の穿孔方向により決まる。軸受孔51は、ドライブディスク48L、48Rの中心軸線に対して平行でも直交でもない一つの仮想面を直交する方向に延在する中心軸線を有し、ドライブディスク48L、48Rの中心を対称中心とした回転対称位置に複数個形成されている。この軸受孔51の穿孔方向を、ドリル加工、ミーリング加工によって所要精度をもって保証することにより、各支持軸54L、54Rの軸線方向を所要精度をもって保証でき、ついては各ドライブローラ56L、56Rの配置姿勢を容易に高精度に設定することができる。
ドライブローラ56L、56Rの配置姿勢は、軸受孔51の中心軸線がドライブディスク48L、48Rの中心軸線に対して平行でも直交でもない一つの仮想面を直交する方向に延在していることにより、ドライブディスク48L、48Rの中心軸線に対して平行でも直交でもない一つの仮想面に平行な面に回転面を有する配置になる。
このように、ドライブローラ56L、56Rの支持部がドライブディスク48L、48Rに直接構成されていることにより、ドライブローラ56L、56Rをドライブディスク48L、48Rに取り付けるためのブラケットが不要になる。
このことは、部品点数、組み付け工数の削減に大きく寄与する。また、ドライブローラ56L、56Rの配置姿勢は、ブラケットの組み付け精度によらず、軸受孔51の加工精度により決まり、この加工精度は現在の工作機械によって十分保証できるから、多数のドライブローラ56L、56Rを、ブラケットの組み付け誤差を受けることなく、容易に一様に高精度に配置することができる。
鍔付きブッシュ53は、二硫化モリブデン、グラファイト等の固体潤滑剤を含む固体潤滑焼結金属により構成されている。鍔付きブッシュ53の鍔部は、ドライブローラ56L、56Rの側面と側壁部47L、47Rの側面との間にあり、ドライブローラ56L、56Rの軸線方向のがた付きを低減あるいは無くしている。ドライブローラ56L、56Rの側面、つまり、ドライブローラ56L、56Rが鍔付きブッシュ53の鍔部と摺接する摺動面にはフッ素樹脂による表面層562がコーティング処理等によって形成されている。
このように、鍔付きブッシュ53が固体潤滑焼結金属により構成されていることにより、ドライブローラ56L、56Rの回転運動における潤滑性能が向上し、併せて、フッ素樹脂による表面層562が形成されていることにより、ドライブローラ56L、56Rの回転が低摩擦抵抗で円滑に行われるようになる。
ここで見かたを変えると、ドライブローラ56L、56Rと軸受片をなす側壁部47L、47Rとは、互いに同等の幅を有してドライブディスク48L、48Rの円周廻りに交互に存在している。このことにより、一つの側壁部47L、47Rは、各々、円周方向両側に位置する二つのドライブローラ56L、56Rの軸受部をなしている。従って、側壁部47L、47Rの各々には、ドライブディスク48L、48Rの軸線方向に異なる二つの位置に各々軸受孔51が穿設されている。
この構成により、ドライブローラ56L、56Rを、最小限の軸受ブラケット構成で、ドライブディスク48L、48Rの円周廻りに容易に高密度に配置することが可能になる。
このことは、最下部分において接地している後述の主輪84のドリブンローラ92には必ず少なくとも一組の左右のドライブローラ56L、56Rが接触し、ドライブローラ56L、56Rより少なくとも接地状態にあるドリブンローラ92に常に推進力(回転力)が与えられる設定にすることに大きく寄与する。
左右の支持軸54L、54Rは、左右対称の配置で、各々、中心軸線Aに対してねじれの関係をなす軸線方向に延在することになる。これにより、左右の支持軸54L、54Rにより支持された左右のドライブローラ56L、56Rは、左右対称で、はすば歯車の歯すじと同様の傾斜配置になる。
ドライブローラ56L、56Rは、軸受孔51の中心軸線Crが隣接するドライブローラ56L、56Rを通過する高密度な配置になっている(図5、図13参照)。このため、ドライブローラ56L、56Rの組み付け上、ドライブローラ56L、56Rのうち、一つは、図7、図8に示されている駒付きドライブローラ56Xになっている。駒付きドライブローラ56Xを用いたドライブローラ56L、56Rの組み付けについては、後述する。
駒付きドライブローラ56Xは、隣接するドライブローラ56L、56Rのための軸受孔51に支持軸支持軸54L、54Rを挿入するために、当該軸受孔51の中心軸線の一方の側より当該軸受孔51にアクセス可能にする軸脱着作業用開口561Xを有し、軸脱着作業用開口561Xと補形をなす補填駒59により軸脱着作業用開口561Xを埋められる構造になっている。補填駒59の取り付けは、補填駒59の係合片591を駒付きドライブローラ56Xの係合スリット562Xに着脱可能に圧入することにより行われる。
ドライブディスク48L、48Rには、図4、図5に示されているように、駒付きドライブローラ56Xの配置位置を示す目視可能な識別マーク55が付与されている。識別マーク55は、ペイント、刻印等、外部より目視で目視できるものであればよい。識別マーク55は、ドライブローラ56L、56Rの分解時に、駒付きドライブローラ56Xが、どこにあるかを作業者に知らせるに役立つ。
左右のドライブディスク48L、48Rは、軸線方向に互いに近付く方向に延出した円筒延長部483L、483Rを有する。円筒延長部483Lと483Rとは、クロスローラ軸受58によって相対回転可能に連結されている。クロスローラ軸受58は、ラジアル荷重とアキシャル荷重(スラスト荷重)を受け持つことができるころがり軸受であり、インナレースをもって一方の円筒延長部483Rの外周面に嵌合し、アウタレースをもって他方の円筒延長部483Lの内周面に嵌合している。クロスローラ軸受58のインナレースは円筒延長部483Rの外周にねじ締結された締結リング62によって円筒延長部483Rに軸線方向に固定され、クロスローラ軸受58のアウタレースは円筒延長部483Lの外周にねじ締結された締結リング60によって円筒延長部483Lに軸線方向に固定されている。
クロスローラ軸受58は、左右のドライブディスク48L、48Rを相対回転可能に連結する連結機構の主要部をなしており、上述の組み付けにより、左右のドライブディスク48L、48Rの径方向と軸線方向の双方の相対変位を規制(禁止)している。換言すると、クロスローラ軸受58は、左右のドライブディスク48L、48Rを、相対回転可能に同心に連結し、且つ互いに軸線方向に変位できないようにしている。
これにより、左右のドライブディスク48L、48Rの相互の同心精度が保証されると共に、左右のドライブディスク48L、48Rの軸線方向の離間量が所定値に不変設定される。
左右のドライブディスク48L、48Rの円筒部481L、481Rの内側、つまり、左右のドライブディスク48L、48Rの中心部分に画定された円筒状の空間部484L、484Rには左右の電動モータ64L、64Rが配置されている。左右の電動モータ64L、64Rは、ステータコイル(図示省略)等を内蔵したアウタハウジング66L、66Rをボルト68によって左右のマウント部材42L、42Rに固定されている。左右の電動モータ64L、64Rは、ともに中心軸線Aと同心配置で、軸線方向に互いに近付く方向に延出したロータ軸70L、70Rを有する。
左右の電動モータ64L、64Rは、各々、左右のドライブディスク48L、48Rの一つの半径方向で見て、左右のドライブローラ56L、56Rと軸線方向に重複する部分を含んでいる。換言すると、中心軸線Aと平行な一つの投影面において、左右の電動モータ64L、64Rと左右のドライブローラ56L、56Rは、軸線方向に重複する部分を含んでいる。
ロータ軸70L、70Rの先端部には、左右の波動歯車装置72L、72Rのウェーブプラグ74L、74Rが固定連結されている。波動歯車装置72L、72Rは、周知の構造のものであり、左右の電動モータ64L、64Rと共に中心軸線Aと同心配置で、入力部材である楕円形輪郭をした高剛性のウェーブプラグ74L、74Rと、ウェーブプラグ74L、74Rの外周面に嵌め込み装着されたウェーブベアリング76L、76Rと、ウェーブベアリング76L、76Rの外周面に摩擦係合し外周面に外歯を有するフランジ付き薄肉円筒形状の可撓性外歯部材78L、78Rと、可撓性外歯部材78R、78Lの外歯と噛合する内歯を有する高剛性のリング形状の内歯部材80L、80Rとを有する。内歯部材80L、80Rは、出力部材であり、ボルト82によって左右のドライブディスク48L、48Rに固定連結されている。
これにより、左右の電動モータ64L、64Rの出力回転は、左右の波動歯車装置72L、72Rによって減速され、左右のドライブディスク48L、48Rに個別に伝達される。
左右のドライブディスク48L、48Rは、左右の複数個のドライブローラ56L、56Rによる円環状ローラ群によって左右両側より挟むようにして主輪84を中心軸線Aと同一あるいは近似の中心軸線上に支持している。換言すると、主輪84は、左右の複数個のドライブローラ56L、56Rによる円環状配置のローラ群によって左右両側より挟まれるようにして左右のドライブディスク48L、48Rより、中心軸線Aと同一あるいは近似の中心軸線上に無軸で支持され、自身の中心周りに回転(公転)可能になっている。
主輪84は、角柱体により構成された無端円環状の環状体86と、環状体86の外周に嵌合装着された複数個のインナスリーブ88と、各インナスリーブ88の外周にボール軸受90によって回転可能に取り付けられた複数のドリブンローラ92とにより構成されている。
ドリブンローラ92は、接地するローラであり、各々、ボール軸受90と嵌合する金属製円筒部92Aと、金属製円筒部92Aの外周に加硫接着されたゴム製円筒部92Bとにより構成されている。ドリブンローラ92は、インナスリーブ88と共に環状体86の環方向(周方向)に複数個あり、自身の配置位置における環状体86の接線方向の軸線周りに回転(自転)可能になっている。
左右のドライブローラ56L、56Rは、外周面をもって主輪84の実質的な外周面をなすドリブンローラ92のゴム製円筒部92Bの外周面に接触し、摩擦によってドライブディスク48L、48Rの回転(推進力)をドリブンローラ92に伝達する。
ドリブンローラ92と左右のドライブローラ56L、56Rとの関係(個数)は、最下部分において接地しているドリブンローラ92には必ず少なくとも一組の左右のドライブローラ56L、56Rが接触し、ドライブローラ56L、56Rより、少なくとも接地状態にあるドリブンローラ92に常に推進力(回転力)が与えられる設定になっている。
左右のドライブローラ56L、56Rは、各々、主輪84の中心軸線(輪中心)周りの回転方向、より正確には、各ドライブローラ56L、56Rのドリブンローラ92との接触箇所における接線方向に対して、直交および平行の何れでもない方向に延在する中心軸線周りに回転自在に配置されている。
つまり、左右のドライブローラ56L、56Rは、各々、主輪84の中心軸線周りの回転方向(公転方向)に対して傾斜し、ドライブディスク48L、48Rの回転軸線に対してねじれの関係をなす回転軸線を有し、ドライブディスク48L、48Rの中心軸線に対して平行でも直交でもない一つの仮想面に沿った回転面を有する配置になっている。
換言すると、左右の各ドライブローラ56L、56Rの中心軸線は、ドリブンローラ92の中心軸相当の環状体86の半径線に対してある角度をもって傾いていると同時に、環状体86の中心線が接する仮想平面に対してある角度をもって傾いている。この三次元的な中心軸線の傾きにより、ドライブディスク48L、48Rにおけるドライブローラ56L、56Rの配置は、喩えると、ある角度の円錐面上に置かれた「はす歯傘歯車」の歯(歯すじ)の傾きに似ている。このことについて、より詳細な説明が必要ならば、国際公開2008/139740号パンフレットを参照されたい。
本実施例では、左右の電動モータ64L、64Rによって左右のドライブディスク48L、48Rの回転方向あるいは(および)回転速度を互いに違えると、ドライブディスク48L、48Rの回転力による円周(接線)方向の力に対し、この力に直交する向きの分力が左右のドライブローラ56L、56Rとドリブンローラ92との接触面に作用する。この分力により、ドリブンローラ92の外表面には、これを捩る力が作用し、ドリブンローラ92が自身の中心軸線周りに回転(自転)することになる。
このドリブンローラ92の回転は、左右のドライブディスク48L、48Rの回転速度差によって定まる。例えば、左右のドライブディスク48L、48Rを互いに同一速度で逆向きに回転させると、主輪84は全く公転せず、ドリブンローラ92の自転だけが生じる。これにより、主輪84には左右方向の走行力が加わることになり、倒立振子移動体は、左右方向に移動(真横移動)する。
これに対し、左右のドライブディスク48L、48Rの回転方向および回転速度が同一である場合には、ドリブンローラ92が自転することがなく、主輪84が公転し、倒立振子移動体10は、前進(直進)あるいは後進する。
このように、左右の電動モータ64L、64Rによって左右のドライブディスク48L、48Rの回転速度および回転方向を独立に制御することにより、倒立振子移動体は、路面上で全方向へ移動することができる。
つぎに、本発明によるローラ組立体の組立方法および組立用治具の一つの実施例を、図9〜図12を参照して説明する。本実施例におけるローラ組立体は、左右のドライブディスク48L、48Rと、支持軸54L、54Rによるドライブローラ56L、56Rとの組立体である。
ローラ組立体の組み立ては、汎用の圧入機100に組立用治具110を取り付けて行われる。圧入機100は、上面が水平な被加工物載置面102になっているワークテーブル104を有する。被加工物載置面102は、X軸、Y軸、Z軸の直交3軸の機械座標系において、X軸とY軸とがなすX−Y平面である。
圧入機100は、被加工物載置面102に対して直交する軸線方向であるZ軸方向に移動可能な圧入工具106を有する。圧入工具106は、図示されていないが、圧入機100の機枠にZ軸方向に移動可能に設けられ、手動ハンドルによってZ軸方向に動かされる。なお、圧入工具106は、手動以外に、流体圧アクチュエータや電動送りねじ、電動式ラック&ピニオン等によって動力駆動されてもよい。
組立用治具110は、平板による治具基盤112を有し、治具基盤112を被加工物載置面102上に載置され、所定のX−Y座標位置に固定される。治具基盤112上にはアングルブロック114が固定装着されている。
アングルブロック114は、X−Z面にもY−Z面にも傾斜した上面116を有する。被加工物載置面102に対する上面116の三次元的な傾斜は、ドライブディスク48L、48Rの回転軸線(中心軸線)に対するドライブローラ56L、56Rの回転軸線、つまり支持軸54L、54Rの中心軸線のねじれの関係に準拠に定められている。上面116には、当該上面116に対して直角な中心軸線をもって円盤状のワーク保持部材118が固定装着されている。ワーク保持部材118にはねじ120によって円盤状のワーク固定部材122が着脱可能に取り付けられている。
ワーク保持部材118とワーク固定部材122は、当該両者によってドライブディスク48Lあるいは48Rを軸線方向に挟み込むようにして当該ドライブディスク48Lあるいは48Rの中心軸線周りに回転可能に、且つ着脱交換可能に支持する。
これにより、アングルブロック114は、一つの回転位置に位置した軸受孔51の中心軸線が圧入工具106の移動軸線、即ち、垂直なZ軸に一致する傾斜姿勢で、ドライブディスク48Lあるいは48Rを中心軸線周りに回転可能に支持する。
アングルブロック114に取り付けられたドライブディスク48Lあるいは48Rの一つのスリット49Lあるいは49Rの両側にある一組の軸受孔51の中心軸線は、上述の上面116の三次元的な傾斜により、ドライブディスク48Lあるいは48Rの中心軸線周りの回転位置に応じて、垂直なZ軸に一致する。しかも、組立用治具110の治具基盤112に対する固定位置(X−Y座標位置)の位置決めによって、上述の一組の軸受孔51の中心と圧入工具106の中心とが同心に合致する。これにより以降、圧入工具106の中心のX−Y座標位置を、圧入座標位置と云う。
治具基盤112上にはドライブローラ支持部材124が設けられている。ドライブローラ支持部材124は、治具基盤112に形成されたX軸方向の直線ガイド部126に摺動可能に係合し、圧入座標位置と同じ座標位置(ドライブローラ圧入位置)とドライブローラ圧入位置より離れた退避位置との間にスライド可能になっている。
ドライブローラ支持部材124は、ドライブディスク48Lあるいは48Rの外側円環部482L、482Rとの干渉を避けるための切欠部129を含む略半円筒状のポスト部128を有する。
ポスト部128の上周縁は、全周に亘ってL形横断面形状になっていて、ドライブローラ圧入位置において、ドライブディスク48Lあるいは48Rのスリット49L、49Rに入れられたドライブローラ56L、56Rの外周縁部(略半周)を取り囲み、ドライブローラ56L、56RのX−Y座標の位置決めを行う竪壁による周縁部131と、X−Y平面と平行で、ドライブローラ56L、56Rの外周縁部を載置され、X−Y圧入反力を受け持つ載置面130とを有する。
つぎに、ローラ組立体の組立方法の組み立て手順について説明する。この組み立て手順は左右のローラ組立体において同じであるので、ここでは左側のローラ組立体について説明する。
まず、図10に示されているように、ワーク保持部材118とワーク固定部材122によってドライブディスク48Lをアングルブロック114に回転可能に取り付ける。そして、ドライブディスク48Lのスリット49Lにドライブローラ56Lを入れる。
つぎに、ドライブローラ支持部材124をドライブローラ圧入位置に移動させ、ドライブディスク48Lを回転(図10で見て反時計廻り方向に回転)させてスリット49Lに入れられたドライブローラ56Lの外周縁部をドライブローラ支持部材124の載置面130上に載置する。
この状態では、ドライブローラ56Lは、外周縁部をドライブローラ支持部材124の周縁部131によって取り囲まれることにより、X−Y座標の位置決めを行われ、ドライブローラ56Lの中心軸線の延在方向が上下方向、つまりZ軸方向になると共に、当該ドライブローラ56Lを入れられたスリット49Lの両側の軸受孔51の中心軸線もZ軸方向になり、しかも、圧入座標位置においてドライブローラ56Lの中心と軸受孔51の中心とが同心に合致する。
つぎに、支持軸54Lを垂直姿勢でハンドリングしてZ軸方向の軸受孔51に位置合わせし、図11、図12(a)に示されているように、圧入工具106をZ軸方向に降下移動させ、支持軸54Lを、軸受孔51と当該軸受孔51に合致した中心孔561に押し込む。
つぎに、図12(b)に示されているように、圧入工具106をZ軸方向に上昇移動させ、その後に、図12(c)に示されているように、ドライブローラ支持部材124をドライブローラ圧入位置より退避位置へ移動させ、ドライブディスク48Lが回転できる状態にする。これにより、一つのドライブローラ56Lの組み付けが完了する。
支持軸54Lはドライブローラ56Lの中心孔651に対し圧入され、ドライブローラ56Lに作用する圧入荷重は、ドライブローラ支持部材124によって直接受け持たれる。これにより、ドライブローラ56Lに過大な曲げ歪みを生じさせる荷重がかかることがなく、圧入荷重によってドライブローラ56Lが永久変形することがない。
一つのドライブローラ56Lの組み付けが完了すれば、ドライブディスク48Lのつぎのスリット49Lにドライブローラ56Lを入れ、ドライブローラ支持部材124をドライブローラ圧入位置させ、ドライブディスク48Lを回転させてつぎのスリット49Lに入れられたドライブローラ56Lの外周縁部をドライブローラ支持部材124の載置面130上に載置し、同様に、圧入工具106のZ軸移動によって支持軸54Lの押し込みを行う。以降、一つずつドライブローラ56Lの組み付けを繰り替し行う。
上述したように、圧入機100の被加工物載置面102上に配置されたアングルブロック114によって、一つの回転位置にある軸受孔51の中心軸線が、圧入機100の圧入工具106の移動軸線(Z軸)に一致する傾斜姿勢でドライブディスクドライブディスク48L、48Rを当該ドライブディスク48L、48Rの中心軸線周りに回転可能に支持するから、軸受孔51、中心孔561に対する支持軸54L、54Rの押し込みを、Z軸移動の圧入工具106によって行うことかできる。
これにより、汎用の圧入機100でも、ドライブローラ56L、56Rの組み付けを、効率よく容易に行えるようになり、高価な専用機を用いることなく、生産性よく、ローラ組立体を組み立てることができる。
つぎに、駒付きドライブローラ56Xを含むドライブローラ56Lの組み付け順序の各例を、図13〜図17を参照して説明する。なお、図13〜図17において、駒付きドライブローラ56Xはハッチング入りの矩形により示されている。また、図13〜図17において、「#」に続く数字は、ドライブローラの組み付け順番を示している。
図13に示されている例では、最初に、駒付きドライブローラ56X(#1)を、識別マーク55(図4、図5参照)により示される部位に、組み付ける。この駒付きドライブローラ56Xの組み付けは、補填駒59を取り付けていない状態で行う。
そして、駒付きドライブローラ56Xの組み付け位置を起点として、図13で見て時計廻り方向に、ドライブローラ56L(#2〜#N)を、一つずつ順次、隣り合うもので間(あいだ)を空けることなく組み付ける。駒付きドライブローラ56Xの一方の側(反時計廻り方向の側)に隣接するドライブローラ56は、最後に組み付けられるドライブローラ#Nである。
最後のドライブローラ#Nを除くドライブローラ#1〜#(N−1)の支持軸54Lの押し込み(挿入)は、各々、図13で見て時計廻り方向進み側より行う。最後のドライブローラ#Nの支持軸54Lの押し込み(挿入)は、駒付きドライブローラ56Xの側から、駒付きドライブローラ56Xの軸脱着作業用開口561Xによって軸受孔51の中心軸線の方向より該当する軸受孔51にアクセス可能にした状態で行う。つまり、軸脱着作業用開口561Xを通して最後のドライブローラ#Nの支持軸54Lの押し込み(挿入)を時計廻り方向進み側より行う。
この支持軸54Lの押し込み(挿入)完了後に、駒付きドライブローラ56Xに補填駒59を取り付ける。これにより、一つのローラ組立体の組み立てが完了する。
図14に示されている例では、最初に、駒付きドライブローラ56X(#1)を、識別マーク55により示される部位に、組み付ける。この駒付きドライブローラ56Xの組み付けは、補填駒59を取り付けていない状態で行う。
そして、駒付きドライブローラ56Xの組み付け位置を起点として、図14で見て反時計廻り方向に、ドライブローラ56L(#2〜#N)を、一つずつ順次、隣り合うもので間(あいだ)を空けることなく組み付ける。駒付きドライブローラ56Xの一方の側(反時計廻り方向の側)に隣接するドライブローラ56は、最後に組み付けられるドライブローラ#Nである。
最後のドライブローラ#Nを除くドライブローラ#1〜#(N−1)の支持軸54Lの押し込み(挿入)は、各々、図14で見て時計廻り方向遅れ側より行う。最後のドライブローラ#Nの支持軸54Lの押し込み(挿入)は、駒付きドライブローラ56Xの側から、駒付きドライブローラ56Xの軸脱着作業用開口561Xによって軸受孔51の中心軸線の方向より該当する軸受孔51にアクセス可能にした状態で行う。つまり、軸脱着作業用開口561Xを通して最後のドライブローラ#Nの支持軸54Lの押し込み(挿入)を時計廻り方向遅れ側より行う。
この支持軸54Lの押し込み(挿入)完了後に、駒付きドライブローラ56Xに補填駒59を取り付ける。これにより、一つのローラ組立体の組み立てが完了する。
図15に示されている例では、最初に、識別マーク55に示される部位の隣にドライブローラ56L(#1)を組み付ける。つぎに、ドライブローラ#1の時計廻り方向進み側に隣接し、識別マーク55により示される部位に、駒付きドライブローラ56X(#2)を組み付ける。この駒付きドライブローラ56Xの組み付けは、補填駒59を取り付けていない状態で行う。
そして、ドライブローラ#1の組み付け位置を起点として、図15で見て反時計廻り方向に、ドライブローラ56L(#3〜#N)を、一つずつ順次、隣り合うもので間(あいだ)を空けることなく組み付ける。駒付きドライブローラ56Xの一方の側(時計廻り方向の側)に隣接するドライブローラ56は、最後に組み付けられるドライブローラ#Nである。
最初のドライブローラ#1と、駒付きドライブローラ#2支持軸54Lの押し込み(挿入)は、各々、図15で見て時計廻り方向進み側より行う。最後のドライブローラ#Nと、最初のドライブローラ#1と、駒付きドライブローラ#2を除くドライブローラ#3〜#(N−1)の支持軸54Lの押し込み(挿入)は、各々、図15で見て時計廻り方向遅れ側より行う。最後のドライブローラ#Nの支持軸54Lの押し込み(挿入)は、駒付きドライブローラ56Xの側から、駒付きドライブローラ56Xの軸脱着作業用開口561Xによって軸受孔51の中心軸線の方向より該当する軸受孔51にアクセス可能にした状態で行う。つまり、軸脱着作業用開口561Xを通して最後のドライブローラ#Nの支持軸54Lの押し込み(挿入)を時計廻り方向遅れ側より行う。
この支持軸54Lの押し込み(挿入)完了後に、駒付きドライブローラ56Xに補填駒59を取り付ける。これにより、一つのローラ組立体の組み立てが完了する。
図16に示されている例では、最初に、ドライブローラ56L(#1)を組み付け、ドライブローラ#1の組み付け位置を起点として、図16で見て時計廻り方向に、ドライブローラ56L(#2〜#N−2)を、一つずつ順次、隣り合うもので間(あいだ)を空けることなく組み付ける。
最後のドライブローラ#Nより二つ前のドライブローラ#N−2の組み付けが完了すれば、つぎに、ドライブローラ#N−2の時計廻り方向進み側に隣接する部位に、駒付きドライブローラ56X(#N−1)を組み付ける。この駒付きドライブローラ56Xの組み付けは、補填駒59を取り付けていない状態で行う。なお、この駒付きドライブローラ#N−1の組み付け部位は、丁度、識別マーク55により示される部位になるように、最初のドライブローラ#1の組み付け部位を設定しておく。そして、駒付きドライブローラ#N−1と最初のドライブローラ#1との間に、つまり、駒付きドライブローラ56Xの一方の側(時計廻り方向の側)に隣接する部位に、最後のドライブローラ#Nを組み付ける。
最後のドライブローラ#Nを除くドライブローラ#1〜#(N−1)の支持軸54Lの押し込み(挿入)は、各々、図16で見て時計廻り方向進み側より行う。最後のドライブローラ#Nの支持軸54Lの押し込み(挿入)は、駒付きドライブローラ56Xの側から、駒付きドライブローラ56Xの軸脱着作業用開口561Xによって軸受孔51の中心軸線の方向より該当する軸受孔51にアクセス可能にした状態で行う。つまり、軸脱着作業用開口561Xを通して最後のドライブローラ#Nの支持軸54Lの押し込み(挿入)を時計廻り方向遅れ側より行う。
この支持軸54Lの押し込み(挿入)完了後に、駒付きドライブローラ56Xに補填駒59を取り付ける。これにより、一つのローラ組立体の組み立てが完了する。
図17に示されている例では、最初に、ドライブローラ56L(#1)を組み付け、ドライブローラ#1の組み付け位置を起点として、図17で見て反時計廻り方向に、ドライブローラ56L(#2〜#m−1)を、一つずつ順次、隣り合うもので間(あいだ)を空けることなく組み付ける。
ドライブローラ#m−の組み付けが完了すれば、つぎに、ドライブローラ#m−1の時計廻り方向遅れ側に隣接する部位に、m個のドライブローラとして駒付きドライブローラ56X(#m)を組み付ける。この駒付きドライブローラ56Xの組み付けは、補填駒59を取り付けていない状態で行う。なお、この駒付きドライブローラ#mの組み付け部位は、丁度、識別マーク55により示される部位になるように、最初のドライブローラ#1の組み付け部位を設定しておく。
つぎに、ドライブローラ#1の組み付け位置を起点として、図17で見て時計廻り方向に、ドライブローラ56L(#m+1〜#N)を、一つずつ順次、隣り合うもので間(あいだ)を空けることなく組み付ける。これにより、駒付きドライブローラ56Xの一方の側(反時計廻り方向の側)に隣接する部位に、最後のドライブローラ#Nが組み付けられる。
ドライブローラ#1〜#mの支持軸54Lの押し込み(挿入)は、各々、図17で見て時計廻り方向遅れ側より行い、ドライブローラ#m+1〜#Nの支持軸54Lの押し込み(挿入)は、各々、図17で見て時計廻り方向進み側より行う。最後のドライブローラ#Nの支持軸54Lの押し込み(挿入)は、駒付きドライブローラ56Xの側から、駒付きドライブローラ56Xの軸脱着作業用開口561Xによって軸受孔51の中心軸線の方向より該当する軸受孔51にアクセス可能にした状態で行う。つまり、軸脱着作業用開口561Xを通して最後のドライブローラ#Nの支持軸54Lの押し込み(挿入)を時計廻り方向進み側より行う。
この支持軸54Lの押し込み(挿入)完了後に、駒付きドライブローラ56Xに補填駒59を取り付ける。これにより、一つのローラ組立体の組み立てが完了する。
上述の組み付け順序において共通して云えることは、駒付きドライブローラ56Xの一方の側に隣接するドライブローラ56L以外のその他のドライブローラ56Lの支持軸54Lの挿入を隣り合うもの同士で順次行い、その他のドライブローラ56Lの支持軸54Lの挿入完了後に、補填駒59が外された状態で、駒付きドライブローラ56Xの一方の側に隣接するドライブローラ56Lの支持軸54Lの挿入を軸脱着作業用開口561Xを通して行い、全ての支持軸54Lの挿入完了後に補填駒59を駒付きドライブローラ56Xに取り付けることである。
これにより、ドライブローラ54Lがドライブディスク48Lに高密度に配置されたことによって、軸受孔51の中心軸線Crが隣接するドライブローラ54Lを通過する配置になっても、複数個のドライブローラ54Lの組み付けにおいて、全てのドライブローラ54Lの組み付けを、他より干渉されることなく適切に行える。
なお、ドライブローラ54Lの取り外し(ローラ組立体の分解)は、上述の組み付け順序と逆の順序で行われればよい。