JP5233571B2 - ゴルファーの分類装置および分類方法 - Google Patents
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Description
例えば、スイング中のシャフト部の変形挙動を測定するシャフト部挙動測定手段と、シャフト部のEI分布を算出するシャフト部EI算出手段と、スイング中のシャフト部の変形形状を計算するシャフト部形状計算手段とを有する第1解析システムと、ゴルファーのスイングを解析分類するスイング分類手段を有する第2解析システムとを備え、上記スイング中の上記シャフト部の変形挙動を解析すると共に、上記ゴルファーのスイングを分類し、上記ゴルファーにとってヘッドスピードが最適なシャフト部を選定する方法が提案されている(特許文献1)。
この従来技術では、シャフト部形状計算手段においてグリップ部の撓み、撓み角度をゼロとする拘束条件を付加しており、言い換えると、ゴルフクラブのグリップ部を剛拘束(完全拘束)した状態でシミュレーションしている。
ところが、シニアや女子など非力なゴルファー、あるいは、グリップ部スピードの遅いリストターンタイプのゴルファーの場合には、予測したヘッドスピードと、実測したヘッドスピードとの間に大きな差が生じるものとなっている。
これは、ゴルフクラブを剛拘束でモデル化したため、正確なゴルフクラブ挙動を再現できないことが原因と考えられる。
したがって、ヘッドスピードの高いリストターンタイプのゴルファーではヘッドスピードが過小に予測され、その結果、グリップ部の曲げ剛性が低いゴルフクラブを選択するといったように間違ったフィッティングを行ってしまうという問題があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、最適なゴルフクラブを選択する上で有利なゴルファーの分類装置および分類方法を提供することにある。
また本発明は、人がゴルフクラブのグリップ部を把持する力の度合いをグリップ拘束と定義した場合に、前記グリップ拘束の強弱に応じてゴルファーのタイプを分類するゴルファーの分類装置であって、有限要素で離散化した前記ゴルフクラブのモデルを作成する際に、前記グリップ部のモデルであるグリップモデルと前記グリップ部に接続するシャフト部のモデルであるシャフトモデルとを一体化した剛拘束モデルを用いる剛拘束モデル作成手段と、有限要素で離散化した前記ゴルフクラブのモデルを作成する際に、前記グリップモデルと前記シャフトモデルとを、前記グリップ部を拘束したときの固有振動数が前記剛拘束モデルに対応する固有振動数に比べて低下するようにパラメータ値を定めた連結要素で連結した軟拘束モデルを用いる軟拘束モデル作成手段と、ゴルフスウィングのアドレスの状態からバックスウィングの状態、トップの状態およびダウンスウィングの状態を経てインパクトの状態に至る前記グリップ部の動きを該グリップ部の位置と向きによって表した時系列情報を、前記剛拘束モデルにおける前記グリップ部に対応する部分に境界条件として与えることで、ゴルフクラブの動的挙動を演算してスウィングを再現する第1の再現手段と、前記第1の再現手段で得られた前記動的挙動の演算結果からゴルフクラブの特性物理量を剛拘束モデルに対応する第1の特性物理量として算出する第1の算出手段と、前記時系列情報を、前記軟拘束モデルにおける前記グリップ部に対応する部分に境界条件として与えることで、ゴルフクラブの動的挙動を演算してスウィングを再現する第2の再現手段と、前記第2の再現手段で得られた前記動的挙動の演算結果からゴルフクラブの特性物理量を軟拘束モデルに対応する第2の特性物理量として算出する第2の算出手段と、前記第1の特性物理量と前記第2の特性物理量との差分の絶対値の大小に応じて前記グリップ拘束の強弱を判定し、該判定結果に基づいてゴルファーのタイプを分類する分類手段とを備えることを特徴とする。
図1は、ゴルファーの分類装置100(以下分類装置100という)の全体構成を示すブロック図である。
図1に示すように、分類装置100は、計測システム20および主装置60を含んで構成されている。
計測システム20は、ゴルフクラブのグリップ部36の動きをグリップ部36の位置と向きによって表した3次元時系列データを生成し主装置60に供給する。
主装置60は、3次元時系列データを用いて2種類のゴルフクラブモデルによるゴルフスウィングを再現する演算をそれぞれ行う。
そして、主装置60は、それら2つの演算結果からゴルファーの特徴を示す特性物理量を演算し、その特性物理量に基づいてゴルファーの分類を行うと共に、その分類結果に基づいて最適なゴルフクラブの選択を行う。
次に、計測システム20について詳細に説明する。
図1に示すように、計測システム20は、トランスミッタ20aと、レシーバ20bと、コントローラ20cと、後述するヘッドスピード測定装置21とを含んで構成されている。
トランスミッタ20aは、ゴルフクラブ30のグリップ部36を把持して行うゴルフスウィング中のグリップ部36の移動範囲内に、強さと方向が既知の分布を持つ磁場を形成するものである。
レシーバ20bは、グリップ部36の端部に固定され、磁場を感知することにより、基準位置に対する3次元位置とオイラー角の情報を含んだ信号を出力するものであり、磁気センサで構成されている。
コントローラ20cは、レシーバ20bから供給される前記信号に基づいてグリップ部36の3次元位置(xm、ym、zm)の時系列データとグリップ部36のオイラー角(θy、θp、θr)の時系列データとを生成するものである。
一方、移動および回転するグリップ部36に固定されたレシーバ20bが、トランスミッタ20aによって作られる3種類の磁場内の位置および向きに対応して磁気を感知して合計9つの出力電圧を出力する。
計測システム20は、それらの出力電圧からコントローラ20cにおいてデータ処理がなされてレシーバ20bの3次元位置と向き(オイラー角)のデータを得るように構成されている。
上述したように、計測システム20は、所定の磁場を形成するトランスミッタ20aと、この磁場の強さや方向に応じて3軸方向の出力電圧を発生するレシーバ20bと、コントローラ20cとを有して構成される。
コントローラ20cは、トランスミッタ20aに所定の3種類の磁場を順次発生する駆動信号を生成するとともに、レシーバ20bから出力された信号を検出し、検出された信号よりデータ処理を行って、所定の位置、例えばトランスミッタ20aの位置を基準位置とする。
そして、コントローラ20cは、お互いに直交する3方向を基準方向とする3次元位置座標(xm,ym,zm)と、所定の基準方向、例えばX,Y,Z座標軸方向に対するレシーバ20bの向きを表す姿勢角度、すなわちヨー角、ピッチ角およびロール角(以降では、オイラー角(θy,θp,θr)と表す)の時系列データを演算して出力する。
コントローラ20cは、3種類の磁場を順次発生する駆動信号を生成する駆動回路20dと、レシーバ20bからの出力された信号を検出する検出回路20eと、駆動回路20dおよび検出回路20eの制御を行い、検出回路20eから送られる信号よりレシーバ20bの3次元位置とオイラー角を求める制御ユニット20fによって構成される。
トランスミッタ20aは駆動回路20dに、レシーバ20bは検出回路20eに、各々接続される。
なお、グリップ部36に固定されたレシーバ20bの基準位置に対する3次元位置座標(xm,ym,zm)と基準方向に対するオイラー角(θy,θp,θr)の時系列データは以下のようにして得られる。
各ループ状コイルは、励磁のたびに各々異なる磁場を発生し、この磁場に基づいてレシーバ20bの3軸方向に巻かれた3つのループ状コイルに各々独立な電圧を発生させる。
この電圧は、トランスミッタ20aの3つのループ状コイルによって励磁される3つの磁場それぞれに応じて、レシーバ20bの3つのループ状コイルに発生する3つの独立した電圧であるため、合計9個(3×3個)の電圧が得られることになる。
そこで、この形成された磁場によってレシーバ20bの3つのループ状コイルに発生する9つの電圧を用いることによって、上記基準位置に対するレシーバ20bの3次元位置座標(xm,ym,zm)と上記基準方向に対するオイラー角(θy,θp,θr)の6つの未知数を求めることができる。
コントローラ20cの制御ユニット20fは、検出回路20eから送られてきた9つの電圧を用いて、3次元位置座標(xm,ym,zm)とオイラー角(θy,θp,θr)のデータを演算して求める。
求められた3次元位置座標(xm,ym,zm)とオイラー角(θy,θp,θr)は、データ処理部であるコンピュータ22に供給される。
このような計測システム20として、例えば、3SPACE FASTRAK(Polhemus社製)を挙げることができる。
例えば、3次元位置座標(xm,ym,zm)と、直交座標系における方位角と仰角とシャフト32の軸周りの回転の3次元時系列データを求める。
グリップ部36の3次元位置とこの直交座標系におけるグリップ部36の3次元方向の向きの時系列データは、上述した主装置60に供給され記憶手段80(図3)に記憶される。
さらに、算出されたグリップ部36の3次元位置と3次元方向の向きからなる3次元時系列データは、設定された所定の方向から見たグリップ部36の軌道、例えば、ゴルファーと正対する正面からみたゴルフスウィング中のグリップ部36の軌道のデータに変換されて、モニタ24に供給される。
また、3次元時系列データがモニタ24にグラフとして表示される。
ヘッドスピード測定装置21は、図1に示すように、ゴルファーが行うゴルフスウィングによって移動するゴルフクラブヘッド(ヘッド部34)の速度を測定し、測定したヘッドスピードのデータを主装置60に供給するものである。
ヘッドスピード測定装置21としては、例えば、特許第4064284号に開示されているように、透過型のフォトインタラプタを2つ用い、それら2つのフォトインタラプタから出射される2つの検出光をゴルフクラブヘッドが遮光した際の時間差に基づいて計測する方式のものなど従来公知のさまざまなヘッドスピード測定装置21が採用可能である。
計測システム20は以上のように構成される。
次に、主装置60について詳細に説明する。
図3は主装置60の機能ブロック図である。
主装置60は、剛拘束モデル作成手段62と、第1の再現手段64と、第1の算出手段66と、軟拘束モデル作成手段68と、第2の再現手段70と、第2の算出手段72と、判定手段73と、分類手段74と、選択手段76とを備えている。
また、主装置60は、上記各手段の動作を制御、管理する制御手段78と、計測システム20から供給された3次元時系列データを記憶したり、上記各手段で得られた処理結果を記憶する記憶手段80と、マウス及びキーボードなどから構成された入力手段82、ディスプレイやプリンタなどからなる出力手段84などを含んで構成されている。
主装置60は、モヂュール化されたサブルーチンプログラムを実行することで剛拘束モデル作成手段62と、第1の再現手段64と、第1の算出手段66と、軟拘束モデル作成手段68と、第2の再現手段70と、第2の算出手段72と、分類手段74と、選択手段76における各機能が発揮されるように構成されたコンピュータであってもよいし、また、各部分が専用装置や専用回路で組まれた専用装置であってもよい。
すなわち、ゴルフクラブは、人が把持するグリップ部36と、グリップ部36に接続されるシャフト部32と、シャフト部32の先端に結合されたヘッド部34とを備えている。
そして、ゴルフクラブモデルは、グリップ部36、シャフト部32、ヘッド部34をそれぞれモデル化した、グリップモデルとシャフトモデルとヘッドモデルとが組み合わされている。
シャフトモデルは断面積が一定の梁要素のモデルで離散化された真直梁モデルであり、ヘッドモデルはヘッドの重心位置に対応する位置に集中質量を与えた質点モデルが例示される。
剛拘束モデル作成手段62で作成されるゴルフクラブモデルは、シャフトが撓る弾性体の弾性体モデル、あるいはシャフトが全く変形しない剛体モデルが必要に応じて作成される。
剛体モデルは、弾性体モデルに用いられる剛性に関する材料定数の値を極めて大きいものとすることで容易に作成することができる。
本実施の形態では、剛拘束モデル作成手段62は、グリップモデルとシャフトモデルとを一体化した剛拘束モデルを用いるものである。
言い換えると、第1の再現手段64は、ゴルフスウィングのアドレスの状態からバックスウィングの状態、トップの状態およびダウンスウィングの状態を経てインパクトの状態に至るグリップ部36の動きを該グリップ部36の位置と向きによって表した時系列情報を、前記の剛拘束モデルにおけるグリップ部36に対応する部分に境界条件として与えることで、ゴルフクラブ30の動的挙動を演算してスウィングを再現するものである。
具体的には、運動方程式の時間差分スキームを用いた陽解法により時間経過に沿って逐次解く公知の方法で演算を行う。
本実施の形態では、第1の特性物理量としてゴルフクラブモデルにおけるヘッドに対応する部分の移動速度であるヘッドスピードが算出される。なお、第1の特性物理量としては、シャフト変形量(歪み)が算出されてもよい。
ただし、軟拘束モデル作成手段68は、モデルを作成する際に、前記グリップモデルと前記シャフトモデルとを、グリップ部36を拘束したときの固有振動数が前記の剛拘束モデルに対応する固有振動数に比べて低下するようにパラメータ値を定めた連結要素で連結した軟拘束モデルを用いるものである。すなわち、軟拘束モデル作成手段68は、軟拘束モデルを用いる点が剛拘束モデル作成手段62と相違している。
次に、分類装置100の動作について、図4に示す分類装置100の動作を説明するフローチャートを参照して説明する。
まず、ゴルフクラブのスウィング軌跡の読み込みが行われる。
ゴルファーがゴルフクラブを把持してスウィングを行い、これを計測システム20を用いて計測し、コンピュータ22に読み込む(ステップS10)と同時に、ヘッドスピード測定装置21によりヘッドスピードを計測する(ステップS11)。
コントローラ20cでは演算により3次元位置座標(xm,ym,zm)とオイラー角(θy,θp,θr)の時系列データが算出され、この時系列データから、コンピュータ22で、グリップ部36の所定の位置を基準とした3次元位置と直交座標系におけるグリップ部36の3次元方向における向きについての3次元時系列データが求められる。
求められた3次元時系列データ、すなわち、グリップ部36の所定の位置を基準とした3次元位置座標と、グリップ部36の3次元方向における向きのデータとが主装置60に供給され、記憶手段80に記憶される。
図5は、ゴルフクラブモデル作成の手順を示している。
図5(a)は、剛拘束のゴルフクラブモデルを示す図である。
シャフトモデル42は各要素が梁要素のモデルで離散化された有限要素モデルであって、各要素の梁要素のモデルは断面積が一定の真直梁モデルである。
シャフトモデル42は、要素1〜12からなる真直梁モデルでモデル化され、チップ側の先端には、ヘッドモデル44が付加されている。
ヘッドモデル44は、ヘッド34の質量をヘッド34の重心位置に対応する位置に集中質量を与えた質点モデルである。
さらに、シャフトモデル42のバットには、剛体要素である要素13からなるグリップモデル46が設けられている。
このようにして、図5(a)に示すようなグリップモデルとシャフトモデルとを一体化した剛拘束モデルとしてのゴルフクラブモデルが剛拘束モデル作成手段62によって作成される(ステップS14:剛拘束モデル作成ステップ)。
次に、図5(c)に示すように、シャフトモデル42とグリップモデル46とを所定のパラメータ値(ばね定数、比例粘性係数)を有するばね要素又はダッシュポット要素等の連結要素48で連結する設定を行う(ステップS18:軟拘束モデル作成ステップ)。
そして、図5(d)に示すように、グリップモデル46の先端の点A、連結要素48の点B、連結要素48から突出する有限要素50の先端の点Cとすると、A,B、Cの各点に並進運動(x、y、z)、すなわち、A(xa、ya、za)、B(xb、yb、zb)、C(xc、yc、zc)を与えることで、点A、B、Cが点A’、B’、C’に移動する動的挙動を表現する。
連結要素でシャフトモデル42とグリップモデル46とを接続した図5(c)に示すゴルフクラブモデルは、連結要素を用いる前のシャフトモデル42とグリップモデル46とが一体化した図5(a)に示す剛拘束モデルとしてのゴルフモデルに対して、グリップモデル46を固定したときのゴルフクラブモデルにおける1次の曲げモードの固有振動数が低下するようにばね要素やダッシュポット要素のパラメータ値、すなわち、ばね定数E及び比例粘性係数Cが定められる。
つまり、図5(c)に示すゴルフクラブモデルは、グリップモデル46を固定したときのゴルフクラブモデルの1次の曲げモードの固有振動数が、図5(a)に示す剛拘束モデルとしてのゴルフクラブモデルの対応する固有振動数に比べて低下する軟拘束モデルである。
このようにして、図5(c)に示すような、グリップモデルとシャフトモデルとを、グリップ部を拘束したときの固有振動数が前記剛拘束モデルに対応する固有振動数に比べて低下するようにパラメータ値を定めた連結要素で連結した軟拘束モデルが軟拘束モデル作成手段68によって作成される(ステップS20:軟拘束モデル作成ステップ)。
なお、上記の連結要素は、ばね要素やダッシュポット要素に限定されない。
人が把持する部分であるグリップ部36を拘束したときのモデルの固有振動数が、把持領域であるグリップ部36と非把持領域であるシャフト部32を一体化した剛拘束モデルに比べて低下するようにパラメータ値を定めた連結要素であればよい。
したがって、上記の連結要素として、有限要素法で用いる接触要素、はり要素、トラス要素、コネクタ要素、質量要素、固体要素又はシェル要素のいずれも適用可能である。
図6は、実際のゴルフクラブを使用し、剛拘束状態(ここでは、グリップ部又はグリップ部とシャフト間を動かないように固定した状態をいう)および軟拘束状態(ここでは、人の手でグリップ部を把持することをいう)で一次曲げモードが発生する固有周波数を測定した結果を示す図である。
図6において、(1)、(2)、(3)が剛拘束、(4)、(5)が軟拘束である。
この固有振動数の違いにより、人によるスウィング挙動と剛拘束モデルでのシミュレーション結果が合致しない場合が生じることになると考えられる。
本発明では、ゴルフクラブモデルとして、剛拘束モデルと、ばね要素及びダッシュポット要素を用いた軟拘束モデルとの双方を用いることにより、人がゴルフクラブを把持したときの状況をより正確に再現しようとするものである。
すなわち、ゴルフスウィングのアドレスの状態からバックスウィングの状態、トップの状態およびダウンスウィングの状態を経てインパクトの状態に至る3次元時系列データを境界条件として設定する。設定された境界条件は記憶手段80に記憶される。
そして、設定された境界条件を、剛拘束モデルとしてのゴルフクラブモデル40のグリップモデル46に付与することにより、第1の再現手段64により、剛拘束モデルとしてのゴルフクラブモデル40の動的挙動が演算され、運動方程式の時間差分スキームを用いた陽解法により時間経過に沿って動的挙動が算出される(第1の再現ステップ)。
また、設定された境界条件を、軟拘束モデルとしてのゴルフクラブモデル40のグリップモデル46に付与することにより、第2の再現手段70により、軟拘束モデルとしてのゴルフクラブモデル40の動的挙動が演算され、運動方程式の時間差分スキームを用いた陽解法により時間経過に沿って動的挙動が算出される(第2の再現ステップ)。
すなわち、人がゴルフクラブ30のグリップ部36を把持する力の度合いをグリップ拘束と定義した場合に、第1の特性物理量と第2の特性物理量との差分の絶対値が小さいほどグリップ拘束が強く、差分の絶対値が大きいほどグリップ拘束が弱いと判定する。
言い換えると、剛拘束モデルと軟拘束モデルとの間での特性物理量(ヘッドスピード)の差分の絶対値が小さいということは、軟拘束モデルを作成する際のばね要素やダッシュポット要素の影響が少ないということができる。
したがって、剛拘束モデルと軟拘束モデルとの間での特性物理量(ヘッドスピード)の差分の絶対値が小さいと判定されるゴルファーは、剛拘束モデルによってスウィングが忠実に再現できる、例えば男子プロのような比較的力の強いタイプのゴルファーとして分類されることになる。
これに対して、剛拘束モデルと軟拘束モデルとの間での特性物理量(ヘッドスピード)の差分の絶対値が大きいということは、軟拘束モデルを作成する際のばね要素やダッシュポット要素の影響が大きいということである。
したがって、剛拘束モデルと軟拘束モデルとの間での特性物理量(ヘッドスピード)の差分の絶対値が大きいと判定されるゴルファーは、軟拘束モデルによってスウィングが忠実に再現できる、例えば女性やシニアのような比較的非力なタイプのゴルファーとして分類されることになる。
本実施の形態では、特性物理量をヘッドスピードとしたので、第1の特性物理量と第2の特性物理量との差分の絶対値が、差分ヘッドスピードα(m/sec)となる。
そして、差分ヘッドスピードαの大きさに基づいてゴルファーを次のように分類した。
0≦α<2.5:グリップ拘束が強いゴルファー
2.5≦α<5.0:グリップ拘束が中のゴルファー
5.0≦α :グリップ拘束が弱いゴルファー
図7は3人のテスター(O氏、T氏、N氏)について本実施の形態の分類装置100によって算出された剛拘束モデルにおけるヘッドスピード、軟拘束モデルにおけるヘッドスピード、差分ヘッドスピードαの結果を示す図である。
なお、差分ヘッドスピードαの値は上記の数値に限定されるものではなく、試験などに基づいて適宜決定することができることは無論である。
すなわち、グリップ拘束が強いと分類されるゴルファーはグリップ部36を把持する力が強いので、このようなゴルファーにとっては、手元剛性が高いゴルフクラブの方が方向性やタイミングをとりやすく使いやすい。したがって、グリップ拘束が強いと分類されるゴルファーには、手元剛性が高いゴルフクラブが選択される。
一方、グリップ拘束が弱いと分類されるゴルファーはグリップ部36を把持する力が弱いので、このようなゴルファーにとっては、手元剛性が低いゴルフクラブの方が方向性やタイミングをとりやすく使いやすい。したがって、グリップ拘束が弱いと分類されるゴルファーには、手元剛性が低いゴルフクラブが選択される。
すなわち、式(1)は、ゴルフクラブのグリップ部36の手元剛性(手元曲げ剛性)をyとし、ゴルフクラブの振動数をxとした場合の関係式である。
本実施の形態では、ゴルフクラブのグリップ部36の手元剛性を、グリップ部36のバットエンドからシャフト部32に向かって所定寸法(例えば250mm)離間した箇所における曲げ剛性の平均値とする。なお、上記所定寸法は上記の数値に限定されるものではなく、適宜決定することができることは無論である。
y=ax+b (1)
そして、グリップ拘束が強いゴルファーに対して、手元剛性が高いゴルフクラブとして式(1)の定数a、bが下記の条件(2)を満足するものを選択する。
a=0.5で、かつ、−57.5<b<−47.5 (2)
また、グリップ拘束が中(並)のゴルファーに対して、手元剛性が中程度のゴルフクラブとして式(1)の定数a、bが下記の条件(3)を満足するものを選択する。
a=0.5で、かつ、−67.5≦b≦−57.5 (3)
また、グリップ拘束が弱いゴルファーに対して、手元剛性が低いゴルフクラブとして式(1)の定数a、bが下記の条件(4)を満足するものを選択する。
a=0.5で、かつ、−77.5<b<−67.5 (4)
なお、図8、図9、図10はそれぞれ上記の条件(2)、(3)、(4)を示す線図である。
なお、定数a、bの値は上記の数値に限定されるものではなく、試験などに基づいて適宜決定することができることは無論である。
例えば、それら分類結果および選択結果を制御手段78に与えると共に、制御手段78がそれら分類結果および選択結果を出力手段84を構成するディスプレイによって画面表示し、あるいは、出力手段84を構成するプリンタによって印字出力することができる。
あるいは、それら分類結果および選択結果をメモリカードやディスク状記録媒体などの記録媒体に記録したり、種々の通信回線を介してパーソナルコンピュータや携帯電話機などの端末装置に送信してもよい。
次に、分類装置100の実施例を説明する。
図11は官能試験の結果を示す説明図である。
次のような条件にて試験を行った。
すなわち、ゴルファーが実打して「方向性」「タイミングのとりやすさ」を評価する官能テストを実施した。
ゴルフクラブとしては、シャフト手元曲げ剛性が高い、中、低いの3種類のドライバーを用意し、それらドライバーを5名のテスター1乃至5が試打し、フィーリング(方向性およびタイミングのとりやすさ)を総合的に評価した。
使用クラブのスペックは質量300g,振動数255cpm,長さ45インチとし、シャフト剛性分布を変更した3種類のゴルフクラブを用いた。
方向性およびタイミングのとりやすさの評価では「×は悪い、△は普通、○は良い」ことを示している。
一方、各テスターのグリップ拘束の強弱に対応して最良のものとして選択された手元曲げ剛性とは異なる手元曲げ剛性のゴルフクラブが比較例1乃至10に対応するゴルフクラブである。
図11から明らかなように、分類装置100によって選択された実施例1乃至5のゴルフクラブは、各テスターによって、方向性およびタイミングのとりやすさの評価においていずれも良いと評価されている。
一方、比較例1乃至10のゴルフクラブは、各テスターによって、方向性およびタイミングのとりやすさの評価においていずれも普通あるいは悪いと評価されている。
したがって、本実施の形態による分類装置100により選択した最適なゴルフクラブは、様々なタイプのゴルファーにとって方向性やタイミングがとりやすいものとして評価されている。
したがって、スイング中のグリップ拘束の強いゴルファー(例えば男子プロ)に対しては手元剛性の高いシャフトを容易かつ正確に提供することができ、また、スイング中のグリップ拘束の弱いゴルファー(例えばシニア・女子)に対しては手元剛性の低いシャフトを容易かつ正確に提供することができ、最適なゴルフクラブを選択する上で有利となる。
なお、グリップ拘束の強弱のレベルを4段階以上に細分化してもよく、その場合には、グリップ拘束の強弱のレベルに対応するゴルフクラブ(シャフト)をよりきめ細かく揃えることができ、したがって、きめ細かなフィッティングサービスを行う上でより一層有利となることは無論である。
Claims (10)
- 人がゴルフクラブのグリップ部を把持する力の度合いをグリップ拘束と定義した場合に、前記グリップ拘束の強弱に応じてゴルファーのタイプを分類するゴルファーの分類方法であって、
有限要素で離散化した前記ゴルフクラブのモデルを作成する際に、前記グリップ部のモデルであるグリップモデルと前記グリップ部に接続するシャフト部のモデルであるシャフトモデルとを一体化した剛拘束モデルを用いる剛拘束モデル作成ステップと、
有限要素で離散化した前記ゴルフクラブのモデルを作成する際に、前記グリップモデルと前記シャフトモデルとを、前記グリップ部を拘束したときの固有振動数が前記剛拘束モデルに対応する固有振動数に比べて低下するようにパラメータ値を定めた連結要素で連結した軟拘束モデルを用いる軟拘束モデル作成ステップと、
ゴルフスウィングのアドレスの状態からバックスウィングの状態、トップの状態およびダウンスウィングの状態を経てインパクトの状態に至る前記グリップ部の動きを該グリップ部の位置と向きによって表した時系列情報を、前記剛拘束モデルにおける前記グリップ部に対応する部分に境界条件として与えることで、ゴルフクラブの動的挙動を演算してスウィングを再現する第1の再現ステップと、
前記第1の再現ステップで得られた前記動的挙動の演算結果からゴルフクラブの特性物理量を剛拘束モデルに対応する第1の特性物理量として算出する第1の算出ステップと、
前記時系列情報を、前記軟拘束モデルにおける前記グリップ部に対応する部分に境界条件として与えることで、ゴルフクラブの動的挙動を演算してスウィングを再現する第2の再現ステップと、
前記第2の再現ステップで得られた前記動的挙動の演算結果からゴルフクラブの特性物理量を軟拘束モデルに対応する第2の特性物理量として算出する第2の算出ステップと、
前記第1の特性物理量と前記第2の特性物理量との差分の絶対値の大小に応じて前記グリップ拘束の強弱を判定し、該判定結果に基づいてゴルファーのタイプを分類する分類ステップとを含む、
こと特徴とするゴルファーの分類方法。 - 前記第1、第2の特性物理量はゴルフクラブのヘッドスピードである、
ことを特徴とする請求項1記載のゴルファーの分類方法。 - 前記グリップ部のバットエンドから前記シャフト部に向かって所定寸法離間した箇所における曲げ剛性を手元剛性としたとき、前記グリップ拘束が強いほど手元剛性が高いゴルフクラブを選択し、前記グリップ拘束が弱いほど手元剛性が低いゴルフクラブを選択する選択ステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1または2記載のゴルファーの分類方法。 - 前記ゴルフクラブの手元剛性yと振動数xの関係を式(1)で表すとき、
y=ax+b(ただし、a,bは定数) (1)
前記選択ステップによる前記ゴルフクラブの選択は、前記定数a、bの値が予め定められた値あるいは予め定められた範囲で定義されたゴルフクラブを選択することでなされる、
ことを特徴とする請求項3記載のゴルファーの分類方法。 - 前記第2の算出ステップで算出された結果がスウィングの対応する実測値と合うか否かを判定し、その判定結果に基づいて前記連結要素のパラメータ値を修正するモデル修正ステップを有する、
ことを特徴とする請求項1乃至4に何れか1項記載のゴルファーの分類方法。 - 前記連結要素は、ばね要素又はダッシュポット要素のいずれかである、
ことを特徴とする請求項1乃至5に何れか1項記載のゴルファーの分類方法。 - 前記連結要素は、ばね要素とダッシュポット要素を組合せた連結要素である、
ことを特徴とする請求項1乃至5に何れか1項記載のゴルファーの分類方法。 - 前記ばね要素を、3つの並進自由度および3つの回転自由度を持つ並進ばね要素および
回転ばね要素で定め、
前記ダッシュポット要素を、3つの並進自由度および3つの回転自由度を持つ並進ダッシュポット要素および回転ダッシュポット要素で定める、
ことを特徴とする請求項6または7記載のゴルファーの分類方法。 - 人がゴルフクラブのグリップ部を把持する力の度合いをグリップ拘束と定義した場合に、前記グリップ拘束の強弱に応じてゴルファーのタイプを分類するゴルファーの分類装置であって、
有限要素で離散化した前記ゴルフクラブのモデルを作成する際に、前記グリップ部のモデルであるグリップモデルと前記グリップ部に接続するシャフト部のモデルであるシャフトモデルとを一体化した剛拘束モデルを用いる剛拘束モデル作成手段と、
有限要素で離散化した前記ゴルフクラブのモデルを作成する際に、前記グリップモデルと前記シャフトモデルとを、前記グリップ部を拘束したときの固有振動数が前記剛拘束モデルに対応する固有振動数に比べて低下するようにパラメータ値を定めた連結要素で連結した軟拘束モデルを用いる軟拘束モデル作成手段と、
ゴルフスウィングのアドレスの状態からバックスウィングの状態、トップの状態およびダウンスウィングの状態を経てインパクトの状態に至る前記グリップ部の動きを該グリップ部の位置と向きによって表した時系列情報を、前記剛拘束モデルにおける前記グリップ部に対応する部分に境界条件として与えることで、ゴルフクラブの動的挙動を演算してスウィングを再現する第1の再現手段と、
前記第1の再現手段で得られた前記動的挙動の演算結果からゴルフクラブの特性物理量を剛拘束モデルに対応する第1の特性物理量として算出する第1の算出手段と、
前記時系列情報を、前記軟拘束モデルにおける前記グリップ部に対応する部分に境界条件として与えることで、ゴルフクラブの動的挙動を演算してスウィングを再現する第2の再現手段と、
前記第2の再現手段で得られた前記動的挙動の演算結果からゴルフクラブの特性物理量を軟拘束モデルに対応する第2の特性物理量として算出する第2の算出手段と、
前記第1の特性物理量と前記第2の特性物理量との差分の絶対値の大小に応じて前記グリップ拘束の強弱を判定し、該判定結果に基づいてゴルファーのタイプを分類する分類手段とを備える、
ことを特徴とするゴルファーの分類装置。 - 前記グリップ部のバットエンドから前記シャフト部に向かって所定寸法離間した箇所における曲げ剛性を手元剛性としたとき、前記グリップ拘束が強いほど手元剛性が高いゴルフクラブを選択し、前記グリップ拘束が弱いほど手元剛性が低いゴルフクラブを選択する選択手段をさらに含む、
ことを特徴とする請求項9記載のゴルファーの分類装置。
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