本発明に係る固体高分子形燃料電池発電システムの実施形態を図面に基づいて以下に説明するが、本発明は、図面に基づいて説明する以下の実施形態に限定されるものではない。
[第一番目の実施形態]
本発明に係る固体高分子形燃料電池発電システムの第一番目の実施形態を図1,2に基づいて説明する。図1は、固体高分子形燃料電池発電システムの主要部の概略構成図、図2は、図1の固体高分子形燃料電池発電システムの作動説明図である。
図1に示すように、固体高分子形燃料電池110は、プロトン伝導性を有する固体高分子電解質膜を導電性及びガス透過性を有する燃料極及び酸化極で挟んだセルと、燃料ガスの流路及び酸化ガスの流路をそれぞれ形成されると共に導電性を有するセパレータとを交互に複数積層して、積層方向両端側を一対の集電板及びエンドフランジで挟み込んで構成された複数(本実施形態では2つ)の第一,二のサブスタック111,112を、燃料ガスの流通経路を直列ループ状にするように接続した構造となっている。
各前記サブスタック111,112のエンドフランジに形成された各燃料ガス受入口には、燃料ガス1の供給手段である燃料ガス供給源130が電磁式の二方型のバルブ101,102を介してそれぞれ接続している。
前記第一のサブスタック111のエンドフランジに形成された燃料ガス排出口と前記第二のサブスタック112の前記燃料ガス受入口との間には、燃料ガス用気液分離手段であるドレントラップ121及び電磁式の二方型のバルブ103が介在している。前記第二のサブスタック112のエンドフランジに形成された燃料ガス排出口と前記第一のサブスタック111の前記燃料ガス受入口との間には、燃料ガス用気液分離手段であるドレントラップ122及び電磁式の二方型のバルブ104が介在している。
前記ドレントラップ121,122のガス送出口と前記バルブ103,104との間は、電磁式の二方型のバルブ105,106を介して外部へ連絡している。前記ドレントラップ121,122の下部には、気液分離した生成水2を外部へ排出する電磁式の二方型のバルブ107,108が設けられている。
前記第一,第二のサブスタック111,112の集電板は、電力取出量調整手段である第一,第二のインバータ141,142に各々接続している。これらのインバータ141,142は、各種の図示しない外部負荷器へ接続している。
前記インバータ141,142及び前記バルブ101〜108は、制御手段である制御装置140の出力部に電気的に接続されており、当該制御装置140は、燃料ガス用切換時期確認手段である内蔵された図示しないタイマからの情報(運転時間)に基づいて、当該インバータ141,142からの電力取出し量及び当該バルブ101〜108の開閉を制御することができるようになっている(詳細は後述する)。
このような本実施形態では、前記バルブ101,102等により燃料ガス用最上流位置切換手段を構成し、前記バルブ103〜106等により燃料ガス用最下流位置切換手段を構成している。
なお、本実施形態においては、図面の煩雑化を避けるため、図1において、固体高分子形燃料電池発電システム100の酸化ガス供給手段等の酸化ガス系統や温調水流通手段等の温調水系統等の記載を省略し、燃料ガス系統等の主要部のみを記載しているが、これら酸化ガス系統や温調水系統等も従来の場合と同様にして備えられている。
このような構造をなす本実施形態に係る固体高分子形燃料電池発電システム100の作動を次に説明する。
前記制御装置140を作動させると、当該制御装置140は、前記バルブ107,108を閉鎖すると共に、前記バルブ102,104,105を閉鎖する一方、前記バルブ101,103,106を開放するように、これらバルブ101〜108を制御し、さらに、前記第一のサブスタック111からの電力の取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)よりも小さい加湿運転量Ww(例えば、0%)とするように前記第一のインバータ141を制御すると共に、前記第二のサブスタック112からの電力の取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)とするように前記第二のインバータ142を制御する(図2A参照)。
これにより、燃料ガス供給源130からの燃料ガス1が、前記バルブ101を経由して第一のサブスタック111の燃料ガス受入口へ送給されて、各前記セパレータの各前記流路内を流通し、当該第一のサブスタック111において、図示しない酸化ガス系統から供給された酸化ガスと前記セルで電気化学的に反応することなく、当該セルの前記固体高分子電解質膜の湿潤水によって加湿されながら、燃料ガス排出口から排出され、ドレントラップ121及び前記バルブ103を経由して第二のサブスタック112の燃料ガス受入口へ水分と共に送給され、各前記セパレータの各前記流路内を流通し、当該第二のサブスタック112において、前記セルの前記固体高分子電解質膜を湿潤しながら前記酸化ガスと前記セルで電気化学的に反応し、前記集電板から前記第二のインバータ142を介して電力が取り出された後、使用済みの燃料ガス1が、当該電気化学反応に伴って生じた生成水2と共に各上記流路を流通して、燃料ガス排出口から排出され、前記ドレントラップ122で当該生成水2を分離されてから前記バルブ106を介して外部へ排出される。
つまり、燃料ガス1を前記第一のサブスタック111の前記セルの前記固体高分子電解質膜の湿潤水によって加湿して第二のサブスタック112へ送給するようにしているのである。
このようにして発電運転を行うと、前記第一のサブスタック111の前記セルの前記固体高分子電解質膜が次第に乾燥していき、前記第二のサブスタック112に送給する燃料ガス1が十分に加湿されなくなり始める。
ここで、前記制御装置140は、前記タイマからの情報に基づいて、予め設定された運転時間が経過すると、前記バルブ102,104,105を開放すると共に、前記バルブ101,103,106を閉鎖するように、当該バルブ101〜106を制御し、さらに、前記第二のサブスタック112からの電力の取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)よりも小さい加湿運転量Ww(例えば、0%)とするように前記第二のインバータ142を制御すると共に、前記第一のサブスタック111からの電力の取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)とするように前記第一のインバータ141を制御する(図2B参照)。
つまり、前記制御装置140は、水素ガス3の流通方向最上流側に位置する、言い換えれば、燃料ガス供給源130からの燃料ガス1の送給先を、第一のサブスタック111から第二のサブスタック112に切り換えると共に、第一のサブスタック111を燃料ガス1の流通方向最下流側に位置させるように第二のサブスタック112から切り換え、これに併せて、電力取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)よりも小さい加湿運転量Ww(例えば、0%)とする制御を前記第一のインバータ141から前記第二のインバータ142に切り換えると共に、電力取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)とする制御を前記第二のインバータ142から前記第一のインバータ141に切り換えるのである。
これにより、燃料ガス供給源130からの燃料ガス1が、前記バルブ102を経由して第二のサブスタック112の燃料ガス受入口へ送給されて、各前記セパレータの各前記流路内を流通し、当該第二のサブスタック112において、前記セルで前記酸化ガスと電気化学的に反応することなく、当該セルの前記固体高分子電解質膜の湿潤水によって加湿されながら、燃料ガス排出口から排出され、前記ドレントラップ122及び前記バルブ104を経由して第一のサブスタック111の燃料ガス受入口へ水分と共に送給され、各前記セパレータの各前記流路内を流通し、当該第一のサブスタック111において、前記セルの前記固体高分子電解質膜を湿潤しながら前記酸化ガスと前記セルで電気化学的に反応し、前記集電板から前記第一のインバータ141を介して電力が取り出された後、使用済みの燃料ガス1が、当該電気化学反応に伴って生じた生成水2と共に各上記流路を流通して、燃料ガス排出口から排出され、ドレントラップ121で当該生成水2を分離されてから前記バルブ105を介して外部へ排出される。
つまり、燃料ガス1を前記第二のサブスタック112の前記セルの前記固体高分子電解質膜の湿潤水によって加湿して第一のサブスタック111へ送給するようにしているのである。
このようにして発電運転を行うと、前記第二のサブスタック112の前記セルの前記固体高分子電解質膜が次第に乾燥していき、前記第一のサブスタック111に送給する燃料ガス1が十分に加湿されなくなり始める。
ここで、前記制御装置140は、前記タイマからの情報に基づいて、予め設定された運転時間が経過すると、前記バルブ101,103,106を開放すると共に、前記バルブ102,104,105を閉鎖するように、当該バルブ101〜106を制御し、さらに、前記第一のサブスタック111からの電力の取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)よりも小さい加湿運転量Ww(例えば、0%)とするように前記第一のインバータ141を制御すると共に、前記第二のサブスタック112からの電力の取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)とするように前記第二のインバータ141を制御する(図2A参照)。
つまり、前記制御装置140は、燃料ガス1の流通方向最上流側に位置する、言い換えれば、燃料ガス供給源130からの燃料ガス1の送給先を、第二のサブスタック112から第一のサブスタック111に切り換えると共に、第二のサブスタック112を燃料ガス1の流通方向最下流側に位置させるように第一のサブスタック111から切り換え、これに併せて、電力取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)よりも小さい加湿運転量Ww(例えば、0%)とする制御を前記第二のインバータ142から前記第一のインバータ141に切り換えると共に、電力取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)とする制御を前記第一のインバータ141から前記第二のインバータ142に切り換える、すなわち、当初の状態に戻すのである。
これにより、燃料ガス供給源130からの燃料ガス1が、先に説明した当初の状態の場合と同様に、前記バルブ101を経由して第一のサブスタック111の燃料ガス受入口へ送給されて、各前記セパレータの各前記流路内を流通し、当該第一のサブスタック111において、前記酸化ガスと前記セルで電気化学的に反応することなく、当該セルの前記固体高分子電解質膜の湿潤水によって加湿されながら、燃料ガス排出口から排出され、ドレントラップ121及び前記バルブ103を経由して第二のサブスタック112の燃料ガス受入口へ水分と共に送給され、各前記セパレータの各前記流路内を流通し、当該第二のサブスタック112において、前記セルの前記固体高分子電解質膜を湿潤しながら前記酸化ガスと前記セルで電気化学的に反応し、前記集電板から前記第二のインバータ142を介して電力が取り出された後、使用済みの燃料ガス1が、当該電気化学反応に伴って生じた生成水2と共に各上記流路を流通して、燃料ガス排出口から排出され、前記ドレントラップ122で当該生成水2を分離されてから前記バルブ106を介して外部へ排出される。
以下、制御装置140は、前記バルブ101〜106及び前記インバータ141,142の上述した制御を繰り返す。これにより、固体高分子形燃料電池110は、燃料ガス1の流通方向最上流側及び最下流側に位置する前記サブスタック111,112並びに電力取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)よりも小さい加湿運転量Ww(例えば、0%)とする前記インバータ141,142が運転経過時間に対応して順次切り換えられるようになる。
なお、前記ドレントラップ121,122内に回収された生成水2は、前記制御装置140が、前記タイマからの情報に基づいて、予め設定された運転時間経過毎に前記バルブ107,108の開閉を行うことにより、系外へ適宜排出される。
このため、本実施形態に係る固体高分子形燃料電池発電システム100においては、加湿器がなくても問題なく運転することができるので、燃料ガス1を加湿する加湿器やポンプ等を省略することができる。
したがって、本実施形態によれば、システム100全体の電力効率を向上させることができる。
[第二番目の実施形態]
本発明に係る固体高分子形燃料電池発電システムの第二番目の実施形態を図3,4に基づいて説明する。図3は、固体高分子形燃料電池発電システムの主要部の概略構成図、図4は、図3の固体高分子形燃料電池発電システムの作動説明図である。ただし、前述した第一番目の実施形態の場合と同様な部分については、前述した第一番目の実施の形態の説明で用いた符号と同様な符号を用いることにより、前述した第一番目の実施形態での説明と重複する説明を省略する。
図3に示すように、各前記サブスタック111,112の各前記燃料ガス受入口には、燃料ガスである濃度99%以上の水素ガス3の供給手段である水素ガスボンベ230が前記バルブ101,102を介してそれぞれ接続している。
また、前記ドレントラップ121,122のガス送出口と前記バルブ103,104との間は、外部へ連絡することなく接続している。
そして、前記インバータ141,142及び前記バルブ101〜104,107,108は、制御手段である制御装置240の出力部に電気的に接続されており、当該制御装置240は、燃料ガス用切換時期確認手段である内蔵された図示しないタイマからの情報(運転時間)に基づいて、当該インバータ141,142からの電力取出し量及び当該バルブ101〜104,107,108の開閉を制御することができるようになっている(詳細は後述する)。
つまり、前述した第一番目の実施形態に係る固体高分子形燃料電池発電システム100では、水素ガスを含有する燃料ガス1(例えば、炭化水素系原料を改質した燃料ガス)を燃料ガス供給源130から供給する場合、すなわち、固体高分子形燃料電池110から排出される使用済みの燃料ガス1を系外へ排出する場合の適用例であったが、本実施形態に係る固体高分子形燃料電池発電システム200においては、燃料ガスとして水素ガス3そのものを水素ガスボンベ230から供給する場合、すなわち、固体高分子形燃料電池110から系外に水素ガス3を排出せずにすべて使用する場合の適用例なのである。
このような本実施形態では、前記バルブ103,104等により燃料ガス用最下流位置切換手段を構成している。
なお、本実施形態においては、前述した第一番目の実施形態の場合と同様に、図面の煩雑化を避けるため、図3において、固体高分子形燃料電池発電システム200の酸化ガス供給手段等の酸化ガス系統や温調水流通手段等の温調水系統等の記載を省略し、燃料ガス系統等の主要部のみを記載しているが、これら酸化ガス系統や温調水系統等も従来の場合と同様にして備えられている。
このような構造をなす本実施形態に係る固体高分子形燃料電池発電システム200の作動を次に説明する。
前記制御装置240を作動させると、当該制御装置240は、前記バルブ107,108を閉鎖すると共に、前記バルブ102,104を閉鎖する一方、前記バルブ101,103を開放するように、これらバルブ101〜104,107,108を制御し、さらに、前述した第一番目の実施形態の場合と同様に、前記第一のサブスタック111からの電力の取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)よりも小さい加湿運転量Ww(例えば、0%)とするように前記第一のインバータ141を制御すると共に、前記第二のサブスタック112からの電力の取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)とするように前記第二のインバータ142を制御する(図4A参照)。
これにより、水素ガスボンベ230からの水素ガス3が、前述した第一番目の実施形態の燃料ガス1の場合と同様に、前記バルブ101を経由して第一のサブスタック111の燃料ガス受入口へ送給されて、各前記セパレータの各前記流路内を流通し、当該第一のサブスタック111において、前記酸化ガスと前記セルで電気化学的に反応することなく、当該セルの前記固体高分子電解質膜の湿潤水によって加湿されながら、燃料ガス排出口から排出され、ドレントラップ121及び前記バルブ103を経由して第二のサブスタック112の燃料ガス受入口へ水分と共に送給され、各前記セパレータの各前記流路内を流通し、当該第二のサブスタック112において、前記セルの前記固体高分子電解質膜を湿潤しながら前記酸化ガスと前記セルで電気化学的に反応し、前記集電板から前記第二のインバータ142を介して電力が取り出される。
このようにして発電運転を行うと、前記第一のサブスタック111において、前記セルの前記固体高分子電解質膜が次第に乾燥していき、前記第二のサブスタック112に送給する水素ガス3が十分に加湿されなくなり始めると共に、前記第二のサブスタック112において、送給された水素ガス3のほとんどが消費されて、燃料ガス排出口から排出されるガスがほとんどないので、上記電気化学反応に伴って生じた生成水2が、前記流路内に次第に滞留し始め、発電性能が低下するようになる。
ここで、前記制御装置240は、前述した第一番目の実施形態の場合と同様に、前記タイマからの情報に基づいて、予め設定された運転時間が経過すると、前記バルブ102,104を開放すると共に、前記バルブ101,103を閉鎖するように、当該バルブ101〜104を制御し、さらに、前記第二のサブスタック112からの電力の取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)よりも小さい加湿運転量Ww(例えば、0%)とするように前記第二のインバータ142を制御すると共に、前記第一のサブスタック111からの電力の取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)とするように前記第一のインバータ141を制御する(図4B参照)。
これにより、水素ガスボンベ230からの水素ガス3が、前述した第一番目の実施形態の燃料ガス1の場合と同様に、前記バルブ102を経由して第二のサブスタック112の燃料ガス受入口へ送給されて、各前記セパレータの各前記流路内を流通し、当該第二のサブスタック112において、前記セルで前記酸化ガスと電気化学的に反応することなく、前記流路内に滞留する前記生成水2を押し出しつつ、当該セルの前記固体高分子電解質膜の湿潤水及び当該生成水2によって加湿されながら、燃料ガス排出口から上記生成水2と共に排出され、前記ドレントラップ122で余剰の上記生成水2を分離された後、前記バルブ104を経由して第一のサブスタック111の燃料ガス受入口へ水分と共に送給され、各前記セパレータの各前記流路内を流通し、当該第一のサブスタック111において、前記セルの前記固体高分子電解質膜を湿潤しながら前記酸化ガスと前記セルで電気化学的に反応し、前記集電板から前記第一のインバータ141を介して電力が取り出される。
このようにして発電運転を行うと、前記第二のサブスタック112において、前記セルの前記固体高分子電解質膜が次第に乾燥していき、前記第一のサブスタック111に送給する水素ガス3が十分に加湿されなくなり始めると共に、前記第一のサブスタック111において、送給された水素ガス3のほとんどが消費されて、燃料ガス排出口から排出されるガスがほとんどないので、上記電気化学反応に伴って生じた生成水2が、前記流路内に次第に滞留し始め、発電性能が低下するようになる。
ここで、前記制御装置240は、前述した第一番目の実施形態の場合と同様に、前記タイマからの情報に基づいて、予め設定された運転時間が経過すると、前記バルブ101,103を開放すると共に、前記バルブ102,104を閉鎖するように、当該バルブ101〜104を制御し、さらに、前記第一のサブスタック111からの電力の取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)よりも小さい加湿運転量Ww(例えば、0%)とするように前記第一のインバータ141を制御すると共に、前記第二のサブスタック112からの電力の取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)とするように前記第二のインバータ142を制御する、すなわち、当初の状態に戻す(図4A参照)。
これにより、水素ガスボンベ230からの水素ガス3が、先に説明した当初の状態の場合と同様に、前記バルブ101を経由して第一のサブスタック111の燃料ガス受入口へ送給されて、各前記セパレータの各前記流路内を流通し、当該第一のサブスタック111において、前記酸化ガスと前記セルで電気化学的に反応することなく、前記流路内に滞留する前記生成水2を押し出しつつ、当該セルの前記固体高分子電解質膜の湿潤水及び当該流路内に滞留する上記生成水2によって加湿されながら、燃料ガス排出口から上記生成水2と共に排出され、前記ドレントラップ121で余剰の上記生成水2を分離された後、前記バルブ103を経由して第二のサブスタック112の燃料ガス受入口へ水分と共に送給され、各前記セパレータの各前記流路内を流通し、当該第二のサブスタック112において、前記セルの前記固体高分子電解質膜を湿潤しながら前記酸化ガスと前記セルで電気化学的に反応し、前記集電板から前記第二のインバータ142を介して電力が取り出される。
以下、制御装置240は、前記バルブ101〜104及び前記インバータ141,142の上述した制御を繰り返す。これにより、固体高分子形燃料電池110は、前述した第一番目の実施形態の場合と同様に、燃料ガス1の流通方向最上流側及び最下流側に位置する前記サブスタック111,112並びに電力取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)よりも小さい加湿運転量Ww(例えば、0%)とする前記インバータ141,142が運転経過時間に対応して順次切り換えられるようになる。
このため、本実施形態に係る固体高分子形燃料電池発電システム200においては、前述した第一番目の実施形態の場合と同様に、加湿器がなくても問題なく運転することができるので、水素ガス3を加湿する加湿器やポンプ等を省略することができるのはもちろんのこと、燃料ガスとして水素ガス3そのものを使用する場合、すなわち、固体高分子形燃料電池110から系外に水素ガス3を排出せずにすべて使用する場合であっても、ブロアやエジェクタ等のガス循環装置を用いることなく前記生成水2を前記流路内から排出することができる。
したがって、本実施形態によれば、前述した第一番目の実施形態の場合と同様な効果を得ることができるのはもちろんのこと、燃料ガスとして水素ガス3そのものを使用する場合であっても、ブロアやエジェクタ等のガス循環装置を用いることなく固体高分子形燃料電池110から系外に水素ガス3を排出せずにすべて使用することができるので、システム200全体の電力効率をさらに向上させることができる。
[第三番目の実施形態]
本発明に係る固体高分子形燃料電池発電システムの第三番目の実施形態を図5,6に基づいて説明する。図5は、固体高分子形燃料電池発電システムの主要部の概略構成図、図6は、図5の固体高分子形燃料電池発電システムの作動説明図である。ただし、前述した第一,二番目の実施形態の場合と同様な部分については、前述した第一,二番目の実施の形態の説明で用いた符号と同様な符号を用いることにより、前述した第一,二番目の実施形態での説明と重複する説明を省略する。
図5に示すように、固体高分子形燃料電池310は、プロトン伝導性を有する固体高分子電解質膜を導電性及びガス透過性を有する燃料極及び酸化極で挟んだセルと、燃料ガスの流路及び酸化ガスの流路をそれぞれ形成されると共に導電性を有するセパレータとを交互に複数積層して、積層方向両端側を一対の集電板及びエンドフランジで挟み込んで構成された複数(本実施形態では2つ)の第一,二のサブスタック311,312を、酸化ガスの流通経路を直列ループ状にするように接続した構造となっている。
各前記サブスタック311,312のエンドフランジに形成された各酸化ガス受入口には、酸化ガスである濃度99%以上の酸素ガス4の供給手段である酸素ガスボンベ330が電磁式の三方型のバルブ301,302を介してそれぞれ接続している。
前記第一のサブスタック311のエンドフランジに形成された燃料ガス排出口と前記第二のサブスタック312の前記燃料ガス受入口との間は、酸化ガス用気液分離手段であるドレントラップ321及び前記バルブ302の残りの口を介して接続している。前記第二のサブスタック312のエンドフランジに形成された燃料ガス排出口と前記第一のサブスタック311の前記燃料ガス受入口との間は、酸化ガス用気液分離手段であるドレントラップ322及び前記バルブ301の残りの口を介して接続している。
前記ドレントラップ321,322の下部には、気液分離した生成水2を外部へ排出する電磁式の二方型のバルブ307,308が設けられている。
前記第一,第二のサブスタック311,312の集電板は、電力取出量調整手段である第一,第二のインバータ141,142に各々接続している。これらのインバータ141,142は、各種の図示しない外部負荷器へ接続している。
前記インバータ141,142及び前記バルブ301,302,307,308は、制御手段である制御装置340の出力部に電気的に接続されており、当該制御装置340は、酸化ガス用切換時期確認手段である内蔵された図示しないタイマからの情報(運転時間)に基づいて、当該インバータ141,142からの電力取出し量及び当該バルブ301,302,307,308の開閉を制御することができるようになっている(詳細は後述する)。
つまり、前述した第二番目の実施形態に係る固体高分子形燃料電池発電システム200では、水素ガスボンベ230と各前記サブスタック111,112との間を二方型のバルブ101,102によって接続すると共に、各前記サブスタック111,112間を二方型のバルブ103,104によって接続するようにしたが、本実施形態に係る固体高分子形燃料電池発電システム300においては、酸素ガスボンベ330と各前記サブスタック311,312との間及び各前記サブスタック311,312間を三方型のバルブ301,302によってまとめて接続するようにしたのである。
このような本実施形態では、前記バルブ301,302等により酸化ガス用最上流位置切換手段と酸化ガス用最下流位置切換手段とを兼ねるように構成している。
なお、本実施形態においては、図面の煩雑化を避けるため、図5において、固体高分子形燃料電池発電システム300の燃料ガス供給手段等の燃料ガス系統や温調水流通手段等の温調水系統等の記載を省略し、酸化ガス系統等の主要部のみを記載しているが、これら燃料ガス系統や温調水系統等も従来の場合と同様にして備えられている。
このような構造をなす本実施形態に係る固体高分子形燃料電池発電システム300の作動を次に説明する。
前記制御装置340を作動させると、当該制御装置340は、前記バルブ307,308を閉鎖すると共に、酸化ガスボンベ330と第一のサブスタック311の前記酸化ガス受入口との間のみを接続するように前記バルブ301を切り換え、第一のサブスタック311の前記酸化ガス排出口と第二のサブスタック312の前記酸化ガス受入口との間のみを接続するように前記バルブ302を切り換えるように、これらバルブ301,302,307,308を制御し、さらに、前述した第一,二番目の実施形態の場合と同様に、前記第一のサブスタック311からの電力の取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)よりも小さい加湿運転量Ww(例えば、0%)とするように前記第一のインバータ141を制御すると共に、前記第二のサブスタック312からの電力の取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)とするように前記第二のインバータ142を制御する(図6A参照)。
これにより、酸素ガスボンベ330からの酸素ガス4が、前記バルブ301を経由して第一のサブスタック311の酸化ガス受入口へ送給されて、各前記セパレータの各前記流路内を流通し、当該第一のサブスタック311において、図示しない燃料ガス系統から供給された燃料ガスと前記セルで電気化学的に反応することなく、当該セルの前記固体高分子電解質膜の湿潤水によって加湿されながら、酸化ガス排出口から排出され、ドレントラップ321及び前記バルブ302を経由して第二のサブスタック312の酸化ガス受入口へ水分と共に送給され、各前記セパレータの各前記流路内を流通し、当該第二のサブスタック312において、前記セルの前記固体高分子電解質膜を湿潤しながら前記燃料ガスと前記セルで電気化学的に反応し、前記集電板から前記第二のインバータ142を介して電力が取り出される。
つまり、酸素ガス4を前記第一のサブスタック311の前記セルの前記固体高分子電解質膜の湿潤水によって加湿して第二のサブスタック312へ送給するようにしているのである。
このようにして発電運転を行うと、前記第一のサブスタック311において、前記セルの前記固体高分子電解質膜が次第に乾燥していき、前記第二のサブスタック312に送給する酸素ガス4が十分に加湿されなくなり始めると共に、前記第二のサブスタック312において、送給された酸素ガス4のほとんどが消費されて、酸化ガス排出口から排出されるガスがほとんどないので、上記電気化学反応に伴って生じた生成水2が、前記流路内に次第に滞留し始め、発電性能が低下するようになる。
ここで、前記制御装置340は、前記タイマからの情報に基づいて、予め設定された運転時間が経過すると、酸素ガスボンベ330と第二のサブスタック312の前記酸化ガス受入口との間のみを接続するように前記バルブ302を切り換えると共に、第二のサブスタック312の前記酸化ガス排出口と第一のサブスタック311の前記酸化ガス受入口との間のみを接続するように前記バルブ301を切り換えるように、当該バルブ301,302を制御し、さらに、前述した第一,二番目の実施形態の場合と同様に、前記第二のサブスタック312からの電力の取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)よりも小さい加湿運転量Ww(例えば、0%)とするように前記第二のインバータ142を制御すると共に、前記第一のサブスタック311からの電力の取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)とするように前記第一のインバータ141を制御する(図6B参照)。
つまり、前記制御装置340は、酸素ガス4の流通方向最上流側に位置する、言い換えれば、酸素ガスボンベ330からの酸素ガス4の送給先を、第一のサブスタック311から第二のサブスタック312に切り換えると共に、第一のサブスタック311を酸素ガス4の流通方向最下流側に位置させるように第二のサブスタック312から切り換え、これに併せて、電力取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)よりも小さい加湿運転量Ww(例えば、0%)とする制御を前記第一のインバータ141から前記第二のインバータ142に切り換えると共に、電力取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)とする制御を前記第二のインバータ142から前記第一のインバータ141に切り換えるのである。
これにより、酸素ガスボンベ330からの酸素ガス4が、前記バルブ302を経由して第二のサブスタック312の酸化ガス受入口へ送給されて、各前記セパレータの各前記流路内を流通し、当該第二のサブスタック312において、前記セルで前記燃料ガスと電気化学的に反応することなく、前記流路内に滞留する前記生成水2を押し出しつつ、当該セルの前記固体高分子電解質膜の湿潤水及び当該生成水2によって加湿されながら、酸化ガス排出口から上記生成水2と共に排出され、前記ドレントラップ322で余剰の上記生成水2を分離された後、前記バルブ301を経由して第一のサブスタック311の酸化ガス受入口へ水分と共に送給され、各前記セパレータの各前記流路内を流通し、当該第一のサブスタック311において、前記セルの前記固体高分子電解質膜を湿潤しながら前記燃料ガスと前記セルで電気化学的に反応し、前記集電板から前記第一のインバータ141を介して電力が取り出される。
つまり、酸素ガス4を前記第二のサブスタック312の前記セルの前記固体高分子電解質膜の湿潤水によって加湿して第一のサブスタック311へ送給するようにしているのである。
このようにして発電運転を行うと、前記第二のサブスタック312において、前記セルの前記固体高分子電解質膜が次第に乾燥していき、前記第一のサブスタック311に送給する酸素ガス4が十分に加湿されなくなり始めると共に、前記第一のサブスタック311において、送給された酸素ガス4のほとんどが消費されて、酸化ガス排出口から排出されるガスがほとんどないので、上記電気化学反応に伴って生じた生成水2が、前記流路内に次第に滞留し始め、発電性能が低下するようになる。
ここで、前記制御装置340は、前記タイマからの情報に基づいて、予め設定された運転時間が経過すると、酸素ガスボンベ330と第一のサブスタック311の前記酸素ガス受入口との間のみを接続するように前記バルブ301を切り換えると共に、第一のサブスタック311の前記酸化ガス排出口と第二のサブスタック312の前記酸化ガス受入口との間のみを接続するように前記バルブ302を切り換えるように、当該バルブ301,302を制御し、さらに、前述した第一,二番目の実施形態の場合と同様に、前記第一のサブスタック311からの電力の取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)よりも小さい加湿運転量Ww(例えば、0%)とするように前記第一のインバータ141を制御すると共に、前記第二のサブスタック312からの電力の取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)とするように前記第二のインバータ142を制御する(図6A参照)。
つまり、前記制御装置340は、酸素ガス4の流通方向最上流側に位置する、言い換えれば、酸素ガスボンベ330からの酸素ガス4の送給先を、第二のサブスタック312から第一のサブスタック311に切り換えると共に、第二のサブスタック312を酸素ガス4の流通方向最下流側に位置させるように第一のサブスタック311から切り換え、これに併せて、電力取り出し量を定常運転量よりも小さい規定値以下とする制御を前記第二のインバータ142から前記第一のインバータ141に切り換えると共に、電力取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)とする制御を前記第一のインバータ141から前記第二のインバータ142に切り換える、すなわち、当初の状態に戻すのである。
これにより、酸素ガスボンベ330からの酸素ガス4が、先に説明した当初の状態の場合と同様に、前記バルブ301を経由して第一のサブスタック311の酸化ガス受入口へ送給されて、各前記セパレータの各前記流路内を流通し、当該第一のサブスタック311において、前記燃料ガスと前記セルで電気化学的に反応することなく、前記流路内に滞留する前記生成水2を押し出しつつ、当該セルの前記固体高分子電解質膜の湿潤水及び当該流路内に滞留する上記生成水2によって加湿されながら、酸化ガス排出口から上記生成水2と共に排出され、前記ドレントラップ321で余剰の上記生成水2を分離された後、前記バルブ302を経由して第二のサブスタック312の酸化ガス受入口へ水分と共に送給され、各前記セパレータの各前記流路内を流通し、当該第二のサブスタック312において、前記セルの前記固体高分子電解質膜を湿潤しながら前記燃料ガスと前記セルで電気化学的に反応し、前記集電板から前記第二のインバータ142を介して電力が取り出される。
以下、制御装置340は、前記バルブ301,302及び前記インバータ141,142の上述した制御を繰り返す。これにより、固体高分子形燃料電池310は、酸素ガス4の流通方向最上流側及び最下流側に位置する前記サブスタック311,312並びに電力取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)よりも小さい加湿運転量Ww(例えば、0%)とする前記インバータ141,142が運転経過時間に対応して順次切り換えられるようになる。
なお、前記ドレントラップ321,322内に回収された生成水2は、前記制御装置340が、前記タイマからの情報に基づいて、予め設定された運転時間経過毎に前記バルブ307,308の開閉を行うことにより、系外へ適宜排出される。
このため、本実施形態に係る固体高分子形燃料電池発電システム300においては、前述した第一番目の実施形態の場合と同様に、加湿器がなくても問題なく運転することができるので、酸素ガス4を加湿する加湿器やポンプ等を省略することができるのはもちろんのこと、酸化ガスとして酸素ガス4そのものを使用する場合、すなわち、固体高分子形燃料電池310から系外に酸素ガス4を排出せずにすべて使用する場合であっても、ブロアやエジェクタ等のガス循環装置を用いることなく前記生成水2を前記流路内から排出することができる。
したがって、本実施形態によれば、前述した第一番目の実施形態の場合と同様な効果を得ることができるのはもちろんのこと、酸化ガスとして酸素ガス4そのものを使用する場合であっても、ブロアやエジェクタ等のガス循環装置を用いることなく固体高分子形燃料電池310から系外に酸素ガス4を排出せずにすべて使用することができるので、システム300全体の電力効率をさらに向上させることができる。
[第四番目の実施形態]
本発明に係る固体高分子形燃料電池発電システムの第四番目の実施形態を図7〜9に基づいて説明する。図7は、固体高分子形燃料電池発電システムの主要部の概略構成図、図8は、図7の固体高分子形燃料電池発電システムの作動説明図、図9は、図7に続く作動説明図である。ただし、前述した第一〜三番目の実施形態の場合と同様な部分については、前述した第一〜三番目の実施の形態の説明で用いた符号と同様な符号を用いることにより、前述した第一〜三番目の実施形態での説明と重複する説明を省略する。
図7に示すように、本実施形態に係る固体高分子形燃料電池発電システム400は、前述した第二番目の実施形態に係る固体高分子形燃料電池発電システム200の制御装置240を、燃料ガス用切換時期確認手段である内蔵された図示しないタイマからの情報(運転時間)に基づいて、前記インバータ141,142からの電力取出し量及び前記バルブ101〜104,107,108の開閉を後述するように制御する制御手段である制御装置440としたものである。
この本実施形態に係る固体高分子形燃料電池発電システム400において、上記制御装置440を作動させると、当該制御装置440は、前述した第二番目の実施形態の場合と同様に、前記バルブ102,104を閉鎖すると共に前記バルブ101,103を開放するように、当該バルブ101〜104を制御し、さらに、前述した第二番目の実施形態の場合と同様に、前記第一のサブスタック111からの電力の取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)よりも小さい加湿運転量Ww(例えば、0%)とするように前記第一のインバータ141を制御すると共に、前記第二のサブスタック112からの電力の取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)とするように前記第二のインバータ142を制御して、発電運転を行う(図8A参照)。
そして、予め設定された運転時間が経過すると、前記制御装置440は、前記タイマからの情報に基づいて、まず、水素ガス3の流通方向最下流側に位置する前記第二のサブスタック112からの電力の取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)よりも小さい切換運転量Wc(例えば、50%)とするように前記第二のインバータ142を制御する(図8A’参照)。
このようにして前記第二のサブスタック112からの電力の取り出し量を前記切換運転量Wc(例えば、50%)にしたら、前記制御装置440は、前述した第二番目の実施形態の場合と同様に、前記バルブ102,104を開放すると共に、前記バルブ101,103を閉鎖するように、当該バルブ101〜104を制御することにより、前述した第二番目の実施形態の場合と同様に、水素ガス3の流通方向最上流側に位置する、すなわち、燃料ガス供給源130からの水素ガス3の送給先を、第一のサブスタック111から第二のサブスタック112に新たに設定すると共に、第一のサブスタック111を水素ガス3の流通方向最下流側に新たに位置させるように第二のサブスタック112から切り換える(図8A”参照)。
このようにして前記バルブ101〜104の切り換え制御を行うと、前記制御装置440は、水素ガス3の流通方向最上流側に新たに位置させた前記第二のサブスタック112からの電力の取り出し量を加湿運転量Ww(例えば、0%)とするように前記第二のインバータ142を制御すると共に、水素ガス3の流通方向最下流側に新たに位置させた前記第一のサブスタック111からの電力の取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)とするように前記第一のインバータ141を制御することにより、電力取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)よりも小さい加湿運転量Ww(例えば、0%)とする制御を前記第一のインバータ141から前記第二のインバータ142に切り換えると共に、電力取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)とする制御を前記第二のインバータ142から前記第一のインバータ141に切り換えて、発電運転を継続する(図9B参照)。
続いて、予め設定された運転時間がさらに経過すると、上記制御装置440は、前記タイマからの情報に基づいて、水素ガス3の流通方向最下流側に位置する前記第一のサブスタック111からの電力の取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)よりも小さい切換運転量Wc(例えば、50%)とするように前記第一のインバータ141を制御する(図9B’参照)。
このようにして前記第一のサブスタック111からの電力の取り出し量を前記切換運転量Wc(例えば、50%)にしたら、前記制御装置440は、前述した第二番目の実施形態の場合と同様に、前記バルブ101,103を開放すると共に、前記バルブ102,104を閉鎖するように、当該バルブ101〜104を制御することにより、前述した第二番目の実施形態の場合と同様に、水素ガス3の流通方向最上流側に位置する、すなわち、燃料ガス供給源130からの水素ガス3の送給先を、第二のサブスタック112から第一のサブスタック111に新たに設定すると共に、第二のサブスタック112を水素ガス3の流通方向最下流側に新たに位置させるように第一のサブスタック111から切り換える(図9B”参照)。
このようにして前記バルブ101〜104の切り換え制御を行うと、前記制御装置440は、水素ガス3の流通方向最上流側に新たに位置した前記第一のサブスタック111からの電力の取り出し量を加湿運転量Ww(例えば、0%)とするように前記第一のインバータ141を制御すると共に、水素ガス3の流通方向最下流側に新たに位置した前記第二のサブスタック112からの電力の取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)とするように前記第二のインバータ142を制御することにより、電力取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)よりも小さい加湿運転量Ww(例えば、0%)とする制御を前記第二のインバータ142から前記第一のインバータ141に切り換えると共に、電力取り出し量を定常運転量Wr(例えば、100%)とする制御を前記第一のインバータ141から前記第二のインバータ142に切り換えて、発電運転を継続する(図8A参照)。
以下、制御装置440は、前記バルブ101〜104及び前記インバータ141,142の上述した制御を繰り返す。
つまり、前述した第二番目の実施形態に係る固体高分子形燃料電池発電システム200においては、定常運転量Wr(例えば、100%)で電力を取り出している状態で、前記バルブ101〜104の切り換えを行うように当該バルブ101〜104及び前記インバータ141,142を前記制御装置140で制御するようにしたが、本実施形態に係る固体高分子形燃料電池発電システム400においては、定常運転量Wr(例えば、100%)よりも小さい切換運転量Wc(例えば、50%)で電力を取り出すようにした状態で、前記バルブ101〜104の切り換えを行うように当該バルブ101〜104及び前記インバータ141,142を前記制御装置440で制御するようにしたのである。
このため、本実施形態に係る固体高分子形燃料電池発電システム400においては、上記バルブ101〜104の開閉切換のタイムラグによって生じる可能性のある水素ガス3の無給状態における前記サブスタック111,112での水素ガス3の消費を抑えることができるので、上記水素ガス3の無給状態における当該サブスタック111,112での水素ガス3の消費に伴う内圧の低下を大幅に抑制することができる。
したがって、本実施形態によれば、前述した第二番目の実施形態の場合と同様な効果を得ることができるのはもちろんのこと、前記バルブ101〜104の切り換えに伴う前記サブスタック111,112内の圧力変動による前記セルへの衝撃を抑制することができるので、前記セルの機械的劣化を抑制することができる。
[第五番目の実施形態]
本発明に係る固体高分子形燃料電池発電システムの第五番目の実施形態を図10に基づいて説明する。図10は、固体高分子形燃料電池発電システムの主要部の概略構成図である。ただし、前述した第一〜四番目の実施形態の場合と同様な部分については、前述した第一〜四番目の実施の形態の説明で用いた符号と同様な符号を用いることにより、前述した第一〜四番目の実施形態での説明と重複する説明を省略する。
図10に示すように、前記ドレントラップ121,122の上側には、ガスリーク手段であるバルブ501,502の一端側がそれぞれ連結されている。これらバルブ501,502の他端側は、系外へ連絡している。
前記バルブ501,502は、制御手段である制御装置540の出力部にそれぞれ電気的に接続されており、当該制御装置540は、燃料ガス用切換時期確認手段である内蔵された図示しないタイマからの情報(運転時間)に基づいて、前記バルブ101〜104,107,108と共に当該バルブ501,502の開閉を制御することができるようになっている(詳細は後述する)。
このような本実施形態に係る固体高分子形燃料電池発電システム500においては、前記制御装置540を作動させると、前述した第二番目の実施形態の場合と同様に、当該制御装置540が前記バルブ101〜104,107,108を制御することにより、前述した第二番目の実施形態の場合と同様に、水素ガス3を高効率で利用しながら全体の電力効率を向上させつつ発電運転を行うことができる。
このようにして発電運転を行っているとき、前記制御装置540は、前記タイマからの情報に基づいて、予め設定された運転時間経過毎に、前記水素ガス3の流通方向最下流側に位置する前記サブスタック111,112(例えば、第二のサブスタック112)に接続するドレントラップ121,122(例えば、ドレントラップ122)、言い換えれば、前記サブスタック111,112の間に位置して閉鎖している前記バルブ103,104(例えば、バルブ104)が接続しているドレントラップ121,122(例えば、ドレントラップ122)に連結する前記バルブ501,502(例えば、バルブ502)のみを所定時間開放し、当該ドレントラップ121,122(例えば、ドレントラップ122)内の水素ガス3を所定量だけ系外へ排出する。
つまり、水素ガスボンベ130中の水素ガス3は、前記サブスタック111,112内で循環使用されると、僅かに含んでいる不純ガスが当該サブスタック111,112内で発電反応に関与することなくそのまま残留して次第に高濃度になり、当該サブスタック111,112の発電効率を低下させてしまうことから、予め設定された運転時間経過毎に、水素ガス3の流通方向最下流側に位置する当該サブスタック111,112(例えば、第三のサブスタック112)に接続するドレントラップ121,122(例えば、ドレントラップ122)に連結する前記バルブ501,502(例えば、バルブ502)のみを所定時間開放して、当該ドレントラップ121,122(例えば、ドレントラップ122)内の水素ガス3と共に上記不純ガスを系外へ排出することにより、当該サブスタック111,112内に残留する上記不純ガスの高濃度化を抑制するようにしたのである。
したがって、本実施形態に係る固体高分子形燃料電池発電システム500によれば、前述した第二番目の実施形態の場合と同様な効果を得ることができるのはもちろんのこと、前記サブスタック111,112内に残留する前記不純ガスの高濃度化を抑制することができるので、発電効率の低下をさらに抑制することができる。
[他の実施形態]
なお、前述した第二,四,五番目の実施形態においては、電磁式の二方型のバルブ103,104を用いて、前記第一のスタック111と前記第二のスタック112との間の水素ガス3の流路の切り換えを行う固体高分子形燃料電池発電システム200,400,500の場合について説明したが、他の実施形態として、上記バルブ103,104に代えて、例えば、図11に示すように、四つの接続ポートを有すると共に、対向する一組の接続ポート間のみを連絡できるようにしたロータリ式のバルブ601を適用して固体高分子形燃料電池発電システム600を構成し、当該バルブ601を90°ずつ回転させていくことにより、第一のスタック111と第二のスタック112との間の水素ガス3の流路を切り換えできるようにすることも可能である。
また、前述した第一番目の実施形態において、酸化ガス系統も上述した燃料ガス系統と同様に構成することにより、酸化ガス系統においても燃料ガス系統と同様な作用効果を得ることができる。
加えて、前述した第二,四,五番目の実施形態では、水素ガス3そのものを燃料ガスとして使用し、酸素を含有するガス(例えば空気等)を酸化ガスとして使用する場合について説明したが、酸素ガスそのものを酸化ガスとして使用する場合には、酸化ガス系統も前述した第二,四,五番目の実施形態に係る上述した燃料ガス系統と同様に構成することにより、酸化ガス系統においても前述した第二,四,五番目の実施形態での説明と同様な作用効果を得ることができる。
他方、前述した第三番目の実施形態では、酸素ガス4そのものを酸化ガスとして使用し、水素を含有するガス(例えば炭化水素の改質ガス等)を燃料ガスとして使用する場合について説明したが、水素ガスそのものを燃料ガスとして使用する場合には、燃料ガス系統も前述した第三番目の実施形態に係る上述した酸化ガス系統と同様に構成することにより、燃料ガス系統においても前述した第三番目の実施形態での説明と同様な作用効果を得ることができる。
また、前述した各実施形態では、燃料ガス用切換時期確認手段や酸化ガス用切換時期確認手段として、運転時間を計測する前記タイマを設け、前記制御装置140,240,340,440,540が、当該タイマからの情報に基づいて、予め設定された運転時間の経過により、前記バルブ101〜106,301,302,501,502及び前記インバータ141,142等を制御するようにしたが、他の実施形態として、例えば、以下のようにすること等によっても、前述した各実施形態の場合と同様な作用効果を得ることができる。
(1)燃料ガス用切換時期確認手段や酸化ガス用切換時期確認手段として、燃料ガス供給手段からの燃料ガスの送給量や酸化ガス供給手段からの酸化ガスの送給量を計測するガス流量計測手段(例えば、マスフローメータやオリフィス式ガス流量計等)を設け、制御手段が、当該ガス流量計測手段からの情報に基づいて、燃料ガスや酸化ガスの送給量の積算値により、前記バルブ等の位置切換手段及び前記ガスリーク手段並びに前記インバータ等の電力取出量調整手段を制御するようにする。
(2)燃料ガス用切換時期確認手段や酸化ガス用切換時期確認手段として、前記サブスタックに流れる電流量を計測する電流量計測手段を設け、制御手段が、当該電流量計測手段からの情報に基づいて、前記サブスタックに流れた電流量の積算値により、前記バルブ等の位置切換手段及び前記ガスリーク手段並びに前記インバータ等の電力取出量調整手段を制御するようにする。
(3)燃料ガス用切換時期確認手段や酸化ガス用切換時期確認手段として、前記セルの電圧を計測するセル電圧計測手段を設け、制御手段が、当該セル電圧計測手段からの情報に基づいて、前記ガス流通方向最上流側に位置する前記サブスタックの電圧値が、予め設定されたセル電圧基準値よりも小さくなったときに、前記バルブ等の位置切換手段及び前記ガスリーク手段並びに前記インバータ等の電力取出量調整手段を制御するようにする(例えば、特開2002−151125号公報等に記載されている技術の応用)。
(4)燃料ガス用切換時期確認手段や酸化ガス用切換時期確認手段として、前記サブスタック内の湿度を計測するサブスタック湿度計測手段を設け、制御手段が、当該サブスタック湿度計測手段からの情報に基づいて、前記ガス流通方向最上流側に位置する前記サブスタック内の湿度が、予め設定された湿度基準値よりも小さくなったときに、前記バルブ等の位置切換手段及び前記ガスリーク手段並びに前記インバータ等の電力取出量調整手段を制御するようにする。
(5)燃料ガス用切換時期確認手段や酸化ガス用切換時期確認手段として、前記サブスタックの前記ガス流通方向上流側に位置する前記セルの抵抗値を計測するセル抵抗計測手段(例えば、1kHz程度の交流電流をセルに印加して、その応答を計測するもの等)を設け、制御手段が、当該セル抵抗計測手段からの情報に基づいて、前記ガス流通方向最上流側に位置する前記サブスタックの、当該ガス流通方向上流側に位置する前記セルの抵抗値が、予め設定されたセル抵抗基準値よりも大きくなったときに(固体高分子電解質膜の水分が少なくなるとセル抵抗が大きくなる)、前記バルブ等の位置切換手段及び前記ガスリーク手段並びに前記インバータ等の電力取出量調整手段を制御するようにする。
(6)燃料ガス用切換時期確認手段や酸化ガス用切換時期確認手段として、前記サブスタック内の圧損値を計測する圧損計測手段を設け、制御手段が、当該圧損計測手段からの情報に基づいて、前記ガス流通方向最上流側に位置する前記サブスタックの圧損値が、予め設定された圧損基準値よりも小さくなったときに(固体高分子電解質膜の膨潤により圧迫された前記流路が当該固体高分子電解質膜の乾燥による収縮に伴って拡張して圧力損失が小さくなる)、前記バルブ等の位置切換手段及び前記ガスリーク手段並びに前記インバータ等の電力取出量調整手段を制御するようにする。
また、前述した各実施形態においては、前記制御装置140,240,340,440,540が、前記タイマからの情報に基づいて、予め設定された運転時間経過毎に前記バルブ107,108,307,308の開閉を行うことにより、前記ドレントラップ121,122,321,322内に回収した生成水2を系外へ排出するようにしたが、他の実施形態として、例えば、前記ドレントラップ121,122,321,322内の水位を計測する水位計測手段を設け、当該ドレントラップ121,122,321,322内の水位が規定値を超えると、制御手段が、当該水位計測手段からの情報に基づいて、前記バルブ107,108,307,308の開閉を行うことにより、当該ドレントラップ121,122,321,322内に回収した生成水2を系外へ排出するようにすることや、前記サブスタック111,112,311,312に流れる電流量を計測する電流量計測手段を設け、制御手段が、当該電流量計測手段からの情報に基づいて、当該サブスタック111,112,311,312に流れた電流量の積算値により、前記バルブ107,108,307,308の開閉を行うことにより、当該ドレントラップ121,122,321,322内に回収した生成水2を系外へ排出するようにすることも可能である。
また、前述した各実施形態における加湿運転量Wwは、定常運転量Wrよりも小さい大きさ(Wr>Ww≧0)であればよく、発電運転条件等の各種条件によって適宜設定される値である。
加えて、前述した第四番目の実施形態において説明した切換運転量Wcは、定常運転量Wrよりも小さい大きさ(Wr>Wc≧0)であればよく、発電運転条件等の各種条件によって適宜設定される値である。
また、前述した各実施形態においては、燃料ガスの流通経路や酸化ガスの流通経路を直列ループ状にするように2つの前記サブスタック111,112,311,312を接続した固体高分子形燃料電池110,310の場合について説明したが、本発明はこれに限らず、他の実施形態として、例えば、燃料ガスの流通経路や酸化ガスの流通経路を直列ループ状にするように3つ以上の前記サブスタックを接続した固体高分子形燃料電池の場合であっても、前述した各実施形態の場合と同様にして適用することができ、前述した各実施形態の場合と同様な効果を得ることができる。
なお、前述した第四番目の実施形態においては、2つの前記サブスタック111,112を接続した固体高分子形燃料電池110を備えた発電システム400であったことから、水素ガス3の流通方向最下流側に位置する前記サブスタック111,112(例えば、第二のサブスタック112)からの電力の取り出し量を定常運転量Wrよりも小さい切換運転量Wcとするように前記インバータ141,142(例えば、第二のインバータ142)を制御してから、水素ガス3の流通方向最上流側に新たに位置させる前記サブスタック111,112(例えば、第二のサブスタック112)を設定すると共に、水素ガス3の流通方向最下流側に新たに位置させる前記サブスタック111,112(例えば、第一のサブスタック111)を設定した後に、水素ガス3の流通方向最上流側に新たに位置させた前記サブスタック111,112(例えば、第二のサブスタック112)からの電力の取り出し量を加湿運転量Wwとするように前記インバータ141,142(例えば、第二のインバータ142)を制御すると共に、水素ガス3の流通方向最下流側に新たに位置させた前記サブスタック111,112(例えば、第一のサブスタック111)からの電力の取り出し量を定常運転量Wrとするように前記インバータ141,142(例えば、第一のインバータ141)を制御するようにしたが、燃料ガスの流通経路や酸化ガスの流通経路を直列ループ状にするように3つ以上のサブスタックを接続した固体高分子形燃料電池を備えた発電システムの場合には、前記ガスの流通方向最上流側に位置するサブスタックを除いた残りのサブスタックの少なくとも一つからの電力の取り出し量を前記定常運転量Wrよりも小さい切換運転量Wcとするように電力取出量調整手段を制御してから、当該ガスの流通方向最上流側に位置するサブスタックを新たに設定するように前記最上流位置切換手段を制御すると共に、当該ガスの流通方向最下流側に位置するサブスタックを新たに設定するように前記最下流位置切換手段を制御した後に、当該ガスの流通方向最上流側に新たに位置したサブスタックの電力取り出し量を定常運転量Wrよりも小さい加湿運転量Wwとすると共に、当該流通方向最上流側に新たに位置したサブスタックを除いた残りのサブスタックの電力取り出し量を定常運転量Wrとするように前記電力取出量調整手段を制御するようにする。