以下、本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図1及び図2は装置全体の一構成を模式的に示すものであって、ベース踏力を与える機構の第1実施例及び第2実施例については図3及び図6を用いて後述する。
このアクセルペダル踏力制御装置は、基本的には、図示しない車両の車体1に設けられたアクセルペダル2の踏力(操作反力)を可変的に制御するものであって、後述するように、車両に設けられたアクセルペダル2の開度(踏込量)を検知する手段と、アクセルペダル2の踏力をベース踏力から変更する手段と、を有し、アクセルペダル2の開度が所定のアクセル開度閾値よりも大きい領域ではアクセルペダル2の踏力をベース踏力よりも増加させるものである。
アクセルペダル2は、図1,図2に示すように、回転軸3上に設けられて該回転軸3を支点として揺動するように構成され、一端が車体1に固定されるとともに他端が回転軸3に固定された種々の形態のリターンスプリング4によって、アクセル閉方向への反力が与えられている。また、回転軸3の一端が車体1に軸受5を介して回転自在に支持されている一方、回転軸3の他端付近に、アクセル開度検知部(アクセル開度検知手段)の一例としてアクセルポジションセンサ6が設けられている。
なお、本実施例では、アクセルペダル2の踏込量(アクセル開度)と内燃機関(図示せず)のスロットルバルブ(図示せず)の開度とが互いに連動し、アクセルペダル2の踏込量に応じて内燃機関のスロットルバルブ開度が増大する。つまり、アクセル開度に応じて燃料噴射量(ひいては燃料消費量)が増大する。
そして、踏力変更機構としては、回転軸3の回転に摩擦力を与える互いに対向した一対の摩擦部材7a,7bを備えた可変フリクションプレート7からなり、一方の摩擦部材7aは、回転軸3の端部に機械的に結合して設けられ、他方の摩擦部材7bは、スプライン等を介して、固定軸8に、軸方向移動自在かつ非回転に支持されている。上記固定軸8は、車体1に固定支持されている。さらに、上記摩擦部材7bを摩擦部材7aへ向けて付勢するアクチュエータ(例えば電磁ソレノイド)9が車体1に固定されている。
上記可変フリクションプレート7は、アクチュエータ9の作動により摩擦部材7bを軸方向(図1における矢印A1方向)へ移動させ、これにより、摩擦部材7aと摩擦部材7bとの間の摩擦力を可変的に制御する。このアクチュエータ9の作動は、コントロールユニット10によって制御されている。従って、アクチュエータ9の作動を、コントロールユニット10が制御することで、回転軸3に付与される摩擦力ひいてはアクセルペダル2の踏込時の踏力を変更することができる。
上記コントロールユニット10には、アクセルペダル2の開度を検知する上記のアクセルポジションセンサ6のほか、車両の傾きから道路勾配を検知する加速度センサ11、周囲の大気圧を検知する大気圧センサ12、吸気温度を検知する吸気温センサ13、車速を検知する車速センサ14、車両のシート(図示せず)に内蔵されて乗員が搭乗しているか否かを感知する座圧センサ15、変速機の変速比を検知するギアポジションセンサ16、等の各種センサからの信号が入力されており、さらに、車両の現在位置とこの現在位置付近の地図情報が入手可能なカーナビゲーションシステム17からの情報、及び、自車と前方車両との間の車間距離を検知するレーザーレーダー18からの信号が入力されている。
なお、変速機としては、例えば変速比が連続的に変化する無段変速機が用いられ得るが、有段補助変速機構とトルクコンバータとを組み合わせた形式の自動変速機や手動変速機などであってもよい。なお、無段変速機の場合は、入力軸側および出力軸側の回転速度の比として変速比を求めることが可能である。
図3は、ベース踏力を付与する機構(ベース踏力付与部)の第1実施例として、アクセル開度が増加するに従って、ベース踏力の増加割合が減少する特性のものを模式的に示している。図3(a)はペダルストロークが小さい場合、図3(b)はペダルストロークが大きい場合を示している。この機構は、支点21Aを中心に揺動するアクセルペダル2(図2参照)のパッド21と、このパッド21にベース踏力に相当するバネの反力を付与するスプリング22とを、第1リンク23と第2リンク24とにより連結した構造となっている。第1リンク23は、一端でパッド21に連結され、他端で第2リンク24に連結されている。第1リンク23とパッド21とは互いに揺動可能に連結され、第1リンク23と第2リンク24とは互いに揺動可能に連結されている。第2リンク24は、支点24Aを中心に回転可能に車体側に取り付けられており、この支点24Aから一方へ延びる第1アーム24Bの先端で第1リンク23と連結され、支点24Aから他方へ延びる第2アーム24Cの先端でスプリング22と連結されている。
このような構成により、運転者が所定の操作力F1(F1’)でパッド21を踏み込むと、第1リンク23の長手方向に沿う成分が、第1リンク23が第2リンク24を押し込もうとする分力F2として作用し、かつ、この力F2のうち、第2リンク24の第1アームと直交する方向の成分が、第2リンク24を回転させようとする分力F3Aとして作用し、この力F3Aによるトルク(第1アーム24Bの腕長さ×F3A)が、スプリング22のバネ力F3によるトルク(第2アーム24Cの腕長さ×F3の第2アーム24Cの直交方向成分)と釣り合うこととなる。
ここで、運転者によるアクセルペダルの操作量・踏込量(ペダルストローク又はアクセル開度とも呼ぶ)、すなわちアクセルペダル2の傾斜角度に応じて、F1とF2とのなす角度α1やF2とF3Aとのなす角度α2が変化することによって、同等のスプリング22の反力F3と釣り合うのに必要な運転者の操作力F1が異なるものとなる。なお、実際には踏力の増加に応じてスプリング反力F3も大きくなっていくものであるが、ここでは理解を容易にするために、アクセルペダルの操作量にかかわらず同等のスプリング反力F3のものとして説明する。
この第1実施例では、パッド21のペダルストロークが大きくなるほど、上記の角度α1’,α2’が小さくなり(α1’<α1、α2’<α2)、踏込力F1’に対する分力F2’,F3A’の割合が大きくなっていくことから、踏込力F1’に対して最終的にバネ力と釣り合う力F3A’が大きくなり、同じスプリング22の反力F3と釣り合うのに必要なベース踏力F1’が小さくなっていく(F1>F1’)。この結果、図4にも示すように、アクセルペダルのペダルストローク(アクセル開度)の増加に応じてベース踏力が完全に比例して増加するものではなく、アクセル開度が増加するに従って、ペダル踏力の増加割合が減少する、いわゆる上に凸な特性のものとなる。なお、この図4はアクセルペダル踏力の特性を概略的に示しており、基本的な踏力つまりベース踏力は、開度増加方向と開度減少方向とで適度なヒステリシスを有しつつ、アクセル開度に対して増加する。
図5に示すように、開度増加方向への操作時つまり踏込時に所定のアクセル開度閾値SLよりもアクセル開度が大きくなると、アクセルペダル踏力をベース踏力よりもステップ的に増加させる。このようにアクセルペダル踏力がステップ的に増大することで、運転者に適度な壁感を与え、運転者によるアクセルペダル2のそれ以上の踏込が自然に抑制され、かつ同時に、運転者に対し、燃料消費率が低い(つまり燃費が良い)運転状態から燃料消費率が高い(つまり燃費が悪い)運転状態に移行したことを確実に報知することができる。なお、上記のアクセル開度増加方向でのアクセルペダル2の踏力増加は、例えば、アクセルペダル2の操作方向がアクセル開度減少方向に反転したときに直ちに解除するようにしてもよく、あるいは、アクセル開度が上記の所定開度以下に減少したときに解除するようにしてもよい。
ここで、本実施例のようにベース踏力が上に凸な特性となる機構を用いて、ペダル踏力をベース踏力に対して増加させる場合、ペダル踏力増加後のトータルのペダル踏力(ベース踏力+踏力増加量)がアクセル開度の増加に対して一定割合で増加する特性に近づくように、図5の破線H1の特性で示すように一定の増加量ΔF0を増加するのではなく、アクセル開度の増加に応じてペダル踏力の増加量を増加させていく。つまり、図5に示すように、一定の増加量ΔF0に対し、アクセル開度に比例して増加する追加の増加量ΔF1を加えている。
このような特性とすることによって、運転者に対してペダル踏力を増加した後に運転者がアクセルペダルを踏み足したような場合に、ペダル踏力の増加割合が減少することによって壁感が失われるような印象を与えることを抑制し、一定の適度な壁感を与え続けることができるために、壁感が失われたと運転者が感じてアクセルペダルを不必要に踏み増すことが抑制され、これによる燃費の悪化を抑制することができる。
なお、図5(b)に示すように、この実施例の機構では、比較的大きなアクセル開度となってからベース踏力の増加割合が大きくなる傾向にあるために、アクセル開度が開度閾値SLよりも大きい所定値SL1に達してからアクセル開度の増加に応じて踏力増加量を増大するようにしているが、これに限らず、例えばアクセル開度閾値SLを超えたら直ちに踏力増加量の増加割合を増大させるようにしても良い。
図6は、ベース踏力を付与する機構(ベース踏力付与部)の第2実施例として、アクセル開度が増加するに従ってペダル踏力の増加割合が増加する特性のものを模式的に示している。図6(a)はペダルストロークが小さい場合、図6(b)はペダルストロークが大きい場合を示している。この機構は、支点31Aを中心に揺動するアクセルペダル2のパッド31と、このパッド31とプーリ32とを連結するリンク33と、プーリ32を所定方向(図の時計回り方向Xと反対方向)へ付勢するスプリング34と、を有しており、このスプリング34のバネ力F5によってベース踏力F4が付与される。パッド31とリンク33とは互いに揺動することのないように連結されている。
上記の構成において、運転者が所定の操作力F4でアクセルペダル2を踏み込むと、プーリ32の接線方向に沿う分力が、リンク33を介してプーリ32を所定方向Xへ回転させようとする力F5(F5<F4)として作用し、この力F5とスプリング34のバネ力とが釣り合うこととなる。
ここで、アクセルペダル2の踏込量(ペダルストローク)つまり傾斜角度に応じて、アクセルペダル2を踏み込む方向とプーリ32の接線方向とのなす角度βが変化することから、同じスプリング34の反力F5と釣り合うのに必要な運転者の操作力F4つまりベース踏力が異なるものとなる。この第2実施例では、パッド21のペダルストロークが大きくなるほど、上記の角度βが角度β’へと大きくなることから、同じスプリング34の反力F5と釣り合うのに必要なベース踏力F4’も大きくなっていく(F4<F4’)。この結果、図7に示すように、アクセルペダルのペダルストローク(アクセル開度)が増加するに従って、ペダル踏力の増加割合が増加する、いわゆる下に凸な特性のものとなる。
このようにベース踏力が下に凸な特性となる機構を用いて、ペダル踏力をベース踏力に対して増加させる場合には、増加後のトータルのペダル踏力(ベース踏力+踏力増加量)がアクセル開度の増加に対して一定割合で増加する特性に近づくように、アクセル開度の増加に応じてペダル踏力の増加量を減少させる。つまり、図8に示すように、一定の増加量ΔF0に対し、アクセル開度に比例する減少量ΔF2だけ減少させていく。
このような特性とすることによって、運転者に対して過剰にペダル踏力が大きくなったような印象を与えることがなく、アクセル開度の増加に伴って一定の割合で踏力が増加することとなるために、適度な壁感を与えつつ、ペダル踏力を踏み足し易いものとなり、運転者の意図通りの加速を実現することができる。
なお、上記実施例では、アクセルペダルのペダル踏力増加後にペダル踏力が一定となるように制御しているが、図3に示すように、上に凸な特性の機構を用いる場合には、ペダル踏力増加前、つまりペダル踏力の増加がなされていない状況であっても、図5の一点鎖線Pで示すように、アクセル開度の増加に応じてペダル踏力が一定割合で増加するように、ペダル踏力に所定の増加分ΔPを付与するようにしても良い。この場合、例えば、運転者にアクセルペダルを踏み込むに従ってペダル踏力が軽くなるような印象を与えて運転者が不必要にアクセルペダルを踏み増すおそれがあるような場合に、ペダル踏力を適切に増加することで、このような運転者のアクセルペダルの踏み増しを抑制することができる。 また、本発明に係るアクセルペダル踏力制御装置は、内燃機関のみを駆動源とする車両にのみ適用されるものではなく、例えば電気自動車やハイブリッド自動車等にも適用可能である。