図1は、実施形態に係るブレーキ制御装置の構成を示す図である。図1に示すブレーキ制御装置10は、車両用の電子制御式ブレーキシステム(ECB)を構成しており、運転者によるブレーキ操作部材としてのブレーキペダル12の操作量にもとづいて車両の4輪のブレーキを最適に制御するものである。
ブレーキペダル12は、運転者による踏み込み量に応じて作動液を送り出すマスタシリンダ14に接続されている。ブレーキペダル12には、その踏み込み量を検出するための第1ストロークセンサ46aと第2ストロークセンサ46b(以下、総称する場合は「ストロークセンサ46」という)が設けられている。
実施形態に係るストロークセンサ46は、非接触式のホールIC型の磁気センサである。第1ストロークセンサ46aおよび第2ストロークセンサ46bは、ともにブレーキペダル12の回転軸に設けられる。第1ストロークセンサ46aおよび第2ストロークセンサ46bは、図示しない共通の電源部から電流が供給される。ストロークセンサ46は、ホールICの回路において、検出した値に温度補正等を施してECU200に出力する。
ストップランプスイッチ47は、ブレーキペダル12の踏み込みの有無を検出する。ストップランプスイッチ47は、車両の後方に設けられるブレーキランプの点灯制御に用いられる。たとえば、運転者によりブレーキペダル12が踏み込まれると、ストップランプスイッチ47がONされて、ブレーキランプが点灯し、ブレーキペダル12の踏み込みが解除されると、ストップランプスイッチ47がOFFされて、ブレーキランプが消灯する。
マスタシリンダ14の第1出力ポート14aには、運転者によるブレーキペダル12の踏力に応じたペダルストロークを創出するストロークシミュレータ24が接続されている。
マスタシリンダ14とストロークシミュレータ24とを接続する流路の中途には、シミュレータカット弁23が設けられている。シミュレータカット弁23は、通電することにより開弁し、非通電時に閉弁する常閉型の電磁開閉弁である。また、マスタシリンダ14には、作動液を貯留するためのリザーバタンク26が接続されている。
マスタシリンダ14の第1出力ポート14aには、右前輪用のブレーキ油圧制御管18が接続されており、ブレーキ油圧制御管18は、右前輪に対して制動力を付与する右前輪用のホイールシリンダ20FRに接続されている。また、マスタシリンダ14の第2出力ポート14bには、左前輪用のブレーキ油圧制御管16が接続されており、ブレーキ油圧制御管16は、左前輪に対して制動力を付与する左前輪用のホイールシリンダ20FLに接続されている。
右前輪用のブレーキ油圧制御管18の中途には、右電磁開閉弁22FRが設けられており、左前輪用のブレーキ油圧制御管16の中途には、左電磁開閉弁22FLが設けられている。これらの右電磁開閉弁22FRおよび左電磁開閉弁22FLは、何れも、非通電時に開状態にあり、通電時に閉状態に切り換えられる常開型電磁弁である。
また、右前輪用のブレーキ油圧制御管18の中途には、右前輪側のマスタシリンダ圧を検出する右マスタシリンダ圧センサ48FRが設けられており、左前輪用のブレーキ油圧制御管16の途中には、左前輪側のマスタシリンダ圧を計測する左マスタシリンダ圧センサ48FLが設けられている。なお、以下では適宜、右マスタシリンダ圧センサ48FRおよび左マスタシリンダ圧センサ48FLを総称して、「マスタシリンダ圧センサ48」という。
ブレーキ制御装置10では、運転者によってブレーキペダル12が踏み込まれた際、ストロークセンサ46によりその踏み込み量が検出されるが、これらの右マスタシリンダ圧センサ48FRおよび左マスタシリンダ圧センサ48FLによって検出されるマスタシリンダ圧からもブレーキペダル12の踏み込み操作力(踏力)を求めることができる。
一方、リザーバタンク26には、油圧給排管28の一端が接続されており、この油圧給排管28の他端には、モータ32により駆動されるオイルポンプ34の吸込口が接続されている。オイルポンプ34の吐出口は、高圧管30に接続されており、この高圧管30には、アキュムレータ50とリリーフバルブ53とが接続されている。本実施形態では、オイルポンプ34として、モータ32によってそれぞれ往復移動させられる2体以上のピストン(図示せず)を備えた往復動ポンプが採用される。また、アキュムレータ50としては、作動液の圧力エネルギを窒素等の封入ガスの圧力エネルギに変換して蓄えるものが採用される。
アキュムレータ50は、オイルポンプ34によって例えば14〜22MPa程度にまで昇圧された作動液を蓄える。また、リリーフバルブ53の弁出口は、油圧給排管28に接続されており、アキュムレータ50における作動液の圧力が異常に高まって例えば25MPa程度になると、リリーフバルブ53が開弁し、高圧の作動液は油圧給排管28へと戻される。さらに、高圧管30には、アキュムレータ50の出口圧力、すなわち、アキュムレータ50における作動液の圧力を検出するアキュムレータ圧センサ51が設けられている。
そして、高圧管30は、増圧弁40FR、40FL、40RR、40RLを介して右前輪用のホイールシリンダ20FR、左前輪用のホイールシリンダ20FL、右後輪用のホイールシリンダ20RRおよび左後輪用のホイールシリンダ20RLに接続されている。以下、適宜、ホイールシリンダ20FR〜20RLを総称して「ホイールシリンダ20」といい、適宜、増圧弁40FR〜40RLを総称して「増圧弁40」という。増圧弁40は、何れも、非通電時は閉じた状態にあり、必要に応じてホイールシリンダ20の増圧に利用される常閉型の電磁流量制御弁(リニア弁)である。なお、図示されない車両の各車輪に対しては、ディスクブレーキユニットが設けられており、各ディスクブレーキユニットは、ホイールシリンダ20の作用によってブレーキパッドをディスクに押し付けることで制動力を発生する。
また、右前輪用のホイールシリンダ20FRと左前輪用のホイールシリンダ20FLとは、それぞれ減圧弁42FRまたは42FLを介して油圧給排管28に接続されている。減圧弁42FRおよび42FLは、必要に応じてホイールシリンダ20FR,20FLの減圧に利用される常閉型の電磁流量制御弁(リニア弁)である。一方、右後輪用のホイールシリンダ20RRと左後輪用のホイールシリンダ20RLとは、常開型の電磁流量制御弁である減圧弁42RRまたは42RLを介して油圧給排管28に接続されている。以下、適宜、減圧弁42FR〜42RLを総称して「減圧弁42」という。
右前輪用、左前輪用、右後輪用および左後輪用のホイールシリンダ20FR〜20RL付近には、それぞれ対応するホイールシリンダ20に作用する作動液の圧力であるホイールシリンダ圧を検出するホイールシリンダ圧センサ44FR,44FL,44RRおよび44RLが設けられている。以下、適宜、ホイールシリンダ圧センサ44FR〜44RLを総称して「ホイールシリンダ圧センサ44」という。
上述の右電磁開閉弁22FRおよび左電磁開閉弁22FL、増圧弁40FR〜40RL、減圧弁42FR〜42RL、オイルポンプ34、アキュムレータ50等は、ブレーキ制御装置10の油圧アクチュエータ81を構成する。そして、かかる油圧アクチュエータ81は、電子制御ユニット(以下「ECU」という)200によって制御される。
ECU200は、ホイールシリンダ20FR〜20RLにおけるホイールシリンダ圧を制御する制御手段として機能する。ECU200は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、エンジン停止時にも記憶内容を保持できるバックアップRAM等の不揮発性メモリ、入出力インターフェース、各種センサ等から入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換して取り込むためのA/Dコンバータ、計時用のタイマ等を備えるものである。
ECU200には、上述の電磁開閉弁22FR,22FL、シミュレータカット弁23、増圧弁40FR〜40RL、減圧弁42FR〜42RL等の油圧アクチュエータ81を含む各種アクチュエータ類が電気的に接続されている。
また、ECU200には、制御に用いるための信号を出力する各種センサ・スイッチ類が電気的に接続されている。すなわち、ECU200には、ストロークセンサ46からブレーキペダル12のペダルストロークを示す信号が入力され、マスタシリンダ圧センサ48からマスタシリンダ圧を示す信号が入力され、ストップランプスイッチ47からブレーキランプのON/OFFを示す信号が入力される。
このように構成されるブレーキ制御装置10では、運転者によってブレーキペダル12が踏み込まれると、ECU200により、ブレーキペダル12の踏み込み量を表すペダルストロークとマスタシリンダ圧とから車両の目標制動力が算出され、算出された目標制動力に応じて各車輪のホイールシリンダ圧の目標値である目標油圧が求められる。そして、ECU200により増圧弁40、減圧弁42が制御され、各車輪のホイールシリンダ圧が目標油圧になるよう制御される。
図2は、実施形態に係るブレーキペダル12の踏み込み量とストロークセンサ46の出力電圧の関係を示す。実線60は、第1ストロークセンサ46aの第1出力電圧を示し、一点鎖線62は、第2ストロークセンサ46bの第2出力電圧を示す。
第2ストロークセンサ46bは、第1ストロークセンサ46aの出力電圧を反転して出力する。具体的には、実線60に示す第1出力電圧は、ブレーキペダル12の踏み込み量の増加に応じて増加する。一方、一点鎖線62に示す第2出力電圧は、ブレーキペダル12の踏み込み量の増加に応じて減少する。
2つの第1ストロークセンサ46aおよび第2ストロークセンサ46bを設けることで、供給電源に一時的にノイズが生じて、それぞれのストロークセンサ46a、46bの出力電圧がノイズの影響を受けたとしても、第2ストロークセンサ46bは第1ストロークセンサ46aの出力電圧を反転して出力するため、ECU200は、それぞれの出力電圧を踏み込み量に換算して平均値を用いることで、そのノイズをキャンセルすることができる。
ブレーキペダル12が踏み込まれていない場合、たとえば第1出力電圧は、4.6Vであり、第2出力電圧は、0.4Vである。踏み込み量STaから踏み込み量STcまでが、ブレーキペダル12の通常の使用領域である。車両の運転中にブレーキペダル12が最大量STdまで踏み込まれることはまれであり、ブレーキペダル12を半分程度踏み込めば、比較的大きな制動力が発生する。すなわち、通常の法定速度以内であれば踏み込み量STbで、車両が止まるために十分な制動力が発生する。実線60と一点鎖線62の交点に示す第1出力電圧と第2出力電圧が等しい場合は、ブレーキペダル12が比較的大きく踏み込まれた状態である。
ここで、実施形態のECU200は、第1出力電圧と第2出力電圧を用いてストロークセンサ46の出力の異常を判定する。具体的にECU200は、第1出力電圧と第2出力電圧との和が所定の範囲から外れれば、第1ストロークセンサ46aおよび/または第2ストロークセンサ46bの出力が異常であると判定する。本図では、第1出力電圧と第2出力電圧との和が5V程度であれば、ストロークセンサ46の出力に異常はないと判定する。
図3は、実施形態に係るストロークセンサ46とECU200の回路構成を示す。電源ライン68は、第1ストロークセンサ46aと第2ストロークセンサ46bとをECU200内の電源部に接続する。グランドライン72は、第1ストロークセンサ46aと第2ストロークセンサ46bとをECU200内の電源部に接続する。第1信号ライン71は、第1ストロークセンサ46aからECU200に第1出力電圧を供給するための伝送路であり、第2信号ライン74は、第2ストロークセンサ46bからECU200に第2出力電圧を供給するための伝送路である。また、ストロークセンサ46をECU200に接続する各ライン68、71、72、74の間には、コネクタ64およびコネクタ66が介在する。
電源ライン68は、電源部のプラス側に接続され、グランドライン72は、電源部のマイナス側に接続される。第1ストロークセンサ46aと第2ストロークセンサ46bは、電源ライン68とグランドライン72により電源部に対して並列に接続される。すなわち、第1ストロークセンサ46aと第2ストロークセンサ46bは、ともに共通の電源部から電流が供給される。これにより、コネクタやケーブルを共通化することで、コネクタやケーブルの部品点数を減らすことができ、コストを抑えることができる。なお、電源部が出力する電圧を電源電圧といい、ストロークセンサ46が電源部から供給される電圧を供給電圧という。
ここで、接触不良による抵抗76が電源ライン68のコネクタ64に発生すると、ストロークセンサ46への供給電圧は、抵抗76に応じて低下する。ストロークセンサ46に供給する電源電圧は、ECU200内の電源電圧モニタで監視している。ECU200内の電源電圧モニタでは、電源電圧モニタからストロークセンサ46までの電源ライン68に発生した抵抗76にもとづく、ストロークセンサ46への供給電圧の低下を検出することができない。また、供給電圧が低下すると、ストロークセンサ46の出力電圧が不定となるおそれがある。そこで、ストロークセンサ46は、供給電圧が低下した場合に、以下の制御を実行する。
図4は、供給電圧の低下時のストロークセンサ46の出力電圧を示す。本図の縦軸は電圧を示し、横軸は時間を示す。二点鎖線79は、電源部からの供給電圧を示し、一点鎖線78は、第1ストロークセンサ46aの第1出力電圧を示し、実線77は、第2ストロークセンサ46bの第2出力電圧を示す。なお、本図において、ブレーキペダル12の踏み込みはない。
時刻t0から時刻t1に示すように供給電圧が5.0Vで安定していれば、第1出力電圧は4.6Vに保たれ、第2出力電圧は0.4Vに保たれる。二点鎖線79に示す供給電圧には、時刻t1から電圧低下が発生している。供給電圧の電圧低下に応じて第1出力電圧と第2出力電圧が低下する。ここで、第1ストロークセンサ46aおよび第2ストロークセンサ46bは、電源部から供給される電圧が所定電圧以下に低下すれば、供給電圧を第1出力電圧および第2出力電圧として出力する。具体的には、時刻t2において供給電圧が4.5V以下になったため、第1ストロークセンサ46aと第2ストロークセンサ46bは、供給電圧を第1出力電圧と第2出力電圧として出力する。ホールIC型のストロークセンサ46では、供給電圧の低下時に出力電圧が不定となりうる。そこで、ストロークセンサ46は、供給電圧の低下時にはホールICにおいて出力電圧を供給電圧に切り替えて出力し、出力電圧が不定となることを防止する。
図5は、第1出力電圧と第2出力電圧の関係を示す。縦軸が第1出力電圧を示し、横軸が第2出力電圧を示す。実線85は、第1出力電圧と第2出力電圧との和が5.0Vに保たれている理想的な出力電圧の関係を示す。図2において説明したように、第2ストロークセンサ46bは第1ストロークセンサ46aの出力電圧を反転して出力しているため、2つストロークセンサ46の検出量が同じであれば、正常時の出力電圧の和は、一定となる。ここで、実線85に示すような理想的な第1出力電圧と第2出力電圧との和を基準値という。
領域83は第1出力電圧と第2出力電圧が正常である範囲を示し、正常範囲とよぶ。第1出力電圧と第2出力電圧の組み合わせが正常範囲から外れれば、ストロークセンサ46の出力が異常であるとされる。正常範囲は、実線85に示す基準値から所定値以上乖離していない範囲に定められる。
破線80は、供給電圧の低下時の第1出力電圧と第2出力電圧を示す。破線80に示す出力電圧の状況は、図4に示す時刻t2以降の出力電圧の状況に相当する。このとき、破線80に示す第1出力電圧と第2出力電圧がともに低下していくと、2.5V付近で正常範囲に含まれる。正常範囲を用いた制御によると、供給電圧の低下時のストロークセンサ46の出力電圧であっても、第1出力電圧と第2出力電圧とが正常範囲にあれば、ストロークセンサ46の出力異常とはされないため、2.5V付近の第1出力電圧と第2出力電圧にもとづいて目標制動力が決定され、意図しない突発的な制動力が発生することになる。
ここで、もしストロークセンサ46の出力が正常であれば、第1出力電圧と第2出力電圧とが2.5V付近で実質的に等しい場合、ブレーキペダル12が比較的大きく踏み込まれている状態であり、マスタシリンダ圧が所定圧力値より高いはずである。そこで、実施形態において、ECU200は、第1出力電圧と第2出力電圧が正常範囲内にあっても、第1出力電圧と第2出力電圧との差分の絶対値が所定閾値以下である場合、すなわち第1出力電圧と第2出力電圧とが実質的に等しい場合に、マスタシリンダ圧が所定圧力値より小さければ、第1ストロークセンサ46aまたは第2ストロークセンサ46bの出力が異常であると判定する。これにより、ブレーキペダル12を踏んでいないのに、ストロークセンサ46への供給電圧の低下時の制御により第1出力電圧と第2出力電圧が正常範囲に含まれて、その異常時の第1出力電圧と第2出力電圧ともとづいて、不要な制動力が発生することを防止することができる。
図6は、実施形態に係るECU200の機能構成を示す。ECU200は、第1ストローク取得部82、第2ストローク取得部84、マスタシリンダ圧取得部86、ストップランプ信号取得部88、第1異常判定部90、第2異常判定部92、および制御部94を備える。
第1ストローク取得部82は、第1ストロークセンサ46aから第1出力値を取得する。第2ストローク取得部84は、第2ストロークセンサ46bから第2出力値を取得する。第1出力値と第2出力値は、ストロークセンサ46の出力信号である出力電圧であってよい。第1ストローク取得部82と第2ストローク取得部84は、第1出力値と第2出力値を第1異常判定部90に供給する。
マスタシリンダ圧取得部86は、右マスタシリンダ圧センサ48FRと左マスタシリンダ圧センサ48FLから第1マスタ出力値と第2マスタ出力値(以下、総称する場合は「マスタ出力値」という)を取得する。マスタ出力値は、出力電圧であってよく、または出力電圧を圧力に換算したマスタシリンダ圧であってよい。マスタシリンダ圧取得部86は、マスタ出力値を第2異常判定部92に供給する。
ストップランプ信号取得部88は、ストップランプスイッチ47からストップランプ信号を取得する。ストップランプ信号がONを示せば、ブレーキペダル12が踏み込まれている状態であり、ストップランプ信号がOFFを示せば、ブレーキペダル12が踏み込まれていない状態である。ストップランプ信号取得部88は、ストップランプ信号を第2異常判定部92に供給する。
第1異常判定部90は、第1出力値と第2出力値との和が所定の範囲にあるかどうかを判定する。すなわち、第1出力値と第2出力値との和が基準値から所定値以上乖離していないかどうか判定する。第1異常判定部90は、第1出力値と第2出力値との和が所定の範囲から外れれば、第1ストロークセンサ46aおよび/または第2ストロークセンサ46bの出力が異常であると判定する。これにより、第1異常判定部90は、第1出力値と第2出力値との和にもとづいてストロークセンサ46の出力の異常を判定することができる。第1異常判定部90は、ストロークセンサ46の出力の異常を判定すれば、判定結果を制御部94に供給する。一方、第1異常判定部90は、第1出力値と第2出力値との和が所定の範囲にあると判定すれば、判定結果と第1出力値と第2出力値とを第2異常判定部92に供給する。
第2異常判定部92は、第1異常判定部90の判定結果を受けて、第1出力値と第2出力値との差分の絶対値が所定閾値以下であるかどうかを判定する。第2異常判定部92は、第1出力値と第2出力値との差分の絶対値が所定閾値以下でなければ、ストロークセンサ46の出力は異常でないと判定し、判定結果を制御部94に供給する。
第2異常判定部92は、第1出力値と第2出力値との差分の絶対値が所定閾値以下である場合、すなわち第1出力値と第2出力値とが実質的に等しい場合、マスタ出力値が所定圧力値より小さいかどうかを判定する。このとき第2異常判定部92は、マスタ出力値が所定圧力値より小さければ、第1ストロークセンサ46aおよび/または第2ストロークセンサ46bの出力が異常であると判定する。ここで、第1出力値と第2出力値との和が所定の範囲内にあり、第1出力値と第2出力値とが実質的に等しい場合、ストロークセンサ46の出力が正常であれば、ブレーキペダル12が比較的大きく踏み込まれた状態であり、マスタシリンダ圧は所定圧力値より高圧となる。この論理に矛盾が生じている場合に、第2異常判定部92は、ストロークセンサ46が異常であると判定する。これにより、ホールIC型のストロークセンサ46の供給電圧の低下時に第1異常判定部90に異常と判定されず、不要な制動力を発生してしまうことを防止することができる。なお、所定の圧力値は、第1出力値と第2出力値とが等しいときのブレーキペダル12の踏み込み量に応じたマスタシリンダ圧にもとづいて定められてよい。
また、第2異常判定部92は、第1異常判定部90の判定結果を受けて、第1出力値と第2出力値との差分の絶対値が所定閾値以下であり、マスタ出力値が所定圧力値より小さい場合に、ストップランプスイッチ47がブレーキペダル12の踏み込みを検出していれば、第1ストロークセンサ46aおよび/または第2ストロークセンサ46bの出力が異常でないと判定してよい。このとき、第2異常判定部92は、マスタシリンダ圧センサ48の出力の異常と判定してもよい。一方、第2異常判定部92は、第1出力値と第2出力値との差分の絶対値が所定閾値以下であり、マスタ出力値が所定圧力値より小さい場合に、ストップランプスイッチ47がブレーキペダル12の踏み込みを検出していなければ、第1ストロークセンサ46aおよび/または第2ストロークセンサ46bの出力が異常であると判定してよい。
ここで、たとえばマスタシリンダ14に作動液漏れの異常が発生していた場合に、ブレーキペダル12が踏み込まれたとしてもマスタシリンダ圧が直ちに上昇しない。すると、第1出力値と第2出力値との差分の絶対値が所定閾値以下であり、マスタ出力値が所定圧力値より小さい場合が生じうる。このとき、マスタシリンダ圧センサ48の出力が異常であるのに、ストロークセンサ46の出力が異常であると判定されてしまう。そこで、ストップランプスイッチ47の出力信号によりブレーキペダル12の踏み込みの有無をさらに判定することで、ストロークセンサ46の出力が異常であるか、マスタシリンダ圧センサ48の出力が異常であるかを判定することができる。異常のあるセンサを特定できれば、異常でない他方のセンサを用いてブレーキペダル12の踏み込みを検出することができる。また、マスタシリンダ圧センサ48の出力の異常を検出する前に、ストロークセンサ46の出力が異常であると判定することを抑制することができる。なお、どちらかのセンサが異常であると判定されれば、全ての制御弁の通電を停止し、運転者の踏力によるブレーキモードに移行すれば問題ないが、ECBではストロークセンサ46の出力が異常であると判定された場合に、マスタシリンダ圧センサ48の出力をブレーキ制御に用いる場合がある。そのためECBにおいて、ストロークセンサ46およびマスタシリンダ圧センサ48のどちらのセンサの出力が異常であるかを判定することができることは有用である。第2異常判定部92は、判定結果を制御部94に供給する。
制御部94は、第1異常判定部90と第2異常判定部92とから判定結果を受け取り、判定結果に応じて、ブレーキモードを維持または変更する。制御部94は、ストロークセンサ46の出力が異常でないとの判定を受けて、ブレーキモードを維持し、ストロークセンサ46の出力にもとづいてブレーキ制御を実行してよい。制御部94は、ストロークセンサ46の出力が異常であるとの判定結果を受けると、全ての制御弁の通電を停止し、運転者の踏力によるブレーキモードに移行してよい。また、制御部94は、ストロークセンサ46の出力が異常であるとの判定結果を受けて、マスタシリンダ圧センサ48の出力にもとづいてブレーキ制御を実行してよい。
図7は、実施形態に係るストロークセンサ46の異常判定処理を示すフローチャートである。以下に示す処理は、所定の制御周期で実行されてよい。第1ストローク取得部82は、第1ストロークセンサ46aから第1出力値ST1を取得し、第2ストローク取得部84は、第2ストロークセンサ46bから第2出力値ST2を取得し、マスタシリンダ圧取得部86は、マスタシリンダ圧センサ48から第1マスタ出力値PMC1と第2マスタ出力値PMC2を取得する(S10)。
第1異常判定部90は、第1出力値ST1と第2出力値ST2との和が所定の範囲にあるかどうかを判定する(S12)。具体的に第1異常判定部90は、第1出力値ST1と第2出力値ST2との和が第1所定値σ1から第2所定値σ2の範囲にあるかどうかを判定する。
第1異常判定部90は、第1出力値ST1と第2出力値ST2との和が所定の範囲にないと判定すれば(S12のN)、第1ストロークセンサ46aまたは第2ストロークセンサ46bの出力に異常があると判定する(S20)。
第1異常判定部90が、第1出力値ST1と第2出力値ST2との和が所定の範囲にあると判定すれば(S12のY)、第2異常判定部92は、第1異常判定部90の判定結果を受けて、第1出力値ST1と第2出力値ST2との差分の絶対値が所定閾値th以下であるかどうかを判定する(S14)。第2異常判定部92は、第1出力値ST1と第2出力値ST2との差分の絶対値が所定閾値th以下でないと判定すれば(S14のN)、第1ストロークセンサ46aおよび第2ストロークセンサ46bの出力に異常がないと判定する(S22)。
第2異常判定部92は、第1出力値ST1と第2出力値ST2との差分の絶対値が所定閾値th以下であると判定すれば(S14のY)、第1マスタ出力値PMC1および第2マスタ出力値PMC2が所定圧力値Pthより小さいかどうかを判定する(S16)。第2異常判定部92は、第1マスタ出力値PMC1または第2マスタ出力値PMC2が所定圧力値Pthより小さくないと判定すれば(S16のN)、第1ストロークセンサ46aおよび第2ストロークセンサ46bの出力に異常がないと判定する(S22)。
第2異常判定部92は、第1マスタ出力値PMC1および第2マスタ出力値PMC2が所定圧力値Pthより小さいと判定すれば(S16のY)、ストップランプスイッチ47がONであるかどうか判定する(S18)。すなわち、第2異常判定部92はストップランプスイッチ47によりブレーキペダル12の踏み込みの有無を判定する。
第2異常判定部92は、ストップランプスイッチ47がONであると判定すれば(S18のY)、ストロークセンサ46の出力に異常がないと判定する(S22)。第2異常判定部92は、ストップランプスイッチ47がONでないと判定すれば(S18のN)、ストロークセンサ46の出力に異常があると判定する(S20)。
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。本発明によれば、2つのストロークセンサ46の出力の比較でストロークセンサ46の出力の異常を判定する場合に、ストロークセンサ46への供給電圧の低下時にストロークセンサ46の出力が異常でないと判定されて、異常時のストロークセンサ46の出力にもとづいて制動力が発生することを回避することができる。
これらの実施形態は例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。