JP5225705B2 - 疲労試験機および疲労強度評価方法 - Google Patents

疲労試験機および疲労強度評価方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5225705B2
JP5225705B2 JP2008039902A JP2008039902A JP5225705B2 JP 5225705 B2 JP5225705 B2 JP 5225705B2 JP 2008039902 A JP2008039902 A JP 2008039902A JP 2008039902 A JP2008039902 A JP 2008039902A JP 5225705 B2 JP5225705 B2 JP 5225705B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
stress
fatigue
residual stress
measurement
specimen
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2008039902A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2009198296A (ja
Inventor
知徳 冨永
佳彦 高田
中島  隆
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel and Sumitomo Metal Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel and Sumitomo Metal Corp filed Critical Nippon Steel and Sumitomo Metal Corp
Priority to JP2008039902A priority Critical patent/JP5225705B2/ja
Publication of JP2009198296A publication Critical patent/JP2009198296A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5225705B2 publication Critical patent/JP5225705B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Analysing Materials By The Use Of Radiation (AREA)
  • Investigating Strength Of Materials By Application Of Mechanical Stress (AREA)

Description

本発明は、実物では疲労試験の困難な大型の金属構造物等の疲労強度を評価するのに好適な疲労試験機と疲労強度評価方法に関する。
例えば橋梁や船等の大型の金属構造物では、長期間の使用により金属疲労が生じる。特に溶接構造の金属構造物では、溶接部の疲労強度を知ることが、金属構造物の補修・補強の必要性を知る上で重要である。一方、実構造物に加わる負荷のサイクルは長時間であり、また、橋梁や船等は大型であるため、疲労強度を実構造物で測定するのは現実的でない。そこで従来より、所定の試験体を用いた疲労試験を行って、実構造物の疲労強度を評価することが行われている。ここで、疲労試験機として、小型の試験体を用いた小型疲労試験機と、実際の実構造物に模した被検体を用いた構造物疲労試験機(大型疲労試験機)が知られている。
小型疲労試験機は、簡便で費用がかからず、負荷条件等の制御も容易であるといった利点がある。この小型疲労試験機では、試験体の公称応力で求められる応力振幅について実構造物との関連性を持たせることで、正確な疲労強度の測定を行うこととしている。しかし、応力集中や残留応力が複雑に加わることとなる実構造物に比べて小型疲労試験機では甘めの評価となる場合が多く、構造物疲労試験機と比べても、非特許文献2に開示されているJSSCの疲労等級で2ランクほども評価が甘くなってしまうことがあった。そのため、実構造物の疲労強度を評価する場合、応力集中や残留応力をより実構造物に近い状態に再現させる被検体を用いた構造物疲労試験機が多く利用されている。
ところが、構造物疲労試験機は、小型疲労試験機と比較して測定時間が長くかかり、コストも段違いに大きくなる。しかも、構造物疲労試験機によっても、実構造物の疲労強度を正しく評価できている保証はなく、特に実構造物に加わっている死荷重の影響が反映できていないといった問題があった。
ここで、非特許文献1によれば、構造物疲労試験機と小型疲労試験機の差の1つが応力集中の差であることが解明されている。つまり、小型疲労試験機に用いられる試験体のような単純な継手と、構造物疲労試験機に用いられる被検体のようなI型に溶接された部材とでは、拘束条件の相違により応力集中が異なっている。かかる応力集中の差の効果については、ホットスポット応力で評価することができる。ホットスポット応力とは、その近接する部分の局部応力を測定し、その測定値から対象とする部位の局部応力を外挿して得たものである。このホットスポット応力で応力集中の差の効果を評価することで、JSSCの疲労等級で1ランクほど実構造物に近づいた疲労評価が小型疲労試験機によっても行えることとなる。さらに、非特許文献1では、JSSC疲労等級での実構造物と上記疲労評価との残り1ランク程度の差は残留応力の効果によるものであると考えられている。
残留応力は溶接時の拘束に大きく影響されるため、小型の継手と大型の構造物では大きく異なることが多いと考えられている。近年、疲労強度の改善手法として、構造物の残留応力を制御することによって疲労強度を向上させる処理手法が開発されてきている。しかし、従来の小型疲労試験機では、応力振幅しか考慮しないために上記残留応力制御型処理手法においては、再現性に問題がある。さらに、疲労強度が実構造よりも大きく出るために、試験時の応力振幅を大きくしがちであり、特に疲労強度向上手法の評価の場合はそれが極端なレベルに達し、応力集中度と残留応力の貢献度のバランスが実構造とかけ離れてしまうという問題が発生する。
一方、上述してきたような問題がある中、実構造物の疲労評価を行う様々な方法が従来考えられており、以下のような方法が知られている。例えば、特許文献1には、負荷によって付加され、圧電素子や歪みゲージ等によって検出する歪から計算される局部応力のみに着目した疲労評価方法が提案されている。また、特許文献2および特許文献3には、構造物等の疲労が発生する部位を直接X線によってモニタリングし、その構造物等の疲労度や余寿命について評価を行う疲労評価方法が提案されている。
Anami K.、Fatigue strength improvement ofwelded joints made of high strength steel、東京工業大学博士論文、2000 社団法人鋼構造協会「鋼構造物の疲労設計指針・同解説」P.5〜11 1993 特開2001−214212号公報 特開平6−347425号公報 特開平6−11464号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載された疲労予知方法では局部応力のみに着目しているため、実構造物の残留応力の効果については評価することができないという問題がある。また、上記特許文献2、3に記載された余寿命評価法においては、マスターカーブを疲労試験で作成する必要があり、手間がかかる上に、マスターカーブは鋼材の組織に依存しているため、その鋼種が変わるごとに作成する必要があるという問題点がある。さらに、マスターカーブは溶接にも影響を受け、残留応力がどのように重畳されているのかも不明である。
上述した問題点に鑑み、本発明の目的は、実構造物の疲労強度を容易に正しく評価できる疲労試験機と疲労強度測定方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明によれば、実構造物の疲労強度を評価する方法であって、疲労試験装置により把持された試験体の被測定部位の残留応力を、測定幅を2mm以下としてX線で測定し、所定の残留応力および応力振幅を再現させるように、前記被測定部位において測定された残留応力に基づいて前記試験体に加える応力振幅の目標範囲を決定し、前記被測定部位の応力振幅をホットスポット法を用いて測定して、前記目標範囲内となるように前記試験体に加える応力振幅を調整しながら疲労試験を行い、構造物の疲労強度を評価することを特徴とする、疲労強度測定方法が提供される。
また、本発明によれば、上記疲労強度測定方法に用いられる疲労試験装置であって、該疲労試験装置により把持された試験体における被測定部位の残留応力を2mm以下の測定幅で測定するX線残留応力測定装置と、前記試験体における被測定部位の応力振幅を測定する応力集中ゲージとを備え、所定の残留応力および応力振幅を再現させるため、前記被測定部位において測定された残留応力に基づいて決定された応力振幅を前記試験体に加えられるように、前記被測定部位の応力振幅を測定し、前記試験体に加える応力振幅を調整して疲労試験を行うことを特徴とする、疲労試験機が提供される。
本発明によれば、実構造物で実際に破壊の発生する恐れのある部位の測定された残留応力および応力振幅を再現させるように、試験体の被測定部位に所定の残留応力および応力振幅を加えて疲労試験を行うことにより、構造物の疲労強度を正確に評価できるようになる。X線残留応力測定装置を用いて2mm以下の測定幅で測定することにより、試験体における被測定部位の残留応力を精度良く測定できるようになる。本発明は、大型構造物の疲労寿命を評価する場合に有用であり、特に構造物に溶接部が存在する場合、当該溶接部の疲労強度を正確に把握し、金属構造物の補修・補強の必要性を知ることができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照にして説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかる疲労試験装置1の説明図である。図2は、疲労試験装置1によって試験される試験体aの平面図、図3は、試験体aの側面図である。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
図1に示すように、疲労試験装置1は、左右の支柱10によって上下に所定の間隔をあけて配置された下架台11と上架台12を備えている。下架台11には下チャック15が支持部材16によって取り付けられ、上架台12には上チャック17が支持部材18によって取り付けられている。また、上チャック17を支持する支持部材18には、ロードセルと油圧シリンダの両方の機能を兼ね備えた駆動測定機構19が取り付けてある。
この疲労試験装置1の上チャック17と下チャック15によって、試験体aの上下端が把持され、駆動測定機構19によって、試験体aに所望の負荷が加えられる。また、こうして上チャック17と下チャック15の間に把持された試験体aには、応力集中ゲージ20が貼り付けられる。また、試験体aの側方には、X線残留応力測定装置の測定ヘッド21が設置される。例えば、通常の250kN疲労試験装置中にフレームを構築し、小型のX線応力測定装置をそのフレームに設置して、試験体aの被測定部位での発生応力を絶対値で捉えることができる。なお、X線残留応力装置は、例えばXstress社製の装置を、現場で適用しやすいように改造した特殊なものを用いる。この機器は精密な位置制御機構を備えており、評価したい部位に正確にX線のビームを当てることができる.
図2、3に示すように、試験体aは、主板30と、一対の鉛直リブ31からなり、一対の鉛直リブ31は、溶接部32を介して主板30の上下面に接合されている。この試験体aの主板30の長手方向の両端を、疲労試験装置1の上チャック17と下チャック15に把持することにより、試験体aが疲労試験装置1に取り付けられる。そして、駆動測定機構19によって、試験体aに周期的に圧縮、引っ張りの変位が加えられ、試験体a中に、主板30の長手方向に沿って引っ張り応力と圧縮応力が交互に加えられる。
このように、駆動測定機構19によって試験体aに荷重が加えられることにより、試験体a中では、溶接部32のトゥー部分32’において、主板30中に応力集中が発生する。かかるトゥー部分32’では、応力集中による疲労破壊が発生する事態が懸念される。そこで、このトゥー部分32’を被測定部位とし、応力集中ゲージ20と測定ヘッド21により、トゥー部分32’において主板30に加わる応力振幅と残留応力を測定する。
トゥー部分32’に生ずる残留応力は、X線残留応力測定装置の測定ヘッド21によって測定される。また、トゥー部分32’に生ずる応力振幅は、応力集中ゲージ20によって測定される。
X線残留応力測定装置の測定ヘッド21は、トゥー部分32’において主板30に生じている残留応力を、X線回折技術を用いて高速、高精度に測定することが可能である。この測定ヘッド21による測定幅dは、主板30の表面において2mm以下に設定される。
ここで、図4、5に示すように、X線残留応力測定装置の測定ヘッド21を、主板30の長手方向に沿って移動させて、トゥー部分32’の近傍における主板30中に生ずる長手方向残留応力分布を測定した結果を図6,7に示す。
図7は、トゥー部分32’からの距離(主板30の長手方向に沿った距離)と主板30中に生ずる残留応力の関係を示すグラフであり、測定幅dを2mmに設定して、X線残留応力測定装置の測定ヘッド21によって測定された残留応力と、FEMによって測定された残留応力を比較して示している。両者は、いずれもトゥー部分32’からの距離が大きくなるにしたがって(トゥー部分32’から離れるにしたがって)主板30中に生ずる残留応力が小さくなる傾向を同様に示している。
FEMでは残留応力分布が包絡線としてしか得られないが、X線残留応力測定装置で測定された残留応力分布は2mm周期くらいの小さい変動が見られた。測定幅dを2mmに設定すれば、FEMと同程度の測定精度が得られ、かつ、2mm周期程度で生じている残留応力の変動も測定できることが分かる。
図6は、トゥー部分32’からの距離(主板30の長手方向に沿った距離)と主板30中に生ずる残留応力の関係を示すグラフであり、X線残留応力測定装置の測定ヘッド21による測定幅dを、主板30の表面において2mmに設定して測定した場合と1mmに設定して測定した場合を比較して示している。両者は、いずれもトゥー部分32’からの距離が大きくなるにしたがって(トゥー部分32’から離れるにしたがって)主板30中に生ずる残留応力が小さくなる傾向を同様に示している。また、変動量も1mmにしたところで、さほど大きく変化するようには見受けられず、測定幅dを2mmに設定すれば、測定幅dを1mmに設定した場合と同程度の測定精度が得られることが分かる。これらのことより、測定幅dは2mm以下にまで小さくできれば、それ以上小さくする必要がないことも分かる。
なお、トゥー部分32’の残留応力を測定する場合は、X線残留応力測定装置の測定ヘッド21は移動せず、トゥー部分32’において主板30中に生ずる長手方向残留応力を定する
図8、9に示すように、応力集中ゲージ20は、トゥー部分32’の近傍において、主板30の長手方向に沿って複数の歪ゲージ35を直列に配置した構成である。応力集中ゲージ20は、複数の歪ゲージ35によって測定された各位置の歪から、外挿値としてトゥー部分32’(被測定部位)の応力振幅を測定するようになっている。例えば、試験体aの主板30において、トゥー部分32’から0〜2mmの範囲をX線計測(残留応力測定)のために表面を露出させ、その外側に応力集中ゲージ20を貼って、トゥー部分32’でのホットスポット応力振幅を算定することができる。
以上のように構成された疲労試験装置1によって金属構造物等の疲労強度を評価する場合、先ず、実構造物において、例えば溶接部の残留応力および応力振幅を実際に測定する。この溶接部の残留応力の測定は、図4、5で説明した試験体aに対する測定を行う場合と同様に、X線残留応力測定装置を用いて行うことができる。また、溶接部の応力振幅の測定は、図8、9で説明した試験体aに対する測定を行う場合と同様に、応力集中ゲージを用いて行うことができる。
そして、このように実構造物において測定された、例えば溶接部の残留応力および応力振幅から、試験体aに加えるべき付加条件を決定する。即ち、例えば、実構造物の溶接部で測定された応力範囲が+100〜200MPaであったとする。一方、図1に示すように、疲労試験装置1の上チャック17と下チャック15によって上下端が把持された試験体aにおいて、まだ駆動測定機構19による負荷が加えられる前の状態(無載荷状態)で、溶接部32のトゥー部分32’での残留応力が50MPaであったとする。かかる場合であれば、駆動測定機構19によって試験体aに加えるべき応力は+50Mpa〜150MPaとなる。また、トゥー部分32’での応力集中が2倍であることがわかっていれば、応力振幅=平均応力×2という関係になるので、X線残留応力測定装置の測定ヘッド21で残留応力を確認しながら、具体的な「荷重(応力×断面積)」を決定する。
こうして、実構造物において、疲労破壊を生ずる可能性のある例えば溶接部の状態を再現させるように、試験体aのトゥー部分32’(被測定部位)に同じ条件で残留応力および応力振幅を加えて疲労試験を行う。その結果、実構造物の疲労性能を精度良く評価できるようになる。
なお、単純に、従来のX線応力測定装置を使って残留応力を計測し、その後で従来の疲労試験装置によって疲労試験を行う、ということで目的とする試験が行えないのにはいくつかの理由がある。まず、通常、残留応力は初期の載荷によって再配分を生じることである。つまり、初期値と、繰り返し載荷が行われているときの残留応力は異なっている。ただし、それだけであると疲労載荷をある程度行ってから疲労試験機から取り外して、X線応力測定をすればいいということになる。
しかしながら、もう一つの重要な要素として、試験体aの持つ形状の不整の効果がある。残留応力を持っているということは、試験体aには溶接ひずみによる変形も生じているということである。そのため、疲労試験機に設置したときに、そのひずみはある程度矯正され、それによって、残留応力がまた変化してしまう。この効果に再現性を持たせるのは、実質的にかなり困難である。よって、以上の試験実行上の困難を解決するためには、疲労試験機に残留応力測定装置を組み込んで、載荷を行いながら残留応力計測を行うしかない。
ここで、疲労試験装置1における概略の試験手順を以下に示す。
(1)試験体aをチャック前にX線応力計測。
(2)試験体aをチャック後に荷重をゼロに調整し、X線応力計測。
(3)荷重をかけながら、ある荷重ステップごとにX線応力計測(計測中は荷重をホールドする)。
(4)目標となる応力振幅または荷重振幅に対し、3回繰り返して載荷をしながら、ある荷重ステップに対してX線応力計測。
(5)目標となる応力振幅または荷重振幅に対して、疲労載荷を動的に実施。破断もしくは所定の回数まで載荷。
なお、応力集中ゲージ20および駆動測定機構19(ロードセル)による荷重の計測は、X線残留応力測定装置より細かく行うことが好ましい。また、測定するトゥー部分32’は4箇所中1箇所のみでも良いが、他の3箇所についても同様に測定してもよい。また、応力振幅は、応力集中ゲージ20で得られた応力集中係数を用いて、荷重を調整しながら応力振幅を目標圏内に納めることになる。
(1)疲労試験体
図10に試験体の形状を示す。評価対象とする橋梁の構造に合わせて、主板は12mm厚、鉛直リブも12mm厚としている。実構造の鉛直リブの高さは140mmであったため、試験体のリブ高さは両面でトータル140mmになるように、高さ70mmとした。材料は調達性の観点からSM490とした。SM490Y材と比較して強度は低下するが、ピーニングなどの圧縮残留応力を付与する手法は鋼材強度が低下すると効果が低下するのが一般的のため、試験としては安全側を押さえることとなる。表1に用いている鋼材の材料強度(ミルシート値)を示す。
Figure 0005225705
実構造の鉛直リブ端部では、連続して角を溶接するいわゆるまわし溶接ではなく、片面ずつ端から端まで溶接するふりわけ溶接となっている。ふりわけ溶接は、まわし溶接に比較して応力集中部が複雑な形状となっている。また、ビードとビードの継目が応力集中部に存在するために、疲労強度の低下が懸念される溶接の方法である。そのため、試験体でも実構造に合わせてこのふりわけ溶接とした。溶接材料はソリッド溶接ワイヤーであるYM-26としている。脚長もなるべく実構造での寸法に合わせて11mm程度を狙って溶接を行った。
リブに設けてある切り欠きは、X線応力測定装置のアクセスを確保するためである。この切り欠きが無くても測定は可能であるが、複雑な手順を必要とするために、今回は試験体に切り欠きを設けて計測を容易とした。この切り欠きの有無の影響については、製作前に予めFEMで検討を行ったが、この有無による影響は無視できるほど小さいことを確認した。なお、応力集中に及ぼす影響が大きいのは特に脚長であることがこのFEMによって判明した。
(2)止端処理
今回の疲労試験では、X線応力計測を行いながら試験可能な止端は全4箇所中1箇所だけである。そのため、なるべく計測している部位以外の箇所で疲労き裂を生じないように、他の3箇所についてはグラインダー処理を行った。グラインダーには歯の直径が約10mmのバー・グラインダーを用いた。溶接ままの試験体についてはその状態で試験を行い、ピーニング試験体については、3箇所にグラインダー処理後、全4箇所の止端にピーニング処理を施した。溶接ままの試験体のき裂を起こしたくない3箇所についてピーニング処理を行わなかったのは、ピーニングを処理すると、12mm程度の板厚であると板の裏側の残留応力状態にまで影響を及ぼしてしまうからである。
なお、ピーニング処理については、27kHzのツールで、先端が3mmピンを用いて実施した.この条件は、実橋での施工試験でも同じである。
(3)現場計測
2007年2月に、実橋梁で現場計測を行った。現場計測は、応力振幅計測に関しては荷重車を用い、X線計測は今回の疲労試験に用いたのと同一の機器を用いた。現場計測は、ピーニングによる効果を把握するために、応力振幅計測および残留応力計測共にピーニング施工の前後に実施し、その差を確認している。なお、ピーニングにより導入された残留応力が、その後の交通荷重によって再配分される可能性を考慮して、ピーニング処理から処理後の残留応力計測までは24時間以上のインターバルを確保している。
計測の結果、まず、止端近傍でのひずみゲージでの応力振幅の計測では、大きくとも55MPaであった。またこのとき、Hot Spotで約100MPaであった。これに、過積載を1.5倍考慮したとするとそれぞれ、約80MPa、約150MPa程度が最大の応力振幅の程度ではないかと推定される。
また、残留応力の計測結果であるが、施工前(溶接まま)の状態では、200〜300MPa程度の引張応力であったのに対し、ピーニング処理後では200MPa程度の圧縮となった。
そこで、現場で計測された局部応力範囲は以下のようにまとめられる。
溶接まま:50〜200MPa(残留応力200MPa、応力振幅150MPa)
ピーニング処理:-350〜-200MPa(残留応力-200MPa、応力振幅150MPa)
(4)試験パラメータ
試験パラメータは試験荷重とする。残留応力を計測しながら、評価を行ったものを実施例、通常通りに、機械的に外力だけで試験を行ったものを比較例とする。同じ応力振幅でも、残留応力が低ければ疲労寿命が長くなる。その関係について本発明を用いれば、的確に得ることが出来ることを示す。
試験体の残留応力を、コントロールする手法としては、ピーニング、および、試験体の溶接変形を活用している。例えば、図11に示すように、チャック17、15に把持前(a)の試験体aが、チャック17、15に把持後(b)に矯正された場合、図11の例では、試験体aの右側の止端(トゥー部分32’)が残留応力が引張側にシフトし、左側の止端(トゥー部分32’)が圧縮側に向かってシフトすることがわかる。よって、そのどっちの側の止端を試験対象止端に設定するかによって、残留応力に差をつけることができることがわかる。
試験体とパラメータの一覧を表2に示す。
Figure 0005225705
「実施例」は、試験体の残留応力を計測して、それに合わせて試験のコントロールをすることができ、疲労試験結果を正当に評価できるのに対して、「比較例」では機械的に、応力振幅のみを合わせ、応力比0.1で疲労試験を行っている。
各試験にて計測された残留応力と、試験によって得られた繰り返し回数の一覧を表3に示す。
Figure 0005225705
比較例1と比較例2の試験結果を見ると、同じ公称応力で試験をしているにもかかわらず、比較例1が疲労き裂を早期に発生するのに対し、比較例2ではき裂を発生しない。しかも、この試験では公称応力しか考慮することができないため、継手の形状が変化し、残留応力レベルが変化すると、それを考慮することができない。つまり、本発明を用いない限り、小型疲労試験の結果をもって、実構造の疲労寿命を評価し、推定することは極めて困難であることがわかる。
一方、実施例については、疲労試験の結果(繰り返し回数)と、応力振幅、残留応力の関係が明確であり、実構造物との関係を見てゆけば、対応を容易に取ることができる。
実施例11と比較例5を比較してみると、ピーニングの試験体でも、実施例がき裂が生じないのに対して、比較例はき裂を発生している。
実構造の現場計測での結果は、下記の通りである。
溶接まま:50〜200MPa(残留応力200MPa、応力振幅150MPa)
ピーニング処理:-350〜-200MPa(残留応力-200MPa、応力振幅150MPa)
溶接ままは、実施例1とよく合致しており、ピーニング処理は実施例11よりもさらに安全側の結果を実構造で与えることが予想できる。つまり、本発明を用いれば、実構造においてピーニングを用いれば疲労き裂を防止できるということを評価できるのに対して、これまでの方法ではその判断をつけることが困難であることがわかる。
本発明は、例えば橋梁や船等の大型の金属構造物の疲労試験に適用できる。
本発明の実施の形態にかかる疲労試験装置の説明図である。 疲労試験装置1によって試験される試験体の平面図である。 図3は、試験体aの側面図である。 X線残留応力測定装置の測定ヘッドの説明図である。 X線残留応力測定装置の測定ヘッドの測定幅の説明図である。 トゥー部分からの距離と主板中に生ずる残留応力の関係を示すグラフであり、X線残留応力測定装置の測定ヘッドによる測定幅を2mmに設定して測定した場合と1mmに設定して測定した場合を比較して示している。 トゥー部分からの距離と主板中に生ずる残留応力の関係を示すグラフであり、測定幅を2mmに設定して、X線残留応力測定装置の測定ヘッドによって測定された残留応力と、FEMによって測定された残留応力を比較して示している。 応力集中ゲージを説明するための側面図である。 応力集中ゲージを説明するための平面図である。 実施例に用いた試験体の説明図である。 チャック把持により試験体が矯正される状態の説明図である。
符号の説明
1 疲労試験装置
a 試験体
15、17 チャック
19 駆動測定機構
20 応力集中ゲージ
21 X線残留応力測定装置の測定ヘッド
30 主板
31 鉛直リブ
32 溶接部
32’ トゥー部分(被測定部位)

Claims (2)

  1. 実構造物の疲労強度を評価する方法であって、
    疲労試験装置により把持された試験体の被測定部位の残留応力を、測定幅を2mm以下としてX線で測定し、
    所定の残留応力および応力振幅を再現させるように、前記被測定部位において測定された残留応力に基づいて前記試験体に加える応力振幅の目標範囲を決定し、
    前記被測定部位の応力振幅をホットスポット法を用いて測定して、前記目標範囲内となるように前記試験体に加える応力振幅を調整しながら疲労試験を行い、構造物の疲労強度を評価することを特徴とする、疲労強度測定方法。
  2. 請求項1に記載の疲労強度測定方法に用いられる疲労試験装置であって、
    該疲労試験装置により把持された試験体における被測定部位の残留応力を2mm以下の測定幅で測定するX線残留応力測定装置と、
    前記試験体における被測定部位の応力振幅を測定する応力集中ゲージとを備え、
    所定の残留応力および応力振幅を再現させるため、前記被測定部位において測定された残留応力に基づいて決定された応力振幅を前記試験体に加えられるように、前記被測定部位の応力振幅を測定し、前記試験体に加える応力振幅を調整して疲労試験を行うことを特徴とする、疲労試験機。
JP2008039902A 2008-02-21 2008-02-21 疲労試験機および疲労強度評価方法 Expired - Fee Related JP5225705B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008039902A JP5225705B2 (ja) 2008-02-21 2008-02-21 疲労試験機および疲労強度評価方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008039902A JP5225705B2 (ja) 2008-02-21 2008-02-21 疲労試験機および疲労強度評価方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2009198296A JP2009198296A (ja) 2009-09-03
JP5225705B2 true JP5225705B2 (ja) 2013-07-03

Family

ID=41141954

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008039902A Expired - Fee Related JP5225705B2 (ja) 2008-02-21 2008-02-21 疲労試験機および疲労強度評価方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5225705B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN105758735A (zh) * 2016-04-28 2016-07-13 驰马拉链(无锡)有限公司 一种半自动拉链分开件撕裂装置

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102778402B (zh) * 2012-08-01 2014-07-09 东莞市恒宇仪器有限公司 拉链往复疲劳试验机
JP6226112B1 (ja) * 2017-02-01 2017-11-08 中国電力株式会社 クリープ疲労試験方法、及びクリープ試験装置の制御装置
JP7143567B2 (ja) * 2018-09-14 2022-09-29 株式会社島津テクノリサーチ 材料試験機および放射線ct装置
CN109883847B (zh) * 2019-03-20 2023-09-26 西南交通大学 基于x射线成像的大载荷高频率原位拉伸和疲劳试验机

Family Cites Families (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2756324B2 (ja) * 1989-10-31 1998-05-25 株式会社鷺宮製作所 材料疲労試験装置
JP3091856B2 (ja) * 1992-02-05 2000-09-25 原子燃料工業株式会社 構造材料の疲労度を評価する方法
JPH06347425A (ja) * 1993-06-07 1994-12-22 Nippon Steel Corp 実構造物の余寿命評価法
JPH08240516A (ja) * 1995-03-06 1996-09-17 Nippon Steel Corp 一様な残留応力を有する試験片およびその製造方法
JPH09257602A (ja) * 1996-03-19 1997-10-03 Hitachi Constr Mach Co Ltd X線応力測定装置
JP2001214212A (ja) * 2000-01-28 2001-08-07 Daido Steel Co Ltd TiN系介在物を微細にする含Ti鋼の製造方法
JP2002129778A (ja) * 2000-08-15 2002-05-09 Kawatetsu Techno Res Corp 鋼管柱基部構造体
JP2002122572A (ja) * 2000-10-17 2002-04-26 Koji Yamada 材料特性評価方法及び装置

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN105758735A (zh) * 2016-04-28 2016-07-13 驰马拉链(无锡)有限公司 一种半自动拉链分开件撕裂装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2009198296A (ja) 2009-09-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5225705B2 (ja) 疲労試験機および疲労強度評価方法
Acevedo et al. Effect of tensile residual stresses on fatigue crack growth and S–N curves in tubular joints loaded in compression
JP5086615B2 (ja) 高強度鋼溶接部のクリープ伸びによる寿命評価方法及び高強度鋼溶接部の寿命評価方法
Shams-Hakimi et al. Experimental study of transverse attachment joints with 40 and 60 mm thick main plates, improved by high-frequency mechanical impact treatment (HFMI)
JP6197391B2 (ja) 構造物の疲労寿命評価方法
Shahri et al. Critical distance method to estimate the fatigue life time of friction stir welded profiles
Le Quilliec et al. Fatigue behaviour of welded joints treated by high frequency hammer peening: Part i, experimental study
Weeks et al. Direct comparison of single-specimen clamped SE (T) test methods on X100 line pipe steel
Lawrence et al. Fatigue crack propagation in butt welds containing joint penetration defects
MORI et al. Influence of steel static strength on fatigue strength of web-gusset welded joints with UIT
Chiew et al. Fatigue performance of high strength steel built-up box T-joints
Park et al. Fatigue strength evaluation of a welded structure by a concentrated load close to the welded joint
JP2012247271A (ja) 鋼構造物の使用限界予測方法
Zong et al. Fatigue assessment on butt welded splices in plates of different thicknesses
Salvini et al. Fatigue life prediction on complex spot welded joints
MIKI et al. Initiation and propagation of fatigue cracks in partially-penetrated longitudinal welds
JP2010184257A (ja) 鋼材の品質保証方法および疲労強度推定方法
Tagawa et al. Experimental proof of reverse bending technique for modifying weld residual stress in weld CTOD specimen and comparison of effect with other techniques
CN113203509A (zh) 一种具有窄焊缝特征的钢制薄焊板残余应力测试方法
Gustafsson A study of thickness effect on fatigue in thin welded high strength steel joints
Saeed et al. Calibration and validation of extended back-face strain compliance for a wide range of crack lengths in SENB-4P specimens
Adriano et al. Influence of internal volumetric imperfections on the tearing resistance curve of welded Single Edge notched Tension (SENT) specimens
Manurung et al. Structural life enhancement on friction stir welded AA6061 with optimized process and HFMI/PIT parameters
Nuruzzaman et al. Modeling of welding joint using effective notch stress approach for misalignment analysis
Lindqvist et al. Characterization of JR curves of a HSLA-steel and an Alloy 52 DMW with SE (T) specimens

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20110203

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20120530

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120605

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120806

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130219

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130313

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5225705

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20160322

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees