以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(ボール搭載装置の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるボール搭載装置1の主要部の概略構成を示す正面図である。図2は、図1に示すボール供給部5を構成するボール供給手段18を説明するための概略図である。
本形態のボール搭載装置1は、導電性を有する複数の微小なボール2を基板3上に搭載するように構成されている。このボール搭載装置1は、図1、図2に示すように、複数のボール2を吸着して搬送する吸着搬送部4と、吸着搬送部4に吸着される複数のボール2を供給するボール供給部5と、複数のボール2が基板3上に搭載されるボール搭載部6とを備えている。
また、ボール搭載装置1は、吸着搬送部4がボール供給部5でボール2を適切に吸着することができない吸着不良が発生したときや、吸着搬送部4に吸着されたボール2の全てがボール搭載部6で基板3上に搭載されず吸着搬送部4にボール2が残ってしまういわゆる残留ボール現象が発生したときに、吸着搬送部4からボール2を除去するためのボール廃棄容器7を備えている。ここで、上述した吸着不良には、吸着搬送部4に形成された後述の複数の吸着孔30aの全てにボール2が吸着されず、ボール2が吸着されない吸着孔30aが存在する吸着ミスと、1つの吸着孔30aに複数のボール2が吸着されて複数のボール2が房状にかたまって集まる余剰ボール現象とがある。
ボール2は、たとえば、半田ボールや金ボール、銀ボール、銅ボール、ニッケルボール等の金属製の微小ボールである。本形態のボール搭載装置1で用いられるボール2の直径は、たとえば、200μm〜500μmである。また、ボール2の重さは、たとえば、直径200μmのもので0.03mg、直径300μmのもので0.11mgとなっている。なお、ボール2は、たとえば、プラスチックやガラス、石英等の絶縁部材からなる絶縁ボールの表面に、半田や金、銀、銅等の導電性材料をコーティングしたものであっても良い。また、ボール2の直径は、200μm以下であっても良いし、500μm以上であっても良い。
基板3上には、複数のボール2がそれぞれ搭載、接合される複数の電極(図示省略)が形成されている。複数の電極はたとえば、400μmから600μmのピッチで形成されており、各電極間のピッチは非常に狭くなっている。また、基板3上には、非常に多くの数の電極が形成されている。本形態では、基板3上に、10000個以上(たとえば1000個から30000個)の電極が形成されている。なお、基板3上に形成される電極の数は、10000個未満であっても良い。
吸着搬送部4は、図1に示すように、ボール2を吸着する吸着ヘッド8と、吸着ヘッド8に衝撃を与える単動エアシリンダ10と、吸着ヘッド8および単動エアシリンダ10が取り付けられる本体部11とを備えている。
本体部11は、図示を省略する駆動機構に連結されており、図1の上下方向、左右方向および紙面垂直方向に移動可能となっている。本体部11の下端部には、吸着ヘッド8が取り付けられるヘッド取付部11aが形成されている。また、図1における本体部11の左右両側面にはそれぞれ、シリンダ取付部材12が固定されており、各シリンダ取付部材12には、単動エアシリンダ10が取り付けられるL形状のブラケット13が固定されている。吸着ヘッド8の詳細な構成は後述する。
単動エアシリンダ10は、ボール廃棄容器7上で吸着ヘッド8からボール2を除去する際等に、吸着ヘッド8に衝撃を与える。この単動エアシリンダ10は、コンプレッサー(図示省略)から供給される圧縮エアによって下方向へ駆動され、内蔵されるバネ(図示省略)によって上方向へ駆動される。また、単動エアシリンダ10は、突出したピストンロッドが吸着ヘッド8の上面に固定された後述の衝突板40に衝突するように、ブラケット13に固定されている。
ボール供給部5は、図1、図2に示すように、吸着搬送部4に吸着される前の複数のボール2が収容される収納容器としてのボール受入容器15と、ボール受入容器15を振動させる振動発生手段16と、ボール受入容器15が支持されるとともに振動発生手段16が収納される支持筐体17と、ボール受入容器15にボール2を供給するボール供給手段18とを備えている。
ボール受入容器15は、矩形状の底面部を有するとともに上面が開口した箱状に形成されている。このボール受入容器15は、図1に示すように、板バネ等の弾性部材19を介して、支持筐体17の上面側に支持されている。また、ボール受入容器15の下面には、磁性材料で形成された磁性板20が固定されている。
振動発生手段16は、図1に示すように、磁性材料で円柱状に形成されたコア21と、コア21に巻回されたコイル22とを備える電磁石である。コア21の上端面は、ボール受入容器15の下面に固定された磁性板20に対向している。このコア21は、コイル22が通電状態になると磁性板20を吸着し、また、その状態でコイル22が非通電状態になると吸着した磁性板20を解放する。このように、コア21が磁性板20を吸着、解放することで、振動発生手段16は、ボール受入容器15を図示上下方向に振動させる。
振動発生手段16による振動で、ボール受入容器15に収容された複数のボール2は、図1や図2の二点鎖線で示すように、ボール受入容器15の底面から上方へ大きく跳躍する。このときのボール受入容器15の底面からのボール2の跳躍量は、たとえば、15mmから17mm程度である。
ボール供給手段18は、図2に示すように、供給前のボール2が収納されるボール容器24と、ボール容器24に接続される可撓性チューブ25と、可撓性チューブ25の先端に取り付けられるノズル26と、振動発生手段(図示省略)とを備えている。このボール供給手段18では、振動発生手段が発生させる振動によって、パーツフィーダのようにボール2が振動して送られると、ノズル26からボール2が落下して、ボール受入容器15にボール2が供給される。なお、ノズル26に電気制御可能な開閉扉を設け、その開閉時間を調整することでボール2の供給量を制御しながら、ボール2をボール受入容器15に供給しても良い。
ボール搭載部6は、図1に示すように、基板3が載置される基板載置台27を備えている。基板載置台27は、図示を省略する駆動機構に連結されており、図1の上下方向、左右方向および紙面垂直方向に平行移動可能になっているとともに回動可能になっている。
ボール廃棄容器7は、図1に示すように、矩形状の底面部を有するとともに上面が開口した箱状に形成されている。
吸着搬送部4は、ボール供給部5で複数のボール2を吸着した後、図示を省略する駆動機構によって、図1の右方向に移動して、基板3上に形成された複数の電極のそれぞれに、ボール2を搭載する。また、吸着搬送部4は、基板3上にボール2を搭載した後、ボール供給部5まで戻る。この吸着搬送部4によるボール2の搭載工程の詳細については後述する。
(吸着ヘッドの構成)
図3は、図1に示す吸着ヘッド8および吸着ヘッド8に接続されるエア機器の構成を示す図である。図4は、図3に示す吸着部30cを示す図であり、(A)は、図3のE−E方向から吸着部30cを示し、(B)は、(A)のF部を拡大して示す。図5は、図3のG部を拡大して示す拡大断面図である。
吸着ヘッド8は、図3から図5に示すように、ボール受入容器15内の複数のボール2の中から、1つのボール2をそれぞれ吸着する複数の吸着孔30aが形成された吸着治具30と、吸着治具30が交換可能に取り付けられたヘッド本体31とを備えている。本形態では、10000個以上(たとえば10000個から30000個)の莫大な数の吸着孔30aが吸着治具30に形成されている。なお、吸着治具30に形成される吸着孔30aの数は、10000個未満であっても良い。
吸着ヘッド8の内部には、図3に示すように、エアチャンバ(空気室)32が形成されている。このエアチャンバ32には、エアチャンバ32内のエア(空気)を吸引して、エアチャンバ32内の圧力を負圧(大気圧よりも低い圧力)にするブロア(集塵機)34が接続されている。具体的には、ブロア34は、継ぎ手35、ホース36およびパイプ37等の配管を介してエアチャンバ32に接続されている。本形態では、ブロア34が、吸着孔30aに向かってボール2を吸引する。すなわち、本形態では、ブロア34でのエアの吸引のみによって、吸着孔30aへのボール2の吸着が行われる。
なお、本明細書において、「ブロア」とは、エアチャンバ32からのエアの排気量が毎分数立方メートルと大きく、エアチャンバ32内の到達圧力を70〜80KPa程度とすることが可能な送風機のことをいう。すなわち、本明細書における「ブロア」は、エアチャンバ32からのエアの排気量は「ブロア」より桁違いに小さいがエアチャンバ32内の到達圧力を通常、0.1KPa以下とすることができる(すなわち、エアチャンバ32内の真空度を高くすることができる)「真空ポンプ」とは異なる。
また、エアチャンバ32には、エアチャンバ32内の圧力を正圧(大気圧よりも高い圧力)にして吸着孔30aからエアを噴出する(すなわち、エアチャンバ32内に圧縮エアを供給する)コンプレッサー38が接続されている。具体的には、コンプレッサー38は、継ぎ手35、ホース36、およびパイプ37等の配管を介してエアチャンバ32に接続されている。
ヘッド本体31は、図3等に示すように、中空の直方体状に形成されるとともに、吸着治具30が取り付けられる下側が開口した箱状に形成されている。ヘッド本体31の上面側には、貫通孔31aが形成されており、この貫通孔31aが形成された位置に対応するように継ぎ手35がヘッド本体31の上面に固定されている。また、ヘッド本体31の上面には、板状の衝突板40が固定されている。この衝突板40には、上述のように、単動エアシリンダ10のピストンロッドが衝突する。
吸着治具30は、ヘッド本体31に取り付けられる上側が開口した箱状に形成されている。具体的には、吸着治具30は、ヘッド本体31に取り付けられる中空の直方体状の取付部30bと、複数の吸着孔30aが形成され取付部30bの下側に配置される吸着部30cとから構成されている。吸着部30cは、取付部30bよりも小さな中空の直方体状に形成されている。また、吸着部30cの下面側に吸着孔30aが形成されており、この吸着部30cの下面は吸着面30dとなっている。
吸着面30dには、吸着孔30aにボール2を吸着する際に、吸着孔30a以外の面にボール2が付着しないように、非付着性の表面処理が施されている。具体的には、吸着面30dには、クロムメッキ処理、フッ素樹脂のコーティング処理、あるいは、非粘着性の粒子または分子を含有する複合被膜(たとえば、ニッケルと窒化ホウ素粒子を含有する複合被膜)のコーティング処理が施されている。
吸着孔30aは、上述のように、吸着部30cに形成されている。具体的には、複数の吸着孔30aは、図5に示すように、吸着部30cを貫通してエアチャンバ32に連通するように形成されている。この吸着孔30aの下端部30eは、下方向に向かって径が次第に大きくなる傾斜面となっており、図5に示すように、この円錐状の下端部30eにボール2が当接して吸着される。なお、吸着孔30aの径は、たとえば、100μm〜180μmである。
図4(A)に示すように、吸着面30dには、複数の吸着孔30aがたとえば矩形状に配列されて構成された複数の吸着孔ユニット30fが形成されている。なお、ボール2が搭載される基板3は多種多様であり、また、基板3上の電極の配列も多種多様である。そのため、基板3上に形成される電極の配列等に応じて、吸着孔30aは種々の形状に配列される。
吸着治具30は、上述のように、ヘッド本体31の下側に交換可能に取り付けられている。本形態では、吸着治具30の交換が頻繁に行われても治具の交換時間を短縮できるように、吸着治具30のヘッド本体31への着脱が容易になっている。たとえば、吸着治具30は、フック式ファスナによって、ヘッド本体31に取り付けられる。また、エアチャンバ32からのエア漏れが発生しないように、ヘッド本体31と吸着治具30との連結部はシール材で密閉されている。
エアチャンバ32とブロア34とを接続するパイプ37の途中には、図3に示すように電磁弁41が取り付けられている。この電磁弁41は、ブロア34によるエアチャンバ32内のエアの吸引を行ったり、エアの吸引を停止するオンオフ用の電磁弁である。また、ブロア34と電磁弁41との間には、パイプ37から分岐するように、リーク弁42が取り付けられている。このリーク弁42は、ブロア34を構成するモータ等の各種の機構に過負荷がかからないように、かつ、吸着部30cの下面(すなわち、吸着孔30aが形成されている部分)がブロア34による急激なエアの吸引によって引っ張られ、損傷を受けることがないように設けられた安全用のリーク弁であり、リーク弁42からブロア34へ常時、エアが流れ込んでいる。なお、吸着ヘッド8内の圧力と大気圧との圧力差(差圧)を高めるために、短時間、リーク弁42を閉状態(クローズ状態)にしても良い。
エアチャンバ32とコンプレッサー38とを接続するパイプ37の途中には、図3に示すように、電磁弁43と圧力調整弁44とがエアチャンバ32側からこの順番で取り付けられている。圧力調整弁44は、コンプレッサー38からエアチャンバ32へ供給される圧縮エアの圧力を調整する。電磁弁43は、コンプレッサー38からエアチャンバ32への圧縮エアの供給のオンオフを行う。
上述のように、本形態では、ブロア34でのエアの吸引によって、吸着孔30aへのボール2の吸着が行われる。このとき、吸着ヘッド8内(エアチャンバ32)へ向かう風速(すなわち、吸着孔30aを通過する風速)は、たとえば、約50m/秒となっている。また、このとき、吸着ヘッド8内の圧力(すなわち、エアチャンバ32内の圧力)と大気圧との差圧は、約10KPaとなっている。なお、本形態のブロア34では、差圧を最大で20KPaから30KPaにすることが可能である。
(ボールの搭載方法)
図6は、図1のボール搭載装置1を用いたボール2の搭載方法の一例を示すフローチャートである。
以上のように構成されたボール搭載装置1を用いたボール2の搭載方法の一例を以下に説明する。
ボール搭載装置1を用いて、基板3上へボール2を搭載する際には、まず、ボール受入容器15内のボール2の数が吸着ヘッド8に形成される吸着孔30aの数よりも少なくなるように、ボール受入容器15内のボール2の数を設定する(初期ボール量設定工程、ステップS1)。具体的には、ボール受入容器15内のボール2の数が吸着孔30aの数よりも少なくなるように、所定時間、ボール供給手段18で振動を発生させてボール供給手段18からボール受入容器15にボール2を供給する。
本形態では、ステップS1で設定されるボール受入容器15内のボール2の数は、吸着孔30aの数の約1/5となっている。たとえば、吸着孔30aの数が26000個であれば、ステップS1で設定されるボール受入容器15内のボール2の数は、約5000個となっている。
また、吸着ヘッド8を待機位置にセットする(ステップS2)。具体的には、ボール受入容器15の底面から約5cm上方に吸着ヘッド8の下面(吸着面30d)が位置するように、吸着ヘッド8をセットする。その状態で、振動発生手段16を起動し、ボール2を跳躍させる(ステップS3)。このステップS3では、ブロア34によるエアチャンバ32内のエアの吸引、および、コンプレッサー38からエアチャンバ32内への圧縮エアの供給は行われていない。
その後、吸着ヘッド8を降下させる(ステップS4)。具体的には、ボール受入容器15の底面と吸着面30dとの隙間が約2〜4mmとなるように吸着ヘッド8を降下させる。なお、本形態では、吸着ヘッド8を降下させると、ボール受入容器15の底面の中心部と吸着面30dの中心部とが対向する。
その後、吸着孔30aからボール受入容器15内のボール2に向かってエアを噴出する(ステップS5)。すなわち、コンプレッサー38によってエアチャンバ32内に圧縮エアを供給する。具体的には、電磁弁43を切り替えてエアチャンバ32に向かって圧縮エアを供給することで、エアチャンバ32内を正圧にして、吸着孔30aからエアを、ボール受入容器15の底面に向けて噴出する。
吸着孔30aからボール受入容器15に向かってエアが噴出されると、まず吸着孔30aからボール受入容器15の底面に向かい、その後、ボール受入容器15の内側からボール受入容器15の外側へ向かうエアの流れが生じる。そのため、ボール2は、ボール受入容器15内を外側へ向かって移動して、ボール受入容器15内の中心部分のボール2の密度が下がる。
その後、エアチャンバ32内のエアを吸引して、複数の吸着孔30aのそれぞれにボール2を吸着させる(ボール吸着工程、ステップS6)。具体的には、予めブロア34を起動しておき、ステップS5でのエアの噴出を停止した後に、電磁弁41を切り替えてエアチャンバ32内のエアを吸引する。エアチャンバ32内のエアを吸引すると、吸着孔30aに向かうエアの流れが生じて、ボール2が吸着孔30aに吸着される。
このステップS6では、ボール供給手段18からボール受入容器15にボール2を供給しながら、吸着孔30aにボール2を吸着させる。具体的には、ボール受入容器15へ間欠的にボール2を供給しながら、吸着孔30aへボール2を吸着させる。本形態では、たとえば、3回に分けてボール受入容器15へ間欠的にボール2を供給する。このとき、1回目のボール2の供給量と3回目のボール2の供給量は略同じでかつ、2回目のボール2の供給量は1回目あるいは3回目のボール2の供給量よりも多くなっている。すなわち、ステップS6では、1回目と3回目にボール供給手段18で発生される振動の振動時間よりも2回目の振動時間が長くなっている。
また、本形態では、ステップS6後のボール受入容器15内のボール2の数がステップS1で設定されるボール受入容器15内のボール2の数と略等しくなるように、ボール受入容器15にボール2を供給する。すなわち、本形態では、ステップS6でボール受入容器15に供給されるボール2の総数と、ステップS6で吸着孔30aに吸着されるべきボール2の数(すなわち、吸着孔30aの総数)とが略等しくなるように、ボール受入容器15にボール2を供給する。
なお、ステップS6において、吸着ヘッド8内へ向かう風速は、約50m/秒となっている。また、ステップS6では、ブロア34でのエアの吸引のみによって吸着孔30aへのボール2の吸着が行われており、エアチャンバ32内の圧力と大気圧との差圧は約10KPaとなっている。すなわち、ブロア34のみで吸着孔30aへのボール2の吸着が行われているため、ボール2の吸着時における差圧は比較的大きくならない。このように、本形態では、ボール2の吸着時における差圧が比較的小さいため、エアチャンバ32内の圧力(真空度)は制御されていない。したがって、ステップS6でのボール搭載装置1の制御が簡素化される。
その後、吸着ヘッド8を上昇させ(ステップS7)、図示を省略する吸着検査装置で、吸着ヘッド8によるボール2の吸着状態を検査する(ステップS8)。そして、吸着不良が発生しているか否かを判断する(ステップS9)。
吸着不良が発生している場合、基板3上へボール2を適切に搭載することができないため、ステップS9で吸着不良が発生していると判断すると、吸着ヘッド8からボール2を除去する(ステップS10)。具体的には、吸着ヘッド8をボール廃棄容器7上まで移動した後、電磁弁41を切り替えてエアチャンバ32からのエアの吸引を停止し、エアチャンバ32内の圧力を大気圧にするとともに、単動エアシリンダ10を起動して、吸着ヘッド8に吸着されていたボール2をボール廃棄容器7内に落下させる。ボール2の除去が終了するとステップS2に戻って再びボール2の吸着を行う。
一方、ステップS9で吸着不良が発生していないと判断すると、複数の吸着孔30aに吸着された複数のボール2を基板3上へ搭載する(ボール搭載工程、ステップS11)。具体的には、まず、吸着ヘッド8を基板3上まで移動し、その後、電磁弁41を切り替えてエアチャンバ32内のエアの吸引を停止して、基板3上へボール2を搭載する。なお、ステップS11で、コンプレッサー38によってエアチャンバ32内に圧縮エアを供給して、エアチャンバ32内の圧力を正圧としても良い。
ステップS11で基板3上へのボール2の搭載が終了すると、図示を省略する残留ボール検査装置で検査を行い(ステップS12)、基板3上に搭載されずに吸着ヘッド8に残った残留ボール(すなわち、吸着ヘッド8に付着しているボール)があるか否かを判断する(ステップS13)。残留ボールがあると判断した場合には、ステップS10へ進み、吸着ヘッド8からボール2(残留ボール)を除去した後にステップS2へ戻る。残留ボールがないと判断した場合には、同一の基板3上あるいは他の基板3上へのボール2の搭載が全て終了したか否かを判断する(ステップS14)。ボール2の搭載が終了していない場合には、ステップS2へ戻って再び基板3上にボール2を搭載する。ボール2の搭載が終了している場合には、ボール2の搭載工程は終了する。
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、ステップS1(初期ボール量設定工程)で、ボール受入容器15内のボール2の数が吸着ヘッド8の吸着孔30aの数よりも少なくなるように、ボール受入容器15内のボール2の数を設定している。そのため、吸着ヘッド8に形成される吸着孔30aの数が10000個以上と膨大であっても、ステップS6(ボール吸着工程)での吸着開始時にボール受入容器15に収納されるボール2の数を少なくすることができる。また、ステップS6では、ボール受入容器15にボール2を供給しながら、吸着孔30aにボール2を吸着させている。そのため、吸着を開始してから所定時間経過後であっても、吸着孔30aに吸着される必要数のボール2をボール受入容器15に供給しつつ、ボール受入容器15に収納されるボール2の数を少なくすることができる。その結果、本形態では、ステップS6において、1つの吸着孔30aに複数のボール2が集まりにくくなり、吸着ヘッド8での余剰ボール現象の発生を抑制することができる。
また、本形態では、吸着ヘッド8に形成される吸着孔30aの数が10000個以上であるため、吸着ヘッド8への1回の吸着動作で多数のボール2を吸着することができる。したがって、基板3上へのボール2の搭載工程の時間を短縮させることができる。すなわち、本形態では、吸着ヘッド8での余剰ボール現象の発生を抑制しつつ、ボール2の搭載工程を短縮させることができる。
本形態では、エアチャンバ32からのエアの排気量が比較的大きなブロア34での吸引によって吸着孔30aにボール2を吸着させている。そのため、ステップS1で、ボール受入容器15内のボール2の数が吸着孔30aの数よりも少なくなるようにボール受入容器15内のボール2の数が設定されても、ステップS6での吸着開始後、比較的短時間で吸着孔30aにボールを吸着することができる。したがって、本形態では、吸着ヘッド8へのボール2の吸着時間を短縮させることができる。
本形態では、ステップS6で、ステップS6後のボール受入容器15内のボール2の数がステップS1で設定されるボール受入容器15内のボール2の数と略等しくなるように、ボール受入容器15にボール2を供給している。そのため、ステップS10あるいはステップS14後にステップS2に戻って、再度、ステップS6でボール2の吸着を行う場合であっても、ボール受入容器15内のボール2の数を再設定する必要がなくなり、ボール受入容器15内のボール2の数を再設定する工程を省くことができる。
本形態では、ステップS6でたとえば、3回に分けてボール受入容器15へ間欠的にボール2を供給するとともに、1回目のボール2の供給量および3回目のボール2の供給量よりも2回目のボール2の供給量の方が多くなっている。すなわち、ステップS6でボール受入容器15に供給されるボール2の供給量は、ステップS6での時間の経過に伴ってまず増加し、その後減少する。
ここで、吸着ヘッド8の吸着孔30aの数が膨大であると、ボール2の吸着開始直後に、吸着面30dの中心部へ向かうボール2の吸引力が大きくなり、吸着面30dの中心部にボール2が集まりやすくなるため、ボール2が集まりやすい吸着面30dの中心部で余剰ボール現象が発生しやすくなる。一方、吸着面30dの中心部に位置する吸着孔30aにボール2が吸着されると吸着面30dの周辺部では余剰ボール現象は発生しにくくなる。したがって、ボール受入容器15に供給されるボール2の数がステップS6での時間の経過に伴ってまず増加すると、吸着ヘッド8での余剰ボール現象の発生を抑制しつつ、吸着ヘッド8へのボール2の吸着時間を短縮させることができる。
また、ボール受入容器15に供給されるボール2の数がその後減少すると、ボール2の供給停止後(すなわち、3回目のボール2の供給停止後)に比較的短時間で、全ての吸着孔30aにボール2を吸着させることができる。そのため、ボール2の供給停止後に比較的短時間で、ステップS6後のボール受入容器15内のボール2の数を、ステップS1で設定されるボール受入容器15内のボール2の数と略等しくすることができる。
(初期ボール量設定工程で設定されるボールの数について)
上述のように、本形態では、ステップS1で設定されるボール受入容器15内のボール2の数は、吸着孔30aの数の約1/5となっている。本出願人の検討によると、吸着ヘッド8での余剰ボール現象の発生を抑制するためには、図7に示すように、ステップS1で設定されるボール2の数は、吸着ヘッド8の吸着孔30aの数の2/3以下であることが好ましい。また、余剰ボール現象の発生を抑制するためには、ステップS1で設定されるボール2の数は、吸着孔30aの数の1/4以下であることがより好ましく、吸着孔30aの数の1/5以下であることがさらに好ましい。
なお、図7の「余剰ボール」の欄の評価「◎」は余剰ボール現象がほとんど発生しないことを示し、評価「○」は余剰ボール現象の発生頻度が少なく実用上問題がないことを示す。また、図7の「余剰ボール」の欄の評価「△」は余剰ボール現象が多少発生するが実用可能であることを示し、評価「×」は余剰ボール現象が頻発することを示している。
一方、本出願人の検討によると、吸着ヘッド8へのボール2の吸着時間を短縮させるためには(すなわち、「生産性」を向上させるためには)、図7に示すように、ステップS1で設定されるボール2の数は、吸着ヘッド8の吸着孔30aの数の1/20以上であることが好ましい。
以上より、吸着ヘッド8での余剰ボール現象の発生を抑制しつつ、吸着ヘッド8へのボール2の吸着時間を短縮させるためには、ステップS1で設定されるボール2の数は、吸着ヘッド8の吸着孔30aの数の1/20から2/3の範囲であることが好ましく、吸着ヘッド8の吸着孔30aの数の1/20から1/4の範囲であることがさらに好ましい。
ただし、ステップS1で設定されるボール2の数は、吸着孔30aの数の1/20未満であっても良い。たとえば、極端な場合、ステップS1で設定されるボール2の数は0個であっても良い。また、ステップS1で設定されるボール2の数は、吸着孔30aの数よりも少なければ、吸着孔30aの数の2/3を超えても良い。たとえば、極端な場合、ステップS1で設定されるボール2の数は、吸着孔30aの数よりも数個程度少ない数であっても良い。
(ボール吸着時に吸着ヘッド内へ向かう風速について)
上述のように、本形態では、ステップS6でのボール2の吸着時に吸着ヘッド8内へ向かう風速は、約50m/秒となっている。本出願人の検討によると、ステップS6でのボール2の吸着時に吸着ヘッド8内へ向かう風速は、15m/秒から125m/秒の範囲であることが好ましく、20m/秒から100m/秒の範囲であることがさらに好ましい。以下、その理由を実験結果に基づいて説明する。
図8に示すように、ボール2の吸着時に吸着ヘッド8内へ向かう風速を変化させながら、ボール2の吸着ミス(すなわち、吸着孔30aの全てにボール2が吸着されず、ボール2が吸着されない吸着孔30aが存在する現象)と余剰ボール現象の発生状況を確認する実験を行った。
ここで、この実験で用いたボール2の径は300μmであり、吸着孔30aの径は150μmであり、吸着孔30aの数は26000個であった。また、吸着孔30aの径が小さく、風速計による風速の測定が困難であるため、以下の方法で求めた値を風速とした。すなわち、エアチャンバ32内の圧力を測定して、ブロア34の圧力−風量特性から風量を求め、吸着孔30aの総面積(1個の吸着孔30aの面積×吸着孔30aの個数)でこの風量を割った値を風速とした。なお、風速の算出基準となるエアチャンバ32内の圧力は、ボール2の吸着開始直後の圧力ではなく、ボール2の吸着を開始してから所定時間経過後の圧力(すなわち、ステップS6の中間時の圧力)とした。
実験の結果、図8に示すように、風速が20m/秒以上であると、吸着時間を短くしても吸着ミスはほとんど発生しなかった。また、風速が15m/秒であっても、吸着時間を長くすれば吸着ミスは少なくなった。これに対して、風速が10m/秒であると、吸着時間を長くしても吸着ミスが多少発生し、風速が5m/秒であると、吸着時間を長くしても吸着ミスが頻繁に発生した。
一方、風速が100m/秒以下であると、余剰ボール現象はほとんど発生せず、基板3上へのボール2の搭載ミスはほとんど発生しなかった。また、風速が125m/秒であっても、余剰ボール現象の発生頻度は少なく、基板3上へのボール2の搭載ミスは少なかった。これに対して、風速が150m/秒であると、余剰ボール現象が発生しやすくなり、基板3上へのボール2の搭載ミスが多少発生した。また、風速が200m/秒であると、余剰ボール現象が発生して、基板3上へのボール2の搭載ミスが発生しやすくなった。
以上から、余剰ボール現象の発生を抑制しつつ、吸着ミスを抑制するためには、ステップS6でのボール2の吸着時に吸着ヘッド8内へ向かう風速は、15m/秒から125m/秒の範囲であることが好ましく、20m/秒から100m/秒の範囲であることがさらに好ましい。
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
上述した形態では、ステップS6でボール受入容器15に供給されるボール2の総数は、吸着孔30aの総数と略等しくなっている。この他にもたとえば、ステップS6でボール受入容器15に供給されるボール2の総数は、吸着孔30aの総数より多くても良い。この場合であって、ステップS10あるいはステップS14後にステップS2に戻るときには、ボール2の数をステップS1で設定された数まで減らす工程をステップS2の前に設けることが好ましい。この工程では、たとえば、ボール受入容器15を傾けてボール2を回収して、ボール2の数を減らせば良い。すなわち、この場合には、ボール搭載装置1は、ボール受入容器15内のボール2を回収する回収機構を備えている。なお、この場合には、このボール2を減らす工程も、ボール受入容器15内のボール2の数が吸着孔30aの数よりも少なくなるように、ボール受入容器15内のボール2の数を設定する初期ボール量設定工程となる。
また、ステップS6でボール受入容器15に供給されるボール2の総数は、吸着孔30aの総数より少なくても良い。この場合であって、ステップS10あるいはステップS14後にステップS2に戻るときには、ボール2の数をステップS1で設定された数まで増やす工程をステップS2の前に設けることが好ましい。なお、この場合には、このボール2を増やす工程も、ボール受入容器15内のボール2の数が吸着孔30aの数よりも少なくなるように、ボール受入容器15内のボール2の数を設定する初期ボール量設定工程となる。
上述した形態では、ステップS6でボール受入容器15へ間欠的にボール2を供給している。この他にもたとえば、ステップS6でボール受入容器15へ連続的にボール2を供給しても良い。すなわち、ステップS6においてボール供給手段18で連続的に振動を発生させてボール受入容器15にボール2を供給しても良い。
上述した形態では、ステップS6でボール受入容器15に供給されるボール2の供給量は、ステップS6での時間の経過に伴ってまず増加し、その後減少している。この他にもたとえば、ステップS6でボール受入容器15に供給されるボール2の供給量は、ステップS6での時間の経過に伴って増加しても良い。上述のように、吸着孔30aの数が膨大であると、ボール2の吸着開始直後に、吸着面30dの中心部で余剰ボール現象が発生しやすくなり、吸着面30dの中心部に位置する吸着孔30aにボール2が吸着されると吸着面30dの周辺部では余剰ボール現象は発生しにくくなる。そのため、この場合には、吸着ヘッド8での余剰ボール現象の発生を抑制しつつ、吸着ヘッド8へのボール2の吸着時間を短縮させることができる。なお、この場合において、ボール2の搭載工程全体の時間を短縮させるためには、ステップS6で供給されるボール2の総数は、吸着孔30aの総数よりも多いことが好ましい。
また、ステップS6でボール受入容器15に供給されるボール2の供給量は、ステップS6での時間の経過に伴って、減少しても良いし、任意に増減しても良い。
上述した形態では、導電性を有するボール2を例に本発明の構成を説明したが、本発明の構成は、導電性を有しないボールにも適用することができる。