JP5224501B2 - 成形金型及びローラの製造方法 - Google Patents

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Description

この発明は、成形金型及びローラの製造方法に関し、さらに詳しくは、振れ精度の高いローラを高い生産性で製造することのできる成形金型及びローラの製造方法に関する。
図6に示されるような、軸体51の外周面に弾性層52を備えたローラ50は、種々の分野で広く用いられている。例えば、レーザープリンター及びビデオプリンター等のプリンター、複写機、ファクシミリ、これらの複合機等には、機能に応じて、現像ローラ、定着ローラ、搬送ローラ等の種々のローラが配設された各種の画像形成装置、例えば、電子写真方式を利用した画像形成装置等が採用されている。そして、画像形成装置に装着されるローラは生産性の向上及びコスト低減等が求められ、この要求に応えるには、製造される軸体の寸法精度等をある程度犠牲にしても、軸体51を高い生産性かつ低コストで製造することが有効である。その一方で、ローラは、画像形成装置によって形成される画像の高精細化等に対応するための特性、例えば、高い振れ精度等も求められている。
ところで、ローラ50は、通常、成形金型を用いて、軸体51の外周面に弾性層52を成形することにより、製造される。弾性層52を成形する際に用いられる一般的な成形金型として、例えば、図8に示されるように、円筒金型101と、円筒金型101の一方の端部に装着され、貫通形成された注入孔104を有する一端部金型103と、円筒金型101の他方の端部に装着される他端部金型102とを備えた成形金型100が挙げられる。また、成形金型の別の例として、例えば、「芯材と、該芯材の外周に円筒状の弾性層を形成するパイプ金型と、該パイプ金型の両端部に設けられ該パイプ金型内で前記芯材を保持する芯材保持部を備えた少なくとも2つの駒と、を有するローラ成型用金型において、前記2つの駒における芯材保持部の少なくとも前記芯材と接触する部分が、高硬度化されていることを特徴とするローラ成型用金型」が挙げられる(特許文献1参照。)。
しかし、軸体51を高い生産性でコストを抑えて製造すると、製造される軸体51の寸法精度が低下して、軸体51の軸線方向の長さが設計寸法に対してばらつき、その結果、すべての軸体51が同一の軸線方向の長さに調整されなくなる。
このようにして製造された軸体51のうち、その軸線方向の長さが設計寸法よりも長い軸体51を前記成形金型100又は特許文献1のローラ成型用金型に収納して、ローラ50を製造すると、一端部金型103と他端部金型102とで押圧された軸体51は、成形金型100内で座屈する。このような状態で軸体51の外周面に弾性層52を形成すると、例えば、図7に示されるように、成形された弾性層52Bと軸体51との中心軸がずれて、その結果、軸体51に対して弾性層52Bが偏心して、ローラの振れ精度が低下する。
一方、このようにして製造された軸体51のうち、その軸線方向の長さが設計寸法よりも短い軸体51を前記成形金型100又は特許文献1のローラ成型用金型に収納して、ローラ50を製造すると、軸体51が座屈することはないが、弾性層52を形成する成形材料が保持穴105又は芯材保持部内の軸体51との空隙部分に浸入して、保持穴105又は芯材保持部内で成形材料が硬化する。そうすると、保持穴105又は芯材保持部から硬化体を除去するのが困難であり、ローラの生産性を低下させる。また、硬化体が保持穴105又は芯材保持部内に残存していると、別の軸体52を保持穴105又は芯材保持部に挿入したときに、残存している硬化体の分だけ軸体52の軸線方向の長さが実質的に長くなり、その結果、前記したように、軸体52が座屈して、ローラ51の振れ精度が低下する。
振れが少ないローラを製造することができる成形金型の一例として、例えば、特許文献2には、「筒状金型の両端に、芯金の両端部を支持する芯金保持部材を設けた硬化型液状樹脂を用いたローラの製造装置であって、芯金を一方の芯金保持部材から他方の芯金保持部材に向けて軸心方向に弾性附勢するばね機構を一方の芯金保持部材に設けたことを特徴とする硬化型液状樹脂を用いたローラの製造装置」(請求項1)、具体的には、「芯金の両端部を縮径させて段部及び軸受け部を成形し、一方の芯金保持部材において、芯金の軸受け部に押さえ部材をスライド自在に外嵌し、芯金の段部に押さえ部材の端面を当接させた状態で芯金の軸受け部にコイルバネを外被して設け、一方の芯金保持部材から他方の芯金保持部材に向けて軸心方向に弾性附勢した請求項1記載の硬化型液状樹脂を用いたローラの製造装置」(請求項2)が記載されている。
この成形装置においては、特許文献2の段落0011欄に「ばね部材15、筒状金型1を組み込んだときに芯金2に過度の座屈応力がかからないようにバネ定数を決定する必要がある」と記載されているように、ばね部材のバネ定数を厳密に決定する必要があるが、長期間の使用によってばね部材が劣化して所期の目的を達成することができなくなることがある。
特開2007−15117号公報 特開平10−76580号公報
この発明の課題は、振れ精度の高いローラを高い生産性で製造することのできる成形金型及びローラの製造方法を提供することに、ある。
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、軸体が内部に挿入される筒状金型と、前記軸体を固定すると共に前記筒状金型の両端開口部を閉塞する第1の端部金型及び第2の端部金型とを備え、前記軸体の外周面に弾性層を成形する成形金型であって、
前記第1の端部金型及び前記第2の端部金型の少なくとも一方は、その軸線方向に貫通穿孔され、前記軸体を保持する保持孔と、前記保持孔の軸線方向に前後進可能に前記保持孔に挿着され、前記保持孔に保持された前記軸体の端面のみに当接して前記軸体をその軸線方向に固定する軸体固定部材とを備えて成ることを特徴とする成形金型であり、
請求項2は、前記第1の端部金型及び前記第2の端部金型の少なくとも一方は、前記保持孔が軸線方向に貫通穿孔された円柱体及び前記円柱体の一端部から円周方向に張り出して前記筒状金型の開口部を閉塞する円盤状の鍔部を有する端部金型本体と、前記保持孔内に前記鍔部の形成されていない側から挿着される前記軸体固定部材とを有して成る請求項1に記載の成形金型であり、
請求項3は、前記軸体固定部材は、ボルト部材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の成形金型であり、
請求項4は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形金型を用いて、軸体の外周面に弾性層を備えたローラを製造する方法であって、前記筒状金型と、前記第1の端部金型及び前記第2の端部金型と、前記第1の端部金型及び前記第2の端部金型によって前記筒状金型内に固定された前記軸体とで形成されたキャビティに、前記第1の端部金型に設けられたスプルーを介して成形材料を注入し、前記キャビティに注入された成形材料を加熱硬化することを特徴とするローラの製造方法である。
この発明に係る成形金型は、第1の端部金型及び前記第2の端部金型の少なくとも一方が保持孔の軸線方向に前後進可能な軸体固定部材を備えているから、軸線方向の長さが設計寸法よりも長い軸体であっても短い軸体であっても、この軸体固定部材が軸体の端部に当接して、軸体を座屈させることなく、固定することができる。その結果、軸体の外周面に軸体に対する振れがきわめて小さな弾性層を形成することができる。また、第1の端部金型及び前記第2の端部金型の少なくとも一方に形成された保持孔は貫通孔とされているから、保持孔内で成形材料が硬化しても、硬化体を容易に除去することができる。したがって、この発明によれば、振れ精度の高いローラを高い生産性で製造することのできる成形金型及び成形方法を提供することができる。
この発明に係る成形金型は、軸体の外周面に弾性層を成形するための射出成形用金型の一種であって、その一例として、例えば、図1に示されるように、軸体が内部に挿入される筒状金型5と、軸体を固定すると共に筒状金型5の両端開口部を閉塞する第1の端部金型6及び第2の端部金型8とを備えている。この発明に係る成形金型は、例えば、図6に示されるローラ50を製造するのに好適に用いられる。このローラ50は、軸体51と、軸体51の外周面に成形された弾性層52とを備えている。
図1に示されるように、筒状金型5は、両端に開口部を有する中空円筒体であり、均一な外径及び内径を有している。筒状金型5は、弾性層52を成形する際に、その軸線方向に沿って軸体51が挿入される。筒状金型5は、その内表面の表面粗さが調整されているのがよく、鏡面とされているのが特によい。筒状金型5は、成形する弾性層52に応じて、その外径、内径、軸線長さ等が調整される。
前記第1の端部金型6は、軸体51の一端部を保持すると共に筒状金型5の一端部に開口した開口部を閉塞する。図1及び図2に示されるように、この一例における第1の端部金型6は、その軸線方向に貫通穿孔され、軸体51を保持する保持孔13と、保持孔13の軸線方向に前後進可能に保持孔13に挿着され、保持孔13に挿入保持された軸体51をその軸線方向に固定する軸体固定部材20とを備えて成る。より具体的には、第1の端部金型6は、その略中心部に軸体51を保持する保持孔13が軸線方向に貫通穿孔された円柱体11と、円柱体11の一端部から円周方向に張り出し、筒状金型5の開口部を閉塞する円盤状の鍔部12とを有する端部金型本体10、及び、保持孔13の軸線方向に前後進可能に、保持孔13に先端部が挿入されて装着され、保持孔13に挿入保持された軸体51をその軸線方向に固定する軸体固定部材20を備えて成る。
円柱体11は、軸体51の一端部が挿入されて軸体51を保持すると共に、軸体固定部材20が挿入されて装着される。図1及び図2に示されるように、この一例における円柱体11は、保持する軸体51等に応じて、軸線長さ、外径等が調整され、また、保持孔13の内径(保持孔13が後述する螺旋状の一様な凹部(例えばねじ)が螺設されている場合には、凹部(ねじ谷)の径)等が調整される。例えば、保持孔13の内径は、保持する軸体51の外径に対して約100〜105%程度に調整されると、軸体51の中心軸と形成される弾性層52の中心軸とのずれを小さくして、形成される弾性層52の振れを抑えることができる点で、好ましい。
この円柱体11の内周面には、図2に示されるように、螺旋状の一様な凹部、例えば、ねじ溝(以下、螺旋溝と称することがある。図1において図示に図示しない。)が螺設されており、保持孔13は雌ねじ状のネジ孔になっている。なお、ねじ山の角度、ねじ山のピッチは適宜調整される。
鍔部12は、筒状金型5の一端部に開口した開口部を閉塞する。図1及び図2に示されるように、この一例における鍔部12は、端部金型本体10、すなわち、円柱体11の中心軸と同軸の中心軸を有する円盤体である。鍔部12の厚さは、特に限定されず、具体的には、1.5〜2.5mm程度に調整される。鍔部12の外径は、筒状金型5における開口部の開口径とほぼ同じ径に調整されている。鍔部12は、その内側端面16の表面粗さが調整されていてもいなくてもよい。
鍔部12には、スプルー14が鍔部12の厚さ方向に貫通形成され、成形材料が注入される際の通路として機能する。スプルー14は、鍔部12の中心から一定距離の円周上に等間隔で4個形成されている。スプルー14における縦断面(鍔部12の中心軸を含む平面で切断したときの断面)の形状は、特に限定されず、鍔部12の外側端面15側から内側端面16側に延在する略長方形であっても略正方形であってもよいが、図1及び図2(b)に示されるように、外側端面15側から内側端面16側にわたって広がった台形形状をしているのが好ましい。すなわち、スプルー14における外側開口部17の開口径よりも内側開口部18の開口径が大きくなっているのが好ましい。スプルー14の軸線に直交するその断面形状は、円形であっても楕円状であってもよい。さらに、スプルー14の内側面は凹状又は凸状に湾曲していてもよい。
台形形状の縦断面を有するスプルー14における、外側端面15側から内側端面16側に向かう開き角(図2(b)における角度θ)は、通常、1〜10°であるのが好ましく、3〜9°であるのがより好ましく、5〜7°であるのが特に好ましい。スプルー14の前記開き角とは、図2(b)に示すように、スプルー14の中心軸を通る第1の端部金型6の断面図において、スプルー14における両側面の延長線が交わる角度θである。スプルー14の最も径が小さい部分、例えば、外側端面15上に開口したスプルー14の外側開口部17は、1〜10mmの直径(長軸又は対角線距離を含む。)を有するのが好ましく、2〜5mmの直径(長軸又は対角線距離を含む。)を有するのが特に好ましい。スプルー14をこのような形状にすることにより、スプルー14をこのような形状及び/又は大きさにすることにより、成形材料はスプルー14から静かにかつ滑らかに注入され、成形材料の充填不足、成形材料内の気泡発生、及び/又は、気泡を成形材料中に巻き込むことを防止することができる。また、ローラを成形金型1から脱型する際に、スプルー14内に残存して硬化したバリが、ローラと一体になって第1の端部金型6から取り出されやすく、スプルー14内にバリの一部が残存することを防止することができ、第1の端部金型6の清浄時間を大幅に短縮することができる。
軸体固定部材20は、保持孔13に保持された軸体51をその軸線方向に固定する。図1及び図2に示されるように、この一例における軸体固定部材20は、その先端部が保持孔13に挿入されて保持孔13に装着され、その外周面に螺旋状の一様な突起、例えば、ねじ山(以下、螺旋山と称することがある。図1及び図2(a)において図示に図示しない。)が螺設された円柱体21と、円柱体21の一端部から円周方向に張り出した頭部22とから成る。
円柱体21は、保持孔13の寸法等に応じて、軸線長さ、外径等が調整され、例えば、円柱体21の外径(円柱体21が後述する螺旋山が螺設されている場合には、螺旋山の外径)は、保持孔13の内径とほぼ同じ径に調整される。この円柱体21は、保持孔13の内周面に螺設された螺旋溝と螺合する螺旋山がその外周面に螺設されている。
頭部22は、円柱体21の外径よりも大きな外径を有し、軸体固定部材20の前後進を容易にする。
軸体固定部材20は、図2(b)に示されるように、頭部22を有するボルト部材、例えば、雄ネジ、六角ボルトであり、保持孔13の内周面に螺設された螺旋溝と円柱体21の外周面に螺設された螺旋山とが螺合し、軸体固定部材20の円柱体21が相対的に回転することによって、軸体固定部材20が保持孔13の軸線方向に前後進可能になっている。このように、軸体固定部材20が相対的に回転することによって、軸体固定部材20は成形金型1内における軸体51の軸線方向の位置を調整することができる軸体位置調整部材でもあり、したがって、軸体固定部材20は、成形金型1内における所定の位置に軸体51をその軸線方向に固定することができる。
軸体固定部材20における円柱体21の先端部は、軸体51の端面を傷つけることなく、軸体51の軸線方向に軸体51を押圧することができればいかなる形状であってもよく、例えば、平先、丸先、棒先、とがり先又はくぼみ先等のねじ先を適宜採用することができる。
図1に示されるように、第2の端部金型8は、成形材料が注入される際の通路として機能するスプルー14の代わりに、成形材料が注入される際又は成形材料が硬化される際の気体又は成形材料の排出路として機能するベント34が鍔部12に形成されている以外は、第1の端部金型6と同様に構成されている。図1において、第1の端部金型6と同じ符号は、同じ部材を表す。
図1に示されるように、ベント34は、スプルー14と同様に、外側端面15側から内側端面16側にわたって広がった台形形状をしているのが好ましく、すなわち、ベント34における外側開口部37の開口径よりも内側開口部38の開口径が大きくなっているのが好ましい。このベント34の開き角は、スプルー14の開き角θよりも小さく調整されるのが特に好ましい。このようにベント34の開き角を小さくすると、成形材料の注入終了時に、成形金型1の内圧を発生させやすくなり、ウェルドラインの残存等の成形不良を抑えるのに効果的である。
第1の端部金型6及び第2の端部金型8それぞれは、軸体固定部材20における円柱体21が保持孔13内に鍔部12の形成されていない側から螺合して挿入され、保持孔13に挿着される。このようにして組み立てた第1の端部金型6及び第2の端部金型8それぞれを、筒状金型5の各開口部に、第1の端部金型6における鍔部12及び第2の端部金型8における鍔部12を挿入して、成形金型1が組み立てられる。そして、成形金型1は例えばローラ50の製造に供される。弾性層52の成形時には、組み立てられた成形金型1を、その軸線方向から、すなわち、第1の端部金型6及び第2の端部金型8側から、挟持する。このとき、筒状金型5と第1の端部金型6との嵌合状態及び筒状金型5と第2の端部金型8との嵌合状態を均一に保持するための固定治具を用いてもよい。
この発明に係る成形金型における別の一例を、図3を参照して、説明する。この成形金型2は、成形金型1における第1の端部金型6に代えて、第1の端部金型7を備えている以外は、成形金型1と基本的に同様である。
この第1の端部金型7は、第1の端部金型7は、第1の端部金型6の保持孔13に代えて有底の保持穴19を有し、軸体固定部材20を挿着していない点において、第1の端部金型6と異なる以外は、第1の端部金型6と基本的に同様である。すなわち、第1の端部金型7は、図3に示されるように、軸体51を保持する保持穴19を有する円柱体11’と、円柱体11’の一端部から円周方向に張り出し、筒状金型5の開口部を閉塞する円盤状の鍔部12とを有し、鍔部12は、保持穴19の深さよりも小さな厚さとその厚さ方向に貫通形成されたスプルー14とを有して成る。換言すると、第1の端部金型7は、筒状金型5の一方の開口部を閉塞するフランジ状の鍔部12を備えた、保持穴19を有する円柱体11’であって、鍔部12の厚さが保持穴19の深さよりも小さく調整されて成る。
この成形金型2は、前記成形金型1と基本的に同様にして組み立てられ、例えば、ローラ50の製造に供される。
この発明に係る成形金型における別の一例を、図4を参照して、説明する。この成形金型3は、成形金型1における第1の端部金型6及び第1の端部金型8それぞれが、軸体固定部材20の先端部側に中間部材23を備えている以外は、成形金型1と基本的に同様である。
この中間部材23は、軸体固定部材20の回転によって、軸体固定部材20と共に、保持孔13内をその軸線方向に前後進可能になっており、保持孔13内に挿入された軸体51の端部及び軸体固定部材20における円柱体21の先端部の間に介在して、軸体51の端部と円柱体21の先端部との接触圧力を緩和する。この中間部材23は、保持孔13の内周面に螺設された螺旋溝に螺合する螺旋山が外周面に形成された円板状を成している。したがって、中間部材23の外径は、保持孔13の内径とほぼ同じ径に調整される。
この成形金型3は、中間部材23が保持孔13にまず収納され、次いで、軸体固定部材20が保持孔13に装着される以外は、前記成形金型1と基本的に同様にして組み立てられ、例えば、ローラ50の製造に供される。
筒状金型5、第1の端部金型6及び7並びに第2の端部金型8はそれぞれ、ある程度の強度と成形材料を加熱硬化する際の温度における耐熱性を有する材料で作製される。このような材料として、例えば、銅、銅合金、黄銅、青銅、アルミニウム、アルミニウム合金、鋼、各種めっき鉄、鉄合金、ステンレス鋼等の金属等が挙げられる。筒状金型5、第1の端部金型6及び7並びに第2の端部金型8はそれぞれ同じ材料で形成されるのが好ましい。中間部材23は、通常、ゴム、エラストマー等の弾性材料で作製される。なお、保持孔13の内表面に螺設された螺旋溝及び円柱体21の外表面に螺設された螺旋山は、例えば、タップ加工又は旋盤による雌ねじ切り加工等によって、形成することができる。
成形金型1〜3(以下、この発明に係る成形金型と称する。)は、第1の端部金型6及び第2の端部金型8の少なくとも一方が保持孔13の軸線方向に前後進可能な軸体固定部材20を備え、この軸体固定部材20は、回転により保持孔13内を前後進し、軸体51の両端部に(成形金型3は中間部材23を介して)当接して、成形金型内における軸体51の相対的な位置を調整すると共に、軸体51を挟持することができるから、軸体51の軸線方向の長さにかかわらず、これらの軸体固定部材20によって、軸体51は、座屈することなく、固定される。特に、成形金型1及び3は、第1の端部金型6及び第2の端部金型8のいずれもが軸体固定部材20を備えているから、第1の端部金型6及び第2の端部金型8によって、軸体51は成形金型内における所定の位置に所望のように固定される。したがって、この発明に係る成形金型によれば、軸体51の外周面に軸体51に対する振れがきわめて小さな弾性層52を形成することができる。
また、第1の端部金型6及び第2の端部金型8それぞれに挿着された軸体固定部材20は、回転により保持孔13内を前後進することができるから、軸体51を容易に固定及び開放することができ、特に、成形金型1及び3は、第1の端部金型6及び第2の端部金型8のいずれによっても軸体51を固定することができるから、軸体51をきわめて容易に固定及び開放することができる。したがって、この発明に係る成形金型によれば、ローラ50の生産性の向上に大きく貢献する。
さらに、軸体固定部材20は、回転により保持孔13内を前後進することができるから、劣化とは無縁であり、長期間にわたって、軸体51を成形金型内における所定の位置に所望のように固定することができる。その結果、この発明に係る成形金型によれば、軸体51の外周面に軸体51に対する振れがきわめて小さな弾性層52を長期間にわたって形成することができる。したがって、この発明によれば、振れ精度の高いローラを長期間にわたって高い生産性で製造することのできる成形金型を提供することができる。
また、第1の端部金型6及び第2の端部金型8それぞれに挿着された軸体固定部材20は、軸体51の両端部(両端面)に(成形金型3は中間部材23を介して)当接して、軸体51を固定することができるから、軸体51は、特許文献2に記載されているような、「円柱部材の両端部を縮径させて芯金本体の両端部に軸受け部を形成するとともに、これらの間に段部を有する軸体」でなくても、例えば、単なる棒状体であっても、軸体51を座屈させることなく、固定することができる。したがって、この発明によれば、軸体の形状にかかわらず、振れ精度の高いローラを高い生産性で製造することのできる成形金型を提供することができる。
さらに、第1の端部金型6及び第2の端部金型8それぞれに形成された保持孔13は貫通孔とされているから、保持孔13内で成形材料が硬化しても、硬化体を容易に除去することができる。したがって、この発明に係る成形金型によれば、ローラの生産性向上及びローラの振れ精度向上に大きく貢献することができる。
この発明における成形金型は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、この発明に係る成形金型の一例としての成形金型1〜3は、いずれも、第1の端部金型6又は7と第2の端部金型8とが筒状金型5の両端開口部に挿入されて、筒状金型5及び第1の端部金型6又は7が嵌合され、かつ、筒状金型5及び第2の端部金型8が嵌合されることによって、筒状金型5の両端開口部が閉塞されているが、この発明において、成形金型は、第1の端部金型及び第2の端部金型における鍔部の内側端面に筒状金型の両端部が当接することによって、筒状金型の両端開口部が閉塞されてもよく、また、第1の端部金型及び第2の端部金型における鍔部の外縁に例えばフランジ、係合凸部等の嵌合手段が形成され、かつ、筒状金型の両端部に例えば切欠部、係合凹部等の嵌合手段が形成され、これらの嵌合手段が嵌合されることによって、筒状金型の両端開口部が閉塞されてもよい。
また、軸体固定部材20における円柱体21は、軸体固定部材20の回転機構として頭部22を有しているが、この発明において、軸体固定部材における円柱体は頭部を有している必要はなく、例えば、円柱体の端面に軸体固定部材の回転機構を有していてもよい。このような軸体固定部材20として、例えば、六角穴つきボルト等が挙げられる。
さらに、第1の端部金型6及び7は、図2に示されるように、4個のスプルー14が鍔部12に貫通形成され、また、第2の端部金型8は、4個のベント34が鍔部12に貫通形成されているが、この発明において、第1の端部金型の鍔部にスプルーが貫通形成される数及び第2の端部金型の鍔部にベントが貫通形成される数は特に限定されず、1個でも2個以上でもよい。
次に、前記成形金型1を用いた、軸体51の外周面に弾性層52を成形する成形方法の一例(以下、この発明に係る成形方法と称することがある。)を説明する。この発明に係る成形方法は、筒状金型5と、第1の端部金型6及び第2の端部金型8と、第1の端部金型6及び第2の端部金型8によって筒状金型5内に保持された軸体51とで形成されたキャビティ55に、スプルー14を介して成形材料を注入し、キャビティ55に注入された成形材料を加熱硬化する方法である。そして、この発明に係る成形方法によって成形された弾性層52を備えたローラ50の一例として、図6に示されるローラ50が挙げられる。
この発明に係る成形方法においては、まず、軸体51を準備する。軸体51は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮若しくはこれらの合金等の金属、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の樹脂、及び前記樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック若しくは金属粉体等を配合した導電性樹脂等の材料を用いて、公知の方法により所望の形状に作製される。この例において、軸体51は均一な外径を有する棒状体に成形されている。軸体51に導電性が要求される場合には、前記金属及び前記導電性樹脂の他に、前記樹脂等で形成した絶縁性芯体の表面に定法によりメッキを施すことにより、軸体51を作製することができる。前記材料の中でも、容易に導電性を付与することができる点で、金属であるのが好ましく、アルミニウム又はステンレス鋼であるのが特に好ましい。
軸体51は、所望により、その外周面にプライマー層が塗布されてもよい。プライマー層を形成するプライマーは、所望により溶剤等に溶解され、定法、例えば、ディップ法、スプレー法等に従って、軸体51の外周面に塗布され、硬化される。プライマーとしては、特に制限はないが、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。所望により、前記樹脂を硬化及び/又は架橋する架橋剤を用いることができ、このような架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、過酸化物、フェノール化合物、ハイドロジェンシロキサン化合物等が挙げられる。プライマー層は、例えば、0.1〜10μmの厚さに形成される。
この発明に係る成形方法においては、次いで、図5に示されるように、例えば、前記組み立て方法に従って、軸体51を成形金型1内に収納した状態に成形金型1を組み立てる。具体的には、前記のようにして組み立てた第1の端部金型6の保持孔13に軸体51の一端部を挿入して、軸体51を保持し、次いで、保持された軸体51が筒状金型5の内部に位置するように、第1の端部金型6の鍔部12を筒状金型5の一方の開口部に挿入して、筒状金型5の開口部を閉塞し、最後に、前記のようにして組み立てた第2の端部金型8の保持孔13に軸体51の他端部を挿入すると共に、第2の端部金型8の鍔部31を筒状金型5の他方の開口部に挿入して、筒状金型5の開口部を閉塞することによって、軸体51を内部に収容した状態に成形金型1を組み立てる。
次いで、第1の端部金型6における軸体固定部材20を回転して、成形金型1内に固定される軸体51の位置を決定し、第2の端部金型8における軸体固定部材20を回転して、軸体固定部材20における円柱体21を保持孔13内を相対的に前進(図5において降下)させ、軸体51の端面に接触させる。引き続き、第2の端部金型8における軸体固定部材20を回転して、第1の端部金型6における軸体固定部材20と第2の端部金型8における軸体固定部材20とで軸体51を挟持する(図4参照。)。このとき、軸体固定部材20は、手動で回転させてもよいが、軸体51の座屈を確実に防止することができる点で、トルクゲージを備えた回転手段(例えば、トルクレンチ)を用いて回転させるのがよい。このように、軸体51が軸体固定部材20で挟持されると、図5に示されるように、軸体51は、その両端部が第1の端部金型6の保持孔13と第2の端部金型8の保持孔13とに保持されると共に、成形金型1内の軸線方向における所定の位置に固定される。
この発明に係る成形方法においては、成形材料を注入する射出成形機又は注型機等を準備する。準備した射出成形機又は注型機等を用いて、成形金型1と軸体51とで形成されたキャビティ55に第1の端部金型6のスプルー14を介して成形材料を注入する。成形材料をキャビティ55内に注入する方法は、定法であれば何れの方法も採用することができる。
この発明に係る成形方法においては、次いで、キャビティ55に注入された成形材料を加熱硬化して、弾性層52を成形する。成形材料の加熱条件は、成形材料が硬化可能な加熱条件であればよく、成形材料に応じて決定される。例えば、後述する付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を成形材料として用いる場合には、加熱温度は100〜300℃に設定することができ、加熱時間は10秒から1時間に設定することができる。
このようにして、弾性層52を軸体51の外周面に成形して、図6に示されるローラ50を製造することができる。
この発明に係る製造方法に使用される成形材料は、室温で液状のゴムを含有するゴム組成物であればよく、液状のゴムとして、例えば、シリコーン若しくはシリコーン変性ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(エチレンプロピレンジエンゴムを含む。)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロールヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等の液状ゴムが挙げられる。これらのゴムは、付加硬化型であるのが、加熱成形時の寸法精度に優れる点で、好ましい。
ゴム組成物は、ゴムに加えて、通常、ゴム組成物に含有される各種添加剤を含有していてもよく、各種添加剤としては、例えば、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤、導電性付与剤、分散剤、発泡剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、硬化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。これらの各種添加剤は、通常用いられる添加剤であってもよく、用途に応じて特別に用いられる添加剤であってもよい。
ゴム組成物は、成形金型1に容易にかつ均質に注入することができる点で、例えば、25℃において、5〜500Pa・sの粘度を有しているのがよく、10〜200Pa・sの粘度を有しているのが特によい。
このようなゴム組成物として、具体的には、例えば、(A)一分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンと、(B)一分子中にケイ素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(C)平均粒径が1〜30μmで、嵩密度が0.1〜0.5g/cmである無機質充填材と、(D)導電性付与剤と、(E)付加反応触媒とを含有する付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物等が挙げられる。
この発明に係る製造方法によれば、この発明に係る成形金型を用いて、弾性層52を軸体51の外周面に成形することができるから、振れ精度の高いローラを高い生産性で製造することができる。また、前記したように、この発明に係る成形金型を用いたこの発明に係る製造方法によれば、振れ精度の高いローラを長期間にわたって高い生産性で製造することができ、さらに、軸体の形状にかかわらず、振れ精度の高いローラを高い生産性で製造することができる。
この発明に係る成形方法は、前記した例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、この発明に係る成形方法においては、所望により、前記加熱硬化後に再度加熱(二次加熱)してもよく、また、所望により、成形された弾性層の端部を切除してもよい。
ここで、ローラの振れは、弾性層の円周方向における厚さの均一性、すなわち、厚さの振れ(以下、単に、振れと称することがある。)を示す精度である。ローラの振れは、弾性層52Bの中心点52Cと軸体51の中心点51Cとの距離に影響される。例えば、図7(a)に示されるように、ローラ50Cは、その弾性層52Bが、軸線方向において、軸体51の軸線51Cとその軸線とがずれて軸体51の外周面に形成され、ローラ50CのA−A線における断面が図7(b)に示されている。図7を参照すると、弾性層52Bの振れは、弾性層52Bの最大厚さ(tmax)と最小厚さ(tmin)との差(tmax−tmin)、換言すると、軸体51の中心点51Cから弾性層52Bの外周面までの最長距離Lと最短距離Lとの差(L−L)として、算出される。弾性層52Bの振れは、例えば、ローラ50Cを軸体51の中心軸を中心として回転させながら、レーザー測長機により、各測定点における、弾性層52Bの厚さ、又は、軸体51の中心点から弾性層52Bの外周面までの距離を測定し、測定された最大厚さと最小厚さとから、又は、測定された最長距離と最短距離とから、前記式により算出することができる。
この発明に係る成形金型を用いて軸体51の外周面に弾性層52(外径10〜40mm)を形成すると、弾性層52の振れは、通常、0.05mm以下の範囲内に調整されることができる。
図1は、この発明に係る成形金型の一例を示す概略断面図である。 図2は、この発明に係る第1の端部金型の一例を示す概略図であり、図2(a)はこの発明に係る第1の端部金型の一例を示す概略斜視図であり、図2(b)はこの発明に係る第1の端部金型の一例を示す概略縦断面図である。 図3は、この発明に係る成形金型の別の一例を示す概略断面図である。 図4は、この発明に係る成形金型のまた別の一例を示す概略断面図である。 図5は、この発明に係る成形金型に軸体を固定した状態を示す概略断面図である。 図6は、ローラの一例を示す概略斜視図である。 図7は、弾性層の振れを説明する説明図であり、図7(a)はローラの正面図であり、図7(b)は図7(a)のA−A線における断面図である。 図8は、従来の一般的な成形金型の例を示す概略断面図である。
符号の説明
1、2、3 成形金型
5 筒状金型
6、7 第1の端部金型
8 第2の端部金型
10 端部金型本体
11、11’、21 円柱体
12 鍔部
13 保持孔
14 スプルー
15 外側端面
16 内側端面
17、37 外側開口部
18、38 内側開口部
19 保持穴
20 軸体固定部材
22 頭部
23 中間部材
34 ベント
50、50C ローラ
51 軸体
51C 中心点(軸線)
52、52B 弾性層
52C 中心点
55 キャビティ
100 成形金型
101 円筒金型
102 他端部金型
103 一端部金型
104 注入孔
105 保持穴

Claims (4)

  1. 軸体が内部に挿入される筒状金型と、前記軸体を固定すると共に前記筒状金型の両端開口部を閉塞する第1の端部金型及び第2の端部金型とを備え、前記軸体の外周面に弾性層を成形する成形金型であって、
    前記第1の端部金型及び前記第2の端部金型の少なくとも一方は、その軸線方向に貫通穿孔され、前記軸体を保持する保持孔と、前記保持孔の軸線方向に前後進可能に前記保持孔に挿着され、前記保持孔に保持された前記軸体の端面のみに当接して前記軸体をその軸線方向に固定する軸体固定部材とを備えて成ることを特徴とする成形金型。
  2. 前記第1の端部金型及び前記第2の端部金型の少なくとも一方は、前記保持孔が軸線方向に貫通穿孔された円柱体及び前記円柱体の一端部から円周方向に張り出して前記筒状金型の開口部を閉塞する円盤状の鍔部を有する端部金型本体と、前記保持孔内に前記鍔部の形成されていない側から挿着される前記軸体固定部材とを有して成る請求項1に記載の成形金型
  3. 前記軸体固定部材は、ボルト部材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の成形金型。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形金型を用いて、軸体の外周面に弾性層を備えたローラを製造する方法であって、前記筒状金型と、前記第1の端部金型及び前記第2の端部金型と、前記第1の端部金型及び前記第2の端部金型によって前記筒状金型内に固定された前記軸体とで形成されたキャビティに、前記第1の端部金型に設けられたスプルーを介して成形材料を注入し、前記キャビティに注入された成形材料を加熱硬化することを特徴とするローラの製造方法。
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