JP5221126B2 - 水溶性物質で表面修飾された微粒子の製造方法 - Google Patents

水溶性物質で表面修飾された微粒子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子が、水溶性物質によって表面修飾された微粒子の製造方法に関する。
従来から、医薬品、農薬、食品等の分野において、活性成分を含有する微粒子を水溶性物質で表面修飾したり、活性成分を水溶性物質で化学修飾したりすることにより、生体内での活性成分への蛋白質等の接近や認識が抑えられ、血中半減期の延長や抗原性の低下等の効果が得られることが知られている。リポソーム、エマルジョン粒子等の脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子においても、該微粒子を水溶性物質で表面修飾することで、血中半減期の延長や抗原性の低下等の効果が得られることが知られている(特許文献1および2参照)。
脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子の水溶性物質による表面修飾は、一般的に該微粒子の製造工程において、構成成分のうち少なくとも粒子化する作用をもつ構成成分と、水溶性物質の誘導体からなる表面修飾剤とを共存させ、粒子化する作用をもつ構成成分と該表面修飾剤とで一緒に微粒子を形成させることで行われる(特許文献2参照)。しかしながら、上記工程において多量の表面修飾剤で該微粒子を修飾することが必要な場合には、該微粒子の物理化学的な性質の変化を引き起こして、好ましい表面修飾ができないことがある。例えばリン脂質にポリエチレングリコール誘導体を共存させてリポソームを調製する場合、ポリエチレングリコール誘導体の含量が高いと脂質膜の形態を取らずにミセル化することが知られている[“バイオフィジカル・ジャーナル(Biophysical Journal)”、1997年、第73巻、p.258−266、“バイオフィジカル・ジャーナル(Biophysical Journal)”、2002年、第83巻、p.2419−2439参照]。また、水溶性物質による表面修飾は前述した目的から考えて微粒子の外側のみでよいが、微粒子の形成時にあらかじめ表面修飾剤を共存させておく製造方法では該表面修飾剤が、微粒子の内側にも存在してしまう。
一方で、脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子の構成成分のうち、少なくとも粒子化する作用をもつ構成成分で微粒子を形成させた後に、水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体からなる表面修飾剤を添加する方法による、該微粒子の外側のみ水溶性物質で表面修飾された該微粒子の製造方法が知られている(特許文献1および3参照)。しかしながら、特許文献1では、室温において、水中でリポソームにポリエチレングリコール結合リン脂質を添加して、該リポソームをポリエチレングリコールで表面修飾する方法が記載されているが、特許文献3にも記載されているように、この方法で室温以下の温度で十分表面修飾できるのは、リポソームにおける粒子化する作用をもつ構成成分として相転移温度の低いリン脂質を用い、表面修飾剤として臨界ミセル濃度の高いものを用いる場合に限られる。また、特許文献3では、水中でリポソームに、分子の一端に疎水性部を有し他端に親水性部を有する化合物からなる表面修飾剤を添加し、粒子化する作用をもつ構成成分の相転移温度以上になるように加熱する工程を経て、該リポソームを表面修飾する方法が記載されている。
特開平2−149512号公報 特表平5−501264号公報 特開平3−181415号公報
本発明の目的は、より簡便な方法による水溶性物質で表面修飾された脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子の製造方法等を提供することにある。
本発明は以下の(1)〜(17)に関する。
(1)極性有機溶媒を含有する液中に、脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子を分散状態で存在させ、水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体からなる表面修飾剤を溶解または分散状態で存在させる工程(工程A)を含む、該水溶性物質で表面修飾された該微粒子の製造方法。
(2)極性有機溶媒として、該表面修飾剤が可溶な極性有機溶媒を使用することを特徴とする前記(1)の微粒子の製造方法。
(3)極性有機溶媒として、アルコール、グリコールおよびポリアルキレングリコールから選ばれる一つ以上を使用することを特徴とする前記(1)の製造方法。
(4)極性有機溶媒を含有する液として、極性有機溶媒の濃度が80vol%以下の該極性有機溶媒を含有する液を使用することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかの製造方法。
(5)脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子が、脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体で被覆された微粒子である前記(1)〜(4)のいずれかの製造方法。
(6)工程Aにおいて、該極性有機溶媒を含有する液中に、さらに両親媒性物質を溶解または分散状態で存在させることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかの製造方法。
(7)両親媒性物質と表面修飾剤の重量比を、10:1〜1:100とすることを特徴とする前記(6)の製造方法。
(8)両親媒性物質がリン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質、コレステロール、カチオン性脂質、アニオン性脂質、界面活性剤、および水溶性高分子の脂質または脂肪酸誘導体から選ばれる一つ以上である、前記(6)または(7)の製造方法。
(9)脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子が、脂質集合体、リポソームおよびエマルジョン粒子から選ばれる一つ以上を構成成分とする微粒子である前記(1)〜(8)のいずれかの製造方法。
(10)表面修飾剤が、ポリエチレングリコール化脂質、ポリグリセリン化脂質、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる一つ以上である前記(1)〜(9)のいずれかの製造方法。
(11)脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子がリポソームであり、極性有機溶媒がエタノールであり、両親媒性物質がリン脂質であり、表面修飾剤がポリエチレングリコール化脂質である、前記(6)または(7)の製造方法。
(12)脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子がリポソームであり、極性有機溶媒がエタノールであり、両親媒性物質がリン脂質であり、表面修飾剤がポリエチレングリコール脂肪酸エステルである、前記(6)または(7)の製造方法。
(13)前記(1)〜(12)のいずれかの製造方法によって表面修飾される脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子を調製するための、少なくとも脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子、水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体からなる表面修飾剤、および極性有機溶媒を含有する液から構成されるキット。
(14)前記(1)〜(12)のいずれかの製造方法を用いて製造できる水溶性物質で表面修飾された脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子。
(15)前記(1)〜(12)のいずれかの製造方法を用いて製造できる水溶性物質で表面修飾された脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子のうち、抗腫瘍薬を含有する該微粒子を含有する腫瘍の治療剤。
(16)前記(1)〜(12)のいずれかの製造方法を用いて製造できる水溶性物質で表面修飾された脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子のうち、抗炎症薬を含有する該微粒子を含有する炎症の治療剤。
(17)前記(1)〜(12)のいずれかの製造方法を用いて製造できる水溶性物質で表面修飾された脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子のうち、薬物を含有する該微粒子からなる、腫瘍または炎症部位への薬物含有キャリアー。
本発明により、水溶性物質で表面修飾された脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子の簡便な製造方法等が提供される。また、本発明によって、実質上加熱する工程を含まずに、幅広い種類の被修飾粒子を修飾することが可能な水溶性物質で表面修飾された脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子の製造方法等が提供される。
実施例1〜5および比較例1〜3で得られた各製剤について、ラットに投与後の血中動態推移を表わしている。■は実施例1、□は実施例2、●は実施例3、○は実施例4、◆は実施例5、×は比較例1、△は比較例2、◇は比較例3で得られた製剤の投与群をそれぞれ表わしている。 実施例6〜9、比較例2および3で得られた各製剤について、ラットに投与後の血中動態推移を表わしている。■は実施例6、□は実施例7、●は実施例8、○は実施例9、△は比較例2、◇は比較例3で得られた製剤の投与群をそれぞれ表わしている。 実施例10および11で得られた各製剤について、ラットに投与後の血中動態推移を表わしている。■は実施例10、□は実施例11で得られた製剤の投与群をそれぞれ表わしている。 実施例12〜15で得られた各製剤について、ラットに投与後の血中動態推移をを表わしている。■は実施例12、□は実施例13、●は実施例14、○は実施例15で得られた製剤の投与群をそれぞれ表わしている。
本発明における水溶性物質で表面修飾された脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子とは、被修飾粒子としての、脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子が、表面修飾剤としての、水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体によって修飾された微粒子のことである。本発明における表面修飾とは、表面修飾剤の一部(主に脂質、脂肪酸または脂肪族炭化水素の部分)が、被修飾粒子の表面より内側に入り、残部(主に水溶性物質の部分)が表面より外側に突き出るように、表面修飾剤を被修飾粒子に含有させることである。
本発明における脂質としては、単純脂質、複合脂質または誘導脂質のいかなるものであってもよく、例えばリン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質、スフィンゴイド、ステロール、カチオン性脂質等があげられ、好ましくはリン脂質、カチオン性脂質等があげられる。また、脂質の誘導体としては、例えば界面活性剤(後記の界面活性剤と同義)、高分子(後記の高分子と同義、具体的にはデキストラン等)、ポリオキシエチレンまたはその誘導体(具体的にはポリエチレングリコール等)、オリゴグリセリンまたはその誘導体等の脂質誘導体があげられ、好ましくはポリエチレングリコール化リン脂質があげられる。
リン脂質としては、例えばホスファチジルコリン(具体的には大豆ホスファチジルコリン、卵黄ホスファチジルコリン(EPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン等)、ホスファチジルエタノールアミン(具体的にはジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン等)、グリセロリン脂質(具体的にはホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン等)、スフィンゴリン脂質(具体的にはスフィンゴミエリン、セラミドホスホエタノールアミン、セラミドホスホグリセロール、セラミドホスホグリセロリン酸等)、グリセロホスホノ脂質、スフィンゴホスホノ脂質、天然レシチン(具体的には卵黄レシチン、大豆レシチン等)、水素添加リン脂質(具体的には水素添加大豆ホスファチジルコリン等)等の天然または合成のリン脂質があげられる。
グリセロ糖脂質としては、例えばスルホキシリボシルグリセリド、ジグリコシルジグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド、グリコシルジグリセリド等があげられる。
スフィンゴ糖脂質としては、例えばガラクトシルセレブロシド、ラクトシルセレブロシド、ガングリオシド等があげられる。
スフィンゴイドとしては、例えばスフィンガン、イコサスフィンガン、スフィンゴシン、それらの誘導体等があげられる。誘導体としては、例えばスフィンガン、イコサスフィンガン、スフィンゴシン等の−NHを−NHCO(CHCH(式中、xは0〜18の整数を表し、中でも6、12または18が好ましい)に変換したもの等があげられる。
ステロールとしては、例えばコレステロール、ジヒドロコレステロール、ラノステロール、β−シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、エルゴカステロール、フコステロール、3β−[N−(N’,N’−ジメチルアミノエチル)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)等があげられる。
カチオン性脂質としては、例えば、N−[1−(2,3−ジオレオイルプロピル)]−N,N,N−トリメチル塩化アンモニウム(DOTAP)、N−[1−(2,3−ジオレオイルプロピル)]−N,N−ジメチルアミン(DODAP)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシプロピル)]−N,N,N−トリメチル塩化アンモニウム(DOTMA)、2,3−ジオレイルオキシ−N−[2−(スペルミンカルボキシアミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパナミニウムトリフルオロ酢酸(DOSPA)、N−[1−(2,3−ジテトラデシルオキシプロピル)]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチル臭化アンモニウム(DMRIE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシプロピル)]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチル臭化アンモニウム(DORIE)等もあげられる。
本発明における脂肪酸またはその誘導体としては、例えばステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の脂肪酸、脂肪酸と他の物質が化学結合した界面活性剤等があげられる。
界面活性剤としては、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(具体的にはポリソルベート80等)、ソルビタン脂肪酸(具体的にはソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート等)、ポリオキシエチレン誘導体(具体的にはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60等)、グリセリン脂肪酸エステル等があげられる。
本発明における脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子とは、例えば、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン粒子等を構成成分とする微粒子のことまたは薬物、高分子、金属コロイド、微粒子製剤等を構成成分とする微粒子であって、前記の脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子のことであり、好ましくは脂質集合体、リポソーム、エマルジョン等を構成成分とする微粒子があげられ、さらに好ましくはリポソームを構成成分とする微粒子があげられる。ここで、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン粒子等を構成成分とする微粒子、または薬物、高分子、金属コロイド、微粒子製剤等を構成成分とする微粒子であって、前記の脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子は、前記の脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含んでいれば、例えば薬物、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン粒子、高分子、金属コロイドおよび微粒子製剤から選ばれた2つ以上組み合わせた複合体を構成成分とする微粒子であっても、薬物、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン粒子、高分子、金属コロイドおよび微粒子製剤から選ばれた1つ以上と他の化合物(例えば糖、脂質、無機化合物等)とを組み合わせた複合体を構成成分とする微粒子等を包含し、好ましくは薬物と、脂質集合体、リポソームおよびエマルジョン粒子から選ばれる1つ以上との複合体を構成成分とする微粒子があげられ、より好ましくは薬物とリポソームとの複合体を構成成分とする微粒子があげられる。
また、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン粒子等を構成成分とする微粒子、または薬物、高分子、金属コロイド、微粒子製剤等を構成成分とする微粒子であって、前記の脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子は、脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体で被覆された微粒子であってもよく、例えば薬物、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン粒子、高分子、金属コロイド、微粒子製剤等を構成成分とする微粒子が、脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体で被覆された微粒子があげられ、脂質集合体、リポソームまたはエマルジョン粒子を構成成分とする微粒子が、脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体で被覆された微粒子であることがより好ましい。脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体で被覆された微粒子には、前記の複合体を構成成分とする微粒子のいずれかが、脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体で被覆された微粒子を包含する。
脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体で被覆された微粒子における、被覆に用いる脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体としては、脂質膜を形成する脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体であることが好ましく、例えば前記の脂質、界面活性剤等があげられ、より好ましくは、前記の脂質、界面活性剤のうちの中性脂質があげられ、さらに好ましくはリン脂質があげられ、最も好ましくはEPCがあげられる。また、被覆に用いる脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体は、極性有機溶媒に可溶であることが好ましく、該極性有機溶媒を含む液中に、該脂質膜の構成成分が分散可能で、該複合粒子も分散可能な濃度で該極性有機溶媒を含む液が存在することが好ましい。ここで、中性脂質とは、脂質、界面活性剤のうちの、前記のカチオン性脂質と後記のカチオン性界面活性剤、アニオン性脂質およびアニオン性界面活性剤を除いたもののことであり、中性脂質としてより好ましくは、リン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質等があげられる。
本発明における薬物は、工程Aにおける極性有機溶媒を含有する液の溶媒中で微粒子の形態をとる薬物、脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子を構成する他の構成成分と複合体を形成して該溶媒中で微粒子の形態をとる薬物等を包含し、例えば蛋白質、ペプチド、核酸、低分子化合物、糖類、高分子化合物、脂質性化合物、金属化合物等のうち薬理学的活性を有する物質があげられ、好ましくは、核酸があげられ、より好ましくは、遺伝子、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド(ODN)、プラスミドおよびsiRNAから選ばれる1つ以上の物質があげられる。
蛋白質またはペプチドとしては、例えばブラジキニン、アンジオテンシン、オキシトシン、バソプレシン、アドレノコルチコトロピン、カルシトニン、インスリン、グルカゴン、コレシストキニン、β−エンドルフィン、メラノサイト阻害因子、メラノサイト刺激ホルモン、ガストリンアンタゴニスト、ニューロテンシン、ソマトスタチン、ブルシン、シクロスポリン、エンケファリン、トランスフェリン、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)ペプチド、甲状腺ホルモン、成長ホルモン、性腺刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、ウリカーゼ、カルボキシペプチダーゼ、グルタミナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター、ストレプトキナーゼ、インターロイキン、インターフェロン、ムラミルジペプチド、サイモポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、エリスロポエチン、トロンボポエチン、トリプシンインヒビター、リゾチーム、表皮成長因子(EGF)、インスリン様成長因子、神経成長因子、血小板由来成長因子、形質転換成長因子、内皮細胞成長因子、フィブロブラスト(繊維芽細胞)成長因子、グリア細胞成長因子、サイモシン、特異抗体(例えば、抗EGF受容体抗体等があげられる)等があげられる。
核酸としては、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド、センスオリゴヌクレオチド等のODN、遺伝子、DNA、RNA、プラスミド、siRNA等があげられ、該核酸は、核酸の構造中のリン酸部、エステル部等に含まれる酸素原子等が、例えば硫黄原子等の他の原子に置換された誘導体を包含する。なお、siRNAとは、短い二本鎖RNAのことである。
低分子化合物としては、例えばイプシロン−アミノカプロン酸、塩酸アルギニン、L−アスパラギン酸カリウム、トラネキサム酸、硫酸ブレオマイシン、硫酸ビンクリスチン、セファゾリンナトリウム、セファロチンナトリウム、シチコリン、シタラビン、硫酸ゲンタマイシン、塩酸バンコマイシン、硫酸カナマイシン、硫酸アミカシン等があげられる。
糖類としては、例えばコンドロイチン硫酸ナトリウム、ヘパリンナトリウム、デキストランフルオレセイン等があげられる。
高分子化合物としては、例えばポリエチレンスルホン酸ナトリウム、ジビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体(DIVEMA)、スチレン無水マレイン酸共重合体−ネオカルチノスタチン結合体(SMANCS)等があげられる。
脂質性化合物としては、例えばビタミンD、ビタミンE等があげられる。
金属化合物としては、例えばシスプラチン等があげられる。
本発明における脂質集合体またはリポソームは、前記の脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体等によって構成され、これら脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体は、単独でまたは組み合わせて用いられ、好ましくは組み合わせて用いられる。組み合わせて用いる場合の組み合わせとしては、例えば水素添加大豆ホスファチジルコリン、ポリエチレングリコール化リン脂質およびコレステロールから選ばれる2成分以上の組み合わせ、ジステアロイルホスファチジルコリン、ポリエチレングリコール化リン脂質およびコレステロールから選ばれる2成分以上の組み合わせ、EPCとDOTAPの組み合わせ、EPC、DOTAPおよびポリエチレングリコール化リン脂質から選ばれる2成分以上の組み合わせ、EPC、DOTAP、コレステロールおよびポリエチレングリコール化リン脂質から選ばれる2成分以上の組み合わせ等があげられる。
また、リポソームは、必要に応じて、例えばコレステロール等のステロール等の膜安定化剤、例えばトコフェロール等の抗酸化剤等を含有していてもよい。
本発明における脂質集合体としては、例えば球状ミセル、球状逆ミセル、ソーセージ状ミセル、ソーセージ状逆ミセル、板状ミセル、板状逆ミセル、ヘキサゴナルI、ヘキサゴナルIIおよび脂質2分子以上からなる会合体等があげられる。
本発明におけるエマルジョン粒子としては、例えば脂肪乳剤、非イオン性界面活性剤と大豆油からなるエマルジョン、リピッドエマルジョン、リピッドナノスフェアー等の水中油型(O/W)エマルジョンや水中油中水型(W/O/W)エマルジョン粒子等があげられる。
本発明における高分子としては、例えばアルブミン、デキストラン、キトサン、デキストラン硫酸、DNA等の天然高分子、例えばポリ−L−リジン、ポリエチレンイミン、ポリアスパラギン酸、スチレンマレイン酸共重合体、イソプロピルアクリルアミド−アクリルピロリドン共重合体、ポリエチレングリコール修飾デンドリマー、ポリ乳酸、ポリ乳酸ポリグリコール酸、ポリエチレングリコール化ポリ乳酸等の合成高分子、またはそれらの塩等があげられる。
ここで、高分子における塩は、例えば金属塩、アンモニウム塩、酸付加塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等を包含する。金属塩としては、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等があげられ、アンモニウム塩としては、例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩があげられ、酸付加塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、および酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩があげられ、有機アミン付加塩としては、例えばモルホリン、ピペリジン等の付加塩があげられ、アミノ酸付加塩としては、例えばグリシン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン等の付加塩があげられる。
本発明における金属コロイドとしては、例えば金、銀、白金、銅、ロジウム、シリカ、カルシウム、アルミニウム、鉄、インジウム、カドミウム、バリウム、鉛等を含む金属コロイドがあげられる。
本発明における微粒子製剤としては、例えばマイクロスフェアー、マイクロカプセル、ナノクリスタル、リピッドナノパーティクル、高分子ミセル等があげられる。
本発明における脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子が、薬物と、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン粒子、高分子、金属コロイドおよび微粒子製剤から選ばれる1つ以上との複合体を構成成分とする微粒子である場合、該脂質集合体、リポソーム、エマルジョン粒子、高分子、金属コロイドまたは微粒子製剤は、薬物と静電的に逆の電荷をもつものであるのがより好ましい。ここで、薬物と静電的に逆の電荷とは、薬物分子内の電荷、分子内分極等に対して静電的引力を生じる電荷、表面分極等を包含する。脂質集合体、リポソーム、エマルジョン粒子、高分子、金属コロイドまたは微粒子製剤が、薬物と静電的に逆の電荷をもつには、好ましくは、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン粒子、高分子、金属コロイドまたは微粒子製剤は、薬物と静電的に逆の電荷をもつ荷電物質を含有し、より好ましくは、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン粒子、高分子、金属コロイドまたは微粒子製剤は、薬物と静電的に逆の電荷をもつ脂質(前記のカチオン性脂質または後記のアニオン性脂質)を含有する。
薬物と静電的に逆の電荷をもつ脂質集合体、リポソーム、エマルジョン粒子、高分子、金属コロイドまたは微粒子製剤に含有される荷電物質は、カチオン性を呈するカチオン性物質とアニオン性を呈するアニオン性物質とに分類されるが、カチオン性の基とアニオン性の基の両方をもつ両性の物質であっても、pHや、他の物質との結合等により相対的な陰性度が変化するので、その時々に応じてカチオン性物質またはアニオン性物質に分類され得る。これら荷電物質は、前記の微粒子の構成成分として含有させてもよく、前記の微粒子の構成成分に加えて用いても構わない。
カチオン性物質としては、例えば前記の微粒子の定義で例示したもののうちのカチオン性物質(具体的には、カチオン性脂質(前記と同義)、カチオン性ステロール、カチオン性高分子等)、カチオン性界面活性剤、等電点以下の値のpHで、複合体の形成を行える蛋白質またはペプチド等があげられる。
カチオン性ステロールとしては、例えばDC−Chol等があげられる。
カチオン性高分子としては、例えばポリ−L−リジン、ポリエチレンイミン、ポリフェクト(polyfect)、キトサン等があげられる。
カチオン性界面活性剤としては、例えばアルキルアミン塩、アシルアミン塩、第四級アンモニウム塩、アミン誘導体等があげられる。具体的には塩化ベンザルコニウム、アシルアミノエチルジエチルアミン塩、N−アルキルポリアルキルポリアミン塩、脂肪酸ポリエチレンポリアミド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、アルキルポリオキシエチレンアミン、N−アルキルアミノプロピルアミン、脂肪酸トリエタノールアミンエステル等があげられる。
等電点以下の値のpHで、複合体の形成を行える蛋白質またはペプチドとしては、その物質の等電点以下の値のpHで、複合体の形成を行える蛋白質またはペプチドであれば、特に限定されない。例えば、アルブミン、オロソムコイド、グロブリン、フィブリノーゲン、ペプシン、リボヌクレアーゼT1等があげられる。
アニオン性物質としては、例えば前記の微粒子の定義で例示したもののうちのアニオン性物質(具体的には、アニオン性脂質、アニオン性高分子等)、アニオン性界面活性剤、等電点以上の値のpHで、複合体の形成を行える蛋白質またはペプチド、核酸等があげられる。
アニオン性脂質としては、例えばホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸等があげられる。
アニオン性高分子としては、例えばポリアスパラギン酸、スチレンマレイン酸共重合体、イソプロピルアクリルアミド−アクリルピロリドン共重合体、ポリエチレングリコール修飾デンドリマー、ポリ乳酸、ポリ乳酸ポリグリコール酸、ポリエチレングリコール化ポリ乳酸、デキストラン硫酸、デキストラン硫酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、コンドロイチン、デルタマン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケタラン硫酸、デキストランフルオレセインアニオニック等があげられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えばアシルサルコシン、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸塩、炭素数7〜22の脂肪酸ナトリウム等があげられる。具体的にはドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム等があげられる。
等電点以上の値のpHで、複合体の形成を行える蛋白質またはペプチドとしては、その物質の等電点以上の値のpHで、複合体の形成を行える蛋白質またはペプチドであれば、特に限定されない。例えば、アルブミン、オロソムコイド、グロブリン、フィブリノーゲン、ヒストン、プロタミン、リボヌクレアーゼ、リゾチーム等があげられる。
アニオン性物質としての核酸としては、例えばDNA、RNA、プラスミド、siRNA、ODN等があげられ、生理活性を示さないものであれば、どのような長さ、配列のものであってもよい。
本発明における脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子は、公知の製造方法またはそれに準じて製造することができ、いかなる製造方法で製造されたものであってよい。例えば、微粒子の1つであるリポソームを構成成分とする微粒子の製造には、公知のリポソームの調製方法が適用できる。公知のリポソームの調製方法としては、例えばバンガム(Bangham)らのリポソーム調製法[“ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.)”,1965年,第13巻,p.238−252参照]、エタノール注入法[“ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー(J.Cell Biol.)”,1975年,第66巻,p.621−634参照]、フレンチプレス法[“エフイービーエス・レターズ(FEBS Lett.)”,1979年,第99巻,p.210−214参照]、凍結融解法[“アーカイブス・オブ・バイオケミストリー・アンド・バイオフィジックス(Arch.Biochem.Biophys.)”,1981年,第212巻,p.186−194参照]、逆相蒸発法[“プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)”,1978年,第75巻,p.4194−4198参照]、pH勾配法(例えば特許第2572554号公報、特許第2659136号公報等参照)等があげられる。リポソームの製造の際にリポソームを分散させる溶液としては、例えば水、酸、アルカリ、種々の緩衝液、生理的食塩液、アミノ酸輸液等を用いることができる。また、リポソームの製造の際には、例えばクエン酸、アスコルビン酸、システイン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の抗酸化剤、例えばグリセリン、ブドウ糖、塩化ナトリウム等の等張化剤等の添加も可能である。また、脂質等を例えばエタノール等の有機溶媒に溶解し、溶媒留去した後、生理食塩水等を添加、振とう撹拌し、リポソームを形成させることによってもリポソームを製造することができる。
リポソームの平均粒子径は、所望により自由に選択できる。平均粒子径を調節する方法としては、例えばエクストルージョン法、大きな多重膜リポソーム(MLV)を機械的に粉砕(具体的にはマントンゴウリン、マイクロフルイダイザー等を使用)する方法[ミュラー(R.H.Muller)、ベニタ(S.Benita)、ボーム(B.Bohm)編著,“エマルジョン・アンド・ナノサスペンジョンズ・フォー・ザ・フォーミュレーション・オブ・ポアリー・ソラブル・ドラッグズ(Emulsion and Nanosuspensions for the Formulation of Poorly Soluble Drugs)”,ドイツ,サイエンティフィック・パブリッシャーズ・スチュットガルト(Scientific Publishers Stuttgart),1998年,p.267−294参照]等があげられる。
また、脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子を構成する、例えば薬物、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン粒子、高分子、金属コロイド、微粒子製剤等から選ばれる2つ以上を組み合わせた複合体(具体的には、例えばカチオン性脂質を含有するリポソームまたは脂質集合体と核酸との複合体、ポリ−L−リジン等のカチオン性高分子を含有する高分子と核酸との複合体、ホスファチジン酸等のアニオン性脂質を含有するリポソームまたは脂質集合体と蛋白質との複合体、スチレンマレイン酸等のアニオン性高分子を含有する高分子と蛋白質との複合体、カチオン性脂質を含有するリポソームまたは脂質集合体と蛋白質との複合体、ポリ−L−リジン等のカチオン性高分子を含有する高分子と蛋白質との複合体等があげられる)の製造方法は例えば水中で薬物と脂質集合体、リポソーム、高分子等とを混合するだけの製造方法でもよく、この際、必要であればさらに整粒工程や無菌化工程等を加えることもできる。また、複合体形成を例えばアセトン、エーテル等種々の溶媒中で行うことも可能である。例えば、核酸と脂質とをエタノール等の有機溶媒に溶解し、溶媒留去した後、生理食塩水等を添加、振とう撹拌し、核酸複合体を形成させることもできる。別の複合体の形成方法としては、例えば、水中でカチオン性物質とポリエチレングリコール化リン脂質(具体的にはポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン(より具体的には1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000](PEG−DSPE)等)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、クレモフォアイーエル(CREMOPHOR EL)等)等でリポソームを調製し、その後、例えば核酸を添加し、さらに例えばアニオン性高分子を添加して、多重複合体とすることも可能である。
本発明における脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子のうち、脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体で被覆された微粒子は、公知の製造方法またはそれに準じて製造することができ、いかなる製造方法で製造されたものであってよい。例えば、前記の薬物、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン粒子、高分子、金属コロイド、微粒子製剤等を構成成分とする微粒子を、脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体で被覆する方法としては、例えば国際公開第02/28367号パンフレットに記載の方法等があげられる。
また、本発明における脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子の大きさは、平均粒子径が300nm以下であるのが好ましく、200nm以下であるのがより好ましく、具体的には、例えば注射可能な大きさであるのが好ましい。
本発明における極性有機溶媒としては、特に制限はないが、好ましくは表面修飾剤が可溶な極性有機溶媒があげられる。例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルまたはエーテル等のポリアルキレングリコール等があげられ、好ましくはエタノールがあげられる。
本発明における水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体としては、例えば糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体等があげられ、好ましくは、糖脂質、または水溶性高分子の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体があげられ、より好ましくは、水溶性高分子の脂質誘導体または脂肪酸誘導体があげられ、さらに好ましくはポリエチレングリコール化脂質、ポリグリセリン化脂質、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルがあげられる。
本発明における水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体は、分子の一部が、脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子の構成成分と例えば疎水性親和力、静電的相互作用等で結合する性質をもつことが好ましく、該微粒子に含まれる脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体と例えば疎水性親和力、静電的相互作用等で結合する性質をもつことがより好ましい。
水溶性物質の脂質誘導体としては、水溶性物質と、例えば前記の脂質またはその誘導体とが結合してなるもの等があげられる。また、水溶性物質の脂肪酸誘導体としては、水溶性物質と、例えばステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸等の脂肪酸とが結合してなるものがあげられる。また、水溶性物質の脂肪族炭化水素誘導体としては、水溶性物質と、例えば長鎖脂肪族アルコール、ポリオキシプロピレンアルキル、グリセリン脂肪酸エステルのアルコール性残基等とが結合してなるものがあげられる。
糖、ペプチドまたは核酸の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体としては、前記の水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体の水溶性物質部分が、例えばショ糖、ソルビトール、乳糖等の糖、例えばカゼイン由来ペプチド、卵白由来ペプチド、大豆由来ペプチド、グルタチオン等のペプチド、または例えばDNA、RNA、プラスミド、siRNA、ODN等の核酸の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体があげられ、より具体的に糖の脂質誘導体としては、例えば前記のグリセロ糖脂質、前記のスフィンゴ糖脂質等の糖脂質等があげられる。
水溶性高分子の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体としては、前記の水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体の水溶性物質部分が、例えばポリエチレングリコール、ポリグリセリン、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、オリゴ糖、デキストリン、水溶性セルロース、デキストラン、コンドロイチン硫酸、ポリグリセリン、キトサン、ポリビニルピロリドン、ポリアスパラギン酸アミド、ポリ−L−リジン、マンナン、プルラン、オリゴグリセロール等またはそれらの誘導体であるものがあげられ、より好ましくは、ポリエチレングリコール誘導体、ポリグリセリン誘導体等があげられ、さらに好ましくは、ポリエチレングリコール誘導体であるものがあげられる。
ポリエチレングリコール誘導体の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体としては、例えばポリエチレングリコール化脂質(具体的にはポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン(より具体的にはPEG−DSPE等)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、クレモフォアイーエル等)、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル(具体的にはモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等があげられ、より好ましくは、ポリエチレングリコール化脂質があげられる。
ポリグリセリン誘導体の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体としては、例えばポリグリセリン化脂質(具体的にはポリグリセリン−ホスファチジルエタノールアミン等)、ポリグリセリン脂肪酸エステル等があげられ、より好ましくは、ポリグリセリン化脂質があげられる。
本発明における両親媒性物質は、用いる水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体よりも、分子内の親水性部と疎水性部の、例えば疎水性親和力、静電的相互作用等の差が小さいものであり、例えばリン脂質(前記と同義)、グリセロ糖脂質(前記と同義)、スフィンゴ糖脂質(前記と同義)、コレステロール(前記と同義)、カチオン性脂質(前記と同義)、アニオン性脂質(前記と同義)、界面活性剤(前記と同義)、水溶性高分子の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体(前記と同義)があげられ、さらに好ましくはリン脂質、コレステロール、界面活性剤があげられる。
本発明の水溶性物質で表面修飾された脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子の製造は、極性有機溶媒を含有する液中に、脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子を分散状態で存在させ、水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体からなる表面修飾剤を溶解または分散状態で存在させる工程(工程A)を含む製造方法で製造することができ、該微粒子は分散液の状態で得られる。また、工程Aにおいて、該極性有機溶媒を含有する液中に、さらに両親媒性物質を溶解または分散状態で存在させることが好ましい。本発明において、脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子が分散するとは、懸濁、乳濁またはエマルジョン化、好ましくは懸濁している状態のことであり、大部分が分散して、残りの部分が溶解している状態または一部が沈殿している状態も包含するが、できるだけ全部が分散していることが好ましい。また、表面修飾剤または両親媒性物質が分散するとは、凝集体またはミセル等を形成して懸濁、乳濁もしくはエマルジョン化、好ましくは乳濁もしくはエマルジョン化している状態のことであり、大部分が凝集体またはミセル等を形成して乳濁もしくはエマルジョン化し、残りの部分が溶解している状態、大部分が凝集体またはミセル等を形成して懸濁、乳濁もしくはエマルジョン化、好ましくは乳濁もしくはエマルジョン化し、残りの部分が沈殿している状態等を包含する。工程Aにおいて、分散させるために混合する場合には、特段の装置を必要としないが、種々の工業的に許容しうる混合方法を用いてもよい。混合方法としては、タンクやバイアル等の貯蔵容器内での混合、輸送管や流路内での混合等があげられる。
工程Aにおける極性有機溶媒の割合は、脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子が分散され、表面修飾剤が溶解または分散される条件さえ満たしていれば特に限定されるものではないが、脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子が分散され、表面修飾剤が溶解または乳濁もしくはエマルジョン化して分散される条件が好ましく、用いる溶媒や脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子、表面修飾剤の種類等により異なるが80vol%以下であるのが好ましく、より好ましくは1〜60vol%、さらに好ましくは5〜55vol%、最も好ましくは30〜40vol%である。
本発明における極性有機溶媒と、脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子、表面修飾剤および両親媒性物質との組み合わせは特に限定されるものではないが、極性有機溶媒を含む液に対して、該微粒子が分散し、かつ極性有機溶媒に対して、表面修飾剤および両親媒性物質が可溶であることが好ましい。本発明において、表面修飾剤および両親媒性物質が極性有機溶媒に対して可溶とは、表面修飾剤および両親媒性物質が極性有機溶媒に溶解する性質をもつ場合、可溶化剤等を用いることにより表面修飾剤および両親媒性物質が極性有機溶媒に溶解する性質をもつ場合、表面修飾剤および両親媒性物質が極性有機溶媒中で凝集体またはミセル等を形成して乳濁もしくはエマルジョン化し得る性質をもつ場合等を包含し、表面修飾剤および両親媒性物質が極性有機溶媒に溶解する性質をもつ場合であることが好ましい。
それぞれの成分の使用量によらず本方法を用いることができるが、工程Aにおける極性有機溶媒含有水溶液中の脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子の濃度は、1μg/mL〜1g/mLとすることが好ましく、0.1〜500mg/mLとすることがより好ましい。また、用いられる表面修飾剤の濃度は、1μg/mL〜1g/mLとすることが好ましく、0.1〜400mg/mLとすることがより好ましい。また、本発明の水溶性物質で表面修飾された脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子と該表面修飾剤の割合は、重量比で1000:1〜1:10であるのが好ましく、100:1〜1:1であるのがより好ましく、10:1〜2:1であるのがさらに好ましい。また、本発明の両親媒性物質と表面修飾剤の重量比が、10:1〜1:100であるのが好ましく、5:1〜1:10であるのがより好ましい。なお、水溶性物質で表面修飾された脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子と該表面修飾剤の割合が、表面修飾剤の安全性やコスト等の理由で、重量比で100:1〜10:1が好ましいことがあり、その場合、両親媒性物質と表面修飾剤の重量比が、1:2〜1:10であるのが好ましい。
本発明の製造方法によって得られる水溶性物質で表面修飾された脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子の大きさは、平均粒子径が300nm以下であるのが好ましく、200nm以下であるのがより好ましく、具体的には、例えば注射可能な大きさであるのが好ましい。
本発明の製造方法を用いて製造できる水溶性物質で表面修飾された脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子は、例えば血液成分等の生体成分(例えば血液、消化液等)中での薬剤の安定化、副作用の低減、腫瘍等の標的臓器への薬剤集積性の増大、経口や経粘膜での薬剤の吸収の改善等を目的とする製剤として使用できる。
本発明の製造方法を用いて製造できる水溶性物質で表面修飾された脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子は、被修飾微粒子の構成成分の少なくとも1つが薬物である場合、例えば、腫瘍または炎症部位への薬物含有キャリアーとして該微粒子を投与することで、薬物の腫瘍または炎症部位への送達ができ、薬物が抗腫瘍薬である場合、例えば、腫瘍の治療剤として該微粒子を投与することで、腫瘍の治療を行うことができ、また薬物が抗炎症薬である場合、例えば、炎症の治療剤として該微粒子を投与することで、炎症の治療を行うことができる。また、血管新生が亢進する組織または臓器は、本発明の製造方法を用いて製造できる水溶性物質で表面修飾された脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子が良好に送達ができる部位の1つとしてあげられ、被修飾微粒子の構成成分の少なくとも1つが該組織または臓器における疾患の治療薬である場合、該微粒子を該疾患の治療薬として投与することで、該疾患の治療を行うことができる。
本発明の製造方法を用いて製造できる水溶性物質で表面修飾された脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子を使用する場合、上述の方法により調製した水溶性物質で表面修飾された脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子の分散液をそのまま例えば注射剤等の形態として用いることも可能であるが、該分散液から例えば濾過、遠心分離等によって溶媒を除去して使用することも、該分散液、または例えばマンニトール、ラクトース、トレハロース、マルトース、グリシン等の賦形剤を加えた該分散液を凍結乾燥して使用することもできる。
注射剤の場合、本発明の水溶性物質で表面修飾された脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子の分散液またはその溶媒を除去したものもしくはそれを凍結乾燥したものに、例えば水、酸、アルカリ、種々の緩衝液、生理的食塩液、アミノ酸輸液等を混合して注射剤を調製することが好ましい。また、例えばクエン酸、アスコルビン酸、システイン、EDTA等の抗酸化剤、グリセリン、ブドウ糖、塩化ナトリウム等の等張化剤等を添加して注射剤を調製することも可能である。また、例えばグリセリン等の凍結保存剤を加えて凍結保存することもできる。
また、本発明の水溶性物質で表面修飾された脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子は、適当な賦形剤等と共に造粒、乾燥する等して例えばカプセル剤、錠剤、顆粒剤等の経口用製剤に加工してもよい。
本発明の製造方法には、キットを用いることも可能である。キットの構成としては、例えば、脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子、水溶性物質の脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体からなる表面修飾剤、極性有機溶媒を含有する液からなる構成等があげられる。例えば、少容量の容器に、本発明の製造方法によって水溶性物質で表面修飾された脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子を調製するための、脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子、水溶性物質の脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体からなる表面修飾剤、極性有機溶媒を含有する液、好ましくはさらに両親媒性物質等をそれぞれ充填し、混合することにより水溶性物質で表面修飾された脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子を調製することができる。該キットは、その構成成分を混合する工程において例えば加熱しなければならない等の制約がないので、キットとしての簡便性が高いという利点もある。キットの各構成成分は溶液状態、凍結乾燥状態等のいずれの形態で供給されてもよい。また、各構成成分はあらかじめ組み合わせて供給されてもよく、脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子と水溶性物質の脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体からなる表面修飾剤は別々にあり、該表面修飾剤に両親媒性物質が組み合わされていることが好ましい。
また、本発明の製造方法は、加熱する工程を含んでいてもよい。ただし、例えば蛋白質、核酸等の薬物等を構成成分とする製剤においては、短時間の加熱でもその活性に大きな影響を及ぼす可能性があるので、該薬物等の活性に影響を及ぼさない温度以下で、かつ短時間加熱するのが好ましい。短鎖のRNAが相補的に二本鎖を形成した状態で存在しているsiRNAは、60度以上に加熱すると一本鎖に解離し、その後冷却しても、一本鎖のRNAや、非特異的に2本鎖を形成した不完全な相補性のRNAが存在してしまうことがあり、そのようなRNAは分解酵素による分解を受けやすい。また、一本鎖となったsiRNAはmRNAを認識するRISC複合体を形成できないと考えられている。
本発明の製造方法では、加熱する工程を含まなくても水溶性物質で表面修飾された脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子を調製することができ、例えば蛋白質や核酸等の熱によって影響を受けやすい薬物等を含有する製剤においても、該薬物等の活性に影響を及ぼさない温度以下で、該微粒子を製造できるという利点がある。また、極性有機溶媒が共存することで、例えばリポソームの膜形成物質等の相転移が低温でも起こり易くなり、相転移温度の高い脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子や、臨界ミセル濃度の低い表面修飾剤を用いる場合であっても、加熱する工程を経ずに水溶性物質で表面修飾された脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子を製造できるという利点もある。また、本発明の製造方法においては、水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体からなる表面修飾剤とともに両親媒性物質を溶解または分散状態で存在させることが好ましいが、両親媒性物質は、水溶性物質で表面修飾された脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子の収率等の製造性をさらに向上させる作用や、水溶性物質で表面修飾された脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子の血中滞留性等の機能性や安定性を向上させる作用もある。
次に、実施例により、本発明を具体的に説明する。実施例として、脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子がリポソームであり、極性有機溶媒がエタノールであり、両親媒性物質がリン脂質であり、表面修飾剤がポリエチレングリコール化脂質である、水溶性物質で表面修飾された微粒子の製造方法および脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子がリポソームであり、極性有機溶媒がエタノールであり、両親媒性物質がリン脂質であり、表面修飾剤がポリエチレングリコール脂肪酸エステルである、水溶性物質で表面修飾された微粒子の製造方法を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
参考例1
被修飾微粒子の調製
デキストランフルオレセインアニオニック(FD、モレキュラープローブス社製)5mg、DOTAP(アバンチポーラルリピッズ社製、以下同様)30mgおよびPEG−DSPE(日本油脂製、以下同様)12mgを、水1mL(注射用水、大塚製薬製、以下同様)に分散させた。得られた分散液を、孔径0.4μmのポリカーボネートメンブレン(ワットマン製、以下同様)に10回、孔径0.1μmのポリカーボネートメンブレン(ワットマン製、以下同様)に10回通した。得られた分散液の500μLと、EPC(日本油脂製、以下同様)60mg、PEG−DSPE 12.5mgおよびエタノール/水混液(8:5)2000μLとを混合して、被修飾微粒子の分散液を得た。
Figure 0005221126
参考例1での被修飾微粒子の分散液を調製した後、水を滴下してエタノール濃度をおよそ40vol%とした。得られた液に、表面修飾剤としてPEG−DSPE 7.5mgをエタノール/水混液(2:3)150μLに分散させたものを混合した。さらに適量の水を滴下してエタノール濃度をおよそ5vol%とし、超遠心分離(1時間、110,000×g、25℃)を行って上清を除き、リン酸緩衝食塩水(PBS)を加えて製剤を得た。
実施例1における表面修飾剤をPEG−DSPE 25mgとし、同様に製剤を得た。
実施例1における表面修飾剤をPEG−DSPE 7.5mgとし、両親媒性物質としてEPC 7.5mgを表面修飾剤とともに用いて、同様に製剤を得た。
実施例1における表面修飾剤をPEG−DSPE 25mgとし、両親媒性物質としてEPC 25mgを表面修飾剤とともに用いて、同様に製剤を得た。
実施例1における表面修飾剤をPEG−DSPE 7.5mgとし、両親媒性物質としてEPC 22.5mgを表面修飾剤とともに用いて、同様に製剤を得た。
比較例1
参考例1の被修飾微粒子の分散液を調製した後、水を滴下してエタノール濃度をおよそ5vol%とし、超遠心分離(1時間、110,000×g、25℃)を行って上清を除き、PBSを加えて製剤とした。
比較例2
参考例1の被修飾微粒子の分散液を調製した後、水を滴下してエタノール濃度をおよそ5vol%とし、超遠心分離(1時間、110,000×g、25℃)を行って上清を除き、PEG−DSPE 12.5mgおよびEPC 12.5mgを含むPBS 1440μLを加えて製剤とした。
比較例3
参考例1の被修飾微粒子の分散液を調製した後、水を滴下してエタノール濃度をおよそ5vol%とし、超遠心分離(1時間、110,000×g、25℃)を行って上清を除き、PBSを加えてEPC濃度を24mg/mLに調整し、70℃で1分間加熱した。得られた液の1mLに、PEG−DSPE 5mgを加えて70℃で2分間加熱し製剤とした。
試験例1
実施例1〜5および比較例1〜3で得られた各製剤について、以下の方法に従って、平均粒子径、FDおよびEPCの回収率、ならびに血中動態について検討を行った。結果を第2表および第1図に示す。
平均粒子径
動的光散乱法(DLS)(使用機器:A model ELS−800、大塚電子、以下同様)で、製剤中の水溶性物質で表面修飾された微粒子の平均粒子径を測定した。
FDおよびEPCの回収率
各製剤をPBSで、総脂質濃度が30mg/mLになるように希釈した。さらにPBSで1000倍希釈し、希釈後の各50μLに、10w/v%トライトンエックス−100(TritonX−100、和光純薬製、以下同様)50μLおよびPBS 400μLをそれぞれ加え、ボルテックスミキサーで攪拌した。また、各実施例および各比較例で得られた超遠心上清をPBSで10倍希釈し、希釈後の各50μLに、10w/v%TritonX−100 50μLおよびPBS 400μLをそれぞれ加え、ボルテックスミキサーで攪拌した。それぞれ100μLを96穴マイクロプレートにとり、蛍光プレートリーダー(アルボエスエックス−4(ARVOsx−4)、ワラック(Wallac)社製、以下同様)を使用して励起波長485nmおよび蛍光波長530nmでの蛍光強度を測定した。一方、1、0.5および0.25μg/mLの各FD−PBSの蛍光強度を測定し、検量線を得た。検量線から各製剤中のFD濃度を求めた。一方、各製剤中のEPC濃度は、リン脂質C−テストワコー(和光純薬製)を用いて測定することにより求めた。
各製剤におけるFD回収率およびEPC回収率は、下記式(1)および(2)で算出した。
Figure 0005221126
Figure 0005221126
血中動態評価
各製剤を、PBSで総脂質濃度が5mg/mLになるように希釈し、ラットに対して、投与量は脂質量/ラット体重比で10mg/kgとして投与した。投与後1分、10分、30分、1時間、3時間、6時間および24時間に採血し、遠心操作を行って血漿を採取した。血漿中のFDを定量するため、血漿各50μLに、10w/v%TritonX−100 50μLおよびPBS 400μLを加え、ボルテックスミキサーで攪拌した。その100μLを96穴マイクロプレートにとり、ARVOsx−4を使用して励起波長485nmおよび蛍光波長530nmでの蛍光強度を測定した。一方、1、0.5および0.25μg/mLの各FD−PBSの蛍光強度を測定し、検量線を得た。検量線から各サンプル中のFD濃度を求めた。ラット体重100gあたりの血漿量を7.8mLと計算し、投与量に対する血中残存率(%)を算出するとともに、台形法でAUC0・24h(μg・min/dose)を算出した。
Figure 0005221126
第2表によると、実施例1〜5で得られた製剤は、比較例1および比較例2で得られた製剤と比較し、表面修飾剤(PEG−DSPE)の添加量に応じて高い血中滞留性を示し、比較例3で得られた製剤と比較し、同等の血中滞留性を示した。また、表面修飾剤に両親媒性物質(EPC)を共存させた実施例3および4で得られた製剤は、それぞれ両親媒性物質を用いていない実施例1および2で得られた製剤と比較し、より高い血中滞留性を示した。本発明の製造方法は、加熱しなければならない等の制約がない簡便な製造方法であるにも関わらず、水中で室温で製造する従来法よりも優れ、水中で加熱する従来法と同等以上の水溶性物質で表面修飾された脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子が得られることが明らかとなった。
参考例1で被修飾微粒子の分散液を調製した後、水を滴下してエタノール濃度をおよそ2.5vol%とした。得られた液に、表面修飾剤としてPEG−DSPE 12.5mgおよび両親媒性物質としてEPC 12.5mgをエタノール/水混液(1:39)2400μLに分散させたものを混合した。得られた液の超遠心分離(1時間、110,000×g、25℃)を行って上清を除き、PBSを加えて製剤を得た。
参考例1で被修飾微粒子の分散液を調製した後、水を滴下してエタノール濃度をおよそ5vol%とした。得られた液に、表面修飾剤としてPEG−DSPE 12.5mgおよび両親媒性物質としてEPC 12.5mgをエタノール/水混液(1:19)400μLに分散させたものを混合した。得られた液の超遠心分離(1時間、110,000×g、25℃)を行って上清を除き、PBSを加えて製剤を得た。
参考例1で被修飾微粒子の分散液を調製した後、水を滴下してエタノール濃度をおよそ30vol%とした。得られた液に、表面修飾剤としてPEG−DSPE 12.5mgおよび両親媒性物質としてEPC 12.5mgをエタノール/水混液(3:7)200μLに分散させたものを混合した。さらに適量の水を滴下してエタノール濃度をおよそ5vol%とし、超遠心分離(1時間、110,000×g、25℃)を行って上清を除き、PBSを加えて製剤を得た。
参考例1で被修飾微粒子の分散液を調製した後、PEG−DSPE 12.5mgおよび両親媒性物質としてEPC 12.5mgをエタノール/水混液(1:1)200μLに分散させたものを混合した。さらに適量の水を滴下してエタノール濃度をおよそ5vol%とし、超遠心分離(1時間、110,000×g、25℃)を行って上清を除き、PBSを加えて製剤を得た。
試験例2
実施例6〜9で得られた製剤について、試験例1と同様に、平均粒子径、FDおよびEPCの回収率、ならびに血中動態について検討を行った。結果を第3表および第2図に示す。
Figure 0005221126
第3表によると、実施例6〜9で得られた製剤は、比較例2で得られた製剤と比較し、高い血中滞留性を示し、比較例3で得られた製剤と比較し、同等の血中滞留性を示した。
参考例2
被修飾微粒子の調製
DOTAPおよびPEG−DSPEをそれぞれ30、12mg/mLの濃度で水に分散させた。得られた液を、孔径0.4μmのポリカーボネートメンブレンに10回、孔径0.1μmのポリカーボネートメンブレンに10回通した。得られた分散液500μLと、15mg/mL ODN(フルオレセインイソチオシアネートラベル化ホスフォロチオエート型オリゴデオキシリボヌクレオチド(配列:(5’)CCT CTT ACC TCA G(3’)、塩基数13、分子量4573.57、サイメディア社製)水溶液250μLを混合し、さらにエタノール1000μL、ならびにEPCおよびPEG−DSPEをそれぞれ120、25mg/mLの濃度で含むエタノール溶液50μLを混合して、被修飾微粒子の分散液を得た。
参考例2で被修飾微粒子の分散液を調製した後、水を滴下してエタノール濃度をおよそ50%とした。得られた液に、表面修飾剤としてPEG−DSPE 12.5mgおよび両親媒性物質としてEPC 2.5mgを含む50%エタノール水分散液1000μLを加え、さらに適量の水を滴下してエタノール濃度を5%とし、超遠心分離(1時間、110,000×g、25℃)を行って上清を除き、PBSを加えて製剤を得た。
実施例10における表面修飾剤をPEG−DSPE 12.5mgとし、両親媒性物質をEPC 12.5mgとし、同様に製剤を得た。
試験例3
実施例10および11で得られた各製剤について、以下の方法に従って、平均粒子径、ODNおよびEPCの回収率、ならびに血中動態について検討を行った。結果を第4表および第3図に示す。
平均粒子径
DLSで、製剤中の水溶性物質で表面修飾された微粒子の平均粒子径を測定した。
ODNおよびEPCの回収率
各製剤をPBSで、総脂質濃度が30mg/mLになるように希釈した。さらにPBSで1000倍希釈し、希釈後の各50μLに、10w/v%TritonX−100 50μLおよびPBS 400μLをそれぞれ加え、ボルテックスミキサーで攪拌した。また、各実施例で得られた超遠心上清をPBSで10倍希釈し、希釈後の各50μLに、10w/v%TritonX−100 50μLおよびPBS 400μLをそれぞれ加え、ボルテックスミキサーで攪拌した。それぞれ100μLを96穴マイクロプレートにとり、ARVOsx−4を使用して励起波長485nmおよび蛍光波長530nmでの蛍光強度を測定した。一方、1.5、1.5/4、1.5/4、1.5/4、1.5/4および1.5/4μg/mLの各ODN−PBSの蛍光強度を測定し、検量線を得た。検量線から各製剤中のODN濃度を求めた。一方、各製剤中のEPC濃度は、リン脂質C−テストワコーを用いて測定することにより求めた。
各製剤におけるODN回収率およびEPC回収率は、下記式(3)および(4)で算出した。
Figure 0005221126
Figure 0005221126
血中動態評価
各製剤を、PBSで総脂質濃度が5mg/mLになるように希釈し、ラットに対して、投与量を脂質量/ラット体重比で10mg/kgとして投与した。投与後1分、10分、30分、1時間、3時間、6時間および24時間に採血し、遠心操作を行って血漿を採取した。血漿中のODNを定量するため、血漿各50μLに、10w/v%TritonX−100 50μLおよびPBS 400μLをそれぞれ加え、ボルテックスミキサーで攪拌した。その100μLを96穴マイクロプレートにとり、ARVOsx−4を使用して励起波長485nmおよび蛍光波長530nmでの蛍光強度を測定した。一方、1.5、1.5/4、1.5/4、1.5/4、1.5/4および1.5/4μg/mLの各ODN−PBSの蛍光強度を測定し、検量線を得た。検量線から各血漿中のODN濃度を求めた。ラット体重100gあたりの血漿量を7.8mLと計算し、投与量に対する血中残存率(%)を算出するとともに、台形法でAUC0・24h(μg・min/dose)を算出した。
Figure 0005221126
第4表によると、実施例10および11で得られた製剤は、比較的分子量が大きな薬物であるODNを含有する被修飾微粒子であっても、優れた持続性のある血中滞留性を示した。
参考例3
被修飾微粒子の調製
デキストランフルオレセインアニオニック(FD)10mg、DOTAP 60mgおよびPEG−DSPE 24mgを、水2mLに分散させた。得られた分散液を、孔径0.4μmのポリカーボネートメンブレンに10回、孔径0.1μmのポリカーボネートメンブレンに10回通した。別に、EPC 240mgおよびPEG−DSPE 50mgをエタノール/水混液(5:3)8000μLに溶解させた。得られた分散液の500μLと、得られたEPCおよびPEG−DSPEの溶液2000μLとを混合して、被修飾微粒子の分散液を得た。
Figure 0005221126
参考例3で被修飾微粒子の分散液を調製した後、その分散液750μLに、水を滴下してエタノール濃度をおよそ40vol%とした。得られた液に、表面修飾剤としてモノステアリン酸ポリエチレングリコール(25E.O.)(PEG(25)−St、日光ケミカルズ社製、以下同様)7.5mgおよび両親媒性物質としてEPC 7.5mgをエタノール/水混液(2:3)45μLに分散させたものを混合した。さらに適量の水を滴下してエタノール濃度をおよそ5vol%とし、超遠心分離(1時間、110,000×g、25℃)を行って上清を除き、PBSを加えて製剤を得た。
実施例12における表面修飾剤をモノステアリン酸ポリエチレングリコール(40E.O.)(PEG(40)−St、日光ケミカルズ社製、以下同様)7.5mgとし、両親媒性物質としてEPC 7.5mgを表面修飾剤とともに用いて、同様に製剤を得た。
実施例12における表面修飾剤をPEG(40)−St 7.5mgとし、両親媒性物質としてEPC 3.75mgを表面修飾剤とともに用いて、同様に製剤を得た。
参考例3で被修飾微粒子の分散液を調製した後、その分散液750μLに、表面修飾剤としてPEG(40)−St 7.5mgおよび両親媒性物質としてEPC 7.5mgをエタノール/水混液(1:1)60μLに分散させたものを混合した。さらに適量の水を滴下してエタノール濃度をおよそ5vol%とし、超遠心分離(1時間、110,000×g、25℃)を行って上清を除き、PBSを加えて製剤を得た。
試験例4
実施例12〜15で得られた各製剤について、試験例1と同様に、平均粒子径、FDおよびEPCの回収率、ならびに血中動態について検討を行った。結果を第6表および第4図に示す。
Figure 0005221126
第6表によると、実施例12〜15で得られた製剤は、表面修飾剤としてポリエチレングリコール脂肪酸エステルを用いた場合も、高い血中滞留性を示した。
本発明により、水溶性物質で表面修飾された脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子の簡便な製造方法等が提供される。また、本発明によって、実質上加熱する工程を含まずに、幅広い種類の被修飾粒子を修飾することが可能な水溶性物質で表面修飾された脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子の製造方法等が提供される。

Claims (7)

  1. 被修飾粒子としての、脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子に、表面修飾剤としての、水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体を、該表面修飾剤の脂質、脂肪酸または脂肪族炭化水素の部分が該被修飾粒子の表面より内側に入り、該表面修飾剤の水溶性物質の部分が該被修飾粒子の表面より外側に突き出るように、該被修飾粒子に含有させることを目的とする、水溶性物質で表面修飾された該微粒子の製造方法において、
    アルコール、グリコールおよびポリアルキレングリコールから選ばれる一つ以上の極性有機溶媒の濃度が1〜80vol%で、かつ被修飾粒子が分散可能な濃度で該極性有機溶媒を含有する液中に、被修飾粒子を分散させ、かつ、該極性有機溶媒を含有する液中に、表面修飾剤を溶解または分散させることで、該表面修飾剤の脂質、脂肪酸または脂肪族炭化水素の部分が該被修飾粒子の表面より内側に入り、該表面修飾剤の水溶性物質の部分が該被修飾粒子の表面より外側に突き出るように、該表面修飾剤を該被修飾粒子に含有させる工程(工程A)を含むことを特徴とする、該水溶性物質で表面修飾された該微粒子の製造方法。
  2. 脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子が、脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体で被覆された微粒子である請求項1記載の製造方法。
  3. 工程Aにおいて、該極性有機溶媒を含有する液中に、さらに両親媒性物質を溶解または分散状態で存在させることを特徴とする請求項1または2記載の製造方法。
  4. 両親媒性物質と表面修飾剤の重量比を、10:1〜1:100とすることを特徴とする請求項3記載の製造方法。
  5. 両親媒性物質がリン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質、コレステロール、カチオン性脂質、アニオン性脂質、界面活性剤、および水溶性高分子の脂質または脂肪酸誘導体から選ばれる一つ以上である、請求項3または4記載の製造方法。
  6. 脂質もしくは脂肪酸またはそれらの誘導体を含む微粒子が、脂質集合体、リポソームおよびエマルジョン粒子から選ばれる一つ以上を構成成分とする微粒子である請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 表面修飾剤が、ポリエチレングリコール化脂質、ポリグリセリン化脂質、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる一つ以上である請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
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