JP5220437B2 - 横縞型固体酸化物形燃料電池スタック及びその作製方法 - Google Patents

横縞型固体酸化物形燃料電池スタック及びその作製方法 Download PDF

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Description

本発明は、横縞型固体酸化物形燃料電池スタック及びその作製方法に関する。
固体酸化物形燃料電池は、固体酸化物からなる電解質層を挟んでアノード層とカソード層を配した三層ユニットで構成される。その作動温度は一般的には800〜1000℃程度と高いが、800〜650℃程度という作動温度のものも開発されつつある。
固体酸化物形燃料電池の運転時には、アノード層側に燃料を通し、カソード層側に酸化剤ガス、例えば空気を通して、両電極を外部負荷に接続することで電力が得られる。ところが、単電池(以下“セル”と言う)一つでは高々0.8V程度の電圧しか得られないので、実用的な電力を得るためには複数個のセルを電気的に直列に接続する必要がある。隣接するセルを電気的に直列に接続するのと同時に、アノード層とカソード層のそれぞれに燃料と空気とを適正に分配、供給し、また排出する目的で、インターコネクタとセルとが交互に積層される。
上記のような固体酸化物形燃料電池は複数個のセルを積層するタイプであるが、複数個のセルを横縞状に配置するタイプの固体酸化物形燃料電池も考えられている。横縞方式には円筒タイプ(特開平10−3932号公報)や中空扁平タイプ(国際公開第2004/082058号パンフレット、国際公開第2004/088783号パンフレット)などの方式がある。
特開平10−3932号公報 国際公開第2004/082058号パンフレット 国際公開第2004/088783号パンフレット
図1は中空扁平タイプの横縞型固体酸化物形燃料電池の構成例を示す図である。図1(a)は斜視図、図1(b)は平面図、図1(c)は、図1(b)中X−X線断面図である。中空扁平状の、多孔質で電気絶縁性の支持基板1の上に順次、アノード層2、電解質層3及びカソード層4を積層してなるセル5を複数個形成する。そして、隣接するセル5をインターコネクタ6、集電体7を介して電気的に直列に接続して構成される。支持基板1は支持基体、絶縁性基板、チューブ基板、フラットチューブ基板などとも称されるが、燃料ガスを通す多数の細孔をもつこと、つまり多孔質であることが必須である。
燃料ガスを、多孔質の支持基板1内の空間すなわち燃料流路8にセル5の配列と平行に流通させる。燃料流路8は、1個とは限らず複数でもよく、その断面形状についても矩形状(含、中空扁平状)、四角形状、楕円形状などに構成される。
ここで、図2に従い、横縞型固体酸化物形燃料電池スタックの作製過程例を説明する。図2(a)は多孔質の支持基板1であり、図2(b)のとおり多孔質の支持基板1上にアノード層2を配置する。次いで図2(c)のとおりインターコネクタ6を配置し、また図2(d)のとおり電解質層3を配置する。そして図2(e)のとおりカソード層4を配置し、また図2(f)のとおり集電体7を配置する。
多孔質の支持基板1は、内部に燃料流路8を有し且つ少なくともセル5に接する面が電気絶縁性となるように構成される。図2の例で言えば、多孔質の支持基板1の下面側が燃料流路8となり〔図1(c)参照〕、上面側が電気絶縁性となるように構成される。すなわち、多孔質の支持基板1の上面側にアノード層2、電解質層3が接するので、多孔質の支持基板1の上下面のうちこれらアノード層2、電解質層3と接する面は電気絶縁性とする。
集電体7は、インターコネクタ6とともに隣接するセル5のアノード層2及びカソード層4間、すなわち一つのセル5のアノード層2と当該セル5の隣のセルのカソード層4との間を電気的に接続することから、一種のインターコネクタであるが、後述する本発明の特徴点との関係で本明細書では集電体と称している。
このような横縞型固体酸化物形燃料電池スタックを作製するにあたり、まず多孔質の支持基板1を作製するにあたっては、原料粉を混合した後、造粒し、押出成形等により燃料流路8となる開孔(空間)を有するグリーン基板を作製する。原料粉には成形を容易にし、焼結時に多孔質とするための補助材として例えばグラファイトを加える。次いで、グリーン基板上にアノード層材料をスクリーン印刷などにより塗布し、両者を共焼結する。アノード層2の構成材料としてはNiを含む材料を使用するが、その好ましい例としてNiとイットリア安定化ジルコニアとの混合物が使用される。
次いで、インターコネクタ材料を図2(c)のようにアノード層2の上面のインターコネクタ配置部分に塗布した後、電解質層材料を図2(d)のように塗布し、焼結する。電解質層3の構成材料としてはイットリア安定化ジルコニアなどが使用される。
次いで、カソード層材料を電解質層3の上面に図2(d)のように塗布し、集電体材料を図2(f)のように塗布して焼成する。それら各材料を塗布する際には、水あるいは有機溶媒によりスラリーあるいはペーストにして塗布する。また、横縞型では複数のセル5を間隔を置いて配置するので、アノード層材料の塗布以降の塗布処理では適宜マスク等を使用して行われる。
横縞型固体酸化物形燃料電池においては、支持基板内を燃料ガスが拡散するため、支持基板は多孔質の構造となっていなければならない。また、燃料ガスの流出を防ぐために多孔質の支持基板外部の酸化雰囲気とは緻密な部材を介して良好に隔離されていなければならない。そして、このような燃料ガスの流出を防ぐ部材である電解質層やインターコネクタは高温での焼成を必要としている。また、アノード層上に成膜するインターコネクタは、電解質層と接し、電解質層の構成材料としてイットリア安定化ジルコニアを使用する場合、その構成成分であるジルコニアと接触する構造になっている。
また、インターコネクタの構成材料は、より高温での使用を考慮するとランタンクロマイトが有用であるが、ランタンクロマイトを緻密に焼結させるためには高温焼成が必要となる。しかし、ランタンクロマイトの緻密な薄膜を形成する際の焼成温度には、例えば特開平9−263961号公報に記載のとおり、1550℃という上限があり、1550℃以上では焼成収縮が著しく起こり、まためくれ、焼成切れ等を引き起こし、安定な膜が得られない。しかも、支持基板は燃料ガスが拡散するための孔が必要であり、その気孔率を確保するために焼成温度要件として上限温度約1500℃程度という制限がある。
特開平9−263961号公報
ところで、本発明者らが、アノード層の構成材料としてNiとイットリア安定化ジルコニアの混合物を使用し、電解質層の構成材料としてイットリア安定化ジルコニアを使用し、インターコネクタの材料としてランタンクロマイトを使用し、焼成収縮やめくれ等に係る前述事実を考慮して1500℃で焼結させたところ、インターコネクタの構成材料であるランタンクロマイトとアノード層の構成材料であるジルコニアとの接合部における緻密性が低下していることがわかった。緻密性が低下すると、燃料ガスの流出を防ぐことができず、基板外部の酸化雰囲気と隔離されないことになる。
本発明においては、そのような緻密性低下の問題を解決することにより、その作製上の歩留まりを改善し、また、燃料ガス漏れ、発電効率の低下、さらには燃焼による温度上昇による破壊、劣化などの問題を解決したものである。
すなわち、本発明は、横縞型固体酸化物形燃料電池スタックにおいて、そのインターコネクタの構成材料としてランタンクロマイトまたはランタンクロマイトを主成分とする材料を使用する際の上記問題を解決してなる横縞型固体酸化物形燃料電池スタック及びその作製方法を提供することを目的とするものである。
本発明(1)は、内部に燃料流路を有する多孔質の支持基板の表面に、アノード層、電解質層及びカソード層からなる複数個のセルを間隔を置いて配置するとともに、隣接するセル間をランタンクロマイトまたはランタンクロマイトを主成分とする材料からなるインターコネクタを介して電気的に直列に接続してなり、且つ、前記アノード層のうち、(a)前記インターコネクタが配置される部分は、ジルコニアを含まない組成のアノード層(第1のアノード層)とし、(b)電池反応に関わる部分は、前記インターコネクタが配置される部分と共通のジルコニアを含まない組成のアノード層(第1のアノード層)と、その上に積層されるジルコニアを含む組成のアノード層(第2のアノード層)としてなる横縞型固体酸化物形燃料電池スタックにおいて、前記インターコネクタが配置される部分におけるジルコニアを含まない組成のアノード層がNiを含むY 2 3 層からなることを特徴とする横縞型固体酸化物形燃料電池スタックである。
本発明(2)は、内部に燃料流路を有する多孔質の支持基板の表面に、アノード層、電解質層及びカソード層からなる複数個のセルを間隔を置いて形成するとともに、隣接するセル間をランタンクロマイトまたはランタンクロマイトを主成分とする材料からなるインターコネクタを介して電気的に直列に接続して横縞型固体酸化物形燃料電池スタックを作製するに際して、前紀アノード層のうち、(a)横縞型固体酸化物形燃料電池スタックとしての完成時においてインターコネクタとなるところのランタンクロマイトまたはランタンクロマイトを主成分とする材料が配置される部分には、ジルコニアを含まない組成のアノード層(第1のアノード層)を形成し、(b)横縞型固体酸化物形燃料電池スタックとしての完成時において電池反応に関わる部分には、前記インターコネクタが配置される部分と共通のジルコニアを含まない組成のアノード層(第1のアノード層)の上にジルコニアを含む組成のアノード層(第2のアノード層)を形成することを特徴とする横縞型固体酸化物形燃料電池スタックの作製方法である。本発明(2)は、参考発明である。
本発明によれば、横縞型固体酸化物形燃料電池スタックにおいて、多孔質の支持基板の表面に配置するアノード層のうち、(a)ランタンクロマイトまたはランタンクロマイトを主成分とするインターコネクタが配置される部分は、ジルコニアを含まない組成のアノード層(第1のアノード層)とし、(b)電池反応に関わる部分は、前記インターコネクタが配置される部分と共通のジルコニアを含まない組成のアノード層(第1のアノード層)の上にジルコニアを含む組成のアノード層(第2のアノード層)とすることにより、
ランタンクロマイトまたはランタンクロマイトを主成分とするインターコネクタ材料を焼成温度1550℃以下、特に1450℃〜1500℃の範囲で形成でき、燃料ガス漏れ、発電効率の低下、また燃焼による温度上昇による破壊、劣化、電圧損失を改善することができる。
また、本発明においては、その作製に際して、それらの特性を備えたランタンクロマイトまたはランタンクロマイトを主成分とする材料からなるインターコネクタを高い歩留まりで、再現性よく形成でき、横縞型固体酸化物形燃料電池スタックによる発電の安定性、信頼性を向上させることができる。
前述のとおり、インターコネクタ材料としてランタンクロマイトを使用する場合、緻密に焼結させるためには高温焼成が必要となるが、インターコネクタ材料としてランタンクロマイトを使用し、アノード層としてのイットリア安定化ジルコニアとともに1500℃以下で焼結させたところ、燃料ガスが漏れ、発電効率の低下や燃焼による温度上昇による破壊、劣化などが生じることが観察された。その原因追求の一環としてその界面およびその近傍を電子顕微鏡で観察したところ、ランタンクロマイト層とアノード層であるNiとイットリア安定化ジルコニアの混合物との接合部における緻密性が低下していることがわかった。
図3は上記電子顕微鏡写真である。図3中「緻密性低下」として楕円形状の枠で示しているとおり、緻密なNi−イットリア安定化ジルコニア層(図3中「ジルコニア」と標示している)とランタンクロマイト層とが接する界面およびその界面からランタンクロマイト層側の層に比較的大きな孔が多数観察される。
図4は、図1(a)中矩形状の点線枠Aで示す部分を拡大して示した図である。そして、上記「緻密性低下」の部分を当該図4で言えば、矩形状の点線枠Bで示している部分に相当する。この部分に生じる多数の比較的大きな孔が燃料ガス漏れの要因となり、発電効率の低下や燃焼による温度上昇による破壊、劣化などを引き起こすことになる。
そこで、インターコネクタの構成材料であるランタンクロマイトまたはランタンクロマイトを主成分とする材料とジルコニアを接触させないために、前記アノード層のうち、(a)インターコネクタが配置される部分は、ジルコニアを含まない組成のアノード層(第1のアノード層)とし、(b)電池反応に関わる部分は、前記インターコネクタが配置される部分と共通のジルコニアを含まない組成のアノード層(第1のアノード層)と、その上に積層されるジルコニアを含む組成のアノード層(第2のアノード層)とすることを考え、この観点で実験を進めて本発明を完成したものである。
図5は、図4に対応して本発明を説明する図である。図5のとおり、ランタンクロマイトまたはランタンクロマイトを主成分とする材料からなるインターコネクタ6を配置する部分のアノード層をジルコニアを含まない組成のアノード層(第1のアノード層)2とし、電池反応に関わる部分のアノード層を、ジルコニアを含む組成のアノード層(第2のアノード層)2とジルコニアを含まない組成のアノード層(第1のアノード層)2’との2重層に形成する。
インターコネクタ6は、ジルコニアを含まない組成のアノード層(第1のアノード層)2’の上面に配置する。また、ジルコニアを含む組成のアノード層(第2のアノード層)2は、電池反応に関わる部分に配置する。すなわち、電池反応に関わる部分については、ジルコニアを含む組成のアノード層(第2のアノード層)2はジルコニアを含まない組成のアノード層(第1のアノード層)2’の上面に配置する。そして、当該ジルコニアを含む組成のアノード層(第2のアノード層)2の上に順次、電解質層3、カソード層4を配置してセル5を構成する。
これを言い換えると、インターコネクタ6を配置する部分および電池反応に関わる部分の第1のアノード層の材料としては、従来考えられ使用されていた材料とは別の材料を使用し、従来考えられ使用されていた材料は、電池反応に関わる部分の第2のアノード層のみに使用するものである。
本発明は、そのように、アノード層の形成時に電池反応に関わる部分を2層化することにより、インターコネクタ6の構成材料であるランタンクロマイトまたはランタンクロマイトを主成分とする材料を緻密に焼結することを可能としたものである。これにより、燃料ガス漏れ、これに伴う発電効率の低下、また燃焼による温度上昇による破壊、劣化などの問題を解決したものである。
ここで、ランタンクロマイトまたはランタンクロマイトを主成分とする材料を配置するところの「ジルコニアを含まない組成のアノード層(第1のアノード層)」の材料に求められる条件は、(1)ジルコニアを含まないこと、(2)収縮率、焼結性、緻密性がランタンクロマイトまたはランタンクロマイトを主成分とする材料にできるだけ近いこと、(3)高温且つ水素存在下で還元しないことである。このことから、ジルコニアを含まない組成のアノード層(第1のアノード層)2’としては、それら(1)〜(3)の3条件を満たす材料であれば使用できる。
本発明においては、それらの条件を満たす「ジルコニアを含まない組成のアノード層(第1のアノード層)」の材料の1種として「Niを含むY23(イットリア)」が有効であることを見出した。
Niは、Y23に導電パスつまり導電性を付与するためのものであり、この観点から、Niを含むY23におけるNiの含有量は40〜70容量%(Y23とNiOの合計量中の割合)の範囲で選定できる。アノード層の原材料として用いられるNiの酸化物であるNiOは、電解質層3の電解質材料の収縮率、ランタンクロマイトの収縮率により近づける役割とともに、燃料電池としての作動時に多孔質の支持基板1の細孔を経てNiOを含むY23層に至る燃料ガスによりNiに還元することで導電性となる。Y23は還元しない。なおアノード層中のNi量は、蛍光X線分析、EPMA、ICP発光分光分析等の公知の方法を適宜用いて測定することができる。
また、本発明の横縞型固体酸化物形燃料電池スタックにおいては、(a)ランタンクロマイトまたはランタンクロマイトを主成分とする材料からなるインターコネクタ6の厚さが20μm以上で且つランタンクロマイトまたはランタンクロマイトを主成分とする材料からなるインターコネクタ6と前記電池反応に関わる部分のジルコニアを含む組成のアノード層2(第2のアノード層)との間に隙間を有することとするか、または、(b)ランタンクロマイトまたはランタンクロマイトを主成分とする材料からなるインターコネクタ6の厚さが10μm以上で且つランタンクロマイトまたはランタンクロマイトを主成分とする材料からなるインターコネクタ6と電池反応に関わる部分のジルコニアを含む組成のアノード層2(第2のアノード層)との間の距離が2mm以上とすることにより、ランタンクロマイトまたはランタンクロマイトを主成分とする材料からなるインターコネクタ6、電池反応に関わる部分のジルコニアを含む組成のアノード層2ともに良好な緻密性が得られる。
本発明において、アノード層の構成材料のうち、ジルコニアを含む材料としては、Niとイットリア安定化ジルコニア〔(Y23X(ZrO21-X(式中、X=0.05〜0.15)〕との混合物からなる材料などを使用するが、これらに限定されない。Niとイットリア安定化ジルコニアとの混合物からなる材料の場合、当該混合物中Niを40容量%以上分散させた材料であるのが好ましい。
本発明において、多孔質の支持基板1の構成材料としては、例えばMgOとMgAl24の混合物、ジルコニア系酸化物、ジルコニア系酸化物とMgOとMgAl24の混合物などを使用するが、これらに限定されない。このうち、MgOとMgAl24の混合物は、MgOが20〜70容量%含まれるMgOとMgAl24の混合物であるのが好ましい。また、ジルコニア系酸化物の例としては、イットリア安定化ジルコニア〔(Y23X(ZrO21-X(式中、X=0.03〜0.12)〕などが挙げられる。
本発明において、インターコネクタ6の構成材料としては、式(Ln,A)CrO3(式中、Lnはランタノイド、AはBa、Ca、MgまたはSrである)で示される酸化物を使用する。この材料を本明細書においてランタンクロマイトと称している。
また、インターコネクタ6の構成材料としては、ランタンクロマイトに適宜Al23、MgOなどの助剤が添加されたものでもよく、この材料を本明細書においてランタンクロマイトを主成分とする材料と称している。
本発明において、電解質層3の構成材料としてはイットリア安定化ジルコニア〔(Y23X(ZrO21-X(式中、X=0.05〜0.15)〕を使用する。
本発明において使用するカソード層4の構成材料としては例えば下記(1)〜(4)の材料が挙げられるが、これらに限定されない。
(1)La0.6Sr0.4Mn1.03などの(La,Sr)MnO3系材料。
(2)La0.6Sr0.4Co1.03などの(La,Sr)CoO3系材料。
(3)La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.83、La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.83などの(La,Sr)CoFeO3系材料。
(4)La0.9Ca0.1MnO3などの(La,Ca)MnO3系材料。
本発明において、集電体7の構成材料としては、耐熱性且つ導電性の材料を使用するが、インターコネクタ6の構成材料と同じ材料でもよい。集電体7はインターコネクタ6よりも緻密でなくてもよいが、緻密であってもよい。
〈横縞型固体酸化物形燃料電池スタックの作製態様〉
本発明(2)である横縞型固体酸化物形燃料電池スタックの作製方法の態様については、以下のとおりである。本発明(2)である横縞型固体酸化物形燃料電池スタックの作製方法により本発明(1)の横縞型固体酸化物形燃料電池スタックを作製するものである。
(a)前記多孔質の支持基板の構成材料(前記0037段落参照)から適当な材料を選んで使用して横縞型固体酸化物形燃料電池スタックの完成時において内部に燃料流路8を有する多孔質の支持基板1となるものを形成する。
(b)前記アノード層の構成材料のうち、前記ジルコニアを含まない材料としては前記Niを含むY23からなる材料(前記0033段落参照)を使用する。なお、Niを含むY23からなる材料において、NiはNiOとして含むこともでき、本発明においてNiを含むY23からなる材料とは、NiOを含むY23からなる材料も含むものとする。
(b)′前記アノード層の構成材料のうち、前記ジルコニアを含む材料としては、前記ジルコニアを含む材料(前記0036段落参照)から適当な材料を選んで使用して横縞型固体酸化物形燃料電池スタックの完成時においてアノード層となるものを形成する。
アノード層の構成材料はジルコニアを含まない材料とジルコニアを含む材料の2種類を使用することになる。このうち、ジルコニアを含まない材料は、横縞型固体酸化物形燃料電池スタックの完成時において多孔質の支持基板1となるものの面のうち、横縞型固体酸化物形燃料電池スタックの完成時において燃料流路側となるところの面とは相対する面に配置し、ジルコニアを含む材料は、前記ジルコニアを含まない材料の面のうち、多孔質の支持基板1となるものの面と相対する面に配置する。
(c)前記インターコネクタ6の構成材料(前記0038段落、0039段落参照)から適当なランタンクロマイトまたはランタンクロマイトを主成分とする材料を選んで使用して、横縞型固体酸化物形燃料電池スタックの完成時に前記アノード層となるもののうちジルコニアを含有しないアノード層2’の表面に横縞型固体酸化物形燃料電池スタックの完成時にインターコネクタ6となるものを形成する。
(d)前記電解質層3の構成材料(前記0040段落参照)から適当な材料を選んで使用して、横縞型固体酸化物形燃料電池スタックの完成時に前記両方のアノード層となるものと横縞型固体酸化物形燃料電池スタックの完成時に前記インターコネクタ6となるものの上面の一部以外を覆うように横縞型固体酸化物形燃料電池スタックの完成時において電解質層3となるものを形成する。
(e)横縞型固体酸化物形燃料電池スタックの完成時において、前記多孔質の支持基板1となるもの、前記アノード層となるもの、前記インターコネクタ6となるものおよび前記電解質層3となるものを共焼結する。
(f)前記カソード層4の構成材料(前記0041段落参照)から適当な材料を選んで使用して、横縞型固体酸化物形燃料電池スタックの完成時に前記電解質層3となるものを介して横縞型固体酸化物形燃料電池スタックの完成時に前記ジルコニアを含む材料からなるアノード層2となるものと対向する部位に横縞型固体酸化物形燃料電池スタックの完成時においてカソード層4となるものを形成する。
(f)の工程において、横縞型固体酸化物形燃料電池スタックの完成時に前記電解質層3となるものを介して横縞型固体酸化物形燃料電池スタックの完成時に前記アノード層となるものと対向する部位とは、横縞型固体酸化物形燃料電池スタックの完成時に前記電解質層3となるものを挟んで、前記カソード層4の構成材料と前記ジルコニアを含む材料からなるアノード層2となるものが対向して形成される、と言う意味である。
(g)前記集電体7の構成材料(前記0042段落参照)から適当な材料を選んで使用して、横縞型固体酸化物形燃料電池スタックの完成時に前記カソード層4となるものと横縞型固体酸化物形燃料電池スタックの完成時に前記インターコネクタ6となるものの間に横縞型固体酸化物形燃料電池スタックの完成時において集電体7となるものを形成する。
こうして形成したところの完成した横縞型固体酸化物形燃料電池スタックが本発明(1)の横縞型固体酸化物形燃料電池スタックとなる。
このことから、本発明(1)の横縞型固体酸化物形燃料電池スタックにおいて、前記(a)に記載の多孔質の支持基板となるものが当該完成した横縞型固体酸化物形燃料電池スタックにおいて多孔質の支持基板1となり、前記(b)記載のジルコニアを含まない材料と前記(b)′に記載のジルコニアを含む材料が当該完成した横縞型固体酸化物形燃料電池スタックにおいてアノード層となり、前記(c)に記載のインターコネクタとなるものが当該完成した横縞型固体酸化物形燃料電池スタックにおいてインターコネクタ6となり、前記(d)に記載の電解質層となるものが当該完成した横縞型固体酸化物形燃料電池スタックにおいて電解質層3となり、前記(f)に記載のカソード層となるものが当該完成した横縞型固体酸化物形燃料電池スタックにおいてカソード層4となり、前記(g)に記載の集電体となるものが当該完成した横縞型固体酸化物形燃料電池スタックにおいて集電体7となる。
前記(b)に記載のジルコニアを含まない材料で形成されたアノード(第1のアノード層)層2’と(b)′に記載のジルコニアを含む材料で形成されたアノード層(第2のアノード層)2の配置は図5に示すとおりである。
以上の工程を端的に纏めると「内部に燃料流路を有する多孔質の支持基板の表面に、順次、アノード層、電解質層及びカソード層からなる複数個のセルを形成するとともに、隣接するセル間をランタンクロマイトまたはランタンクロマイトを主成分とする材料からなるインターコネクタを介して電気的に直列に接続して横縞型固体酸化物形燃料電池スタックを作製するに際して、前記アノード層のうち、(a)横縞型固体酸化物形燃料電池スタックとしての完成時においてインターコネクタが配置される部分には、ジルコニアを含まない組成のアノード層(第1のアノード層)を形成し、(b)横縞型固体酸化物形燃料電池スタックとしての完成時において電池反応に関わる部分には、前記インターコネクタが配置される部分と共通のジルコニアを含まない組成のアノード層(第1のアノード層)の上にジルコニアを含む組成のアノード層(第2のアノード層)を形成することを特徴とする横縞型固体酸化物形燃料電池スタックの作製方法」となり、これが本発明(2)である。
そして、本発明(2)の作製方法によって作製されたものが、本発明(1)の横縞型固体酸化物形燃料電池スタックであり、これを端的に纏めると「内部に燃料流路を有する多孔質の支持基板の表面に、アノード層、電解質層及びカソード層からなる複数個のセルを形成するとともに、隣接するセル間をランタンクロマイトまたはランタンクロマイトを主成分とする材料からなるインターコネクタを介して電気的に直列に接続してなる横縞型固体酸化物形燃料電池スタックであって、前記アノード層のうち、(a)前記インターコネクタが配置される部分は、ジルコニアを含まない組成のアノード層(第1のアノード層)とし、(b)電池反応に関わる部分は、前記インターコネクタが配置される部分と共通のジルコニアを含まない組成のアノード層(第1のアノード層)と、その上に積層されるジルコニアを含む組成のアノード層(第2のアノード層)としてなることを特徴とする横縞型固体酸化物形燃料電池スタック」となる。
本明細書においては、横縞型固体酸化物形燃料電池スタックとしての完成時に各部材となるものの形成過程についても、便宜上、例えば横縞型固体酸化物形燃料電池スタックとしての完成時に多孔質の支持基板となるものを形成する過程について「多孔質の支持基板を形成し」、「多孔質の支持基板を形成する」などとも記載している。しかし、横縞型固体酸化物形燃料電池スタックとしての形成過程つまり完成前は、完成時に多孔質の支持基板となるところの材料を配置しただけであり、横縞型固体酸化物形燃料電池スタックとしての完成時にはじめて多孔質の支持基板となるものである。この点、横縞型固体酸化物形燃料電池スタックとしての完成時に、アノード層となるものを形成すること、インターコネクタとなるものを形成すること、電解質層となるものを形成すること、カソード層となるものを形成すること、集電体となるものを形成することについても同様である。
以下、実験例を基に本発明をさらに詳しく説明するが、本発明が実験例に限定されないことはもちろんである。
〈実験例1〉
ランタンクロマイトの原料粉に(1)何も添加しない、(2)ジルコニア粉末を1質量%(原料粉と添加物の合計量中の割合、以下同じ)添加する、(3)Y23粉末を1質量%添加する、(4)NiOを1質量%添加する、の4種をプレス成型によりペレット化し、1500℃で焼成した。このペレットサンプルにエタノールを滴下し、エタノールが含浸するか否かを試験した。
その結果は以下のとおりであった。(1)のサンプルには浸透はみられず、緻密に焼結していることがわかった。(2)のサンプルにはエタノールが浸透した。このサンプルは1500℃で焼成しても緻密にならないことがわかった。(3)、(4)のサンプルには(1)と同様にエタノールの浸透はみられず、緻密に焼結していることがわかった。
これらの結果から、ランタンクロマイトは焼成温度1500℃で緻密になるが、ジルコニアはランタンクロマイトの焼結性を阻害し、Y23、NiOはランタンクロマイトの焼結性を阻害しないことがわかり、ランタンクロマイト層と接するアノード層(第1のアノード層)の成分として、Y23、NiOが適当であることが確認できた。
〈実験例2〉
本実験2では、Niを40容量%(Y23とNiOの合計量中の割合)添加したジルコニアを含まない組成のアノード層(第1のアノード層)を配したものの断面を観察した。図6はその電子顕微鏡写真である。図6のとおり、ジルコニアを含まない組成のアノード層(第1のアノード層)を配した部分及びその両側の層には大きな孔はなく、良好な緻密性を有していることがわかる。
ここで、図6の電子顕微鏡写真を図3の電子顕微鏡写真と対比すると、図3においては緻密なジルコニア層とランタンクロマイト層とが接する界面およびその界面からランタンクロマイト層側の層に比較的大きな孔が多数観察された。これに対して、図6においては緻密なジルコニア層とランタンクロマイト層とが接する界面およびその界面からランタンクロマイト層側に孔は殆ど観察されず、各層、また境界にも孔は実質上見当たらない。このように本発明に係るジルコニアを含まない組成のアノード層(第1のアノード層)の効果は明らかである。
〈実験例3〉
本実験3では、(1)インターコネクタを構成するランタンクロマイトの厚さを変え、(2)ランタンクロマイトと電池反応に関わる部分のジルコニアを含む組成のアノード層(第2のアノード層。ここでは「活性層」と指称する)との距離を変えたサンプルを作製し、ランタンクロマイトの厚さaと活性層との距離bとの関係での緻密性如何について試験した。図7にそれら厚さa、距離bの該当箇所を示し、表1にその試験結果を記載している。
表1のとおり、ランタンクロマイトの厚さaが20μm以上で且つランタンクロマイト層と活性層との間に隙間を有する(本実施例においては距離bが0mm超である)か、または、ランタンクロマイトの厚さaが10μm以上で且つランタンクロマイト層と活性層との間の距離bが2mm以上であると、ランタンクロマイト層、活性層ともに良好な緻密性が得られる。
Figure 0005220437
以上のとおり、横縞型固体酸化物形燃料電池スタックにおいて、ランタンクロマイトまたはランタンクロマイトを主成分とする材料からなるインターコネクタ6と、アノード層のうち、インターコネクタが配置される部分はジルコニアを含まない組成のアノード層(第1のアノード層)2’を配し、電池反応に関わる部分はジルコニアを含む組成のアノード層(第2のアノード層)2を配することにより、ランタンクロマイトまたはランタンクロマイトを主成分とする材料からなる層とアノード層の界面の緻密性を改善することができる。そして、Y23の粒径範囲、Niの添加割合を適正化ないしは最適化することにより実用に耐え得るランタンクロマイトまたはランタンクロマイトを主成分とする材料からなる層を形成することができる。
また、本発明によれば、1550℃以上では焼成収縮が著しく起こるなど問題があったランタンクロマイトまたはランタンクロマイトを主成分とする材料からなる緻密薄膜を焼成温度1550℃以下、特に1450℃〜1500℃の範囲で再現性よく形成できる。
中空扁平タイプの横縞型固体酸化物形燃料電池の構成例を示す図 横縞型固体酸化物形燃料電池スタックの作製過程例を説明する図 インターコネクタ材料としてランタンクロマイトを使用した場合の固体電解質層とランタンクロマイト層との界面の電子顕微鏡写真(図面代用写真) 図1(c)中矩形状の点線枠Aで示す部分を拡大して示した図 図4に対応して本発明を説明する図 23に対してNiOを5質量%添加した中間層を配したものの断面を観察した電子顕微鏡写真(図面代用写真) 〈実験例6〉におけるランタンクロマイトの厚さaと、ランタンクロマイトと活性層との距離bの関係を示す図
符号の説明
1 多孔質の支持基板
2’ アノード層〔ジルコニアを含まない組成のアノード層(第1のアノード層)〕
2 アノード層〔ジルコニアを含む組成のアノード層(第2のアノード層)〕
3 電解質層
4 カソード層
5 セル
6 インターコネクタ
7 集電体(インターコネクタ)
8 燃料流路
a ランタンクロマイトの厚さ
b ランタンクロマイトと活性層との距離



Claims (4)

  1. 内部に燃料流路を有する多孔質の支持基板の表面に、アノード層、電解質層及びカソード層からなる複数個のセルを間隔を置いて配置するとともに、隣接するセル間をランタンクロマイトまたはランタンクロマイトを主成分とする材料からなるインターコネクタを介して電気的に直列に接続してなり、且つ、前記アノード層のうち、(a)前記インターコネクタが配置される部分は、ジルコニアを含まない組成のアノード層とし、(b)電池反応に関わる部分は、前記インターコネクタが配置される部分と共通のジルコニアを含まない組成のアノード層と、その上に積層されるジルコニアを含む組成のアノード層としてなる横縞型固体酸化物形燃料電池スタックにおいて、前記インターコネクタが配置される部分におけるジルコニアを含まない組成のアノード層がNiを含むY 2 3 層からなることを特徴とする横縞型固体酸化物形燃料電池スタック。
  2. 請求項に記載の横縞型固体酸化物形燃料電池スタックにおいて、前記Niを含むY23層におけるNiの含有量が40〜70容量%の範囲であることを特徴とする横縞型固体酸化物形燃料電池スタック。
  3. 請求項1または2に記載の横縞型固体酸化物形燃料電池スタックにおいて、前記インターコネクタの厚さが20μm以上で且つ前記インターコネクタと前記電池反応に関わる部分のジルコニアを含む組成のアノード層との間に隙間を有することを特徴とする横縞型固体酸化物形燃料電池スタック。
  4. 請求項1または2に記載の横縞型固体酸化物形燃料電池スタックにおいて、前記インターコネクタの厚さが10μm以上で、且つ、前記インターコネクタと前記電池反応に関わる部分のジルコニアを含む組成のアノード層との間の距離が2mm以上であることを特徴とする横縞型固体酸化物形燃料電池スタック。
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