従来の電線路角度測定器を説明するにあたって、まず、電柱に張架されるケーブルの張架部材(引留部材を含む)および張架方法について図9〜図11を参照して説明する。なお、図9(a)〜(c)および図10(a)〜(c)に図示された電柱は、便宜上、所定区間に立設された3本の電柱のうち、中央に立設された電柱のみを図示している。図11(a)〜(c)に図示された電柱は、便宜上、所定区間に立設された3本の電柱を図示している。そして、ケーブルを張架する張架部材としては、例えば、図9(a)〜(c)に示すように、電柱Pに装柱される円弧状の帯片からなる一対のバンド部材41と、該バンド部材41に取り付けられた、ケーブルCを支持する支持具42,42A,42B(引留部材K)とを有する自在バンド40が使用されるのが一般的である。しかしながら、ケーブルCの性能や電柱Pの周囲の環境、例えば、側圧に弱い光ファイバケーブルなどや、多条装柱箇所では、図10(a)〜(c)に示すように、前記と同様のバンド部材41と、該バンド部材41に基端部が固定される柱状の支持部材45と、該支持部材45の先端部に取り付けられたケーブルCを支持する支持具420,420A(引留部材K)とを有する張架部材(以下、槍出金物という)46が使用される。なお、槍出金物46を装柱する場合においても、槍出金物46に変形や折損が生じるような過度な不平衡加重が加わる場合は、槍出金物46は使用しない。
そして、上述した各支持具42〜42B、420,420Aは、複数の電柱P間に張架されるケーブルCの電線路角度に応じて適宜選択される。その理由としては、電線路角度が、支持具42,420および電柱Pに対する加重と比例関係にあるためである。この電線路角度とは、図11(a)〜(c)に示すように、所定区間の3本の電柱P1〜P3(図11(a)〜(c)を正面から見て、左側,中央,右側に立設された電柱P1,P2,P3)間に張架されたケーブルCにおいて、左側の電柱P1から中央の電柱P2に張架されたケーブルCの直線状部と、中央の電柱P2から右側の電柱P3に張架されたケーブルCの直線状部とのなす角度(0度を含む)θをいう。すなわち、中央の電柱P2において、左側,右側に位置するケーブルCの直線状部により形成される電線路角度をいう。この電線路角度θを測定することで、支持具42〜42B、420,420Aおよび電柱Pに適正な荷重が係っているかを確認することができる。
例えば、図11(a)に示すように、ケーブルCの各直線状部の電線路角度θが0度であれば、張架されるケーブルCは略直線状に張架されていることになり、支持具42、420および電柱Pに対する加重は比較的低く、また、図11(b),(c)に示すように、ケーブルCが曲がって張架されていれば、支持具42A,42B、420Aおよび電柱Pに対する加重は電線路角度θに比例して大きくなるため、電線路角度θに応じて支持具42A,42B、420Aを選択する必要がある。
つぎに、電線路角度θに適したケーブルの配線方法および電線路角度θの測定方法について図9〜図11を参照して説明する。ここで、小径の吊線C1と、該吊線C1に沿って配線される大径のケーブル本体C2とが被覆部材によって一体化された自己支持型ケーブル(以下、SSケーブルという)Cを、略直線状に配置された3本の電柱Pに張架する場合を例にとって説明する。まず、SSケーブルCを直線状に張架する場合は、図9(a)に示すように、中央の電柱Pの上部に自在バンド40を装柱するとともに、該自在バンド40に径外方向に螺着されたボルトBに、SSケーブルCを支持する支持具、例えば直線用吊架金物42を取り付ける。この場合、図11(a)に示すように、左側,中央,右側の各電柱Pの外周面に対して、略接線方向に張架される。
つぎに、SSケーブルCの張架される向きが少し変更される(少し曲がって張架される)場合は、図9(b)に示すように、中央の電柱Pの上部に自在バンド40を装柱するとともに、該自在バンド40に径外方向に螺着されたボルトBに、SSケーブルCを支持する支持具、例えば曲り吊架金物42Aを取り付ける。この場合、図11(b)に示すように、SSケーブルCが、左側の電柱P1から中央の電柱P2を経て右側の電柱P3に少し曲がった状態で張架される。
つぎに、SSケーブルCの張架される向きが大きく変更される(例えば、略直角に曲げられる)場合は、図9(c)に示すように、丸シンブル50および巻付グリップ51で構成される支持具42B(引留部材K)が使用される。この場合、電柱Pの上部に一対の自在バンド40を装柱し、該自在バンド40のボルトBに丸シンブル50を取り付け、該丸シンブル50にU字形状の巻付グリップ51の曲線部を引っ掛ける。一方、電柱Pの近傍に位置するSSケーブルCにおいて、ケーブル本体C2の被覆部から吊線C1の被覆部を引き裂くとともに、吊線C1を所定長さ露出させて切断する。そして、巻付グリップ51の両端部に直線状のSSケーブルCの吊線C1を間に挟み込んで、巻付グリップ51の両端部を螺旋状に捻り合わせて一本化する。これによって、SSケーブルCの吊線の直線状部は、巻付グリップ51によって引き留めされる。この際、引き裂かれたケーブル本体C2は、中央の電柱Pを跨ぐように張架される(電柱Pの外側を大きく迂回するように撓まされて)。なお、SSケーブルCの撓んだ部位はスパイラルスリーブによって保護される(図示せず)。この場合、図11(c)に示すように、SSケーブルCの両側部(一対の巻付グリップ51)が、中央の電柱P2に対して径外方向に位置するようになる。
つぎに、槍出金物46を電柱Pに装柱して、SSケーブルCを直線状に張架する場合は、図10(a)に示すように、槍出金物46の先端部に、ボルトBを貫設させ、該先端部の下面に、SSケーブルCの吊線C1を支持する支持具(吊架部材)420を取り付ける。該支持具420は、支持部材45の下面に装着される水平部55a、および該水平部55aから垂下された垂下部55bと、垂下部55bの裏面に接離するように、垂下部55bに貫設されたボルトBと、該ボルトBに螺着された挟持片55cと、垂下部55bおよび挟持片55cの対向面にそれぞれ形成された凹部55d,55dとを有する吊架部材55とで構成される。そして、垂下部55bの凹部55dと挟持片55cの凹部55dとによって、SSケーブルCの吊線C1部位の被覆を挟持して、SSケーブルCを張架する。
つぎに、槍出金物46を電柱Pに装柱して、張架される方向が少し変更されたSSケーブルCの場合は、図10(b)に示すように、支持部材45の下面に、湾曲した一対の挟持片を有する支持具(詳細な拡大図は省略する。)を取り付ける。
つぎに、槍出金物46を電柱Pに装柱して、張架される方向が大きく変更されたSSケーブルCの場合は、図10(c)に示すように、支持部材45の上面及び下面に、平行して取り付けられる一対の支持板60,60と、各支持板60,60によって支持される丸シンブル50と、該丸シンブル50に巻回される巻付グリップ51とで構成される支持具420A(引留部材K)が使用される。そして、支持部材45の上面及び下面に、平行して一対の支持板60,60を取り付け、各支持板60,60によって支持される丸シンブル50を介して巻付グリップ51を取り付ける。一方、電柱Pの近傍に位置するSSケーブルCにおいて、ケーブル本体C2の被覆部から吊線C1の被覆部を引き裂くとともに、吊線C1を所定長さ露出させて切断する。そして、引き裂かれたケーブル本体C2を、中央の電柱Pを跨ぐように張架する(電柱Pの外側を大きく迂回するように撓ませる)とともに、吊線C1とケーブル本体C2とが一体になったSSケーブルCを電柱Pの径外方向に配線する。なお、SSケーブルCの撓んだ部位はスパイラルスリーブによって保護される(図示せず)。
上記のように張架されたケーブルの状態を角度測定する場合は、例えば、電柱に張架されているケーブルを、該電柱の下方から見るための円板状の鏡と、該鏡の中心に基端部が固定され、電柱に対して径外方向に張架されたケーブルの一方の直線状部に位置合わせされる基準となる第1直線指標と、鏡の中心に基端部が回動自在に支持され、同様に張架されたケーブルの他方の直線状部に位置合わせされる第2直線指標と、鏡の中心から第1直線指標よりも短い半径で、第1直線指標の基端部に半円形状に形成され、その周縁部に沿って角度情報が付された目盛線が表示された角度測定部材と、第1直線指標および第2直線指標の軸線の交点から、第2直線指標の軸線に沿って角度測定部材の目盛線に延出される指針とを備えた角度測定器を使用している(特許文献1参照)。
そして、ケーブルが張架されている電柱の下方において、鏡を上側にした状態にして、鏡の中心、すなわち第1および第2直線指標の交点を、張架されたケーブルと電柱との接点に位置合わせする。その後、上方に張架されているケーブルの直線状部に第1直線指標を合わせるとともに、ケーブルの直線状部に第2直線指標を回動させて合わせる。この第2指標の動きに応じて指針が角度測定部の目盛線に位置することになり、角度を測定することができる。
この角度測定器によれば、第1および第2直線指標を、電柱に対して径外方向に延出されるケーブルの両側部に位置合わせし、ケーブルの両側部によって形成される角度を、第1および第2直線指標の交点から各軸線に沿って延長される2つの延長線によって形成される角度に替えて読み取るようにしている。すなわち、ケーブルの両側部によって形成される角度に等しい対頂角を測定することで、電柱間に張架されたケーブルの電線路角度を測定している。
しかしながら、前記従来の電線路角度測定器は、第1および第2直線指標の交点(鏡の中心)を、張架されたケーブルと電柱との接点に位置合わせするとともに、電柱の上部に張架されたケーブルの両側部(直線状部)を第1および第2直線指標に位置合わせしているので、鏡の持ち方、鏡を見るときの姿勢、ケーブルの両側部(直線状部)に対する各直線指標の合わせ方など、測定する作業者によって変わる要素が多く、これらの要素によって大きな測定誤差を生じる場合があるという問題がある。
そこで、本発明は、上記問題点を鑑み、ケーブルが張架される複数の電柱のうち、一の電柱を跨ぐように張架されて、電柱に対して径外方向に延出されるケーブルの両側部、または該ケーブルの両側部を電柱に対して径外方向に引き留めるための一対の引留部材の位置によって形成される電線路角度を正確に測定できる電線路角度測定器を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明に係る電線路角度測定器は、ケーブルCが張架部材40,46により張架される複数の電柱Pのうち、一の電柱Pを跨ぐように張架されて、一の電柱Pに対して径外方向に延出されるケーブルCの両側部、または該ケーブルCの両側部を一の電柱Pに対して径外方向に引き留める張架部材40,46における一対の引留部材Kの位置によって形成される電線路の角度を測定する電線路角度測定器において、角度情報が付された目盛線4を中心から半径方向に表示される表示部3と、一の電柱Pの中心と目盛線4の前記中心とを位置合わせできるように形成される凹部5と、目盛線4が一の電柱Pに対して径外方向に位置するように位置合わせする位置合わせ手段10とを有する角度測定部材2を備えたことを特徴とする。
この場合、一の電柱Pの中心と目盛線4の前記中心とを位置合わせするための凹部5が角度測定部材2に形成されているので、目盛線4の前記中心を一の電柱Pの中心に容易に位置合わせすることができる。さらに、目盛線4の前記中心および一の電柱Pの中心が一致した状態で、角度測定部材2の位置合わせ手段10によって、角度測定部材2の目盛線4を、一の電柱Pに対して径外方向に正確に位置合わせすることができる。よって、一の電柱Pに対して径外方向に位置するケーブルCの両側部、または一対の引留部材Kに容易に位置合わせすることができる。つまり、ケーブルCの両側部、または、一対の引留部材Kによって形成される電線路の角度を、角度測定部材2によって容易にかつ正確に測定できるようになる。なお、ここでいう、一の電柱Pに対して径外方向に位置するとは、電柱の中心を通る任意の線に沿う方向に位置することを意味する。
また、本発明によれば、前記位置合わせ手段10を、前記角度測定部材2の目盛線4に沿いつつ、一の電柱Pに対して近接離間できるように配置される第1当接部材11と、互いが一の電柱Pに対して近接離間できるように、第1当接部材11を挟んで平行して配置される一対の第2当接部材12,12とで構成するようにしてもよい。
この場合、目盛線4の前記中心および一の電柱Pの中心が一致した状態で、第1当接部材11が、角度測定部材2の目盛線4に沿いつつ、一の電柱Pに対して近接離間するとともに、第1当接部材11を挟んで平行して配置される一対の第2当接部材12,12が、一の電柱Pに対して近接離間するので、第1当接部材11および各第2当接部材12,12が、一の電柱Pに対して接線方向に当接するようになり、角度測定部材2の目盛線4が、一の電柱Pに対して径外方向に正確に位置するようになる。すなわち、一の電柱Pの中心線の延長線上に角度測定部材2の目盛線4がずれることなく位置するようになる。
また、本発明によれば、第1当接部材11および各第2当接部材12,12を、一の電柱Pに対して近接離間させる駆動手段15を備えるような構成を選択することもできる。
この場合、第1当接部材11および各第2当接部材12を駆動手段15によって近接離間させるようにしたので、一の電柱Pに対する角度測定部材2の位置合わせ作業が、簡単且つ短時間に行えるようになり、角度測定作業の作業効率が向上する。
また、本発明によれば、前記駆動手段15は、前記角度測定部材2の目盛線4に沿うように配置され、第1当接部材11が中心部側に位置するように第1当接部材11に取り付けられるとともに、側縁部に沿って噛合溝16aが形成される第1案内部材16と、互いが平行し、かつ第1案内部材16に直交するように配置され、各第2当接部材12が外側に位置するように各第2当接部材12に取り付けられるとともに、対向する側縁部に沿って噛合溝18a,18aが形成される一対の第2案内部材18,18と、第1案内部材16の噛合溝16aおよび各第2案内部材18,18の噛合溝18a,18aが交差する位置に軸支される歯車20と、第1案内部材16および各第2案内部材18,18の少なくともいずれか一方を軸方向に移動させる、もしくは歯車20を回動させる動力源25とで構成するようにしてもよい。
この場合、動力源25によって、第1当接部材11および各第2当接部材12,12の少なくともいずれか一方を軸方向に移動させる、もしくは歯車20を回動させることで、第1当接部材11および各第2当接部材12,12が同時に同じ移動距離をもって移動するようになり、角度測定部材2の目盛線4を、一の電柱Pに対して径外方向に迅速かつ精度よく位置合わせすることができる。
また、本発明によれば、前記角度測定部材2に、0度を示す目盛線4aが、いずれか一方のケーブルCまたはケーブルCの引留部材Kの軸線に沿うように、いずれか一方のケーブルCまたはケーブルCの引留部材Kにあてがわれる定規部材30を備えるような構成を選択することもできる。
この場合、0度を示す目盛線4aと、いずれか一方のケーブルCまたはケーブルCの引留部材Kの軸線との位置合わせができるようになるので、他方のケーブルCまたは引留部材Kの軸線と一致する目盛線4の数値を読み取ることで電線路の角度を測定できる。すなわち、定規部材30があてがわれたケ−ブルCまたはケーブルCの引留部材Kを基準にして、他方のケーブルCまたは引留部材Kの位置を目盛線4によって特定することで、ケーブルCの両側部または一対の引留部材Kにより形成される電線路の角度を測定できるようになる。
以上のように、本発明によれば、目盛線の中心と電柱の中心との位置合わせが、角度測定部材に形成された凹部によって容易に行えるようになる、さらに、位置合わせ手段によって、角度測定部材の目盛線を電柱に対して径外方向に位置させることで、電柱を跨ぐように張架されるケーブルの両側部、または該ケーブルの両側部を電柱に対して径外方向に引き留めるための一対の引留部材に位置合わせすることができる。すなわち、角度測定部材の目盛線を、ケーブルまたは引留部材のいずれかに直接位置合わせすることで、電柱に対して径外方向に位置するケーブルの両側部によって形成される電線路角度を正確に測定することができる。
以下、本発明の一実施形態に係る電線路角度測定器について、図1〜図5を参照しつつ説明する。なお、図1,図2,図4,図5においては、平面視上側を後側、下側を前側、左右を左側、右側とする。また、図4および図5は、便宜上、ケーブルCの両側部または該ケーブルCの引留部材Kが、電柱Pに対して径外方向に位置するように直線状に図示している(図9(c)に示すように張架されているケーブルCまたは引留部材Kの概略図)。
本実施形態に係る電線路角度測定器1は、図1に示すように、角度情報が付された目盛線4が中心から半径方向に表示(一部省略)される表示部3と、ケーブルCが跨ぐように張架された一の電柱(以下、単に電柱Pという場合もある。)Pの中心と目盛線4の前記中心とを位置合わせするための凹部5と、目盛線4が電柱Pに対して径外方向に位置するように位置合わせする位置合わせ手段10と、角度測定部材2の直線状部2bに取り付けられた定規部材30とを有する角度測定部材2を備えている。なお、ここでいう、一の電柱Pに対して径外方向に位置するとは、電柱Pの中心を通る任意の線に沿う方向に位置することを意味する。
角度測定部材2は、図1に示すように、外形が半円形状を呈しており、円弧状部2aと、該円弧状部2aの両端部を結ぶ直線状部2bとを有している。また、角度測定部材2は、合成樹脂によって透明に作製されている。そうすることで、角度測定部材2の目盛線4に位置するケーブルCの両側部または一対の引留部材Kの位置を、角度測定部材2の上面から目視できるようにしている。
表示部3は、10度ごとに半径方向に沿って長い目盛線4aが表示され、長い目盛線4aの中間位置に、中程度の長さの目盛線4bが表示され、長い目盛線4aと中間の目盛線4bとの間に短い目盛線4cが1度ごとに表示されている。そして、0度および180度を示す長い目盛線4a,4aが、角度測定部材2の直線状部2b,2bに表示されている。0度を示す目盛線4aが、角度を測定する場合の基準線となり、この基準線4aにケーブルCの一側部または一方の引留部材(図示せず)をあてがうことにより、測定する際の基準位置となる。また、各目盛線4a〜4cは、その延長線上にある1点で交差するようになっており、この交点を目盛線4の中心と称している。また、0度を示す目盛線4aを測定する際の基準線としたが、他の目盛線4a〜4cであってもよい。要は、定規部材30が配置される目盛線4a〜4cが基準線となるのである。
凹部5は、電柱Pの半径よりも大きくて、角度測定部材2の半径よりも小さい半径で切除されて、略半円形状を呈している。そして、凹部5の円弧状部5aの中央から等脚台形状の第1突起部6が径内方向(90度を示す目盛線4aの延長線上)に延出して形成されている。また、凹部5の両側の端面から直状の第2突起部7,7が径内方向に延出して形成されている。第1突起部6および各第2突起部7,7は、電柱Pの外周面の近傍(電柱Pの直交する左右方向と前後方向の中心線の延長線上)に位置するようになる。すなわち、電柱Pに対して、凹部5の円弧状部5a、および、角度測定部材2の円弧状部2aが順次同心状に位置することになり、角度測定部材2の直線状部(0度および180度を示す目盛線4a,4a)2b,2bが、電柱Pの左右方向の中心線に対して径外方向(該中心線の延長線上)に位置することになる。すなわち、電柱Pの中心と目盛線4の中心(交点)とが一致するようになり、角度測定部材2の目盛線4が、電柱Pの径外方向に位置するようになる。つまり、電柱Pに対して径外方向に位置するケーブルCの両側部または一対の引留部材Kによって形成される角度を、角度測定部材2の目盛線4によって測定することができる。
位置合わせ手段10は、図1および図2(a)に示すように、前記角度測定部材2の90度を示す目盛線4aに沿いつつ、電柱Pに対して近接離間できるように配置される第1当接部材11と、互いが電柱Pの外周面に対して近接離間できるように、第1当接部材11を挟んで平行して配置される一対の第2当接部材12,12と、第1当接部材11および各第2当接部材12,12を、電柱Pの外周面に対して近接離間させる駆動手段15とを備えている。
第1当接部材11は、電柱Pの外周面に対して接線方向に平坦面が当接する矩形状の平板からなる。そして、第1当接部材11の平坦面が、電柱Pの前後方向の中心線に対して直交するように、電柱Pの外周面に当接することで、角度測定部材2の位置が位置決めされる。すなわち、角度測定部材2の90度を示す目盛線4aの位置と、電柱Pの前後方向の中心線との位置が一致することになる。また、第1当接部材11は、各第2当接部材12,12が電柱Pの外周面に当接できるように、換言すれば、角度測定部材2の凹部5の内側に、電柱Pを位置させることができるように、各第2当接部材12,12の先端部の位置よりも後退している。
第2当接部材12,12は、電柱Pの左右方向の中心線に対して直交するように、電柱Pの外周面に当接する。第1当接部材11および各第2当接部材12,12が電柱Pの外周面に当接することで、電柱Pの外周面と角度測定部材2の凹部5の円弧状部5aとの隙間が同一寸法に維持されるようになる(図5参照)。すなわち、第1当接部材11と各第2当接部材12,12とが電柱Pの外周面の左側、右側、前側の3点に当接することで、電柱Pに対して正確に角度測定部材2が位置決めされるようになる。つまり、角度測定部材2の目盛線4とケーブルCの両側部との位置ずれを防止できる。換言すれば、確実に位置合わせすることができる。
駆動手段15は、図1および図2(a),(b)に示すように、角度測定部材2の90度を示す目盛線4aに沿うように、かつ第1当接部材11が角度測定部材2の中心部側に位置するように、第1当接部材11に固着されるとともに、側縁部に沿って鋸歯状の噛合溝16aが形成される角棒状の第1案内部材16と、第1案内部材16の前後方向の移動をガイドする第1ガイド溝17aが形成された第1ガイド部材17と、互いが平行するように、かつ第1案内部材16に直交するように配置されるとともに、対向する側縁部に沿って鋸歯状の噛合溝18aが形成される一対の角棒状の第2案内部材18,18と、第1ガイド部材17の下面に、該第1ガイド部材17に対して直交方向に取り付けられ、各第2案内部材18,18の左右方向の移動をガイドする一対の第2ガイド溝19a,19aが平行して形成された第2ガイド部材19と、第1ガイド部材17および第2ガイド部材19が交差する位置、すなわち第1案内部材16の噛合溝16aおよび各第2案内部材18,18の噛合溝18a,18aが交差する位置に軸支される歯車20と、第1ガイド部材17の上面に取り付けられ、第1案内部材17を軸方向に移動させる動力源25とを備えている。
第1案内部材16は、角度測定部材2の半径よりも短く、電柱Pの半径よりも大きい長さに設定されている。すなわち、第1当接部材11が前進位置(電柱Pに当接する際の準備位置)から後退位置に移動した際(電柱Pの外周面に当接した位置)、各第2当接部材12,12が電柱Pの外周面に当接できる長さに設定されている。そして、第1案内部材16は、角度測定部材2の90度を示す目盛線4aに沿って配置されて、第1当接部材11は、電柱Pの外周面に対して接線方向に当接するように、第1案内部材16の先端部に固着されている。
第2案内部材18,18は、電柱Pの直径よりもやや大きい長さを有している。すなわち、電柱Pの外周面に対して左右の側方から当接できる長さを有している。また、各第2案内部材18,18の間隔は、歯車20の直径によって決まる、換言すれば、第1案内部材16および各第2案内部材18,18をどの程度の速さと距離で移動させるかによって決定される。また、この速さと距離によって、動力源25の容量の大きさも決定される。
歯車20は、上下に配置された回動軸21と、外周面に形成された、第1案内部材16の噛合溝16aおよび各第2案内部材18,18の噛合溝18a,18aに噛合する複数の歯22とを有している。そして、各歯22が、第1案内部材16の噛合溝16aおよび各第2案内部材18,18の噛合溝18a,18aに噛合することで、第1当接部材11および各第2当接部材12,12を、同時にかつ同じ移動距離で移動させることができる。そうすることで、電柱Pの直交する中心線に対して接線方向に当接するようになる。すなわち、第1当接部材11は、電柱Pの前後方向の中心線の延長線上に位置するとともに、各第2当接部材12,12は、左右方向の中心線に対して直交方向に位置するようになる。つまり、第1当接部材11および各第2当接部材12,12は、電柱Pに対して位置ずれすることなく当接する。換言すれば、電柱Pの中心と目盛線4の中心(交点)とが精度よく一致する。
動力源25は、図2に示すように、第1当接部材11の端部に一端部が連結されたベローズ27が内挿された筒体26と、一端部が、該ベローズ27の一端部に接続されたホース28と、ホース28の他端部が接続された逆止弁付き手動式ポンプ29とを有している。そして、手動式ポンプ29を、手で繰り返し握ったり、開放したりすることで、ホース28を介してベローズ27の内部に空気が導入されて、ベローズ27が伸長して、この駆動力が第1案内部材16、歯車20および各第2案内部材18,18に伝動されて、第1案内部材16が前進するとともに、各第2案内部材18,18が互いに内側に移動するようになる。一方、第1案内部材16および第2案内部材18,18の移動に連動して、第1当接部材11および各第2当接部材12,12が径内方向(電柱Pの外周面に対して近接する方向)に移動し、第1当接部材11および各第2当接部材12,12が電柱Pの外周面に当接する。
角度測定部材2は、0度を示す目盛線4aに沿って配置され、いずれか一方のケーブルCまたはケーブルCの引留部材Kにあてがわれる定規部材30を備えている。該定規部材30は、図3に示すように、角度を測定する際の基準となるケーブルCの直線状部にあてがわれる一対の第1定規部31,31と、該各第1定規部31,31に一体化され、角度測定部材2の直線状部2b,2bの端面に当接する一対の第2定規部32,32と、該各第2定規部32,32に一体化され、角度測定部材2の上面に当接される等脚台形状の第3定規部33とを有している。
第1定規部31,31は、断面がV字形状を呈しており、中央部が略直角に折り曲げられた一対の折曲片31a,31aがケーブルCの直線状部の外周面に当接する。ケーブルCの直線状部、または引留部材Kの直線状部に、2点接触することで、ケーブルCまたは引留部材Kの軸線が、第1定規部31,31の中央部、すなわち折曲部に一致することになる。すなわち、ケーブルCの直線状部、または引留部材Kの直線状部と、角度測定部材2の0度を示す目盛線4aとの位置合わせを確実に行えるようになる。
第2定規部32は、基端部が第1定規部31,31の折曲部に固着され、対向する内側の側辺部が、上方に向かうにしたがって大きく傾斜する傾斜辺32aが形成されている。また、外側の側辺部は直状に形成されている。この理由としては、第2定規部32が、角度測定部材2の直線状部2bの端面(幅小の面積)に当接する場合に、接触面積をできる限り大きくとるためである。
第3定規部33は、第2定規部32,32から水平方向に延出されており、角度測定部材2の上面に対して、有効な接触面積を最小限に確保するように、かつケーブルCの直線状部、または引留部材Kの直線状部と、角度測定部材2の0度を示す目盛線4aとの位置を目視できるように、等脚台形状に形成されている。
つぎに使用態様について説明する。なお、位置合わせ手段10を構成する、第1当接部材11および第2当接部材12,12と、第1案内部材16および各第2案内部材18,18と、第1ガイド部材17および第2ガイド部材19と、手動式ポンプ29を有する動力源25と、定規部材30とは、角度測定部材2に予め装着されているものとする。また、図9(c)に示すように、SSケーブルCが電柱Pを跨って張架されているものとする。
すなわち、第1当接部材11が角度測定部材2の90度を示す目盛線4aに位置するように、各第2当接部材12,12が、第1当接部材11を挟んだ位置(70度および110度を示す目盛線4a,4aの近傍位置)に配置される。そして、第1当接部材11は、凹部5の第1突起部6よりもやや突出して、凹部5の内側に位置した状態にあり、各第2当接部材12,12は、凹部5の第2突起部7,7よりも端部に位置した状態にある。すなわち、第1当接部材11および第2当接部材12,12は、電柱Pの外側(電柱Pよりも大きく、凹部5の内周面よりも小さい半円周の領域)に待機したスタンバイ状態にある(図1参照)。
定規部材30は、ボルトおよびナット(図示せず)によって、角度測定部材2の上面に、定規部材30の第3定規部33が取り付けられており、定規部材30の第3定規部33が、角度測定部材2の上面(0度を示す目盛線4aの近傍)に当接するとともに、第2定規部32の上部内面が、角度測定部材2の直線状部2b,2bの端面に当接し、一方の第1定規部31,31が、角度測定部材2の0度を示す目盛線4aの下方に位置する。
そして、作業者は、位置合わせ手段10および定規部材30がセットされた角度測定部材2を持って、高所作業車のバケットに乗って、電柱Pの上部に移動する。そして、図4に示すように、角度測定部材2の凹部5を電柱の外周面に対向させる。この際、第1当接部材11および第2当接部材12,12は、電柱Pの外周面よりも外側に位置している。
この状態から、手動ポンプ29を繰り返し伸縮させて、ベローズ27内部に空気を導入すると、図5に示すように、ベローズ27が伸長して、第1当接部材11を軸方向に沿って電柱Pの外周面に当接させる一方、各第2当接部材12,12が近接して、電柱Pの外周面に当接する。すなわち、第1当接部材11が、電柱Pの前後方向の中心線の延長線上に位置するようになり、各第2当接部材12,12が、電柱Pの左右方向の中心線の延長線上に位置するようになる。つまり、電柱Pの外周面と角度測定部材2の円弧状部2aが同心状に位置するようになり、角度測定部材2の目盛線4が電柱Pに対して径外方向に位置するようになる。
そして、定規部材30の第1定規部31,31を、ケーブルCの一方の直線状部に当接させる。すなわち、角度測定部材2の0度を示す目盛線(基準線)4aに、ケーブルCの一方の直線状部を位置させるとともに、ケーブルCの他方の直線状部が位置する、角度測定部材2の目盛線4の数値を読み取る。つまり、ケーブルCの両側部によって形成される電線路の角度を角度測定部材2の目盛線4によって測定する。
このように、本実施形態の電線路角度測定器によれば、電柱Pの中心と、目盛線4の中心(交点)とを位置合わせすることで、角度測定部材2に半径方向に表示されている目盛線4を、電柱Pに対して径外方向に位置させることができるため、電柱Pに対して径外方向に位置するケーブルCの両側部、または一対の引留部材Kによる電線路の角度を測定することができる。
なお、本発明は、前記実施形態に限定されることなく、発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、適宜、必要に応じて、設計変更や改良等を行うのは自由であり、また、その構成の組み合わせも自由である。
例えば、前記実施形態の場合、第1当接部材11および各第2当接部材12,12を歯車20に噛合させ、該歯車20に第1案内部材を介して伝動力を供給することで、第1当接部材11および各第2当接部材12,12を同時に駆動させるようにしたが、歯車20をモータで回動させて、第1当接部材および各第2当接部材を同時に駆動させるようにしてもよい。また、第1当接部材11をバネによって往復移動できるように構成し、第2当接部材12,12をポンプによって移動させるようにしてもよい(図示せず)。また、第1当接部材11および各第2当接部材12,12をポンプによって個別に移動させるようにしてもよい(図示せず)。また、図6に示すように、各第2当接部材12,12に引っ張りバネSの両端部を係止させるようにしてもよい。
また、前記実施形態の場合、定規部材30の第3定規部33を、角度測定部材2の上面に、ボルト及びナットによって固定するようにしたが、角度測定部材2に対して定規部材30を着脱自在になるようにしてもよい。例えば、図7(a)に示すように、角度測定部材2の上面に複数の係止体35を配置するとともに、図7(a),(b)に示すように、定規部材30の第3定規部33に、係止体35に応じた係合孔36を形成する。係止体35を、第3定規部33の上面に立設された直状の挿通部35aと、該挿通部35aの上部に固着された円板状の抜け止め部35bとで構成する。係合孔36を、抜け止め部35bが挿脱される大きさを有する円形状の挿通孔36aと、該挿通孔36aに連通するように、挿通孔36aの一部から径外方向に延出して形成される挿通部35aの移動用の長孔36bとで構成する。そして、定規部材30を角度測定部材2に装着する場合は、係止体35の抜け止め部35bを、係合孔36の挿通孔36aに位置させて挿通するとともに、係止体35の挿通部35aを、挿通孔36aから長孔36bに移動させて、長孔36bに対して抜け止め部35bが係止した状態になり、定規部材30が角度測定部材2に装着される。一方、定規部材30を角度測定部材2から取り外す場合は、挿通部35aを長孔36bから挿通孔36aに移動させて、挿通孔36aに抜け止め部35bを位置させる。そうすることで、長孔36bに対する抜け止め部35bの係止状態が解除されるので、定規部材30を角度測定部材2から取り外せる。
また、前記実施形態の場合、電線路角度測定器1を電柱Pの上部に持ち運んで電線路の角度を測定するようにしたが、角度測定部材2を電柱Pの下方から遠隔操作して電線路角度を測定するようにしてもよい。例えば、図8に示すように、測定対象となる電柱Pに張架されているケーブルCの下方において、角度測定部材2に配置されている位置合わせ手段10および駆動手段15を下側にした状態で、換言すれば、電柱Pに対する位置合わせを電柱Pの下方から行える状態にするとともに、角度測定部材2の目盛線4を電柱Pの下方から読み取れる状態にして、角度測定部材2を支持部材(長尺の棒材)Tによって下方から支持して、角度測定部材2と電柱Pとの中心の位置合わせを行った後、双眼鏡などによって、ケーブルCの両側部(直線状部)と目盛線4との位置合わせを行い、該ケーブルCの両側部による電線路の角度を測定するようにしてもよい。