JP5218807B2 - 培養組成物 - Google Patents
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Description
ロエチレンなどの有機塩素化合物による土壌・地下水の汚染が深刻な問題となっている。例えばテトラクロロエチレンはドライクリーニングの溶剤として多量に使用され、トリクロロエチレンは脱脂洗浄剤として半導体産業等で多量に使用されており、これらの物質が揮発性であることや焼却等の適切な処理が行われなかったことにより、汚染が生じた。
これらの有機塩素化合物は、難溶性および難分解性物質である。そのため、土壌等に含まれる塩素化有機化合物等の有機塩素化合物を分解し、汚染された環境を浄化するための環境浄化技術の開発が強く望まれている。
しかし、近年、環境浄化手法の1つとして、微生物を活用することにより、汚染物質を分解・無害化して汚染を除去するバイオレメディエーション技術が根本的な修復技術として期待されている(例えば、特許文献1,2)。バイオレメディエーションは、有害な有機化合物を生物学的に分解し、炭酸ガスやメタン・水・無機塩等の無害な物質に変換する技術である。
特許文献2には、嫌気性バクテリアおよび好気性バクテリアを利用した生物学的修復方法と、その際に使用する添加剤について記載してある。当該添加剤には、嫌気性バクテリアの還元的脱ハロゲン化を促進する物質として電子供与体としてのプロピオン酸塩、および、嫌気状態を造成する物質として乳糖を含む。乳糖は、好気性微生物にとって有効な栄養源となる。
メタノールは、バクテリアの増殖環境の酸化還元電位が低下して嫌気状態となったときに、バクテリアが迅速に利用可能な電子供与体となる。従来、プロピオン酸が電子供与体として利用されていたが(特許文献3)、この場合、迅速に還元的環境を作出するのは困難であった。しかし、本構成のようにメタノールを電子供与体とすることで、バクテリアの増殖環境を迅速に還元的環境とすることができる。
本発明は、有機塩素化合物により汚染された被処理物質を前記有機塩素化合物の分解活性を有する嫌気性バクテリアによって浄化するために前記被処理物質に添加する培養組成物である。
当該培養組成物は、メタノール・クエン酸・脱脂粉乳を主成分として含む。
当該有機塩素化合物としては、テトラクロロエチレン・トリクロロエチレン・1,1,1-トリクロロエタン・ジクロロエチレンや、ポリ塩化ジベンゾダイオキシン類(PCD
D)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)などのダイオキシン類等が例示される。
タノサルシナ(Methanosarcina)属、メタノロブス(Methanolobus)属、アセトバクテリウム(Acetobacterium)属、デスルフォバクテリウム(Desulfobacterium)属、デスルフォモニル(Desulfomonile)属、デハロスピリルム(Dehalospirillum)属、デハロバクター(Dehalobacter)属、デハロバクテリウム(Dehalobacterium)属、クロストリジウム
(Clostridium)属等のバクテリアが例示される。
当該乳酸菌としては、例えばラクトバシラス(Lactobacillus)属、ビフィドバクテリ
ウム(Bifidobacterium)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属、リューコノストックLeuconostoc)属等が挙げられる。
、ブルコデリア属(Burkoderia sp.)、ロドコッカス属(Rhodococcus sp.)等が例示さ
れる。
一般に、培地などのバクテリア培養環境の酸化還元電位がバクテリアの生育に影響を及ぼす。嫌気性バクテリアは、バクテリア培養環境の酸化還元電位が低い嫌気状態である場合に良好に生育する。本発明の培養組成物は、バクテリア培養環境の酸化還元電位を低下させる。
上述したように、本発明の培養組成物は、メタノール・クエン酸・脱脂粉乳を主成分として含む。
また、好気性バクテリア(例えばシュードモナス属(Pseudomonas sp.))・通性嫌気
性バクテリア(例えばクレブシエラ属(Klebsiella sp.))・偏性嫌気性バクテリア(例えばクロストリジウム属(Clostridium sp.),メタノサルシナ属(Methanosarcina sp.))は、メタノールによりビタミンB12を産生することが知られている。ビタミンB12は、例えばデハロコッコイデスの生育には必須の栄養素である。従って、当該培養組成物に添加したメタノールは、バクテリアが迅速に利用できる電子供与体としてだけでなく、バクテリアの増殖環境に存在する土壌細菌群に、デハロコッコイデスの必須栄養素を合成させることができる。
脱脂粉乳は、例えば原料乳の乳脂肪分を除去したものから殆ど全ての水分を除去した後、粉末状に乾燥したものである。原料乳は特に制約されるものではないが、牛・ヒトなど各種哺乳動物から得られた乳が用いられる。脱脂粉乳の製造工程は通常の工程であればよい。例えば、原料乳を減圧下で加熱して濃縮し、その後噴霧乾燥する。本発明の培養組成物に使用する脱脂粉乳においては、特定の成分量を調整する必要はない。
脱脂粉乳の組成は、例えば、脱脂粉乳100g中、タンパク質34.0g、脂質1.0g、炭水化物53.3g、灰分7.9g及びビタミンB群2mg、Ca・Na・K・Mg・P等5g程度の無機質を含む。原料乳の種類等によって多少の変動は許容される。
当該汚染地下水を15mLのプラスティックチューブに満たし、さらに、当該培養組成物の3種の成分について、無添加(サンプルNo.1)、単独(サンプルNo.2〜4)、2種混合(サンプルNo.5〜7)、3種混合(サンプルNo.8:本発明の培養組成物)したものを、それぞれ前記汚染地下水に添加した。この状態のチューブを密封して20℃で2週間培養し、酸化還元電位を測定した。結果を表1に示した。尚、脱脂粉乳はスキムミルク粉末(Difco社製)を使用した。
増幅条件を設定した。
dNTP、リアクションバッファー、20mMテトラメチルアンモニウムクロリド、25μg BSA、2.5U rTaqポリメラーゼ(アマシャム ファルマシア バイオテック社製)、1μL 鋳型DNA液を混合して、全量を50μLとした。
method for quantification of the three genera Deharobacter, Dehalococcoides, and Desulfitobacterium in microbial communities.",Journal of Microbiological Methods, 57(2004)369-378」に記載の情報に基づき、プライマー配列およびPCR増幅条件を
設定した。
PCR反応液の組成は、QuantiTect SYBR Green PCRマスターミックス5μL(キアゲ
ン社製)、0.8μLプライマー(Dco728F,Dco944R)、2.4μL希釈水、1μL 鋳型DNA液を混合して、全量を10μLとした。
PCR反応および電気泳動終了後、デハロコッコイデス由来のPCR産物の有無を評価した(表2)。
サンプルNo.1、5〜8について、トリクロロエチレンがどの程度分解されるかを評価した。培養条件において、培養期間を3週間としたこと以外は上述した条件と同様に行った。結果を表4に示した。トリクロロエチレン濃度の測定は、JIS K 0125 5.2の分析方法に従い、ヘッドスペースGC/MS法により行った。
明した。この場合、酸化還元電位は十分低下して、嫌気性バクテリア(デハロコッコイデス)が成育するのに適する値を示し、かつ、トリクロロエチレンは十分に分解されている。
メタノール・クエン酸・脱脂粉乳の各成分を3種混合した培養組成物において、各成分の濃度条件を種々変更して前記汚染地下水に添加し、酸化還元電位を測定した。培養条件は、上述した実験と同様とした。結果を表4に示した。
上述した実施形態では、本発明の培養組成物は、有機塩素化合物により汚染された被処理物質を、有機塩素化合物の分解活性を有する嫌気性バクテリアによって浄化するために被処理物質に添加した。
本発明の培養組成物は、このような実施態様に限らず、例えば以下に説明するように、簡便に嫌気培養条件を作出して所望の嫌気性バクテリアを迅速に検出する場合にも利用できる。
一般に嫌気培養は、以下の方法が公知である。
酸素存在下では生きられない嫌気性バクテリアを培養するには、培養環境から酸素を除去する必要がある。嫌気培養培地には、培地自体の還元力を高めるために肝臓片を肝臓ブイヨンに加える肝片加肝臓ブイヨン・チオグリコール酸ナトリウム・システインを添加し、SH基の自己酸化によって培地中の酸素を除去するチオグリコレート培地がある。
培養環境から酸素を除去する方法として、物理的に酸素を除去する方法と、化学的に酸素を除去する方法とがある。
物理的に酸素を除去する方法としては、容器内の酸素をポンプによって排出する方法、或いは、厚い培地の底で菌を培養する方法がある。
化学的に酸素を除去する方法としては、化学薬品と水を反応させて水素ガスを発生させ、触媒の働きによって発生した水素ガスと容器内の酸素とを反応させて水にするガスパック法や、金属に酸素を吸収させるスチールウール法、酸素吸収能力の高い細菌とともに培養する方法などが知られている。
上述した実施形態に示した培養条件において、汚染地下水に代えて、水溶性切削油を希釈する希釈水(工業用水)を使用したこと以外は、同様の条件で硫酸還元バクテリア(Desulfovibrio sp.)の培養を試みた。使用した培養組成物の成分および濃度も、上述した
実施形態で使用したサンプルNo.1〜8と同様とした。この培養条件によって、発生する臭気の有無および沈殿物の色を評価した。結果を表5に示した。
Claims (1)
- 有機塩素化合物により汚染された汚染地下水を前記有機塩素化合物の分解活性を有する嫌気性バクテリアによって浄化するために前記汚染地下水に添加する培養組成物であって、
メタノール・クエン酸・脱脂粉乳を主成分として含み、
前記メタノールの濃度が5〜100mM、前記クエン酸の濃度が0.5〜10mM、前記脱脂粉乳の濃度が0.0005〜0.01%である培養組成物。
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