JP6124558B2 - 新規微生物および、鉄シアノ錯体またはニッケルシアノ錯体の分解方法 - Google Patents

新規微生物および、鉄シアノ錯体またはニッケルシアノ錯体の分解方法 Download PDF

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本発明は、新規微生物および、鉄シアノ錯体またはニッケルシアノ錯体の分解方法に関する。
シアン化合物は、炭素と窒素からなる無機物質であり、土壌汚染対策法(以下、土対法という)においては重金属類として第二種特定有害物質に分類されている。シアン化合物には、シアン化物と金属シアノ錯体と称される化合物群がある。前記シアン化物は、「遊離シアン」とも呼ばれているもので、一般式An(CN)xで表され、Aには水素(H)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、アンモニウム(NH4)、カルシウム(Ca)などがあり、シアン化合物の中で最も毒性の高い形態である。また、前記金属シアノ錯体は、シアン化水素の金属塩と金属とが過剰のシアン化物イオン(CN-)と化合したもので、一般式An[M(CN)x]で表される。ここで、Mには銀(Ag)、金(Au)、カドミウム(Cd)、コバルト(Co)、銅(Cu)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)などの金属が該当し、溶液中に溶存、あるいは懸濁状で存在している。
前記シアン化合物は、産業排水等に含まれていることがあり、浄化処理で取り除かれるべき性質の物質である。シアン化合物を排出する工場としては、メッキ工場、選鉱精錬所、鉄鋼熱処理工場、コークス製造工場等がある。これら工場では、シアン化合物を銅、亜鉛、ニッケル、金等の建浴過程や、製品製造過程でシアン化合物が副生されるため、工場内にシアン排水処理設備を設置している。「平成20年度土壌汚染対策法の施行状況および土壌汚染調査・対策事例等に関する調査結果:平成22年2月:環境省」(以下、「土対法事例結果」という)によれば、シアン化合物による土壌環境基準超過の業種区分は、金属製品製造業、ガス業、化学工業の順となっている。日本では、中小規模のメッキ工場が多く、全国で約2,000社以上存在する。その多くは戦後の高度経済成長期に都市部周辺に建設されており、操業時のシアン化合物の漏出や設備の経年劣化によるメッキ浴槽や配管からの漏えいにより、潜在的に調査結果以上の工場敷地内で土壌がシアン化合物によって汚染されていることが予想される。
溶液(排水)中でのシアン化合物の存在形態に関しては、排水処理分野で多くの研究が行なわれており、その形態は大部分が前記遊離シアンと前記金属シアノ錯体であることが報告されている。これらのシアン化合物を含有する排水の処理方法としては、アルカリ塩素法、オゾン酸化法、電解酸化法、紺青法(難溶性錯化合物沈殿法)、酸分解燃焼法、煮詰法(煮詰高温燃焼法)、湿式加熱分解法、および、吸着法などが知られている。しかし、これらの処理方法においては、安定性の高い金属シアノ錯体、たとえば鉄、コバルト、銀、金のシアノ錯体については適用されなかったり、反応条件が過酷で大規模な設備が必要であったり、生成物の処理がさらに必要であったりするという問題があった。そこで、生物機能を利用して環境を修復する技術、所謂、バイオレメディエーション(bioremediation)が注目されており、前記シアン化合物分解能力を有する微生物の検索が行なわれている。
現在、シアン化カリウム、シアン化ナトリウムなどの前記遊離シアンの微生物分解に関しては、遊離シアン分解菌としてPseudomonas putida、Pseudomonassp.、Acinetobacter sp.、Fusarium sp.、Klebsiella sp.などの微生物が単離、同定されたという報告がある。
そして、前記金属シアノ錯体に関しては、ニッケルシアノ錯体([K2Ni(CN)4])を分解する金属シアノ錯体分解微生物として、Fusarium solani、Trichoderum polysporum が報告されている。また、鉄シアノ錯体であるフェロシアン化カリウム([K4Fe(CN)6])の分解菌としては、Fusarium oxysporum、Scytalidium thermophilum、Penicillium miczynskiが報告されている(いずれも非特許文献1)。また、本願出願人においても、鉄シアノ錯体を分解する種々の金属シアノ錯体分解微生物を単離、同定している(たとえば特許文献1、2等、本願出願人以外の同定例として特許文献3等)。
しかし、前記鉄シアノ錯体を分解する場合に、上記金属シアノ錯体分解微生物は、いずれも好気性条件下で働くものであるため、その金属シアノ錯体分解微生物の施用形態が限られ、ほとんど酸素供給のない土壌中で鉄シアノ錯体を分解することができないなど、実際に用いるうえで、技術的に種々の問題を抱えているため、実用化には至っていない。なお、前記特許文献3に記載されている金属シアノ錯体分解微生物は、嫌気条件下で鉄シアノ錯体を分解する可能性のあるものであるが、分解菌のKlebsiella pnenumoniae はBSL2の病原菌であり、原位置処理法のオーグメンテーション法による嫌気性条件における鉄シアノ錯体分解処理には適さず、やはり、技術的に種々の問題を抱えているため、実用化には至っていない。
また、上述のような事情を鑑みれば、鉄シアノ錯体の浄化は土壌中、特に飽和層まで達した汚染土壌に対して適用されることが望まれる。
汚染土壌の処理の実態としては、土地所有者の心理的要因や、不動産取引における経済的側面を考慮して、完全浄化を目的とした掘削除去を選択することが多い。特に重金属類は、鉛やカドミウム等のようにそれ以上の分解は不可能であり、掘削除去による対策費用は5万円/m3以上の高コストであるにも関わらず、第二種特定有害物質の超過事例の83%で掘削除去が採用されている(「土対法事例結果」による)。掘削除去の比率が、83%と非常に高いのは、原位置浄化技術が確立されていないことも大きな理由である。特に、シアン化合物については、原位置浄化技術が適用できる範囲が限られている。不溶化処理は、長期的なモニタリングを必要とし、開発の際には土地造成が制限される。薬剤添加処理(フェントン法)やオゾン注入処理は、安定なフェロシアン(鉄とシアンの錯体)には適用できないなど、一部の金属シアノ錯体化合物に限られる。掘削除去の場合は、別途掘削土壌の無害化処理が必要であり、セメント原料化を代表とする熱処理や、化学処理である不溶化処理、薬剤添加処理、オゾン分解処理、物理処理である分級洗浄処理がある。前述のように、金属シアノ錯体は分解が容易でなく、熱処理が採用されることが多い。また、その熱処理についても、セメント原料化の場合での受入基準は厳しいものとなっており、専用の熱処理施設に処理を委ねるしか手段がない。したがって、金属シアノ錯体の処理費は、通常の重金属処理費に比べても高価なものになっており、より低コストな処理方法として原位置浄化技術の適用が求められている。
特許文献4には、弱アルカリ性の生育条件下で、鉄シアノ錯体分解能力を有する嫌気性鉄シアノ錯体分解微生物について記載されているが、これらは病原菌または日和見菌であり、開放系の土壌浄化には適さない問題があった。
特開2000−270847号公報 特開2003−275791号公報 特開2006−281053号公報 特開2001−269166号公報
Knowles C.J. et. al,Enzyme and MicrobialTechnology 22:223−231,(1998)
現状のシアン化合物汚染土壌のバイオレメディエーションは、栄養剤、溶存酸素水および空気を土壌中に注入して微生物活性を促す「注入工法」が行なわれている。しかし、「注入工法」適用には条件があり、汚染サイトが、
<1>比較的分解の容易な遊離シアンや銅シアノ錯体の汚染土壌である、なおかつ、
<2>注入工法に適した地層条件(透水性が良く、注入物質の移動が容易に行なわれる飽和層)
といった場合において浄化を確認した実証研究段階にとどまっている。
シアン化合物はその形態が多岐にわたり、特に鉄シアノ錯体は非常に安定な物質である。製鉄業やガス事業で問題になっている石炭ガス由来のシアン化合物汚染土壌に含まれるシアン化合物は、ほとんどが鉄シアノ錯体であることが知られている。また、メッキ工場でのシアン汚染土壌は、メッキ浴に使用した重金属による銅シアノ錯体であるが、土壌中には鉄が多く含まれるため、地中に浸透拡散したシアン化合物は鉄シアノ錯体としても存在しており、環境基準達成のためには難分解な鉄シアノ錯体の分解が必要である。
そこで、本発明の目的は、上記実情に鑑み、新規微生物クロストリジウムクロモレダクタンス(Clostridium chromoreductans)ER−CL−1株(寄託番号NITE P−1434)(以下新規クロストリジウムER−CL−1株と称する)および鉄シアノ錯体を含みうる廃水、土壌等から有効に金属シアノ錯体を分解除去できる金属シアノ錯体分解方法を提供することにある。
〔構成〕
上記目的を解決するために本発明は、鉄シアノ錯体分解能力を有する新規クロストリジウムER−CL−1株を提供するものである。
また、本発明の鉄シアノ錯体またはニッケルシアノ錯体の分解方法は、上記新規微生物を、クレブシエラ属微生物およびエンテロバクター属微生物から選ばれる少なくとも一種の通性嫌気性微生物とともに鉄シアノ錯体またはニッケルシアノ錯体含有培地で培養することを特徴とする。
〔作用効果〕
本発明者らは、金属シアノ錯体化合物の中でもより微生物によって分解されやすいニッケルシアノ錯体を基質として、一般土壌を分離源として嫌気的に集積培養を行い、ニッケルシアノ錯体を嫌気的に分解する嫌気性微生物のコンソーシアムを得た。
また、この嫌気性微生物のコンソーシアムが、絶対嫌気性微生物であるクロストリジウム属微生物と通性嫌気性微生物であるクレブシエラ属微生物またはエンテロバクター属微生物の混合物であることを見いだした。
クロストリジウム属微生物は通常の栄養培地で増殖できるが、アンモニアや金属シアノ錯体を唯一のN源とする培地において単独では増殖できない。同様に、クレブシエラ属微生物またはエンテロバクター属微生物は、金属シアノ錯体を唯一のN源とする培地では単独で増殖できない。しかし、クロストリジウム属微生物と、クレブシエラ属微生物またはエンテロバクター属微生物が共存する場合には増殖することができる。
経験的に、嫌気性微生物コンソーシアムは絶対嫌気性微生物と通性嫌気性微生物の混合物であることが多い。
これら嫌気性微生物コンソーシアムの培養においては、これらの微生物は互いに共生関係にあり分離培養が難しい場合がある。特に、絶対嫌気性微生物は酸素が存在しても増殖できる通性嫌気性微生物と共存することによって、酸素の暴露による死滅から守られている場合がある。
本発明者らが、今般得られた嫌気性微生物のコンソーシアムを解析したところ、このコンソーシアムに含まれるクロストリジウム属微生物は前記新規クロストリジウムER−CL−1株であることが明らかになった。また、新規クロストリジウムER−CL−1株を鉄シアノ錯体含有の栄養培地で培養すると、単独で増殖し鉄シアノ錯体を分解することを確認した。しかし、新規クロストリジウムER−CL−1株は鉄シアノ錯体の分解能力を持つものの、増殖には酸素を消費して嫌気的になる条件(他の通性嫌気性微生物の存在や栄養リッチな条件)が必要で、上記コンソーシアムのように、金属シアノ錯体を唯一のN源としてクレブシエラ属微生物またはエンテロバクター属微生物とともに培養することにより、好適に金属シアノ錯体を分解、浄化することができる。
また、前記新規クロストリジウムER−CL−1株は、従来は浄化が困難であった鉄シアノ錯体の分解能力を持つため、比較的分解容易なニッケルシアノ錯体のみならず、たとえば、シアン化合物がプルシアンブルーやフェロシアンなど化学的に安定で難分解性の鉄シアノ錯体として存在している工場廃水や工場跡地のシアン化合物汚染土壌であっても浄化することができるようになった。
なお、以上のようなコンソーシアムの性質から、新規クロストリジウムER−CL−1株の維持管理にはニッケルシアノ錯体を唯一のN源としてクレブシエラ属微生物またはエンテロバクター属微生物から選ばれる少なくとも一種の通性嫌気性微生物を添加して培養することができる。そして、この新規クロストリジウムER−CL−1株を、オーグメンテーションに使用する場合には、コンソーシアムから前記通性嫌気性微生物を除去してから、通常の栄養培地で培養することにより、前記新規クロストリジウムER−CL−1株のみを大量培養することができる。
また、前記新規クロストリジウムER−CL−1株は非病原菌であり、開放系の土壌浄化のオーグメンテーションに問題なく用いることができる。また、無害な新規クロストリジウムER−CL−1株を用いることで、危険な薬剤や高価な装置を使うことなく、工場等の操業中でも原位置浄化技術によって安全で低コストに水処理、土壌浄化処理を行うことができるようになる。
したがって、本発明によると、難分解性の鉄シアノ錯体を含有するシアン錯体廃液や、シアン化合物汚染土壌であっても好適に浄化することができるようになった。
コンソーシアムのニッケルシアノ錯体分解能力を示すグラフ コンソーシアムのニッケルシアノ錯体分解能力を示すグラフ コンソーシアムの鉄シアノ錯体分解能力を示すグラフ ER−CL−1株のシアン化カリウム分解能力を示すグラフ ER−CL−1株のニッケルシアノ錯体分解能力を示すグラフ ER−CL−1株の鉄シアノ錯体分解能力を示すグラフ
発明者らは、以下のようにして、一般土壌より、鉄シアノ錯体よりも遊離シアンを生成しやすいニッケルシアノ錯体を基質として集積培養を行った。その結果、ニッケルシアノ錯体を分解可能な微生物のコンソーシアムが得られた。そこで、得られたコンソーシアムについてさらに解析を行ったところ、新規クロストリジウムER−CL−1株が見いだされた。また、新規クロストリジウムER−CL−1株は、鉄シアノ錯体を分解できることも明らかになった。以下に新規クロストリジウムER−CL−1株のスクリーニング方法について具体的に示す。
<実験方法>
水田、もしくは河川敷の土壌から下記ニッケルシアノ錯体培地1〜4を用いて金属シアノ錯体分解微生物の集積培養を行った。
<ニッケルシアノ錯体培地>
基本合成培地(syn)
Na2HPO4 ・・・0.1 %
KH2PO4 ・・・0.05 %
NaCl ・・・0.05 %
MgSO4 ・・・1 mM
FeCl3 ・・・0.02 mM
CaCl2 ・・・0.1 mM
グルコース・・・10 mM
pH 7.0
STD培地(標準培地)
ペプトン・・・5 g/L
Yeast Extract・・・2.5 g/L
グルコース・・・1 g/L
pH 7.0
嫌気性菌用NSバイオアクティ培地(ANS)
嫌気性菌用NSバイオアクティ(新日鉄住金エンジニアリング社製)・・・1 %
pH 7.0
ニッケルシアノ錯体培地1:基本合成培地+ニッケルシアノ錯体
基本合成培地
2[Ni(CN)4]・・・0.5 mM
pH 7.0
ニッケルシアノ錯体培地2:嫌気性菌用NSバイオアクティ培地+ニッケルシアノ錯体
嫌気性菌用NSバイオアクティ培地
2[Ni(CN)4]・・・0.5 mM
pH 7.0
ニッケルシアノ錯体培地3:基本合成培地+アンモニウム塩+ニッケルシアノ錯体
基本合成培地
塩化アンモニウム・・・20 mM
2[Ni(CN)4]・・・0.5 mM
pH 7.0
ニッケルシアノ錯体培地4:基本合成培地+グルタミン酸+ニッケルシアノ錯体
基本合成培地
グルタミン酸ナトリウム・・・20 mM
2[Ni(CN)4]・・・0.5 mM
pH 7.0
嫌気性菌用NSバイオアクティ培地(ANS)+フェロシアン化カリウム(ANS+フェロシアン)
嫌気性菌用NSバイオアクティ・・・1 %
フェロシアン化カリウム・・・・0.5mM
pH 7.0
STD+シアン化カリウム培地
STD
KCN・・・0.5 mM
STD+ニッケルシアノ錯体培地
STD
K2[Ni(CN)4]・・・0.5 mM
STD+フェロシアン化カリウム培地
STD
フェロシアン化カリウム・・・・0.5mM
集積培養は、下記サイクルを繰り返して行った。集積培養から得られた培養液をさらに寒天培地で単離し、コロニーを同定、RFLP解析を行った。なお、嫌気培養を行う際には、アルゴンで5分間バブリングを行うことによって培地を嫌気化したのち培養を行った。
<集積培養条件>
(1).1gの土壌を20ml培地で1週間培養する。
(2).(1)で得られた培養液0.2mlを新しい培地20mlに植継ぎ1週間培養する。
(3).(1)、(2)を繰り返し植継ぎを6回繰り返す。
<集積培養から得られる寒天培地コロニーの同定とRFLP解析>
6回目の集積培養液を寒天培地にひろげ、出てきたコロニーについて各ニッケルシアノ錯体培地で培養し、増殖がみられたコロニーについて16SrRNAの配列を調べた。
上記コロニーの液体培養による継代培養中の培養液500μlからExtrap Soil DNA Kit Plus ver. 2(J−Bio 21)を用いてDNAを抽出、このDNAを鋳型として16SrDNAユニバーサルプライマー(27F/Bac1392R)を用いて16SrDNAをPCR増幅した。次に、TOPO TAクローニングキット(インビトロジェン)を用いてこのPCR産物をクローニングした。
24個のクローンに対しベクター特異的プライマーで挿入配列をPCR増幅し、PCR産物を制限酵素HaeIIIを用いたRFLP解析によりグループ分けした。それぞれのグループについてシーケンス解析とBlast解析により近縁種の検索を行った。
<結果>
・コンソーシアム1(con1)
大阪府北部の水田より採取した土壌からK2[Ni(CN)4]を唯一の窒素源として集積培養したもの
・コンソーシアム2(con2)
大阪府の淀川の河川敷より採取した土壌からK2[Ni(CN)4]を唯一の窒素源として集積培養したもの
Figure 0006124558
<シアン分解活性>
各コンソーシアムによるシアン分解活性を調べた。
(培養条件)
コンソーシアム1(100μl)+ニッケルシアノ錯体培地1(20ml)
コンソーシアム2(100μl)+ニッケルシアノ錯体培地1(20ml)
コンソーシアム1(100μl)+ニッケルシアノ錯体培地2(20ml)
コンソーシアム2(100μl)+ニッケルシアノ錯体培地2(20ml)
コンソーシアム1(100μl)+ニッケルシアノ錯体培地3(20ml)
コンソーシアム2(100μl)+ニッケルシアノ錯体培地3(20ml)
コンソーシアム1(100μl)+ニッケルシアノ錯体培地4(20ml)
コンソーシアム2(100μl)+ニッケルシアノ錯体培地4(20ml)
コンソーシアム1(100μl)+(ANS+フェロシアン)(20ml)
コンソーシアム2(100μl)+(ANS+フェロシアン)(20ml)
ER−CL−1株(100μl)+(STD+シアン化カリウム培地)(20ml)
ER−CL−1株(100μl)+(STD+ニッケルシアノ錯体培地)(20ml)
ER−CL−1株(100μl)+(STD+フェロシアン化カリウム培地)(20ml)

いずれも、嫌気条件、30℃、振騰培養
適時試料を採取しニッケルシアノ錯体濃度を測定した。また、コントロールとして、コンソーシアムに代えて水100μlを加えたものについても調べた。ニッケルシアノ錯体がほぼなくなったものについてはその時点(図中○囲み)で全シアンの測定を行った。
(結果)
図1に、コンソーシアムのニッケルシアノ錯体分解能力(栄養剤の影響)を示す。また、図2に、コンソーシアムのニッケルシアノ錯体分解能力(窒素源の影響)を、図3に、コンソーシアムの鉄シアノ錯体分解能力を、図4に、ER−CL−1株のシアン化カリウム分解能力を、図5に、ER−CL−1株のニッケルシアノ錯体分解能力を、図6に、ER−CL−1株の鉄シアノ錯体分解能力をそれぞれ示す。(図4〜6においてER−CL−1株をCL1と表記している)
図1,2に示すように、
ニッケルシアノ錯体以外の窒素源が含まれていない場合は、両コンソーシアムともすみやかにニッケルシアノ錯体中のシアンを分解して増殖した。
また、ニッケルシアノ錯体以外の窒素源が含まれている場合は、コンソーシアム1は最後までニッケルシアノ錯体中のシアンを分解できるが、コンソーシアム2は分解が停止した。
また、図4,5に示すように、ER−CL−1株単独であっても同様のシアン分解能力を発揮することが確認された。
次に、鉄シアノ錯体を基質として2つのコンソーシアムについて同様に分解活性を検討した。結果を図3に示す。また、ER−CL−1株単独での鉄シアノ錯体分解能力を図6に示す。図6においては、鉄シアノ錯体分解能力を初期の全シアン濃度に対するER−CL−1株培養13日後の全シアン濃度の比としての全シアン減少率で表している。
図3より、鉄シアノ錯体の全シアン濃度の推移を求めたところ、両コンソーシアムともに約20%程度の全シアン濃度(a)の低減が認められた。一方、鉄シアノ錯体の遊離シアン濃度の推移についても調べたが、培地中の遊離シアン(b)の蓄積は認められなかった。すなわち、上記コンソーシアムを金属シアノ錯体含有培地で培養すると、鉄シアノ錯体が高効率で分解除去できることを実験的に示すことができた。
また、図6より、ER−CL−1株は、鉄シアノ錯体含有の栄養培地でも、単独で増殖し鉄シアノ錯体を分解することがわかった。
以上の結果から、以下(1)〜(7)を確認することができた。
(1)分離源が異なっても、ニッケルシアノ錯体で集積培養すると互いによく似た菌相に収斂する。
(2)これらの菌相内の金属シアノ錯体分解微生物は微妙に違い、コンソーシアムの金属シアノ錯体分解活性は互いに異なる。
(3)上記コンソーシアムによると、鉄シアノ錯体を基質としても全シアンの分解傾向が認められた。さらに、鉄シアノ錯体から遊離シアンの生成を促進する栄養剤との併用で鉄シアノ錯体の分解が促進されると考えられる。
(4)新規クロストリジウムER−CL−1株は通常の栄養培地で増殖できるが、アンモニアやニッケルシアノ錯体を唯一のN源とする培地では単独では増殖できず、増殖には、クレブシエラ属微生物またはエンテロバクター属微生物から選ばれる少なくとも一種の通性嫌気性微生物とともに培養する必要がある。
(5)一方、クレブシエラ属微生物またはエンテロバクター属微生物から選ばれる少なくとも一種の通性嫌気性微生物は、ニッケルシアノ錯体を唯一のN源とする培地では単独で増殖できず、増殖には、逆に(金属シアノ錯体分解性の)クロストリジウム属微生物の添加を必要とする。
(6)新規クロストリジウムER−CL−1株をニッケルシアノ錯体含有の栄養培地で培養すると、単独で増殖しニッケルシアノ錯体を分解する。
(7)新規クロストリジウムER−CL−1株を鉄シアノ錯体含有の栄養培地で培養した場合にも、単独で増殖し鉄シアノ錯体を分解する。
<クロストリジウム属微生物の分離と同定>
下記YPG寒天培地によって上記コンソーシアムを培養することで、クロストリジウム属微生物をコンソーシアムから単離することができた。
<YPG寒天培地>
Yeast Extract・・・0.5 g/L
ポリペプトン・・・1 g/L
グルコース・・・0.2 g/L
寒天末・・・15 g/L
単離したクロストリジウム属微生物は、16SrDNA解析の結果、Clostridium diolis DSM 5431株と相同率98.4%を示すことが分かり、得られたクロストリジウム属微生物は新規微生物であることが確認された。この新規微生物は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(NPMD)に、クロストリジウムクロモレダクタンス(Clostridium chromoreductans)ER−CL−1株(寄託番号NITE P−1434)として寄託されている。
この新規微生物の菌学的性質は、以下の通りである。
本菌株は、嫌気性条件下で生育し、運動性を有するグラム溶性桿菌で、芽胞を形成し、芽胞による菌体の膨張が確認される。また、カタラーゼ反応及びオキシダーゼ反応はともに陰性を示す。インドールを産生せず、ウレアーゼ活性を示さず、ゼラチンを加水分解せず、エスクリンを加水分解し、グルコース、D−マンニトール、ラクトースおよびサッカロースなどを酸化し、グリセロール、D−メレチトースおよびD−ソルビトールを酸化しない。デンプンを加水分解せず、リパーゼ活性を示さず、ミルク凝固反応を示さない。
16SrDNA塩基配列解析の結果、本菌株はClostridium chromiireducensの基準株GCAF−1株と98.7%の相同性を示したが、塩基配列は一致しておらず、簡易分子系統樹においても両者の間には距離が認められた。従って、現段階では、本菌株は、Clostridium属に含まれる、Clostridium sp.である。
本発明の新規微生物および金属シアノ錯体分解方法は、シアン化合物がプルシアンブルーやフェロシアンなど化学的に安定で難分解性の鉄シアノ錯体として存在している工場廃水や工場跡地のシアン化合物汚染土壌の浄化に利用することができる。

Claims (2)

  1. 鉄シアノ錯体分解能力を有する新規微生物クロストリジウムクロモレダクタンス(Clostridium chromoreductans)ER−CL−1株(寄託番号NITE P−1434)。
  2. 請求項1記載の新規微生物を、クレブシエラ属微生物およびエンテロバクター属微生物から選ばれる少なくとも一種の通性嫌気性微生物とともに鉄シアノ錯体またはニッケルシアノ錯体含有培地で培養する鉄シアノ錯体またはニッケルシアノ錯体の分解方法。
JP2012250528A 2012-11-14 2012-11-14 新規微生物および、鉄シアノ錯体またはニッケルシアノ錯体の分解方法 Active JP6124558B2 (ja)

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