JP5217243B2 - 非晶質炭素膜、非晶質炭素膜の形成方法、非晶質炭素膜を備えた導電性部材および燃料電池用セパレータ - Google Patents

非晶質炭素膜、非晶質炭素膜の形成方法、非晶質炭素膜を備えた導電性部材および燃料電池用セパレータ Download PDF

Info

Publication number
JP5217243B2
JP5217243B2 JP2007135777A JP2007135777A JP5217243B2 JP 5217243 B2 JP5217243 B2 JP 5217243B2 JP 2007135777 A JP2007135777 A JP 2007135777A JP 2007135777 A JP2007135777 A JP 2007135777A JP 5217243 B2 JP5217243 B2 JP 5217243B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
amorphous carbon
carbon film
less
film according
forming
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2007135777A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2008004540A5 (ja
JP2008004540A (ja
Inventor
崇 伊関
由香 山田
和之 中西
正 大島
広行 森
俊男 堀江
憲一 鈴木
学 北原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Central R&D Labs Inc
Original Assignee
Toyota Central R&D Labs Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Central R&D Labs Inc filed Critical Toyota Central R&D Labs Inc
Priority to JP2007135777A priority Critical patent/JP5217243B2/ja
Publication of JP2008004540A publication Critical patent/JP2008004540A/ja
Publication of JP2008004540A5 publication Critical patent/JP2008004540A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5217243B2 publication Critical patent/JP5217243B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/30Hydrogen technology
    • Y02E60/50Fuel cells

Landscapes

  • Chemical Vapour Deposition (AREA)
  • Fuel Cell (AREA)

Description

本発明は、炭素を主成分とし導電性を示す非晶質炭素膜およびその形成方法、ならびに、燃料電池のセパレータに代表されるような非晶質炭素膜を備えた導電性部材に関する。
炭素は、埋設量がほぼ無限であり、かつ無害であることから資源問題および環境問題の面からも極めて優れた材料である。炭素材料は、原子間の結合形態が多様で、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブといった様々な結晶構造が知られている。中でも、非晶質構造を有するダイヤモンドライクカーボン(非晶質炭素)は、高い機械強度と優れた化学安定性を有することから、各産業分野への応用が期待されている。
しかし、一般的な非晶質炭素膜の電気抵抗は、半導体から絶縁体の領域にある。非晶質炭素のさらなる用途拡大のために、非晶質炭素への導電性の付与が求められている。非晶質炭素の用途の一つとして、燃料電池のセパレータが挙げられる。図8に、単セルの固体高分子型燃料電池の一例を模式的に示す。図8の左図は、積層する前のそれぞれの構成要素の配列を示し、図8の右図は、それらを積層した状態を示す。単電池1は、電解質膜1aとそれを両側から挟持する一組の電極(空気極1bおよび燃料極1c)とから構成される。セパレータ2は、複数本の凹条が形成された凹条形成面2b、2cを有する。セパレータ2は、樹脂製のセパレータ枠3に収められ、空気極1bと凹条形成面2b、燃料極1cと凹条形成面2c、がそれぞれ対向するように積層される。こうして、電極とセパレータとの間に、電極表面と凹条とで区画されたガス流路が構成され、燃料電池における反応ガスである燃料ガスおよび酸素ガスが効率よく電極表面に供給される。
燃料電池では、燃料ガスと酸素ガスとが、互いに混合しないように分離したまま電極表面全体に供給される必要がある。したがって、セパレータには、ガスに対する気密性が必要である。さらに、セパレータには、反応により発生した電子を集電するとともに、複数のセルを積層させたときに隣接する単電池同士の電気的コネクターとして良好な導電性が必要とされる。また、電解質表面は強酸性を示すため、セパレータには、耐食性が要求される。
そのため、セパレータの材料としては、グラファイト板材が用いられるのが一般的である。ところが、グラファイト板材は割れやすいため、グラファイト板材に複数のガス流路を形成したりその表面を平坦にしたりなどしてセパレータを生産する場合、加工性に問題がある。一方、金属材料は、導電性とともに加工性にも優れ、特に、チタンやステンレス鋼は耐食性に優れるため、セパレータの材料として使用可能である。しかしながら、耐食性に優れる金属材料は不働態化しやすいため、燃料電池の内部抵抗が増大して電圧降下を引き起こすという問題がある。そこで、金属製の基材の表面に、導電性をもつ非晶質炭素膜を被覆したセパレータが注目されつつある。
非晶質炭素に導電性を付与する方法として、非晶質炭素に金属を添加する方法が挙げられる(特許文献1および特許文献2参照)。しかしながら、添加した金属が腐食の原因となったり、他の金属と接触して用いられると凝着の原因となったり、などして非晶質炭素が本来有する化学的安定性が損なわれる場合がある。
一方、特許文献3では、金属を添加することなく、非晶質炭素に導電性を付与している。特許文献3には、結晶内の一部にsp結合炭素を有するsp結合性結晶が膜の最下層(基材側)から最上層(表面側)まで膜厚方向に連続的に連なった構造をもち、sp結合性結晶以外の部分は非晶質である炭素膜が開示されている。特許文献3の記載によれば、sp結合性結晶の含有率を減らすことは、炭素膜の耐食性および耐摩耗性の点から重要である。そのため、sp結合性結晶が炭素膜の基材側から表面側まで連続的に存在することは、炭素膜の膜厚方向の導電率を高めることに効果的であり、結果として、sp結合性結晶の含有率を低減できるため望ましいとされている。また、引用文献3には、sp結合性結晶の含有率の増加は、炭素膜の硬度低下、耐摩耗性低下をもたらすとの記載もある。つまり、炭素膜の非晶質部分に、耐摩耗性や硬さを向上させるsp結合炭素を多く含有することが示唆されている。その結果、連続的なsp結合性結晶がない膜厚と垂直方向の導電性が悪化し、電気的に異方性が生じる可能性が考えられる。
また、特許文献4および特許文献5には、金属材料の表面に、メタンを原料として、主として炭素および水素から構成される非晶質炭素膜を成膜した燃料電池のセパレータが開示されている。しかしながら、メタンを原料とし通常の成膜方法で成膜された非晶質炭素膜を有する特許文献4および特許文献5のセパレータは、セパレータに必要とされる導電性および耐食性が十分でないと考えられる。特に、特許文献4および特許文献5では、セパレータに対して実環境を想定した電圧を印可した厳しい条件下での特性評価がされていないため、燃料電池に使用された場合に、要求される導電性および耐食性が発揮されないと考えられる。
特開2002−38268号公報 特開2004−284915号公報 特開2002−327271号公報 特開2000−67881号公報 特開2005−93172号公報
本発明は、このような実状を鑑みてなされたものであり、非晶質炭素が本来もつ特性を劣化させることなく、導電性を有する非晶質炭素膜を提供することを課題とする。また、そのような非晶質炭素膜の形成方法、および非晶質炭素膜を備えた燃料電池用セパレータなどの導電性部材を提供することを課題とする。
本発明の非晶質炭素膜は、炭素と水素とからなる非晶質炭素膜であって、水素を25at%以下(0at%を除く)含み、かつ、該炭素の全体量を100at%としたときに、sp混成軌道をもつ炭素量が75at%以上100at%未満であることを特徴とする。
本発明の非晶質炭素膜は、さらに、窒素を20at%以下(0at%を除く)含むのが好ましい。また、窒素に加え、さらに、珪素を5at%以下(0at%を除く)含むのが好ましい。
本発明の非晶質炭素膜は、炭素と水素と珪素とからなる非晶質炭素膜であって、水素を25at%以下(0at%を除く)、珪素を1at%未満(0at%を除く)含み、かつ、該炭素の全体量を100at%としたときに、sp混成軌道をもつ炭素量が75at%以上100at%未満であることを特徴とする。
以下、本明細書では、sp混成軌道を作って結合する炭素を、「sp混成軌道をもつ炭素」または「Csp」と称す。同様に、sp混成軌道を作って結合する炭素を、「sp混成軌道をもつ炭素」または「Csp」と称す。
炭素原子には、化学結合における原子軌道の違いにより、sp混成軌道をもつ炭素(Csp)、sp混成軌道をもつ炭素(Csp)、sp混成軌道をもつ炭素(Csp)の三種類がある。たとえば、Cspのみからなるダイヤモンドは、σ結合のみを形成し、σ電子の局在化により高い絶縁性を示す。一方、グラファイトは、Cspのみからなり、σ結合とπ結合とを形成し、π電子の非局在化により高い導電性を示す。
本発明者等は、炭素を主成分とする非晶質炭素膜について鋭意研究を重ねた結果、水素やCspなどの含有量を制御してCspからなる構造を増加させることで、非晶質炭素膜に導電性を付与できるとの知見に至った。
すなわち、本発明の非晶質炭素膜は、全炭素に占めるCspの割合が多いためπ電子の非局在化が促進されるとともに、水素の含有量が低減されているためC−H結合(σ結合)による分子の終端化が抑制される。その結果、本発明の非晶質炭素膜は、高い導電性を示す。また、本発明の非晶質炭素膜は非晶質で、単結晶グラファイトが示すような電気的な異方性がない。
また、本発明の非晶質炭素膜の形成方法は、プラズマCVD法により、基材の表面に上記本発明の非晶質炭素膜を形成する方法であって、
前記基材を反応容器内に配置し、該反応容器内に、sp混成軌道をもつ炭素を含む炭素環式化合物ガスならびにsp混成軌道をもつ炭素と珪素および/または窒素とを含む複素環式化合物ガスから選ばれる一種以上を含む反応ガスを導入して放電することを特徴とする。
本発明の非晶質炭素膜の形成方法によれば、環状構造をもつとともにsp混成軌道をもつ炭素を含む炭素環式化合物ガスおよび/または複素環式化合物ガスを含む反応ガスを原料として用いることにより、全炭素に占めるCspの割合が70at%以上であるとともに水素の含有量が少ない非晶質炭素膜を容易に成膜することができる。したがって、本形成方法は、上記本発明の非晶質炭素膜を形成する方法として好適である。さらに、上記本発明の非晶質炭素膜を、実用的な成膜速度で容易に形成することができる。
また、本発明の非晶質炭素膜は、導電性部材、特に、燃料電池のセパレータとして好適である。すなわち、本発明の導電性部材は、基材と、該基材の少なくとも一部に形成された上記本発明の非晶質炭素膜と、からなることを特徴とする。
また、本発明の燃料電池用セパレータは、金属製の基材と、該基材の少なくとも電極に対向する表面を覆う非晶質炭素膜と、からなる燃料電池用セパレータであって、
前記非晶質炭素膜は、上記本発明の非晶質炭素膜であることを特徴とする。
本発明の導電性部材は、上記本発明の非晶質炭素膜を備える。本発明の非晶質炭素膜は、高い導電性とともに、非晶質炭素が本来有する耐摩耗性、固体潤滑性、耐食性などをもつ。このため、本発明の導電性部材は、接触することで電気的に導通する部材、さらには、腐食環境下で使用されるとともに高い導電性が要求される燃料電池用セパレータなどの部材に好適である。
次に、実施形態を挙げ、本発明の非晶質炭素膜、非晶質炭素膜の形成方法、非晶質炭素膜を備えた導電性部材および燃料電池用セパレータをより詳しく説明する。
[非晶質炭素膜]
本発明の非晶質炭素膜は、炭素と水素とからなる非晶質炭素膜であって、水素を25at%以下(0at%を除く)含み、かつ、炭素の全体量を100at%としたときに、Csp量が75at%以上100at%未満である。
Csp、Cspの定量法としては、たとえば、ラマン散乱法、赤外分光法(FT−IR)、X線光電子分光法(XPS)等が挙げられる。たとえば、可視光源を用いたラマン散乱法を用い、1580cm−1付近のGバンドと1350cm−1付近のDバンドとの強度比「I(D)/I(G)」から、Csp、Cspの量比を求めるといった手法が紹介されている。ところが、最近の研究では、DバンドにおけるCspの感度はCspの感度の1/50〜1/260であることがわかっている(「 MATERIALS SCIENCE & ENGINEERING R-REPORTS 37 (4-6) p.129 2002」)。よって、ラマン散乱法では、Cspの量を議論することはできない。また、FT−IRでは、2900cm−1付近のC−H結合を定性的に評価することはできるが、Csp、Cspの定量化はできないというのが一般的な解釈である(「Applied Physics Letters 60 p.2089 1992」)。また、XPSでは、C1sの結合エネルギーからC=C結合、C−C結合をピーク分離することにより、Csp、Cspの仮の量比を求められなくはない。しかし、上記二つの結合エネルギーの差は小さく、多くはモノモーダルなピークであることから、ピーク分離は多分に恣意的にならざるを得ない。また、XPSの分析領域は、光電子の脱出可能な数nm程度の最表面に限られている。最表面は、未結合手や酸化の影響を受け易いため、最表面の構造は内部の構造と異なる。このため、最表面の構造をもって膜全体の構造を特定することには大きな問題がある。内部構造を知るために、アルゴンイオンのスパッタリング処理を行いながら、その場でXPSスペクトルを得る手法もある。しかし、イオンボンバードにより内部構造が変質することとなり、この手法を用いたとしても必ずしも真の姿が捉えられるわけではない。
このように、上記方法では、Csp、Cspを正確に定量することはできない。したがって、本明細書では、Csp、Cspの定量法として、多くの有機材料や無機材料などの構造規定において最も定量性の高い核磁気共鳴法(NMR)を採用する。Csp量、Csp量の測定には、固体NMRで定量性のあるマジックアングルスピニングを行う高出力デカップリング法(HD−MAS)を用いた。図1に、非晶質炭素膜の13C NMRスペクトルの一例を示す。図1に示すように、130ppm付近、30ppm付近に、それぞれCsp、Cspに起因するピークが見られる。それぞれのピークとベースラインとにより囲まれる部分の面積比から、全炭素におけるCsp、Cspの含有割合を算出した。
上記のようにして算出された本発明の非晶質炭素膜のCsp量は、全炭素量を100at%とした場合の75at%以上100at%未満である。Csp量が75at%以上であれば、π電子の非局在化が促進され高い導電性を示す。ただし、Csp量が100at%であると、導電性は有するものの粉末状となり、緻密な膜が得られない。本発明の非晶質炭素膜のCsp量は、80at%以上さらには85at%以上、また、99.5at%以下さらには99at%以下であるのが好ましい。なお、本発明の非晶質炭素膜を構成する炭素は、CspとCspとの二種類であると考えられる。したがって、本発明の非晶質炭素膜のCsp量は、全炭素量を100at%とした場合の25at%以下(0at%を除く)となる。
なお、本発明の非晶質炭素膜のようにCsp量が70at%以上の非晶質炭素膜は、Cspを含む炭素環式化合物ガスならびにCspと炭素および酸素以外の添加元素とを含む複素環式化合物ガスから選ばれる一種以上を含む反応ガスを原料として用いたプラズマCVD法により成膜が可能である。Cspを含まない化合物のガスを原料として用いても、Csp量が70at%以上の非晶質炭素膜を形成するのは困難である。
本発明の非晶質炭素膜の水素(H)の含有量は、25at%以下(0at%を除く)である。H含有量を低減することで、C−H結合(σ結合)による分子の終端化が抑制されるためπ電子が増加し、高い導電性を示す。したがって、本発明の非晶質炭素膜のH含有量が少なくなる程、導電性の向上効果が高くなるため、H含有量は、20at%未満さらには18at%未満であるのが好ましい。また、H含有量は、少ないほど導電性が高いが、敢えて規定するならば5at%以上、10at%以上さらには13at%以上であってもよい。
本発明の非晶質炭素膜は、さらに窒素を含んでもよい。すなわち、本発明の非晶質炭素膜は、炭素と水素と窒素とからなる非晶質炭素膜であって、水素を30at%以下(0at%を除く)、窒素を20at%以下(0at%を除く)含み、かつ、炭素の全体量を100at%としたときに、Csp量が70at%以上100at%未満である。窒素原子は、非晶質炭素膜中でn型ドナーとして働き、ドナー準位に束縛されていた電子を効果的に伝導帯へと励起するため、非晶質炭素膜の導電性がさらに高くなる。
本発明の非晶質炭素膜の窒素(N)の含有量は、20at%以下(0at%を除く)である。N含有量が多いと、C≡N結合の形成により分子の終端化が促進されるため、N含有量は20at%以下に抑える。本発明の非晶質炭素膜のN含有量は、2at%以上、3at%以上さらには4at%以上、また、18at%以下、15at%以下さらには10at%以下であるのが好ましい。
本発明の非晶質炭素膜は、さらに珪素を含んでもよい。すなわち、本発明の非晶質炭素膜は、炭素と水素と珪素とからなる非晶質炭素膜であって、水素を25at%以下(0at%を除く)、珪素を1at%未満(0at%を除く)含み、かつ、炭素の全体量を100at%としたときに、Csp量が75at%以上100at%未満である。あるいは、本発明の非晶質炭素膜は、炭素と水素と窒素と珪素とからなる非晶質炭素膜であって、水素を25at%以下(0at%を除く)、窒素を20at%以下(0at%を除く)、珪素を5at%以下(0at%を除く)含み、かつ、炭素の全体量を100at%としたときに、Csp量が75at%以上100at%未満である。
本発明の非晶質炭素膜において、5at%以下の珪素(Si)は、非晶質炭素膜の導電性にほとんど影響が無く、非晶質炭素膜の密度が高まるとともに非晶質炭素膜と基材との密着性を向上させる。本発明の非晶質炭素膜のSi含有量は、0.5at%以上さらには0.6at%以上、また、3at%以下さらには1at%未満であるのが好ましい。
上述のように、本発明の非晶質炭素膜は、水素、あるいは、水素と窒素および/または珪素と、を含み、残部は炭素と不可避不純物と、からなり、他の元素を実質的に含まないことが望まれるが、非晶質炭素膜全体を100at%としたときに、さらに、酸素(O)を3at%以下含んでもよい。非晶質炭素膜の形成時に混入する酸素ガスなどに起因する酸素の含有量を3at%以下とすれば、酸化珪素などの酸化物の形成を抑制できるため、酸素の含有は許容される。O含有量は、2at%以下さらには1at%以下であるのが好ましい。
本発明は、炭素を主成分とする非晶質の炭素膜である。このことは、本発明の非晶質炭素膜を粉末状にしてX線回折(XRD)測定を行うことで確認できる。XRD測定によれば、結晶の存在を示す先鋭な回折ピークは検出されず、グラファイトの(002)面に相当する回折ピークは、ブロードなハローパターンとなる。
このとき、ブラッグの式から算出された(002)面の平均面間隔が0.34〜0.50nmであるのが好ましい。(002)面の平均面間隔が0.50nm以下であれば、面間隔が狭くなることにより、面間でのπ電子の相互作用が増大するとともに、導電性が向上する。なお、グラファイトの(002)面の平均面間隔は、0.34nmである。さらに好ましくは、0.34〜0.45nm、0.34〜0.40nmである。
なお、本明細書で「導電性をもつ」とは、10Ω・cm以下の体積抵抗率を示すことを意味する。本発明の非晶質炭素膜の導電性は、特に限定されるものではないが、体積抵抗率が10Ω・cm以下さらには10Ω・cm以下であるのが好ましい。特に、体積抵抗率が10−1Ω・cm以下である非晶質炭素膜は、後述の燃料電池用セパレータにおいて好適である。
[非晶質炭素膜の形成方法]
本発明の非晶質炭素膜は、プラズマCVD法、イオンプレーティング法、スパッタリング法など、既に公知のCVD法、PVD法により形成することができる。しかし、スパッタリング法に代表されるように、PVD法では成膜に指向性がある。よって、均一に成膜するためには、装置内に複数のターゲットを配置したり、成膜対象となる基材を回転させたりすることが必要となる。その結果、成膜装置の構造が複雑化し、高価になる。また、基材の形状によっては成膜し難い場合がある。一方、プラズマCVD法は、反応ガスにより成膜するため、基材の形状に関わらず均一に成膜することができる。また、成膜装置の構造も単純で安価である。
プラズマCVD法により本発明の非晶質炭素膜を形成する場合、まず、真空容器内に基材を配置して、反応ガスおよびキャリアガスを導入する。次いで、放電によりプラズマを生成させて、基材に付着させればよい。ただし、本発明の非晶質炭素膜のように、全炭素に占めるCspの割合が多いとともに水素の含有量が少ない非晶質炭素膜を成膜するためには、後に詳説するような反応ガスを選択して用いる必要がある。
プラズマCVD法には、たとえば、高周波放電を利用する高周波プラズマCVD法、マイクロ波放電を利用するマイクロ波プラズマCVD、直流放電を利用する直流プラズマCVD法がある。なかでも、直流プラズマCVD法が好適である。直流プラズマCVD法によれば、成膜装置を真空炉と直流電源とから構成すればよく、様々な形状の基材に対して容易に成膜できる。また、反応ガス濃度を高くして、成膜圧力を100Pa以上としても、安定した放電が得られる。
以下、プラズマCVD法を用いた好適な態様として、本発明の非晶質炭素膜の形成方法を説明する。本発明の非晶質炭素膜の形成方法は、基材を反応容器内に配置し、該反応容器内に、sp混成軌道をもつ炭素を含む炭素環式化合物ガスならびにsp混成軌道をもつ炭素と珪素および/または窒素とを含む複素環式化合物ガスから選ばれる一種以上を含む反応ガスを導入して放電する。なお、この方法は、後述する本発明の導電性部材および燃料電池用セパレータの製造方法としても把握することができる。
基材には、金属、半導体、セラミックス、樹脂などから選ばれる材料を用いればよい。たとえば、鉄または炭素鋼、合金鋼、鋳鉄などの鉄系合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金、銅または銅合金などの金属製基材、珪素などの半金属製基材、超鋼、シリカ、アルミナ、炭化珪素などのセラミックス製基材、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレンテレフタラート等の樹脂製基材などが挙げられる。
また、基材と非晶質炭素膜との密着性を向上させるという観点から、基材の表面に、予めイオン衝撃法による凹凸形成処理を施しておくとよい。具体的には、まず、容器内に基材を設置し、容器内のガスを排気して所定のガス圧とする。次に、凹凸形成用ガスの希ガスを容器内に導入する。次に、グロー放電またはイオンビームによりイオン衝撃を行い、基材の表面に凹凸を形成する。また、基材の表面に、均一で微細な凹凸を形成するため、凹凸形成処理の前に、窒化処理を施しておくとよい。窒化処理の方法としては、たとえば、ガス窒化法、塩浴窒化法、イオン窒化法がある。
反応ガスには、Cspを含む炭素環式化合物ガスならびにCspとSiおよび/またはNとを含む複素環式化合物ガスから選ばれる一種以上を用いる。なお、「炭素環式化合物」とは、環を形成する原子がすべて炭素原子である環式化合物である。また、これに対して「複素環式化合物」とは、2種またはそれ以上の原子から環が構成されている環式化合物である。Cspを含む炭素環式化合物、言い換えれば、炭素−炭素二重結合をもつ炭素環式化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびナフタレン等の芳香族炭化水素化合物の他、シクロヘキセン等が挙げられる。また、珪素および/または窒素を含む非晶質炭素膜を形成する場合には、CspとともにSiおよび/またはNを含む炭素環式化合物を使用してもよく、アニリン、アゾベンゼン等のNを含む芳香族化合物、フェニルシラン、フェニルメチルシラン等のSiを含む芳香族化合物が挙げられる。これらのうち特に、ベンゼン、トルエン、キシレンが好適である。炭素環式化合物は、これらから選ばれる一種以上であればよい。また、直流プラズマCVD法では、プラズマ密度が比較的小さいため、反応ガスは分解し難いと考えられる。よって、直流プラズマCVD法において、反応ガスとして解離エネルギーの低いベンゼンガス等を使用すると、非晶質炭素膜中のCspの増加に効果的である。珪素および/または窒素を含む非晶質炭素膜を形成する場合には、CspとSiおよび/またはNとを含む複素環式化合物を用いるとよい。複素環式化合物としては、炭素と窒素とから環が構成されているピリジン、ピラジン、ピロール、イミダゾールおよびピラゾール等の含窒素複素環式化合物などが挙げられる。複素環式化合物は、これらから選ばれる一種以上であればよい。これら、炭素環式化合物ガスおよび複素環式化合物ガスのうちいずれか一種を単独で、あるいは二種以上を混合して用いればよい。
珪素を含む非晶質炭素膜を形成する場合には、反応ガスとして、CspとSiとを含む複素環式化合物ガスを用いるほか、炭素環式化合物ガスと混合して、Si(CH[TMS]、Si(CHH、Si(CH、Si(CH)H、SiH、SiCl、SiH等の珪素化合物ガスを用いてもよい。特に、TMSは空気中で化学的に安定であり、取り扱いが容易であり好適である。
窒素を含む非晶質炭素膜を形成する場合には、反応ガスとして、CspとNとを含む複素環式化合物ガスを用いるほか、炭素環式化合物ガスと混合して、窒素ガスの他、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン等の窒素化合物ガスを用いてもよい。
また、反応ガスとともに、キャリアガスを導入してもよい。キャリアガスを使用する場合には、反応ガスおよびキャリアガスにより薄膜形成雰囲気が形成される。キャリアガスとしては、上述したように、水素ガス、アルゴンガス等を用いればよい。反応ガスおよびキャリアガスは、得られる非晶質炭素膜の組成が所望の組成となるよう、その種類、流量比を適宜選択すればよい。たとえば、キャリアガスを1〜1000sccm(standard cc /min)、上記炭素環式化合物ガスを1〜500sccm、上記複素環式化合物を1〜500sccm、珪素化合物ガス、窒素ガスおよび窒素化合物ガスから選ばれる一種以上を0.1〜100sccmとすると好適である。
薄膜形成雰囲気の圧力は、1Pa以上1300Pa以下とする。100Pa以上1000Pa以下さらには300Pa以上800Pa以下とすると好適である。成膜圧力を高くすると、反応ガスの濃度が高くなる。よって、成膜速度が大きく、実用的な速さで厚膜を形成することができる。
非晶質炭素膜の成膜中の基材の表面温度(成膜温度)に特に限定はないが、450℃以上、500℃以上さらには550℃以上が望ましい。成膜温度が高いほど、非晶質炭素膜に含まれる水素の含有量が低減され、導電性が向上する。しかしながら、成膜温度が高すぎると、膜の緻密さが低下して基材が腐食しやすくなる。そのうえ、基材の成分と炭素との反応物が、基材と非晶質炭素膜との界面に生成されることがある。たとえば、チタン製の基材であれば、界面にTiCが生成される。TiCは腐食されやすいため、得られる導電性部材の耐食性が低下することがある。したがって、成膜温度は、700℃以下が望ましい。水素含有量が大幅に低減された非晶質炭素膜を得たい場合には、成膜温度を600℃以上さらには625℃以上とするのが望ましい。
また、放電の際の電圧に特に限定はないが、200V以上さらには250V以上が望ましい。成膜温度が450℃以上さらには500℃以上であれば、500V以下さらには400V以下の電圧で放電を行っても、成膜される非晶質炭素膜の水素含有量が低減される。一方、電圧が高いほど、反応ガスの分解が進みやすいため、非晶質炭素膜に含まれる水素の含有量が低減される。したがって、成膜温度が500℃未満さらには450℃未満であっても、1000V以上さらには2000V以上の高電圧で放電を行えば、非晶質炭素膜の水素含有量は低減される。特に、反応ガスに含窒素芳香族化合物が含まれる場合には、1000V以上さらには2000V以上で放電を行うことにより、非晶質炭素膜の水素含有量が低減されるとともに窒素の添加によって導電性が向上する。また、このような条件で作製された非晶質炭素膜は、硬く緻密で欠陥が少ない。
[非晶質炭素膜を備えた導電性部材]
本発明の導電性部材は、基材と、該基材の少なくとも一部に形成された上記本発明の非晶質炭素膜と、からなる。
基材については、[非晶質炭素膜の形成方法]の欄で既に述べた通りである。非晶質炭素膜は、導電性をもたない基材の表面に形成することで非晶質炭素膜が形成された部分に導電性をもたせる、あるいは、導電性を有する基材の表面に形成することにより基材が有する導電性を阻害することなく基材に耐食性、耐摩耗性、固体潤滑性などを付与する、ことが可能である。たとえば、本発明の導電性部材は、非晶質炭素膜が有する導電性と耐食性とを活かし、後に詳説する燃料電池用セパレータの他、めっき用電極や電池電極などの各種電極材料として用いることができる。また、本発明の導電性部材は、非晶質炭素膜が有する導電性と摺動性とを活かし、スイッチ接点、キー接点、摺動接点などの接点部材の他、プラグ電極などに用いることができる。
[燃料電池用セパレータ]
本発明の燃料電池用セパレータは、金属製の基材と、基材の少なくとも電極に対向する表面を覆う非晶質炭素膜と、からなる。燃料電池のセパレータは、通常、固体電解質に積層された電極に一部が接触する表面を有し、電極との間にガス流路を区画形成する。上記本発明の非晶質炭素膜が、金属製の基材の表面に被覆されることで、燃料電池用セパレータとして必要とされる導電性および耐食性が発揮される。
本発明の燃料電池用セパレータは、一般的な燃料電池に適用可能である。一般的な燃料電池は、固体電解質とそれを両側から挟持する一対の電極とから構成される単電池をもつ。電極は、金属触媒を担持した炭素粉末を主成分とし高分子電解質膜の表面に形成される触媒層と、この触媒層の外面に位置し通気性および導電性をもつガス拡散層と、からなる。触媒層を構成する炭素粉末には、白金、ニッケル、パラジウム等の触媒が担持されている。また、ガス拡散層としては、カーボン繊維を用いた織布(カーボンクロス)や不織布(カーボンペーパー)が通常用いられる。
セパレータの基材は、導電性を有する低電気抵抗(体積抵抗率で10−3Ω・cm以下程度)の金属材料からなるのが好ましい。また、耐食性の高い金属材料からなるのが好ましい。さらに、ガスを透過させ難い材質であるとよい。金属材料として具体的には、純チタンまたはチタン合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金、銅または銅合金、ステンレス鋼、高速度鋼、ニッケル合金等が挙げられる。基材の形状は、燃料電池の仕様に応じて適宜選択すればよい。
基材に被覆される非晶質炭素膜としては、既に説明した本発明の非晶質炭素膜を用いるのがよく、導電性とともに耐食性にも優れたセパレータが構成される。特に、非晶質炭素膜全体を100at%としたとき水素の含有量が20at%未満である本発明の非晶質炭素膜は、非晶質炭素膜の体積抵抗率が低く(10−1Ω・cm以下)、接触抵抗も低いため、本発明の燃料電池用セパレータに好適である。特に、含窒素芳香族化合物を含む反応ガスを用いて1000V以上さらには2000V以上の電圧で放電を行うプラズマCVD法により成膜された窒素を含有する非晶質炭素膜は、導電性に優れるとともに、硬くて緻密で欠陥が少ない。このような非晶質炭素膜を有する燃料電池用セパレータは、導電性とともに耐食性にも優れる。
なお、本明細書において、非晶質炭素膜の緻密さは、非晶質炭素膜の硬度で評価する。非晶質炭素膜の硬度の値は、ナノインデンター試験機(ハイジトロン社製トライボスコープ)による測定値を採用する。硬い非晶質炭素膜は緻密で欠陥が少ないため、非晶質炭素膜により覆われる基材の表面の腐食が効果的に抑制される。燃料電池用セパレータに好適な非晶質炭素膜の硬度は、3GPa以上、5GPa以上さらには10GPa以上である。非晶質炭素膜の硬度の上限は、30GPa以下であるのが実用的である。
また、非晶質炭素膜の膜厚に特に限定はないが、厚膜である方が高い耐食性を発揮する。したがって、非晶質炭素膜の膜厚は、1nm以上さらには10nm以上とするのが好ましい。しかしながら、硬く緻密な非晶質炭素膜は、厚くなる程、剥離や亀裂の発生が生じることがあるため、膜厚を20μm以下さらには10μm以下とするのが好ましい。
以上、本発明の非晶質炭素膜、非晶質炭素膜の形成方法、非晶質炭素膜を備えた導電性部材および燃料電池用セパレータの実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、本発明の燃料電池用セパレータにおける非晶質硬質炭素膜の態様、被覆箇所、およびセパレータの形状などについては、適宜採用することができる。
上記実施形態に基づいて、基材の表面に種々の非晶質炭素膜を成膜して導電性部材を作製した。はじめに、導電性部材の作製に用いた直流プラズマCVD成膜装置(「PCVD成膜装置」と略記)と非晶質炭素膜の成膜手順を、図2を用いて説明する。
[PCVD成膜装置および非晶質炭素膜成膜手順]
図2に示すように、PCVD成膜装置9は、ステンレス鋼製のチャンバー90と、基台91と、ガス導入管92と、ガス導出管93とを備える。ガス導入管92は、バルブ(図略)を介して各種ガスボンベ(図略)に接続される。ガス導出管93は、バルブ(図略)を介してロータリーポンプ(図略)および拡散ポンプ(図略)に接続される。
基材100は、チャンバー90内に設置された基台91の上に配置される。基材100を配置したら、チャンバー90を密閉し、ガス導出管93に接続されたロータリーポンプおよび拡散ポンプにより、チャンバー90内のガスを排気する。
基材100に非晶質炭素膜を形成する際には、はじめに、チャンバー90内にガス導入管92から水素ガスとアルゴンとを導入する。以下の実施例等では、水素ガスを30sccm、アルゴンガスを30sccm導入し、ガス圧を約450Paとした。その後、チャンバー90の内側に設けたステンレス鋼製陽極板94と基台91との間に直流電圧を印加すると、放電が開始する。以下の実施例等では、400Vの直流電圧を印加し、イオン衝撃により基材100の温度を所定の成膜温度まで昇温させた。次に、ガス導入管92から、水素ガスおよびアルゴンガスに加え、反応ガスとしてメタンガス、ベンゼンガス、トルエンガスおよびピリジンガスのいずれか1種、必要に応じてTMSガスまたは窒素ガスを所定の流量で導入する。その後、チャンバー90の内側に設けたステンレス鋼製陽極板94と基台91との間に所定の電力を印加すると、放電95が開始し、基材100の表面に非晶質炭素膜が形成される。
[導電部材の作製および評価I]
下記の実施例等では、反応ガスの流量および成膜温度を表1に記載の条件とし、非晶質炭素膜組成の異なる導電性部材を作製した。なお、非晶質炭素膜の他の成膜条件は、圧力:400〜533Pa、電圧:300〜500V(電流:0.5〜2A)、とした。成膜時間は、膜厚に応じて制御した。
Figure 0005217243
上記の手順で、基材(冷間圧延鋼板:SPCC)に膜厚3μmの非晶質炭素膜を成膜し、導電性部材#11〜#17、#01および#C1〜#C3を作製した。各導電性部材の非晶質炭素膜の膜組成の測定結果を表2に示す。非晶質炭素膜中のC、NおよびSi含有量は、電子プローブ微小部分析法(EPMA)、X線光電子分光法(XPS)、オージェ電子分光法(AES)、ラザフォード後方散乱法(RBS)により定量した。また、H含有量は、弾性反跳粒子検出法(ERDA)により定量した。ERDAは、2MeVのヘリウムイオンビームを膜表面に照射して、膜からはじき出される水素を半導体検出器により検出し、膜中の水素濃度を測定する方法である。また、Csp量およびCsp量は、既に詳説したNMRスペクトルにより定量した。
これらのうち、実施例1(#11)、実施例2(#12)、実施例4(#14)および実施例5(#15)は、成膜された非晶質炭素膜中のH含有量が26at%または28at%であった。したがって、実施例1(#11)、実施例2(#12)、実施例4(#14)および実施例5(#15)は、H含有量が25at%を超える“参考例”の非晶質炭素膜であった。
Figure 0005217243
また、導電性部材#15、#16および#C3が有する非晶質炭素膜についてX線回折(XRD)測定を行った。XRD測定は、基材に成膜された非晶質炭素膜を粉末状態で採取して作製した粉末試料をXRD装置により測定した。測定結果の一例として、導電性部材#15が有する非晶質炭素膜のX線回折パターンを図3に示す。回折角2θが18°および42°付近に、グラファイトの(002)面および(101)面に相当する回折ピークが出現した。これらのピークはブロードなハローパターンであったことから、導電性部材#15が有する非晶質炭素膜は、長距離秩序性が無く結晶構造をもたない非晶質の炭素膜であることが確認された。導電部材#16および#C3が有する非晶質炭素膜についても、ハローパターンが出現し、結晶構造をもたない非晶質の炭素膜であることが確認された。これらのXRDパターンに基づき、ブラッグの式から算出された(002)面の平均面間隔を、表3に示す。
Figure 0005217243
[体積抵抗率の測定]
一般的に、基材の表面に成膜された薄膜の電気抵抗の測定には、二端子法、四探針法、四端子法といった方法が用いられている。二端子法では、2点間の電圧降下を測定するが、電極−薄膜間の接触抵抗も含まれるため、薄膜の体積抵抗率が正確に測定できない。このため、接触抵抗の影響を受けない四探針法(JIS K 7194、JIS R 1637)や四端子法(ISO 3915)が提唱されている。そのため、各導電性部材が有する非晶質炭素膜の抵抗測定には、四探針法を用いた。
また、上記の導電性部材において、基材の体積抵抗率は、非晶質炭素膜よりも低い。そのため、このままの状態で抵抗測定を行うと、基材側にも電流が流れ、非晶質炭素膜の体積抵抗が低く測定される。そこで、非晶質炭素膜そのものの体積抵抗率を測定するために、各導電性部材に対して以下の処理を行った(図4)。
図4において、導電性部材10は、基材100と、基材100の表面に成膜された非晶質炭素膜101と、からなる。はじめに、ガラス板200の表面と導電性部材10の非晶質炭素膜101の表面とを接着剤201で接着し、接合体20を作製した。接着剤201が十分に乾燥した後、接合体20をエッチング溶液Sに浸漬し、基材100をエッチングして、ガラス板200の表面に非晶質炭素膜101が固定された試験片20’を得た。ここで、ガラス板200および用いた接着剤201からなる接着層201’の体積抵抗率は1014Ω・cm程度で、絶縁性を示した。したがって、試験片20’を用いて抵抗測定を行えば、非晶質炭素膜の正確な体積抵抗率が得られる。試験片20’は、純水で洗浄後、非晶質炭素膜101の表面をXPS分析に供し、鉄などの基材成分が残留していないこと、炭素の構造変化が起きていないこと、を確認した。また、走査電子顕微鏡により、非晶質炭素膜101にクラックが存在しないことを確認した。得られた試験片20’を用い、100mA〜0.1μAの電流を印加して、非晶質炭素膜101の体積抵抗率を四探針法により測定した。測定結果を表面抵抗率とともに表4に示す。
なお、接着剤201にはα―シアノアクリレート系接着剤、エッチング溶液Sには塩化第2鉄溶液を用いた。また、四探針プローブPを具備する抵抗測定装置(三菱化学株式会社製ロレスタ−GP)を使用した。
Figure 0005217243
なお、導電部材#C1は、非晶質炭素膜の抵抗が高いため、表4における#C1の抵抗率は、基材に成膜されたままの状態の非晶質炭素膜を定電圧印加法(JIS K 6911)で測定した値である。
500〜600℃の高い成膜温度で非晶質炭素膜が成膜された#11〜#17および#01は、非晶質炭素膜のH含有量が30at%以下に低減された。H含有量の低減効果は、成膜温度が高いほど顕著であった。たとえば、#11〜#13および#C2からなるグループ、#15、#16および#C3からなるグループは、非晶質炭素膜の成膜条件のうち、成膜温度が異なるが、成膜温度が高いほど、非晶質炭素膜のH含有量は大きく低減された。
また、メタン(CH)を含む反応ガスを用いて成膜された非晶質炭素膜をもつ#C1では、Csp量が64at%と少なかった。一方、炭素環式化合物であるベンゼンまたはトルエンを含む反応ガスを用いて非晶質炭素膜が成膜された#C1以外の導電部材では、いずれもCsp量が75at%以上であった。
#11〜#17および#01は、H含有量を30at%以下とすることでC−H結合(σ結合)が減少して分子の終端化が抑制されるとともに、膜中のCsp量が70at%以上であるため、π電子の非局在化が促進され、優れた導電性を示した。なかでも、H含有量が少なく(15at%)Csp量が多い(85at%)#13は、π電子が大きく増加することで、抵抗率が非常に小さく(体積抵抗率:6.2×10−2Ω・cm)なった。
一方、H含有量が30at%を超える#C1〜#C3では、多くのH原子がC原子とC−H結合(σ結合)を形成してσ電子が局在化するため、体積抵抗率が10Ω・cmを超えた。特に、Si含有量が高い#C1では、Si原子がsp混成軌道を有するため、H原子とσ結合を形成し、σ電子が局在化されるため、抵抗率がさらに高くなった。
非晶質炭素膜中にNを含む#14は、N原子がn型ドナーとして働くため、窒素ガスの有無の他は同様の条件で成膜された非晶質炭素膜を有する#11よりも低い抵抗率を示した。
また、#17および#01はSiを含むが、Si含有量を5at%以下に抑えたため、導電性に大きな影響がなかった。Si含有量が1at%未満である#17は、Si含有量が3at%である#01よりも導電性に優れた。
体積抵抗率が10Ω・cm以下である#15および#16は、(002)面の平均面間隔が0.5nm以下であった。一方、高い体積抵抗率を示した#C3は、(002)面の平均面間隔が0.5nmを超えた。これは、面間隔が狭くなることにより、面間でのπ電子の相互作用が増大することに起因する。
[導電部材の作製および評価II]
次に、反応ガスの流量、成膜電圧および成膜温度を表5に記載の条件とし、非晶質炭素膜組成の異なる導電性部材を作製した。なお、成膜圧力:1〜1000Pa、成膜時の電圧:200〜2500V、電流:0.1〜10Aとした。また、成膜時間は、膜厚に応じて制御した。
Figure 0005217243
前述の[導電部材の作製I]と同様の手順で、基材(冷間圧延鋼板:SPCC)に膜厚3μmの非晶質炭素膜を成膜し、導電性部材#21、#22、#24〜#30および#02を作製した。なお、#23は、前述の#13と同様の試料である。各導電性部材の非晶質炭素膜の膜組成の測定結果を表6に示す。非晶質炭素膜中のC、NおよびSi含有量は、EPMA、XPS、AESおよびRBSにより定量した。また、H含有量は、ERDAにより定量した。また、Csp量およびCsp量は、既に詳説したNMRスペクトルより定量した。
Figure 0005217243
各導電性部材から上記と同様の手順で試験片を作製して、導電性部材#21〜#30、#02および#C1、C2がもつ非晶質炭素膜の体積抵抗率を測定した。また、各導電性部材と、燃料電池用セパレータにおいてガス拡散層を構成するカーボンペーパーと、の接触抵抗を測定した。
接触抵抗の測定は、図5に示すように、導電性部材10の非晶質炭素膜上にカーボンペーパー31を載置し、2枚の銅板32により挟持した。銅板32は、導電性部材10およびカーボンペーパー31に接触する接触面が金めっきされたものを用いた。このとき、導電性部材10の非晶質炭素膜とカーボンペーパー31とが接触する接触面の面積は、2cm×2cmであった。2枚の銅板32には、ロードセルにより1.47MPaの荷重が、接触面に対して垂直に負荷された。この状態で、2枚の銅板32の間に低電流DC電源により1Aの直流電流を流した。荷重負荷の開始から60秒後における導電性部材10とカーボンペーパー31との電位差を測定して電気抵抗値を算出し、これを接触抵抗値とした。
各導電性部材の非晶質炭素膜の体積抵抗および接触抵抗の測定結果を表7に示す。
Figure 0005217243
#21〜#30および#02は、500〜650℃の高い成膜温度で非晶質炭素膜が成膜された導電性部材、あるいは、2000V以上の電圧で非晶質炭素膜が成膜された導電部材である。これらの導電性部材では、非晶質炭素膜のH含有量が30at%以下に低減された。#21〜#30および#02の各導電部材においても、高い温度で成膜された非晶質炭素膜ほど、H含有量が少ない傾向にあった。なお、#23は、600℃で成膜された非晶質炭素膜をもつが、650℃で成膜された非晶質炭素膜をもつ#25の非晶質炭素膜よりもH含有量が低減された。これは、成膜に用いた直流電源装置が異なったためであると考えられる。また、#22、#26、#27および#30のように、成膜温度が400℃であっても、2000V以上の高電圧で非晶質炭素膜を成膜することにより、非晶質炭素膜のH含有量が低減された。
また、メタン(CH)を含む反応ガスを用いて非晶質炭素膜が成膜された#C1では、Csp量が64at%と少なかった。一方、ベンゼンまたはピリジンを含む反応ガスを用いて非晶質炭素膜が成膜された#C1以外の導電部材では、いずれもCsp量が80at%以上であった。
H含有量が20at%未満の非晶質炭素膜をもつ#23〜#30では、体積抵抗値、接触抵抗値ともに低い値を示し、導電性に優れた。特に、H含有量が18at%未満の非晶質炭素膜をもつ#23、#25〜#27および#30では、さらに低い体積抵抗値とともに低い接触抵抗値を示した。
ピリジンを含む反応ガスを用いて成膜された非晶質炭素膜をもつ#22、#26、#27、#29および#30は、Csp量が95%以上であり、ベンゼンおよび窒素を含む反応ガスを用いて成膜された非晶質炭素膜をもつ#14(表1)よりも優れた体積抵抗率を有した。ピリジンを含む反応ガスを用いたことで、Cspを多く含む非晶質炭素膜が成膜された。また、#26、#27および#30は、特に優れた導電性を示した。H含有量が20at%未満さらには18at%未満でN含有量が4at%以上7at%以下であれば#26、#27および#30と同程度の導電性を有すると推測できる。
#28〜#30および#02はSiを含むが、非晶質炭素膜のSi含有量を5at%以下に抑えたため、導電性に大きな影響がなかった。Si含有量が1at%未満である#28は、Si含有量が3at%である#02よりも導電性に優れた。H含有量が20at%未満さらには18at%未満でSi含有量が0.7at%以上1at%未満であれば#28〜#30と同程度の導電性を有すると推測できる。
[導電部材の作製および評価III]
セパレータとして一般に用いられている純チタンからなる試験片A0、ステンレス鋼(SUS316L;JIS規格)からなる試験片B0およびグラファイト(東海カーボン株式会社製燃料電池用セパレータ材)からなる試験片C0、ならびに、純チタンに導電性部材#21および#25〜#27のいずれかと同じ膜組成をもつ非晶質炭素膜を成膜した試験片A1〜A6を作製した。それぞれの試験片の基材の種類、試験片A1〜A6については基材に形成された非晶質炭素膜の種類および膜厚を表8に示す。これらの試験片について硬度測定および腐食試験を行い、燃料電池用セパレータとしての特性を評価した。
硬度の測定は、上述のナノインデンター試験機により行った。ナノインデンター試験機を用いることで、基材の硬さの影響を受けることなく、非晶質炭素膜そのものの硬度を測定することができる。測定結果を表8に示す。
腐食試験は、図6に示すように、内径34mmφで高さ30mmの収容空間51をもつ測定セル50を用いた。収容空間51は、軸方向の両端部が開口しており、下端部には試験片10(導電性部材10)を測定セル50に固定するための固定板52を有する。また、収容空間51の上端部には、参照電極E1および対極E2が固定された蓋体53を有する。棒状の参照電極E1は、内面側に対極E2が取り付けられた蓋体53を貫通して固定されている。
腐食電流を測定するために、試験片10が固定された測定セル50の収容空間51に電解液Lを満たした。電解液Lの調製は、pH2〜4の希硫酸にClおよびFを試験条件に応じて添加して行った。次に、ともに白金(Pt)からなる参照電極E1および対極E2を準備し、蓋体53に固定するとともに収容空間51の上端部に蓋をした。このとき、参照電極E1および対極E2は、電解液Lに浸漬した。電解液の温度を80℃に保持するとともに、E1と試験片10との間に0.26V(対Pt;水素標準電極に対しては1V)の電圧を印可した状態でE2と試験片10との間の腐食電流を測定した。腐食試験条件(電解液LのpHおよびClおよびFの濃度、試験時間)および平均腐食電流値を表8に示す。
上記腐食試験後の接触抵抗値を測定した。測定方法は、既に述べた方法と同様にした。測定結果を腐食試験前の接触抵抗値とともに表8に示す。また、腐食試験後の電解液Lの金属イオン濃度を誘導結合高周波プラズマ分光分析(ICP)により測定した。得られたチタンの溶出量を表8に示す。さらに、腐食試験の前後の試験片の質量を、0.01mgまで測定可能な天秤で測定した。腐食試験前後の質量変化量を表8に示す。
Figure 0005217243
金属材料の中でも耐食性の高い純チタン(試験片A0)およびSUS316L(試験片B0)は、平均腐食電流値は小さいものの、腐食試験の初期の段階で大きな腐食電流が流れ、その後、不働態化するため、腐食試験後の接触抵抗値が高くなった。一方、市販のセパレータ材であるグラファイト(試験片C0)は、平均腐食電流値が試験片A0およびB0よりも大きいが、腐食試験前後の接触抵抗値は小さく、値の変化もなかった。
純チタン製の基材に非晶質炭素を被覆した試験片A1〜A6では、腐食試験前後で質量変化はほとんど無かった。試験片C0と試験片A1〜A6とは、同じ炭素材料であるが、試験片A1〜A6は非晶質であるため、粒界腐食を受け難いと思われる。また、試験片A1〜A6はグラファイトにはないCspによる三次元的なC−C結合、試験片A3〜A6は更に強固なC−N結合を有するため、非晶質炭素膜そのものも極めて腐食を受けにくかった。
試験片A1は、導電性をもつ非晶質炭素膜を有する試験片であるが、膜の硬度が3GPa未満であることから、十分に緻密な膜ではなく、電解液が基材の表面に到達しやすかったと考えられる。その結果、基材の腐食が生じ、絶縁層が形成されて導電パスが減少して、腐食試験後の接触抵抗値が増大した。また、電解液へのチタンの溶出量も多かった。したがって、試験片A1は、燃料電池用セパレータとしての特性は、不十分であった。
試験片A2〜A6は、腐食試験前後の接触抵抗値およびその変化量は小さく、平均腐食電流も0.7μA/cm以下でほとんど流れなかった。また、チタンの溶出量は、検出限界値以下であり、腐食試験前後の質量変化もなかった。すなわち、試験片A2〜A6は、燃料電池用セパレータとして十分な特性を示した。また、試験片A1〜A6の評価結果から、燃料電池用セパレータには、本発明の非晶質炭素膜のなかでも10−1Ω・cm以下の体積抵抗率をもつ非晶質炭素膜が好適であることがわかった。
試験片A3およびA4は、特に優れた導電性をもつ非晶質炭素膜を有する試験片であり、電解液の種類または試験時間の点で厳しい腐食条件下においても、極めて優れた耐食性を示した。試験片A3およびA4は、平均腐食電流がグラファイト(試験片C0)よりも流れにくく、非晶質炭素膜そのものも極めて腐食を受けにくかった。また、試験片A3およびA4は、非常に硬く緻密で欠陥の少ない非晶質炭素膜を有した。そのため、基材の腐食もほとんど発生しなかった。試験片A3およびA4がもつ非晶質炭素膜の硬度の測定結果より、10GPa以上18GPa以下の硬度をもつ非晶質炭素膜であれば、セパレータに好適であると推測される。
試験片A5は、膜厚が0.1μmで非常に薄いが、平均腐食電流は0.2μA/cmでほとんど流れず、試験片A3およびA4と同程度の高い耐食性を示した。試験片A6は、表8の全ての試験片のうちで最も平均腐食電流の値が小さく、腐食試験前後の接触抵抗値およびその変化量も小さく、耐食性に優れた。非晶質炭素膜と基材との界面付近での非晶質炭素膜の密度が向上し、基材からのイオンの溶出が抑制されたからだと推測できる。
また、試験片A1〜A6から非晶質炭素膜を取り除いた基材をXRD測定に供した結果、腐食試験前後で類似のピークが検出された。したがって、純チタン製基材のTiO量は、試験の前後でほとんど変化がなかった。
さらに、表5〜表7の導電性部材#24、#26、#27および#30が有する非晶質炭素膜を粉末状で採取してXRD測定を行った。XRD測定によれば、全ての試料でハローパターンが出現し、非晶質の炭素膜であることが確認された。これらのXRDパターンに基づき、ブラッグの式から算出された(002)面の平均面間隔を、表9に示す。
Figure 0005217243
導電性部材#24、#26、#27および#30は、その体積抵抗率がいずれも10−2Ω・cmオーダーで、高い導電性をもつ。(002)面の平均面間隔は、いずれの非晶質炭素膜においても、グラファイトの(002)面の平均面間隔(0.34nm)に近い値であった。
[摺動部材の作製および評価]
直径30mm厚さ3mm表面粗さRzjis0.1μm以下のディスク形状のステンレス鋼(SUS440C;JIS規格)からなる試験片B0’および試験片B0’に導電性部材#27または#30と同じ膜組成をもつ非晶質炭素膜を成膜した試験片B1およびB2を準備した。それぞれの試験片の基材の種類、試験片B1およびB2については基材に形成された非晶質炭素膜の種類ならびに膜厚を表10に示す。これらの試験片について大気中、無潤滑下でボールオンディスク試験を行い、摩擦係数、摩耗幅および摩耗深さを測定し、摺動部材としての摩擦摩耗特性を評価した。
図7に、ボールオンディスク試験装置の概略図を示す。図7に示すように、ボールオンディスク試験装置は、ディスク試験片である試験片10と、先端部にボール71をもつ相手材7とから構成される。試験片10とボール71とは、試験片10に形成された非晶質炭素膜とボール71とが当接する状態で設置される。ボール71は、直径6.35mmの軸受け鋼SUJ2ボール(Hv750〜800、表面粗さRzjis0.1μm以下)である。
まず、無負荷の状態で試験片10を回転させた後、ボール71の上から10Nの荷重をかけた。そして、試験片10とボール71とを摺動速度0.2m/sで60分間摺動させた後、摩擦係数、摩耗幅および摩耗深さを測定した。なお、摺動時の実面圧は約1.3GPaであった。表10に、試験片B0’、B1およびB2の摩擦係数、摩耗幅および摩耗深さの測定結果を示す。
Figure 0005217243
B1およびB2の結果より、#27および#30の非晶質炭素膜を成膜することで、摩擦係数が低くなり、耐摩耗性が向上することがわかった。Cspによる強固なC=C結合(147kcal/mol)により、非晶質炭素膜の剪断応力が増加したためと考えられる。これらの非晶質炭素膜は高い導電性を有するので、耐摩耗性の必要な接点材料としての利用が有望である。
非晶質炭素膜の13CNMRスペクトルの一例である。 直流プラズマCVD成膜装置の概略図である。 導電性部材#15が有する非晶質炭素膜のX線回折パターンを示す。 体積抵抗率の測定に用いられる試験片の作製手順を説明する模式図である。 導電部材とカーボンペーパーとの接触抵抗を測定するための装置構成を模式的に示す断面図である。 腐食試験に用いられる測定装置を模式的に示す断面図である。 ボールオンディスク試験装置の概略図である。 単セルの固体高分子型燃料電池の一例を模式的に示す断面図である。
符号の説明
100:基材 101:非晶質炭素膜
10:導電性部材
1:単電池
1a:電解質膜 1b:空気極 1c:燃料極
2:セパレータ

Claims (25)

  1. 炭素と水素とからなる非晶質炭素膜であって、水素を25at%以下(0at%を除く)含み、かつ、該炭素の全体量を100at%としたときに、sp混成軌道をもつ炭素量が75at%以上100at%未満であることを特徴とする非晶質炭素膜。
  2. さらに、窒素を20at%以下(0at%を除く)含む請求項1記載の非晶質炭素膜。
  3. さらに、珪素を5at%以下(0at%を除く)含む請求項2記載の非晶質炭素膜。
  4. 炭素と水素と珪素とからなる非晶質炭素膜であって、水素を25at%以下(0at%を除く)、珪素を1at%未満(0at%を除く)含み、かつ、該炭素の全体量を100at%としたときに、sp混成軌道をもつ炭素量が75at%以上100at%未満であることを特徴とする非晶質炭素膜。
  5. 水素の含有量が20at%未満である請求項1または4記載の非晶質炭素膜。
  6. 珪素の含有量が1at%未満である請求項3記載の非晶質炭素膜。
  7. さらに、酸素を3at%以下含む請求項1または4記載の非晶質炭素膜。
  8. (002)面の平均面間隔が0.34〜0.50nmである請求項1または4記載の非晶質炭素膜。
  9. 体積抵抗率が10Ω・cm以下である請求項1または4記載の非晶質炭素膜。
  10. 体積抵抗率が10−1Ω・cm以下である請求項9記載の非晶質炭素膜。
  11. プラズマCVD法により、基材の表面に請求項1〜10のいずれかに記載の非晶質炭素膜を形成する非晶質炭素膜の形成方法であって、
    前記基材を反応容器内に配置し、該反応容器内に、sp混成軌道をもつ炭素を含む炭素環式化合物ガスならびにsp混成軌道をもつ炭素と珪素および/または窒素とを含む複素環式化合物ガスから選ばれる一種以上を含む反応ガスを導入して放電することを特徴とする非晶質炭素膜の形成方法。
  12. 前記炭素環式化合物ガスの炭素環式化合物は、芳香族炭化水素化合物である請求項11記載の非晶質炭素膜の形成方法。
  13. 前記芳香族炭化水素化合物は、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびナフタレンから選ばれる一種以上である請求項12記載の非晶質炭素膜の形成方法。
  14. 前記複素環式化合物ガスの複素環式化合物は、窒素を含む含窒素複素環式化合物である請求項11記載の非晶質炭素膜の形成方法。
  15. 前記含窒素複素環式化合物は、ピリジン、ピラジンおよびピロールから選ばれる一種以上である請求項14記載の非晶質炭素膜の形成方法。
  16. 前記基材の温度は500℃以上である請求項11記載の非晶質炭素膜の形成方法。
  17. 前記基材の温度は600℃以上である請求項16記載の非晶質炭素膜の形成方法。
  18. 1000V以上で放電を行う請求項11記載の非晶質炭素膜の形成方法。
  19. 2000V以上で放電を行う請求項18記載の非晶質炭素膜の形成方法。
  20. 前記反応ガスは含窒素芳香族化合物を含み、2000V以上で放電を行う請求項11記載の非晶質炭素膜の形成方法。
  21. 基材と、該基材の少なくとも一部に形成された請求項1〜10のいずれかに記載の非晶質炭素膜と、からなることを特徴とする非晶質炭素膜を備えた導電性部材。
  22. 金属製の基材と、該基材の少なくとも電極に対向する表面を覆う非晶質炭素膜と、からなる燃料電池用セパレータであって、
    前記非晶質炭素膜は、請求項1、2または4記載の非晶質炭素膜であることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
  23. 前記非晶質炭素膜は、該非晶質炭素膜全体を100at%としたときの水素の含有量が20at%未満である請求項22記載の燃料電池用セパレータ。
  24. 前記非晶質炭素膜は、該非晶質炭素膜全体を100at%としたときの珪素の含有量が1at%未満である請求項22記載の燃料電池用セパレータ。
  25. 前記非晶質炭素膜は、その体積抵抗率が10−1Ω・cm以下である請求項22記載の燃料電池用セパレータ。
JP2007135777A 2006-05-22 2007-05-22 非晶質炭素膜、非晶質炭素膜の形成方法、非晶質炭素膜を備えた導電性部材および燃料電池用セパレータ Active JP5217243B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007135777A JP5217243B2 (ja) 2006-05-22 2007-05-22 非晶質炭素膜、非晶質炭素膜の形成方法、非晶質炭素膜を備えた導電性部材および燃料電池用セパレータ

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006141687 2006-05-22
JP2006141687 2006-05-22
JP2007135777A JP5217243B2 (ja) 2006-05-22 2007-05-22 非晶質炭素膜、非晶質炭素膜の形成方法、非晶質炭素膜を備えた導電性部材および燃料電池用セパレータ

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2008004540A JP2008004540A (ja) 2008-01-10
JP2008004540A5 JP2008004540A5 (ja) 2009-08-20
JP5217243B2 true JP5217243B2 (ja) 2013-06-19

Family

ID=39008737

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007135777A Active JP5217243B2 (ja) 2006-05-22 2007-05-22 非晶質炭素膜、非晶質炭素膜の形成方法、非晶質炭素膜を備えた導電性部材および燃料電池用セパレータ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5217243B2 (ja)

Families Citing this family (25)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5198114B2 (ja) * 2008-03-27 2013-05-15 日本碍子株式会社 アモルファス炭素成膜方法
JP5353205B2 (ja) * 2008-11-27 2013-11-27 日産自動車株式会社 導電部材、その製造方法、ならびにこれを用いた燃料電池用セパレータおよび固体高分子形燃料電池
JP5332554B2 (ja) * 2008-11-27 2013-11-06 日産自動車株式会社 燃料電池用ガス拡散層及びその製造方法、並びにこれを用いた燃料電池
JP5287180B2 (ja) * 2008-11-27 2013-09-11 日産自動車株式会社 積層構造体、その製造方法、ならびにこれを用いた燃料電池
CA2750783C (en) * 2008-11-25 2015-10-13 Nissan Motor Co., Ltd. Electrical conductive member and polymer electrolyte fuel cell using the same
JP5439965B2 (ja) * 2008-11-25 2014-03-12 日産自動車株式会社 導電部材、その製造方法、並びにこれを用いた燃料電池用セパレータおよび固体高分子形燃料電池
JP4825894B2 (ja) * 2009-04-15 2011-11-30 トヨタ自動車株式会社 燃料電池用セパレータおよびその製造方法
JP2010248572A (ja) * 2009-04-15 2010-11-04 Toyota Motor Corp チタン系材料、その製造方法及び燃料電池用セパレータ
JP5638231B2 (ja) * 2009-11-30 2014-12-10 他曽宏 杉江 導電性炭素皮膜の形成方法
WO2011077755A1 (ja) * 2009-12-25 2011-06-30 トヨタ自動車株式会社 燃料電池用セパレータおよびその製造方法
JP5321576B2 (ja) * 2009-12-25 2013-10-23 株式会社豊田中央研究所 配向性非晶質炭素膜およびその形成方法
JP2011134653A (ja) * 2009-12-25 2011-07-07 Toyota Motor Corp 燃料電池用セパレータ、燃料電池用ガス流路層とこれらの製造方法
JP4886884B2 (ja) * 2010-07-20 2012-02-29 株式会社神戸製鋼所 チタン製燃料電池セパレータおよびその製造方法
JP5466136B2 (ja) * 2010-11-04 2014-04-09 トヨタ自動車株式会社 燃料電池用セパレータとその製造方法
JP2012174672A (ja) * 2011-02-24 2012-09-10 Toyota Motor Corp 燃料電池用セパレータ
JP5378552B2 (ja) * 2012-01-30 2013-12-25 株式会社豊田中央研究所 非晶質炭素膜、非晶質炭素膜の形成方法、非晶質炭素膜を備えた導電性部材および燃料電池用セパレータ
JP5894053B2 (ja) * 2012-10-12 2016-03-23 トヨタ自動車株式会社 燃料電池用セパレータの製造装置
JP2014167142A (ja) * 2013-02-28 2014-09-11 Tokyo Electron Ltd カーボン膜形成方法及びカーボン膜
JP5949798B2 (ja) * 2013-03-25 2016-07-13 住友大阪セメント株式会社 電極材料、電極材料の製造方法及び電極並びにリチウムイオン電池
JP5890367B2 (ja) 2013-09-24 2016-03-22 トヨタ自動車株式会社 燃料電池用セパレータ、燃料電池、及び、燃料電池用セパレータの製造方法
US20190153617A1 (en) * 2015-11-04 2019-05-23 National Institute Of Advanced Industrial Science And Technology Production Method and Production Device for Nitrogen Compound
US11192788B2 (en) * 2017-02-24 2021-12-07 National University Of Singapore Two-dimensional amorphous carbon coating and methods of growing and differentiating stem cells
JP2020061230A (ja) * 2018-10-05 2020-04-16 日鉄日新製鋼株式会社 ステンレス鋼、固体高分子形燃料電池用セパレータ及び固体高分子形燃料電池
CN114207756B (zh) * 2019-06-24 2023-06-09 帝伯爱尔株式会社 混合电容器
CN114597428B (zh) * 2022-03-10 2022-11-29 湖南金博氢能科技有限公司 柔韧性碳纸及其制备方法、气体扩散层和燃料电池

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005093172A (ja) * 2003-09-16 2005-04-07 Nippon Steel Corp 燃料電池用セパレータおよび燃料電池

Also Published As

Publication number Publication date
JP2008004540A (ja) 2008-01-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5217243B2 (ja) 非晶質炭素膜、非晶質炭素膜の形成方法、非晶質炭素膜を備えた導電性部材および燃料電池用セパレータ
EP2020400B1 (en) Amorphous carbon film, process for forming amorphous carbon film, conductive member provided with amorphous carbon film, and fuel cell separator
JP5420530B2 (ja) 燃料電池用セパレータおよびその製造方法
JP5321576B2 (ja) 配向性非晶質炭素膜およびその形成方法
JP5378552B2 (ja) 非晶質炭素膜、非晶質炭素膜の形成方法、非晶質炭素膜を備えた導電性部材および燃料電池用セパレータ
US8586262B2 (en) Titanium-based material, method of manufacturing titanium-based material, and fuel cell separator
JP7313577B2 (ja) 炭素被覆された水素燃料電池用双極板
Jia et al. Electronic conductive and corrosion mechanisms of dual nanostructure CuCr-doped hydrogenated carbon films for SS316L bipolar plates
Khun et al. Structure, scratch resistance and corrosion performance of nickel doped diamond-like carbon thin films
EP1231655A1 (en) Separator for solid polymer electrolytic fuel battery
Amin et al. Catalytic impact of alloyed Al on the corrosion behavior of Co 50 Ni 23 Ga 26 Al 1.0 magnetic shape memory alloy and catalysis applications for efficient electrochemical H 2 generation
KR101573178B1 (ko) 다층계면구조를 갖는 수처리용 DLC/Ti 전극 제조 방법
CN114447354B (zh) 一种用于金属极板的类金刚石复合涂层及其制备方法
Khun et al. Structure, adhesive strength and electrochemical performance of nitrogen doped diamond-like carbon thin films deposited via DC magnetron sputtering
TW201035359A (en) Metal material coated with carbon film
Hassan et al. Synthesis and performance of electroless Ni–P–TiCN composite coatings on Al substrate
KR101582446B1 (ko) 다층계면구조를 갖는 수처리용 DLC/Ti 전극 제조 방법
KR100867819B1 (ko) 연료전지용 금속분리판의 표면층 및 이의 형성방법
Laurila Hybrid carbon nanomaterials for electrochemical detection of biomolecules
Khun et al. Effect of Platinum and Ruthenium Incorporation on Voltammetric Behavior of Nitrogen Doped Diamond‐Like Carbon Thin Films

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20081024

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090708

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20111024

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20111215

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20121004

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20121203

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130205

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130218

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20160315

Year of fee payment: 3

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5217243

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20160315

Year of fee payment: 3