JP5216982B2 - 禁煙支援治療に有用な遺伝子多型 - Google Patents

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Description

本発明は、被験者の遺伝子多型に基づいて喫煙に関する被験者の傾向(例えば、ニコチン依存度の強弱、禁煙時のニコチン離脱症状の程度、禁煙維持の難易)を判定する方法に関するものである。本発明は、特に、禁煙支援治療をはじめとする禁煙指導において有用な技術を提供するものである。
日本における喫煙関連死亡数は、2000年のWHOの試算で114,200人に達し、今後もこの上昇傾向が続くと予想されている。このため、疾病予防対策として厚生労働省や医学関連団体の主導により禁煙が強く推進され、禁煙率の向上は重要な課題とされている。しかし、喫煙者の多くはタバコに含有されるニコチンの精神的、身体的依存性のため、禁煙に成功していない。
欧米では、すでに喫煙によるニコチン依存は、疾病として認識されており、米国精神医学会のDSM-IV (Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders) 「精神疾患の診断・統計マニュアル 」では、ニコチン使用障害で、『ニコチン依存』として分類されている。これらを受け、2005年に日本循環器学会など9学会の合同研究班により、日本初の診療指針「禁煙ガイドライン」が作成された。さらに2006年4月から、医師による禁煙指導は、公的医療保険の給付対象となることが決定した。これらの対策は、薬物依存の観点から、行動科学・薬理学の裏付けのある禁煙支援プログラムの開発と普及を図り、保健医療の現場における保健指導や禁煙指導を充実させ、より一層の禁煙達成率の上昇を目標にしている。科学的根拠に基づく禁煙支援の構築は、これらの禁煙対策の推進に重要な一助となる。
こうした中、本発明者らは、薬物代謝酵素CYP2A6の遺伝子多型によるニコチン動態の個人差が喫煙習慣、ニコチン依存度ならびに禁煙時の離脱症状に影響を与えることを報告した(非特許文献1)。そして、この結果から、CYP2A6遺伝子多型情報が、喫煙者個人が自らの喫煙習慣やニコチン依存度を理解する上での指標となり、禁煙時の離脱症状の予測にも有用である可能性が示唆された。
Pharmacogenomics J. 2006 Mar-Apr;6(2):115-9
本発明の課題は、効果的で科学的根拠に基づく禁煙支援の実施に向けて、喫煙習慣および禁煙に関する体質の個人差に影響を与える遺伝的要因を探索すること、そして、その結果をもとに、遺伝子多型情報から、禁煙支援・禁煙治療に有用な、喫煙に関する被験者の傾向を判定する方法を確立し、提供することにある。
上述のように、薬物代謝酵素CYP2A6の遺伝子多型情報は禁煙支援・禁煙治療に有用であるが、強いニコチン依存性と関連のあったCYP2A6の高活性群の中でも、いまだ、ニコチン依存度に個人差があり、薬物動態の予測だけではニコチン依存度の推測には十分でない側面がある。そこで、本発明は、ニコチン依存やニコチン離脱症状に関連する遺伝子多型を薬力学的観点から推察・探索し、関連の認められた被験者の遺伝子多型(polymorphism)に基づいて喫煙に関する被験者の傾向を判定する方法の提供を目的とするものである。
喫煙後、ニコチンは数秒以内に脳血管障壁に達し、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)を活性化し、種々の神経伝達物質放出と神経活性化を引き起こす。また、ニコチン依存形成には、脳内報酬系ドパミン神経(A10)とそれを調節するグルタミン神経、GABA神経などの種々の神経が重要である。
このような知見をもとに、本発明者らは、ニコチン依存形成に重要なドパミンA10神経に着目し、その神経機能に影響を与えると考えられる18遺伝子中37遺伝子多型を選定し、これらの遺伝子多型と喫煙行動の個人差との関連を調査した。その結果、後述の実施例に示すように、ニコチン性アセチルコリン受容体β2サブユニット(CHRNB2)遺伝子の第5イントロンに存在する遺伝子多型(10160A/C多型)などが喫煙行動の個人差と関連し、ニコチン依存度、ニコチン離脱症状、禁煙維持の難易といった、喫煙行動に関する被験者の傾向判定に利用できること、さらにこの判定結果は、個々の喫煙者に適した禁煙支援・禁煙治療を進めていく上で重要な指標となり得ること、等を見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、産業上有用な発明として、下記A)〜J)の発明を包含するものである。
A) 以下の(1)〜(3)に掲げる遺伝子群から選択された1又は複数の遺伝子、もしくはゲノム上これらの遺伝子近傍に存在する1又は複数の多型を検査し、その検査結果から、禁煙支援または禁煙治療に有用な、喫煙に関する被験者の傾向を判定する方法。
(1)ニコチン性アセチルコリン受容体β2サブユニット(CHRNB2)遺伝子
(2)セロトニントランスポーター(SLC6A4(5HTT))遺伝子
(3)ニコチン性アセチルコリン受容体α4サブユニット(CHRNA4)遺伝子
このように、本発明は、上記(1)〜(3)の遺伝子またはヒトゲノム上その近傍に存在する少なくとも1つの多型を検査するものであるが、これは換言すれば、上記(1)〜(3)の遺伝子に関連する少なくとも1つの多型を検査することを意味し、つまり、上記(1)〜(3)のゲノム遺伝子のエキソン領域あるいはイントロン領域に存在する多型の検査に制限されず、そのプロモーター領域など転写調節領域、制御領域あるいは非翻訳領域などに存在する多型を検査するものであってもよい。本明細書において、「遺伝子多型」とは、このようなプロモーター領域などに存在する多型を含み、当該遺伝子に関連する多型という広義の意味である。
B) 喫煙に関する被験者の傾向が、ニコチン依存度の強弱、ニコチン離脱症状の程度、および禁煙維持の難易からなる群から選択された少なくとも1つの項目である、上記A)記載の方法。
C) 上記CHRNB2遺伝子の第5イントロンに存在するrs12072348多型(10160A/C多型)を直接、又は間接的に検査するステップを含む、上記A)又はB)記載の方法。
D) 上記SLC6A4(5HTT)遺伝子のプロモーター領域に存在するLPR多型、第2イントロンに存在するVNTR多型、および第8イントロンに存在するrs717742多型のうち少なくとも1つの多型を直接、又は間接的に検査するステップを含む、上記A)又はB)記載の方法。
E) 上記CHRNA4遺伝子の第5エキソンに存在するrs1044397多型、および第2イントロンに存在するrs2273504多型のうち少なくとも1つの多型を直接、又は間接的に検査するステップを含む、上記A)又はB)記載の方法。
F) 上記A)〜E)のいずれかに記載の方法にしたがい、喫煙に関する被験者の傾向判定をコンピュータに実行させる、禁煙支援プログラム。
G) 上記A)〜E)のいずれかに記載の方法において、遺伝子多型の検査は、被験者から調製したゲノムDNAを鋳型にして、多型部位を挟む遺伝子領域を増幅する工程と得られた増幅断片をもとに遺伝子型を決定する工程とを含む方法。
H) 上記A)〜E)のいずれかに記載の方法において、DNAチップ等の遺伝子多型検査器具を用いて遺伝子多型を検査する方法。
I) 上記H)記載の方法に使用される遺伝子多型検査用オリゴヌクレオチド。
J) 上記A)〜E)のいずれかに記載の方法に使用される遺伝子多型検査用キット。
本発明によれば、遺伝子多型に基づいて、ニコチン依存度、ニコチン離脱症状、禁煙維持の難易といった、喫煙行動に関する被験者の傾向を判定することができるので、個々の喫煙者に適した禁煙支援・禁煙治療を進めていく上で重要な指標を提供することができる。すなわち、個々の喫煙者の喫煙行動に関する傾向を予め把握することは、喫煙者自身にとっても禁煙指導を行う側にとっても禁煙を成功させるために重要である。また、このように個々の喫煙者の傾向を把握することによって、例えば禁煙パッチの大きさや貼付期間・回数を変更するなど、禁煙支援・禁煙治療における具体的な対処、方法の決定に利用することができ、禁煙指導の具体的な計画立案にも資するものである。
本発明の実施例において、ニコチン依存度と喫煙者年齢との関係を示すグラフである。 本発明の実施例において、セロトニントランスポーター (5HTT) のLPR/VNTR多型とニコチン依存度との関連を示すグラフである。 本発明の実施例において、ニコチン性アセチルコリン受容体β2サブユニット(CHRNB2) のA10160C多型とニコチン依存度との関連を示すグラフである。 本発明の実施例において、ニコチン性アセチルコリン受容体β2サブユニット(CHRNB2) のA10160C多型と禁煙時のニコチン離脱症状の程度(withdrawal score1)との関連を示すグラフである。 本発明の実施例において、ニコチン性アセチルコリン受容体β2サブユニット(CHRNB2) のA10160C多型と禁煙時のニコチン離脱症状の程度(withdrawal score2)との関連を示すグラフである。 本発明の実施例において、ニコチン性アセチルコリン受容体β2サブユニット(CHRNB2) のA10160C多型と禁煙維持率との関連を示すグラフである。
以下、本発明の好ましい態様について説明する。なお、本明細書および図面において、塩基・アミノ酸等を略号で表記する場合、その表記はIUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものである。
また、遺伝子多型、遺伝子配列等に関する番号、数値その他の情報は、米国国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information:NCBI)のウェブページなどで利用可能な主要な遺伝子データベースにおいて使用されている番号、数値等を参酌して解釈されるものとする。
[1]本発明の判定法
前述のように、本発明の判定法は、以下の(1)〜(3)に掲げる遺伝子群から選択された1又は複数の遺伝子、もしくはゲノム上これらの遺伝子近傍に存在する1又は複数の多型を検査し、その検査結果から、禁煙支援または禁煙治療に有用な、喫煙に関する被験者の傾向を判定するものである。
(1)ニコチン性アセチルコリン受容体β2サブユニット(CHRNB2)遺伝子
(2)セロトニントランスポーター(SLC6A4(5HTT))遺伝子
(3)ニコチン性アセチルコリン受容体α4サブユニット(CHRNA4)遺伝子
以下、上記(1)〜(3)の各遺伝子に関連する多型を検査することによって、喫煙に関する被験者の傾向を判定する具体的方法について説明する。
(1)ニコチン性アセチルコリン受容体β2サブユニット(CHRNB2)遺伝子
例えば、上記CHRNB2遺伝子の第5イントロンに存在するrs12072348多型(10160A/C多型)を直接、又は間接的に検査することによって、以下のように喫煙に関する被験者の傾向を判定することができる。
即ち、上記多型部位の塩基がCである対立遺伝子(Cアレル)が検出された被験者(遺伝子型 C/CまたはA/C :C allele保有群)は、後述の実施例に示すように、喫煙行動の各種項目に対して、(i)ニコチン依存度の強弱:弱、(ii)禁煙時のニコチン離脱症状の程度:弱、(iii)禁煙維持の難易:困難という傾向を示し、他方、上記多型部位の塩基がAである対立遺伝子(Aアレル)をホモで有する被験者(遺伝子型A/A)は、(i)ニコチン依存度の強弱:強、(ii)禁煙時のニコチン離脱症状の程度:強、(iii)禁煙維持の難易:容易、という傾向を示した。
したがって、この調査結果に基づき、上記rs12072348多型の遺伝子型が「A/A」であるか、C allele保有群(「C/C」又は「A/C」)であるかによって、喫煙に関する被験者の傾向を判定することができる。
(2)セロトニントランスポーター(SLC6A4(5HTT))遺伝子
例えば、上記SLC6A4(5HTT)遺伝子のプロモーター領域に存在するLPR多型、および第2イントロンに存在するVNTR多型を直接、又は間接的に検査することによって、以下のように喫煙に関する被験者の傾向を判定することができる。
上記LPR多型には、S(short)、L(long)、XL(extra long)という3種類のアレルが存在し(J Neurochem 1996; 66:2621-4.、Biol Psychiatry 1998; 44:179-92.)、上記VNTR多型には、s(short)、l(long)という2種類のアレルが存在する(Am J Med Genet 2002; 114:323-8.、Lancet 1996; 347:731-3.)。
そして、後述の実施例に示すように、LPR多型の遺伝子型がL allele保有群(「L/S」「L/L」又は「XL/L」)であり、かつ、VNTR多型の遺伝子型が「l/s」である被験者は、喫煙行動に関して、(i)ニコチン依存度の強弱:強という傾向を示し、他方、これ以外の被験者は、(i)ニコチン依存度の強弱:弱という傾向を示した。
したがって、この調査結果に基づき、上記LPR多型の遺伝子型がL allele保有群であって、かつ、VNTR多型の遺伝子型が「l/s」であるかどうかによって、喫煙に関する被験者の傾向を判定することができる。
また、上記SLC6A4(5HTT)遺伝子の第8イントロンに存在するrs717742多型を直接、又は間接的に検査することによって、以下のように喫煙に関する被験者の傾向を判定することができる。
即ち、上記多型部位の塩基がTである対立遺伝子(Tアレル)が検出された被験者(遺伝子型 T/TまたはA/T :T allele保有群)は、喫煙行動に関して、(i)ニコチン依存度の強弱:強という傾向を示し、他方、上記多型部位の塩基がAである対立遺伝子(Aアレル)をホモで有する被験者(遺伝子型A/A)は、(i)ニコチン依存度の強弱:弱という傾向を示した。
したがって、この調査結果に基づき、上記rs717742多型の遺伝子型が「A/A」であるか、T allele保有群(「T/T」又は「A/T」)であるかによって、喫煙に関する被験者の傾向を判定することができる。
また、上記rs717742多型の遺伝子型が「A/A」である被験者は、2ヶ月間の禁煙維持を達成した者の割合よりも未達成者の割合が顕著に高く(後述の表11)、「禁煙維持の難易」について「困難」という傾向を示した。したがって、この調査結果に基づき、上記rs717742多型の遺伝子型が「A/A」であるかどうかを検査することによって、「禁煙維持の難易」についての被験者の傾向を判定することも可能である。
(3)ニコチン性アセチルコリン受容体α4サブユニット(CHRNA4)遺伝子
例えば、上記CHRNA4遺伝子の第5エキソンに存在するrs1044397多型を直接、又は間接的に検査することによって、以下のように喫煙に関する被験者の傾向を判定することができる。
即ち、上記多型部位の塩基がAである対立遺伝子(Aアレル)が検出された被験者(遺伝子型 A/AまたはG/A :A allele保有群)は、喫煙行動に関して、(i)ニコチン依存度の強弱:強という傾向を示し、他方、上記多型部位の塩基がGである対立遺伝子(Gアレル)をホモで有する被験者(遺伝子型G/G)は、(i)ニコチン依存度の強弱:弱という傾向を示した。
したがって、この調査結果に基づき、上記rs1044397多型の遺伝子型が「G/G」であるか、A allele保有群(「A/A」又は「G/A」)であるかによって、喫煙に関する被験者の傾向を判定することができる。
また、上記CHRNA4遺伝子の第2イントロンに存在するrs2273504多型を直接、又は間接的に検査することによって、以下のように喫煙に関する被験者の傾向を判定することができる。
即ち、上記多型部位の塩基がGである対立遺伝子(Gアレル)が検出された被験者(遺伝子型 G/GまたはG/A:G allele保有群)は、喫煙行動に関して、(i)ニコチン依存度の強弱:強という傾向を示し、他方、上記多型部位の塩基がAである対立遺伝子(Aアレル)をホモで有する被験者(遺伝子型A/A)は、(i)ニコチン依存度の強弱:強という傾向を示した。
したがって、この調査結果に基づき、上記rs2273504多型の遺伝子型が「A/A」であるか、G allele保有群(「G/G」又は「G/A」)であるかによって、喫煙に関する被験者の傾向を判定することができる。
本発明は、上述した1又は複数の遺伝子多型の検査結果に基づいて喫煙に関する被験者の傾向を判定する方法であるが、検査方法は各々の遺伝子多型を直接検査する方法に制限されるものではない。たとえば、検査対象の遺伝子多型と連鎖し、ハプロタイプを形成するような遺伝子上の他の遺伝子多型を検査することによって間接的に当該遺伝子多型を検査し、喫煙に関する被験者の傾向を判定することができる。また、今回の調査により上記(1)〜(3)の遺伝子に関連する遺伝子多型と喫煙行動の個人差との間に相関が認められたので、上記(1)〜(3)の遺伝子上に存在する他の遺伝子多型に基づいて喫煙に関する被験者の傾向を判定することも可能である。
また、上記(1)〜(3)の遺伝子上に存在する他の遺伝子多型を検査する場合、当該遺伝子多型は1塩基多型(SNP)に制限されるものではなく、たとえば欠損部分の有無による多型、即ち、2以上の塩基からなる特定の塩基配列を有する挿入型とこの塩基配列を欠く欠失型との間の多型、であってもよい。本発明は、1塩基多型に限らず、このような欠損部分の有無による遺伝子多型に基づいて喫煙に関する被験者の傾向を判定してもよいし、転位など他の遺伝子多型に基づいて判定してもよい。
遺伝子多型の検査、判定は、たとえば患者の血液から調製したDNA試料中のゲノムDNAを鋳型にして、多型部位を挟む遺伝子領域をPCR法などで増幅し、得られた増幅断片をもとにプライマー伸長法などで遺伝子型を決定することにより行うことができる。PCR法に使用するプライマー配列は、たとえば後述の表4(および配列表)に示される配列などを参考に設計することができる。また、上記(1)〜(3)の遺伝子のゲノム配列およびcDNA配列は、GenBank等の遺伝子配列データベースに登録・掲載されているので、これらのデータベースに開示されている塩基配列などを参考に設計してもよい。
本発明において、上記(1)〜(3)の遺伝子に関連する複数の遺伝子多型の検査結果をもとに喫煙に関する被験者の傾向を判定することは好ましく、また、上記(1)〜(3)の遺伝子に関連する多型とその他の遺伝子の多型とを組み合わせて、喫煙に関する被験者の傾向を判定することも好ましい方法である。
以上説明した各判定方法をプログラムを利用して行うことは好ましく、本発明はこのような禁煙支援プログラムを包含するものである。即ち、本発明の禁煙支援プログラムは、(イ)上記rs12072348多型の遺伝子型が「A/A」であるか、C allele保有群(「C/C」又は「A/C」)であるかによって、被験者の「ニコチン依存度の強弱」、「禁煙時のニコチン離脱症状の程度」及び/又は「禁煙維持の難易」を判定する方法、(ロ)上記LPR多型の遺伝子型がL allele保有群であって、かつ、VNTR多型の遺伝子型が「l/s」であるかどうかによって、被験者の「ニコチン依存度の強弱」を判定する方法、(ハ)上記rs717742多型の遺伝子型が「A/A」であるか、T allele保有群(「T/T」又は「A/T」)であるかによって、被験者の「ニコチン依存度の強弱」を判定する方法、(ニ)上記rs1044397多型の遺伝子型が「G/G」であるか、A allele保有群(「A/A」又は「G/A」)であるかによって、被験者の「ニコチン依存度の強弱」を判定する方法、(ホ)上記rs2273504多型の遺伝子型が「A/A」であるか、G allele保有群(「G/G」又は「G/A」)であるかによって、被験者の「ニコチン依存度の強弱」を判定する方法、などをコンピュータに実行させ、これにより遺伝子多型の検査結果から喫煙に関する被験者の傾向判定をコンピュータに実行させるものである。本発明のプログラムは、これを記録した、コンピュータで読み取り可能な記録媒体として提供することができる。このような記録媒体としては、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ等の磁気記憶媒体、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW等の光学記憶媒体、RAMやROM等の電気記憶媒体、およびMO等の磁気/光学記憶媒体を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
本発明のプログラムの一態様は、入力装置、記憶装置、演算処理装置および出力装置を備えたコンピュータに対して、下記(a)〜(b)のステップ(処理)を実行させるものである。
ステップ(a): 上記(イ)〜(ホ)に掲げる多型のうち、少なくとも1つの多型に関する被験者の情報が前記入力装置から入力されると、当該多型と喫煙に関する傾向との関係について前記記憶装置内に存在するデータに基づいて、前記演算処理装置によって喫煙に関する被験者の傾向を判定するステップ、
ステップ(b): 上記ステップ(a)で得られた判定結果を、前記出力装置によって表示するステップ。
本発明のプログラムの好ましい態様として、上記(イ)〜(ホ)の判定方法の少なくとも2つ以上を組み合わせて、喫煙に関する被験者の傾向判定をコンピュータに実行させる。これにより、より精度の高い傾向判定が可能になる。
[2]遺伝子多型の検査方法
本発明において、上記(1)〜(3)の遺伝子に関連する遺伝子多型を調べる方法は特に制限されるものではなく、遺伝子上の多型を直接的または間接的に調べることが可能な従来公知の方法を適用することができ、今後開発される方法を使用してもよい。今回の調査に用いた、PCR法により遺伝子多型を検査する方法は簡易な方法であり、精度も良好であるので、以下ではこの方法について簡単に説明する。
検査に供するDNA試料は、被験者の任意の器官・組織・細胞(血液、羊水中の細胞、採取した組織等を培養した細胞を含む)から常法に従ってDNAを精製・抽出すればよい。なお、PCR法による遺伝子増幅が可能な限りにおいて、DNAの精製・抽出工程は省略又は簡略化してもよい。
次に、多型部位に基づく遺伝子型の同定(遺伝子タイピング)のため、上記の方法で調製したDNA試料中のゲノムDNAを鋳型にしてPCR法を行い、多型部位を挟む遺伝子領域を増幅する。その後、得られた増幅断片をもとに、Primer extension法(プライマー伸長法)、PCR-RFLP法、または電気泳動により増幅断片の長さを調べる方法などによって遺伝子型を決定する。
上記PCR法における各条件、使用する試薬・プライマーなどは特に制限されるものではない。また、遺伝子多型の検査は、PCR法以外の方法を使用してもよい。遺伝子上の多型を直接的または間接的に検定可能な方法であれば、一塩基多型(SNP)における塩基を検定する方法(SNPタイピング)、欠損部分の有無による多型を検定する方法、など従来公知の種々の方法を適用することができる(例えば、文献「ポストシークエンスのゲノム科学(1) SNP遺伝子多型の戦略」(中山書店)参照)。
一例として、DNAチップ等の遺伝子多型検査器具を用いた検査方法を挙げることができる。この方法は、上記(1)〜(3)の遺伝子に関連する遺伝子多型を検定するためのプローブ、あるいは更に他の遺伝子多型を検定するためのプローブを基板上に配置したDNAチップ(または同種の器具)を作製し、このDNAチップ等を用いて被験者からの遺伝子試料とプローブとのハイブリダイゼーションシグナルの有無により、遺伝子のタイピングを行う方法である。プローブには、多型部位の塩基を含む近傍の塩基配列またはその相補配列等からなるオリゴヌクレオチドを用いることができる。尚、ここで、「DNAチップ」とは、主として、合成したオリゴヌクレオチドをプローブに用いる合成型DNAチップを意味するが、PCR産物などのcDNAをプローブに用いる貼り付け型DNAマイクロアレイを使用してもよい。このような上記(1)〜(3)の遺伝子に関連する遺伝子多型検定用のプローブを含むDNAチップは、禁煙支援チップとして利用することができる。
その他にも、遺伝子多型の検査方法として、PCR-SSCP法、Allele specific PCR法などの点変異検出法を用いてもよいし、PCR法以外の他の増幅方法(例えば、RCA法など)を用いてもよい。また、DNA増幅後に塩基配列決定装置(シークエンサー)などで直接増幅断片の塩基配列を決定し、遺伝子のタイピングを行ってもよい。
勿論、遺伝子多型の検査は、タンパク質をコードするコード配列以外に、イントロン配列や制御配列などに存在する多型に基づいて行ってもよい。また、多型(変異)がコード配列上の変異であれば、RNA、またはmRNAから調製したcDNAをもとに、当該多型(変異)を検出することも可能である。さらに、アミノ酸置換を伴う多型(変異)であれば、タンパク質のアミノ酸配列などから当該多型(変異)を検出してもよい。
本発明の遺伝子多型検査用キットは、上記(1)〜(3)の遺伝子に関連する遺伝子多型を直接的または間接的に検査するため、これらの遺伝子またはその近傍配列に基づいて設計されたプライマーあるいはプローブなどを含むものであればよく、さらに、(イ)試料の調製に用いる酵素や試薬、(ロ)逆転写反応に用いる酵素や試薬、(ハ)PCR法に用いる酵素や試薬、(ニ)塩基配列の決定に用いる酵素や試薬、などのうち1又は2以上を含むものであってもよい。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記の実施例によって何ら制限されるものではない。
1.実験方法
(1)被験者
大阪国税局診療所およびふなもとクリニックに通院中の喫煙者(一部、禁煙外来受診者)および喫煙歴を有する外来受診者の成人男子計120名を対象とした。
(2)喫煙に関する評価
被験者全員に対して、喫煙習慣として「一日の本数」、「起床後、最初の喫煙までの時間」を下記表1の基準に基づいて調査した。そして、これらの調査結果より、「ニコチン依存度」の指標としてHSI(Heaviness of Smoking Index)を算出し、5点以上を強いニコチン依存と判定した。上記HSIは、ニコチン依存度の簡易判定として使用されている指標であり、Addict Behav 2004; 29:1207-12.の記載に基づいて算出した。なお、ニコチン依存度の評価には、通常、Fagerstrom Test for Nicotine Dependence (FTND)の合計点が使用されるが、下記表1に示す2項目は、FTNDの2項目に相当し、FTNDの合計点と強い相関を示すことが報告されている(Drug Alcohol Depend 2003; 71:1-6.)。
Figure 0005216982
さらに、禁煙外来受診者に対しては、禁煙開始後の「ニコチン離脱症状」をwithdrawal score 1(severe, weak)で評価した。また、withdrawal score 2 (questionnaire by DSMIV)として、米国精神医学会の「精神疾患の診断・統計マニュアル 」(DSMIV:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders) のニコチン使用障害の項の「ニコチン離脱症状」に準じて、4段階にスコア化し、離脱症状の程度を調査した(下記表2)。禁煙の成否については、2ヶ月間の禁煙持続を禁煙達成と評価した。
Figure 0005216982
(3)候補遺伝子多型の選定
下記基準により候補遺伝子多型の選定を行い、18遺伝子37遺伝子多型を候補とした。これらの候補遺伝子多型は表3に掲げる通りである。
(i)中枢のニコチンの作用により、ニコチン依存に影響を与えうる可能性のある分子である。
(ii)アミノ酸変異等、分子の機能に何らかの影響を与える報告もしくは可能性がある。
(iii)日本人における頻度が10%前後以上ある。
(iv)喫煙行動やニコチン離脱症状等、関連解析において関連が報告されている。
Figure 0005216982
(4)ゲノムDNAの調製
被験者から末梢静脈血5mlをEDTA採血管により採血し、QIAamp DNA Blood Maxi kit(商品名、QIAGEN社製)を用いてプロトコールに従ってゲノムDNAを調製した。
(5)遺伝子多型の判定
被験者のゲノムDNAについて、前記表3に示す候補遺伝子多型の判定を行った。ゲノムDNAを鋳型とするPCR産物に対して、適切な制限酵素ユニット数や条件下において制限酵素処理を行い、得られたフラグメントの長さに応じて所定の濃度のアガロースゲルを用いて電気泳動を行い、遺伝子多型を確認した。この判定に使用したgenotypingの方法、primer配列、制限酵素、PCRの条件等を下記表4ならびに以下に示す。なお、方法ならびに条件は、後述する結果において喫煙行動の個人差との相関が見られた遺伝子多型ならびにCYP2A6遺伝子多型についてのみ記載する。
(i)CYP2A6*4の判定
M. Nakajimaらの方法(FEBS Lett 2004; 569:75-81.)に従い、PCR-RFLP法により判定した。PCR反応は、ゲノムDNA 45ng、プライマー各0.4μM、GeneAmpTM1×PCR Buffer(10mM Tris/HCl(pH8.3)、MgCl2 1.5mM)、dNTP各0.24mM、AmpliTaqTM DNA Polymerase(Applied Biosystems社製)1Uを用い、全量25μlで行った。
(ii)CYP2A6*9の判定
Yoshida, Rらの方法(Clin Pharmacol Ther 2003; 74:69-76.)に従い、Allele-specific PCR法により判定した。PCR反応は、ゲノムDNA 45ng、プライマー各0.4μM、GeneAmpTM 1×PCR Buffer II、MgCl2 2mM、dNTP各0.2mM、AmpliTaq GoldTM DNA Polymerase(Applied Biosystems社製)1.25Uを用い、全量25μlで行った。PCR反応の際、SYBR Green I(商品名、Molecular Probes社製)を用いて、ABI PRISM 7700 seaquence detector(商品名、Applied Biosystems社製)により蛍光でフラグメントの増幅を検出し、この増幅の有無によって判定を行った。
(iii)5HTT LPRの判定
Heils, Aらの方法(J Neurochem 1996; 66:2621-4.)に従い、PCR-RFLP法により判定した。PCR反応は、ゲノムDNA 30ng、5%dimethyl sulfoxide、プライマー各0.4μM、Gene AmpTM 1×PCR Buffer、dNTPs;dGTP/7-deaza-2'-dGTP=1:1、プライマー各0.4μM、Ampli TaqTM DNA Polymerase 1Uを用い、全量25μlで行った。
(iv)5HTT VNTRの判定
Ogilvie, Aらの方法(Lancet 1996; 347:731-3.)に従い、PCR-RFLP法により判定した。PCR反応は、ゲノムDNA 30ng、プライマー各0.4μM、Gene AmpTM 1×PCR Buffer、dNTP各0.2mM、Ampli Taq GoldTM DNA Polymerase 1Uを用い、全量25μlで行った。
(v)5HTT rs717742の判定
PCR-RFLP法により判定した。PCR反応は、ゲノムDNA 45ng、プライマー各0.4μM、GeneAmpTM 1×PCR Buffer、dNTP各0.2mM、AmpliTaq GoldTM DNA Polymerase 1Uを用い、全量25μlで行った。
(vi)CHRNB2 A10160Cの判定
PCR-RFLP法により判定した。PCR反応は、ゲノムDNA 60ng、プライマー各0.48μM、GeneAmpTM 1×PCR Buffer、dNTP各0.2mM、AmpliTaq GoldTM DNA Polymerase 1Uを用い、全量25μlで行った。
また、Primer extension法によっても判定を行った。
(vii)CHRNA4 rs1044397の判定
TaqMan法により判定した。PCR反応は、ゲノムDNA 30ng、1×TaqManTM Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems)、40×assay mix(Applied Biosystems)を用い、全量20μlで行った。
また、Primer extension法によっても判定を行った。
(viii)CHRNA4 rs2273504の判定
TaqMan法により判定した。PCR反応は、ゲノムDNA 30ng、1×TaqManTM Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems)、40×assay mix(Applied Biosystems)を用い、全量20μlで行った。
また、Primer extension法によっても判定を行った。
Figure 0005216982
(6)統計解析
遺伝子多型の判定結果と各種調査項目の結果の統計解析を行った。P<0.05を有意差ありとした。解析の対象者は、薬物動態による個人差の影響を除くため、CYP2A6低活性群を除いたCYP2A6高活性群(*1/*1、*1/*9、*1/*4、*9/*9)の被験者計104名とした。喫煙行動における「1日の喫煙本数」および「喫煙開始年齢」は、Wilcoxon's signed rank sum test により検定した。「起床後最初に喫煙するまでの時間」および「ニコチン依存度:HSI」は、chi-square testにより検定し、有意差のあった遺伝子多型についてOdds Ratio(ORs)および95% confidence interval(95% CI)を算出した。また、「ニコチン依存度:HSI」と「各遺伝子多型」とのchi-square testの結果、有意差がみとめられた多型については、さらに、非線形手法によるlogistic regression analysisにより、年齢を考慮したORsおよび95% CIを算出した。一方、禁煙治療群における「ニコチン離脱症状のスコア」と「2ヶ月間の禁煙の成否」については、chi-square testを行い、有意差のあった項目についてORsおよび95% CIを算出した。なお、統計解析には「SPSS for windows リリース11.01Jスタンダードバージョン(商品名)」を使用した。
2.結果
(1)被験者データ
本実施例における被験者120名についてのデータを下記表5に示す。下記表5に示すように、ニコチン依存度HSIに影響与える因子を確認したところ、被験者の依存度HSIと年齢との間に相関(spearman'sρ=0.41 P≦0.001)がみられ、年齢の上昇に伴いHSIが上昇した。この依存度HSIと年齢との関係をあわせて図1のグラフに示す。また、被験者の依存度HSIと喫煙開始年齢との間には相関が見られなかったが(spearman'sρ=0.041 P=0.688)、喫煙期間との間に相関がみられ、喫煙期間の延長に伴ってHSIが上昇した(spearman'sρ=0.41 P≦0.001)。
Figure 0005216982
(2)ニコチン依存度HSIに影響を与えた遺伝子多型
CYP2A6高活性群の被験者104名を対象に、各遺伝子多型を2群に分けて「ニコチン依存度HSIの強弱」について、各群の頻度差をchi-square testにより解析した。
解析の結果、有意差(P<0.05)を示した多型は、CHRNA4(ニコチン性アセチルコリン受容体α4サブユニット遺伝子)のrs1044397およびrs2273504、CHRNB2(ニコチン性アセチルコリン受容体β2サブユニット遺伝子)のA10160C多型、および5HTT(セロトニントランスポーター遺伝子)のLPR多型であった。
次に、chi-square testでP<0.05であったこれらの多型について、logistic regression analysisを行った。なお、被験者の年齢とニコチン依存度HSIとは、前述のように弱い線形性が見られたが、一般的に、喫煙量は40-50代でピークを示すことが報告されているため、年齢の補正は非線形的に行った。モデルの最終的な選択は、一因子の増減による尤度の変化を自由度1のχ2値にて検定し、有意な変化(P<0.05)が認められるか否かで判断した。その結果、「ニコチン依存度HSIの強弱」と有意な関連がみられた多型は、5HTTのLPR/VNTR(L/s)多型とCHRNB2のA10160C多型であった。下記表6には、これらの多型について、logistic regression analysisによるP value、ORsおよび95% CI を示す。また、これらの多型とともに、ニコチン依存との関連性が認められた多型についての情報を、下記表7に示す。
Figure 0005216982

Figure 0005216982
(3)5HTTのLPR/VNTR多型
5HTTのLPR/VNTR多型と「ニコチン依存度HSIの強弱」との関連解析結果を以下に示す。
CYP2A6高活性群の被験者104名における5HTTのLPR多型とVNTR多型の分布を下記表8に示す。表8に示すように、網掛け部分の計12名が、LPR多型においてL allele保有群で、且つ、VNTR多型が「l/s」を示す5HTT LPR/VNTR(L/s)多型の被験者であり、それ以外は、LPR多型がL allele非保有群もしくはVNTR多型が「l/l」を示す被験者であった。
Figure 0005216982

表8に基づいて、被験者を5HTT LPR/VNTR(L/s)多型群(12名)と、それ以外の群(others:92名)とに分類し、それぞれの群について、「ニコチン依存度HSIの強弱」との関連性を、chi-square testおよびlogistic regression analysisにより解析した。この結果を図2に示す。同図において縦軸はHSI≧5の人の割合(%)であり、図3においても同様である。また、chi-square testおよびlogistic regression analysisの結果は以下の通りである。
[chi-square test] P=0.043 ORs:3.81 95%CI:1.06-13.64
[logistic regression analysis] P=0.049 ORs:4.449 95%CI:1.007-19.647
同図に示すように、5HTT LPR/VNTR(L/s)多型群は、それ以外の被験者群と比較して、HSI≧5という強いニコチン依存度を示す割合が有意に高かった。このことから、5HTT LPR/VNTR多型はニコチン依存度との相関が非常に高いといえる。
(4)CHRNB2のA10160C多型
(4−1)ニコチン依存度HSI
CYP2A6高活性群の被験者104名を、CHRNB2のA10160C多型についてA alleleをホモで有する「A/A」群(80名)と、C alleleを保有する群(C allele保有群:合計24名)とに分類し、それぞれの群について、「ニコチン依存度HSIの強弱」との関連性を、chi-square testおよびlogistic regression analysisにより解析した。この結果を図3に示す。また、chi-square testおよびlogistic regression analysisの結果は以下の通りである。
[chi-square test] P=0.043 ORs:2.956 95%CI:1.004-8.70
[logistic regression analysis] P=0.0411 ORs:3.390 95%CI:1.051-10.941
同図に示すように、CHRNB2の「A/A」群は、C allele保有群と比較して、HSI≧5という強いニコチン依存度を示す割合が有意に高かった。このことから、CHRNB2のA10160C多型はニコチン依存度と非常に相関が高いといえる。
(4−2)ニコチン離脱症状の程度
「ニコチン離脱症状の程度」との関連を調べるため行った、CHRNB2のA10160C多型とwithdrawal score1(severe weak)とのchi-square testの結果を、図4に示す。同図において縦軸は強い離脱症状を示す症例の割合を示し、CHRNB2のA/A群でC allele保有群に比べて強い離脱症状を示す症例が多い傾向がみられた。さらに同様に行ったCHRNB2のA10160C多型とwithdrawal score2(questionnaire by DSMIV)とのchi-square testの結果を、図5に示す。同図において縦軸はwithdrawal score2≧10の割合を示し、A/A群でC allele保有群に比べて、強い離脱症状を示す症例が有意に多い結果が得られ、withdrawal score1(severe, weak)で得られた結果と一致した。このことから、CHRNB2のA10160C多型はニコチン離脱症状の程度と非常に相関が高いといえる。
(4−3)禁煙維持率(禁煙維持の難易)
「2ヶ月間の禁煙維持率」とCHRNB2のA10160C多型とのchi-square testの結果を、図6に示す。同図において縦軸は2ヶ月間禁煙を維持した人の割合を示し、A/A群でC allele保有群に比べて、禁煙の2ヶ月維持率が有意に高い結果が得られた。このことから、CHRNB2 のA10160C多型は禁煙維持率(禁煙維持の難易)との相関が非常に高いといえる。
以上の(4−1)〜(4−3)の結果を、下記表9にまとめて示す。
Figure 0005216982
(5)5HTTのrs717742多型
調査の結果、下記表10に示すように、上記多型部位の塩基がTである対立遺伝子(Tアレル)が検出された被験者(遺伝子型 A/T :T allele保有群)は、喫煙行動に関して、(i)ニコチン依存度の強弱:強という傾向を示し、他方、上記多型部位の塩基がAである対立遺伝子(Aアレル)をホモで有する被験者(遺伝子型A/A)は、(i)ニコチン依存度の強弱:弱という傾向を示した。
したがって、この調査結果に基づき、上記rs717742多型の遺伝子型が「A/A」であるか、T allele保有群であるかによって、喫煙に関する被験者の傾向を判定することができる。
Figure 0005216982

また、下記表11に示すように、上記rs717742多型の遺伝子型が「A/A」である被験者は、2ヶ月間の禁煙維持を達成した者の割合よりも未達成者の割合が顕著に高く、「禁煙維持の難易」について「困難」という傾向を示した。したがって、この調査結果に基づき、上記rs717742多型の遺伝子型が「A/A」であるかどうかを検査することによって、「禁煙維持の難易」についての被験者の傾向を判定することも可能である。
Figure 0005216982
本発明は、以上のように、遺伝子多型に基づいて、ニコチン依存度、ニコチン離脱症状、禁煙維持の難易といった、喫煙に関する被験者の傾向を判定する方法に関するものであり、前述したとおり、個々の喫煙者に適した禁煙支援・禁煙治療を進めていく上で重要な指標を提供することができるほか、その判定結果を、禁煙支援・禁煙治療における具体的な対処、方法の策定などに利用することができる。

Claims (6)

  1. (1)セロトニントランスポーター(SLC6A4(5HTT))遺伝子のプロモーター領域に存在するLPR多型、及び第2イントロンに存在するVNTR多型
    (2)セロトニントランスポーター(SLC6A4(5HTT))遺伝子の第8イントロンに存在するrs717742多型
    上記(1)及び(2)の少なくとも一方を直接又は間接的に検査し、
    (A)LPR多型の遺伝子型がL allele保有群であり、かつ、VNTR多型の遺伝子型が「l/s」である場合、又は
    (B)rs717742多型の遺伝子型がT allele保有群である場合に、ニコチン依存度強と判定し、
    上記(A)及び(B)のいずれにも該当しない場合にニコチン依存度弱と判定する、
    禁煙支援または禁煙治療に有用な、喫煙に関する被験者の傾向を判定する方法。
  2. 喫煙に関する被験者の傾向が、ニコチン依存度の強弱、ニコチン離脱症状の程度、および禁煙維持の難易からなる群から選択された少なくとも1つの項目である、請求項1記載の方法。
  3. コンピュータに対して、下記のステップ(a)及び(b)を実行させ、請求項1又は2に記載の方法に従って喫煙に関する被験者の傾向判定をコンピュータに実行させる禁煙支援プログラム
    (a)請求項1に記載の(1)及び(2)の少なくとも一方の多型に関する情報が入力装置から入力されると、当該多型と喫煙に関する傾向との関係について記憶装置内に存在するデータに基づいて、演算処理装置によって喫煙に関する被験者の傾向を判定するステップ、
    (ここで、上記判定は、(A)LPR多型の遺伝子型がL allele保有群であり、かつ、VNTR多型の遺伝子型が「l/s」である場合、又は(B)rs717742多型の遺伝子型がT allele保有群である場合に、ニコチン依存度強と判定し、
    上記(A)及び(B)のいずれにも該当しない以外の場合にニコチン依存度弱と判定する)
    (b)上記ステップ(a)で得られた判定結果を、出力装置によって表示するステップ。
  4. 請求項1又は2に記載の方法において、遺伝子多型の検査は、被験者から調製したゲノムDNAを鋳型にして、多型部位を挟む遺伝子領域を増幅する工程と得られた増幅断片をもとに遺伝子型を決定する工程とを含む方法。
  5. 請求項1又は2に記載の方法において、DNAチップの遺伝子多型検査器具を用いて遺伝子多型を検査する方法。
  6. 請求項1又は2に記載の方法に使用される遺伝子多型検査用キット。
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