JP5215198B2 - 光学用積層フィルム - Google Patents
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Description
本発明の光学用積層フィルムは、光拡散層およびその少なくとも一方の面に設けられた密着防止層からなる。光拡散層の一方の面にのみ密着防止層を設けた構成をとることができるが、好ましい構成は光拡散層の両方の面に密着防止層を設けた構成である。この構成であると対象性がよいため平面性を維持しやすい。
以下、まず密着防止層を説明し、つぎに光拡散層を説明する。
密着防止層は、ポリエステルからなる二軸配向した層である。密着防止層が二軸配向した層でないとフィルムの熱収縮率が高くなり耐熱性が不足し機械的特性が劣るほか、延伸時にフィルムエッヂ部分でクリップの融着が発生してフィルムの生産性が低下する。また、光学部材として光拡散フィルムやプリズムシートの用途に用いる場合にバックライトユニット内で隣接部材と過度に密着して表示面に輝度斑を発生させることになる。
突起形成粒子の形状は、好ましくは球状粒子である。球状粒子は真球度の高いものほど好ましく、アスペクト比が1.1以下のものが特に好ましい。球状粒子の平均粒径d50は、好ましくは1〜20μm、さらに好ましくは1〜10μmである。平均粒径d50が1μm未満であると表面突起高さが十分に得られず、隣接部材との密着を防止する機能が不足する。他方、平均粒径d50が20μmを超えると光拡散性、表面突起高さは十分だが、平行光透過率が不足して輝度が劣るうえ、突起形成粒子の粒径が大きいため、粒子が脱落する。なお、球状粒子は、無色透明な粒子であることが好ましい。
光拡散層は密着防止層のポリエステルより融点が5〜50℃低い共重合ポリエステルおよび光拡散粒子からなり実質的にボイドを含有しない層である。
光拡散層のポリエステルとして、密着防止層のポリエステルより融点が5〜50℃低いポリエステルを用いる。本発明においては、フィルムの延伸により発生した光拡散層のボイドを、フィルムを熱処理することで消滅させて、ボイドのない光拡散層を得る。密着防止層のポリエステルとの融点差が5℃未満であるとフィルムの機械的強度を保ったまま光拡散層のポリエステルを再融解させることができず、延伸時に光拡散粒子の周辺に発生するボイドをフィルムの熱処理によっても十分に消滅させることができず、密着防止層のポリエステルとの融点差が50℃を超えると耐熱性が不足する。
光拡散層の光拡散粒子は、その平均粒径d50が1〜10μmである。平均粒径d50が1μm未満であると光拡散性が不足し、また表面突起高さが十分に得られずクリップの融着が発生して生産性が低下する。他方、平均粒径d50が10μmを超えると光拡散性と表面の突起高さは十分だが全光線透過率が不足して輝度が劣り、また、光拡散粒子とポリエステルとの界面で発生するボイドが大きくなり、熱処理によってボイドを消滅させることが困難となる。なお、球状粒子は、無色透明な粒子であることが好ましい。
光拡散層の厚みは、好ましくは9〜499μm、さらに好ましくは9〜399μmである。この範囲の厚みであることによって良好な光拡散性を得ることができる。
本発明において密着防止層および光拡散層は、それぞれ実質的にボイドを含有しない。本発明において実質的にボイドを含有しないとは、ボイドを含有しないか、全光線透過率を低下させない程度のボイドを含有することをいう。密着防止層については、突起形成粒子の断面積と突起形成粒子の周囲のボイド断面積との比として算出されるボイド断面積率((突起形成粒子の断面積)/(突起形成粒子周囲のボイド断面積))が30%以下であることをいう。光拡散層については、光拡散粒子の断面積と光拡散粒子の周囲のボイド断面積との比として算出されるボイド断面積率((光拡散粒子の断面積)/(光拡散粒子周囲のボイド断面積))が30%以下であることをいう。密着防止層または光拡散層がボイドを含有すると、ボイド界面での光の反射が多くなり、フィルムの全光線透過率が低下して、輝度が劣ることになる。密着防止層および光拡散層が実質的にボイドを含有しないことは、フィルムの断面を走査型顕微鏡(SEM)または透過型顕微鏡(TEM)で500倍〜20000倍の倍率で観察することによって確認することができる。
本発明の光学用積層フィルムは、溶融押出成形によって未延伸積層シートを得、これを延伸して得ることができる。光拡散粒子のポリエステルへの添加は、ポリエステルの重合段階で行ってもよく、ポリエステルを重合した後で溶融混練する際に添加してもよい。例えば、真球状粒子を粉体の状態で供給する場合、原料であるポリエステル用の押出機と当該押出機に定量的に粉体供給できる供給装置を兼ね備える溶融混錬押出機を用意し、これにポリエステルと真球状粒子とを供給して溶融混錬し、押出し、冷却すればよい。押出機は、均一な混錬が可能で粒子の分散に効果的な二軸タイプが好ましく、例えばニーディングディスクおよび逆ねじの混錬用エレメントを配したスクリュー構成を有するベント式二軸混錬押出機を用いることができる。
なお、本発明では表層が十分に薄いので、表層にはボイドが実質的に形成されない。
フィルムに配合する粒子について島津製作所製「CP−50型Centrifugal Particle Size Analyzer」を用いて平均粒径d50を測定した。この測定器によって得られる遠心沈降曲線をもとに算出した各粒径の粒子とその存在量とのcumulative曲線から、50mass percentに相当する粒径を読み取り、この値を平均粒径d50とした(参照「粒度測定技術」、242〜247頁、日刊工業新聞社、1975年発行)。
・光拡散層のポリエステル
溶融押出しする前のポリエステルを板状に成型して、アッベ屈折率計(D線589nm)で測定した。
・光拡散粒子
光拡散粒子の粒子を、屈折率の異なる種々の25℃の液に懸濁させ、懸濁液が最も透明に見える液の屈折率をアッベの屈折率計(D線589nm)によって測定した。
フィルムに配合する粒子について日立製走査型電子顕微鏡S−4700にて20000倍で観察して、10個の粒子について各粒子の長径と短径を測定して長径/短径からアスペクト比を算出し、粒子10個のアスペクト比の平均をとった。
(4−1)光拡散層
フィルムを厚み方向にミクロトームで切断し、切断面を(株)日立製走査型電子顕微鏡S−4700にて20000倍で、切断面における光拡散層の光拡散粒子およびそれらの周囲のボイドを観察して、光拡散粒子10個について各光拡散粒子の断面積と各光拡散粒子の周囲のボイド断面積を求め、下記の式で各光拡散粒子のボイド断面積率を算出した。
ボイド断面積率=(光拡散粒子の断面積)/(光拡散粒子周囲のボイド断面積)
光拡散粒子10個についてボイド断面積率の平均を算出して、平均ボイド断面積率とし、下記の評価基準で、光拡散層にボイドが実質的にないか、実質的にあるかを評価した。
○: ボイドが実質的にない:平均ボイド断面積率が30%以下
△: ボイドが実質的にある:平均ボイド断面積率が30%超、50%以下
×: ボイドが実質的にある:平均ボイド断面積率が50%超
フィルムを厚み方向にミクロトームで切断し、切断面を(株)日立製走査型電子顕微鏡S−4700にて20000倍で、切断面における密着防止層の突起形成粒子およびそれらの周囲のボイドを観察して、突起形成粒子10個について各突起形成粒子の断面積と各突起形成粒子の周囲のボイド断面積を求め、下記の式で各突起形成粒子のボイド断面積率を算出した。
ボイド断面積率=(突起形成粒子の断面積)/(突起形成粒子周囲のボイド断面積)
突起形成粒子10個についてボイド断面積率の平均を算出して、平均ボイド断面積率とし、下記の評価基準で、密着防止層にボイドが実質的にないか、実質的にあるかを評価した。
○: ボイドが実質的にない:平均ボイド断面積率が30%以下
△: ボイドが実質的にある:平均ボイド断面積率が30%超、50%以下
×: ボイドが実質的にある:平均ボイド断面積率が50%超
各層をそれぞれ分離して得たサンプル10mgを測定用のアルミニウム製パンに封入して示差熱量計(デュポン社製・V4.OB2000型DSC)に装着し、25℃から20℃/分の速度で300℃まで昇温させ、融点を測定し、300℃で5分間保持した後取出し、直ちに氷の上に移して急冷した。このパンを再度、示差熱量計に装着し、25℃から20℃/分の速度で昇温させて、ガラス転移温度を測定した。
小坂研究所社製の表面粗さ測定器SE−3FATを用い、JIS B0601の測定法により、フィルム表面の十点平均粗さRzを求めた。
JIS K7361に準じ、日本電色工業社製のヘーズ測定器(NDH−2000)を使用してフィルムの全光線透過率を測定した。
JIS K7136に準じ、日本電色工業社製のヘーズ測定器(NDH−2000)を使用してフィルムのヘーズ値を測定した。
DIN5036に準じ、(株)村上色彩技術研究所製 自動変角計GP−200を使用し、受光角度5度、20度および70度での輝度値を測定し、下記式より光拡散率を算出して、光拡散性の評価とした。
光拡散率(%)
=(20度での輝度値+70度での輝度値)×100/(5度での輝度値×2)
ソニー(株)製液晶テレビKDL−32V2500からバックライトユニットを取出して、光拡散ボード上に評価対象のフィルムを載せ、大塚電子(株)製輝度計MC−940で、中心点左右にある蛍光管上(a)と、さらに隣接する蛍光管の間の上(b)をそれぞれ3箇所ずつについて輝度(cd/m2)を測定した。輝度相対値を下記式で算出して、輝度斑の評価とした。なお、蛍光管同士の間隔が23mmであった。
輝度相対値=輝度(a)/輝度(b)
○: 相対輝度値が1.1以下
△: 相対輝度値が1.1を超え1.2以下
×: 相対輝度値が1.2を超え1.3以下
ソニー(株)製液晶テレビKDL−32V2500からバックライトユニットを取出して、光拡散ボード上に評価対象のフィルムを載せ、輝点の発生度合に着目して密着度合を観察して、密着防止性の評価とした。
○: どの角度から観察しても、輝点がまったく発生しない。
△: フィルムを斜めから観察して、輝点が一箇所以上発生する。
×: フィルムを正面から観察して、輝点が一箇所以上発生する。
ASTM D1894−63に準じ、東洋テスター社製のスリッパリー測定器を使用し、評価対象フィルムの密着防止層面と、基準とするポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム製 商品名O3)との静摩擦係数(μs)を測定した。ただし、スレッド板はガラス板とし、荷重は1kgとした。フィルムの密着防止性を下記の基準で評価した。
○: 摩擦係数(μs)≦0.3 (極めて良好)
△: 0.3<摩擦係数(μs)≦0.5 (良好)
×: 0.5<摩擦係数(μs) (不良)
実施例において、クリップによる縦延伸および横延伸の後に、結晶化ゾーンで235℃にてフィルムを熱処理した際に延伸機出口から出てきたフィルムを観察し、フィルムのクリップによる把持部がクリップに融着しているか否かを目視で観察し、下記の基準で評価した。
○: クリップに融着せず、フィルムを得た
×: クリップに融着し、フィルムを得られなかった。
サンプルを三角形に切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包埋した。そして、包埋されたサンプルをミクロトーム(ULTRACUT−S)で縦方向に平行な断面を50nm厚の薄膜切片にした後、透過型電子顕微鏡を用いて、加速電圧100kvにて観察撮影し、写真から各層の厚みを測定し、平均厚みを求めた。
フィルムサンプルをエレクトリックマイクロメーター(アンリツ製 K−402B)にて、10点厚みを測定し、平均値をフィルムの厚みとした。
密着防止層を構成する成分として、ポリエチレンテレフタレートに平均粒径d50が8μmの真球状ポリスチレン粒子を、真球状ポリスチレン粒子含有量が0.5重量%になるように配合したポリエステル組成物を用いた。光拡散層を構成する成分として、イソフタル酸12モル%が共重合された共重合ポリエチレンテレフタレートに、平均粒径d50が8μmの真球状ポリスチレン粒子を、真球状ポリスチレン粒子含有量が0.05重量%になるように配合したポリエステル組成物を用いた。これらをそれぞれ溶融してダイから押出し、キャスティングドラム上で急冷し、積層未延伸シートを得た。この積層未延伸シートを75℃で余熱し延伸温度110℃で縦方向に3.3倍に延伸し、さらに110℃で余熱し延伸温度130℃にて横方向に3.6倍に延伸し、この後、結晶化ゾーンにて235℃にて熱処理して光学用積層フィルムを得た。なお、熱処理する際に、縦方向および横方向に弛緩を入れて、熱収縮率を調整した。実施例1での層構成は、表層/光拡散層/表層とした。評価結果を表1に示す。
密着防止層および光拡散層を構成する成分を表1記載のものに変更した以外は実施例1と同様にして、光学用積層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
密着防止層を設けない他は実施例1と同様にしてフィルムを得た。密着防止層がないため、光拡散層のボイドを消失させるのに十分な熱処理(235℃)をするとフィルムが破断して安定した製膜ができず、熱処理温度を220℃に下げてフィルムを取得した。熱処理が不十分で光拡散層にボイド多く存在し、全光線透過率が劣るフィルムとなった。
密着防止層および光拡散層を構成する成分を表1記載のものに変更した以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
Claims (1)
- 光拡散層およびその少なくとも一方の面に設けられた密着防止層からなる光学用積層フィルムであって、
密着防止層はポリエステルおよび突起形成粒子からなり実質的にボイドを含有しない層であって、突起形成粒子の平均粒径d50は1〜20μmであり、
光拡散層は密着防止層のポリエステルより融点が5〜50℃低い共重合ポリエステルおよび光拡散粒子からなり実質的にボイドを含有しない層であり、光拡散粒子は平均粒径d50が1〜20μmの粒子であり、
密着防止層の厚みは光拡散粒子の平均粒径d50の0.1〜0.9倍であり、
密着防止層の十点平均粗さRzが1000〜20000nmである
ことを特徴とする、光学用積層フィルム。
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