JP2006292838A - 光拡散板用フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】 湿熱による耐たわみ特性に優れ、液晶表示装置の高輝度化が可能な光拡散板として有用なポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 湿熱たわみ率20%未満の二軸配向ポリエステルフィルムからなる光拡散板用フィルム。
【選択図】 なし

Description

本発明は、液晶表示装置に用いる光拡散板用フィルムに関する。
近年TV受像機として液晶ディスプレイが多く流通するようになってきた。液晶ディスプレイは、ディスプレイ内に液晶素子の背後に設置された光源からの光を反射するための光拡散板を備える。液晶ディスプレイを高輝度化するためには、光量を増加させる必要があり、通常は光源から発生する熱を受けて光拡散板にたわみが発生する。このたわみが原因で、液晶ディスプレイの画面全体に輝度斑が生じる。
この問題について従来から解決が期待されており、大画面化による輝度斑問題を改善する手段の一つとして、例えば熱膨張係数の低いフィルムを用いることが提案されている。
特開2001−220432号公報 特開2001−247696号公報 特開2002−019064号公報 特開2002−350617号公報 特開2003−266622号公報 特開2004−067853号公報 特開2004−133021号公報
しかし、上記の従来の技術のみでは、光拡散板のたわみを抑制するためには未だに不十分であり、フィルムのMD方向とTD方向とでの熱収縮率と屈折率のバランスが悪く、熱膨張係数が十分に低くても比較的湿度の高い条件で使用するとたわみが発生してしまう。
本発明の目的は、湿熱による耐たわみ特性に優れ、液晶表示装置の高輝度化が可能な、液晶表示装置に用いる光拡散板用のフィルムを提供することにある。
すなわち本発明は、湿熱たわみ率20%未満の二軸配向ポリエステルフィルムからなる光拡散板用フィルムである。なお、湿熱たわみ率は、本明細書の実施例の欄に定義される方法を用いて測定される数値である。
本発明によれば、湿熱による耐たわみ特性に優れ、液晶表示装置の高輝度化が可能な光拡散板として有用なポリエステルフィルムを提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において二軸配向ポリエステルの湿熱たわみ率は20%未満であることが肝要である。たわみ率20%未満である光拡散板用ポリエステルフィルムは従来知られていないものであるが、このたわみ率はポリエステルフィルムを二軸延伸により製膜した後に、後述の条件にてオフアニールすることによって得ることができる。
[ポリエステル]
本発明において、二軸配向フィルムを構成するポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートを用いる。このポリエチレンテレフタレートは、ホモポリマーであってもよく、共重合成分を含むコポリマーでもよいが、ホモポリマーが好ましい。
コポリマーである場合、エチレンテレフタレートの繰返し単位が、全繰返し単位の好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上を占めるポリマーを用いる。共重合成分の割合が10モル%を超えると、フィルムの光線透過率が低下し、また熱安定性や寸法安定性が低下して好ましくない。
ポリエチレンテレフタレートの固有粘度(オルソクロロフェノール中35℃での測定値から算出)は、好ましくは0.4以上、さらに好ましくは0.5〜1.2、特に好ましくは0.55〜0.85である。0.4未満であるとフィルムの機械的強度が低下して好ましくない。固有粘度が1.2を超えると押出し機の負担が増大し、樹脂が発熱して重合度が低下するので好ましくない。
ポリエチレンテレフタレートは、例えばテレフタル酸とエチレングリコールとを重縮合反応させる方法、テレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させた後重縮合反応させる方法、テレフタル酸のビスグリコールエステルを重縮合させる方法等の方法によって製造することができる。重縮合反応に使用する触媒としては、アンチモン化合物(Sb化合物)、チタン化合物(Ti化合物)、ゲルマニウム化合物(Ge化合物)などが挙げられる。
[滑剤]
本発明における二軸配向ポリエステルフィルムは、その生産性を確保するために、表面に多数の微細突起を有していることが好ましい。微細突起をフィルムに付与するためには、ポリエステルフィルム中に滑剤として不活性粒子を分散含有させるか、ポリステルフィルムのうえに不活性粒子を含有する易滑層を設ければよい。微細突起を有することにより優れた易滑性を得ることができる。
不活性粒子としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、ケイ酸ソーダ、水酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化錫、三酸化アンチモン、カーボンブラック、二硫化モリブデン等の無機微粒子、アクリル系架橋重合体、スチレン系架橋重合体、架橋シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、ナイロン樹脂等の有機微粒子を例示することができる。
不活性粒子の平均粒径は好ましくは50〜150nmである。50nm未満であると易滑性が発現せず、150nmを超えると抜け落ちが発生して好ましくない。不活性粒子の比重は好ましくは3以下である。3を超えると水分散液中で沈降して生産工程上不都合であり好ましくない。
不活性粒子の配合量は、フィルム中に含有させる場合には、ポリエステル100重量部あたり例えば0.0025〜0.036重量部、好ましくは0.0025〜0.012重量部である。易滑層を設けて易滑層中に含有させる場合には、易滑層を構成する組成物100重量部あたり好ましくは5〜30重量%である。なお、平均粒径が100〜150nmの不活性粒子を用いるときには5〜10重量%の範囲で、平均粒径が50〜90nmの不活性粒子を用いるときには8〜30重量%の範囲で用いるとよい。この平均粒径は、一次粒子の平均粒径であり、透過電子顕微鏡による10万倍の拡大写真で観察できる一次粒子の像をトレース又は投影して画像解析装置により面積円相当直径として求めた平均粒径である。
[湿熱たわみ率]
本発明において二軸配向ポリエステルフィルムは、湿熱たわみ率が20%未満、好ましくは15%以下である。湿熱たわみ率が20%以上であると、液晶ディスプレイにて光拡散板として長時間使用するとバックライトからの熱によりたわみが発生する。また、湿熱たわみ率が20%以上であると輝度斑の原因となり液晶ディスプレイの品位が損なわれる。なお、湿熱たわみ率は実施例のたわみ率の項に記載のとおり定義される。
[屈折率]
二軸配向ポリエステルフィルムのMD方向の屈折率とTD方向の屈折率の差の絶対値は、好ましくは0.01以下、さらに好ましくは0.008以下、特に好ましくは0.006以下である。差の絶対値が0.01を超えると温度がかかったときのMDとTDの挙動に著しい差が生じるためバランスが崩れたわみが生じやすくなる。たわみが発生すると液晶画面に輝度斑が発生し品位が著しく損なわれるため好ましくない。
なお、MDはフィルムの縦方向であり、TDはMDと直交する方向である。
[熱収縮率]
二軸配向ポリエステルフィルムは、150℃30分間の条件でのMD方向の熱収縮率とTD方向の熱収縮率の差の絶対値が、好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.4以下、特に好ましくは0.3以下である。差の絶対値が0.5を超えると、温度がかかったときにフィルムのバランスが崩れたわみが生じやすくなる。たわみが発生すると液晶画面に輝度斑が発生し品位が著しく損なわれるため好ましくない。
[厚み]
二軸配向ポリエステルフィルムの厚みは、好ましくは20〜300μm、さらに好ましくは20〜250μm、特に好ましくは25〜200μmである。厚みが20μm未満であると腰が弱く加工時に平面性が失われたり、傷が生じたりし易く好ましくない。厚みが300μmを超えると腰が強すぎて加工作業性が悪く、透明性が低下して好ましくない。
[ヘイズ]
二軸配向ポリエステルフィルムのヘイズ値は、好ましくは3%以下、さらに好ましくは2%以下、特に好ましくは1.5%以下である。ヘイズ値が3%を超えると、光拡散板に要求される輝度が得られず好ましくない。
[色相]
二軸配向ポリエスエルフィルムは、L*a*b*表色系におけるb*値が、好ましくは−1以上1.5以下、さらに好ましくは−0.5以上1.5以下、特に好ましくは−0.5以上1.3以下である。b*値が−1未満であると青みを帯び、1を超えると黄みを帯びていずれも液晶モニターには好ましくない。
[製造方法]
本発明における二軸配向ポリエステルフィルムの上述の物性は、ポリエステルフィルムを二軸延伸法にて製膜の後、オフアニール処理することにより達成することができる。
オフアニールに供する二軸配向ポリエステルフィルム自体は、従来より公知の二軸配向フィルムの製造方法により製造することができる。例えば、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法、インフレーション法によって製造することができる。これらのうち逐次二軸延伸法が好ましい。
逐次二軸延伸法により二軸配向ポリエステルフィルムを製造するためには、例えば次のようにすればよい。先ず、必要に応じて不活性粒子を配合したポリエステルを、ダイを通して溶融押出し、予め20〜40℃程度に設定されたキャスティングドラム上にて急冷固化させて未延伸フィルムを得る。未延伸フィルムは、その後、延伸温度90〜140℃にて、フィルム走行方向(縦方向)に3.0〜4.5倍、これと直角方向(横方向)に3.0〜4.5倍、面積倍率で9〜20倍に延伸する。
本発明においては、二軸延伸後、フィルムを熱固定することが好ましい。熱固定温度は、好ましくは180〜235℃、さらに好ましくは180〜225℃、特に好ましくは180〜220℃である。熱固定温度が235℃を超えると、ポリエステルが結晶化しすぎて全光線透過率が低下することがあり好ましくない。180℃未満では熱収縮率のMD・TDのバランスが崩れ、たわみが抑制できないことがあり好ましくない。
ヘイズ値は、主としてポリエステルフィルム中の不活性粒子の種類、平均粒径、含有量、粒子周辺に生じるボイドの程度や、易接着層に含有される不活性粒子の種類、平均粒径、含有量によって変わるので、これらを調整することで所望のヘイズ値を満たすようにすればよい。
本発明の物性を備える二軸配向ポリエステルフィルムを得るためには、熱固定後の二軸配向ポリエステルフィルムに対して、さらにオフアニール処理を行なう。すなわち、上記の方法で製膜して得た二軸配向ポリエステルフィルムに対して、フィルムのポリエステルのガラス転移温度(Tg)−40℃からTgの範囲の温度で30分間〜72時間の間40〜90%Rhの湿度で熱処理する。これを本明細書ではオフアニール処理という。このときフィルムのTg以上の温度で熱処理するとフィルムが熱で変形してしまい光拡散板に必要な平面性が失われてしまう。熱処理する温度がTg−40℃より低いとフィルム内の残存応力を緩和することができず、オフアニール処理の効果が得られない。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
なお、「部」は重量部を意味する。また、各特性値の測定方法は下記の通りである。
(1)フィルムの厚み
外付マイクロメータで100点測定し、この平均値を求めてフィルムの厚みとした。
(2)屈折率
製膜したフィルムを、アッベ屈折率計(D線589nm)で測定した。MD方向の屈折率をnMD、TD方向の屈折率をnTDとした。
(3)熱収縮率
フィルムのサンプルを150℃の温度に30分間おいたときの熱収縮率を、JIS−Z1709に従い測定して、各々N=3の平均値をとった。なお、MD方向はフィルムの縦方向、TDはMDと直交する方向である。
(4)ヘイズ
日本電色工業社製のへイズ測定器(NDH−2000)を使用してJISK−7136に基づきフィルムのへイズを測定した。
(5)易接着性塗膜の厚み
サンプルをオスミウム酸にて染色し、エポキシ樹脂に包埋し、ミクロトームにてフィルム端面がきれいに見えるように100nm厚でスライスしたサンプルを透過電子顕微鏡(日本電子製JEM−1200EX)を用いて、易接着層をクローズアッププするように5〜10万倍の倍率で観察し、任意の個所100個所について測定し、算術平均した厚みを採用した。
(6)湿熱たわみ率
湿熱たわみ率は以下の方法にて求めた。フィルムからサンプルを24×24cmの大きさに切り出し、図1のように2cm間隔で格子状に線を引いた。このサンプルの4辺を、ガラス板に両面粘着テープで固定した。ガラス板としては、ガラス面とフィルムの貼り付き防止のために、表面がサンドマット処理してあるものを使用した。粘着テープで固定される位置は、フィルムの端でその幅は各辺1cmとした。固定の様子を図1に示す。この状態で、サンプルを温度60℃、相対湿度90%RHの恒温恒湿オーブンに1時間放置した。その後、オーブンから取り出して室温にて1時間放置し、フィルムの状態が安定したところで、フィルムのたわみ具合を目視で観察し、下記の基準で湿熱たわみ率を求めた。
[湿熱たわみ率の求め方]
ガラス板に固定したサンプルに蛍光灯の照明を反射させ、以下の規則にしたがって、たわんでいる20mm×20mmのますの個数を数えた。
1)反射した蛍光灯の光が、フィルムのたわみで歪んでいて、かつガラス板からフィルムが浮いている20mm×20mmのます → ×
2)ガラス板からフィルムは浮いていないが、反射した蛍光灯の光がフィルムのたわみで歪んでみえる20mm×20mmのます → ×
3)反射した蛍光灯が歪んではいないものの、ガラス板から浮き上がっている20mm×20mmのます → △
4)反射した蛍光灯の光が歪まず、ガラス板から浮き上がってもいない20mm×20mmのます → ○
それぞれ×は1個、△は0.5個とカウントした。たわんでいる20mm×20mmのますの合計数を、ます全部の個数100(端は粘着テープで固定しているため除く)で割ってたわみ率を求めた。
たわみ率 = たわんだます(個)/100(個)×100(%)
○:20%未満(良好)
×:20%以上(不良)
この実験をn=5実施し、その算術平均を結果とした。
[実施例1]
ジメチルテレフタレート96部、エチレングリコール58部及び酢酸マンガン0.038部を夫々反応器に仕込み、攪拌下内温が240℃になるまでメタノールを留出せしめながらエステル交換反応を行い、該エステル交換反応が終了したのちトリメチルホスフェート0.097部及び三酸化アンチモン0.041部を添加した。引き続いて反応生成物を昇温し、最終的に高真空下280℃の条件で重縮合を行って固有粘度([η])0.64のポリエステルチップを得た。
上記ポリエステルチップを160℃で3時間乾燥したのち、280℃で溶融押出し、20℃に保持した冷却ドラム上で急冷固化せしめ未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを95℃で縦方向に3.6倍に延伸し、次いで下面、さらに上面に下記の塗剤P(塗布液)を乾燥後の厚みが0.06μmになるように塗布し、120℃で横方向に3.6倍に延伸したのち、熱固定温度220℃で熱処理し、厚みが100μmの二軸配向フィルムを得た。
得られた二軸配向フィルムを、240mm×240mmの大きさに裁断した。このフィルムを各フィルム同士の貼り付きを防止するためにテフロンシートに包んでつるした。この状態で75℃、50%Rh、1時間の条件でオフアニール処理した。得られたフィルムの物性を表1および2に示す。
[塗剤P]
(P成分1)共重合ポリエステル樹脂(Tg:68℃) 60重量%。
酸成分:テレフタル酸(90mol%)、イソフタル酸(6mol%)、5―スルホイソフタル酸カリウム(4mol%)。
グリコール成分:エチレングリコール(95mol%)、ネオペンチレングリコール(5mol%)。
(P成分2)N,N’―エチレンビスカプリル酸アミド 5重量%。
(P成分3)アクリル共重合体(数平均分子量:248,000)20重量%。
組成:メチルアクリレート(65mol%)、エチルアクリレート(28mol%)、2―ヒドロキシエチルメタクリレート(2mol%)、N―メチロールメタクリルアミド(5mol%)。
(P成分4)アクリル系樹脂微粒子(平均粒径0.03μm) 10重量%。
(P成分5)ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル 5重量%。
Figure 2006292838
[実施例2]
実施例1と同様に製膜後、オフアニール条件を60℃、50%Rh、3時間とした以外は実施例1と同様に実施した。得られたフィルムの物性を表1および2に示す。
[比較例1]
オフアニールをしなかった以外は、実施例1と同様にして厚み100μmの二軸配向フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1および2に示す。
[比較例2]
延伸倍率を、縦方向を3.2倍、横方向を4.2倍に変更した以外は実施例1と同様にして厚み100μmの二軸配向フィルムを得た。オフアニールをしても、製膜条件が適切でないためたわみが発生した。得られたフィルムの物性を表1および2に示す。
[比較例3]
オフアニールの温度を120℃、50%Rh、1時間に変更した以外は実施例1と同様にして厚み100μmの二軸配向フィルムを得た。オフアニールの条件が適切でないため、オフアニール後のフィルムの平面性が失われていた。得られたフィルムの物性を表1および2に示す。
[参考例1]
熱固定温度を238℃に変更した以外は実施例1と同様にして厚み100μmの二軸配向フィルムを得た。たわみは良いが、光学特性が悪化したため、光拡散板用フィルムとして不適切だった。
本発明によれば、湿熱耐性が高く、たわみの少ない液晶表示装置に用いる光拡散板用の基板として好適なフィルムを提供することができる。
湿熱たわみ率の評価におけるサンプルの格子の様子である。

Claims (5)

  1. 湿熱たわみ率20%未満の二軸配向ポリエステルフィルムからなる光拡散板用フィルム。
  2. 二軸配向ポリエステルフィルムのMD方向の屈折率とTD方向の屈折率の差の絶対値が0.01以下である、請求項1記載の光拡散板用フィルム。
  3. 二軸配向ポリエステルフィルムの150℃30分間の条件でのMD方向の熱収縮率とTD方向の熱収縮率との差の絶対値が0.5以下である、請求項1または2に記載の光拡散板用フィルム。
  4. 請求項3記載の光拡散板用フィルムからなる液晶表示装置用の光拡散板。
  5. 請求項4記載の光拡散板を備える液晶表示装置。
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