JP2004042318A - 二軸配向ポリエステルフィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】離型層を設置する工程等の加熱工程においても平面性を保持することができ、偏光板のクロスニコル法による検査においても精度ある検査を実施できるようなポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】配向主軸の傾きが15度以下であり、180℃の雰囲気下で5分間保持したときのフィルム面内の加熱収縮率が4%以下であり、フィルム面内の5%伸張時の強度(F5)が90MPa以上であることを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルム。
【選択図】 なし
【解決手段】配向主軸の傾きが15度以下であり、180℃の雰囲気下で5分間保持したときのフィルム面内の加熱収縮率が4%以下であり、フィルム面内の5%伸張時の強度(F5)が90MPa以上であることを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルム。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示用途等のフィルムにおいて重要な特性である光学特性に優れたポリエステルフィルム、特に偏光板用の離型フィルムに好適に使用されるポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話やパーソナルコンピューターの急速な普及に伴い、従来型のディスプレイであるCRTに比べ薄型軽量化、低消費電力、高画質化が可能である液晶ディスプレイ(LCD)の需要が著しく伸びつつあり、LCDの大画面化についてもその技術の成長は著しい。しかし、特に大画面化されたTFT型やSTN型のLCDにおいては、製造工程における不良率が高くその改善策の1つとして異物混入の低減化が必要となっており、LCDに使用されている偏光板についてもいかに異物を低減化していくかが重要な課題となっている。
【0003】
偏光板の異物混入等の欠陥検査としては、クロスニコル法による目視検査が一般的である。このクロスニコル法は2枚の偏光板をその配向主軸を直交させてその間に離型フィルムを挟み込むようにして観察し、異物や欠陥があればそこが輝点として現れるので、目視による欠点検査ができるという方法であるが、検査を行う偏光板には粘着剤層を介して離型層を設置したポリエステルフィルムが用いられており、離型ポリエステルフィルムフィルムの光学的異方性が著しい場合には、クロスニコル法の検査の障害となり異物の混入や欠陥を見逃しやすくなるという不具合が生じる。
離型ポリエステルフィルムの光学的異方性を改善するには、一般的には離型層を設ける前のポリエステルフィルムの段階で光学的異方性を改善しておくことが肝要である。かかるポリエステルフィルムの光学的異方性は、製膜時のボーイング現象により引き起こされ、製膜機の両端部に近づくほど大きくなることが知られているため、光学的異方性の小さいフィルムを提供するためには、事実上、製膜機中央部の製品のみが該当し、非常に効率の悪いものとなっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような問題点を解決しようとするものであり、その解決課題は離型層設置工程等の加熱工程においても平面性を保持し、偏光板のクロスニコル法による検査において精度ある検査を実施できるようなポリエステルフィルムを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構成を有するポリエステルフィルムにより、上記課題が容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、配向主軸の傾きが15度以下であり、180℃の雰囲気下で5分間保持したときのフィルム面内の加熱収縮率が4%以下であり、フィルム面内の5%伸張時の強度(F5)が90MPa以上であることを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルムに存する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明でいうポリエステルとは、ジカルボン酸と、ジオールとからあるいはヒドロキシカルボン酸とから重縮合によって得られるエステル基を含むポリマーを指す。ジカルボン酸としては、テレフタル酸、コハク酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を、ジオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール等を、ヒドロキシカルボン酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等をそれぞれ例示することができる。
【0007】
かかるポリマーの代表的なものとして、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6―ナフタレート等が例示される。これらのポリマーはホモポリマーであってもよく、また第3成分を共重合させたものでもよい。
本発明のフィルムとしては、優れた強度や寸法安定性の観点から二軸延伸フィルムが好ましく用いられるが、未延伸または少なくとも一方に延伸されたポリエステルフィルムを用いることもできる。
本発明におけるポリエステルフィルムは、配向主軸の傾き(以下、配向角という)が15度以下であり、好ましくは10度以下である。配向角が15度より大きいとクロスニコル法による検査の際に、光漏れが大きくなり好ましくない。
【0008】
また、180℃の雰囲気下で5分間保持したときのフィルム面内の加熱収縮率は4%以下、好ましくは2%以下であり、さらにはフィルム面内の5%伸張時の強度(F5)が90MPa以上であり、好ましくは100MPa以上である。加熱収縮率が4%より大きい場合、またはF5値が90MPa未満である場合には、離型層設置工程等の加熱工程において、フィルム平面性を損なう場合があり好ましくない。
【0009】
また、下記式▲1▼にて定義されるフィルムのΔnは35以上であることが好ましく、幅方向におけるΔnの変化量は、幅1000mmあたり15以下、さらには10以下であることが好ましい。Δnがかかる範囲を逸脱する場合には、クロスニコル検査における光漏れが大きくなる場合がある。
Δn=(nγ−nα)×1000 …▲1▼
(上記式中、nγはフィルム面内の最大屈折率、nβはそれに直交する方向の屈折率を意味する)
また、色差計を用いて透過光により測定されるフィルムのb値は、−2.0〜2.0の範囲内であることが好ましい。b値がこの範囲を外れる場合には、ポリエステルフィルム上に離型層を設置した離型フィルムロールにおいてその端面の色調が極端に黄色い場合や青い場合があり、実用上問題の生じる場合がある。
【0010】
本発明のポリエステルフィルムには、作業性を良好にする目的でフィラーを添加し、フィルムの滑り性を向上させることが好ましく、添加するフィラーとしては、例えばシリカ、炭酸カルシウム、カオリン、酸化チタン、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ゼオライト等の無機粒子、またはシリコーン樹脂、架橋ポリスチレン、アクリル樹脂等の有機粒子を単独または混合体でフィルム中に配合させることが挙げられる。この場合、使用する粒子の平均粒径、添加量、さらに粒径分布は、本発明の要旨を逸脱しない限り特に限定されるものではないが、平均粒径は0.1〜4.0μm、添加量は0.01〜3.0重量%であることが好ましい。
また、本発明のポリエステルフィルムは、本発明の要旨を越えない限り、単層フィルムであっても複数の層が積層された多層フィルムであってもよい。
【0011】
以下、本発明のフィルムの製造方法に関して具体的に説明するが、本発明の構成を満足する限り、本発明は以下の例示に特に限定されるものではない。
公知の手法により乾燥したポリエステルチップを溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーをダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0012】
本発明においては、このようにして得られたシートを2軸方向に延伸してフィルム化することが好ましい。延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを好ましくは縦方向に70〜145℃で2〜6倍に延伸し、縦1軸延伸フィルムとした後、横方向に90〜160℃で2〜6倍延伸を行い、150〜240℃で1〜600秒間熱処理を行うことが好ましい。さらにこの際、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。
【0013】
本発明のポリエステルフィルムは、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その要求特性に応じて必要な特性、例えば帯電防止性、耐候性および表面硬度の向上のため、縦延伸終了後、横延伸のテンター入口前にコートをしてテンター内で乾燥する、いわゆるインラインコートを行ってもよい。また、フィルム製造後にオフラインコートで各種のコートを行ってもよい。このようなコートは片面、両面のいずれでもよい。コーティングの材料としては、オフラインコーティングの場合は水系および/または溶媒系のいずれでもよいが、インラインコーティングの場合は水系または水分散系が好ましい。
また、本発明のポリエステルフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲であれば、他の熱可塑性樹脂、例えばポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等を混合することができる。また、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、顔料、蛍光増白剤等を混合することができる。
【0014】
本発明のポリエステルフィルムに離型層を設置する場合、離型層を構成する材料は離型性を有するものであれば特に限定されるものではなく、硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。それらの中でも、硬化型シリコーン樹脂を主成分とした場合に離型性が良好な点で良い。
硬化型シリコーン樹脂の種類としては、溶剤付加型・溶剤縮合型・溶剤紫外線硬化型、無溶剤付加型、無溶剤縮合型、無溶剤紫外線硬化型、無溶剤電子線硬化型等いずれの硬化反応タイプでも用いることができる。
【0015】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、種々の諸物性、特性は以下のように測定、または定義されたものである。
【0016】
(1)配向角の測定
カールツァイス社製偏光顕微鏡を用いて、ポリエステルフィルムの配向を観察し、ポリエステルフィルム面内の主配向軸の方向がポリエステルフィルムの幅方向に対して何度傾いているかを測定し配向角とした。この測定を得られたフィルムの中央部と両端部の計3カ所について実施し、3カ所の内で最も大きい配向角の値を最大配向角とした。
【0017】
(2)加熱収縮率の測定
ポリエステルフィルムの中央部より、長手方向と幅方向について15mm幅×150mm長の短冊状にサンプルをそれぞれ切り出し、無張力状態にて180℃に設定されたオーブン(田葉井製作所製:熱風循環炉)中で5分間の加熱処理を行い、加熱処理前後の長さを測微計により測定し、下記式▲2▼にて加熱収縮率を求めた。
加熱収縮率(%)=[(a−b)/a]×100 …▲2▼
(上記式中、aおよびbは、それぞれ加熱前後のフィルム長さ(mm)を意味する)
【0018】
(3)F5値の測定
加熱収縮率の測定と同様に、ポリエステルフィルムの中央部より長手方向と幅方向について長さ50mm、幅15mmの短冊フィルムを切り出し、(株)インテスコ製の引張試験機インテスコモデル2001型を用いて温度23℃、湿度50%RHに調節された室内において、50mm/分の速度で引張り、5%伸張時の強度をF5値として求めた。
【0019】
(4)屈折率の測定
アタゴ光学社製アッベ式屈折計を用い、配向角が0度となる箇所より採取したフィルムについて、フィルム面内の屈折率の最大値nγ、さらには、それに直角する方向の屈折率nβを測定し、下記式▲1▼よりΔnを算出した。
Δn=(nγ−nβ)×1000 …▲1▼
なお、屈折率の測定は、ナトリウムD線を用い、23℃、50%RHに調整された室内で行った。
また、フィルム幅方向についてΔnの分布を求め、Δnの最大値(Δnmax)と最小値(Δnmin)およびその2区間の幅方向における距離(d)(mm)を求め、下記式▲3▼より幅方向1000mmあたりにおけるΔnの変化量とした。
Δn変化量=(Δnmax−Δnmin)×1000/d …▲3▼
【0020】
(5)b値の測定
日本電色工業(株)製分光色色差計 SE−2000型を用いて、JIS Z−8722の方法に準じて、透過法によるb値を測定した。
【0021】
(6)クロスニコル下での目視検査性
フィルム表面に、硬化型シリコーン樹脂(信越化学製「KS−779H」)100部、硬化剤(信越化学製「CAT−PL−8」)1部、メチルエチルケトン(MEK)/トルエン混合溶媒系2200部よりなる離型剤を、塗工量が0.1g/mm2になるように塗布して、170℃で10秒間の乾燥を行い、離型フィルムを得た後、離型フィルムの幅方向が偏光フィルムの配向軸と平行となるように、粘着剤を介して離型フィルムを偏光フィルムに密着させ偏光板とし、密着させた離型フィルム上に配向軸がフィルム幅方向と直交するように検査用の偏光板を重ね合わせ、偏光板側より白色光を照射し、検査用の偏光板より目視にて観察し、クロスニコル下での目視検査性を下記基準に従い評価した。
なお、測定の際には得られたフィルムの中央部と両端部の計3カ所のフィルムを用いて評価し、最も不良であった評価結果をそのフィルムの目視検査性とした。
<クロスニコル下での目視検査性 判定基準>
○:光干渉性無く検査可能
△:光干渉性はあるが検査可能
×:光干渉性があり検査不能
○および△は実用上問題のないレベルである。
【0022】
(7)離型層設置後の平面性検査
フィルム上に硬化型シリコーン樹脂(信越化学製「KS−779H」)100部、硬化剤(信越化学製「CAT−PL−8」)1部、メチルエチルケトン(MEK)/トルエン混合溶媒系2200部よりなる離型剤を、塗工量が0.1g/mm2になるように塗布して、170℃で10秒間の乾燥を行い、離型フィルムとし、得られた離型フィルムの平面性を目視にて検査した。
○:極めて平面性がよく実用性に富んでいる。
△:やや平面性に欠けるが実用的である。
×:平面性悪く実用性に欠ける。
【0023】
実施例 1
(ポリエステルチップの製造法)
ジメチルテレフタレート100部、エチレングリコール70部、および酢酸カルシウム一水塩0.07部を反応器にとり、加熱昇温すると共にメタノール留去させエステル交換反応を行い、反応開始後、約4時間半を要して230℃に昇温し、実質的にエステル交換反応を終了した。
次に燐酸0.04部および三酸化アンチモン0.035部を添加し、常法に従って重合した。すなわち、反応温度を徐々に上げて、最終的に280℃とし、一方、圧力は徐々に減じて、最終的に0.05mmHgとした。4時間後、反応を終了し、常法に従い、チップ化して固有粘度が0.65であるポリエステルAを得た。
さらに、上記ポリエステルAを製造する際、平均一次粒径2.4μmの非晶質シリカを5000ppm添加し、ポリエステルBを得た。
また、上記ポリエステルAを製造する際、平均一次粒径60nmのδ型の酸化アルミニウムを20000ppm添加し、ポリエステルCを得た。
【0024】
(ポリエステルフィルムの製造)
上記ポリエステルA〜Eを下記表1に示す配合比でA層、B層用の混合原料とし、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、A層を最外層(表層)、B層を中間層として、B層の厚みが全厚みの75%の厚みとなるように2種3層の層構成で、20℃に冷却したキャスティングドラム上に共押出し冷却固化させて無配向シートを得た。次いで、100℃にて縦方向に2.8倍延伸した後、テンター内で予熱工程を経て120℃で4.6倍の横延伸を施した後、225℃で10秒間の熱処理を行い、その後180℃で幅方向に10%の弛緩を加え、幅3000mm、厚み38μmのポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムは、目視検査性に優れ実用性の高いポリエステルフィルムであった。
さらに、得られたポリエステルフィルム上に離型層を塗布して離型フィルムを得たが、平面性についても良好であった。
【0025】
実施例2〜4
原料配合、製膜条件を表1記載のように変更した以外、実施例1と同様にして製造しポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムは、表1に示したような結果となり、いずれも実用性の高いフィルムであった。
また、実施例2で得られたポリエステルフィルムを用いて実施例1と同様にして離型フィルムを得たが、平面性についても良好であった。
【0026】
比較例1
原料配合、製膜条件を下記表2記載のように変更した以外、実施例1と同様にして製造しポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムは目視検査性に劣っており、またb値も高く実用性に欠けたフィルムであった。
比較例2〜3
原料配合、製膜条件を表2記載のように変更した以外、実施例1と同様にして製造しポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムは表2に示す結果であり、いずれも目視検査性は良好であったが、離型フィルムとした際の平面性の点で劣っており、実用性に欠けたフィルムであった。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、離型層設置工程等の加熱工程においても平面性を保持し、偏光板のクロスニコル法による検査において精度ある検査を実施できるようなポリエステルフィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示用途等のフィルムにおいて重要な特性である光学特性に優れたポリエステルフィルム、特に偏光板用の離型フィルムに好適に使用されるポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話やパーソナルコンピューターの急速な普及に伴い、従来型のディスプレイであるCRTに比べ薄型軽量化、低消費電力、高画質化が可能である液晶ディスプレイ(LCD)の需要が著しく伸びつつあり、LCDの大画面化についてもその技術の成長は著しい。しかし、特に大画面化されたTFT型やSTN型のLCDにおいては、製造工程における不良率が高くその改善策の1つとして異物混入の低減化が必要となっており、LCDに使用されている偏光板についてもいかに異物を低減化していくかが重要な課題となっている。
【0003】
偏光板の異物混入等の欠陥検査としては、クロスニコル法による目視検査が一般的である。このクロスニコル法は2枚の偏光板をその配向主軸を直交させてその間に離型フィルムを挟み込むようにして観察し、異物や欠陥があればそこが輝点として現れるので、目視による欠点検査ができるという方法であるが、検査を行う偏光板には粘着剤層を介して離型層を設置したポリエステルフィルムが用いられており、離型ポリエステルフィルムフィルムの光学的異方性が著しい場合には、クロスニコル法の検査の障害となり異物の混入や欠陥を見逃しやすくなるという不具合が生じる。
離型ポリエステルフィルムの光学的異方性を改善するには、一般的には離型層を設ける前のポリエステルフィルムの段階で光学的異方性を改善しておくことが肝要である。かかるポリエステルフィルムの光学的異方性は、製膜時のボーイング現象により引き起こされ、製膜機の両端部に近づくほど大きくなることが知られているため、光学的異方性の小さいフィルムを提供するためには、事実上、製膜機中央部の製品のみが該当し、非常に効率の悪いものとなっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような問題点を解決しようとするものであり、その解決課題は離型層設置工程等の加熱工程においても平面性を保持し、偏光板のクロスニコル法による検査において精度ある検査を実施できるようなポリエステルフィルムを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構成を有するポリエステルフィルムにより、上記課題が容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、配向主軸の傾きが15度以下であり、180℃の雰囲気下で5分間保持したときのフィルム面内の加熱収縮率が4%以下であり、フィルム面内の5%伸張時の強度(F5)が90MPa以上であることを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルムに存する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明でいうポリエステルとは、ジカルボン酸と、ジオールとからあるいはヒドロキシカルボン酸とから重縮合によって得られるエステル基を含むポリマーを指す。ジカルボン酸としては、テレフタル酸、コハク酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を、ジオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール等を、ヒドロキシカルボン酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等をそれぞれ例示することができる。
【0007】
かかるポリマーの代表的なものとして、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6―ナフタレート等が例示される。これらのポリマーはホモポリマーであってもよく、また第3成分を共重合させたものでもよい。
本発明のフィルムとしては、優れた強度や寸法安定性の観点から二軸延伸フィルムが好ましく用いられるが、未延伸または少なくとも一方に延伸されたポリエステルフィルムを用いることもできる。
本発明におけるポリエステルフィルムは、配向主軸の傾き(以下、配向角という)が15度以下であり、好ましくは10度以下である。配向角が15度より大きいとクロスニコル法による検査の際に、光漏れが大きくなり好ましくない。
【0008】
また、180℃の雰囲気下で5分間保持したときのフィルム面内の加熱収縮率は4%以下、好ましくは2%以下であり、さらにはフィルム面内の5%伸張時の強度(F5)が90MPa以上であり、好ましくは100MPa以上である。加熱収縮率が4%より大きい場合、またはF5値が90MPa未満である場合には、離型層設置工程等の加熱工程において、フィルム平面性を損なう場合があり好ましくない。
【0009】
また、下記式▲1▼にて定義されるフィルムのΔnは35以上であることが好ましく、幅方向におけるΔnの変化量は、幅1000mmあたり15以下、さらには10以下であることが好ましい。Δnがかかる範囲を逸脱する場合には、クロスニコル検査における光漏れが大きくなる場合がある。
Δn=(nγ−nα)×1000 …▲1▼
(上記式中、nγはフィルム面内の最大屈折率、nβはそれに直交する方向の屈折率を意味する)
また、色差計を用いて透過光により測定されるフィルムのb値は、−2.0〜2.0の範囲内であることが好ましい。b値がこの範囲を外れる場合には、ポリエステルフィルム上に離型層を設置した離型フィルムロールにおいてその端面の色調が極端に黄色い場合や青い場合があり、実用上問題の生じる場合がある。
【0010】
本発明のポリエステルフィルムには、作業性を良好にする目的でフィラーを添加し、フィルムの滑り性を向上させることが好ましく、添加するフィラーとしては、例えばシリカ、炭酸カルシウム、カオリン、酸化チタン、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ゼオライト等の無機粒子、またはシリコーン樹脂、架橋ポリスチレン、アクリル樹脂等の有機粒子を単独または混合体でフィルム中に配合させることが挙げられる。この場合、使用する粒子の平均粒径、添加量、さらに粒径分布は、本発明の要旨を逸脱しない限り特に限定されるものではないが、平均粒径は0.1〜4.0μm、添加量は0.01〜3.0重量%であることが好ましい。
また、本発明のポリエステルフィルムは、本発明の要旨を越えない限り、単層フィルムであっても複数の層が積層された多層フィルムであってもよい。
【0011】
以下、本発明のフィルムの製造方法に関して具体的に説明するが、本発明の構成を満足する限り、本発明は以下の例示に特に限定されるものではない。
公知の手法により乾燥したポリエステルチップを溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーをダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0012】
本発明においては、このようにして得られたシートを2軸方向に延伸してフィルム化することが好ましい。延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを好ましくは縦方向に70〜145℃で2〜6倍に延伸し、縦1軸延伸フィルムとした後、横方向に90〜160℃で2〜6倍延伸を行い、150〜240℃で1〜600秒間熱処理を行うことが好ましい。さらにこの際、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。
【0013】
本発明のポリエステルフィルムは、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その要求特性に応じて必要な特性、例えば帯電防止性、耐候性および表面硬度の向上のため、縦延伸終了後、横延伸のテンター入口前にコートをしてテンター内で乾燥する、いわゆるインラインコートを行ってもよい。また、フィルム製造後にオフラインコートで各種のコートを行ってもよい。このようなコートは片面、両面のいずれでもよい。コーティングの材料としては、オフラインコーティングの場合は水系および/または溶媒系のいずれでもよいが、インラインコーティングの場合は水系または水分散系が好ましい。
また、本発明のポリエステルフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲であれば、他の熱可塑性樹脂、例えばポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等を混合することができる。また、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、顔料、蛍光増白剤等を混合することができる。
【0014】
本発明のポリエステルフィルムに離型層を設置する場合、離型層を構成する材料は離型性を有するものであれば特に限定されるものではなく、硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。それらの中でも、硬化型シリコーン樹脂を主成分とした場合に離型性が良好な点で良い。
硬化型シリコーン樹脂の種類としては、溶剤付加型・溶剤縮合型・溶剤紫外線硬化型、無溶剤付加型、無溶剤縮合型、無溶剤紫外線硬化型、無溶剤電子線硬化型等いずれの硬化反応タイプでも用いることができる。
【0015】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、種々の諸物性、特性は以下のように測定、または定義されたものである。
【0016】
(1)配向角の測定
カールツァイス社製偏光顕微鏡を用いて、ポリエステルフィルムの配向を観察し、ポリエステルフィルム面内の主配向軸の方向がポリエステルフィルムの幅方向に対して何度傾いているかを測定し配向角とした。この測定を得られたフィルムの中央部と両端部の計3カ所について実施し、3カ所の内で最も大きい配向角の値を最大配向角とした。
【0017】
(2)加熱収縮率の測定
ポリエステルフィルムの中央部より、長手方向と幅方向について15mm幅×150mm長の短冊状にサンプルをそれぞれ切り出し、無張力状態にて180℃に設定されたオーブン(田葉井製作所製:熱風循環炉)中で5分間の加熱処理を行い、加熱処理前後の長さを測微計により測定し、下記式▲2▼にて加熱収縮率を求めた。
加熱収縮率(%)=[(a−b)/a]×100 …▲2▼
(上記式中、aおよびbは、それぞれ加熱前後のフィルム長さ(mm)を意味する)
【0018】
(3)F5値の測定
加熱収縮率の測定と同様に、ポリエステルフィルムの中央部より長手方向と幅方向について長さ50mm、幅15mmの短冊フィルムを切り出し、(株)インテスコ製の引張試験機インテスコモデル2001型を用いて温度23℃、湿度50%RHに調節された室内において、50mm/分の速度で引張り、5%伸張時の強度をF5値として求めた。
【0019】
(4)屈折率の測定
アタゴ光学社製アッベ式屈折計を用い、配向角が0度となる箇所より採取したフィルムについて、フィルム面内の屈折率の最大値nγ、さらには、それに直角する方向の屈折率nβを測定し、下記式▲1▼よりΔnを算出した。
Δn=(nγ−nβ)×1000 …▲1▼
なお、屈折率の測定は、ナトリウムD線を用い、23℃、50%RHに調整された室内で行った。
また、フィルム幅方向についてΔnの分布を求め、Δnの最大値(Δnmax)と最小値(Δnmin)およびその2区間の幅方向における距離(d)(mm)を求め、下記式▲3▼より幅方向1000mmあたりにおけるΔnの変化量とした。
Δn変化量=(Δnmax−Δnmin)×1000/d …▲3▼
【0020】
(5)b値の測定
日本電色工業(株)製分光色色差計 SE−2000型を用いて、JIS Z−8722の方法に準じて、透過法によるb値を測定した。
【0021】
(6)クロスニコル下での目視検査性
フィルム表面に、硬化型シリコーン樹脂(信越化学製「KS−779H」)100部、硬化剤(信越化学製「CAT−PL−8」)1部、メチルエチルケトン(MEK)/トルエン混合溶媒系2200部よりなる離型剤を、塗工量が0.1g/mm2になるように塗布して、170℃で10秒間の乾燥を行い、離型フィルムを得た後、離型フィルムの幅方向が偏光フィルムの配向軸と平行となるように、粘着剤を介して離型フィルムを偏光フィルムに密着させ偏光板とし、密着させた離型フィルム上に配向軸がフィルム幅方向と直交するように検査用の偏光板を重ね合わせ、偏光板側より白色光を照射し、検査用の偏光板より目視にて観察し、クロスニコル下での目視検査性を下記基準に従い評価した。
なお、測定の際には得られたフィルムの中央部と両端部の計3カ所のフィルムを用いて評価し、最も不良であった評価結果をそのフィルムの目視検査性とした。
<クロスニコル下での目視検査性 判定基準>
○:光干渉性無く検査可能
△:光干渉性はあるが検査可能
×:光干渉性があり検査不能
○および△は実用上問題のないレベルである。
【0022】
(7)離型層設置後の平面性検査
フィルム上に硬化型シリコーン樹脂(信越化学製「KS−779H」)100部、硬化剤(信越化学製「CAT−PL−8」)1部、メチルエチルケトン(MEK)/トルエン混合溶媒系2200部よりなる離型剤を、塗工量が0.1g/mm2になるように塗布して、170℃で10秒間の乾燥を行い、離型フィルムとし、得られた離型フィルムの平面性を目視にて検査した。
○:極めて平面性がよく実用性に富んでいる。
△:やや平面性に欠けるが実用的である。
×:平面性悪く実用性に欠ける。
【0023】
実施例 1
(ポリエステルチップの製造法)
ジメチルテレフタレート100部、エチレングリコール70部、および酢酸カルシウム一水塩0.07部を反応器にとり、加熱昇温すると共にメタノール留去させエステル交換反応を行い、反応開始後、約4時間半を要して230℃に昇温し、実質的にエステル交換反応を終了した。
次に燐酸0.04部および三酸化アンチモン0.035部を添加し、常法に従って重合した。すなわち、反応温度を徐々に上げて、最終的に280℃とし、一方、圧力は徐々に減じて、最終的に0.05mmHgとした。4時間後、反応を終了し、常法に従い、チップ化して固有粘度が0.65であるポリエステルAを得た。
さらに、上記ポリエステルAを製造する際、平均一次粒径2.4μmの非晶質シリカを5000ppm添加し、ポリエステルBを得た。
また、上記ポリエステルAを製造する際、平均一次粒径60nmのδ型の酸化アルミニウムを20000ppm添加し、ポリエステルCを得た。
【0024】
(ポリエステルフィルムの製造)
上記ポリエステルA〜Eを下記表1に示す配合比でA層、B層用の混合原料とし、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、A層を最外層(表層)、B層を中間層として、B層の厚みが全厚みの75%の厚みとなるように2種3層の層構成で、20℃に冷却したキャスティングドラム上に共押出し冷却固化させて無配向シートを得た。次いで、100℃にて縦方向に2.8倍延伸した後、テンター内で予熱工程を経て120℃で4.6倍の横延伸を施した後、225℃で10秒間の熱処理を行い、その後180℃で幅方向に10%の弛緩を加え、幅3000mm、厚み38μmのポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムは、目視検査性に優れ実用性の高いポリエステルフィルムであった。
さらに、得られたポリエステルフィルム上に離型層を塗布して離型フィルムを得たが、平面性についても良好であった。
【0025】
実施例2〜4
原料配合、製膜条件を表1記載のように変更した以外、実施例1と同様にして製造しポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムは、表1に示したような結果となり、いずれも実用性の高いフィルムであった。
また、実施例2で得られたポリエステルフィルムを用いて実施例1と同様にして離型フィルムを得たが、平面性についても良好であった。
【0026】
比較例1
原料配合、製膜条件を下記表2記載のように変更した以外、実施例1と同様にして製造しポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムは目視検査性に劣っており、またb値も高く実用性に欠けたフィルムであった。
比較例2〜3
原料配合、製膜条件を表2記載のように変更した以外、実施例1と同様にして製造しポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムは表2に示す結果であり、いずれも目視検査性は良好であったが、離型フィルムとした際の平面性の点で劣っており、実用性に欠けたフィルムであった。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、離型層設置工程等の加熱工程においても平面性を保持し、偏光板のクロスニコル法による検査において精度ある検査を実施できるようなポリエステルフィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。
Claims (4)
- 配向主軸の傾きが15度以下であり、180℃の雰囲気下で5分間保持したときのフィルム面内の加熱収縮率が4%以下であり、フィルム面内の5%伸張時の強度(F5)が90MPa以上であることを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルム。
- 下記式▲1▼で定義されるフィルムのΔnが35以上であり、かつフィルム幅方向における幅1000mmあたりのΔn変化量が15以下であることを特徴とする請求項1記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
Δn=(nγ−nα)×1000 …▲1▼
(上記式中、nγはフィルム面内の最大屈折率、nβはそれに直交する方向の屈折率を意味する) - フィルムのb値が−2.0〜2.0の範囲内であることを特徴とする請求項1記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルムの片面に離型層を設けてなることを特徴とする離型フィルム。
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