JP5214632B2 - 骨吸収抑制剤 - Google Patents

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Description

本発明は、骨吸収抑制剤に関する。
骨代謝においては、破骨細胞が骨吸収を担い、骨芽細胞が骨形成を担っている。正常な骨組織では、骨吸収と骨形成とが絶えずバランスよく繰り返されることで、骨代謝が進み、骨密度が一定に維持されている。このバランスが破綻して骨吸収が骨形成を上回ると、骨密度が低下し、やがて骨粗鬆症が発症する。骨吸収及び骨形成のバランスを是正して、骨粗鬆症を治療又は予防するには、骨吸収を抑制するか、骨形成を促進することが有効である。
骨吸収抑制作用を有する化合物としては、例えば、ホップの苦味成分であるアルファ酸及びイソアルファ酸が知られている(特許文献1参照)。
特開平7−330594号公報
しかしながら、特許文献1に記載のような従来の骨吸収抑制剤は必ずしも十分な骨吸収抑制作用を有するものではなく、一方で、近年、高齢化社会の進展、生活習慣の変化等に伴って、骨吸収を効果的に抑制することができる新たな骨吸収抑制剤がより一層強く求められている。
そこで、本発明は、骨吸収を効果的に抑制することが可能な新規の骨吸収抑制剤を提供することを課題とする。
本発明は、テトラヒドロイソアルファ酸、ローイソアルファ酸及びヘキサヒドロイソアルファ酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を有効成分とする骨吸収抑制剤を提供する。
テトラヒドロイソアルファ酸、ローイソアルファ酸及びヘキサヒドロイソアルファ酸は、それぞれ、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物である。なお、一般式(1)〜(3)中、Rは、−CHCH(CH、−CH(CH、−CH(CH)CHCH等から選択される基を表す。
Figure 0005214632
Figure 0005214632
Figure 0005214632
テトラヒドロイソアルファ酸としては、例えば、テトラヒドロイソフムロン、テトラヒドロイソコフムロン及びテトラヒドロイソアドフムロンが挙げられ、テトラヒドロイソアルファ酸を含有する骨吸収抑制剤としては、例えば、テトラヒドロイソフムロン、テトラヒドロイソコフムロン及びテトラヒドロイソアドフムロンのうちの少なくとも1種を含有する骨吸収抑制剤が挙げられる。テトラヒドロイソフムロン、テトラヒドロイソコフムロン及びテトラヒドロイソアドフムロンは、それぞれ、一般式(1)で表される化合物のうち、Rが−CHCH(CH、−CH(CH及び−CH(CH)CHCHである化合物である。
ローイソアルファ酸としては、例えば、ローイソフムロン、ローイソコフムロン及びローイソアドフムロンが挙げられ、ローイソアルファ酸を含有する骨吸収抑制剤としては、例えば、ローイソフムロン、ローイソコフムロン及びローイソアドフムロンのうちの少なくとも1種を含有する骨吸収抑制剤が挙げられる。ローイソフムロン、ローイソコフムロン及びローイソアドフムロンは、それぞれ、一般式(2)で表される化合物のうち、Rが−CHCH(CH、−CH(CH及び−CH(CH)CHCHである化合物である。
ヘキサヒドロイソアルファ酸としては、例えば、ヘキサヒドロイソフムロン、ヘキサヒドロイソコフムロン及びヘキサヒドロイソアドフムロンが挙げられ、ヘキサヒドロイソアルファ酸を含有する骨吸収抑制剤としては、例えば、ヘキサヒドロイソフムロン、ヘキサヒドロイソコフムロン及びヘキサヒドロイソアドフムロンのうちの少なくとも1種を含有する骨吸収抑制剤が挙げられる。ヘキサヒドロイソフムロン、ヘキサヒドロイソコフムロン及びヘキサヒドロイソアドフムロンは、それぞれ、一般式(3)で表される化合物のうち、Rが−CHCH(CH、−CH(CH及び−CH(CH)CHCHである化合物である。
骨吸収を担う破骨細胞は、骨表面に酸(塩酸等)やプロテアーゼ(カテプシンK、MMP−9等)を分泌して、骨の無機成分(ハイドロキシアパタイト)及びタンパク質成分(コラーゲン等)を分解することを通じて、骨吸収を行う。本発明の骨吸収抑制剤は、少なくとも、破骨細胞による骨の無機成分の分解を抑制することができ、更に、カテプシンKを阻害して骨のタンパク質成分(特にI型コラーゲン)の分解を抑制することができる。すなわち、本発明の骨吸収抑制剤は、骨吸収を効果的に抑制することができ、特に、骨吸収の亢進に起因する骨密度の低下を改善又は予防するのに有用である。
また、テトラヒドロイソアルファ酸、ローイソアルファ酸及びヘキサヒドロイソアルファ酸は光に対して安定であるので、光分解による効果の低減・喪失が起こりにくい。このため、本発明の骨吸収抑制剤は、取扱い(保管、運搬等)が容易である。
更に、テトラヒドロイソアルファ酸、ローイソアルファ酸及びヘキサヒドロイソアルファ酸は、既にビール系飲料において苦味成分として利用され、生体に対する安全性は高いと考えられる。従って、本発明の骨吸収抑制剤は、生体に対する安全性に優れていると考えられる。
また、テトラヒドロイソアルファ酸、ローイソアルファ酸及びヘキサヒドロイソアルファ酸は、アルファ酸及びイソアルファ酸と比較して効果的に骨吸収を抑制することができる。すなわち、本発明の骨吸収抑制剤は、アルファ酸及びイソアルファ酸と比較して、より少量で同等の骨吸収抑制効果を得ることができ、そのため、例えば、香味への影響を低減しつつ幅広い飲食品に利用することができる。
なお、本発明の骨吸収抑制剤は、上述のように、骨の無機成分(ハイドロキシアパタイト)の分解を抑制することができ、更に、カテプシンKを阻害することができることから、骨の無機成分の分解の抑制、又はカテプシンKの阻害、のために使用することが可能である。
また、本発明の骨吸収抑制剤は、医薬、飲食品添加物、飲食品、飼料添加物、飼料等の成分として使用することができる。すなわち、本発明はまた、本発明の骨吸収抑制剤を含有する医薬、飲食品添加物、飲食品、飼料添加物、飼料等を提供する。
本発明によれば、骨吸収を効果的に抑制することが可能な新規の骨吸収抑制剤が提供される。また、そのような骨吸収抑制剤を含有する医薬、飲食品添加物、飲食品、飼料添加物、飼料等が提供される。
各種濃度の被験物質(テトラヒドロイソアルファ酸、ローイソアルファ酸、ヘキサヒドロイソアルファ酸、アルファ酸又はイソアルファ酸)の存在下で行われたピットフォーメーションアッセイにおける骨吸収面積から換算した分解抑制相対活性(骨吸収面積)を示すグラフである。 各種濃度の被験物質(テトラヒドロイソアルファ酸、ローイソアルファ酸、ヘキサヒドロイソアルファ酸、アルファ酸又はイソアルファ酸)の存在下で行われたピットフォーメーションアッセイにおける骨吸収痕跡数から換算した分解抑制相対活性(骨吸収痕跡数)を示すグラフである。 各種濃度の被験物質(テトラヒドロイソアルファ酸、ローイソアルファ酸又はヘキサヒドロイソアルファ酸)の存在下のカテプシンKの活性を示すグラフである。 テトラヒドロイソアルファ酸を投与されたSAMP6マウスの大腿骨近位部の骨密度を示すグラフである。 テトラヒドロイソアルファ酸を投与されたSAMP6マウスの大腿骨遠位部の骨密度を示すグラフである。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
本発明の骨吸収抑制剤は、テトラヒドロイソアルファ酸、ローイソアルファ酸及びヘキサヒドロイソアルファ酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有する。
テトラヒドロイソアルファ酸、ローイソアルファ酸及びヘキサヒドロイソアルファ酸は、例えば、下記反応式で表される方法に従って得ることができる。なお、下記反応式において、一般式(1)〜(5)は、それぞれ、テトラヒドロイソアルファ酸、ローイソアルファ酸、ヘキサヒドロイソアルファ酸、アルファ酸及びイソアルファ酸を表す。また、一般式(1)〜(5)中、Rは、−CHCH(CH、−CH(CH、−CH(CH)CHCH等から選択される基を表す。
Figure 0005214632
ここで、ホップの苦味成分であるアルファ酸は、天然のホップを抽出し、抽出物を分画・精製することにより得ることができる。例えば、特開平7−330594号公報に記載の方法により得ることができる。また、イソアルファ酸は、アルファ酸をアルカリ条件下で加熱することにより得ることができる。
また、テトラヒドロイソアルファ酸は、イソアルファ酸をパラジウム付活性炭の存在下、水素ガスで接触還元させることにより得ることができる。また、ローイソアルファ酸は、イソアルファ酸を水素化ホウ素ナトリウムと反応させることにより得ることができる。また、ヘキサヒドロイソアルファ酸は、テトラヒドロイソアルファ酸を水素化ホウ素ナトリウムと反応させることにより得ることができる。
なお、テトラヒドロイソアルファ酸、ローイソアルファ酸、ヘキサヒドロイソアルファ酸、アルファ酸及びイソアルファ酸は、所望の成分を含有する市販のホップエキスから、HPLC等を用いて分取することによって得ることもできる。
本発明の骨吸収抑制剤は、固体、液体(水溶性又は脂溶性の溶液又は懸濁液)、ペースト等のいずれの形状でもよく、また、散剤、顆粒剤、錠剤、シロップ剤、トローチ剤、カプセル剤、注射剤等のいずれの剤形をとってもよい。また、放出制御製剤の形態をとることもできる。また、本発明の骨吸収抑制剤は、テトラヒドロイソアルファ酸、ローイソアルファ酸及びヘキサヒドロイソアルファ酸のうちの少なくとも1種からなるもの、或いは、本質的に、テトラヒドロイソアルファ酸、ローイソアルファ酸及びヘキサヒドロイソアルファ酸のうちの少なくとも1種からなるものであってもよい。
上述の各種製剤は、テトラヒドロイソアルファ酸、ローイソアルファ酸及びヘキサヒドロイソアルファ酸のうちの少なくとも1種と、薬学的に許容される添加剤(賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、乳化剤、界面活性剤、基剤、溶解補助剤、懸濁化剤等)と、を混和することによって調製することができる。
例えば、賦形剤としては、ラクトース、スクロース、デンプン、デキストリン等が挙げられる。結合剤としては、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク等が挙げられる。崩壊剤としては、例えば、結晶セルロース、寒天、ゼラチン、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、デキストリン等が挙げられる。乳化剤又は界面活性剤としては、Tween 60、Tween 80、Span 80、モノステアリン酸グリセリン等が挙げられる。基剤としては、セトステアリルアルコール、ラノリン、ポリエチレングリコール、米糠油、魚油(DHA、EPA等)、オリーブ油等が挙げられる。溶解補助剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、Tween 80等が挙げられる。懸濁化剤としては、上述の界面活性剤の他、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
本発明の骨吸収抑制剤は、医薬、飲食品添加物、飲食品、飼料添加物、飼料等の成分として使用することができる。
例えば、本発明の骨吸収抑制剤は、水、清涼飲料水、果汁飲料、乳飲料、アルコール飲料、パン類、麺類、米類、豆腐、乳製品、醤油、味噌、菓子類等の飲食品への添加物として使用することができる。これらの飲食品は、当分野で通常使用される他の添加物を更に含有していてもよく、そのような添加物としては、例えば、苦味料、香料、リンゴファイバー、大豆ファイバー、肉エキス、黒酢エキス、ゼラチン、コーンスターチ、蜂蜜、動植物油脂;グルコース等の単糖類;スクロース、フルクトース、マンニトール等の二糖類;デキストロース、デンプン等の多糖類;エリスリトール、キシリトール、ソルビトール等の糖アルコール類;ビタミンC等のビタミン類、が挙げられる。本発明の骨吸収抑制剤はまた、特定保健用食品、特殊栄養食品、栄養補助食品、健康食品、機能性食品、病者用食品等の成分として使用することもできる。
本発明の骨吸収抑制剤は、ヒトに投与されても、非ヒト哺乳動物に投与されてもよい。投与方法は、経口投与、直腸投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、槽内投与、膣内投与、腹腔内投与、膀胱内投与、吸入投与等の全身投与、及び軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤等による局所投与のいずれでもよい。投与量及び投与方法は、投与される個体の状態、年齢等に応じて適宜決定することができる。好適な投与方法としては、例えば、経口投与が挙げられる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1:テトラヒドロイソアルファ酸による、骨の無機成分の分解の抑制〕
(試験サンプルの調製)
テトラヒドロイソアルファ酸(テトラヒドロイソフムロン、テトラヒドロイソコフムロン及びテトラヒドロイソアドフムロン)を含有する試薬(Tetra(ICS−T2)、Labor Veritas、純度:99.4%)を20%DMSO溶液で段階希釈して、試験サンプルを得た。なお、テトラヒドロイソアルファ酸を含有しない20%DMSO溶液をコントロールとした。
(ピットフォーメーションアッセイ)
ラット破骨細胞前駆細胞(1×10個)を、ラット破骨細胞培養キット(セルガレージ社)に含まれる分化誘導用培地(5mL)(培地組成:αMEM、10%FBS、50ng/mL RANKL&M−CSF)に懸濁し、これを、リン酸カルシウムで被膜されたOAASプレート(オスコテック社)の各ウェルに100μL(2×10cells/well)ずつ分注し、細胞がプレートに完全に接着するまで37℃の5%COインキュベータ内で培養した。
その後、各ウェルに試験サンプルを加えて、37℃で7〜10日間培養し、コントロールのウェル(20%DMSO溶液のみを添加したウェル)において骨吸収痕跡の形成が一面に確認された時点で、各ウェルの表面の様子をデジタルマイクロスコープ(VHX−100F、キーエンス社)で観察し、骨吸収面積及び骨吸収痕跡数を計測した。
〔実施例2:ローイソアルファ酸による、骨の無機成分の分解の抑制〕
(試験サンプルの調製)
ローイソアルファ酸(ローイソフムロン、ローイソコフムロン及びローイソアドフムロン)を含有する試薬(DCHA−Rho(ICS−R2)、Labor Veritas、純度:65.3%)から、HPLCによりジシクロヘキシルアミンを除去し、得られたローイソアルファ酸画分を20%DMSO溶液で段階希釈して、試験サンプルを得た。なお、ローイソアルファ酸を含有しない20%DMSO溶液をコントロールとした。HPLCの条件は下記の通りである。
カラム:C18カラム(資生堂 CAPCELLPAK C18;10mm×250mm)
移動層:80%MeOH/4%CHCOOH
流速:3mL/min
(ピットフォーメーションアッセイ)
得られた試験サンプルについて、実施例1と同様にしてピットフォーメーションアッセイを行った。
〔実施例3:ヘキサヒドロイソアルファ酸による、骨の無機成分の分解の抑制〕
(試験サンプルの調製)
ヘキサヒドロイソアルファ酸(ヘキサヒドロイソフムロン、ヘキサヒドロイソコフムロン及びヘキサヒドロイソアドフムロン)を含有する試薬(DCHA−Hexa(ICS−H1)、Labor Veritas、純度:65.7%)から、HPLCによりジシクロヘキシルアミンを除去し、得られたヘキサヒドロイソアルファ酸画分を20%DMSO溶液で段階希釈して、試験サンプルを得た。なお、ヘキサヒドロイソアルファ酸を含有しない20%DMSO溶液をコントロールとした。HPLCの条件は下記の通りである。
カラム:C18カラム(資生堂 CAPCELLPAK C18;10mm×250mm)
移動層:80%MeOH/4%CHCOOH
流速:3mL/min
(ピットフォーメーションアッセイ)
得られた試験サンプルについて、実施例1と同様にしてピットフォーメーションアッセイを行った。
〔比較例1:アルファ酸による、骨の無機成分の分解の抑制〕
(試験サンプルの調製)
アルファ酸及びベータ酸の混合物(HPLC用標準品、ICE−2、Labor Veritas)を85%MeOH/4.5%CHCOOHで5mg/mLの濃度に調整し、この溶液を遠心分離及びフィルター濾過にかけた後、HPLCによりベータ酸を除去し、得られたアルファ酸画分を20%DMSO溶液で段階希釈して、試験サンプルを得た。なお、アルファ酸を含有しない20%DMSO溶液をコントロールとした。HPLCの条件は下記の通りである。
カラム:C18カラム(資生堂 CAPCELLPAK C18;10mm×250mm)
移動層:85%MeOH/4.5%CHCOOH
流速:3mL/min
(ピットフォーメーションアッセイ)
得られた試験サンプルについて、実施例1と同様にしてピットフォーメーションアッセイを行った。
〔比較例2:イソアルファ酸による、骨の無機成分の分解の抑制〕
(試験サンプルの調製)
イソアルファ酸を含有するイソ化ホップエキス(ISOHOP、Barth、イソアルファ酸含有量:30%(w/v))から、HPLCによりイソアルファ酸を分取し、YMC*GEL ODS−A(ワイエムシー)を用いて脱塩処理したものを20%DMSO溶液で段階希釈して、試験サンプルを得た。なお、イソアルファ酸を含有しない20%DMSO溶液をコントロールとした。HPLCの条件は下記の通りである。
カラム:C18カラム(資生堂 CAPCELLPAK C18;10mm×250mm)
移動層:80%MeOH/1.2%リン酸/0.25%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド
流速:3mL/min
(ピットフォーメーションアッセイ)
得られた試験サンプルについて、実施例1と同様にしてピットフォーメーションアッセイを行った。
実施例1〜3、比較例1及び2の結果を図1及び2に示す。
図1は、各種濃度の被験物質[テトラヒドロイソアルファ酸(実施例1)、ローイソアルファ酸(実施例2)、ヘキサヒドロイソアルファ酸(実施例3)、アルファ酸(比較例1)又はイソアルファ酸(比較例2)]の存在下で行われたピットフォーメーションアッセイにおける骨吸収面積から換算した分解抑制相対活性(骨吸収面積)を示すグラフである。横軸の濃度は、培地中の各被験物質の濃度である。なお、分解抑制相対活性(骨吸収面積)(%)は下記式により求まる。
分解抑制相対活性(骨吸収面積)={1−(被験物質に関する骨吸収面積÷コントロールの骨吸収面積)}×100
図2は、各種濃度の被験物質[テトラヒドロイソアルファ酸(実施例1)、ローイソアルファ酸(実施例2)、ヘキサヒドロイソアルファ酸(実施例3)、アルファ酸(比較例1)又はイソアルファ酸(比較例2)]の存在下で行われたピットフォーメーションアッセイにおける骨吸収痕跡数から換算した分解抑制相対活性(骨吸収痕跡数)を示すグラフである。横軸の濃度は、培地中の各被験物質の濃度である。なお、分解抑制相対活性(骨吸収痕跡数)(%)は下記式により求まる。
分解抑制相対活性(骨吸収痕跡数)={1−(被験物質に関する骨吸収痕跡数÷コントロールの骨吸収痕跡数)}×100
図1及び2から明らかなように、テトラヒドロイソアルファ酸、ローイソアルファ酸及びヘキサヒドロイソアルファ酸のいずれについても、骨の無機成分(ハイドロキシアパタイト)分解抑制活性が認められた。更に、テトラヒドロイソアルファ酸、ローイソアルファ酸及びヘキサヒドロイソアルファ酸のいずれについても、アルファ酸及びイソアルファ酸と比較して、高い骨の無機成分(ハイドロキシアパタイト)分解抑制活性が認められた。
〔実施例4〜6:テトラヒドロイソアルファ酸、ローイソアルファ酸又はヘキサヒドロイソアルファ酸によるカテプシンKの阻害〕
(試験サンプルの調製)
テトラヒドロイソアルファ酸(実施例4)、ローイソアルファ酸(実施例5)及びヘキサヒドロイソアルファ酸(実施例6)を被験物質とする試験サンプルの調製を、それぞれ、実施例1〜3と同様にして行った。
(カテプシンKの活性の測定)
得られた各試験サンプル10μLを96ウェルプレートに添加し、更に、バッファー(100mM NaOCOCH、20mM L−システイン、5mM EDTAを含有する。pH:5.5)130μLを添加した。その後、4μg/mLのカテプシンK(ヒトリコンビナントプロカテプシンK、CALBIOCHEM)20μLを更に添加して、37℃で30分間、インキュベートした。
次いで、蛍光基質の溶液(20μM Z−Phe−Arg−MCA、ペプチド研究所)50μLを添加して、37℃で酵素反応を開始させた。プレートリーダーでEx350nm/Em450nmを測定し、反応時間に対する蛍光強度の増加度(カイネティックアッセイで得られたグラフの傾き)からカテプシンKの活性を評価した。
なお、カテプシンKインヒビターの溶液(カテプシンKインヒビターII(CALBIOCHEM)1mg/mL(1.4mM)のDMSO溶液をバッファーで50倍希釈したもの)についても、同様にしてカテプシンKの活性の測定を行った。
結果を図3に示す。図3は、各種濃度の被験物質(テトラヒドロイソアルファ酸、ローイソアルファ酸又はヘキサヒドロイソアルファ酸)の存在下のカテプシンKの活性を示すグラフである。図3において、活性は、コントロール(20%DMSO溶液のみ)を100%とする相対活性(%)で示されている。横軸の濃度は、培地中の各被験物質の濃度である。なお、「インヒビター」は、上述のカテプシンKインヒビターの溶液を指す。
図3から明らかなように、テトラヒドロイソアルファ酸、ローイソアルファ酸及びヘキサヒドロイソアルファ酸のいずれについても、カテプシンKの活性が減少した。カテプシンKの活性の減少は、特にローイソアルファ酸及びヘキサヒドロイソアルファ酸では、いずれの濃度においても顕著であり、テトラヒドロイソアルファ酸では、少なくとも高濃度の場合に顕著であった。
実施例4〜6により、テトラヒドロイソアルファ酸、ローイソアルファ酸及びヘキサヒドロイソアルファ酸が、カテプシンKの活性を顕著に抑制することが可能であることが示された。
〔実施例7:テトラヒドロイソアルファ酸による骨密度低下の抑制〕
SAMR1マウス及びSAMP6マウス(7週齢、雄性。日本エスエルシー社より入手。)を用いて、以下のようにして、テトラヒドロイソアルファ酸(以下、場合により「THIAA」という。)の骨密度低下抑制作用を確認した。なお、SAMR1マウスは、老化促進に抵抗性を示すマウスであり、SAMP6マウスは、老化が促進される傾向のある老年性骨量減少モデルマウスである。
1週間の馴化飼育後、一般状態が良好であったマウス[SAMR1マウス8匹(SAMR1群)、SAMP6マウス24匹(SAMP6群)]を選抜し、SAMP6群のマウスを、無作為に、コントロール群、THIAA0.2%群及びTHIAA0.5%群の3群(各群8匹)に分けた。馴化飼育期間及び試験期間を通じて、マウスは、温度23±1℃、湿度60±5%、明暗サイクル12時間(明期:8時〜20時;暗期:20時〜8時)の条件で飼育した。
(飼料の調製)
各群のマウスに投与する飼料は、粉末飼料AIN93Mをベースにして、表1の組成が得られるように調製した(SAMR1群及びコントロール群のマウスに投与する飼料は、粉末飼料AIN93Mをそのまま使用した)。表中、各成分量の単位はg/kg飼料である。また、「テトラヒドロイソアルファ酸試薬」は、テトラヒドロイソアルファ酸(テトラヒドロイソフムロン、テトラヒドロイソコフムロン及びテトラヒドロイソアドフムロン)を含有する市販の試薬(Tetra(ICS−T2)、Labor Veritas、純度:99.4%)を表す。
Figure 0005214632
(飼料の投与)
上述の馴化飼育後、8週間、各群のマウスに所定の飼料及び水を自由摂取させた。
(骨密度の測定)
8週間の飼料投与後、各群のマウスを解剖し、DCS600EX−IIIR(アロカ社)を用いて、二重エネルギーX線吸収測定法(DXA法)により大腿骨近位部及び大腿骨遠位部の骨密度を測定した。
結果(平均±標準誤差)を図4及び5に示す。図4は、各群のマウスの大腿骨近位部の骨密度を示すグラフである。図5は、各群のマウスの大腿骨遠位部の骨密度を示すグラフである。
図4及び5から明らかなように、THIAA0.2%群及びTHIAA0.5%群では、コントロール群と比較して、大腿骨近位部及び大腿骨遠位部の骨密度低下が顕著に抑制された。
実施例7により、テトラヒドロイソアルファ酸は、骨密度低下を顕著に抑制することが可能であることが示された。
以上の実施例及び比較例により、本発明の骨吸収抑制剤によれば、骨吸収の効果的な抑制が可能となることが確認された。
本発明の骨吸収抑制剤は、骨粗鬆症の治療及び予防に利用可能である。

Claims (9)

  1. テトラヒドロイソアルファ酸、ローイソアルファ酸及びヘキサヒドロイソアルファ酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を有効成分とする骨吸収抑制剤。
  2. テトラヒドロイソフムロン、テトラヒドロイソコフムロン及びテトラヒドロイソアドフムロンのうちの少なくとも1種のテトラヒドロイソアルファ酸を有効成分とする、請求項1に記載の骨吸収抑制剤。
  3. ローイソフムロン、ローイソコフムロン及びローイソアドフムロンのうちの少なくとも1種のローイソアルファ酸を有効成分とする、請求項1に記載の骨吸収抑制剤。
  4. ヘキサヒドロイソフムロン、ヘキサヒドロイソコフムロン及びヘキサヒドロイソアドフムロンのうちの少なくとも1種のヘキサヒドロイソアルファ酸を有効成分とする、請求項1に記載の骨吸収抑制剤。
  5. テトラヒドロイソフムロン、テトラヒドロイソコフムロン及びテトラヒドロイソアドフムロンを有効成分とする、請求項1に記載の骨吸収抑制剤。
  6. ローイソフムロン、ローイソコフムロン及びローイソアドフムロンを有効成分とする、請求項1に記載の骨吸収抑制剤。
  7. ヘキサヒドロイソフムロン、ヘキサヒドロイソコフムロン及びヘキサヒドロイソアドフムロンを有効成分とする、請求項1に記載の骨吸収抑制剤。
  8. 骨の無機成分の分解を抑制することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の骨吸収抑制剤。
  9. カテプシンKを阻害することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の骨吸収抑制剤。
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