<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1〜図19によって説明する。本実施形態では、自動車に搭載されたバッテリ10に接続されるバッテリ端子20と、バッテリ端子20に取り付けられる回動規制部材40とからなるバッテリ端子ユニットUを例示する。なお、以下では、上下方向については図3〜図5,図7〜図9,図11,図13,図16,図18,図19を基準とする。また、各図面の一部にはX軸、Y軸及びZ軸を示しており、各軸方向が各図面で示した方向となるように描かれている。
バッテリ10は、図15〜図17に示すように、略箱型をなすバッテリ本体11と、その上面11aから立設される略円柱状のバッテリポスト12とを備えている。バッテリポスト12は、鉛などからなるとともにバッテリ本体11の上面11aのうち角位置付近に設置されており、バッテリ本体11の上面11aと共にバッテリ本体11の角部を構成する一対の側面11b,11cとの間にそれぞれ所定の距離が空けられている。このバッテリポスト12に対して次述するバッテリ端子20が接続されるようになっている。
バッテリ端子20は、金属板をプレス成形することで、所望の形状に形成されており、図1〜図3に示すように、バッテリポスト12に対して嵌合接続されるポスト嵌合部21と、図示しない電線の端末に設けられた端子金具60(図10)などが接続されるスタッドボルト24を立設状態に保持するボルト保持部22とが繋ぎ部23によって一体に繋がれた構成となっている。端子金具60の構成については後に詳しく説明するものとする。ポスト嵌合部21、繋ぎ部23及びボルト保持部22は、X軸方向(バッテリ端子20に対する回動規制部材40の取付方向)に沿って直線的に並んで配されている。このうち、ボルト保持部22に対してポスト嵌合部21側とは反対側から回動規制部材40が取り付けられるようになっており、取付状態ではバッテリポスト12側からポスト嵌合部21、繋ぎ部23、ボルト保持部22、回動規制部材40の順でX軸方向に沿って並ぶことになる(図10)。なお、ポスト嵌合部21がバッテリポスト12に嵌合された状態では、ボルト保持部22は、バッテリ本体11におけるZ軸方向及びY軸方向に沿った側面11bから外部に突出することがなく、側面11bとの間に所定の間隔(後述する回動規制部材40の横壁41bの長さ寸法分程度の間隔)を空けた位置に配される(図15,図16)。
ポスト嵌合部21は、バッテリポスト12に外嵌される略円弧状の締付部25と、締付部25の両端部からバッテリポスト12の径方向外向きに延出する一対の延出部26とからなる。締付部25は繋ぎ部23から立ち上げた片部を回曲させることで形成され、延出部26はその片部の両先端部を外向きに屈曲させることで形成される。締付部25は、その内径を増減させるように径方向に弾性撓みし得るようになっており、自由状態における内径寸法がバッテリポスト12の外径寸法よりも大きく設定されることで、バッテリポスト12に対して遊嵌可能とされる。両延出部26は、略方形の平板状をなし、自由状態においては、延出端側ほど間隔が広がるよう傾いた姿勢とされる。両延出部26には、ボルト27を挿通可能なボルト挿通孔26aが貫通形成されており、一方の延出部26の外側から両ボルト挿通孔26aにボルト27を挿通させ、その先端部を他方の延出部26の外側に突出させた状態でそこにナット28が締め付けられる。このボルト27及びナット28の締め付け状態を調整することで、両延出部26間の間隔を増減でき、それに連動して締付部25の内径寸法が増減される(縮径または拡径される)ので、バッテリポスト12に対してポスト嵌合部21を所望の保持力でもって接続状態に保持することができる。
ボルト保持部22は、図4及び図5に示すように、ポスト嵌合部21よりも低い略箱状をなしており、その内部にスタッドボルト24の頭部24aを収容するとともに、スタッドボルト24をその軸部24bが上方外部に突き出した立設状態に保持可能とされる。スタッドボルト24は、頭部24aが平面視四角形状をなすのに対し、軸部24bが外周面にねじ山が螺刻形成された略円柱状をなしている。スタッドボルト24の軸部24bには、電線の端末に設けられた端子金具60などが取り付けられた状態でナット(図示せず)が締め付けられることで、上記端子金具60などが固定されるようになっている。
ここで、ボルト保持部22に取り付けられる端子金具60の構成について詳しく説明する。端子金具60は、導電性に優れる金属板をプレス加工することで所定形状に成形されており、図10に示すように、側方視略L字型をなす基部61と、基部61の一端側に設けられるとともにボルト保持部22に対して取り付けられるバッテリ取付部62と、基部61の他端側に設けられるとともに電線(図示せず)の端末にかしめ付けられる電線接続部63とから構成される。基部61は、バッテリ本体11の上面11aに沿った主板部61a(X軸方向及びY軸方向と並行する部分)と、バッテリ本体11の側面11bに沿った側板部61b(Y軸方向及びZ軸方向と並行する部分)とからなり、主板部61aにバッテリ取付部62が、側板部61bに電線接続部63がそれぞれ設けられている。バッテリ取付部62には、スタッドボルト24の軸部24bに対して挿通可能なボルト挿通孔62aが貫通形成されている。バッテリ取付部62は、ボルト挿通孔62aにスタッドボルト24の軸部24bを挿通させつつボルト保持部22に対して上方からZ軸方向に沿って取り付けられる。バッテリ取付部62における両側縁からは、ボルト保持部22(スタッドボルト24)に対する取付角度を規制可能な回り止め片64が一対設けられている。回り止め片64は、バッテリ取付部62の先端部から下方へ向けて突出する片持ちの板片状をなしており、その内面がボルト保持部22の外側面などに係合することで、端子金具60がスタッドボルト24の軸線周りに不用意に回動変位するのを規制でき、もって端子金具60の回り止めを図ることができるようになっている。なお、以下では、両回り止め片64のうち、図10に示す奥側のものを第1回り止め片とし、同図手前側のものを第2回り止め片とするとともに、両回り止め片を区別する場合には、第1回り止め片の符号に添え字Aを、第2回り止め片の符号に添え字Bを付し、区別せずに総称する場合には、符号に添え字を付さないものとする。
ボルト保持部22は、図4〜図6に示すように、繋ぎ部23に連なりY軸方向に延びる片部を屈曲させることで略箱状に形成されている。詳しくは、ボルト保持部22は、繋ぎ部23に連なって並行する底壁22aと、底壁22aにおけるY軸方向の一端側からZ軸方向に沿って立ち上がる第1側壁22bと、第1側壁22bの立ち上がり端から底壁22aと対向するようY軸方向に沿って延びる天井壁22cと、天井壁22cの延出端から底壁22aのY軸方向の他端に向けてZ軸方向に沿って突出して第1側壁22bと対向する第2側壁22dとから構成されており、各壁22a〜22dによって囲まれてなる内部の収容空間にスタッドボルト24の頭部24aが収容される。
底壁22aにおけるY軸方向の両端部及びX軸方向の一端部(繋ぎ部23側とは反対側の端部)を除いた部分には、図5及び図6に示すように、スタッドボルト24の頭部24aを持ち上げる持ち上げ部29が上記各端部よりも上方へ張り出す形態で形成されており、この持ち上げ部29が繋ぎ部23にも引き続いて形成されている。天井壁22cの略中央位置には、スタッドボルト24の軸部24bを通すボルト挿通孔30が貫通形成されている。また、第2側壁22dの突出端における略中央位置には、持ち上げ部29の外面に係合することで、ボルト保持部22を箱形状に保持可能な保持片31が形成されている(図1及び図3)。
ボルト保持部22は、既述したようにY軸方向に連なる各壁22a〜22dによって構成されていて、X軸方向に沿って2側面が外部に開口している。ボルト保持部22の両側面にそれぞれ形成された一対の開口部32,33のうち、ポスト嵌合部22側とは反対側(バッテリ端子20全体におけるX軸方向の外端部)の開口部32の口縁には、スタッドボルト24の頭部24aに係合することでスタッドボルト24の回動を規制可能なボルト回動規制片34が立設されている。ボルト回動規制片34は、図4及び図5に示すように、開口部32の口縁を構成する底壁22aの側縁(開口部32の口縁のうち下縁)からZ軸方向に沿って立ち上がる立ち上がり部34aと、立ち上がり部34aの先端からX軸方向に沿って内向きに突出し底壁22aと天井壁22cとの間に配されるボルト係合部34bとから構成されており、全体として略L字形状となっている。ボルト回動規制片34のボルト係合部34bにおける先端面がスタッドボルト24の頭部24aの側面に係合されるようになっている。ボルト係合部34bの先端部は、Y軸方向について底壁22aにおける持ち上げ部29の側端位置とほぼ同じ位置とされる。また、ボルト係合部34bと天井壁22cとの間には、僅かなクリアランスが確保されている。
このボルト回動規制片34は、図4に示すように、幅寸法が開口部32の間口よりも小さくて約半分程度の大きさとされるとともに、ボルト保持部22におけるY軸方向の略中央位置に配され、開口部32を部分的に塞いでいる。従って、開口部32は、その入り口に設置されたボルト回動規制片34によって左右にほぼ均等に分割されており、一対の分割開口部32aを備えていると言える。そして、各分割開口部32aの奥側に連なる空間であって、ボルト保持部22の両側壁22b,22dとボルト回動規制片34との間の空間は、スタッドボルト24が存在しないデッドスペースとなっている。本実施形態では、このデッドスペースとなった空間を利用して次述する回動規制部材40を取付状態に保持するようにしている。
回動規制部材40は、合成樹脂製とされ、バッテリ端子20に取り付けられて一体化された状態で、バッテリ10に対して当接することでバッテリ10に対するバッテリ端子20の取付角度を規制できるようになっている(図15)。詳しくは、回動規制部材40は、図1及び図6に示すように、バッテリ10に対して当接可能な本体部41と、本体部41から突出してバッテリ端子20に対して圧入可能な圧入部42とを備える。回動規制部材40は、バッテリ端子20に対してX軸方向に沿って取り付けられるようになっている。なお、以下では、バッテリ端子20に対する回動規制部材40の取付方向(図6の左方)を前方とし、その逆方向(図6の右方)を後方とする。
本体部41は、図7に示すように、側方(Y軸方向の正面)から視て断面形状が略クランク状をなしており、バッテリ端子20を受ける端子受け部43を含むZ軸方向に沿った縦壁41aと、バッテリ本体11の上面11aに宛われるX軸方向に沿った横壁41bと、バッテリ本体11におけるZ軸方向及びY軸方向に沿った側面11bに当接されるZ軸方向に沿った回動規制壁41cとを備える。本体部41におけるY軸方向の寸法は、バッテリ端子20よりも大きく、約2倍程度となっている。
縦壁41aは、図1及び図6に示すように、全域がZ軸方向に沿ってほぼ真っ直ぐであるものの、同図手前側部分がY軸方向に沿ってほぼ真っ直ぐに形成されるのに対し、同図奥側部分がY軸方向に対して傾いて形成されている。この縦壁41aのうちY軸方向に沿う真直部分が、バッテリ端子20のうちボルト保持部22の側端面(開口部32の開口縁)に宛われる端子受け部43を構成している。なお、縦壁41aのうち傾斜部分は、バッテリ端子20からは引っ込む形態とされており、その引っ込んだ分だけ横壁41bのY軸方向の寸法も図1及び図6の奥側ほど小さくなっている。横壁41bは、全域にわたってX軸方向及びY軸方向に沿ってほぼ真っ直ぐな形態とされ、当接対象であるバッテリ本体11の上面11aとほぼ平行をなす。この横壁41bには、図6に示すように、横長な孔部48が貫通形成されている。孔部48は、X軸方向に離間した位置に一対配されている。この孔部48により、バッテリ10から発せられる熱を逃がすことができるようになっている。回動規制壁41cは、全域にわたってY軸方向及びZ軸方向に沿ってほぼ真っ直ぐな形態とされ、当接対象であるバッテリ本体11の側面11bとほぼ平行をなす。
また、本体部41を構成する各壁41a〜41cの外面、つまりバッテリ10やバッテリ端子20とは反対側の面には、図6及び図9に示すように、Z軸方向及びX軸方向に沿った縦型補強壁44が、Y軸方向について所定の間隔を空けて5本(複数)形成されている。各縦型補強壁44のうち、Y軸方向の両端位置のものと、中央のものとが、X軸方向またはZ軸方向について縦壁41a、横壁41b及び回動規制壁41cの全長にわたる範囲に形成されているのに対し、残りの2つは、X軸方向またはZ軸方向について縦壁41a及び横壁41bの全長にわたるものの、回動規制壁41cについて途中まで(次述する横型補強壁45まで)の範囲に形成されている。また、各縦型補強壁44におけるX軸方向の先端部には、各縦型補強壁44を横切りつつX軸方向及びY軸方向に沿う横型補強壁45が繋がれている。横型補強壁45と、回動規制壁41cの外面との間には、Z軸方向に開口する所定の空間が確保されている。
回動規制壁41cにおける内面、つまりバッテリ本体11の側面11bとの対向面のうち、外側の所定の縦型補強壁44と重畳する領域を除いた領域には、図1及び図8に示すように、僅かな深さの凹部46が複数形成されており、この凹部46の面積分だけ回動規制壁41cのバッテリ本体11の側面11bに対する接触面積が低減されている。逆に言うと、回動規制壁41cの内面のうち、所定の縦型補強壁44と重畳する領域に縦長なリブ状をなす凸部47が形成されており、この凸部47のみがバッテリ本体11の側面11bに当接される。なお、ここで言う「所定の縦型補強壁44」は、Y軸方向の両端位置の両縦型補強壁44と、Y軸方向の中央の縦型補強壁44とを指す。
続いて、圧入部42について詳しく説明する。圧入部42は、図1及び図6に示すように、本体部41のうち端子受け部43の内面(バッテリ端子20側を向いた面)に一対設けられている。一対の圧入部42は、端子受け部43の内面において、Y軸方向、つまりZ軸方向(バッテリポスト12の軸線方向)及びX軸方向(バッテリ端子20に対する回動規制部材40の取付方向)と直交する方向に並んで配されている。両圧入部42間には、所定の間隔が空けられており、その寸法はバッテリ端子20における両分割開口部32a間の間隔とほぼ一致している。なお、端子受け部43の内面のうち、両圧入部42に対してY軸方向について外側に隣接する位置には、バッテリ端子20の端面に突き当てられる受け突部49が一対設けられている。
圧入部42は、端子受け部43の内面(バッテリ端子20との対向面)からX軸方向(バッテリ端子20に対する取付方向)に沿って突出する挿入突部50と、挿入突部50の周面からY軸方向またはZ軸方向(バッテリ端子20に対する取付方向と交差する方向)に沿って突出して開口部32の口縁によって圧潰可能な複数のリブ51〜53と、挿入突部50の周面からY軸方向に沿って突出してボルト回動規制片34に係止可能な抜け止め突起54とを備える。
挿入突部50は、全体として略ブロック状をなしており、図8に示すように、X軸方向の正面から視てやや縦長な四角形状とされる。挿入突部50は、バッテリ端子20における分割開口部32aに対して挿入可能とされており、その高さ寸法(Z軸方向の寸法)及び幅寸法(Y軸方向の寸法)が分割開口部32aのそれよりも少し小さく設定されている。挿入突部50における端子受け部43からの突出寸法(X軸方向の寸法)は、バッテリ端子20におけるボルト回動規制片34のX軸方向の寸法とほぼ同じとされる(図6)。
リブ51〜53は、図1及び図8に示すように、挿入突部50の周面のうち上面からZ軸方向に沿う上方(第1の方向)へ向けて突出する第1リブ51と、挿入突部50の周面のうち下面からZ軸方向に沿う下方(上記第1の方向とは正反対の第2の方向)へ向けて突出する第2リブ52と、挿入突部50の周面のうち外側の側面(もう片方の挿入突部50との対向面とは反対側の面)からY軸方向に沿う外方(もう片方の挿入突部50側とは逆向きの第3の方向)へ向けて突出する第3リブ53とからなる。各リブ51〜53は、X軸方向の正面から視て略半円形状をなすとともに、X軸方向に沿って延びる形態とされ、X軸方向について挿入突部50のほぼ全長にわたる長さを有する。また各リブ51〜53における前端面(取付方向の先端面)には、開口部32への円滑な進入を担保するためのテーパ面が面取り形成されている。
第1リブ51及び第2リブ52は、互いに幅寸法がほぼ同じで且つ第3リブ53よりも大きく設定されている。第1リブ51は、挿入突部50におけるY軸方向の略中央位置に配されるのに対し、第2リブ52は、挿入突部50におけるY軸方向の中央位置から所定の距離を空けた位置に一対、Y軸方向に並んで配されている。言い換えると、第1リブ51は、挿入突部50においてY軸方向に並んだ一対の第2リブ52のほぼ中間位置に配されており、逆に言うと両第2リブ52は、挿入突部50においてY軸方向について第1リブ51を挟んだ位置に配されている。つまり、第1リブ51と第2リブ52とは、Y軸方向について互いにオフセットした位置(ずれた位置)に配されている。詳しくは、第1リブ51及び第2リブ52のうち、幅方向の端部同士についてはY軸方向に重なり合うものの、幅方向の中心同士についてはY軸方向に重なることなく、互いにずれた配置となっている。また、両第2リブ52は、挿入突部50においてY軸方向の中央位置を中心にして対称位置に配されていると言える。
第1リブ51及び第2リブ52は、挿入突部50の周面からの突出寸法がほぼ同じとされる。第1リブ51の突出寸法と第2リブ52の突出寸法とを足し合わせた寸法は、挿入突部50と分割開口部32aとのZ軸方向についての寸法差よりも大きくなっている。さらに言うと、第1リブ51の突出寸法または第2リブ52の突出寸法単独でも、上記寸法差よりも大きくなっている。従って、挿入突部50を分割開口部32a内に挿入すると、第1リブ51及び第2リブ52が開口部32の開口縁によって圧潰され、もって所望の保持力が得られるようになっている(図13)。
第3リブ53は、挿入突部50の外側の側面におけるZ軸方向の中央位置から下方へ所定の距離を空けた位置に配されている。第3リブ53の突出寸法は、第1リブ51及び第2リブ52の突出寸法よりも小さくなっている。抜け止め突起54は、挿入突部50の周面のうち内側の側面(もう片方の挿入突部50との対向面)、つまり第3リブ53の設置面とは反対側の側面から、Y軸方向に沿う内方(上記第3の方向とは正反対の第4の方向)へ向けて突出している。第3リブ53と抜け止め突起54とは、挿入突部50におけるZ軸方向の設置位置がほぼ同じとされている。
抜け止め突起54は、全体として略ブロック状をなすとともに、X軸方向の正面から視て略台形状、つまり突出端側ほど幅狭になる先細り状に形成されている。抜け止め突起54における突出基端部の幅寸法は、第1リブ51及び第2リブ52よりも大きくなっている。抜け止め突起54における突出寸法は、各リブ51〜53のいずれよりも大きくなっている。抜け止め突起54は、挿入突部50の側面における下端位置に配されており、Z軸方向について下側の第3リブ53と重なり合う位置に配されている。抜け止め突起54は、X軸方向について挿入突部50における先端位置に配されている。また抜け止め突起54における前端面(取付方向の先端面)には、開口部32への円滑な進入を担保するためのテーパ面が面取り形成されている(図6)。
第3リブ53における挿入突部50の側面からの突出寸法(Y軸方向の寸法)と、抜け止め突起54における同突出寸法とを足し合わせた寸法は、図6に示すように、挿入突部50と分割開口部32aとのY軸方向についての寸法差よりも大きくなっている。さらに言うと、抜け止め突起54の突出寸法単独でも、上記寸法差よりも大きくなっている。従って、挿入突部50を分割開口部32a内に挿入すると、第3リブ53及び抜け止め突起54が開口部32の開口縁によって圧潰されるようになっている(図13)。特に、抜け止め突起54については、開口部32の開口縁を構成するボルト回動規制片34の立ち上がり部34aによって多少削られるものの、無理嵌めされて立ち上がり部34aの奥側へ進入できるようになっている(図14)。そして、抜け止め突起54のうち、バッテリ端子20に対する取付方向とは逆側を向いた後端面、つまり端子受け部43側を向いた面が、ボルト回動規制片34における立ち上がり部34aに対して係止される係止面54aとなっている。係止面54aは、Y軸方向及びZ軸方向に沿ってほぼ真っ直ぐに形成されている。
以上のように回動規制部材40は、バッテリ端子20に対して取り付けられると、圧入部42の各リブ51〜53及び抜け止め突起54によって取り外し不能な状態、いわゆる嵌め殺し状態でがたつきなく保持されるようになっている。
ところで、上記した圧入部42を構成する挿入突部50には、図6及び図8に示すように、肉抜き部55が設けられている。肉抜き部55は、挿入突部50の周面のうち上面、つまり第1リブ51の設置面に開口する形態とされるとともに、第1リブ51を挟んだ位置に一対配されている。従って、両肉抜き部55は、第1リブ51とはY軸方向についてオフセットした位置に配されていると言える。両肉抜き部55は、その中心が両第2リブ52の中心に対してY軸方向について僅かに外寄りにずれた位置に配されている。肉抜き部55は、X軸方向の正面から視て縦長な四角形状をなしている。また、肉抜き部55は、挿入突部50の前端部を所定厚さ分残して形成され、上方にのみ開口する形態とされている。この肉抜き部55により、回動規制部材40を樹脂成形する際に挿入突部50にひけが生じ難くなっている。
そして、肉抜き部55における幅寸法及び深さ寸法(高さ寸法)は、図8に示すように、挿入突部50をX軸方向の正面から視て、第1リブ51の突出端と第2リブ52との突出端とを結んだ2本の線L1とはずれる(交差しない、重畳しない)ような大きさに設定されている。さらには、肉抜き部55の深さ寸法は、挿入突部50をX軸方向の正面から視て、Y軸方向に沿い且つ第3リブ53及び抜け止め突起54の突出端を通る線L2とはずれるような大きさに設定されている。
さて、本実施形態に係る回動規制部材40は、バッテリ端子20に対する取付構造として上記した圧入部42に加えて、ボルト保持部22に対して係止可能とされる弾性係止片56を備えている。弾性係止片56は、図6〜図8に示すように、本体部41を構成する縦壁41aのうち、端子受け部43の側方位置からX軸方向に沿って圧入部42と同方向、すなわちバッテリ端子20に対する回動規制部材40の取付方向に突出する形態とされる。弾性係止片56は、片持ち状をなすとともに、その突出基端部を支点としてY軸方向、つまりバッテリ端子20に対する回動規制部材40の取付方向と直交する方向に弾性変形可能とされている。弾性係止片56は、弾性変形に伴ってY軸方向の外側(隣り合う圧入部42側とは反対側)の空間に退避されるようになっており、この弾性係止片56の撓みを許容する空間が撓み空間Sとされる。
弾性係止片56における突出先端部には、Y軸方向の内側(隣り合う圧入部42側)に突出する係止部57が設けられている。係止部57は、内向きに突出する鈎状をなしており、その前面がX軸方向に対して傾斜したテーパ状の案内面57aとされるのに対し、後面がY軸方向に沿ってほぼ真っ直ぐな係止面57bとされる。この係止部57における係止面57bがボルト保持部22に対して係止することで、バッテリ端子20から回動規制部材40を抜け止めできるようになっている。
バッテリ端子20に回動規制部材40を取り付けた状態において弾性係止片56は、図12に示すように、ボルト保持部22の側方を通ってボルト保持部22に対して本体部41側とは反対側に回り込んだ位置にて係止されるようになっている。この取付状態では、本体部41がボルト保持部22に対してX軸方向に並んで配されるのに対し、弾性係止片56は、ボルト保持部22に対してY軸方向、つまりスタッドボルト24やバッテリポスト12の軸線方向(Z軸方向)と直交する方向に並んで配されている。言い換えると、弾性係止片56は、ボルト保持部22に対してY軸方向について重畳するものの、Z軸方向について重畳することがない位置に配されている。弾性係止片56における内面は、ボルト保持部22の外側面と近接した状態または当接した状態とされる。弾性係止片56の係止部57は、ボルト保持部22におけるY軸方向に沿った両端面のうち、本体部41側とは反対側(ポスト嵌合部21側)の端面に対して係止されている。詳しくは、係止部57の係止面57bは、ボルト保持部22を構成する第1側壁22bにおける本体部41側の端面に対して係止されており、この端面をボルト保持部22における被係止面22eとする。別言すると、弾性係止片56の係止部57は、ボルト保持部22に形成された一対の開口部32,33のうち、ポスト嵌合部21側の開口部33の開口縁に対して係止されていると言える。
ここで、上記した弾性係止片56とボルト保持部22に取り付けられる端子金具60との関係について詳しく説明する。既述した通り、端子金具60は、図15〜図18に示すように、ボルト保持部22に対してスタッドボルト24に挿通された状態で取り付けられるのであるが、その両回り止め片64のうち、第2回り止め片64Bがボルト保持部22の外側面に当接可能とされるのに対し、第1回り止め片64Aは、弾性係止片56の外側面に当接可能とされる。
詳しくは、端子金具60におけるバッテリ取付部62がボルト保持部22上に積層配置された状態では、第2回り止め片64Bが、ボルト保持部22の第2側壁22dにおける外側面に当接または近接して配されるのに対し、第1回り止め片64Aが、弾性係止片56の先端部付近の外側面に当接または近接して配される。つまり、第1回り止め片64Aは、弾性係止片56に対してその係止解除方向に隣接して配されており、弾性係止片56との間には殆ど隙間が保有されていない。仮に隙間があったとしても、その大きさは、弾性係止片56における係止部57のボルト保持部22に対する係止代よりも十分に小さくなっている。また言い換えると、第1回り止め片64Aは、弾性係止片56の撓み空間S内に進入した状態とされている。従って、仮に弾性係止片56が係止解除方向へ変位させられようとしても、弾性係止片56に対して第1回り止め片64Aが係合することで、弾性係止片56の係止解除方向への不用意な撓みを規制できるようになっている。このように第1回り止め片64Aは、端子金具60の回り止め機能と、弾性係止片56の撓み規制機能とを併せ持っている。また、第1回り止め片64Aとボルト保持部22の第1側壁22bとの間に弾性係止片56が挟み込まれているとも言える。なお、両回り止め片64の内面間の間隔は、ボルト保持部22の幅寸法と弾性係止片56の厚さ寸法とを足し合わせた大きさとほぼ等しくなっている。また、両回り止め片64は、ボルト保持部22の外側面及びボルト保持部22に隣接配置された弾性係止片56の外側面に当接されているので、ボルト保持部22(スタッドボルト24)に対する端子金具60の回り止め機能を十分に発揮することができる。
本実施形態は以上のような構造であり、続いてその作用を説明する。まず、ボルト保持部22内にスタッドボルト24を収容した状態のバッテリ端子20に対して回動規制部材40を取り付ける作業を行う。
取り付けにあたっては、回動規制部材40における一対の圧入部42を、バッテリ端子20におけるボルト保持部22の開口部32を構成する一対の分割開口部32aに位置合わせしつつ、X軸方向に沿ってバッテリ端子20に対して回動規制部材40を相対的に接近させるようにする。各圧入部42の挿入突部50が各分割開口部32a内に挿入されると、それに伴って第1リブ51、第2リブ52及び第3リブ53がそれぞれ分割開口部32aの開口縁における上縁、下縁、外側の側縁に干渉することで、圧潰される。このとき、抜け止め突起54は、分割開口部32aの開口縁における内側の側縁を構成するボルト回動規制片34の立ち上がり部34aに干渉することで、多少削られつつも無理嵌めされ、回動規制部材40側から視て立ち上がり部34aの奥側へと進入する。
一方、上記した取付過程では、弾性係止片56がボルト保持部22における第1側壁22bに乗り上げるよう弾性変形される。このとき、弾性係止片56は、Y軸方向に沿ってボルト保持部22から離間する向きに変位されるとともに、係止部57の先端部が第1側壁22bに対して摺接される。このとき弾性係止片56は撓み空間Sに退避されることになる。また、係止部57の案内面57aによって第1側壁22bに対する乗り上げ動作が円滑にガイドされている。
そして、各圧入部42が各分割開口部32a内に正規深さまで圧入されると、端子受け部43における両受け突部49がボルト保持部22の側端面に突き当てられることで、それ以上の押し込みが規制される(図10〜図12)。この取付状態では、図13及び図14に示すように、各リブ51〜53が圧潰されることで得られる摩擦抵抗力と、抜け止め突起54の係止面54aがボルト回動規制片34の立ち上がり部34aに係止することで得られる係止力とによって、回動規制部材40は、バッテリ端子20に対してほぼ取り外し不能な状態で保持される。詳しくは、回動規制部材40は、第1リブ51及び第2リブ52によってZ軸方向に、第3リブ53によってY軸方向にそれぞれバッテリ端子20に対して相対変位不能に保持されるとともに、抜け止め突起54によってX軸方向について取り外し方向へ相対変位不能(抜け止め状態)に保持される。もって、回動規制部材40は、バッテリ端子20に対してX軸方向,Y軸方向及びZ軸方向のいずれの方向にもがたつきが生じることが防がれている。しかも、第2リブ52は、挿入突部50においてそれぞれ一対ずつ所定の間隔を空けて配置されているから、挿入突部50が分割開口部32a内にてその軸線(X軸)周りに傾くような事態が生じ難くなっている。さらには、圧入部42は、本体部41においてY軸方向に一対並んで配されているから、バッテリ端子20に対して本体部41がZ軸周りに傾いたり、X軸周りに傾くような事態が極めて生じ難くなっている。
上記取付状態では、各リブ51〜53及び抜け止め突起54に加え、弾性係止片56によっても回動規制部材40がバッテリ端子20に対して保持される。詳しくは、バッテリ端子20に対して回動規制部材40が正規深さまで押し込まれると、図12及び図14に示すように、弾性係止片56の係止部57がボルト保持部22の第1側壁22bを乗り越えるとともに弾性復帰する。それに伴い、弾性係止片56が第1側壁22bに沿って並行し、その内面が第1側壁22bの外側面に対して当接または近接して配されるとともに、係止部57の係止面57bが第1側壁22bの被係止面22eに対して係止される。これにより、仮に回動規制部材40をバッテリ端子20から取付方向と逆向きに引っ張るような力が作用した場合でも、弾性係止片56がボルト保持部22に対して係止することで、回動規制部材40がバッテリ端子20から脱落するのが防止されるようになっている。以上のように、圧入部42及び弾性係止片56によりバッテリ端子20に対して回動規制部材40をしっかりと保持させることができ、もってバッテリ端子20及び回動規制部材40をがたつきなく一体化させることができる。
次に、上記のようにして一体化したバッテリ端子20及び回動規制部材40のうち、バッテリ端子20のボルト保持部22に対して、電線に接続された端子金具60を取り付ける作業を行う。端子金具60のボルト挿通孔62aにスタッドボルト24の軸部24bを位置合わせしつつ挿通するとともに、基部61の主板部61aをボルト保持部22の上面に当接させる。この過程では、両回り止め片64によってボルト保持部22及び弾性係止片56が一括して挟み込まれる。端子金具60がボルト保持部22に取り付けられた状態では、図15〜図18に示すように、端子金具60の主板部61aがボルト保持部22の上面に当接されるとともに、両回り止め片64のうち第2回り止め片64Bがボルト保持部22の第2側壁22dの外側面に、第1回り止め片64Aが弾性係止片56の外側面にそれぞれ当接または近接して配される。この状態では、第1回り止め片64Aが弾性係止片56に対してその係止解除方向に殆ど隙間を空けることなく隣接して配されているので、仮に弾性係止片56が係止解除方向へ変位させられようとした場合でも、弾性係止片56に対して第1回り止め片64Aが係合することで、弾性係止片56の不用意な撓みが規制される。もって、ボルト保持部22に対する弾性係止片56の係止状態を安定的に維持させることができ、高い保持力を発揮することができる。また、両回り止め片64がボルト保持部22及び弾性係止片56に当接可能とされることで、ボルト保持部22に対する端子金具60の回り止めを図ることができる。
続いて、上記のようにして得られたバッテリ端子ユニットUをバッテリ10に対して取り付ける作業を行う。まず、バッテリ10のバッテリポスト12に対してバッテリ端子20のポスト嵌合部21を嵌合させる。このとき、図15〜図17に示すように、回動規制部材40の本体部41を構成する回動規制壁41cを、バッテリ本体11の側面11bに対して当接させるようにする。バッテリ端子20がバッテリ本体11の上面11aに載置されたところで、ポスト嵌合部21のボルト27及びナット28を適宜に工具を用いて締め付けるようにする。すると、ポスト嵌合部21の締付部25がその内径を縮径させるよう弾性変形するとともにその内周面がバッテリポスト12の外周面に対して圧接され、もってバッテリ端子20がバッテリポスト12に対して取付状態に保持される。
このとき、ボルト27の締め付けに伴って発生するトルクによって、バッテリ端子20がバッテリポスト12を中心にしてその軸線(Z軸)周りに回動変位するおそれがある。ところが、図15及び図16に示すように、バッテリ端子20に一体化された回動規制部材40のうちY軸方向及びZ軸方向に沿った回動規制壁41cの凸部47が、並行するバッテリ本体11の側面11bに対して当接されているので、上記のようなバッテリ端子20の回動動作が未然に規制される。これにより、バッテリポスト12に対するバッテリ端子20の取付角度を図17に示す状態に維持することができる。
ところで、上記したバッテリ端子ユニットUが取り付けられるバッテリ10は、例えば搭載される車種やグレードに応じて種類が変更される場合があって、それに伴ってバッテリ本体11におけるバッテリポスト12の設置位置が変更される場合がある。そうなると、バッテリ本体11のうち回動規制部材40の回動規制壁41cが当接される箇所である側面11b(バッテリ10側の当接箇所)とバッテリポスト12との相対的な位置関係が変更されることになる。これに対して、バッテリ端子ユニットUは、ポスト嵌合部21と回動規制壁41cとの位置関係が一定であるから、上記バッテリ10側の変更に対応できない。そこで、本実施形態では、本体部41が上記バッテリ10側の変更に適合した形状とされる回動規制部材40を別途に製造しておき、その回動規制部材40をバッテリ端子20に取り付けて使用するようにしている。つまり、金属製で相対的に製造コストが高価なバッテリ端子20については、共用品を用いるのに対し、合成樹脂製で相対的に製造コストが安価な回動規制部材40については、各種条件に合致した専用品を多品種製造して用いるのである。
具体的には、バッテリ10におけるバッテリポスト12とバッテリ本体11の側面11bとの間のX軸方向についての距離が図16に示すものよりも大きい場合には、図19に示すように、回動規制部材40′として本体部41′を構成する横壁41b′のX軸方向の長さ寸法L′が、図16に示すものの長さ寸法Lよりも上記距離の増加分だけ大きくなったものを製造する。なお、この回動規制部材40′では、横壁41b′と共に縦型補強壁44′についても延長しているが、それ以外の構成は変更されていない。そして、この回動規制部材40′をバッテリ端子20に取り付けることでバッテリ端子ユニットU′を製造したら、そのバッテリ端子ユニットU′をバッテリ10に対して取り付ける。すると、バッテリポスト12にポスト嵌合部21が嵌合した状態で、回動規制壁41c′がバッテリ10の側面11bに対して当接され、もってバッテリ端子20の回動規制機能を良好に発揮することができる。
なお、バッテリ10におけるバッテリポスト12とバッテリ本体11の側面11bとの間のX軸方向についての距離が図16に示すものよりも小さい場合には、上記とは逆に回動規制部材40として本体部41を構成する横壁41bのX軸方向の長さ寸法が、図16に示すものの長さ寸法Lよりも上記距離の減少分だけ小さくなったものを製造すればよい。また、上記のようにバッテリ10の種類が変更される場合以外にも、例えばバッテリポスト12に対するバッテリ端子20の取付角度が変更され、それに伴って回動規制部材40における回動規制壁41cが当接されるバッテリ本体11側の部位が、Z軸方向及びX軸方向に沿った側面11cに変更される場合もあり得るが、その場合でもそれに対応した形状の回動規制部材40を製造しておくことで、容易に対応することが可能となっている。
以上説明したように本実施形態のバッテリ端子ユニットUは、バッテリ10に立設されたバッテリポスト12に対して接続されるポスト嵌合部21及びこのポスト嵌合部21に一体に設けられスタッドボルト24の頭部24aを収容するとともにスタッドボルト24を立設状態に保持するボルト保持部22を有するバッテリ端子20と、このバッテリ端子20に取り付けられた合成樹脂製の回動規制部材40とを備えており、回動規制部材40は、バッテリ端子20がバッテリポスト12に接続された状態でバッテリ10に当接することでバッテリポスト12に対するバッテリ端子20の取付角度を規制可能な本体部41と、本体部41と一体に設けられ、本体部41からボルト保持部22の側方を通ってボルト保持部22に対して本体部41とは反対側に回り込んだ位置にて係止する弾性係止片56とを備える。
このようにすれば、本体部41に対するバッテリ10側の当接箇所とバッテリポスト12との位置関係などの条件が異なる場合でも、バッテリ端子20と比べて製造コストが相対的に安価な回動規制部材40について上記条件に適合したものを用意しておけば、製造コストが相対的に高価なバッテリ端子20については共用品を使用でき、全体として低コストでの対応が可能となる。しかも、弾性係止片56が、本体部41からボルト保持部22の側方を通ってボルト保持部22に対して本体部41とは反対側に回り込んだ位置にて係止されているから、バッテリ端子20に対して取り付けた回動規制部材40をしっかりと保持させることができ、高い回動規制機能を発揮することができる。
ここで、本実施形態においては、バッテリ端子20とは別体の回動規制部材40を用いているため、従来のように回動規制構造をバッテリ端子に一体に設けた場合と比べると、バッテリ端子20に対する回動規制部材40の相対的な位置関係に変化が生じ易くなる傾向にあり、そのためバッテリ端子20と回動規制部材40との間のがたつきが懸念されるのであるが、本実施形態によれば弾性係止片56によって高い保持力でもって回動規制部材40をバッテリ端子20に取り付けることができるので、上記のような問題を解消することができるのである。
また、本体部41に一体に設けられ、ボルト保持部22の側面に形成された開口部32に対して圧入されることで回動規制部材40をバッテリ端子20に対して固定状態とする圧入部42を備える。このようにすれば、回動規制部材40は、バッテリ端子20のうちボルト保持部22の側面に形成された開口部32に圧入される圧入部42によってバッテリ端子20に対して固定されるから、両者間でがたつきが生じ難く、もって高い回動規制機能を発揮することができる。
ところで、仮に回動規制部材における本体部にヒンジで接続した蓋体を設け、その蓋体と本体部との間にバッテリ端子20を挟み込んで保持するようにしたものでは、バッテリ端子20との間にクリアランスが生じ易く、両者間でがたつきが生じてしまい、回動規制可能な角度の精度が低くなり勝ちとなる。これと比べると、本実施形態では、圧入によって回動規制部材40をバッテリ端子20に対してがたつきなくしっかりと固定しているので、バッテリ端子20を相対的に高い精度で角度規制できるようになっている。
また、ボルト保持部22に対して係止した状態の弾性係止片56に対してその係止解除方向への変位を規制する位置に配される撓み規制部として第1回り止め片64Aを備える。このようにすれば、第1回り止め片64Aにより係止状態の弾性係止片56が係止解除方向へ変位するのを規制することができるから、バッテリ端子20に対して取り付けた回動規制部材40の保持状態をより確実なものとすることができ、もって一層高い回動規制機能を発揮することができる。
また、ボルト保持部22に対してスタッドボルト24に挿通された状態で取り付けられる取付部材として端子金具60を備え、撓み規制部である第1回り止め片64Aは、端子金具60に設けられている。このようにすれば、ボルト保持部22に取り付けられる端子金具60に撓み規制機能を併せ持たせるようにしたから、仮に端子金具とは別途に撓み規制専用の部品を追加した場合と比べて部品点数や組付工数の削減を図ることができる。
また、端子金具60には、ボルト保持部22(スタッドボルト24)に対する取付角度を規制可能な回り止め片64が設けられており、撓み規制部は、第1回り止め片64Aにより構成されている。このようにすれば、第1回り止め片64Aに撓み規制機能を併せ持たせるようにしたから、仮に端子金具60に回り止め片64とは別途に撓み規制部を設けた場合と比べると、全体の構成を簡略化できる。
また、上記取付部材を外部回路に接続される端子金具60としている。このようにすれば、外部回路に接続される端子金具60に撓み規制機能を併せ持たせることができる。
また、弾性係止片56は、バッテリ端子20に対する回動規制部材40の取付方向に沿って延びる形態とされるとともに、ボルト保持部22に対してスタッドボルト24の軸線方向と直交する方向に隣り合う位置に配されている。このようにすれば、ボルト保持部22に対してスタッドボルト24の軸線方向に隣り合う位置には、スタッドボルト24に取り付ける部品やバッテリ10の壁面が存在し得るのと比べると、ボルト保持部22に対してスタッドボルト24の軸線方向と直交する方向に隣り合う位置には、弾性係止片56を設置するためのスペースを容易に確保することができる。
また、本実施形態のバッテリ端子20の取付構造は、バッテリ10に立設されたバッテリポスト12に対して接続されるポスト嵌合部21及びこのポスト嵌合部21に一体に設けられスタッドボルト24の頭部24aを収容するとともにスタッドボルト24を立設状態に保持するボルト保持部22を有するバッテリ端子20と、ボルト保持部22に対してスタッドボルト24に挿通された状態で取り付けられた取付部材である端子金具60と、バッテリ端子20に取り付けられた合成樹脂製の回動規制部材40とを備えており、回動規制部材40は、バッテリ端子20がバッテリポスト12に接続された状態でバッテリ10に当接することでバッテリポスト12に対するバッテリ端子20の取付角度を規制可能な本体部41と、本体部41と一体に設けられ本体部41からボルト保持部22の側方を通ってボルト保持部22に対して本体部41とは反対側に回り込んだ位置にて係止する弾性係止片56とを備え、端子金具60は、ボルト保持部22に対して係止した状態の弾性係止片56に対してその係止解除方向への変位を規制する位置に配される撓み規制部として第1回り止め片64Aを備える。
このようにすれば、本体部41に対するバッテリ10側の当接箇所とバッテリポスト12との位置関係などの条件が異なる場合でも、バッテリ端子20と比べて製造コストが相対的に安価な回動規制部材40について上記条件に適合したものを用意しておけば、製造コストが相対的に高価なバッテリ端子20については共用品を使用でき、全体として低コストでの対応が可能となる。しかも、弾性係止片56が、本体部41からボルト保持部22の側方を通ってボルト保持部22に対して本体部41とは反対側に回り込んだ位置にて係止されているから、バッテリ端子20に対して取り付けた回動規制部材40をしっかりと保持させることができる。それに加えて、撓み規制部である第1回り止め片64Aにより係止状態の弾性係止片56が係止解除方向へ変位するのを規制することができるから、バッテリ端子20に対して取り付けた回動規制部材40の保持状態をより確実なものとすることができる。これにより、高い回動規制機能を発揮することができる。
<実施形態2>
本発明の実施形態2を図20または図21によって説明する。この実施形態2では、バッテリ端子20‐Aのボルト保持部22‐Aに取り付けるものを変更したものを示す。なお、この実施形態2では、上記した実施形態1と同様の構造には、同一の符号を用いるとともにその末尾に添え字‐Aを付すものとし、構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
本実施形態に係るバッテリ端子20‐Aのボルト保持部22‐Aには、図20及び図21に示すように、電流センサ70が取り付けられている。電流センサ70は、バッテリ10‐Aを電源とした所定の電気回路に対してコネクタなどを介して電気的に接続されるとともに、その電気回路に流れる電流を検出するためのものである。この電流センサ70は、略ブロック状をなす本体部71に対してブラケット72が一体に設けられた構成であり、このブラケット72がスタッドボルト24‐Aに挿通された状態でボルト保持部22‐Aに対して取り付けられる。ブラケット72は、ボルト保持部22‐Aの上面に載置されるとともにボルト挿通孔72aを有するバッテリ取付部73と、バッテリ取付部73の両側縁から下方へ突出する一対の回り止め片74とから構成される。これらバッテリ取付部73及び両回り止め片74の構成、作用及び効果は、上記した実施形態1における端子金具60のバッテリ取付部62及び両回り止め片64と同様であり、このうち第1回り止め片74Aは弾性係止片56‐Aに対する撓み規制機能を有する。なお、このブラケット72は、金属製ではあるが、通電のためのものではなく、ボルト保持部22‐Aに対する電流センサ70の単なる機械的な保持を図るためのものである。
以上説明したように本実施形態によれば、ボルト保持部22‐Aに取り付けられる取付部材を、電気部品である電流センサ70に固定されるブラケット72としている。このようにすれば、電流センサ70に固定されるブラケット72に撓み規制機能を併せ持たせることができる。
<実施形態3>
本発明の実施形態3を図22ないし図25によって説明する。この実施形態3では、弾性係止片56‐Bを一対設けるようにしたものを示す。なお、この実施形態3では、上記した実施形態1と同様の構造には、同一の符号を用いるとともにその末尾に添え字‐Bを付すものとし、構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
回動規制部材40‐Bの本体部41‐Bからは、図22に示すように、一対の弾性係止片56‐BがX軸方向に沿ってバッテリ端子20‐Bに対する回動規制部材40‐Bの取付方向に突出して設けられている。なお、以下では、両弾性係止片56‐Bのうち、図22に示す奥側のものを第1弾性係止片56A‐Bとし、同図手前側のものを第2弾性係止片56B‐Bとする。
両弾性係止片56‐Bは、本体部41‐Bの縦壁41a‐Bのうち両圧入部42‐Bを挟んだ位置に配されている。両弾性係止片56‐B間の間隔は、ボルト保持部22‐Bの幅寸法とほぼ等しくなっている。両弾性係止片56‐Bは、その先端部に内向き(互いに接近する向き)に突出する係止部57‐Bを有する。両弾性係止片56‐Bは、ボルト保持部22‐BにおけるY軸方向の中央を通るX軸方向に沿った線を対称軸とした対称形状とされている。第1弾性係止片56A‐Bの係止部57‐Bは、ボルト保持部22‐Bにおける第1側壁22b‐Bの本体部41‐Bとは反対側の端面に、第2弾性係止片56B‐Bの係止部57‐Bは、第2側壁22d‐Bの本体部41‐Bとは反対側の端面に、それぞれ係止可能とされる(図23)。
端子金具60‐Bを構成する両回り止め片64‐Bは、図24に示すように、端子金具60‐Bがボルト保持部22‐Bに取り付けられた状態では、それぞれ両弾性係止片56‐BのY軸方向の外側、つまり係止解除方向に隣接して(撓み空間S‐Bに進入して)配されており、両弾性係止片56‐Bの外側面に対して当接可能とされる。詳しくは、端子金具60‐Bにおけるバッテリ取付部62‐Bがボルト保持部22‐B上に積層配置された状態では、第1回り止め片64A‐Bは、第1弾性係止片56A‐Bの外側面に当接または近接して配されるとともに、第2回り止め片64B‐Bは、第2弾性係止片56B‐Bの外側面に当接または近接して配され、各弾性係止片56‐Bとの間に殆ど隙間が保有されていない。従って、仮に各弾性係止片56‐Bが係止解除方向へ変位させられようとしても、両弾性係止片56‐Bに対して両回り止め片64‐Bが係合することで、両弾性係止片56‐Bの係止解除方向への不用意な撓みを規制できるようになっている。このように両回り止め片64‐Bは、端子金具60‐Bの回り止め機能と、弾性係止片56‐Bの撓み規制機能とを併せ持っている。また、各回り止め片64‐Bとボルト保持部22‐Bの各側壁22b‐B,22d‐Bとの間に各弾性係止片56‐Bが挟み込まれているとも言える(図25)。なお、両回り止め片64‐B間の間隔は、ボルト保持部22‐Bの幅寸法と各弾性係止片56‐Bの厚さ寸法とを足し合わせた大きさとほぼ等しくなっている。また、両回り止め片64‐Bは、ボルト保持部22‐Bに隣接配置された両弾性係止片56‐Bの外側面に当接されるので、ボルト保持部22‐Bに対する端子金具60‐Bの回り止め機能を十分に発揮することができる。
バッテリ端子20‐B及び回動規制部材40‐Bを組み付けるに際しては、図22に示す状態から回動規制部材40‐Bをバッテリ端子20‐Bに向けてX軸方向に沿って押し込む。すると、両弾性係止片56‐Bの係止部57‐Bがボルト保持部22‐Bの両側壁22b‐B,22d‐Bに乗り上げることで、両弾性係止片56‐BがY軸方向の外向き(互いに離間する向き)に弾性変形される。回動規制部材40‐Bがバッテリ端子20‐Bに対して正規深さまで押し込まれると、図23に示すように、両弾性係止片56‐Bの係止部57‐Bが両側壁22b‐B,22d‐Bを乗り越えるとともに両弾性係止片56‐Bが弾性復帰し、両係止部57‐Bが両側壁22b‐B,22d‐Bの端面に対してそれぞれ係止される。
その後、端子金具60‐Bをボルト保持部22‐Bに対して取り付けると、両回り止め片64‐Bによってボルト保持部22‐B及び両弾性係止片56‐Bが一括して挟み込まれる。取付状態では、図24及び図25に示すように、両回り止め片64‐Bが両弾性係止片56‐Bの外側面にそれぞれ当接または近接して配される。この状態では、両回り止め片64‐Bが両弾性係止片56‐Bに対してその係止解除方向に殆ど隙間を空けることなく隣接して配されているので、仮に両弾性係止片56‐Bのいずれか一方または両方が係止解除方向へ変位させられようとした場合でも、各弾性係止片56‐Bに対して各回り止め片64‐Bが係合することで、各弾性係止片56‐Bの不用意な撓みが規制される。もって、ボルト保持部22‐Bに対する弾性係止片56‐Bの係止状態を安定的に維持させることができ、高い保持力を発揮することができる。また、両回り止め片64‐Bが両弾性係止片56‐Bに当接可能とされることで、ボルト保持部22‐Bに対する端子金具60‐Bの回り止めを図ることができる。
以上説明したように本実施形態によれば、ボルト保持部22‐Bに係止される弾性係止片56‐Bを一対備えているから、バッテリ端子20‐Bに対する回動規制部材40‐Bの保持力をより高く且つバランス良くすることができ、もって高い回動規制機能を安定的に発揮させることができる。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記した各実施形態以外にも、弾性係止片の設置本数は、3本以上に変更可能である。また弾性係止片の形状や大きさなども適宜に変更可能である。
(2)上記した各実施形態では、弾性係止片がボルト保持部に対してスタッドボルトの軸線方向と直交する方向に隣り合う配置とされたものを示したが、弾性係止片がボルト保持部に対してスタッドボルトの軸線方向に隣り合う配置としたものも本発明に含まれる。
(3)上記した各実施形態では、弾性係止片がボルト保持部における側壁の端面に係止されるものを示したが、例えば側壁に側方外部へ開口する孔部を設け、その孔部の縁部に対して弾性係止片を係止させるようにしたものも本発明に含まれる。
(4)上記した実施形態1では、ボルト保持部に端子金具が取り付けられるものを、上記した実施形態2では、ボルト保持部に電流センサのブラケットが取り付けられるものをそれぞれ例示したが、ボルト保持部に対して端子金具及び電流センサのブラケットが共に取り付けられるものも本発明に含まれる。その場合、端子金具とブラケットの少なくともいずれか一方に撓み規制機能を併せ持つ回り止め片を設けるのが好ましい。
(5)上記した各実施形態では、端子金具や電流センサのブラケットにおける回り止め片に撓み規制機能を併せ持たせたものを示したが、端子金具またはブラケットに対して回り止め片とは別途に撓み規制専用の撓み規制部を設けるようにしてもよい。
(6)上記した各実施形態では、端子金具や電流センサのブラケットが撓み規制機能を併せ持つものを示したが、端子金具やブラケットに撓み規制機能を併せ持たせず、撓み規制専用の撓み規制部材をボルト保持部に取り付けるようにしたものも本発明に含まれる。それ以外にも、端子金具やブラケットに撓み規制機能を併せ持たせず、バッテリ端子に撓み規制部を設けるようにしたものも本発明に含まれる。
(7)上記した各実施形態では、弾性係止片の係止解除方向への変位を規制するようにしたものを示したが、そのような撓み規制機能を持つ撓み規制部を省略してもよい。
(8)上記した実施形態2では、電流センサのブラケットを金属製としたものを示したが、ブラケットを例えば合成樹脂製としてもよい。
(9)上記した実施形態1,2では、ボルト保持部に取り付けられる「取付部材」として、端子金具や電流センサのブラケットを例示したが、これら以外のものを「取付部材」として用いるようにしてもよい。特に、ブラケットが固定される電気部品を、例えば圧力センサなどに変更可能である。
(10)上記した各実施形態に示した圧入部については、設置数や形状や大きさや配置などを適宜に変更可能である。また、圧入部のうち各リブ、抜け止め突起及び肉抜き部の設置数や形状や大きさや配置などを適宜に変更可能である。
(11)また、圧入部を省略することも可能である。