<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1〜図16によって説明する。本実施形態では、自動車に搭載されたバッテリ10に接続されるバッテリ端子20と、バッテリ端子20に取り付けられる回動規制部材40とからなるバッテリ端子ユニットUを例示する。なお、以下では、上下方向については図3〜図5,図7〜図9,図11,図13,図14,図16を基準とする。また、各図面の一部にはX軸、Y軸及びZ軸を示しており、各軸方向が各図面で示した方向となるように描かれている。
バッテリ10は、図10〜図13に示すように、略箱型をなすバッテリ本体11と、その上面11aから立設される略円柱状のバッテリポスト12とを備えている。バッテリポスト12は、鉛などからなるとともにバッテリ本体11の上面11aのうち角位置付近に設置されており、バッテリ本体11の上面11aと共にバッテリ本体11の角部を構成する一対の側面11b,11cとの間にそれぞれ所定の距離が空けられている。このバッテリポスト12に対して次述するバッテリ端子20が接続されるようになっている。
バッテリ端子20は、金属板をプレス成形することで、所望の形状に形成されており、図1〜図3に示すように、バッテリポスト12に対して嵌合接続されるポスト嵌合部21と、電線の端末に設けられた金具(電線共々図示せず)などが接続されるスタッドボルト24を立設状態に保持するボルト保持部22とが繋ぎ部23によって一体に繋がれた構成となっている。ポスト嵌合部21、繋ぎ部23及びボルト保持部22は、X軸方向(バッテリ端子20に対する回動規制部材40の取付方向)に沿って直線的に並んで配されている。このうち、ボルト保持部22に対してポスト嵌合部21側とは反対側から回動規制部材40が取り付けられるようになっており、取付状態ではバッテリポスト12側からポスト嵌合部21、繋ぎ部23、ボルト保持部22、回動規制部材40の順でX軸方向に沿って並ぶことになる(図10)。なお、ポスト嵌合部21がバッテリポスト12に嵌合された状態では、ボルト保持部22は、バッテリ本体11におけるZ軸方向及びY軸方向に沿った側面11bから外部に突出することがなく、側面11bとの間に所定の間隔(次述する回動規制部材40の横壁41bの長さ寸法分程度の間隔)を空けた位置に配される(図11,図12)。
ポスト嵌合部21は、バッテリポスト12に外嵌される略円弧状の締付部25と、締付部25の両端部からバッテリポスト12の径方向外向きに延出する一対の延出部26とからなる。締付部25は繋ぎ部23から立ち上げた片部を回曲させることで形成され、延出部26はその片部の両先端部を外向きに屈曲させることで形成される。締付部25は、その内径を増減させるように径方向に弾性撓みし得るようになっており、自由状態における内径寸法がバッテリポスト12の外径寸法よりも大きく設定されることで、バッテリポスト12に対して遊嵌可能とされる。両延出部26は、略方形の平板状をなし、自由状態においては、延出端側ほど間隔が広がるよう傾いた姿勢とされる。両延出部26には、ボルト27を挿通可能なボルト挿通孔26aが貫通形成されており、一方の延出部26の外側から両ボルト挿通孔26aにボルト27を挿通させ、その先端部を他方の延出部26の外側に突出させた状態でそこにナット28が締め付けられる。このボルト27及びナット28の締め付け状態を調整することで、両延出部26間の間隔を増減でき、それに連動して締付部25の内径寸法が増減される(縮径または拡径される)ので、バッテリポスト12に対してポスト嵌合部21を所望の保持力でもって接続状態に保持することができる。
ボルト保持部22は、図4及び図5に示すように、ポスト嵌合部21よりも低い略箱状をなしており、その内部にスタッドボルト24の頭部24aを収容するとともに、スタッドボルト24をその軸部24bが上方外部に突き出した立設状態に保持可能とされる。スタッドボルト24は、頭部24aが平面視四角形状をなすのに対し、軸部24bが外周面にねじ山が螺刻形成された略円柱状をなしている。スタッドボルト24の軸部24bには、電線の端末に設けられた金具などが取り付けられた状態でナット(図示せず)が締め付けられることで、上記金具などが固定されるようになっている。
ボルト保持部22は、繋ぎ部23に連なりY軸方向に延びる片部を屈曲させることで略箱状に形成されている。詳しくは、ボルト保持部22は、繋ぎ部23に連なって並行する底壁22aと、底壁22aにおけるY軸方向の一端側からZ軸方向に沿って立ち上がる第1側壁22bと、第1側壁22bの立ち上がり端から底壁22aと対向するようY軸方向に沿って延びる天井壁22cと、天井壁22cの延出端から底壁22aのY軸方向の他端に向けてZ軸方向に沿って突出して第1側壁22bと対向する第2側壁22dとから構成されており、各壁22a〜22dによって囲まれてなる内部の収容空間にスタッドボルト24の頭部24aが収容される。
底壁22aにおけるY軸方向の両端部及びX軸方向の一端部(繋ぎ部23側とは反対側の端部)を除いた部分には、図5及び図6に示すように、スタッドボルト24の頭部24aを持ち上げる持ち上げ部29が上記各端部よりも上方へ張り出す形態で形成されており、この持ち上げ部29が繋ぎ部23にも引き続いて形成されている。天井壁22cの略中央位置には、スタッドボルト24の軸部24bを通すボルト挿通孔30が貫通形成されている。また、第2側壁22dの突出端における略中央位置には、持ち上げ部29の外面に係合することで、ボルト保持部22を箱形状に保持可能な保持片31が形成されている(図1及び図3)。
ボルト保持部22は、既述したようにY軸方向に連なる各壁22a〜22dによって構成されていて、X軸方向に沿って2側面が外部に開口している。ボルト保持部22の両側面にそれぞれ形成された一対の開口部32,33のうち、ポスト嵌合部21側とは反対側(バッテリ端子20全体におけるX軸方向の外端部)の開口部32の口縁には、スタッドボルト24の頭部24aに係合することでスタッドボルト24の回動を規制可能なボルト回動規制片34が立設されている。ボルト回動規制片34は、図4及び図5に示すように、開口部32の口縁を構成する底壁22aの側縁(開口部32の口縁のうち下縁)からZ軸方向に沿って立ち上がる立ち上がり部34aと、立ち上がり部34aの先端からX軸方向に沿って内向きに突出し底壁22aと天井壁22cとの間に配されるボルト係合部34bとから構成されており、全体として略L字形状となっている。ボルト回動規制片34のボルト係合部34bにおける先端面がスタッドボルト24の頭部24aの側面に係合されるようになっている。ボルト係合部34bの先端部は、Y軸方向について底壁22aにおける持ち上げ部29の側端位置とほぼ同じ位置とされる。また、ボルト係合部34bと天井壁22cとの間には、僅かなクリアランスが確保されている。
このボルト回動規制片34は、図4に示すように、幅寸法が開口部32の間口よりも小さくて約半分程度の大きさとされるとともに、ボルト保持部22におけるY軸方向の略中央位置に配され、開口部32を部分的に塞いでいる。従って、開口部32は、その入り口に設置されたボルト回動規制片34によって左右にほぼ均等に分割されており、一対の分割開口部32aを備えていると言える。そして、各分割開口部32aの奥側に連なる空間であって、ボルト保持部22の両側壁22b,22dとボルト回動規制片34との間の空間は、スタッドボルト24が存在しないデッドスペースとなっている。本実施形態では、このデッドスペースとなった空間を利用して次述する回動規制部材40を取付状態に保持するようにしている。
回動規制部材40は、合成樹脂製とされ、バッテリ端子20に取り付けられて一体化された状態で、バッテリ10に対して当接することでバッテリ10に対するバッテリ端子20の取付角度を規制できるようになっている(図10)。詳しくは、回動規制部材40は、図1及び図6に示すように、バッテリ10に対して当接可能な本体部41と、本体部41から突出してバッテリ端子20に対して圧入可能な圧入部42とを備える。回動規制部材40は、バッテリ端子20に対してX軸方向に沿って取り付けられるようになっている。なお、以下では、バッテリ端子20に対する回動規制部材40の取付方向(図6の左方)を前方とし、その逆方向(図6の右方)を後方とする。
本体部41は、図7に示すように、側方(Y軸方向の正面)から視て断面形状が略クランク状をなしており、バッテリ端子20を受ける端子受け部43を含むZ軸方向に沿った縦壁41aと、バッテリ本体11の上面11aに宛われるX軸方向に沿った横壁41bと、バッテリ本体11におけるZ軸方向及びY軸方向に沿った側面11bに当接されるZ軸方向に沿った回動規制壁41cとを備える。本体部41におけるY軸方向の寸法は、バッテリ端子20よりも大きく、約2倍程度となっている。
縦壁41aは、図1及び図6に示すように、全域がZ軸方向に沿ってほぼ真っ直ぐであるものの、同図手前側部分がY軸方向に沿ってほぼ真っ直ぐに形成されるのに対し、同図奥側部分がY軸方向に対して傾いて形成されている。この縦壁41aのうちY軸方向に沿う真直部分が、バッテリ端子20のうちボルト保持部22の側端面(開口部32の開口縁)に宛われる端子受け部43を構成している。なお、縦壁41aのうち傾斜部分は、バッテリ端子20からは引っ込む形態とされており、その引っ込んだ分だけ横壁41bのY軸方向の寸法も図1及び図6の奥側ほど小さくなっている。横壁41bは、全域にわたってX軸方向及びY軸方向に沿ってほぼ真っ直ぐな形態とされ、当接対象であるバッテリ本体11の上面11aとほぼ平行をなす。回動規制壁41cは、全域にわたってY軸方向及びZ軸方向に沿ってほぼ真っ直ぐな形態とされ、当接対象であるバッテリ本体11の側面11bとほぼ平行をなす。
また、本体部41を構成する各壁41a〜41cの外面、つまりバッテリ10やバッテリ端子20とは反対側の面には、図6及び図9に示すように、Z軸方向及びX軸方向に沿った縦型補強壁44が、Y軸方向について所定の間隔を空けて5本(複数)形成されている。各縦型補強壁44のうち、Y軸方向の両端位置のものと、中央のものとが、X軸方向またはZ軸方向について縦壁41a、横壁41b及び回動規制壁41cの全長にわたる範囲に形成されているのに対し、残りの2つは、X軸方向またはZ軸方向について縦壁41a及び横壁41bの全長にわたるものの、回動規制壁41cについて途中まで(次述する横型補強壁45まで)の範囲に形成されている。これに対し、回動規制壁41cの外面には、各縦型補強壁44を横切りつつX軸方向及びY軸方向に沿って横型補強壁45が形成されている。横型補強壁45は、Y軸方向について回動規制壁41cの全長にわたる範囲に形成され、交差する各縦型補強壁44と繋げられている。
回動規制壁41cにおける内面、つまりバッテリ本体11の側面11bとの対向面のうち、外側の各縦型補強壁44及び横型補強壁45と重畳する領域を除いた領域には、図1及び図8に示すように、僅かな深さの凹部46が複数形成されており、この凹部46の面積分だけ回動規制壁41cのバッテリ本体11の側面11bに対する接触面積が低減されている。逆に言うと、回動規制壁41cの内面のうち、各縦型補強壁44及び横型補強壁45と重畳する領域に略略格子状をなす凸部47が形成されており、この凸部47のみがバッテリ本体11の側面11bに当接される。さらには、回動規制壁41cにおける凹部46の形成領域の一部には、横長な孔部48が貫通形成されている。孔部48は、外側の横型補強壁45の下側に隣接する位置と、そこから下方に所定の間隔を空けた位置とに2本ずつ設けられ、共に横型補強壁45と平行をなす。これにより、バッテリ10から発せられる熱を逃がすことができるようになっている。
続いて、圧入部42について詳しく説明する。圧入部42は、図1及び図6に示すように、本体部41のうち端子受け部43の内面(バッテリ端子20側を向いた面)に一対設けられている。一対の圧入部42は、端子受け部43の内面において、Y軸方向、つまりZ軸方向(バッテリポスト12の軸線方向)及びX軸方向(バッテリ端子20に対する回動規制部材40の取付方向)と直交する方向に並んで配されている。両圧入部42間には、所定の間隔が空けられており、その寸法はバッテリ端子20における両分割開口部32a間の間隔とほぼ一致している。なお、端子受け部43の内面のうち、両圧入部42に対してY軸方向について外側に隣接する位置には、バッテリ端子20の端面に突き当てられる受け突部49が一対設けられている。
圧入部42は、端子受け部43の内面(バッテリ端子20との対向面)からX軸方向(バッテリ端子20に対する取付方向)に沿って突出する挿入突部50と、挿入突部50の周面からY軸方向またはZ軸方向(バッテリ端子20に対する取付方向と交差する方向)に沿って突出して開口部32の口縁によって圧潰可能な複数のリブ51〜53と、挿入突部50の周面からY軸方向に沿って突出してボルト回動規制片34に係止可能な抜け止め突起54とを備える。
挿入突部50は、全体として略ブロック状をなしており、図8に示すように、X軸方向の正面から視てやや縦長な四角形状とされる。挿入突部50は、バッテリ端子20における分割開口部32aに対して挿入可能とされており、その高さ寸法(Z軸方向の寸法)及び幅寸法(Y軸方向の寸法)が分割開口部32aのそれよりも少し小さく設定されている。挿入突部50における端子受け部43からの突出寸法(X軸方向の寸法)は、バッテリ端子20におけるボルト回動規制片34のX軸方向の寸法とほぼ同じとされる(図6)。
リブ51〜53は、図1及び図8に示すように、挿入突部50の周面のうち上面からZ軸方向に沿う上方(第1の方向)へ向けて突出する第1リブ51と、挿入突部50の周面のうち下面からZ軸方向に沿う下方(上記第1の方向とは正反対の第2の方向)へ向けて突出する第2リブ52と、挿入突部50の周面のうち外側の側面(もう片方の挿入突部50との対向面とは反対側の面)からY軸方向に沿う外方(もう片方の挿入突部50側とは逆向きの第3の方向)へ向けて突出する第3リブ53とからなる。各リブ51〜53は、X軸方向の正面から視て略半円形状をなすとともに、X軸方向に沿って延びる形態とされ、X軸方向について挿入突部50の全長にわたる長さを有する。また各リブ51〜53における前端面(取付方向の先端面)には、開口部32への円滑な進入を担保するためのテーパ面が面取り形成されている。
第1リブ51及び第2リブ52は、幅寸法がほぼ同じで第3リブ53よりも大きく設定されている。第1リブ51は、挿入突部50におけるY軸方向の略中央位置に配されるのに対し、第2リブ52は、挿入突部50におけるY軸方向の中央位置から所定の距離を空けた位置に一対、Y軸方向に並んで配されている。言い換えると、第1リブ51は、挿入突部50においてY軸方向に並んだ一対の第2リブ52のほぼ中間位置に配されており、逆に言うと両第2リブ52は、挿入突部50においてY軸方向について第1リブ51を挟んだ位置に配されている。つまり、第1リブ51と第2リブ52とは、Y軸方向について互いにオフセットした位置(ずれた位置)に配されている。詳しくは、第1リブ51及び第2リブ52のうち、幅方向の端部同士についてはY軸方向に重なり合うものの、幅方向の中心同士についてはY軸方向に重なることなく、互いにずれた配置となっている。また、両第2リブ52は、挿入突部50においてY軸方向の中央位置を中心にして対称位置に配されていると言える。
第1リブ51及び第2リブ52は、挿入突部50の周面からの突出寸法がほぼ同じとされる。第1リブ51の突出寸法と第2リブ52の突出寸法とを足し合わせた寸法は、挿入突部50と分割開口部32aとのZ軸方向についての寸法差よりも大きくなっている。さらに言うと、第1リブ51の突出寸法または第2リブ52の突出寸法単独でも、上記寸法差よりも大きくなっている。従って、挿入突部50を分割開口部32a内に挿入すると、第1リブ51及び第2リブ52が開口部32の開口縁によって圧潰され、もって所望の保持力が得られるようになっている(図14)。
第3リブ53は、挿入突部50の外側の側面におけるZ軸方向の中央位置から所定の距離を空けた位置に一対、Z軸方向に並んで配されている。両第3リブ53は、挿入突部50においてZ軸方向の中央位置を中心にして対称位置に配されている。一方、抜け止め突起54は、挿入突部50の周面のうち内側の側面(もう片方の挿入突部50との対向面)、つまり第3リブ53の設置面とは反対側の側面から、Y軸方向に沿う内方(上記第3の方向とは正反対の第4の方向)へ向けて突出している。
抜け止め突起54は、全体として略ブロック状をなすとともに、X軸方向の正面から視て略台形状、つまり突出端側ほど幅狭になる先細り状に形成されている。抜け止め突起54における突出基端部の幅寸法は、第1リブ51及び第2リブ52よりも大きくなっている。抜け止め突起54は、挿入突部50の側面における下端位置に配されており、Z軸方向について下側の第3リブ53と重なり合う位置に配されている。抜け止め突起54は、X軸方向について挿入突部50における先端位置に配されている。また抜け止め突起54における前端面(取付方向の先端面)には、開口部32への円滑な進入を担保するためのテーパ面が面取り形成されている(図6)。
第3リブ53における挿入突部50の側面からの突出寸法(Y軸方向の寸法)と、抜け止め時における同突出寸法とを足し合わせた寸法は、図6に示すように、挿入突部50と分割開口部32aとのY軸方向についての寸法差よりも大きくなっている。さらに言うと、抜け止め突起54の突出寸法単独でも、上記寸法差よりも大きくなっている。従って、挿入突部50を分割開口部32a内に挿入すると、第3リブ53及び抜け止め突起54が開口部32の開口縁によって圧潰されるようになっている(図14)。特に、抜け止め突起54については、開口部32の開口縁を構成するボルト回動規制片34の立ち上がり部34aによって多少削られるものの、無理嵌めされて立ち上がり部34aの奥側へ進入できるようになっている(図13)。そして、抜け止め突起54のうち、バッテリ端子20に対する取付方向とは逆側を向いた後端面、つまり端子受け部43側を向いた面が、ボルト回動規制片34における立ち上がり部34aに対して係止される係止面54aとなっている。係止面54aは、Y軸方向及びZ軸方向に沿ってほぼ真っ直ぐに形成されている。なお、本体部41の端子受け部43のうち各係止面54aに対応した部分には、回動規制部材40を樹脂成形する際に抜け止め突起54を成形する金型のピンを抜くための型抜き孔43aが開口形成されている(図8及び図9)。また、第3リブ53の突出寸法は、第1リブ51、第2リブ52及び抜け止め突起54の突出寸法よりも小さくなっている(図8)。
以上のように回動規制部材40は、バッテリ端子20に対して取り付けられると、圧入部42の各リブ51〜53及び抜け止め突起54によって取り外し不能な状態、いわゆる嵌め殺し状態でがたつきなく保持されるようになっている。
本実施形態は以上のような構造であり、続いてその作用を説明する。まず、ボルト保持部22内にスタッドボルト24を収容した状態のバッテリ端子20に対して回動規制部材40を取り付ける作業を行う。
取り付けにあたっては、回動規制部材40における一対の圧入部42を、バッテリ端子20におけるボルト保持部22の開口部32を構成する一対の分割開口部32aに位置合わせしつつ、X軸方向に沿ってバッテリ端子20に対して回動規制部材40を相対的に接近させるようにする。各圧入部42の挿入突部50が各分割開口部32a内に挿入されると、それに伴って第1リブ51、第2リブ52及び第3リブ53がそれぞれ分割開口部32aの開口縁における上縁、下縁、外側の側縁に干渉することで、圧潰される。このとき、抜け止め突起54は、分割開口部32aの開口縁における内側の側縁を構成するボルト回動規制片34の立ち上がり部34aに干渉することで、多少削られつつも無理嵌めされ、回動規制部材40側から視て立ち上がり部34aの奥側へと進入する。
そして、各圧入部42が各分割開口部32a内に正規深さまで圧入されると、端子受け部43における両受け突部49がボルト保持部22の側端面に突き当てられることで、それ以上の押し込みが規制される(図10〜図12)。この取付状態では、図14及び図15に示すように、各リブ51〜53が圧潰されることで得られる摩擦抵抗力と、抜け止め突起54の係止面54aがボルト回動規制片34の立ち上がり部34aに係止することで得られる係止力とによって、回動規制部材40は、バッテリ端子20に対して取り外し不能な状態で保持される。詳しくは、回動規制部材40は、第1リブ51及び第2リブ52によってZ軸方向に、第3リブ53によってY軸方向にそれぞれバッテリ端子20に対して相対変位不能に保持されるとともに、抜け止め突起54によってX軸方向について取り外し方向へ相対変位不能(抜け止め状態)に保持される。もって、回動規制部材40は、バッテリ端子20に対してX軸方向,Y軸方向及びZ軸方向のいずれの方向にもがたつきが生じることが防がれている。しかも、第2リブ52及び第3リブ53は、挿入突部50においてそれぞれ一対ずつ所定の間隔を空けて配置されているから、挿入突部50が分割開口部32a内にてその軸線(X軸)周りに傾くような事態が生じ難くなっている。さらには、圧入部42は、本体部41においてY軸方向に一対並んで配されているから、バッテリ端子20に対して本体部41がZ軸周りに傾いたり、X軸周りに傾くような事態が極めて生じ難くなっている。このようにして、バッテリ端子20に回動規制部材40をがたつきなく一体化してなるバッテリ端子ユニットUが得られる。
続いて、バッテリ端子ユニットUをバッテリ10に対して取り付ける作業を行う。まず、バッテリ10のバッテリポスト12に対してバッテリ端子20のポスト嵌合部21を嵌合させる。このとき、図10〜図13に示すように、回動規制部材40の本体部41を構成する回動規制壁41cを、バッテリ本体11の側面11bに対して当接させるようにする。バッテリ端子20がバッテリ本体11の上面11aに載置されたところで、ポスト嵌合部21のボルト27及びナット28を適宜に工具を用いて締め付けるようにする。すると、ポスト嵌合部21の締付部25がその内径を縮径させるよう弾性変形するとともにその内周面がバッテリポスト12の外周面に対して圧接され、もってバッテリ端子20がバッテリポスト12に対して取付状態に保持される。
このとき、ボルト27の締め付けに伴って発生するトルクによって、バッテリ端子20がバッテリポスト12を中心にしてその軸線(Z軸)周りに回動変位するおそれがある。ところが、図10及び図11に示すように、バッテリ端子20に一体化された回動規制部材40のうちY軸方向及びZ軸方向に沿った回動規制壁41cの凸部47が、並行するバッテリ本体11の側面11bに対して当接されているので、上記のようなバッテリ端子20の回動動作が未然に規制される。これにより、バッテリポスト12に対するバッテリ端子20の取付角度を図12に示す状態に維持することができる。
ところで、上記したバッテリ端子ユニットUが取り付けられるバッテリ10は、例えば搭載される車種やグレードに応じて種類が変更される場合があって、それに伴ってバッテリ本体11におけるバッテリポスト12の設置位置が変更される場合がある。そうなると、バッテリ本体11のうち回動規制部材40の回動規制壁41cが当接される箇所である側面11b(バッテリ10側の当接箇所)とバッテリポスト12との相対的な位置関係が変更されることになる。これに対して、バッテリ端子ユニットUは、ポスト嵌合部21と回動規制壁41cとの位置関係が一定であるから、上記バッテリ10側の変更に対応できない。そこで、本実施形態では、本体部41が上記バッテリ10側の変更に適合した形状とされる回動規制部材40を別途に製造しておき、その回動規制部材40をバッテリ端子20に取り付けて使用するようにしている。つまり、金属製で相対的に製造コストが高価なバッテリ端子20については、共用品を用いるのに対し、合成樹脂製で相対的に製造コストが安価な回動規制部材40については、各種条件に合致した専用品を多品種製造して用いるのである。
具体的には、バッテリ10におけるバッテリポスト12とバッテリ本体11の側面11bとの間のX軸方向についての距離が図11に示すものよりも大きい場合には、図16に示すように、回動規制部材40′として本体部41′を構成する横壁41b′のX軸方向の長さ寸法L′が、図11に示すものの長さ寸法Lよりも上記距離の増加分だけ大きくなったものを製造する。なお、この回動規制部材40′では、横壁41b′と共に縦型補強壁44′についても延長しているが、それ以外の構成は変更されていない。そして、この回動規制部材40′をバッテリ端子20に取り付けることでバッテリ端子ユニットU′を製造したら、そのバッテリ端子ユニットU′をバッテリ10に対して取り付ける。すると、バッテリポスト12にポスト嵌合部21が嵌合した状態で、回動規制壁41c′がバッテリ10の側面11bに対して当接され、もってバッテリ端子20の回動規制機能を良好に発揮することができる。
なお、バッテリ10におけるバッテリポスト12とバッテリ本体11の側面11bとの間のX軸方向についての距離が図11に示すものよりも小さい場合には、上記とは逆に回動規制部材40として本体部41を構成する横壁41bのX軸方向の長さ寸法が、図11に示すものの長さ寸法Lよりも上記距離の減少分だけ小さくなったものを製造すればよい。また、上記のようにバッテリ10の種類が変更される場合以外にも、例えばバッテリポスト12に対するバッテリ端子20の取付角度が変更され、それに伴って回動規制部材40における回動規制壁41cが当接されるバッテリ本体11側の部位が、Z軸方向及びX軸方向に沿った側面11cに変更される場合もあり得るが、その場合でもそれに対応した形状の回動規制部材40を製造しておくことで、容易に対応することが可能となっている。
以上説明したように本実施形態のバッテリ端子ユニットUは、バッテリ10に立設されたバッテリポスト12に対して接続されるポスト嵌合部21及びこのポスト嵌合部21に一体に設けられスタッドボルト24の頭部24aを収容するとともにスタッドボルト24を立設状態に保持するボルト保持部22を有するバッテリ端子20と、このバッテリ端子20に取り付けられた合成樹脂製の回動規制部材40とを備え、回動規制部材40は、バッテリ端子20がバッテリポスト12に接続された状態でバッテリ10に当接することでバッテリポスト12に対するバッテリ端子20の取付角度を規制可能な本体部41と、本体部41に一体に設けられ、ボルト保持部22の側面に形成された開口部32に対して圧入されることで回動規制部材40をバッテリ端子20に対して固定状態とする圧入部42とを備える。
このようにすれば、本体部41に対するバッテリ10側の当接箇所である側面11b,11cとバッテリポスト12との位置関係などの条件が異なる場合でも、バッテリ端子20と比べて製造コストが相対的に安価な回動規制部材40について上記条件に適合したものを用意しておけば、製造コストが相対的に高価なバッテリ端子20については共用品を使用でき、全体として低コストでの対応が可能となる。さらには、回動規制部材40は、バッテリ端子20のうちボルト保持部22の側面に形成された開口部32に圧入される圧入部42によってバッテリ端子20に対して固定されるから、両者間でがたつきが生じ難く、もって高い回動規制機能を発揮することができる。また、圧入部42がボルト保持部22内のスタッドボルト24が存在しない空間に進入され、すなわちボルト保持部22内のデッドスペースを利用して配置されるようになっているから、バッテリ端子20を大型化することがなく、またバッテリ端子20の設計変更も不要となって低コストとなる。
ところで、仮に回動規制部材における本体部にヒンジで接続した蓋体を設け、その蓋体と本体部との間にバッテリ端子20を挟み込んで保持するようにしたものでは、バッテリ端子20との間にクリアランスが生じ易く、両者間でがたつきが生じてしまい、回動規制可能な角度の精度が低くなり勝ちとなる。これと比べると、本実施形態では、圧入によって回動規制部材40をバッテリ端子20に対してがたつきなくしっかりと固定しているので、バッテリ端子20を相対的に高い精度で角度規制できるようになっている。
また、ボルト保持部22における開口部32の口縁には、スタッドボルト24の頭部24aに係合することで、ボルト保持部22に対するスタッドボルト24の回動を規制可能なボルト回動規制片34が立設され、圧入部42には、ボルト回動規制片34に係止することで、回動規制部材40をバッテリ端子20から抜け止め可能な抜け止め突起54が設けられている。このようにすれば、回動規制部材40を高い保持力でもってバッテリ端子20に固定することができる。なお、ボルト回動規制片34は、バッテリ端子20における既存構造であり、本実施形態では、その既存構造を利用して回動規制部材40の抜け止めを図るようにしているから、バッテリ端子20に新規の抜け止め構造を設ける必要がなく、もってバッテリ端子20の設計変更が不要で低コストでの対応が可能となっている。
また、圧入部42は、本体部41からバッテリ端子20に対する取付方向に沿って突出して開口部32内に挿入される挿入突部50と、この挿入突部50の周面から取付方向と交差する第1の方向へ向けて突出して開口部32の口縁によって圧潰可能な第1リブ51と、挿入突部50の周面から第1の方向とは正反対の第2の方向へ向けて突出して開口部32の口縁によって圧潰可能な第2リブ52とを備え、第1リブ51と第2リブ52とのうち第2リブ52は、2つ(複数)設けられている。このようにすれば、挿入突部50が開口部32内に挿入されると、第1リブ51及び第2リブ52が開口部32の口縁によって圧潰されることで、回動規制部材40の保持がなされる。このとき、第2リブ52が2つ設けられているから、開口部32内にて挿入突部50がその軸線周りに傾く、いわゆるローリングを防止できる。
また、第1リブ51と第2リブ52とが互いにオフセットして配されている。このようにすれば、挿入突部50が開口部32内に挿入されると、第1リブ51及び第2リブ52が開口部32の口縁によって圧潰されることで、回動規制部材40の保持がなされる。ここで、第1リブ51と第2リブ52とが互いにオフセットして配されているから、第1リブ51及び第2リブ52の圧潰に伴って挿入突部50に作用する圧縮力が分散され易くなり、圧入に必要な操作力を低減できる。もって、バッテリ端子20に対する回動規制部材40の取り付け作業性が向上する。
また、圧入部42は、バッテリポスト12の軸線方向(Z軸方向)及びバッテリ端子20に対する回動規制部材40の取付方向(X軸方向)と直交する方向(Y軸方向)に沿って2つ(複数)並んで配されている。このようにすれば、バッテリ端子20に対して回動規制部材40がバッテリポスト12の軸線回りに傾き難くなる。従って、高い回動規制機能を発揮することができる。
<実施形態2>
本発明の実施形態2を図17ないし図19によって説明する。この実施形態2では、圧入部42‐Aの形態を変更したものを示す。なお、この実施形態2では、上記した実施形態1と同様の構造には、同一の符号を用いるとともにその末尾に添え字‐Aを付すものとし、構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
圧入部42‐Aを構成する挿入突部50‐Aには、図17及び図18に示すように、肉抜き部55が設けられている。肉抜き部55は、挿入突部50‐Aの周面のうち上面、つまり第1リブ51‐Aの設置面に開口する形態とされるとともに、第1リブ51‐Aを挟んだ位置に一対配されている。従って、両肉抜き部55は、第1リブ51‐AとはY軸方向についてオフセットした位置に配されていると言える。両肉抜き部55は、その中心が両第2リブ52‐Aの中心に対してY軸方向について僅かに外寄りにずれた位置に配されている。肉抜き部55は、X軸方向の正面から視て縦長な四角形状をなしている。また、肉抜き部55は、挿入突部50‐Aの前端部を所定厚さ分残して形成され、上方にのみ開口する形態とされている。この肉抜き部55により、回動規制部材40‐Aを樹脂成形する際に挿入突部50‐Aにひけが生じ難くなっている。なお、この圧入部42‐Aには、第3リブ53‐Aが1つだけ設けられており、そのZ軸方向の位置が抜け止め突起54‐Aとほぼ同じとされている。
そして、肉抜き部55における幅寸法及び深さ寸法(高さ寸法)は、図17に示すように、挿入突部50‐AをX軸方向の正面から視て、第1リブ51‐Aの突出端と第2リブ52‐Aとの突出端とを結んだ2本の線L1とはずれる(交差しない、重畳しない)ような大きさに設定されている。さらには、肉抜き部55の深さ寸法は、挿入突部50‐AをX軸方向の正面から視て、Y軸方向に沿い且つ第3リブ53‐Aの突出端を通る線L2とはずれるような大きさに設定されている。
ここで、圧入部42‐Aをバッテリ端子20の分割開口部32a内に圧入したとき、図19に示すように、各リブ51‐A〜53‐Aが圧潰されるのであるが、その圧潰に伴って挿入突部50‐Aには圧縮力が作用する。この圧縮力は、Z軸方向については、第1リブ51‐Aの突出端と第2リブ52‐Aの突出端とを結んだ線L1上にて最も大きくなるのに対し、Y軸方向については、Y軸方向に沿い且つ第3リブ53‐Aの突出端を通る線L2上にて最も大きくなる。本実施形態に係る肉抜き部55は、圧入に伴う圧縮力が最も大きくなる線L1,L2を避けた範囲に形成されているので(図17参照)、圧縮力が作用したときに挿入突部50‐Aの肉が肉抜き部55内に逃げ難くなっている。これにより、圧入に伴って圧潰された各リブ51‐A〜53‐Aの圧縮状態を高く維持できるとともに高い摩擦抵抗力が得られ、もって高い保持力を得ることができる。
以上説明したように本実施形態によれば、挿入突部50‐Aには、肉抜き部55が設けられ、この肉抜き部55は、挿入突部50‐Aを取付方向の正面から視て、第1リブ51‐Aと第2リブ52‐Aとの突出端同士を結んだ線L1とはずれるよう形成されている。このようにすれば、挿入突部50‐Aが開口部32内に挿入されると、第1リブ51‐A及び第2リブ52‐Aが開口部32の口縁によって圧潰されることで、回動規制部材40‐Aの保持がなされる。この挿入突部50‐Aに肉抜き部55を設けるようにしたから、挿入突部50‐Aのひけ防止を図ることができ、挿入突部50‐Aの寸法精度を向上させることができるので、所望の保持力をより確実に得られる。ここで、第1リブ51‐A及び第2リブ52‐Aが圧潰されるのに伴って挿入突部50‐Aには圧縮力が作用するが、その圧縮力は挿入突部50‐Aを取付方向の正面から視て第1リブ51‐Aと第2リブ52‐Aとの突出端同士を結んだ線L1上にて最も大きくなる。ところが、肉抜き部55は、上記線L1とはずれるよう形成されているから、第1リブ51‐A及び第2リブ52‐Aの圧潰に伴って挿入突部50‐Aに圧縮力が作用しても、その肉が肉抜き部55に逃げ難くなっている。従って、高い保持力を得ることができる。
また、肉抜き部55は、挿入突部50‐Aを取付方向の正面から視て、第3の方向に沿い且つ第3リブ53‐Aの突出端を通る線L2とはずれるよう形成されている。このようにすれば、圧入部42‐Aが開口部32に圧入されるとき、第3の方向へ向けて突出する第3リブ53‐Aが圧潰されるので、バッテリ端子20と回動規制部材40‐Aとの間でよりがたつきが生じ難くなる。ここで、第3リブ53‐Aが圧潰されるとき挿入突部50‐Aに作用する圧縮力は、挿入突部50‐Aを取付方向の正面から視て、第3の方向に沿い且つ第3リブ53‐Aの突出端を通る線L2上にて最も大きくなる。ところが、肉抜き部55は、上記線L2とはずれるよう形成されているから、各リブ51‐A〜53‐Aの圧潰に伴って挿入突部50‐Aに圧縮力が作用しても、その肉が肉抜き部55に逃げ難くなっている。従って、より高い保持力を得ることができる。
<実施形態3>
本発明の実施形態3を図20ないし図27によって説明する。この実施形態3では、上記した実施形態1の抜け止め突起54による係止構造に代えて、弾性係止片56による係止構造を採用したものを示す。なお、この実施形態3では、上記した実施形態1と同様の構造には、同一の符号を用いるとともにその末尾に添え字‐Bを付すものとし、構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
圧入部42‐Bを構成する挿入突部50‐Bには、図20〜図22に示すように、バッテリ端子20‐Bに対して弾性的に係止可能な弾性係止片56が一体に設けられている。弾性係止片56は、図22に示すように、挿入突部50‐Bに肉抜き部57を形成することで、挿入突部50‐Bのうち肉抜き部57に対する外側部分によって構成されている。詳しくは、肉抜き部57は、挿入突部50‐BのうちY軸方向について外寄りに偏心した位置に配されるとともに、挿入突部50‐Bの突出先端部を残しつつX軸方向に沿ってバッテリ端子20‐B側とは反対側に開口する形態とされる。肉抜き部57は、X軸方向の正面から視て縦長な略四角形状をなしており、Y軸方向について外側の第2リブ52‐Bとほぼ同じ位置に配されている(図27)。また、肉抜き部57は、図21に示すように、端子受け部43‐Bをも貫通して形成されている。なお、本実施形態に係る圧入部42‐Bからは、上記した実施形態1の第3リブ53及び抜け止め突起54が省略されている。また、本体部41‐Bからは、上記実施形態1の受け突部49が省略されている。
そして、弾性係止片56は、図22に示すように、X軸方向の両端部と、Z軸方向の両端部(図27)とを支点として弾性変形可能とされ、弾性変形に伴って肉抜き部57内に退避されるようになっている。これら弾性係止片56と肉抜き部57とは、挿入突部50‐BにおいてY軸方向、つまりZ軸方向及びX軸方向と直交する方向に並んで配されている。弾性係止片56における外面には、バッテリ端子20‐Bに対して係止可能な係止突部58が設けられている。係止突部58は、図20に示すように、弾性係止片56のうちZ軸方向のほぼ中央位置で且つ前端位置(バッテリ端子20‐B側の先端部)に配されている。係止突部58は、弾性係止片56の外面からY軸方向に沿って外向きに突出する略ブロック状をなしており、その前端面には、開口部32‐Bへの円滑な進入を担保するためのテーパ面が面取り形成されている。一方、係止突部58のうち上記テーパ面とは反対側の端面は、バッテリ端子20‐Bに対する係止面58aとなっており、Y軸方向及びZ軸方向に沿ってほぼ真っ直ぐな面とされる。なお、端子受け部43には、図21及び図23に示すように、回動規制部材40‐Bを樹脂成形する際に各係止突部58を型抜きするための型抜き孔43bが貫通形成されている。
一方、バッテリ端子20‐Bにおけるボルト保持部22‐Bを構成する両側壁22b‐B,22d‐Bには、図20及び図22に示すように、弾性係止片56の係止突部58が係止可能な係止孔35がそれぞれ形成されている。係止孔35は、両側壁22b‐B,22d‐Bを板厚方向に貫通しつつY軸方向に沿って開口している。係止孔35は、Y軸方向の正面から視て縦長な略四角形状をなしている。そして、係止孔35内には、弾性係止片56の係止突部58が進入されるようになっており、係止孔35の周面のうち回動規制部材40側の面に対して係止突部58の係止面58aが係止されるようになっている。
上記した構成のバッテリ端子20‐Bに対して回動規制部材40‐Bを取り付ける際には、図22に示すように、両圧入部42‐Bを両分割開口部32a‐Bに対して位置合わせしつつ、回動規制部材40‐Bをバッテリ端子20‐Bに対してX軸方向に沿って相対的に接近させる。両圧入部42‐Bの挿入突部50‐Bが両分割開口部32a‐B内に挿入されると、第1リブ51‐B及び第2リブ52‐Bが分割開口部32a‐Bの開口縁における上縁及び下縁によって圧潰されるとともに、両係止突部58が分割開口部32a‐Bの開口縁における外側の側縁(両側壁22b‐B,22d‐B)によって押圧されることで、両弾性係止片56が弾性変形して肉抜き部57内に退避する。そして、図24及び図25に示すように、挿入突部50‐Bが分割開口部32a‐B内に正規深さまで挿入されると、図26に示すように、係止突部58がそれぞれ係止孔35内に進入するとともにその係止面58aが係止孔35の周面に対して係止される。この取付状態では、図27に示すように、第1リブ51‐B及び第2リブ52‐Bが圧潰されることで得られる摩擦抵抗力と、図26に示すように、係止突部58の係止面58aが係止孔35の周面に係止することで得られる係止力とによって、回動規制部材40‐Bは、バッテリ端子20‐Bに対して取り外し不能な状態で保持される。
以上説明したように本実施形態によれば、本体部41‐Bには、圧入部42‐Bと共に開口部32‐B内に進入されるとともに、ボルト保持部22‐Bを構成する側壁22b‐B,22d‐Bに形成された係止孔35に係止可能な弾性係止片56が設けられている。このようにすれば、圧入部42‐Bに加えて弾性係止片56によって回動規制部材40‐Bを高い保持力でもってバッテリ端子20‐Bに固定することができる。係止状態の弾性係止片56に対して作用し得る応力は、圧入部42‐Bと比べて小さくなっているから、弾性係止片56に熱変形が生じ難く、経時的に保持力の劣化を防止できる。
また、弾性係止片56は、圧入部42‐Bに肉抜き部57を形成することで圧入部42‐Bと一体に設けられるとともに、弾性変形時に肉抜き部57内に退避可能とされている。このようにすれば、弾性係止片56を圧入部42‐Bと一体にすることで、弾性係止片56の強度が高くなり、高い保持力が得られる。また、肉抜き部57により圧入部42‐Bのひけ防止を図ることができ、圧入部42‐Bの寸法精度を向上させることができるので、所望の保持力をより確実に得られる。
また、弾性係止片56及び肉抜き部57は、挿入突部50‐Bに設けられるとともに、第1の方向及び第2の方向(Z軸方向)と交差する方向(Y軸方向)に並んで配されている。このようにすれば、挿入突部50‐Bが開口部32‐B内に挿入されると、第1リブ51‐B及び第2リブ52‐Bが開口部32‐Bの口縁によって圧潰されるとともに、弾性係止片56が係止孔35に係止することで、回動規制部材40‐Bがバッテリ端子20‐Bに対して保持される。ここで、ボルト保持部22‐Bにおける開口部32‐Bの口縁には、圧潰された第1リブ51‐B及び第2リブ52‐Bから第1の方向及び第2の方向に沿う向きの応力が作用することになるのであるが、弾性係止片56及び肉抜き部57は、第1の方向及び第2の方向と交差する方向に並ぶよう配されているから、上記応力によって弾性係止片56に対する係止孔35の係止深さが減少させられることがない。従って、高い保持力を得ることができる。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記した各実施形態では、挿入突部からの第1リブの突出寸法または第2リブの突出寸法単独でも、挿入突部と分割開口部との寸法差より大きくなる場合を示したが、例えば、第1リブの突出寸法または第2リブの突出寸法が単独で、上記寸法差より小さくなるものの、第1リブの突出寸法と第2リブの突出寸法とを足し合わせた寸法が、上記寸法差よりも大きくなるようにしてもよい。このようにすれば、圧入部を分割開口部に対して圧入することができる。なお、第3リブの突出寸法と抜け止め突起の突出寸法との関係についても、上記と同様にすることが可能である。
(2)上記した各実施形態以外にも、挿入突部における各リブの設置数は適宜に変更可能である。具体的には、挿入突部に第1リブを2つ以上設置したものや、第2リブまたは第3リブを1つのみまたは3つ以上設置したものも本発明に含まれる。
(3)上記した各実施形態以外にも、挿入突部における各リブの設置位置は適宜に変更可能である。具体的には、第1リブと第2リブとがY軸方向について同じ位置に配されるようにしてもよい。また、第1リブを挿入突部において偏心配置してもよい。また、第2リブまたは第3リブを挿入突部の中央に配置してもよい。
(4)上記した各実施形態以外にも、各リブの形状については適宜に変更可能である。具体的には、各リブをX軸方向の正面から視て、三角形や四角形や台形や楕円形などとしてもよい。
(5)上記した各実施形態以外にも、挿入突部の形状については適宜に変更可能である。具体的には、挿入突部をX軸方向の正面から視て、三角形や台形や円形や楕円形などとしてもよい。
(6)上記した各実施形態以外にも、端子受け部における圧入部の設置数や配置については適宜に変更可能である。具体的には、圧入部を1つのみまたは3つ以上設置してもよい。また、複数の圧入部をZ軸方向にずらした配置としてもよい。
(7)上記した各実施形態では、挿入突部に第1リブ〜第3リブを設けたものを示したが、少なくとも1つのリブが存在していれば圧入は可能なので、第1リブ〜第3リブのうち1つまたは2つを省略してもよい。
(8)上記した実施形態1,2では、抜け止め突起を設けたものを示したが、抜け止め突起を省略したものも本発明に含まれる。
(9)上記した各実施形態では、バッテリ端子のボルト保持部における開口部が二分割されたものを示したが、分割されない形態のものも本発明に含まれる。例えば、ボルト保持部においてボルト回動規制片が両側壁のいずれか一方の側壁寄りに偏心配置されていて、開口部が分割されることなく他方の側壁寄りに偏心して配されるようなものにも本発明は適用可能である。それ以外にも、ボルト回動規制片を省略したバッテリ端子にも本発明は適用可能である。
(10)上記した実施形態2以外にも、挿入突部における肉抜き部の設置数や形状や配置については適宜に変更可能である。設置数に関しては、挿入突部に肉抜き部を1つのみまたは3つ以上設置してもよい。形状及び配置に関しては、肉抜き部をZ軸方向に沿って下向きに開口させたものや、X軸方向に沿って開口させたものや、Y軸方向に沿って開口させたものも本発明に含まれる。
(11)上記した実施形態2以外にも、肉抜き部を第1リブと第2リブとを結ぶ線と交差する範囲に形成してもよい。また、肉抜き部を第3リブを通るY軸方向に沿った線と交差する範囲に形成してもよい。
(12)上記した実施形態3以外にも、特許請求の範囲に記載した「係止部」として、側壁を凹ませた形態のものや、側壁を突出させた形態のものでもよい。