JP5210578B2 - アンダーカット部を有する樹脂成形体の製造方法 - Google Patents

アンダーカット部を有する樹脂成形体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば給水系や給湯系の配管システムにおいて用いられるヘッダーなどの樹脂成形体の内周面に環状溝などのアンダーカット部を有する樹脂成形体の製造方法に関するものである。
近年、給水、給湯用或いは排水用のパイプとして樹脂パイプが広く用いられるようになり、係る樹脂パイプがヘッダーなどの継手に接続されて給水系や給湯系或いは排水系の配管システムが構築されている。この種の分岐管継手として、流路とパイプ連結用アダプターとを備えたチーズを、その流路の両端が内スリーブ及び外スリーブとしてそれらを順次嵌め込んで連結した構造のものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。係る分岐管継手では、一方のスリーブの周面に割リングが嵌合される周溝を形成し、他方のスリーブの周面に前記割リングが嵌合される周溝を形成し、両周溝内に割リングを嵌合してチーズが連結される。このような継手においては、特に軽量化を図るために合成樹脂、中でも耐熱水特性に優れるポリフェニレンサルファイド(又はポリフェニレンスルフィド、以下PPSという)樹脂などが用いられるようになってきている。
特開2000−2387号公報(第2頁、第3頁及び図1)
ところで、PPS樹脂は耐熱水特性に優れている一方、弾力性に乏しいという性質を有している。そのため、内周面にアンダーカット部を有する継手を製造する場合には、成形用金型に工夫が必要であった。そのような成形用金型として例えば拡径式の特殊コア(コラプシブルコア)が知られている。係るコラプシブルコアは、分割された複数のコアより構成され、各コアが拡縮可能になっている。そして、継手を製造するときには、所定のコアが拡径された状態で成形が行われ、成形後にコアを縮径させ、金型を型開きすることによって行われる。
しかしながら、このコラプシブルコアは構造が複雑であり、各コアの作動に精度を要すると共に、複数のコアによって成形体の内周面に分割ライン(PL)が入り、バリも発生するという問題があった。さらに、コラプシブルコアを精度良く機能させるためには60℃程度の低温で成形を行う必要があることから、成形体の硬化(結晶化)が不十分となり、成形後にアニール処理と呼ばれる熱処理を行わなければならず、余分な工程が必要であると共に、成形体の製造に時間を要するという問題があった。
そこで本発明の目的とするところは、簡易な構造の金型を用いて樹脂成形体の成形を容易に行うことができると共に、後加熱を必要とせず、良好な成形体を得ることができるアンダーカット部を有する樹脂成形体の製造方法を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明のアンダーカット部を有する樹脂成形体の製造方法は、筒体の内周面に溝状をなすアンダーカット部を有する樹脂成形体の製造方法である。そして、前記筒体は円筒体であり、アンダーカット部は断面円弧状でかつ円環状に形成されると共に、アンダーカット部より先端側に開口側ほど拡径するテーパ状のガイド面が形成され、アンダーカット部に対応する成形用突起を有し、外周面にアンダーカット部のガイド面に対応するテーパ面を有する内側スライド成形型と、樹脂成形体の外周面を成形する外側成形型と、内側スライド成形型及び外側成形型の間に形成されるキャビティとを備えた金型を用い、前記キャビティに樹脂成形体を形成する材料としてゴム状弾性体を含むエンジニアリングプラスチックを溶融させて注入し、加熱硬化させて樹脂成形体を成形した後冷却し、次いで外側成形型を型開きし、内側スライド成形型をその軸線方向に強制的に引き抜くことを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記樹脂成形体の内径(D)とアンダーカット部を形成する溝の内径(L)とが下記の関係式を満たすように設定されることを特徴とする。
〔(L−D)/D〕×100=3〜12(%)
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2において、前記エンジニアリングプラスチックは、ポリフェニレンサルファイド樹脂であることを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項において、前記ゴム状弾性体は、樹脂成形体を形成する材料中に10〜40質量%含まれていることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項において、前記金型の加熱温度は120〜150℃であることを特徴とする。
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項において、前記アンダーカット部はその先端側の開口縁が円弧状に形成された円弧部を有し、内側スライド成形型の成形用突起はその基端部に前記アンダーカット部の円弧部に対応する形状の対峙円弧部を有していることを特徴とする。
請求項1に係る発明のアンダーカット部を有する樹脂成形体の製造方法では、筒体は円筒体であり、アンダーカット部は断面円弧状でかつ円環状に形成されると共に、アンダーカット部より先端側に開口側ほど拡径するテーパ状のガイド面が形成され、アンダーカット部に対応する成形用突起を有し、外周面にアンダーカット部のガイド面に対応するテーパ面を有する内側スライド成形型と、樹脂成形体の外周面を成形する外側成形型と、内側スライド成形型及び外側成形型の間に形成されるキャビティとを備えた金型を用いる。そして、前記キャビティに樹脂成形体を形成する材料としてゴム状弾性体を含むエンジニアリングプラスチックを溶融させて注入し、加熱硬化させて樹脂成形体を成形した後冷却し、次いで外側成形型を型開きし、内側スライド成形型をその軸線方向に強制的に引き抜くものである。このため、アンダーカット部を有する樹脂成形体の製造方法として、従来のコラプシブルコアのような複雑な金型を用いる必要がなく、簡単に成形を行うことができると共に、高温で成形を行うことができる。従って、簡易な構造の金型を用いて樹脂成形体の成形を容易に行うことができると共に、後加熱を必要とせず、良好な成形体を得ることができる。
請求項2に係る発明では、樹脂成形体の内径(D)とアンダーカット部を形成する溝の内径(L)とが前記の関係式で3〜12%を満たすように設定されることから、請求項1に係る発明の効果に加え、従来よりも溝の深いアンダーカット部を有する樹脂成形体について成形を行うことができる。
請求項3に係る発明では、前記エンジニアリングプラスチックがポリフェニレンサルファイド樹脂であることから、請求項1又は請求項2に係る発明の効果に加えて、樹脂成形体の耐熱水特性などの物性を向上させることができる。
請求項4に係る発明では、前記ゴム状弾性体が樹脂成形体を形成する材料中に10〜40質量%含まれていることから、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果に加えて、樹脂成形体の弾力性を高めることができ、その弾力性を利用して成形後に内側スライド成形型をその軸線方向に容易に引き抜くことができる。
請求項5に係る発明では、前記金型の加熱温度が120〜150℃であることから、請求項1から請求項4のいずれかに係る発明の効果に加えて、十分な硬化(結晶化)を果たすことができ、従来のような成形後のアニール処理を省略することができる。
請求項6に係る発明では、アンダーカット部はその先端側の開口縁が円弧状に形成された円弧部を有し、内側スライド成形型の成形用突起はその基端部に前記アンダーカット部の円弧部に対応する形状の対峙円弧部を有している。このため、請求項1から請求項5のいずれかに係る発明の効果に加えて、対峙円弧部により成形後に内側スライド成形型の引き抜きに対する抵抗が減少し、内側スライド成形型をその軸線方向に一層容易に引き抜くことができる。
以下、本発明の最良と思われる実施形態につき、図面を用いて詳細に説明する。
まず、アンダーカット部を有する樹脂成形体としてのヘッダーについて説明する。図2に示すように、本実施形態のヘッダー10は、逆T字状をなす第1ヘッダーピース11(図中左端部)に同じく逆T字状をなす第2ヘッダーピース12(図中中間部)が嵌合連結され、該第2ヘッダーピース12には逆L字状をなす第3ヘッダーピース13(図中右端部)が嵌合連結されて構成されている(3連)。このため、第1ヘッダーピース11と第2ヘッダーピース12との間及び第2ヘッダーピース12と第3ヘッダーピース13との間は、いずれも相対回動自在になっており、各ヘッダーピースを所定方向へ向けることができる。
これらのヘッダーピースは、アンダーカット部を有する樹脂成形体を製造する都合上、ゴム状弾性体を含むエンジニアリングプラスチックによって形成されている。エンジニアリングプラスチックとしては、PPS樹脂のほかポリアミド(ナイロン)樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリイミド樹脂等が用いられる。こられのうち、PPS樹脂は耐熱水特性などの物性に優れている点から最も好ましい。
ゴム状弾性体としては、ゴム、熱可塑性エラストマーなどが用いられる。ゴムとしては、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、エチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)等が挙げられる。熱可塑性エラストマーとしては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらのゴム又は熱可塑性エラストマーは、使用目的などに応じて好適なものが適宜採用される。
ヘッダーピースを形成する材料中におけるゴム状弾性体の含有量は、10〜40質量%であることが好ましい。ゴム状弾性体の含有量が10質量%に満たない場合には、成形されるヘッダーピースの弾力性が不足し、アンダーカット部の成形を容易に行うことができず、アンダーカット部が損傷を受けたりして好ましくない。その一方、40質量%よりも多い場合には、アンダーカット部の成形は容易になるものの、得られるヘッダーピースの機械的物性などが低下する傾向を示して好ましくない。
第1ヘッダーピース11は、その内部に図中横方向に直線状に延びる主流路14と、該主流路14に直交して延びる分岐流路15とを有している。主流路14の一端部(図中左端部)と分岐流路15の先端部には樹脂パイプ16が接続されるように構成されると共に、主流路14の他端側(図中右端側)は凸状連結部17となっている。
第2ヘッダーピース12は、主流路14の一端側(図中左端側)がアンダーカット部を有する樹脂成形体としての凹状連結部18となり、他端側が凸状連結部17となると共に、分岐流路15の先端部には樹脂パイプ16が接続可能に構成されている。前記第1ヘッダーピース11の凸状連結部17には、第2ヘッダーピース12の凹状連結部18が嵌合連結されるように構成されている。第3ヘッダーピース13は、主流路14の先端側が凹状連結部18となり、分岐流路15の先端部には樹脂パイプ16が接続可能に構成されている。前記第2ヘッダーピース12の凸状連結部17には、第3ヘッダーピース13の凹状連結部18が嵌合連結されるようになっている。
続いて、前記第3ヘッダーピース13の嵌合連結部19を構成する凹状連結部18について説明する。凹状連結部18は円筒状に形成され、その外周面には円環状をなす係止突部20が設けられている。凹状連結部18の外周面には、薄い円筒状の補強リング21が外嵌され、その端部が係止突部20に当接されるようになっている。補強リング21の一端には、内方へ屈曲形成された係合突条22が設けられている。補強リング21は、ステンレス鋼等の剛性の高い金属材料で形成されている。凹状連結部18の内周面には、断面半円状に形成され周方向に延びる環状溝23が形成されると共に、開口部内周面には開口側ほど拡径するテーパ状のガイド面24が形成されている。
次いで、第2ヘッダーピース12の嵌合連結部19を構成する凸状連結部17について説明する。凸状連結部17はその外径が前記凹状連結部18の内径よりわずかに小さくなるように円筒状に形成され、凹状連結部18に嵌合連結されるように構成されている。凸状連結部17の基端部には、前記凹状連結部18のガイド面24に対応するように基端側ほど拡径したテーパ状の傾斜面25を介して先端部より拡径された段部26が設けられている。その段部26の外周には環状係合溝27が凹設され、該環状係合溝27には前記補強リング21の係合突条22が係合されるようになっている。そして、凸状連結部17と凹状連結部18の嵌合連結部19の外周に円筒状に形成された補強リング21が嵌め込まれることにより、凸状連結部17と凹状連結部18との径方向(図2の上下方向)への撓み(拡縮又は変形)が規制される。
凸状連結部17の傾斜面25より先端側には、周方向に延びCリング28を収容する収容溝29が設けられ、凸状連結部17と凹状連結部18との嵌合連結時にCリング28を縮径させて収容溝29内に完全に収容される大きさに設定されている。このCリング28は、リン青銅、ステンレス鋼等のばね性を有する金属により、拡縮自在に構成されている。係る収容溝29の先端側開口部には、円弧状に切欠かれ、Cリング28の一部を収容溝29から凹状連結部18の環状溝23へ誘導するための切欠き溝30が設けられている。これらCリング28、収容溝29及び環状溝23により、凸状連結部17及び凹状連結部18の軸線方向(図2の左右方向)への相対移動を規制する規制手段が構成されている。そして、凸状連結部17と凹状連結部18との嵌合状態でCリング28が収容溝29と環状溝23の双方に収容されることにより、凸状連結部17及び凹状連結部18の軸線方向への移動が規制される。凸状連結部17の収容溝29よりも先端側には一対の収納孔31が設けられ、各収納孔31にはゴム製のシールリング32が嵌着されて、凸状連結部17と凹状連結部18との間が水密に形成されるようになっている。
次に、各ヘッダーピースにおける樹脂パイプ16が接続される部分の構造は同様に構成されているため、第3ヘッダーピース13の構造について説明する。第3ヘッダーピース13の本体筒部41は略円筒状をなし、その外周側に突出形成された外側筒部43と、内周側に突出形成され樹脂パイプ16が外嵌される円筒状の内側筒部44とにより構成されている。内側筒部44の内周には、水が流通する分岐流路15が形成されている。
前記外側筒部43の外周面には複数の突条45が設けられると共に、本体筒部41の内周側には樹脂パイプ16が挿入される挿入空間46が形成されている。キャップ47はその内周面に複数のアンダーカット部としての凹条48を有し、キャップ47を外側筒部43に対して嵌め込むことによりその凹条48が外側筒部43の突条45に係合され、キャップ47が本体筒部41に連結されるように構成されている。キャップ47の外周面には環状係合溝27が設けられ、前記と同様の補強リング21の係合突条22が係合されている。このため、外側筒部43とキャップ47とについてそれらの径方向への動きが規制され、外側筒部43に対してキャップ47が外れることを防止することができる。キャップ47の外端部には、樹脂パイプ16が挿入されるパイプ挿入用開口49が設けられている。
外側筒部43の内側には、その内周面の係止段部に係合される係合段部を有する中間筒体50が配設されている。外側筒部43の外端面とキャップ47の内周面との間には、ステンレス鋼等の金属で形成された抜け止めリング51が規制体52によって位置規制された状態で介装されている。抜け止めリング51の内周部には抜け止め片51aが斜め方向に突出形成され、樹脂パイプ16の外周部に食い込んで樹脂パイプ16の抜け止めを行うようになっている。この抜け止めリング51とキャップ47の内周の第1斜面との間には、割りリング54が介在され、抜け止め片51aの傾斜角度を保持するように構成されている。
該割りリング54の外端部には、キャップ47の第1斜面と同じ傾斜角度をもつ第2斜面が設けられ、樹脂パイプ16の引き抜き方向への力により抜け止め片51aを介して割りリング54が軸線方向外方へ力を受けたとき、割りリング54を縮径させるように構成されている。そして、割りリング54の内周面に設けられた締付面が樹脂パイプ16を締付けるようになっている。前記本体筒部41と中間筒体50との間には、ゴム製のOリング57が配置され、挿入される樹脂パイプ16の外周面に密接して止水するようになっている。前記割りリング54の内側には、樹脂パイプ16の先端部に押圧されて樹脂パイプ16の挿入を案内する挿入ガイド58が配置されている。該挿入ガイド58はCリング状で拡縮可能に構成され、その外径は樹脂パイプ16の外径と同一又は若干大きく形成され、内径は内側筒部44の外径より若干大きく形成されている。
前記本体筒部41、キャップ47、中間筒体50、割りリング54、挿入ガイド58等は、PPS樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂等の合成樹脂(エンジニアリングプラスチック)によって形成されている。また、樹脂パイプ16は、ポリオレフィン(架橋ポリエチレン、ポリブテン等)等の合成樹脂により形成されている。
そして、樹脂パイプ16をキャップ47のパイプ挿入用開口49から挿入すると、樹脂パイプ16の先端面が挿入ガイド58の当接面に当接する。その状態から、樹脂パイプ16をさらに挿入すると樹脂パイプ16は挿入ガイド58に案内され、挿入ガイド58及び樹脂パイプ16は抜け止めリング51の抜け止め片51aを通過し、挿入ガイド58の先端部がOリング57に到達する。続いて、樹脂パイプ16をさらに挿入すると、挿入ガイド58及び樹脂パイプ16はOリング57を通過して挿入空間46に入り、挿入ガイド58の先端部が挿入空間46を形成する内奥壁に当接して樹脂パイプ16の挿入が完了する。
以上のように構成されたヘッダーについて作用を説明すると、図3(a)に示すように、第2ヘッダーピース12の凸状連結部17を第3ヘッダーピース13の凹状連結部18に嵌合連結させる場合には、凸状連結部17の収容溝29の位置にCリング28を装着する。一方、凹状連結部18の外周に補強リング21を外嵌し、その端部を係止突部20に当接させる。その状態で、図3(b)に示すように、第2ヘッダーピース12の凸状連結部17を第3ヘッダーピース13の凹状連結部18に嵌入させると、Cリング28は凹状連結部18のガイド面24に押圧されて縮径され、収容溝29内へと収容される。
続いて、図3(c)に示すように、凸状連結部17を凹状連結部18にさらに嵌入させると、Cリング28は一層縮径されてほとんど収容溝29内に収容される。最後に、図3(d)に示すように、凸状連結部17を凹状連結部18にさらに嵌入させて凹状連結部18の先端面を凸状連結部17の段部26の外側面に当接させると、凸状連結部17の外周部では、補強リング21の係合突条22が凸状連結部17の段部26外周面の環状係合溝27に係合して位置決めされる。そのため、剛性の高い円筒状の補強リング21は嵌合連結部19を覆うように配置され、凸状連結部17及び凹状連結部18の径方向への撓みが抑えられる。さらに、補強リング21が凸状連結部17の段部26の外周面及び凹状連結部18の係止突部20までの外周面に跨って設けられているため、凸状連結部17及び凹状連結部18について軸線方向を外れる動きが抑えられる。
一方、凹状連結部18の内周部ではCリング28が拡径され、その一部が切欠き溝30から環状溝23内へ案内され収容される。このように、Cリング28のほぼ半分が環状溝23に入り、残りの半分が収容溝29及び切欠き溝30に入ることにより、凸状連結部17及び凹状連結部18は補強リング21で径方向への動きが抑えられ、かつCリング28で軸線方向への動きが抑えられる。以上の操作手順により、凸状連結部17と凹状連結部18とが嵌合され、連結される。
次に、アンダーカット部として環状溝23を有する樹脂成形体であるヘッダー10の製造方法、特に凹状連結部18の部分の製造方法について説明する。図1(a)に示すように、凹状連結部18を製造する金型60は、環状溝23に対応する形状の成形用突起61を有する内側スライド成形型62と、樹脂成形体の外周面を成形する外側成形型63と、内側スライド成形型62及び外側成形型63の間に形成されるキャビティ64とを備えている。成形用突起61は、断面半円状の環状溝23に対応するように断面半円状をなし、内側スライド成形型62の外周面に突出形成されている。さらに、内側スライド成形型62の成形用突起61より基端側には、凹状連結部18のガイド面24に対応するように基端側ほど拡径するテーパ面65が設けられている。このテーパ面65より基端側には、内側スライド成形型62の軸線と直交する面内で円環状に形成されている端面66が設けられている。
ここで、図3(a)に示すように、前記樹脂成形体を構成する凹状連結部18の内径(D)とアンダーカット部を形成する環状溝23の内径(L)とが下記の関係式を満たすように設定される。
〔(L−D)/D〕×100=3〜12(%)
この比が3%より小さい場合には本実施形態の製造方法を採用する意義が少なく、12%より大きい場合には成形後に内側スライド成形型62をその軸線方向に引き抜くことが難しくなり、又は環状溝23の部分に傷が付きやすくなるため好ましくない。
この金型60を用いて凹状連結部18を製造する場合には、まず図1(a)に示すように、金型60の内側スライド成形型62の外周に外側成形型63を配置した状態で型締めし、両成形型62、63間にキャビティ64を形成する。続いて、図1(b)に示すように、金型60のキャビティ64に樹脂成形体を形成する材料としてゴム状弾性体を含むエンジニアリングプラスチックとしてのゴムが例えば30質量%含まれているPPS樹脂を溶融させて注入し、加熱硬化させて樹脂成形体を成形する。この場合、金型の加熱温度(金型温度)は、120〜150℃であることが好ましい。この金型温度が120℃未満の場合には、ゴム入りのPPS樹脂が十分に硬化されない傾向を示し、アニール処理を必要とするなど好ましくない。一方、150℃を超える場合には、金型温度が高くなり過ぎて成形に支障を来たしたり、得られる成形体の物性が低下しやすくなって好ましくない。
成形後冷却し、図1(c)に示すように、外側成形型63を型開きする。そして、図1(d)に示すように、内側スライド成形型62をその軸線方向(図中左方向)にスライドさせて強制的に引き抜く。このとき、内側スライド成形型62の成形用突起61は、凹状連結部18の先端側を拡径させるようにして環状溝23から抜け出す。このような動きが可能になるのは、樹脂成形体としての凹状連結部18はPPS樹脂にゴム成分が含まれ、弾力性を発現できるからである。そのため、凹状連結部18の環状溝23には欠損などが生ずることなく、良好な状態で成形される。図1(e)に示すように、内側スライド成形型62をさらに引き抜いてゆくと、成形用突起61は凹状連結部18のガイド面24に摺接しながら凹状連結部18の先端側へ移動する。このとき、ガイド面24は凹状連結部18の先端側ほど拡径されているため、成形用突起61が凹状連結部18の内周面を押圧しないようになって凹状連結部18は次第に縮径されて元の状態に戻る。図1(f)に示すように、内側スライド成形型62をさらに引き抜くことにより、樹脂成形体としての凹状連結部18が成形される。
以上の実施形態によって発揮される効果について、以下にまとめて記載する。
・ 本実施形態のアンダーカット部としての環状溝23を有する凹状連結部18の製造方法では、環状溝23に対応する成形用突起61を有する内側スライド成形型62を用いて実施される。そして、樹脂成形体の成形後に外側成形型63を型開きし、内側スライド成形型62をその軸線方向に強制的に引き抜くことにより行われる。このため、従来のコラプシブルコアのような複雑な金型を用いる必要がなく、簡単に成形を行うことができと共に、高温で成形を行うことができる。従って、簡易な構造の金型60を用いて樹脂成形体の成形を容易に行うことができると共に、後加熱を必要とせず、分割ライン(PL)のない高品質の樹脂成形体を得ることができる。よって、低コストの金型60で、かつ製造工程を短縮化でき、樹脂成形体の生産性を向上させることができる。
また、前記筒体は円筒体であり、アンダーカット部は円環状に形成されていることから、樹脂成形体のアンダーカット部を利用して相手部材と嵌合させたとき、樹脂成形体と相手部材とを相対回動させることができる。
さらに、前記アンダーカット部は断面円弧状に形成されていることから、成形後に内側スライド成形型をその軸線方向に円滑に引き抜くことができると共に、樹脂成形体に損傷を与えることを抑制することができる。
加えて、前記樹脂成形体の内周面にはアンダーカット部より先端側にテーパ状のガイド面が形成されると共に、内側スライド成形型の外周面には前記ガイド面に対応するテーパ面が形成されている。このため、成形後に樹脂成形体に対する成形用突起の係合が次第に緩和されるため、内側スライド成形型をその軸線方向に一層容易に引き抜くことができる。
・ 樹脂成形体の材料を構成するエンジニアリングプラスチックがポリフェニレンサルファイド樹脂であることにより、その性質に基づいて樹脂成形体の耐熱水特性などの物性を向上させることができる。
・ 樹脂成形体の材料を構成するゴム状弾性体が前記材料中に10〜40質量%含まれていることにより、樹脂成形体の弾力性を向上させることができ、その弾力性を利用して成形後に内側スライド成形型62をその軸線方向に容易に引き抜くことができる。
・ 金型温度が120〜150℃という高温であることにより、十分な硬化(結晶化)を図ることができ、従来のような成形後のアニール処理を省略することができる。
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 図4(a)に示すように、アンダーカット部としての環状溝23は、その先端側(図中左側)の開口縁が円弧状に形成された円弧部67を有するように構成されていてもよい。一方、内側スライド成形型62の成形用突起61は、その基端部に前記円弧部67に対応する形状の対峙円弧部68を有する。このように構成した場合、対峙円弧部68により成形後に内側スライド成形型62の引き抜きに対する抵抗を減少させることができ、内側スライド成形型62をその軸線方向に一層容易に引き抜くことができる。
・ 図4(b)に示すように、アンダーカット部としての環状溝23は、その先端側(図中左側)の開口縁が傾斜状に形成された斜面69を有するように構成されていてもよい。一方、内側スライド成形型62の成形用突起61は、その基端部に前記斜面69に対応する形状の対峙斜面70を有する。このように構成した場合、成形後に内側スライド成形型62をその軸線方向に容易に引き抜くことができる。
・ 前述したアンダーカット部としての凹条48を内周面に有するキャップ47を前記実施形態と同様にして製造することができる。すなわち、図5に示すように、内側スライド成形型62の外周面には、アンダーカット部の凹条48に対応する形状をなす2条の成形用突起61が設けられている。さらに、凹条48先端側の開口縁には円弧部67が形成され、各成形用突起61の基端側開口縁には対峙円弧部68が設けられる。この対峙円弧部68により、成形後に内側スライド成形型62の引き抜きを容易に行うことができる。
・ 実施形態では、ヘッダー10として3つのヘッダーピースを連結した3連のもので構成したが、2つのヘッダーピースを連結した2連のもの、或いは4つ以上のヘッダーピースを連結したもので構成することもできる。
・ 樹脂パイプ16に代えて、銅、銅合金等の柔らかい金属製のパイプを用いることも可能である。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
(a)〜(f)は実施形態におけるアンダーカット部を有する樹脂成形体としてのヘッダーの凹状連結部の製造工程を順に示す要部断面図。 実施形態のヘッダーを示す断面図。 (a)〜(d)はヘッダーピースの凸状連結部を凹状連結部に嵌入する場合の作用を説明するための断面図。 (a)及び(b)は本発明の別例を示し、凹状連結部の環状溝と金型の成形用突起との関係を示す部分拡大断面図。 本発明の別例を示し、凹状連結部の環状溝と金型の成形用突起との関係を示す部分拡大断面図。
符号の説明
10…樹脂成形体としてのヘッダー、11…第1ヘッダーピース、12…第2ヘッダーピース、13…第3ヘッダーピース、18…樹脂成形体を構成する凹状連結部、23…アンダーカット部としての環状溝、60…金型、61…成形用突起、62…内側スライド成形型、63…外側成形型、64…キャビティ、67…円弧部、68…対峙円弧部、D…凹状連結部の内径、L…環状溝の内径。

Claims (6)

  1. 筒体の内周面に溝状をなすアンダーカット部を有する樹脂成形体の製造方法であって、
    前記筒体は円筒体であり、アンダーカット部は断面円弧状でかつ円環状に形成される共に、アンダーカット部より先端側に開口側ほど拡径するテーパ状のガイド面が形成され、アンダーカット部に対応する成形用突起を有し、外周面にアンダーカット部のガイド面に対応するテーパ面を有する内側スライド成形型と、樹脂成形体の外周面を成形する外側成形型と、内側スライド成形型及び外側成形型の間に形成されるキャビティとを備えた金型を用い、前記キャビティに樹脂成形体を形成する材料としてゴム状弾性体を含むエンジニアリングプラスチックを溶融させて注入し、加熱硬化させて樹脂成形体を成形した後冷却し、次いで外側成形型を型開きし、内側スライド成形型をその軸線方向に強制的に引き抜くことを特徴とするアンダーカット部を有する樹脂成形体の製造方法。
  2. 前記樹脂成形体の内径(D)とアンダーカット部を形成する溝の内径(L)とが下記の関係式を満たすように設定されることを特徴とする請求項1に記載のアンダーカット部を有する樹脂成形体の製造方法。
    〔(L−D)/D〕×100=3〜12(%)
  3. 前記エンジニアリングプラスチックは、ポリフェニレンサルファイド樹脂であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアンダーカット部を有する樹脂成形体の製造方法。
  4. 前記ゴム状弾性体は、樹脂成形体を形成する材料中に10〜40質量%含まれていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアンダーカット部を有する樹脂成形体の製造方法。
  5. 前記金型の加熱温度は120〜150℃であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のアンダーカット部を有する樹脂成形体の製造方法。
  6. 前記アンダーカット部はその先端側の開口縁が円弧状に形成された円弧部を有し、内側スライド成形型の成形用突起はその基端部に前記アンダーカット部の円弧部に対応する形状の対峙円弧部を有していることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のアンダーカット部を有する樹脂成形体の製造方法。
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