JP3894011B2 - 樹脂製中空体の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は樹脂製中空体の製造方法に係り、特にロストコア法を利用した樹脂製中空体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂製中空体を製造する場合、金型内に中子を配置し、樹脂材料を射出した後、脱型し、次いで成形体から中子を除去する方法は周知である。この中子の中空部の形状が複雑であり、中子を抜き出すことができない場合、中子を可溶性材料にて構成し、中子を溶解除去するロストコア法が採用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来のロストコア法は、中子全体を可溶性材料で構成しているため、可溶性材料の溶解除去に時間がかかり、生産効率が悪い。また、可溶性材料にて形成された中空体内面は面精度が悪いので、成形後に後加工が必要となることがある。
【0004】
本発明は中子の溶解除去が短時間で済み、樹脂製中空体を効率良く製造することが可能であり、また中空体内面のうち所要部分を面精度の高いものとすることができる樹脂製中空体の製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
求項の樹脂製中空体の製造方法は、成形型内に中子を配置し、樹脂材料を射出した後、中子を除去する樹脂製中空体の製造方法において、該中子を金属製スライドコアと、該スライドコアに保持された可溶性材料よりなる可溶性コアとで構成し、射出後、成形体を成形型から脱型し、該スライドコアを該成形体から抜き出した後、該可溶性コアを該成形体から溶解除去するものであり、該中空体の内面のうち第1の面については該スライドコアで成形し、該第1の面よりも面精度が低い面であって且つスライドコアのスライド方向と交叉方向に凹陥する第2の面については該可溶性コアで成形することを特徴とするものである。
請求項の樹脂製中空体の製造方法は、請求項において、該中空体は水栓の外殻体であり、第2の面は水又は湯が通過する面であることを特徴とするものである。
請求項の樹脂製中空体の製造方法は、成形型内に中子を配置し、樹脂材料を射出した後、中子を除去する樹脂製中空体の製造方法において、該中子を金属製スライドコアと、該スライドコアに保持された可溶性材料よりなる可溶性コアとで構成し、射出後、成形体を成形型から脱型し、該スライドコアを該成形体から抜き出した後、該可溶性コアを該成形体から溶解除去するものであり、前記可溶性コアを前記スライドコアに固定用部材によって固定しておき、脱型後、成形体から該スライドコアを抜き出し、次いで可溶性コアを溶解除去した後、この固定用部材を成形体から取り出すことを特徴とするものである。
請求項の樹脂製中空体の製造方法は、成形型内に中子を配置し、樹脂材料を射出した後、中子を除去する樹脂製中空体の製造方法において、該中子を金属製スライドコアと、該スライドコアに保持された可溶性材料よりなる可溶性コアとで構成し、射出後、成形体を成形型から脱型し、該スライドコアを該成形体から抜き出した後、該可溶性コアを該成形体から溶解除去するものであり、該中空体は水栓の外殻体であり、前記スライドコアにより成形される面はシール部材が接する面であることを特徴とするものである。
請求項の樹脂製中空体の製造方法は、成形型内に中子を配置し、樹脂材料を射出した後、中子を除去する樹脂製中空体の製造方法において、該中子を金属製スライドコアと、該スライドコアに保持された可溶性材料よりなる可溶性コアとで構成し、射出後、成形体を成形型から脱型し、該スライドコアを該成形体から抜き出した後、該可溶性コアを該成形体から溶解除去するものであり、前記成形体を成形型から脱型した後、この成形型よりも大きな成形型内に配置し、成形体の外周に被覆層形成用の樹脂材料を射出することを特徴とするものである。
【0006】
かかる本発明方法によると、中子を金属製スライドコアと可溶性材料とで構成しており、脱型後にこのスライドコアを抜き出し、その後可溶性材料を溶解除去するため、溶解させるべき可溶性材料量が少なく、可溶性材料の溶解時間が短い。
【0007】
特に、本発明では、スライドコアを抜いてから可溶性材料を溶解除去するので、溶解物がスライドコアの抜けた跡(空所)を通って成形体外に流出する。このため、可溶性材料の溶解も速やかに行われ、溶解時間が著しく短くなる。
【0008】
また、本発明では、金属製スライドコアによって成形された中空体内面は面精度がきわめて高いものとなり、この部分については後加工により面精度を高めることが不要である。
【0010】
本発明では、可溶性コアを前記スライドコアに固定用部材によって固定しておき、脱型後、成形体から該スライドコアを抜き出し、次いで可溶性コアを溶解除去した後、この固定用部材を成形体から取り出すようにしてもよい。このようにすれば、樹脂材料の射出時に樹脂材料に押された可溶性コアが動くことがなく、製品歩留りが向上する。
【0011】
本発明は、水栓の外殻体などのようにシール部材が接触する面を有した部品の成形に好適である。
【0012】
本発明では、成形体を成形型から脱型した後、この成形型よりも大きな成形型内に配置し、成形体の外周に被覆層形成用の樹脂材料を射出してもよい。このようにすれば、例えば本体部分は高強度のエンジニアリングプラスチックで構成し、それを美麗な被覆用樹脂材料で被覆した中空体を製造できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。図1(a)は実施の形態に係る樹脂製中空体の製造方法により製造された樹脂製中空体としての水栓金具の外殻体の断面図、図1(b)はこの水栓金具の外殻体の製造方法を示す断面図、図1(c)は図1(b)のC部分の拡大図、図2(a),(b),(c)はこの水栓金具の外殻体の製造工程を説明する断面図である。
【0014】
この水栓金具は、サーモスタット湯水混合水栓である。この外殻体1は略々円筒形状であり、その内部にサーモスタット式混合弁ユニット(図示略)が収容される。このユニットの外周面には複数本のOリングが装着されている。この外殻体1の内周面には、水の流入部2と湯の流入部3とが周方向溝として形成されており、外殻体1を肉厚方向に貫くように水の流入口と湯の流入口(いずれも図示略)が設けられている。これらの流入部2,3の両側及びそれらの間の外殻体内周面は平滑な円筒面4,5,6となっている。この円筒面4,5,6に対し、混合弁ユニットのOリングが水密的に当接する。
【0015】
この外殻体1を製造するための成形型としての金型10は、上金型11と下金型12とからなり、その内部に金属製スライドコア13と、該スライドコア13に外嵌した可溶性材料(この実施の形態ではポリビニルアルコール等の水溶性合成樹脂)製の環状の可溶性コア14とが配置されている。このスライドコア13と2個の可溶性コア14とにより中子が構成されている。
【0016】
なお、図1(c)に拡大して示すように、可溶性コア14の内周側には微小フランジ状フィン14aが突設されており、このフィン14aがスライドコア13の外周面に密着している。このフィン14aは、可溶性コア14の内周面とスライドコア13の外周面との間に射出樹脂材料が入り込むのを防止する。また、混合弁ユニットを挿入する時に、装着してあるOリングが切れたり、はずれたりするのを防止する。(ピン角であると切れ易いので面取りをする)。
【0017】
外殻体1を成形するには、中子と金型10の内面との間のキャビティ15に対し、金型のゲート(図示略)から外殻体構成用の樹脂材料(例えば、耐熱性が高く高強度のポリフェニレンサルファイド等のエンジニアリングプラスチック)を図2(a)の如く射出する。
【0018】
次に、図2(b)の如く金型10を脱型し、次いでスライドコア13を図2(c)の如く引き抜く。これにより、外殻体1内には可溶性材料(水溶性合成樹脂材料)よりなる可溶性コア14のみが残置されるので、この可溶性コア14付きの外殻体1を温水等の溶媒に浸漬し、可溶性コア14を溶解除去する。これにより、図1(a)に示す外殻体1が得られる。
【0019】
この可溶性コア14,14が溶出することにより流入部2,3が形成される。この可溶性コア14を溶解させる場合、スライドコア13は既に抜き出されているので、温水はスライドコア13が抜け出た後の大きな空洞部を介して外殻体1内に流入し、可溶性コア14と接触するので、可溶性コア14は速やかに溶解除去される。
【0020】
前記円筒面4,5,6は金属製スライドコア13の外周面によって形成されるため、極めて平滑であり、寸法精度も著しく良好である。流入部2,3は、これら円筒面4,5,6に比べると面粗さ及び寸法精度が劣るが、この部分は単に水又は湯が通過するだけであり、水栓の特性に影響を与えない。
【0021】
次に、図3〜5を参照して別の実施の形態について説明する。この実施の形態は、金属製スライドコア16に対し2個の可溶性コア17,17が射出樹脂の押圧力によっては全く動かないよう改良されたものである。
このスライドコア16は、基端体16Aと先端体16Bとを螺じ込みにより連結して一体化したものである。なお、基端体16Aの先端側の外周面に雄ネジが設けられ、先端体16Bの基端側に雌ネジが設けられ、両ネジが螺合している。
【0022】
可溶性コア17,17は環状であり、該基端体16Aに外嵌している。基端体16Aには段部16aが設けられており、一方の可溶性コア17は該段部16aに当接している。これらの可溶性コア17,17同士の間には環状のスペーサ18が介在されている。当然ながら、このスペーサ18の外径は可溶性コア17,17の外径よりも小である。
【0023】
他方の可溶性コア17は、このスペーサ18と先端体16Bの後端面との間に挟持されている。可溶性コア17の材料は上記コア14と同様である。図3〜5のその他の構成は図1〜2と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
【0024】
この図3の金型を用いて外殻体1を製造するには、まず、図4(a)の通り、キャビティ15に外殻体1の成形用の樹脂材料を射出する。次に、図4(b)の通り、金型10を脱型し、次いで図4(c)の通り基端体16Aを回して先端体16Bとの螺合を解除して抜き出す。先端体16Bは先細径であり、図4(b)の左方には抜き出すことができず、外殻体1内に残置される。
【0025】
基端体16Aを抜き出すことにより、可溶性コア17,17が露出するので、先端体16B、可溶性コア17,17及びスペーサ18付きの外殻体1を温水に浸漬し、可溶性コア17,17を溶解除去する。この場合も、温水が基端体16Aの抜け出た後の空所を流通するので、可溶性コア17,17は速やかに溶解除去され、図5の状態となる。この外殻体1内からスペーサ18及び先端体16Bを図5の右方に引き出すことにより、図1(a)に示す外殻体1が得られる。この外殻体1も寸法精度がきわめて良好な平滑面4,5,6を有する。
【0026】
本発明では、エンジニアリングプラスチックよりなる外殻体1の外表面に、美麗な熱可塑性樹脂を射出成形してもよい。例えば、前記図2(b)の如く金型10から脱型され、且つまだスライドコア13が分離される前の外殻体1を、スライドコア13及び可溶性コア14と共に金型10よりも一回り大きな金型(図示略)内に配置し、外殻体1とこの金型内面との間に熱可塑性樹脂を射出し、図6(a)のように熱可塑性樹脂の被覆層20を形成する。その後、スライドコア13を抜き出し、可溶性コア14,14を溶解除去することにより、図6(b)に示す美麗な被覆層20付きの外殻体1が得られる。
【0027】
図示はしないが、図4(b)のように金型から脱型されたスライドコア16、可溶性コア17,17及びスペーサ18付きの外殻体1に対しても同様に被覆層を形成し、その後、前記の如く脱型、基端体16Aの抜き出し、可溶性コア17,17の溶解除去及び先端体16Bとスペーサ18の取り出しを行うことにより、図6(b)の被覆層付き外殻体1を成形することができる。
【0028】
なお、この被覆層を構成する合成樹脂としてはABS樹脂、ポリプロピレン樹脂などが例示される。これらの樹脂は着色性にも優れるため、成形品外面に美麗な着色を施すことができる。また、特にABS樹脂は表面にメッキし易く、メッキ調の外観を容易に形成することができる。
【0029】
この被覆層を構成する樹脂中に抗菌剤を含有させることにより成形品に抗菌性を付与することができる。抗菌剤としては銀系のものなど各種のものを用いることができ、その添加量は0.1〜1%程度が好適であるが、これに限定されない。
【0030】
本発明は水栓金具の外殻体以外の各種の樹脂製中空体の製造方法にも適用できる。
【0031】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によると、内面が部分的に平滑面となっている樹脂製中空体を、後加工なしに効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)図は実施の形態に係る樹脂製中空体の製造方法により製造された樹脂製中空体としての水栓金具の外殻体の断面図であり、(b)図はこの水栓金具の外殻体の製造方法を示す断面図であり、(c)図は(b)図のC部分の拡大図である。
【図2】実施の形態に係る製造工程を説明する断面図である。
【図3】(a)図は別の実施の形態を示す断面図、(b)図は(a)図のB部の拡大図である。
【図4】図3の金型を用いた樹脂製中空体の製造方法を示す断面図である。
【図5】樹脂製中空体の製造方法を示す断面図である。
【図6】異なる実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 湯水混合水栓の外殻体
2 水の流入部
3 湯の流入部
4,5,6 円筒面
10 金型
11 上金型
12 下金型
13 スライドコア
14 可溶性コア
15 キャビティ
16 スライドコア
16A 基端体
16B 先端体
17 可溶性コア
18 スペーサ

Claims (5)

  1. 成形型内に中子を配置し、樹脂材料を射出した後、中子を除去する樹脂製中空体の製造方法において、
    該中子を金属製スライドコアと、該スライドコアに保持された可溶性材料よりなる可溶性コアとで構成し、
    射出後、成形体を成形型から脱型し、該スライドコアを該成形体から抜き出した後、該可溶性コアを該成形体から溶解除去するものであり、
    該中空体の内面のうち第1の面については該スライドコアで成形し、該第1の面よりも面精度が低い面であって且つスライドコアのスライド方向と交叉方向に凹陥する第2の面については該可溶性コアで成形することを特徴とする樹脂製中空体の製造方法。
  2. 請求項において、該中空体は水栓の外殻体であり、第2の面は水又は湯が通過する面であることを特徴とする樹脂製中空体の製造方法。
  3. 成形型内に中子を配置し、樹脂材料を射出した後、中子を除去する樹脂製中空体の製造方法において、
    該中子を金属製スライドコアと、該スライドコアに保持された可溶性材料よりなる可溶性コアとで構成し、
    射出後、成形体を成形型から脱型し、該スライドコアを該成形体から抜き出した後、該可溶性コアを該成形体から溶解除去するものであり、
    前記可溶性コアを前記スライドコアに固定用部材によって固定しておき、
    脱型後、成形体から該スライドコアを抜き出し、次いで可溶性コアを溶解除去した後、この固定用部材を成形体から取り出すことを特徴とする樹脂製中空体の製造方法。
  4. 成形型内に中子を配置し、樹脂材料を射出した後、中子を除去する樹脂製中空体の製造方法において、
    該中子を金属製スライドコアと、該スライドコアに保持された可溶性材料よりなる可溶性コアとで構成し、
    射出後、成形体を成形型から脱型し、該スライドコアを該成形体から抜き出した後、該可溶性コアを該成形体から溶解除去するものであり、
    該中空体は水栓の外殻体であり、前記スライドコアにより成形される面はシール部材が接する面であることを特徴とする樹脂製中空体の製造方法。
  5. 成形型内に中子を配置し、樹脂材料を射出した後、中子を除去する樹脂製中空体の製造方法において、
    該中子を金属製スライドコアと、該スライドコアに保持された可溶性材料よりなる可溶性コアとで構成し、
    射出後、成形体を成形型から脱型し、該スライドコアを該成形体から抜き出した後、該可溶性コアを該成形体から溶解除去するものであり、
    前記成形体を成形型から脱型した後、この成形型よりも大きな成形型内に配置し、成形体の外周に被覆層形成用の樹脂材料を射出することを特徴とする樹脂製中空体の製造方法。
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