JP6762833B2 - 管状樹脂成形体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、合成樹脂で一体成形された管状樹脂成形体の製造方法に関する。特に射出成形を利用した分岐管状の管状樹脂成形体の製造方法に関する。
合成樹脂で一体成形された管状樹脂成形体は、各種配管や、コネクタ部材、管継手等の多彩な用途に使用されている。特に、管状樹脂成形体を、合成樹脂の射出成形を利用して一体成形すれば、管端部のシール構造や取付け部材等を一体に成形することもできて、便利である。
射出成形を利用して管状樹脂成形体を製造する技術は公知である。中空管状部が短い管状樹脂成形体であれば、管の内周面形状を規定するコア型を有する金型を用いて、管状樹脂成形体を射出成形できる。
また、近年では、キャビティ内に一旦射出された樹脂に対し、加圧した気体や液体を樹脂の中央部に導入して中央部の樹脂を排除して、中空管状部を形成する技術も実用化されている。こうした技術は、ガスアシスト射出成形技術(Gas−assisted Injection Technology:GIT法)やウォーターアシスト射出成形技術(Water−assisted Injection Technology:WIT法)などが知られている。例えば、特許文献1には、ウォーターアシスト射出成形技術により形成された管状樹脂成形体が開示されている。
また、射出成型時に加圧した気体や液体を導入して中空管状部を形成する技術として、いわゆるフローティングコアを利用する技術も知られている。例えば、特許文献2には、キャビティへの溶融樹脂の射出を行った後に、キャビティ内を通過しうる大きさのフローティングコアを、キャビティの加圧ポートから加圧流体によって押して、キャビティに注入された溶融樹脂中を前記排出口まで型キャビティに沿って進行させることにより、中空管状部を形成する射出成形技術が開示されている。当該製造方法によれば、中空部寸法が均一な複雑形状の中空製品を射出成形できることが開示されている。
また、上記フローティングコアを利用する技術を応用して、分岐管状の管状樹脂成形体を製造する方法も知られており、例えば、特許文献3には、分岐管部を形成するスライド軸を主キャビティに向かって前進させて、連通穴を形成して、分岐管を形成する技術が開示されている。当該製造方法によれば、連通穴部分を後加工するのに比べ、簡単かつ安価に連通穴が形成できる。
特開2015−139879号公報 特開平04−208425号公報 特開2015−174441号公報
しかしながら、特許文献3に開示された方法によっても、スライド軸が主管部の内側に向けて移動することによって貫通穴を設けるため、分岐部分で主管部の内側に突出するようなバリが生じやすい。こうしたバリは主管部の流れを妨げる抵抗となることがあり、あるいは、こうしたバリが残ってしまうと、バリが使用時に剥離して、流体中に混入するおそれがある。
また、フローティングコアを用いた成形法で、特許文献3のようにして分岐管を製造すると、貫通穴を開けた際の抜き屑が、主管部の内周面に付着してしまい、製品不良となることがある。
本発明の目的は、分岐管状の管状樹脂成形体を成形するにあたって、管の分岐部に生じうるバリの発生を抑制し、高品質な管状樹脂成形体が得られるような、管状樹脂成形体の製造方法を提供することにある。
発明者は、鋭意検討の結果、射出成形と加圧流体を組み合わせた中空管状体の成形法において、主管部が形成された後に、加圧流体の加圧を維持した状態で、分岐管内周を形成するコア型を後退させて、主管部と分岐管部の間に生じた樹脂壁を管状樹脂成形体から切り離すと、上記課題が解決できることを知見し、本発明を完成させた。
本発明は、中空管状部を有する管状樹脂成形体を熱可塑性樹脂の射出成形を利用して製造する方法であって、前記中空管状部は、主管部と、主管部から分岐する分岐管部とを有する分岐管状であり、前記射出成形は、一端に加圧流体を注入可能な加圧ポートを備えると共に他端に排出口を有するキャビティを有する金型を準備し、前記キャビティにより管状樹脂成形体の外面形状を規定し、溶融状態の熱可塑性樹脂を前記キャビティ内に射出して充填した後、加圧ポートから加圧流体をキャビティ内に圧入して、キャビティ内の樹脂の一部を排出口から排出して主管部を形成するものであり、さらに、前記金型は、分岐管部の内周面形状を規定するコア型を有しており、さらに、前記射出成形は、主管部が形成される際に、前記コア型の先端面に隣接して主管部と分岐管部を隔てる樹脂壁を形成するものであって、主管部が形成された後に、加圧流体の加圧を維持した状態で、前記コア型を後退させて、前記樹脂壁を管状樹脂成形体から切り離す工程を有し、前記コア型は、さらに、前記コア型の外周に配置された筒状のスリーブを有しており、キャビティ内に樹脂が射出される際に、前記スリーブの先端部が、前記主管部の外周面よりも、主管部の半径方向内側に突出するように配置される、管状樹脂成形体の製造方法である(第1発明)。
第1発明において、好ましくは、熱可塑性樹脂の射出に先立って、フローティングコアを加圧ポートに備えさせ、加圧流体の圧入によりフローティングコアを排出口側に移動させ、フローティングコアの移動により主管部を形成する(第2発明)。また、第1発明もしくは第2発明において、好ましくは、キャビティ内に樹脂が射出される際に、前記コア型の先端面が、前記主管部の外周面と、主管部の半径方向にほぼ同じ位置に配置される(第3発明)また、第1発明ないし第3発明のいずれかにおいて、好ましくは、前記スリーブの先端部は、スリーブの内周側が、スリーブの外周側に比べ、主管部の半径方向内側により突出するよう、テーパ面とされている(第発明)。また、第1発明ないし第3発明のいずれかにおいて、好ましくは、前記スリーブの先端部が前記主管部の外周面よりも、主管部の半径方向内側に突出した状態を維持しながら、前記コア型を後退させて樹脂壁を管状樹脂成形体から切り離す(第発明)。
本発明の管状樹脂成形体の製造方法(第1発明)によれば、主管部と分岐管部が合流する箇所にバリが生じにくく、管状樹脂成形体の品質が高められる。さらに、第2発明のようにすると、主管部の管壁の肉厚が安定しやすくなり、より、管状樹脂成形体の品質が高められる。また、さらに、第1発明や第4発明のようにすれば、バリの発生がより抑制されると共に、抜き屑の除去がより確実なものとなり、管状樹脂成形体の品質がより高められる。
本発明の製造方法により製造される管状樹脂成形体の形状を示す一部断面図である。 本発明の製造方法に使用される射出成型金型の構成の例を示す模式図である。 本発明の製造方法の工程の一部を示す模式図である。 本発明の製造方法の工程の一部を示す模式図である。 本発明の製造方法の工程の一部を示す模式図である。 本発明の製造方法の工程の一部を示す模式図である。 本発明の製造方法の過程において、金型から取り出された樹脂成形体の形状を示す断面図である。 本発明の製造方法に使用される射出成型金型の他の構成例を示す模式図である。
以下図面を参照しながら、液体の移送用配管に使用される管状樹脂成形体を例として、発明の実施形態について説明する。発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。
図1は、後述する製造方法により製造される管状樹脂成形体1の形状を示す図であり、図中では、管の中心線に対し上側及び右側となる部分を断面で示し、他の部分を外観で示している。管状樹脂成形体1は、中空管となるように成形された中空管状部を有する。中空管状部は、主管部11と、主管部11から分岐する分岐管部12とを有する分岐管状である。すなわち、分岐管部12は主管部11の途中から分岐しており、両者は互いに連通している。主管部11は、直管状であってもよいし、曲がり管状であってもよい。分岐管部12は直管状であることが好ましいが、後述するコア型の脱型が可能であれば、曲がり管状であってもよい。後述する製造方法によれば、主管部11が、曲がり管状、特に通常のコア型の脱型が難しいような曲がり管形状であっても、分岐管状の中空管状部が形成できる。
管状樹脂成形体1は、ゲート痕15を有する。ゲート痕とは、管状樹脂成形体1が射出成形される際に、金型のキャビティに対し樹脂を射出した注入口(ゲート)の痕跡である。本実施形態においてはゲート痕15は、主管部11の外周面に設けられている。
管状樹脂成形体1は、主管部11と分岐管部12に加え、他の部分を備えていてもよい。例えば、管状樹脂成形体1に、主管部11や分岐管部12の端部付近に、フランジ16を備えさせて、管の取り付け性やシール性を高めることができる。同様に、主管部11や分岐管部12の端部付近に、シール溝や、突条等を設けてもよい。また、管状樹脂成形体1には、取付や接続のためのステーや固定部、ボスなどを一体成形してもよい。
管状樹脂成形体1を構成する樹脂材料は、射出成形が可能な種々の熱可塑性樹脂が使用できる。熱可塑性樹脂としては、典型的には、オレフィン系樹脂などの汎用樹脂や、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂などのエンジニアリングプラスチックの他、ポリフェニルサルファイド樹脂やポリエーテルエーテルケトン樹脂などのスーパーエンジニアリングプラスチックが使用できる。熱可塑性樹脂には、各種補強材(タルクなど)や、強化繊維が配合されていてもよい。強化繊維としては、ガラス繊維やアラミド繊維、炭素繊維などが例示される。熱可塑性樹脂には、各種充填材や添加剤、着色剤などを配合してもよい。
管状樹脂成形体1は、例えば、自動車の自動変速機の油圧配管や、冷却機構の水冷配管等の構成部材として使用できる。なお、管状樹脂成形体1の用途は、これに限定されず、気体や流体の移送や圧力伝達に使用される管体として使用できるほか、紛体や粒体の移送に使用される管体としても使用できる。
以下、上記管状樹脂成形体1の製造方法について説明する。まず射出成形を利用して、樹脂成形体5(図7)を一体成形し、樹脂成形体5から不必要な部分を切除して、管状樹脂成形体1が得られる。図7に樹脂成形体5の形状を断面図で示す。この例では、図7のA−A及びB−Bで示した位置で主管部の両端を切断し、ゲート及びランナー(図示せず)を切除することにより、図1のような管状樹脂成形体1が得られる。
樹脂成形体5を射出成形する工程について概説する。樹脂成形体5の射出成形に用いられる金型は、ゲートとキャビティを有しており、ゲートを通じてキャビティ内に溶融状態の熱可塑性樹脂が射出され、その後加圧流体を圧入してキャビティ内の樹脂の一部を排出する方法、例えば、いわゆるフローティングコア法により、主管部11が形成され、キャビティ型とコア型により分岐管部12が形成される。そして、主管部11が形成された後に、主管部と分岐管部を隔てる樹脂壁45が除去される。その後、樹脂成形体5が金型から取り出される。
以下、図2ないし図6を参照しながら、上記フローティングコアを用いた射出成型工程の例について詳しく説明する。
図2は射出成形工程に用いられる金型の断面模式図である。成形品の取り出しが可能なように、金型(キャビティ型)3は、紙面と垂直な方向に開閉動作が可能に構成されている。金型3には、キャビティ311,312とゲート35が設けられている。ゲート35を通じてキャビティ内に溶融状態の熱可塑性樹脂を射出して充填することによって、キャビティの内周面形状が転写されて、樹脂成形体5の外面形状が規定される。金型のキャビティは、主管部を形成する主管部キャビティ311と、分岐管部を形成する分岐管部キャビティ312を有する。
分岐管部12が形成される部分には、分岐管部の内周面形状を規定するコア型41が設けられている。コア型41は、本実施形態のように、コア型の外周に配置された筒状のスリーブ42を有するものであってもよい。本実施形態のように、コア型41がスリーブ42を有する場合には、実質的には、キャビティ型の内周面と、スリーブ42の外周面により、分岐管部キャビティ312が形成される。これらコア型41やスリーブ42は、成形品の取り出し等が可能なように、分岐管部12の延在方向にスライド可能に構成されている。
なお、後述する実施形態に示すように、コア型41にスリーブ42を設けることは必須ではない。スリーブ42を設けない場合には、キャビティ型の内周面とコア型41の外周面が、分岐管部キャビティ312を規定する。
射出成形の際に金型を閉じた状態で、コア型41は、コア型の先端面41aが、前記主管部の外周面(すなわち主管部キャビティの周壁面311a)と、主管部11の半径方向にほぼ同じ位置に配置されることが好ましい。また、コア型41の先端面41aは、前記主管部の外周面(すなわち主管部キャビティの面311a)を延長したような、ほぼ同一の面となるようにされることがより好ましい。
射出成形の際に金型を閉じた状態で、スリーブ42は、スリーブの先端部42aが、前記主管部の外周面(すなわち主管部キャビティの周壁面311a)よりも、主管部の半径方向内側に突出するように、配置されることが好ましい。スリーブ先端部42aの突出形態は、筒状のスリーブの全周にわたって、主管部の半径方向内側に突出するようにされていることが好ましいが、突出が部分的であってもよい。
また、さらに、スリーブ42の先端部42aは、スリーブの内周側が、スリーブの外周側に比べ、主管部の半径方向内側により突出するよう、テーパ面とされていることが好ましいが、スリーブの先端部42aが逆方向のテーパ状、即ち、スリーブの外周側が、スリーブの内周側に比べ、主管部の半径方向内側により突出するようなテーパ状にされていてもよく、スリーブの先端部42aが鋸刃状や階段状に形成されていてもよい。
金型のキャビティは、主管部キャビティ311の一端側に加圧流体を注入可能な加圧ポート32を備えている。さらに、キャビティは、主管部キャビティ311の他端側に排出口33を有している。そして、ゲート35は、主管部キャビティ311の周壁面に設けられている。
加圧ポート32は、加圧流体を圧入・排出するための加圧流体系(図示せず)に接続されている。また、加圧ポートがキャビティに連絡する部分には、フローティングコアを仮に支持する部分が設けられ、樹脂の射出に先立って、この部分にフローティングコア2が配置される。
フローティングコア2は、金属製であってもよく、樹脂製であってもよい。樹脂製の場合は、射出成形に供される熱可塑性樹脂と同種の樹脂であってもよいし、異なる種類の樹脂であってもよい。フローティングコア2の形状は、図示した球形の他、円筒状、円錐形状、砲弾型などの形状など、形成されるべき内周面の断面形状を有する形状である。
主管部キャビティ311の他端に設けられた排出口33には、捨てキャビティ34が接続されている。排出口33と捨てキャビティ34の間には開閉動作が可能な開閉手段37が設けられている。
図3ないし図6は射出成型工程の各段階を示す図である。
まず、フローティングコア2を加圧ポート32側に配置した状態で金型3を型閉じする。この時、開閉手段37を閉じておく。好ましくは、コア型41の先端面41aが、主管部の外周面(すなわち主管部キャビティの周壁面311a)と、主管部の半径方向にほぼ同じ位置に配置される。また、好ましくは、スリーブの先端部42aが、主管部の外周面(すなわち主管部キャビティの周壁面311a)よりも、主管部の半径方向内側に突出するように配置される。
型閉じ後、図3に示すように、ゲート35を通じて、キャビティ311,312に溶融状態の樹脂を射出し、充填する。なお、この段階における樹脂の充填は、金型のキャビティ全体に対し完全に樹脂を充填する必要はない。後述する加圧流体の圧入によりキャビティ全体への樹脂の充填が完全なものとなるのであれば、この段階における樹脂の充填は、キャビティの一部に樹脂が行き渡らないような不完全な充填であってもよい。
ゲート35からの樹脂の射出が終了した後、引き続き、排出口33に設けられた開閉手段37を開放すると共に、加圧ポート32から加圧流体を主管部キャビティ311内に圧入する。加圧流体は、窒素ガスや炭酸ガス、空気などの気体であってもよく、グリセリンや流動パラフィン、水などの液体であってもよい。加圧流体は、射出された樹脂と反応または相溶しない流体であることが好ましく、例えば窒素ガスのような不活性ガスが特に好ましい。加圧流体の圧入は公知の加圧流体系により行えばよい。
加圧流体が圧入されると、図4に示すように、フローティングコア2は加圧流体に押されてキャビティ内の樹脂中を移動していく。この時、フローティングコア2は、冷却固化が始まった主管部キャビティ311の外周寄りの樹脂を残し、冷却が遅れる中心部の溶融樹脂を排出口33から捨てキャビティ34へ押し出しながら、排出口33側へと前進する。そして、フローティングコア2が通過した後には、フローティングコア2の径にほぼ等しい内径を有する主管部11が形成されることになる。また、主管部11の管壁となる部分の樹脂は、圧入された加圧流体の圧力により、主管部キャビティの内周面に押し付けられて、管の形状が維持された状態で冷却されて、主管部が形成されていく。また、分岐管部キャビティ312に充填された樹脂は、キャビティ型の内周面や、スリーブ(もしくはコア型)の外周面に接する部分から冷却され、固化して、分岐管部12が形成される。
更に加圧流体の圧入を進めると、図5に示されるように、フローティングコア2が排出口33の位置まで至り、主管部11の全体が形成される。この状態で形成された主管部11の内部に加圧流体圧を加えたまま保持することで、樹脂と主管部キャビティ311の周壁面とを十分に圧接させることができ、成形体の主管部11の外面形状が正確に形成され、好ましい。
なお、主管部11が形成された状態で、分岐管部のコア型41の先端部41aに隣接して、主管部11と分岐管部12とを隔てる樹脂壁45が形成される。この樹脂壁45により、主管部の内部空間と分岐管部の内部空間とは、未だ連通していない状態にある。
本実施形態では、フローティングコア2が排出口33の手前側で停止するように構成しているが、排出口の径を大きくして、フローティングコア2が排出口33を超えて捨てキャビティ34まで到達するようにしてもよい。
主管部11と樹脂壁45が形成された後に、引き続き、加圧流体の加圧を維持した状態で、図6に示すように、コア型41を後退させて、樹脂壁45を樹脂成形体(5)から切り離す。加圧流体の加圧とコア型41の後退の組み合わせにより、樹脂壁45の周縁部がせん断変形して破断し、樹脂壁45がコア型41に引っ張られるように樹脂成形体(5)から切り離される。樹脂壁45が切り離されたら、適宜、加圧流体の加圧を解除してもよい。
好ましくは、コア型41を後退させ、樹脂壁45を切り離す工程において、スリーブ42の先端部42aが主管部の外周面よりも、主管部の半径方向内側に突出した状態を維持した状態で、コア型41を後退させる。スリーブを設ける場合には、このように、スリーブ42とコア型41とが別々の進退動作を行えるように金型を構成することが好ましい。
また、樹脂壁45がコア型41と一体になって切り離されるように、コア型41の先端部には、穴を設けたり、アンダーカット形状や凹凸や溝等を設けたりして、コア型41の先端部41aに樹脂壁45が保持されやすくすることが好ましい。
また、コア型41の後退は、フローティングコア法における加圧流体の圧入後の加圧保持時間の最終段階において行うことが、成形の効率性と確実性を高めるうえで好ましい。
コア型41を後退させて、樹脂壁45を切り離した後に、金型3のキャビティ内の樹脂が十分に固化した頃合いを見計らって、必要に応じ、スリーブ42やコア型41を後退させつつ金型3を型開きして、成形された樹脂成形体5を取り出す。取り出された樹脂成形体5を図7に示す。
取り出した樹脂成形体5に対し、必要に応じて、図7のA−AやB−Bに示すように、図1の管状樹脂成形体1をするのに不必要な部分を切除する。また、ゲートやランナーの部分を樹脂成形体5から切り離す。これにより、管状樹脂成形体1が得られる。なお、樹脂成形体5から管状樹脂成形体1を得る際に、必要に応じ、切削加工による穴あけや、他の部材の組みつけなどを行ってもよい。
以下、上記管状樹脂成形体1および上記製造方法の作用と効果を説明する。
上記製造方法により管状樹脂成形体1を製造すると、主管部11と分岐管部12を隔てるように形成される樹脂壁45を、加圧流体による圧力とコア型41の後退によって、効率的に切り離すことができる。このように樹脂壁45を切り離すと、樹脂壁周辺の主管部や樹脂壁45を、それらが射出成形と加圧流体の圧入を組み合わせた方法(特にフローティングコア法)で成形された形状を維持したままで切り離すことができ、成形体の形状が正確になって品質が高められる。かつ、樹脂壁45が分岐管部側に切り離されるため、樹脂壁45を切り離した部分にバリが生じにくい。
また、仮に、樹脂壁45を切り離した部分にバリが生じうるとしても、樹脂壁45が分岐管部側に切り離されるため、バリが主管部11の内部に飛び出して形成されることがなく、管状樹脂成形体の品質が高められる。
さらに、キャビティ内に樹脂が射出される際に、コア型41の先端面41aが、前記主管部の外周面と、主管部の半径方向にほぼ同じ位置に配置されるようにした場合には、射出成形と加圧流体の圧入を組み合わせた方法(特にフローティングコア法)による主管部の形成がより正確で確実なものとなり、管状樹脂成形体の品質が高められる。すなわち、両者が主管部の半径方向にほぼ同じ位置に配置されることにより、主管部キャビティ311に射出・充填された樹脂の冷却や固化の速さが、分岐部とその他の部分の間でより均一なものとなり、射出成形と加圧流体の圧入を組み合わせた方法(特にフローティングコア法)により形成される主管部の肉厚が安定しやすくなって、管状樹脂成形体の品質が高められる。
また、コア型41が、さらに、コア型の外周に配置された筒状のスリーブ42を有しており、キャビティ内に樹脂が射出される際に、スリーブ42の先端部42aが、主管部の外周面よりも、主管部の半径方向内側に突出するように配置されるようにした場合には、形成される主管部11と樹脂壁45に対し、スリーブ42の先端部42aが厚み方向に食い込んだ状態で、主管部11が形成される。そのため、コア型41を後退させ、樹脂壁45を切り離す工程において、せん断変形させて切り離すべき部分を薄肉にすることができる。そのため、樹脂壁45の切り離しがより確実になると共に、バリの発生も抑制される。また、スリーブ42がコア型41の外周に配置されることにより、切り離された樹脂壁45は、樹脂成形体5(分岐管部12)の内周に接触することなく、スリーブ42の内側に回収される。これにより、樹脂成形体5や管状樹脂成形体1の内部に樹脂壁45が残ってしまうことが予防され、管状樹脂成形体の品質がより高められる。
また、スリーブ42の先端部42aの形状が、スリーブの内周側がスリーブの外周側に比べ、主管部の半径方向内側により突出するようなテーパ面にされていると、バリの発生の抑制と、樹脂壁45のスリーブ42内への回収がより確実になって、好ましい。このような先端部形状となっていると、スリーブ42の先端部で切り離された樹脂壁45が、その周縁部を変形させなくてもコア型41と共にスリーブの内部に引き込まれるようになるからである。また、スリーブ先端部42aの形状がこの様であると、スリーブ42の内周面に沿った面で樹脂壁45が切り離されることになるため、バリもより生じにくくなる。
また、スリーブ42を設けるのであれば、コア型41を後退させて樹脂壁45を樹脂成形体から切り離す際に、スリーブ42の先端部42aが主管部の外周面よりも、主管部の半径方向内側に突出した状態を維持するようにすれば、切り離し部分の変形が抑制されて、バリの発生がより抑制され、樹脂壁45のスリーブ42内への回収がより確実になって、管状樹脂成形体の品質がより高められる。
発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に発明の他の実施形態や変形例について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその詳細な説明を省略する。また、これら実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施できる。
スリーブ42とコア型41の進退の相互のタイミング等は、変更することができる。上記実施形態では、樹脂壁45の切り離し時に、スリーブ42は動かさずにコア型41のみを後退させる形態について説明したが、切り離し時に、スリーブ42とコア型41を同時に後退させてもよく、スリーブ42を主管部の半径方向内側に向けて前進させながら、コア型41を後退させるようにしてもよい。
また、上記実施形態の説明では、コア型がスリーブ42を備える実施形態について説明したが、スリーブは必須ではない。例えば、図8に示すような金型で、同様に分岐管状の中空管状部を有する管状樹脂成形体を製造することもできる。
図8に示す金型においては、スリーブを有しないコア型61の外周面により分岐管部の内周面が規定される。このような金型を用いても、第1実施形態と同様に、主管部をフローティングコア法により成形した後に、加圧流体の加圧を維持した状態で、コア型61を後退させて、主管部(1)と分岐管部(12)とを隔てる樹脂壁(45)を切り離して、主管部と分岐管部が連通した樹脂成形体を製造でき、バリの発生を抑制して、管状樹脂成形体の品質を高めることができる。
またこの金型においては、コア型61の先端面61aの外周部61bが、主管部の半径方向内側に向かってリング状に突出形成されている。この突出形成された部分は、第1実施形態の金型のスリーブ42の先端部42aと同様に、樹脂壁(45)が切り離される箇所の肉厚を薄くして、バリの発生をより抑制する働きをするので、このような突出形成された部分を設けることが好ましい。また、このような突出形成された部分を設ける場合には、本実施形態のように、突出部61bが、コア型61の先端面の最外周部で最も突出しており、コア型先端面の内周方向に向かうにしたがって、突出量が減少するようなテーパ状、もしくは階段状に形成されることが好ましい。このような突出形状であれば、主管部と分岐管部とを、互いの内周面に段差なく接続できる。
また、上記実施形態の説明においては、フローティングコア2を用いて、加圧流体の圧入によりフローティングコア2を移動させて、主管部11を形成する、いわゆるフローティングコア法を応用した製造方法について説明したが、発明は、フローティングコア法に限定されない。すなわち、射出成形を利用した主管部の形成が、一端に加圧流体を注入可能な加圧ポートを備えると共に他端に排出口を有するキャビティを有する金型を準備し、前記キャビティにより管状樹脂成形体の外面形状を規定し、溶融状態の熱可塑性樹脂を前記キャビティ内に射出して充填した後、加圧ポートから加圧流体をキャビティ内に圧入して、キャビティ内の樹脂の一部を排出口から排出して主管部を形成するものであれば、同様に実施可能である。すなわち、本発明体の実施形態として、主管部11の形成を、いわゆるGIT法やWIT法によって行い、その後、主管部と分岐管部を隔てる樹脂壁を、加圧流体の加圧とコア型の後退により除去するようにしてもよく、同様の効果が得られる。
なお、フローティングコアを用いるようにすれば、主管部11の肉厚がより正確なものとなると共に、樹脂壁45の切り離しもより確実に高い品質で行うことができて、より好ましい。
また、上記実施形態の説明では、排出口33と開閉機構37と捨てキャビティ34が順次並んだ形態の金型の例を示したが、排出口や捨てキャビティの具体的形状は特に限定されず、例えば、両者が樹脂の流れ方向と垂直な断面で同じ断面形状を有するような形態であってもよい。また、開閉機構37は一連の射出工程や加圧流体の圧入工程が実行可能であれば、省略することもできる。
上記製造方法によれば、品質に優れる管状樹脂成形体を効率的に製造できて、産業上の利用価値が高い。
1 管状樹脂成形体
11 主管部
12 分岐管部
15 ゲート痕
16 フランジ
2 フローティングコア
3 射出成型金型
311 主管部キャビティ
312 分岐管部キャビティ
32 加圧ポート
33 排出口
34 捨てキャビティ
35 ゲート
37 開閉手段
41 コア型
42 スリーブ
45 樹脂壁
5 樹脂成形体
61 コア型

Claims (5)

  1. 中空管状部を有する管状樹脂成形体を熱可塑性樹脂の射出成形を利用して製造する方法であって、
    前記中空管状部は、主管部と、主管部から分岐する分岐管部とを有する分岐管状であり、
    前記射出成形は、
    一端に加圧流体を注入可能な加圧ポートを備えると共に他端に排出口を有するキャビティを有する金型を準備し、前記キャビティにより管状樹脂成形体の外面形状を規定し、
    溶融状態の熱可塑性樹脂を前記キャビティ内に射出して充填した後、
    加圧ポートから加圧流体をキャビティ内に圧入して、キャビティ内の樹脂の一部を排出口から排出して主管部を形成するものであり、
    さらに、前記金型は、分岐管部の内周面形状を規定するコア型を有しており、
    さらに、前記射出成形は、
    主管部が形成される際に、前記コア型の先端面に隣接して主管部と分岐管部を隔てる樹脂壁を形成するものであって、
    主管部が形成された後に、加圧流体の加圧を維持した状態で、前記コア型を後退させて、前記樹脂壁を管状樹脂成形体から切り離す工程を有し、
    前記コア型は、さらに、前記コア型の外周に配置された筒状のスリーブを有しており、
    キャビティ内に樹脂が射出される際に、前記スリーブの先端部が、前記主管部の外周面よりも、主管部の半径方向内側に突出するように配置される、
    管状樹脂成形体の製造方法。
  2. 熱可塑性樹脂の射出に先立って、フローティングコアを加圧ポートに備えさせ、
    加圧流体の圧入によりフローティングコアを排出口側に移動させ、フローティングコアの移動により主管部を形成する
    請求項1に記載の管状樹脂成形体の製造方法。
  3. キャビティ内に樹脂が射出される際に、前記コア型の先端面が、前記主管部の外周面と、主管部の半径方向にほぼ同じ位置に配置される
    請求項1または請求項2に記載の管状樹脂成形体の製造方法。
  4. 前記スリーブの先端部は、スリーブの内周側が、スリーブの外周側に比べ、主管部の半径方向内側により突出するよう、テーパ面とされている
    請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の管状樹脂成形体の製造方法。
  5. 前記スリーブの先端部が前記主管部の外周面よりも、主管部の半径方向内側に突出した状態を維持しながら、前記コア型を後退させて樹脂壁を管状樹脂成形体から切り離す
    請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の管状樹脂成形体の製造方法。
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