JP5209225B2 - ポリウレタン発泡体 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリウレタン発泡体に関する。さらに詳しくは、例えば、自動車向けの衝撃吸収材、制振材、シール部材、表面保護部材、光学器材等の様々な工業用途に好適に用いられるポリウレタン発泡体及びその製造方法、並びに該ポリウレタン発泡体からなる光反射体に関する。
従来、ポリウレタンの発泡体としては、発泡径が数百μm〜数十μmであるものが多く用いられてきたが、近年、より微細な気泡径を有するポリウレタンの発泡体に関する研究が行われている。
特許文献1には、湿式製膜や乾式製膜により得られた成形体を抽出用溶媒を用いて抽出することにより、平均孔径が数μmの微小孔を有するポリウレタン系医療用多孔膜が開示されている。特許文献2の方法では、溶融状態のウレタン系熱可塑性樹脂に、二酸化炭素を混合して得られる混練物を発泡させることにより、平均セル径が50μm程度の発泡体が得られている。
また、ポリウレタン以外の材料を用いた発泡体に関する技術も報告されている。特許文献3には、アニオン重合で合成される、アクリル系モノマーとビニルモノマーのブロック共重合体に、超臨界の二酸化炭素を用いて直径が100nm以下の空孔を形成させる技術が開示されている。特許文献4には、ポリエチレンテレフタレートからなる平均気泡径が8μmの光反射板が開示されている。
特開平7−53764号公報 特開2002−201301号公報 特開2005−97366号公報 WO97/01117号公報
しかしながら、これら試みに拠ってポリウレタンを原料として微細発泡体を製造することができるものの、発泡倍率が低かったり、製造フローが複雑なため生産性に問題があるなど、解決すべき課題は多い。また、特許文献4に開示されている光反射板は、十分な反射率を有しているとはいえず、より高い反射率を有する光反射体が要望されている。
本発明の課題は、容易な方法により製造できる、平均気泡径が1.0μm以下のポリウレタンの発泡体(以下、「微細発泡体」という)、及びその製造方法、並びに該ポリウレタン発泡体からなる光反射体を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリウレタンの微細発泡体を製造するに当たり、そのハードセグメントとソフトセグメントの物性の制御が気泡の微細化に重要であると考えた。そこで、2つのセグメントがそれぞれ特定の物性を有するよう特定の原料を使用して得られたウレタン組成物を用いることにより、微細な気泡を有する微細発泡体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、
〔1〕 分子量400未満の〔ポリオール(A−1)〕及び分子量400以上の〔ポリオール(A−2)〕を含有するポリオール成分(A)と、ポリイソシアネート成分(B)とを反応させて得られるポリウレタンの発泡体であって、平均気泡径が1.0μm以下の微細気泡を有するコア部とスキン層からなるポリウレタン発泡体、
〔2〕 〔ポリオール(A−1)〕及び〔ポリオール(A−2)〕を含有するポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)との反応生成樹脂内に、加圧状態で気体を溶解させた後、該加圧を開放して前記樹脂中に気泡を発生させる、前記〔1〕記載のポリウレタン発泡体の製造方法、並びに
〔3〕 前記〔1〕記載のポリウレタン発泡体からなる光反射体
に関する。
本発明のポリウレタン発泡体は、容易な方法により製造できるものであって、平均気泡径が1.0μm以下という微細な気泡を有することにより、400〜700nmのいずれの波長を有する入射光に対しても優れた反射率を有するという優れた効果を奏するものである。
本発明のポリウレタン発泡体は、分子量400未満の〔ポリオール(A−1)〕と分子量400以上の〔ポリオール(A−2)〕を含有するポリオール成分(A)と、ポリイソシアネート成分(B)とを反応させて得られるポリウレタンの発泡体であって、平均気泡径が1.0μm以下の微細気泡を有するコア部とスキン層からなることを大きな特徴とする。本発明では、かかる成分を用いることにより、〔ポリオール(A−1)〕及びポリイソシアネート成分(B)を主成分とするセグメント(以下、ハードセグメントという)と、〔ポリオール(A−2)〕由来のセグメント(以下、ソフトセグメントという)の両セグメントの物性を制御して、微細気泡を有する発泡体を得ることができるのである。なお、本発明における微細気泡とは、平均気泡径が1.5μm以下の気泡のことをいう。
一般に、ガス含浸発泡方法においてより微細な気泡を形成させるためには、先ず気泡核を多く形成させることが重要であることから、ポリマーへの気体溶解量を増やし、発泡時の減圧幅を増大させれば良い。そのためには、用いるポリマーの表面張力は低い方が良い。次に、形成した気泡の成長を抑制し、気泡を小さい状態で維持するためには、ガスの拡散速度が小さいポリマーを用いればよい。しかし、これらの物性は、単一成分からなるポリマーでは両立するのが困難な課題である。即ち、分岐鎖の多いポリマーを用いると表面張力は下がるがポリマー中のガスの拡散速度は早くなる。また、ガスの拡散速度が小さいポリマーは表面張力が高いものが多く、ポリマーへの気体溶解量が減少し、核形成数が減り気泡径は小さくならない。
そこで本発明では、この課題を解決するため、異なるポリマーにより構成されることにより異なる物性を有する2つのセグメントから成り立つウレタンに着目したところ、ソフトセグメント及びハードセグメントを有する熱可塑性ポリウレタン樹脂(thermoplastic polyurethane:TPU)を用いることで上記課題を解決することができる。本発明により超微細な気泡を有する微細発泡体が得られる理由については、ソフトセグメントが、分岐鎖の多いポリマーを用いているために、ポリマーの表面張力を低くなり気体溶解量が多くなる一方、ハードセグメントが、発泡温度より高いガラス転移点を有しているために、ポリマー中のガスの拡散速度を抑制しているためと考えられる。このため、単一な成分からなるポリマーでは達成できなかった超微細な気泡を有する微細発泡体になると考えられる。
<ポリウレタン発泡体の原料>
ポリウレタンとしては、特に制限されず、分子中にウレタン結合(−NH−COO−)、尿素結合、ビュレット結合、アロファネート結合等を有する従来公知のポリウレタン樹脂が挙げられるが、中でも、押し出しや加工の容易性の観点から、熱可塑性樹脂として使用するポリウレタン樹脂として、熱可塑性ポリウレタン樹脂(thermoplastic polyurethane:TPU)が好ましい。
熱可塑性ポリウレタン樹脂は、架橋構造が少ないため熱可塑性を有するが、かかるポリウレタン樹脂は、活性水素を有する化合物(以下、「化合物A」という)と、イソシアネート基(−N=C=O)を有する化合物(以下、「化合物B」という)とを反応させる、従来公知の方法により製造することができる。従って、前記化合物A及び化合物Bの種類と量とを選択することにより、熱可塑性ポリウレタン樹脂としては、例えば、ポリエステル系ウレタン、ポリエーテル系ウレタン等を製造することができる。
本発明においては、気体溶解量の多いソフトセグメントと、発泡温度より高いガラス転移点を持つハードセグメントを有するポリウレタン発泡体を得る観点から、分子量400未満の〔ポリオール(A−1)〕と分子量400以上の〔ポリオール(A−2)〕を含有するポリオール成分(A)と、ポリイソシアネート成分(B)とを反応させる。
〔ポリオール(A−1)〕は分子量が400未満、好ましくは150以下の化合物である。また、強度、制振性、衝撃吸収性、断熱性等に優れるポリウレタン発泡体を得る観点から、1分子内に2個以上の活性水素を有することが好ましい。活性水素としては、水酸基(−OH)やアミノ基(例えば、−N(R)H、−NH)等の活性水素が挙げられるが、特に制限されない。なお、本明細書において、ポリオールの分子量は、JIS K0070法に従って水酸基価を求め、得られた水酸基価を下記式に代入して算出される値をいう。即ち、JISK0070法に従って測定したポリオールの水酸基価がx(mgKOH/g)とすると、ポリオール1gに対して水酸化カリウム(分子量:56.1)がxmg(x×10-3g)反応していることになるから、ポリオール1モルの分子量は、式(A):
分子量=56100÷x (A)
により算出することができる。
〔ポリオール(A−1)〕としては、公知の架橋剤、鎖延長剤等が挙げられ、具体例としては、強度やゴム弾性を十分に両立できることから、エチレングリコール、プロピレングリコール及び1,4-ブタンジオール、ならびに、それらのオリゴマー(例えば、ポリテトラメチレングリコール(PTMG))等が好ましく用いられる。
〔ポリオール(A−2)〕は分子量が400以上であるが、好ましくは400以上20,000未満、より好ましくは800以上20,000未満、さらに好ましくは800以上10,000未満の化合物である。活性水素の数は、強度、制振性、衝撃吸収性、断熱性等に優れるポリウレタン発泡体を得る観点から、1分子内に2個以上であることが好ましい。活性水素としては、前述の〔ポリオール(A−1)〕と同様の活性水素が挙げられ、特に制限されない。
〔ポリオール(A−2)〕としては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール等のポリオールが挙げられ、中でも、変性シリコーンやポリプロピレングリコール(PPG)等の分岐鎖を持つポリオールが好ましく、表面張力の低い変性シリコーンがより好ましい。このようなポリオールは、後述する気体溶解工程において、高圧ガスや超臨界流体との親和性を向上することができるので、気泡の臨界核形成特性が改善され、気泡径の小粒径化が可能となるので好ましい。また、得られる樹脂の物性を均一にする観点から、〔ポリオール(A−2)〕は、π電子相互作用などによって結晶化しやすい芳香環が無い脂肪族のものが良い。
〔ポリオール(A−1)〕と〔ポリオール(A−2)〕の分子量比(A−1/A−2)は1超であるが、好ましくは5以上、より好ましくは10以上である。
ポリオール成分(A)は、〔ポリオール(A−1)〕と〔ポリオール(A−2)〕を含有するが、ポリイソシアネート成分(B)との反応を妨げない範囲で、さらに他の反応成分や添加剤を含んでもよい。ポリオール成分(A)における〔ポリオール(A−1)〕と〔ポリオール(A−2)〕の総含有量は、75〜100重量%が好ましく、85〜100重量%がより好ましく、実質的に100重量%であることがさらに好ましい。また、〔ポリオール(A−1)〕と〔ポリオール(A−2)〕の重量比(A−1/A−2)は、20/80〜99/1が好ましく、20/80〜70/30がより好ましい。
ポリイソシアネート成分(B)としては、イソシアネート基を有する化合物であれば特に制限されず、いわゆるイソシアネートが使用でき、例えば、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられ、これらの中では、得られる樹脂の物性を均一にする観点から、脂肪族系のイソシアネート基を有する化合物であり、分岐鎖もしくは芳香族環以外の環構造を有する化合物が好ましく、具体的にはイソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。ポリイソシアネート成分(B)のNCO含有量は、好ましくは30〜50重量%、より好ましくは30〜45重量%である。
ポリイソシアネート成分(B)の市販品としては、住化バイエルウレタン社製「デスモジュール」、三井化学ポリウレタン社製「コスモネート」等が挙げられる。
ソフトセグメントは発泡の核となることから、ソフトセグメントのガラス転移点は、25℃未満が好ましく、0℃以下がより好ましく、-150〜0℃がさらに好ましい。一方、ハードセグメントは気泡の成長を抑制する観点から、溶存気体を発泡させる温度よりも高いガラス転移点を有することが好ましい。ハードセグメントのガラス転移点は25〜500℃が好ましく、50〜300℃がより好ましく、80〜250℃がさらに好ましい。
本明細書においては、各セグメントのガラス転移点は下記の方法により測定することができる。粘弾性測定装置(例えば、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、DMS6100)を用いて、下記条件に従って、40mm×10mm×2mmの短冊形サンプルの引っ張り試験を行い、25℃における貯蔵弾性率を求め、その際に同時に観測されるE'’(損失弾性率)曲線が示すピーク温度のうち、最も低いピーク温度をソフトセグメントのガラス転移点、最も高いピーク温度をハードセグメントのガラス転移点とする。
<測定条件>
測定周波数 10Hz
昇温速度 2℃/min
最小張力 200mN
目標振幅 10μm
張力圧縮力ゲイン 1.5
また、熱や物理的な応力による2次的な物性変化が生じない観点から、本発明におけるソフトセグメント及びハードセグメントは、それぞれ非晶性であることが望ましい。ソフトセグメント又はハードセグメントが結晶性である場合には、ハードセグメント及びソフトセグメント双方を取り込んだ球晶を生じ、樹脂の硬さや粘弾性が変化し、均一発泡が困難となる。本明細書において、非晶性とは、結晶化して特定の繰り返し単位を構成しないもののことをいい、具体的には、後述の実施例に記載の方法により確認される。
ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)との割合は、通常、イソシアネートインデックスが好ましくは90〜110、より好ましくは95〜105、さらに好ましくは100〜105となるように調整することが好ましく、〔ポリオール(A−2)〕と、〔ポリオール(A−1)〕にポリイソシアネート成分(B)を加えたものとの重量比{〔ポリオール(A−2)〕/[〔ポリオール(A−1)〕+ポリイソシアネート成分(B)]}は50/50〜1/99が好ましく、50/50〜10/90がより好ましく、40/60〜10/90がさらに好ましい。ここで、〔ポリオール(A−2)〕はソフトセグメントに、〔ポリオール(A−2)〕と、〔ポリオール(A−1)〕にポリイソシアネート成分(B)を加えたものはハードセグメントに相当する。
本発明においては、前記ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)の他に、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、酸化防止剤、耐候性付与剤、着色剤、有機もしくは無機フィラー等の添加剤を使用してもよい。
ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)を反応させて得られる反応生成樹脂組成物(以下、「熱可塑性樹脂含有組成物」という)の25℃における貯蔵弾性率は、1×106〜5×109Paが好ましく、1×107〜5×109Paがより好ましい。なお、本明細書において、樹脂含有組成物の貯蔵弾性率は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
<ポリウレタン発泡体の製造方法>
本発明のポリウレタン発泡体の製造方法は、ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)を反応させて得られる熱可塑性樹脂含有組成物に、加圧状態で気体を溶解させた後、該加圧を開放して前記組成物中に気泡を発生させる工程を含む方法であり、その他の工程や条件等は何ら制限されない。前記方法により、本発明の発泡体は、発泡体1cmあたりに1×1010個以上の微細気泡を有するコア部と、発泡体の表面及び表面近傍に形成される無発泡部分、あるいは切断面の単位面積(100μm2)あたりのセル数が最も多いコア部の箇所と比較して1/100以下のセル数しか発泡しない部分からなるスキン層とによって構成される。
以下に、本発明の方法を具体的に説明する。まず、熱可塑性樹脂含有組成物を準備し、これをペレット化して、射出成形機等により、所望の形状に成形する。そして、前記組成物を加圧下に存在させることにより、この成形した組成物内に気体を溶解させることが可能となり、その後、前記組成物の加圧を開放することにより、前記組成物中に溶解した気体が気泡として出現するため、発泡状の組成物(本発明のポリウレタン発泡体)を得ることができる。発泡前の熱可塑性樹脂含有組成物の形状は、気体を均一に溶解させる観点から、厚さ10mm以下のシート状もしくは粒状が好ましく、0.05〜10mmがより好ましく、0.1〜5mmがさらに好ましい。
加圧状態で気体を溶解させる条件は、特に制限されず、気体の種類に応じて適宜決定することができるが、特に、気体種(ガス種)と熱可塑性樹脂含有組成物との親和性を向上する観点から、前記気体を超臨界状態もしくは亜臨界状態にする条件であることが好ましく、超臨界状態にする条件であることがより好ましい。超臨界状態にする条件の具体例としては、圧力は0.1〜100MPaが好ましく、1〜40MPaがより好ましく、温度は-20〜150℃が好ましく、0〜130℃がより好ましい。なお、前記「超臨界状態」とは、一般に、圧力が臨界圧力以上であり、かつ、温度が臨界温度以上である状態を意味し、前記「亜超臨界状態」とは、温度が三重点以上臨界点以下であり、かつ圧力が飽和蒸気圧以上の圧力である状態を意味する。超臨界状態下及び亜臨界状態下とは、加圧下の下位概念である。
加圧を開放するとは、気体を溶解させた加圧下での圧力を開放してその圧力より低くすることであり、溶解した気体が気泡として発生するまで圧力を低くすることである。なお、圧力を開放する際には、気体を溶解させた時点の圧力のみを減ずるだけであって、温度は、気体を溶解させた時の温度を維持することが好ましい。本発明においては、気泡径を小さくする観点から、気体を発泡させる温度が〔ポリオール(A−1)〕とポリイソシアネート成分(B)を主成分とするセグメント、即ち、ハードセグメントのガラス転移点以下であることが好ましいので、前記減圧条件を考慮すると、気体を溶解させる温度又は気体を発泡させる温度がハードセグメントのガラス転移点以下であることが好ましい。
前記気体種としては、特に制限されないが、二酸化炭素及び/又は窒素が好ましく、熱可塑性樹脂への親和性(拡散速度)が高いことから、二酸化炭素がより好ましい。例えば、前記気体種が二酸化炭素の場合、圧力が二酸化炭素の臨界圧力(7.38MPa)以上であり、かつ、温度が臨界温度(31.1℃)以上である条件であれば、二酸化炭素が超臨界状態となるため好ましい。より具体的には、温度が31〜180℃、及び、圧力が7.38〜40MPaである条件が好ましく、温度が31〜170℃、及び、圧力が10〜30MPaである条件がより好ましい。また、気体種が窒素ガスの場合、窒素ガスが超臨界状態となるためには、窒素ガスの臨界圧力が3.40MPaであり、かつ、臨界温度が-147℃であることから、具体的には、温度が-140℃〜180℃、及び、3.4〜30MPaである条件が好ましい。気体が熱可塑性樹脂含有組成物内に加圧溶解されるまで、溶解される気体の状態を維持する温度と圧力を保持して熱可塑性樹脂含有組成物を気体中に含浸することが好ましい。熱可塑性樹脂含有組成物の形状により前記温度と圧力を保持する時間を調整すればよいが、30分以上が好ましく、1〜48時間がより好ましく、1〜24時間がさらに好ましく、1〜5時間がさらに好ましい。
<本発明のポリウレタン発泡体>
かくして得られる本発明のポリウレタン発泡体における微細気泡の平均気泡径は、特に制限されないが、強度、制振性、衝撃吸収性及び断熱性等の効果が期待できることから、1.0μm以下、好ましくは0.01〜0.8μmであり、より好ましくは0.01〜0.5μmである。また、気泡径分布の標準偏差は、0.4μm以下であることが好ましく、0.3μm以下であることがより好ましく、0.20μm以下であることがさらに好ましい。前記平均気泡径は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。なお、本発明の発泡体において「気泡」とは、当該技術分野において「セル」ともいう。発泡体は、通常、空洞になった気泡とそれらを仕切る隔膜から構成されるが、本発明における気泡は、断熱、防音の観点から、個々の気泡が完全に膜に仕切られた独立気泡であることが好ましく、コア部における独立気泡の比率が40個数%以上であることが好ましく、50個数%以上であることがより好ましい。
本発明のポリウレタン発泡体における気泡の体積含有率は、強度及び耐折曲げ性の効果が期待できることから、好ましくは1%以上であり、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上である。また、その上限は特に制限されないが、10000%以下が好ましく、5000%以下がより好ましく、3000%以下がさらに好ましい。この気泡の体積含有率は、後述する実施例に記載の方法により測定する。
気泡数密度は、ソフトセグメントの形成に用いるポリマーの表面張力が低いことから、1×1012個/cm3以上が好ましく、5×1012〜9×1017個/cm3がより好ましい。本明細書において、気泡数密度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
また、本発明のポリウレタン発泡体は、発泡をさせてもその強度を維持できるものであり、その25℃における貯蔵弾性率は、1×106〜5×109Paが好ましく、1×107〜5×109Paがより好ましい。本明細書において、発泡体の貯蔵弾性率は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
かかる本発明のポリウレタン発泡体は、平均気泡径が1.0μm以下の微細気泡を有することから光反射率が大きく、なかでも、平均気泡径が300nm付近である場合には光反射率がより大きくなることから、本発明のポリウレタン発泡体は光反射性が必要となる用途へも適用可能となる。従って、本発明はまた、本発明のポリウレタン発泡体からなる光反射体を提供する。
本発明の光反射体は、平均気泡径が1.0μm以下という微細な気泡を有するために、400〜700nmの波長を有する入射光に対する反射率が、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上である。なかでも、本発明の光反射体は、400〜500nmの低波長領域の入射光に対しても、上記のような優れた反射率を有するために、好適に使用することができる。
熱可塑性樹脂含有組成物の製造例1〜5
1L容のセパラフラスコに、表1に示す〔ポリオール(A−2)〕、ポリイソシアネート成分(B)、及びジラウリル酸ジブチルスズ(触媒、東京化成工業社製)0.25gを仕込み、窒素雰囲気下で3分間攪拌(150r/min)後、攪拌速度を300r/minに設定し、フラスコ内温度が60℃になるように温調を設定した。その後、10〜15分で反応の発熱が終了し、そのままさらに1時間保持し、保持後のNCO重量%を測定した。なお、NCO重量%は、一定量の過剰アミンとイソシアネート基を反応させ、未反応アミンを塩酸で滴定することによって求めることができる。
測定したNCO重量%をもとに、イソシアネートインデックスが105となるように使用する架橋剤量を算出し、上記フラスコへ算出した量の表1に示す〔ポリオール(A−1)〕を速やかに添加して攪拌混合した。架橋剤添加10〜30秒後に槽内温度が上昇した後、攪拌を止め、予め80℃に保温しておいた成形用の型に速やかに流し込んだ。10分放置後、熱可塑性樹脂含有組成物A〜Eの熱可塑性ポリウレタンを取り出した。なお、イソシアネートインデックスは、式:
〔イソシアネートインデックス〕
=〔実際に使用したイソシアネート量)
÷(化学量論的にポリオールと当量とされるイソシアネート量)×100
に基づいて求めた。
また、得られた熱可塑性樹脂含有組成物A〜Eをそれぞれ16〜18g取り、テフロンコートしたプレス型(厚さ2mm)に入れ、ホットプレスで5kg/cm2圧力下で2分間予熱を行い(170℃)、200kg/cm2-1min(170℃)プレスし、発泡用サンプルシート(6cm×12cm×0.2cm)を得た。
得られた熱可塑性樹脂含有組成物A〜Eの物性を以下の試験例1〜2の方法に従って調べた。結果を表1に示す。
〔試験例1〕(貯蔵弾性率及びガラス転移点)
エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、粘弾性測定装置「DMS6100」を用いて、下記条件に従って、40mm×10mm×2mmの短冊形サンプルの引っ張り試験を行い、25℃における貯蔵弾性率を求めた。
<測定条件>
測定周波数 10Hz
昇温速度 2℃/min
最小張力 200mN
目標振幅 10μm
張力圧縮力ゲイン 1.5
また、各セグメントのガラス転移点は、上記試験において同時に観測されるE''(損失弾性率)のピークを示す温度で定義され、最も低いピーク温度がソフトセグメントのガラス転移点、最も高いピーク温度がハードセグメントのガラス転移点とした。
〔試験例2〕(結晶性)
Perkin Elmer社製、Diamond DSCを使用して熱重量分析を行った。サンプル約5mgをアルミパンに取り、プレスして密閉した後、下記測定フローに従って測定を行い、サンプルの結晶化/融解挙動を観測し、結晶性を評価した。
<測定条件>
step1 250℃、2min保持
step2 -120℃まで500℃/minで冷却
step3 -120℃、3min保持
step4 250℃まで10℃/minで昇温
なお、各セグメントの結晶化の発熱ピーク及び結晶融解の吸熱ピークが観測されない場合、あるいはいずれかのピークが観測されたとしても結晶化の発熱量又は融解熱量が1J/g以下のものである場合を非晶性と判断し、それ以外を結晶性を有すると判断した。
Figure 0005209225
なお、上記試験例1に示す方法で得られるガラス転移点がそれぞれのセグメント由来の物性であることを確かめるために、上記熱可塑性樹脂含有組成物A〜Eの製造に使用した各イソシアネート成分と架橋剤1,4-ブタンジオールとをジラウリル酸ジブチルスズを触媒として室温で反応させることにより得られた反応生成物のガラス転移点を試験例1と同様にして測定した。結果を表2に示す。
Figure 0005209225
実施例1〜4
次に、発泡用サンプルシートに発泡処理を施す。即ち、表3に示す発泡用サンプルシートを200meshのSUS金網に包んで内容積500cmのオートクレーブ中に投入し、これに、表3に示す温度(圧力は一律で20MPa)の条件下で、超臨界状態の二酸化炭素を4時間含浸させた。その後、圧力開放速度1MPa/秒で前記オートクレーブ内の圧力を開放させることによって大気圧まで減圧して、発泡処理を行い、実施例1〜4の発泡体を得た。
比較例1
熱可塑性樹脂含有組成物Aに代えて熱可塑性樹脂含有組成物Eを使用し、二酸化炭素の含浸温度を45℃から85℃に、時間を4時間から3時間に代えた以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1の発泡体を得た。
比較例2
熱可塑性樹脂含有組成物Aに代えて、市販の熱可塑性樹脂含有組成物F(硬度90のMDI-エステル系熱可塑性ポリウレタンエラストマー)を使用した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の発泡体を得た。なお、熱可塑性樹脂含有組成物Fの発泡用サンプルシートは、熱可塑性樹脂含有組成物Aのシートと同様にして作成したものを使用した。なお、組成物Fの貯蔵弾性率及びガラス転移点を上記試験例1の方法と同様にして測定したところ、貯蔵弾性率は5.7×107Paであり、ガラス転移点は70℃と-27℃であった。
比較例3
古川電工社製の「MC-PET」(登録商標、ポリエチレンテレフタレート発泡体)を比較例3とした。なお、「MC-PET」は、古川電工社製の「C-PET」(登録商標、ポリエチレンテレフタレート)を発泡させたものである。
参考例1
実施例1で用いた熱可塑性ポリウレタンの未発泡体を参考例1とした。
実施例1〜4及び比較例1〜3の発泡体、ならびに参考例1の未発泡体の物性を、以下の試験例3〜8の方法に従って調べた。結果を表3に示す。
〔試験例3〕(平均気泡径及び気泡径標準偏差)
サンプルに鋏で小さな切り口を入れ、液体窒素につけて凍結した後、ペンチで挟んで割断した。割断した切断面が測定面となるように試料台の上に貼り付け、Pdコーティングを行った後、S-4000型FE-SEM(日立製作所製)で気泡を撮影した。撮影した写真を画像処理し、無作為に150個の気泡を有する写真画像の視野を選択し、その中の100個以上の全ての気泡について、各気泡の長径と短径を測定し、それらの結果から拡大倍率に基づく換算により、気泡を球と仮定して、長径と短径の算術平均を気泡径とし、測定した気泡の気泡径の算術平均及びその分布より平均気泡径及び気泡径の標準偏差を算出し、平均気泡径(μm)として求めた。なお、長径とは、拡大写真を選択した各気泡において最も長い軸方向長さを意味し、短径とは、前記気泡において最も短い軸方向の長さを意味する。
〔試験例4〕(貯蔵弾性率)
上記試験例1と同様にして測定した。
〔試験例5〕(表層の形状確認)
試験例3で使用したサンプルの切断面をキーエンスデジタルマイクロスコープ(倍率:1000)で観察することにより、表層におけるスキン層の形成を確認した。スキン層が形成されている場合を○、スキン層が形成されていない場合を×として評価した。
〔試験例6〕(気泡の体積含有率)
同一の配合組成である発泡処理前のシートと、発泡処理後の発泡体について、各サンプルの重量を測定した後、各サンプルを水中に浸漬することにより増加する体積を測定した。これらの結果を下記式(I)及び(II)に代入して、各サンプルの密度(g/cm)及び気泡の体積含有率を求めた。
密度(g/cm)=重量(g)/増加した体積(cm) (I)
気泡の体積含有率(%)=[1−(ρf/ρp)]×100 (II)
ρf:発泡処理後の発泡体の密度
ρp:発泡処理前のシートの密度
なお、比較例3の測定では、発泡処理前のシートとして、古川電工社製の「C-PET」(登録商標、ポリエチレンテレフタレート)を使用した。
〔試験例7〕(気泡数密度)
発泡体1cmあたりに気泡が何個含まれているかを表す指標である。これは、発泡処理前のシートの密度と、発泡処理後の発泡体の密度及び平均気泡径とから算出される。この算出方法は、例えば、NanoLetts 1,503(2001)に開示されているが、本実施例における発泡体の気泡はほぼ球状であったことから、下記式(III)に上記で得られた気泡の体積含有率と平均気泡径を代入することにより、気泡数密度を算出した。
気泡数密度(個/cm)=(X/100)/{(4/3)π×[(d/2)×10-43} (III)
X:気泡の体積含有率(%)
d:平均気泡径(μm)
なお、比較例3の測定では、発泡処理前のシートとして、古川電工社製の「C-PET」(登録商標、ポリエチレンテレフタレート)を使用した。
〔試験例8〕(反射率)
JIS Z 7822(分光立体角反射率)に従って測定した。但し、発泡前の厚みは2mmであった。
Figure 0005209225
前記表3に示すように、実施例1〜4の本発明のポリウレタン発泡体は、平均気泡径が極めて小さく、また、気泡径標準偏差も小さいというものであった。このため、400nm及び700nmの波長を有する光に対する反射率がいずれも90%以上という優れたものであった。
本発明のポリウレタン発泡体は、自動車向けの衝撃吸収材、制振材、シール部材、表面保護部材、光学器材等の様々な工業用途に好適に使用することができる。

Claims (7)

  1. 分子量150以下の〔ポリオール(A−1)〕及び分子量400以上の〔ポリオール(A−2)〕を含有するポリオール成分(A)と、ポリイソシアネート成分(B)とを反応させて得られるポリウレタンの発泡体であって、平均気泡径が0.5μm以下の微細気泡を有するコア部とスキン層からなり、〔ポリオール(A−2)〕と、〔ポリオール(A−1)〕にポリイソシアネート成分(B)を加えたものとの重量比{〔ポリオール(A−2)〕/[〔ポリオール(A−1)〕+ポリイソシアネート成分(B)]}が50/50〜10/90であるポリウレタン発泡体。
  2. ポリイソシアネート成分(B)が、脂肪族系のイソシアネート基を有する化合物であり、分岐鎖もしくは芳香族環以外の環構造を有する化合物である、請求項1記載のポリウレタン発泡体。
  3. 〔ポリオール(A−1)〕及び〔ポリオール(A−2)〕を含有するポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)との反応生成樹脂内に、加圧状態で気体を溶解させた後、該加圧を開放して前記樹脂中に気泡を発生させる、請求項1又は2記載のポリウレタン発泡体の製造方法。
  4. 気体が超臨界もしくは亜臨界状態である、請求項3記載の製造方法。
  5. 気体を溶解させる温度又は気泡を発生させる温度が、〔ポリオール(A−1)〕とポリイソシアネート成分(B)を主成分とするセグメントのガラス転移点以下である、請求項3又は4記載の製造方法。
  6. 分子量400未満の〔ポリオール(A−1)〕及び分子量400以上の〔ポリオール(A−2)〕を含有するポリオール成分(A)と、ポリイソシアネート成分(B)とを反応させて得られるポリウレタンの発泡体であって、平均気泡径が1.0μm以下の微細気泡を有するコア部とスキン層からなるポリウレタン発泡体からなる光反射体。
  7. 400〜700nmの全波長領域に渡って入射光に対する反射率が90%以上である請求項6記載の光反射体。
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