JP4987463B2 - 発泡熱可塑性樹脂の製造方法 - Google Patents

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本発明は、発泡熱可塑性樹脂の製造方法に関する。さらに詳しくは、例えば、自動車向けの衝撃吸収材、制振材、シール部材、表面保護部材等の様々な工業用途に好適に用いられる発泡熱可塑性樹脂の製造方法、及び該製造方法により得られる発泡熱可塑性樹脂に関する。
従来、熱可塑性樹脂の発泡体(以下、「発泡熱可塑性樹脂」という)の製造方法として、発泡技術に着目した技術が報告されている。例えば、特許文献1に開示されている熱可塑性ポリウレタン発泡体は、特定のウレタン系熱可塑性エラストマーとその他の熱可塑性エラストマーを任意の組成比で配合したウレタン系熱可塑性エラストマー組成物を、二酸化炭素を用いて発泡させている。
特開2002−201301号公報
しかしながら、これら従来技術に拠って得られる発泡熱可塑性樹脂は、永久伸び、ヒステリス、セルの均一性、及び耐熱性に優れるものの、引張り強度に劣るという問題がある。
本発明の課題は、未発泡体との比較における引張り強度の低下率が小さい発泡熱可塑性樹脂の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、発泡熱可塑性樹脂の引張り強度を向上させるためには、前記発泡樹脂が有する気泡の微細化、及び気泡数密度の増加(単位体積あたりの気泡数の増加)を両立する必要があると考え、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂を含有する組成物にシルセスキオキサンを含有させることにより、得られる発泡熱可塑性樹脂が、未発泡体との比較における引張り強度の低下率が小さいことを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
〔1〕 熱可塑性樹脂を含有する組成物に、加圧状態で気体を溶解させた後、該加圧状態から減圧して前記組成物中に気泡を発生させる発泡熱可塑性樹脂の製造方法であって、前記組成物がシルセスキオキサンを含有してなる、発泡熱可塑性樹脂の製造方法、及び
〔2〕 前記〔1〕記載の製造方法によって得られ、平均気泡径が1.5μm以下、気泡の体積含有率が1%以上である発泡熱可塑性樹脂
に関する。
本発明により、未発泡体との比較における引張り強度の低下率が小さい発泡熱可塑性樹脂を得ることができる。
本発明の発泡熱可塑性樹脂の製造方法は、熱可塑性樹脂を含有する組成物(以下、「熱可塑性樹脂含有組成物」という)に、加圧状態で気体を溶解させた後、該加圧状態から減圧して前記組成物中に気泡を発生させる発泡熱可塑性樹脂の製造方法であって、前記組成物がシルセスキオキサンを含有することに大きな特徴を有する。
本発明により得られる発泡熱可塑性樹脂は、シルセスキオキサンを熱可塑性樹脂と併用することにより、微細な気泡径の気泡を有し、かつ、気泡数密度を高くする(体積当たりの気泡数が多い)ことが可能となり、未発泡体との比較における引張り強度の低下率が小さいものとなる。気泡は発泡熱可塑性樹脂とシルセスキオキサンとの界面で発生すると推定される。引張り強度の低下率が小さい発泡熱可塑性樹脂が得られる理由は定かではないが、シルセスキオキサンを含有することにより、熱可塑性樹脂含有組成物の粘弾性が小さくなることや、前記組成物と溶解させる気体との親和性が高くなることが気泡の微細化に寄与し、さらにシルセスキオキサンが気泡の核剤となって、気泡数密度の向上に寄与していると考えられる。
<シルセスキオキサン>
本発明に使用するシルセスキオキサンは、1個の珪素原子が3個の酸素と結合した単位を基本構成単位とするポリシロキサンであり、ランダム構造、ラダー状構造及びケージ状構造の各構造を有する化合物が例示される。ランダム構造及びラダー状構造を有する化合物としてはポリメチルシルセスキオキサン、ポリメチルフェニルシルセスキオキサン、ポリフェニルシルセスキオキサン等が挙げられる。ケージ状構造を有する化合物としては、ヘキシルペンタシクロシルセスキオキサン、オクタメチルフェニルシルセスキオキサン、オクタフェニルシルセスキオキサン、オクタフェニルシクロシルセスキオキサン等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を適宜組合せて、熱可塑性樹脂含有組成物のフィラーとして用いることができる。
シルセスキオキサンの形状は、特に制限されないが、粒子であることが好ましい。発泡体の製造における気泡の核剤としての機能を考慮すると、シルセスキオキサンの一次粒子の平均粒子径は、単位重量あたりの添加個数を多くする観点から、10000nm以下が好ましく、1000nm以下がより好ましく、500nm以下がさらに好ましく、核剤として機能する観点から、10nm以上が好ましく、50nm以上がより好ましく、100nm以上がさらに好ましい。これらの観点から、シルセスキオキサンの一次粒子の平均粒子径は、10〜10000nmが好ましく、50〜10000nmがより好ましく、100〜1000nmがさらに好ましく、100〜500nmがさらに好ましい。また、二次粒子の平均粒子径は、1〜500μmが好ましく、5〜300μmがより好ましい。
シルセスキオキサンの一次粒子の平均粒子径は、以下の方法によって測定できる。まず、走査型電子顕微鏡(電界放射型電子顕微鏡 商品名:S−4000、日立製作所製)により、シルセスキオキサンの拡大写真を撮影する。そして、前記拡大写真から、一次粒子そのもの、もしくは、二次凝集した一次粒子集合体から一次粒子を100個選択し、各一次粒子について長軸方向の直径と短軸方向の直径とをそれぞれ測定する。得られた長軸方向の直径と短軸方向の直径を算術平均し、拡大倍率に基づく換算により各一次粒子の粒子径を算出する。そしてこれらの各一次粒子の粒子径の算術平均によって一次粒子の平均粒子径を求めることができる。なお、前記長軸方向の直径とは、拡大写真の選択した各一次粒子において最も長い軸方向の長さを意味し、短軸方向の直径とは、前記各一次粒子において最も短い軸方向の長さを意味する。なお、二次粒子の平均粒子径の測定も走査型電子顕微鏡の拡大倍率を変えて、二次粒子を100個選択する以外は、一次粒子の場合と同様にして行う。
<熱可塑性樹脂>
本発明に使用する熱可塑性樹脂としては、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。これらのなかでは、発泡後の樹脂物性の設計、及び制御の観点から、ポリウレタンが好ましい。
ポリウレタンとしては、特に制限されず、分子中にウレタン結合(−NH−COO−)、尿素結合、ビュレット結合、アロファネート結合等を有する従来公知のポリウレタン樹脂が挙げられる。中でも、熱可塑性樹脂として使用するポリウレタン樹脂としては、シルセスキオキサンとの溶融混練性、押し出しや加工の容易性の観点から、熱可塑性ポリウレタン樹脂(thermoplastic polyurethane:TPU)が好ましい。
熱可塑性ポリウレタン樹脂は、架橋構造が少ないため熱可塑性を有するが、かかるポリウレタン樹脂は、活性水素を有する化合物(以下、「化合物A」という)とイソシアネート基(−N=C=O)を有する化合物(以下、「化合物B」という)とを反応させる、従来公知の方法により製造することができる。従って、前記化合物A及び化合物Bの種類と量とを選択することにより、熱可塑性ポリウレタン樹脂としては、例えば、ポリエステル系ウレタン、ポリエーテル系ウレタン等を製造することができる。これらのなかでは、微細発泡の観点から、ポリエステル系ウレタンが好ましく、ポリエステル系ウレタンは、ポリエステルポリオールの含有量が50重量%以上である化合物Aを原料として用いて得ることができる。
前記化合物Aの活性水素としては、特に制限されないが、水酸基(−OH)やアミノ基(例えば、−N(R)H、−NH)等の活性水素が挙げられる。化合物Aは、前記活性水素を有していれば、特に制限されないが、強度、制振性、衝撃吸収性、断熱性等に優れる発泡ポリウレタンを得る観点から、1分子内に2個以上の活性水素を有し、かつ、数平均分子量が400未満(好ましくは、150以下)の化合物(以下、「化合物A−1」という)と、1分子内に2個以上の活性水素を有し、かつ、数平均分子量が400以上20,000未満(好ましくは、800以上10,000未満)の化合物(以下、「化合物A−2」という)とを含むことが好ましい。
化合物A−1としては、公知の架橋剤、鎖延長剤等が挙げられ、具体例としては、強度やゴム弾性を十分に両立できることから、エチレングリコール、プロピレングリコール及び1,4−ブタンジオール、ならびに、それらのオリゴマー(例えば、ポリテトラメチレングリコール(PTMG))等が挙げられる。他方、化合物A−2としては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール等のポリオールが挙げられ、中でも、カルボニル基等の極性基を含むポリオールであるポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が好ましく、特にポリエステルポリオールが好ましい。このようなポリオールは、後述する発泡処理工程において、高圧ガスや超臨界流体との親和性をさらに向上することができるので好ましい。なお、化合物Aとしては、化合物Bとの反応を妨げない範囲で、さらに他の反応成分や添加剤を含んでもよい。
化合物Bとしては、イソシアネート基を有する化合物であれば特に制限されず、いわゆるイソシアネートが使用でき、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
化合物Bの市販品としては、BASFジャパン社製「エラストラン」、ディーアイシーバイエルポリマー社製「バンデックス」、花王社製「エディーフォーム」等が挙げられる。
本発明の発泡熱可塑性樹脂の製造方法において、前記熱可塑性樹脂の種類は何ら制限されないが、熱可塑性樹脂の種類を選択することによって、シルセスキオキサンの使用による前述のような効果が得られるだけでなく、さらに発泡熱可塑性樹脂の特性を変化させることができる。すなわち、熱可塑性樹脂の組成以外、例えば、シルセスキオキサンの種類や、処理条件等を同じに設定して本発明の製造方法により発泡熱可塑性樹脂を作製した場合、例えば、ポリエステルポリオールを化合物Aとして得られるポリウレタン樹脂を熱可塑性樹脂として使用すれば、ポリエ−テルポリオールを化合物Aとして得られるポリウレタン樹脂を熱可塑性樹脂として使用するよりも、気泡径をより小さくでき、また、気泡の体積含有率が同じであっても単位体積あたりに含まれる気泡の数をより多くすることができる。この点から、前記化合物A中にポリエステルポリオールを50重量%以上含有することが好ましい。
<熱可塑性樹脂含有組成物>
発泡熱可塑性樹脂の原料となる熱可塑性樹脂含有組成物は、前記熱可塑性樹脂と前記シルセスキオキサンを含有する混合物である。
前記組成物における熱可塑性樹脂の含有量は、特に制限されないが、熱可塑性樹脂特有の物性を保持する観点から、好ましくは60重量%以上であり、より好ましくは80重量%以上である。また、前記組成物におけるシルセスキオキサンの含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部が好ましく、制振性、衝撃吸収性及び断熱性にさらに優れる発泡熱可塑性樹脂が得られることから、0.3〜40重量部がより好ましく、0.5〜20重量部がさらに好ましい。
熱可塑性樹脂含有組成物は、熱可塑性樹脂とシルセスキオキサンの他に、可塑剤、活剤、帯電防止剤、防曇剤、酸化防止剤、耐候性付与剤、着色剤、有機もしくは無機フィラー等の添加剤を含んでもよい。
熱可塑性樹脂含有組成物を調製する方法としては、例えば、予め熱可塑性樹脂原料とシルセスキオキサンとを混合した後に、熱可塑性樹脂を製造する方法、熱可塑性樹脂の製造後にシルセスキオキサンを混合する方法等が挙げられるが、特に限定はない。また、後者の方法における熱可塑性樹脂とシルセスキオキサンとの混合は、シルセスキオキサンの分散性と作業性の観点から、二軸押出機等を用いて溶融混練しておくことが好ましい。
<発泡熱可塑性樹脂の製造方法>
本発明の発泡熱可塑性樹脂の製造方法は、熱可塑性樹脂含有組成物に、加圧状態で気体を溶解させた後、該加圧状態から減圧して前記組成物中に気泡を発生させる方法であり、発泡処理が施される熱可塑性樹脂含有組成物に、前記シルセスキオキサンが含有されていれば、その他の工程や条件等は何ら制限されない。
以下に、本発明の方法を具体的に説明する。まず、熱可塑性樹脂含有組成物を準備し、これをペレット化して、射出成形機等により、所望の形状に成形する。そして、前記組成物を加圧下に存在させることにより、この成形した組成物に気体を溶解させることが可能となり、その後、前記組成物の加圧環境を減圧することにより、前記組成物中に溶解した気体が気泡として出現するため、発泡状の組成物(発泡熱可塑性樹脂)を得ることができる。発泡前の熱可塑性樹脂含有組成物の形状は、気体を均一に溶解させる観点から、厚さ10mm以下のシート状が好ましく、0.5〜10mmがより好ましく、1〜5mmがさらに好ましい。
加圧下における圧力条件は、特に制限されず、気体の種類や温度に応じて適宜決定することができるが、特に、気体種(ガス種)と熱可塑性樹脂との親和性を向上する観点から、前記気体を超臨界状態にする条件であることが好ましい。具体例としては、1〜40MPaの範囲が好ましい。なお、前記「超臨界状態」とは、一般に、圧力が臨界圧力以上であり、かつ、温度が臨界温度以上である状態を意味し、超臨界状態下とは、加圧下の下位概念である。
減圧とは、気体を溶解させた加圧下での圧力より低くすることであり、さらに溶解した気体が気泡として発生する時の圧力のことである。常圧まで減圧することも含まれる。
前記気体種としては、特に制限されないが、二酸化炭素や窒素が好ましく、熱可塑性樹脂への親和性(拡散速度)が高いことから、二酸化炭素がより好ましい。例えば、前記気体種が二酸化炭素の場合、圧力が二酸化炭素の臨界圧力(7.38MPa)以上であり、かつ、温度が臨界温度(31.1℃)以上である条件であれば、二酸化炭素が超臨界状態となるため好ましい。より具体的には、温度が40〜180℃、及び、圧力が7.38〜40MPaである条件が好ましく、温度が80〜170℃、及び、圧力が10〜30MPaである条件がより好ましい。また、気体種が窒素ガスの場合、窒素ガスの臨界圧力が3.40MPaであり、かつ、臨界温度が−147℃であるため、具体的には、温度が−140℃〜180℃、及び、3.4〜30MPaである条件が好ましい。気体が熱可塑性樹脂含有組成物に加圧溶解されるまで、臨界状態の温度と圧力を保持することが好ましい。熱可塑性樹脂含有組成物の形状により臨界状態の温度と圧力を保持する時間を調整すればよいが、30分以上が好ましく、1〜48時間がより好ましく、1〜24時間がさらに好ましい。熱可塑性樹脂がウレタンの場合は保持時間は1〜5時間がさらに好ましい。
本発明の製造方法において、熱可塑性樹脂とシルセスキオキサンとを併用することにより、従来の製造方法と比較して、気泡径がより小さく、また、単位体積あたりの気泡数がより多い発泡熱可塑性樹脂を得ることが可能となる。得られる発泡熱可塑性樹脂の気泡径や前記気泡数の制御方法は特に制限されないが、例えば、熱可塑性樹脂含有組成物に溶解した気体が気泡として発生する時の温度を低くすると気泡径を小さくすることが可能となる。熱可塑性樹脂含有組成物に溶解させる気体の量を多くすることにより、また、シルセスキオキサンの含有量を増やすことにより気泡の数を増やすことが可能となる。
従って、本発明はまた、本発明の製造方法により得られる発泡熱可塑性樹脂を提供する。
<本発明の発泡熱可塑性樹脂>
本発明の発泡熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂とシルセスキオキサンを含むことを特徴とし、本発明の製造方法により得ることができる。本発明の発泡熱可塑性樹脂は、前述のようにシルセスキオキサンを使用して製造されることから、シルセスキオキサンを未使用である以外は、樹脂の組成や処理条件が同じである製造方法(いわゆる従来法)で得られた発泡体と比較して、気泡径がより小さく、また、気泡の体積含有率が同じであっても単位体積あたりに含まれる気泡数がより多い。このため、本発明の発泡熱可塑性樹脂によれば、以下のような顕著な効果も実現可能である。すなわち、本発明の発泡熱可塑性樹脂は、本発明よりも相対的に大きな気泡を有する発泡熱可塑性樹脂と比較して、発泡による強度低下がより抑制され、さらに耐折曲げ性に優れると解される。さらに、気泡を多く含有することからより軽量であり、また、気泡が非常に微細であってその形状もほぼ球状であることから、従来の発泡熱可塑性樹脂では実現できなかった光学特性や断熱性能の発揮も可能である。なお、本発明の発泡熱可塑性樹脂において「気泡」とは、当該技術分野において「セル」ともいう。発泡体は、通常、空洞になった気泡とそれらを仕切る隔膜から構成されるが、本発明における気泡は、個々の気泡が完全に膜に仕切られた気泡のみでもよいし、複数の気泡が連通している気泡を含んでもよい。
本発明の発泡熱可塑性樹脂における気泡の平均気泡径は、特に制限されないが、強度、制振性、衝撃吸収性及び断熱性等の効果が期待できることから、好ましくは1.5μm以下であり、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.8μm以下、特に好ましくは0.5μm以下である。また、ポリウレタン等の透明な熱可塑性樹脂を用い、平均気泡径が200nm以下の場合には、光が気泡に遮られることなく透過できる発泡性熱可塑性樹脂が得られる。この場合、透明性にも優れるため、本発明の発泡熱可塑性樹脂は透明性が必要となる用途へも適用可能となる。なお、本発明の発泡熱可塑性樹脂は、前述のような製造方法により、従来法と比較して容易に微細な気泡径を形成できることから、上述のような気泡径をも実現することが可能である。
前記平均気泡径は、以下の方法により測定することができる。まず、走査型電子顕微鏡(電界放射型電子顕微鏡 商品名:S−4000、日立製作所製)により、発泡熱可塑性樹脂の拡大写真を撮影する。そして、前記拡大写真から、100個の気泡を選択し、それぞれの長軸方向の直径と短軸方向の直径とを測定する。それらの結果から拡大倍率に基づく換算により各気泡の気泡径を算出し、これらの気泡径の算術平均によって平均気泡径を求めることができる。なお、前記長軸方向の直径とは、拡大写真の選択した各気泡において最も長い軸方向の長さを意味し、短軸方向の直径とは、前記各気泡において最も短い軸方向の長さを意味する。
本発明の発泡熱可塑性樹脂における気泡の体積含有率は、強度及び耐折曲げ性の効果が期待できることから、好ましくは1%以上であり、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上、特に好ましくは15%以上である。また、その上限は特に制限されないが、10000%以下が好ましく、より好ましくは5000%以下であり、さらに好ましくは3000%以下である。この体積含有率は、後述する実施例に記載の方法により測定する。
本発明の発泡熱可塑性樹脂は、強度及び耐折曲げ性に優れるため、断熱フィルム、保護フィルム、光反射板等の用途に好適に使用できる。
熱可塑性樹脂としては、熱可塑性ポリウレタンA(BASFジャパン社製:商品名エラストランC74D;エステル系ウレタン)を予め、100℃の乾燥エアー雰囲気下で15時間放置し乾燥させたものを使用した。
フィラーとしては、下記表1に示すものをそのまま使用した。
Figure 0004987463
下記表2の配合となるように、熱可塑性ポリウレタンAと各フィラーとを、ラボプラストミル(東洋精機社製)を用いて170℃で混合した。混合した樹脂を金型(120mm×60mm×2mm)に入れて、220℃でホットプレスし、所定の大きさのシートとした。シートを前記金型から取り出した後、120℃の乾燥エアー雰囲気下で3時間放置して、熱可塑ウレタンシートを作成した。
Figure 0004987463
次に、シートに発泡処理を施す。即ち、得られたシートを内容積1000cmのオートクレーブ中に投入し、これに、表3に示す温度及び20MPaの条件下で、超臨界状態の二酸化炭素を3時間含浸させた。その後、圧力開放速度2MPa/秒で前記オートクレーブ内の圧力を開放させることによって大気圧まで減圧して、発泡処理を行い、実施例1〜2及び比較例1〜2の発泡体を得た。得られた発泡体の物性を、以下の試験例1〜6の方法に従って調べた。結果を表3に示す。なお、実施例1〜2は、それぞれシルセスキオキサンを添加したウレタンシートNo.1〜2に発泡処理を施した発泡体であり、比較例1は、フィラーを添加しないウレタンシートNo.3の発泡体、比較例2は、フィラーとして親水性シリカを添加したウレタンシートNo.4の発泡体である。また、発泡処理を施す前の実施例1で用いたウレタンシートを参考例1として、同様にして物性を調べた。
試験例1〔貯蔵弾性率〕
動的粘弾性測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、商品名DMS−6100)を用いて、周波数10Hz、昇温速度2℃/minの条件下における−100〜180℃の温度領域の貯蔵弾性率を測定した。25℃における結果を表3に示す。
試験例2〔平均気泡径〕
サンプルの写真を走査型電子顕微鏡(日立製作所製、商品名:S−4000)を用いて撮影し、撮影した写真を画像処理し、前述のようにして平均気泡径(μm)を求めた。
試験例3〔気泡の体積含有率〕
同一の配合組成である発泡処理前の熱可塑ウレタンシートと、発泡処理後の発泡体について、各サンプルの重量を測定した後、各サンプルを水中に浸漬することにより増加する体積を測定した。これらの結果を下記式(I)及び(II)に代入して、各サンプルの密度(g/cm)及び気泡の体積含有率を求めた。
密度(g/cm)=重量(g)/増加した体積(cm) (I)
気泡の体積含有率(%)=[1−(ρf/ρp)]×100 (II)
ρf:発泡処理後の発泡体の密度
ρp:発泡処理前のシートの密度
試験例4〔気泡数密度〕
発泡体1cmあたりに気泡が何個含まれているかを表す指標である。これは、発泡処理前のシートの密度と、発泡処理後の発泡体の密度及び平均気泡径とから算出される。この算出方法は、例えば、NanoLetts.2001;1:503に開示されているが、本実施例における発泡体の気泡はほぼ球状であったことから、下記式(III)に上記で得られた気泡の体積含有率と平均気泡径を代入することにより、気泡数密度を算出した。
気泡数密度(個/cm)=(X/100)/{(4/3)π×[(d/2)×10−4} (III)
X:気泡の体積含有率(%)
d:平均気泡径(μm)
試験例5〔引張り強度低下率〕
島津製作所製 AUTOGRAPH AGS−500Gを用いて引張り試験を行った。サンプルは2号ダンベルで打ち抜き、引張り速度500mm/minで試験を行った。試験で得られた破断強度について、参考例1を基準とした場合の破断強度の低下率を下記式(IV)より算出した。
破断強度の低下率(%)=〔(1−サンプル/参考例1)×100〕 (IV)
試験例6〔耐折曲げ性〕
サンプルを2つに折り曲げた時の状態を目視で評価した。外観変化が無ければ○、折れたり、ヒビ割れが発生したりすれば×とした。
Figure 0004987463
前記表3に示すように、フィラー未添加の比較例1、親水性シリカを使用した比較例2と比較して、シルセスキオキサンを使用した各実施例の発泡ポリウレタン樹脂は、平均気泡径が極めて小さく、気泡数密度(体積当たりの気泡数)も多いという結果が得られた。このため、発泡による引張り強度の低下率も低減できた。
本発明の製造方法によって得られた発泡熱可塑性樹脂は、自動車向けの衝撃吸収材、制振材、シール部材、表面保護部材、光反射板等の様々な工業用途に好適に使用することができる。

Claims (4)

  1. 熱可塑性樹脂を含有する組成物に、加圧状態で気体を溶解させた後、該加圧状態から減圧して前記組成物中に気泡を発生させる発泡熱可塑性樹脂の製造方法であって、前記組成物がシルセスキオキサンを含有し、前記熱可塑性樹脂がポリウレタン樹脂である、発泡熱可塑性樹脂の製造方法。
  2. シルセスキオキサンの含有量が、熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.1〜50重量部である請求項1記載の製造方法。
  3. 加圧状態の圧力が1〜40MPaである請求項1又は2記載の製造方法。
  4. 請求項1〜いずれか記載の製造方法によって得られ、平均気泡径が1.5μm以下、気泡の体積含有率が1%以上である発泡熱可塑性樹脂。
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