JP5207291B2 - 樹脂組成物、低複屈折光学用フィルムおよび低複屈折光学用フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、これらの先行技術では、セルロースエステル系樹脂と可塑剤の種類や量を組み合わせることにより、複屈折を任意に調整することのできる技術は開示されてはいない。
ここでセルロースエステル系樹脂としては、セルロースアセテートブチレートおよび/またはセルトースアセテートプロピオネートが好ましい。
また、本発明の樹脂組成物は、(A)セルロースエステル系樹脂90重量%と(B)可塑剤10重量%からなる樹脂組成物の最長緩和時間が好ましくは1,600秒以下である。
さらに本発明の樹脂組成物は、(A)セルロースエステル系樹脂90重量%と(B)可塑剤10重量%からなる樹脂組成物のtanδのピークトップ値は、好ましくは0.30以上、0.98未満の範囲である。
次に、本発明は、上記樹脂組成物を溶融押出することを特徴とする低複屈折光学用フィルムの製造方法に関する。
ここで、上記樹脂組成物を溶融押出する際に、以下の(1)または(2)から選ばれたプロセスを行う低複屈折光学用フィルムの製造方法であることが好ましい。
(1)溶融した樹脂組成物を内層とし、その片表層面もしくはその両表層面にあらかじめ個体フィルムに成形した異種ポリマーを積層して押出し、積層フィルムの成形後に片表層面もしくは両表層面に積層された異種ポリマーを剥離する。
(2)樹脂組成物を内層とし、その片表層面もしくは両表層面に外層として溶融状態の異種ポリマーを積層して押出し、さらにその片表層面もしくはその両表層面にあらかじめ個体フィルムに成形した異種ポリマー(溶融状態の異種ポリマーと同一の樹脂からなる異種ポリマーであっても、異なる樹脂からなる異種ポリマーであっても良い)を積層して押出し、積層フィルムの成形後に片表層面もしくはその両表層面に積層された異種ポリマーを剥離する。
次に、本発明は、本発明の上記樹脂組成物を溶融押出法により得られる、低複屈折光学用フィルムに関する。
ここで、溶融押出法によって得られる低複屈折光学用フィルムは、一軸延伸されていても、二軸延伸されていてもよい。
本発明の低複屈折光学用フィルムは、上記樹脂組成物を、溶融押出したのち、弾性率(E’)が107Paでの温度で延伸倍比2.5で延伸した場合の複屈折率(Δn)が好ましくは6.0×10−4以下である。
本発明に用いる(A)セルロースエステル系樹脂は、セルロースエステル系誘導体であれば特に限定を受けないが、透明性に優れることから、セルロースアセテートブチレートおよび/またはセルロースアセテートプロピオネートを用いることが好ましく、さらに、アセチル含量、プロピオニル含量およびブチリル含量の総和が(A)セルロースエステル系樹脂に対して40〜99重量%であることが優れた透明性材料を得るために好ましい。さらに好ましくは、40〜60重量%である。なお、アセチル含量などの測定方法は、ASTMD 817に詳細が記述されている。
また、セルロースアセテートブチレートおよび/またはセルロースアセテートプロピオネートにおけるアセテート、プロピオネート、およびブチレートの平均置換度としては、合計で2.0以上であることが優れた透明性材料を得るために好ましい。
本発明に使用される(A)セルロースエステル系樹脂としては、セルロースアセテートプロピオネートは、イーストマン社製の商品名CAP−482−20が挙げられ、セルロースアセテートブチレートは、イーストマン社製の商品名CAB−381−20が挙げられる。
本発明に用いられる(B)可塑剤は、スモール(Small)の方法に従って計算した溶解度パラメーターの値が9.0以下、好ましくは6.0〜9.0の可塑剤である。
ここで、Smallの方法は、液体の溶解度パラメーターから、分子を構成する原子または原子団、結合型など構成グループについて、モル吸引力(molar attraction constants)(Fi)を算出し、分子に対し、各々Fiの加成性を認め、下記式によって、溶解度パラメーター(δ)が算出される。
δ=(ΣFi)/V=(ρΣFi)/M
(式中、Vはモル容積、ρは密度、Mは分子量で高分子では繰り返し単位の値である。)
この溶解度パラメーターの算出方法の詳細は、「秋山三郎、井上隆、西敏夫共著、ポリマーブレンド−相溶性と界面−、第127頁、1987年8月25日発行、(株)シーエムシー刊」に詳述されている。
ここで、最長緩和時間(τd)は、応力緩和時間測定より求められる最も長い緩和時間を表す。緩和時間とは、変形を加えられた分子鎖がその配向状態を記憶している時間の目安であり、応力が初期応力(時間ゼロにおける応力)の1/expになるまでの時間として定義される。このτdは、ブロー成形、発泡成形、熱成形などの加工特性と密接に関連しており、τdが長いほど、加工特性に優れる反面、(A)成分と(B)成分との相溶性に乏しいことを示す。すなわち、本発明の樹脂組成物は、(A)セルロースエステル系樹脂に配合される(B)可塑剤の溶解度パラメーターが9.0以下と(A)成分に対する溶解性に乏しいため、(A)成分90重量%および(B)成分10重量%からなる樹脂組成物のτdは1,600秒以上となる。なお、このτdは、(B)可塑剤の濃度により調整することができる。
上記tanδの値は可塑剤が配合されたセルロース系樹脂において、可塑剤とセルロース系樹脂との相溶性の指標であり、値が低いほど相溶性に乏しいことを意味する。tanδのピークトップ値が0.30未満である可塑剤を使用した場合は、フィルムとした後に可塑剤がブリードアウトすることによる汚染の懸念があり好ましくない。一方、tanδのピークトップ値が0.98を超える可塑剤を使用した場合には、フィルムの複屈折が高くなり偏光板保護フィルムなどの用途に適さないため、好ましくない。
本発明の樹脂組成物を製造する際には、(A)セルロースエステル系樹脂をあらかじめ乾燥しておくことが望ましく、その乾燥条件は任意であり、例えば30〜90℃の温度にて30分〜3日間程度乾燥することが好ましい。また、本発明の樹脂組成物を成形加工する際にも、該樹脂組成物をあらかじめ乾燥しておくことが望ましく、その乾燥条件は任意であり、例えば30〜90℃の温度にて30分〜3日間程度乾燥することが好ましい。
本発明に用いられる帯電防止剤としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリオキシエチレンラウリルジメチルアンモニウム過塩素酸塩、ポリオキシエチレンステアリルジメチルアンモニウム過塩素酸塩、ステアリルジメチル2−ヒドロキシエチルアンモニウム硝酸塩、オレイルアミノプロピルジメチル2−ヒドロキシエチルアンモニウム過塩素酸塩、ステアリルオレイルアミノプロピルジメチル2−ヒドロキシエチルアンモニウム過塩素酸塩、オレイルエチルジメチルアンモニウムエチル硫酸塩などの4級アンモニウム塩;アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルサルフェートナトリウムナトリウム塩、アルキルエーテルサルフェートナトリウム塩、アルキルエーテルサルフェートトリエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートトリエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートナトリウム塩、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アシルメチルタウリン酸ナトリウム、アルキルエーテルスルホン酸ナトリウムなどのアニオン活性剤;グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックポリマー、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリエチレングリコールアルキルアミン、ポリエチレングリコールアルケニルアミンなどの非イオン活性剤;ジメチルアルキルアミン、アルキルジアミノエチルグリシンナトリウムなどの両性活性剤などで、好ましくは、下記式(1)に示すカチオン活性剤である。これらは1種または2種以上を混合して用いることが可能である。
また、上記樹脂組成物には、色調調整のために、染料や顔料を併用しても良い。
上記他の熱可塑性樹脂またはゴムとしては、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、エピクロロヒドリンゴムなどをブレンドすることが可能である。
また、同様に金属ロールが鏡面ロールの場合、樹脂組成物を内層とし、その表面層に積層する溶融状態の異種ポリマーについても、溶融樹脂がゴムロールと接する面側のみ樹脂組成物の溶融物に溶融状態の異種ポリマーが積層された積層体として製造してもかまわない。
なお、原料タンク、原料の投入部、押出機内といった原料の供給、溶融工程を、窒素ガスなどの不活性ガスで置換、あるいは減圧することが好ましい。
延伸製膜するときは、樹脂組成物の(Tg−50)〜(Tg+20)℃の温度で、101〜300%の倍率で延伸することが好ましい。
横延伸する場合、2つ以上に分割された延伸領域で温度差を1〜50℃の範囲で順次昇温しながら横延伸すると、幅方向の物性の分布が低減でき好ましい。さらに横延伸後、フィルムをその最終横延伸温度以下でTg−40℃以上の範囲に0.01〜5分間保持すると幅方向の物性の分布がさらに低減でき好ましい。
熱固定されたフィルムは、通常、Tg以下まで冷却され、フィルム両端のクリップ把持部分をカットし巻き取られる。この際、最終熱固定温度以下、Tg以上の温度範囲内で、横方向および/または縦方向に0.1〜10%弛緩処理することが好ましい。また、冷却は、最終熱固定温度からTgまでを、毎秒100℃以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。冷却、弛緩処理する手段は特に限定はなく、従来公知の手段で行えるが、特に複数の温度領域で順次冷却しながらこれらの処理を行うことがフィルムの寸法安定性向上の点で好ましい。
実施例および比較例中の各種測定を以下に示す。
<溶解度パラメーター>
溶解度パラメーター(δ)は、下記式より算出した。
δ=(ΣFi)/V=(ρΣFi)/M
(式中、Vはモル容積、ρは密度、Mは分子量で高分子では繰り返し単位の値である。)
Fiの値は、「秋山三郎、井上隆、西敏夫共著、ポリマーブレンド−相溶性と界面−、第127頁、1987年8月25日発行、(株)シーエムシー刊」を参考にした。
<最長緩和時間>
応力緩和実験から縦軸を対数、横軸をリニアーとし、長時間領域の応力減衰曲線から傾きを求め、その逆数(緩和時間)を算出した。
<複屈折率>
ライカ社製、偏光顕微鏡を用いて、下記式より算出した。
[Re=Δn(nx−ny)×d より算出]
<tanδ>
動的粘弾性にて貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E’’)を測定し、貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E’’)の比から算出した。
セルロースアセテートプロピオネート(イーストマン社製、商品名CAP−482−20、アセチル含量2.5重量%、プロピオニル含量46.0重量%)90重量部とDOA(大八化学工業社製、商品名DOA)10重量部を内容積60ccのインターナルミキサー(東洋精機製作所社製、ラボプラストミル)にて200℃、回転数30rpmにて5分間混合した。得られた試料を5mm幅のTダイにて1mm厚さのフィルムに成形した。次いで、延伸装置として、(株)ユービーエム製、Rheogel−E4000を用いて、フィルム弾性率(E’)が107Paになる温度(129℃)で1.5倍、2.0倍、2.5倍に延伸し、各種評価に用いた。結果を表1に示す。
セルロースアセテートプロピオネートに配合する可塑剤の種類や量を変える以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、実施例1と同様にしてフィルムを作製して物性を評価した。結果を表1に示す。
実施例1と同様にして樹脂組成物を調製したが、セルロースアセテートプロピオネート100重量%では、上記記載とおり、フィルムの可撓性が損なわれフィルム化できないため、比較例1のみ小型圧縮成形機(テスター産業社製)にてプレスしフィルムを得た。結果を表1に示す。
表1に配合処方に従って樹脂組成物を調製し、実施例1と同様にしてフィルムを得た。結果を表1に示す。
DOA(アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル):大八化学工業社製、商品名DOA(ρ=0.927、M=370)
DOS(セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル):大八化学工業社製、商品名DOS(ρ=0.915、M=427)
DOZ(アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル):大八化学工業社製、商品名DOZ(ρ=0.918、M=413)
TCP(リン酸トリクレジル):大八化学工業社製、商品名TCP(ρ=1.170、M=368)
実施例1と同様の配合物をシリンダー温度とダイ温度を200℃に設定した二軸混練機でペレット化し、樹脂組成物を得た。次いで得られた樹脂組成物ペレットを40mm幅のTダイを備えた単層押出機(シリンダー温度、ダイ温度とも230℃に設定)で溶融押出しし、ゴムロールと金属ロールからなる2本のロールでニップして冷却し、厚さ100μmの樹脂組成物からなるフィルムを得た。
得られた樹脂組成物からなるフィルムは表面平滑性ならびに透明性に優れるものであった。
実施例1と同様の配合物をシリンダー温度とダイ温度を200℃に設定した二軸混練機でペレット化し、樹脂組成物を得た。次いで得られた樹脂組成物ペレットを40mm幅のTダイを備えた単層押出機(シリンダー温度、ダイ温度とも230℃に設定)で溶融押出しした。溶融押出する際に、Tダイより押出された樹脂組成物の溶融物を内層とし、その両表面層を厚さ100μmのあらかじめ成形されたポリプロピレンフィルムで挟み込んで、ゴムロールと金属ロールからなる2本のロールでニップして冷却し積層フィルムを得た。
積層フィルムから、ポリプロピレンフィルムを剥離し、厚さ100μmの樹脂組成物からなるフィルムを得た。
得られた樹脂組成物からなるフィルムは表面平滑性ならびに透明性に非常に優れるものであった。
実施例1と同様の配合物をシリンダー温度とダイ温度を200℃に設定した二軸混練機でペレット化し、樹脂組成物を得た。次いで得られた樹脂組成物ペレットを40mm幅のTダイを備えた三層押出機(いずれも、シリンダー温度、ダイ温度とも230℃に設定)の内層とし、両表層面をポリプロピレン樹脂とする層構成で、三層構造で溶融押出した。
三層構造で溶融押出する際に、Tダイより押出された三層構造の溶融物を内層とし、その両表面層を厚さ100μmのあらかじめ成形された直鎖状低密度ポリエチレン(密度0.94g/cm3)フィルムで挟み込んで、ゴムロールと金属ロールからなる2本のロールでニップして冷却し積層フィルムを得た。
積層フィルムから、ポリプロピレンフィルムと直鎖上低密度ポリエチレンからなる両表層面を剥離し、厚さ100μmの樹脂組成物からなるフィルムを得た。
得られた樹脂組成物からなるフィルムは表面平滑性ならびに透明性に非常に優れるものであった。
Claims (4)
- (A)セルロースアセテートブチレートおよび/またはセルロースアセテートプロピオネートからなるセルロースエステル系樹脂50〜99重量%と、(B)アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジブチルジグリコール、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジブチル、およびセバシン酸ジ−2−エチルヘキシルから選ばれた脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤50〜1重量%[ただし、(A)+(B)=100重量%]を主成分とする樹脂組成物を、以下の(1)または(2)から選ばれるプロセスを行うことを特徴とする光学用フィルムの製造方法。
(1)溶融した樹脂組成物を内層とし、その片表層面もしくはその両表層面にあらかじめ個体フィルムに成形した(A)セルロースエステル系樹脂とは異なる異種ポリマーを積層して押出し、積層フィルムの成形後に片表層面もしくは両表層面に積層された異種ポリマーを剥離する。
(2)樹脂組成物を内層とし、その片表層面もしくは両表層面に外層として溶融状態の(A)セルロースエステル系樹脂とは異なる異種ポリマーを積層して押出し、さらにその片表層面もしくはその両表層面にあらかじめ個体フィルムに成形した異種ポリマー(溶融状態の異種ポリマーと同一の樹脂からなる異種ポリマーであっても、異なる樹脂からなる異種ポリマーであっても良い)を積層して押出し、積層フィルムの成形後に片表層面もしくはその両表層面に積層された異種ポリマーを剥離する。 - 積層して押出した積層フィルムを、異種ポリマーからなる層を剥離する前にゴムロールと金属ロールとからなる二本のロールでニップして圧着する、請求項1記載の光学用フィルムの製造方法。
- 異種ポリマーが、高密度ポリエチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂、低密度ポリエチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合系樹脂、およびポリプロプレン系樹脂から選ばれた、請求項1または2に記載の光学用フィルムの製造方法。
- 樹脂組成物からなる層の厚みが80〜200μmであり、異種ポリマーからなる層の厚みが50〜500μmである、請求項1〜3いずれかに記載の光学用フィルムの製造方法。
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