JP5205139B2 - 回転陽極型x線管装置 - Google Patents

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Description

本発明は、回転陽極型X線管装置に係り、特に、回転陽極用の流体すべり軸受の潤滑剤に液体金属を用いたときに軸受隙間から液体金属が漏洩することのない回転陽極型X線管装置に関する。
一般に、ガリウム/インジウム/スズの合金からなる液体金属は、低融点で、かつ無毒である。このため、近年、工業的に液体金属に水銀を利用している分野でのガリウム/インジウム/スズの合金への置換えが図られている。
ところが、ガリウム/インジウム/スズの合金からなる液体金属は、金属等との親和性が高く、ガリウム/インジウム/スズの合金からなる液体金属の利用に当たって付着性が大きな障害となっている。
このガリウム/インジウム/スズの合金からなる液体金属は、共晶合金であり、他物質との反応性が高く、他物質表面に付着すると、当該液体金属を他物質表面から剥離除去することが困難なものとなっている。
このため、物質表面にガリウム/インジウム/スズの合金からなる液体金属が付着するのを防止するためには、酸化ガリウム、酸化チタンなどの酸化物によるコーティングが必要となっている。
例えば、このガリウム/インジウム/スズの合金からなる液体金属は、従来、水銀が多く使用されていた体温計などで一般的に利用されている。しかしながら、ガリウム/インジウム/スズの合金からなる液体金属は、ガラスにも付着する性質を有している。このため、このガラス表面への付着を防止するために、体温計ガラス管の内側表面に、前述した、酸化ガリウム、酸化チタンなどの酸化物によるコーティングを施している。
また、このガリウム/インジウム/スズの合金からなる液体金属は、蒸気圧が低い性質を有している。このことから、このガリウム/インジウム/スズの合金からなる液体金属は、X線管装置などの真空管内部で使用される潤滑材として用いられることが期待されている。
液体金属としてガリウム合金、インジウム合金又はスズ合金が使用されることについては、既に一般的なことである。そして、この液体金属は、すべり軸受装置の一種である動圧軸受装置、例えば、X線管の回転陽極を回転自在に支持する真空用軸受装置に使用されている(例えば、特許文献1)。
すなわち、この特許文献1には、X線管の回転陽極を回転自在に支持する真空用軸受装置として、一端部が蓋体93によって閉塞された筒状のスリーブ91に、軸92を回転自在に導入し、このスリーブ91と軸92との間及び軸92と蓋体93との間に、液体ガリウム等の潤滑用の液体金属94を充填したものが示されている。
そして、この特許文献1においては、液体金属94がスリーブ91の開口部の内周面及びこの内周面に対向する軸92の外周面に付着するのを防止するため、筒状のスリーブ91の内部に、軸92を相対回転可能に導入し、上記スリーブ91と軸92との間の隙間に、潤滑用の液体金属94を充填しているすべり軸受装置で、スリーブ91の開口部の内周面及びこの内周面に対向する軸92の外周面に、液体金属94が付着するのを防止する酸化膜を形成することが開示されている。
さらに、液体金属94がスリーブ91の開口部の内周面及びこの内周面に対向する軸92の外周面に付着するのを防止する抗湿潤剤として金属酸化物、特に、酸化チタン(TiO)や酸化アルミ(Al)の膜を物理蒸着(PVD:Physical Vapor Deposition)等の方法により成膜する技術や、真空境界近傍の軸受母材表面を酸化させる技術が知られている(例えば、特許文献2)。
特開平11−93946号公報 特開平08−55595号公報
このように、従来技術の特許文献1、特許文献2においては、金属酸化物、特に、酸化チタン(TiO)や酸化アルミ(Al)の膜を形成し、この酸化被膜の撥液作用によって液体金属94の漏洩を防止する構造を提案している。
しかしながら、特許文献1、特許文献2においては、酸化物や酸化膜が剥離しないことについて、また、X線管内部で使用する場合の高真空、高温環境下で酸化物や酸化膜が還元されることがないようにする対策がされていない。
本発明の目的は、回転陽極用の流体すべり軸受の潤滑剤に液体金属を用いても軸受隙間から液体金属が漏洩することなく軸受潤滑性能劣化を生じさせることのない回転陽極型X線管装置を提供することにある。
本発明の目的を達成するために、発明に係る回転陽極型X線管装置は、陰極と該陰極に対向する陽極を有し、前記陰極から放出さる熱電子を前記陽極表面に衝突させてX線を発生するものであって、前記陽極を回転させて前記電子衝突時の前記陽極表面に発生する熱を放熱する回転機構を備え、
前記回転機構は、前記陽極と締結されており軸受回転体を設けた陽極回転軸と、前記陽極回転軸を前記軸受回転体で保持する固定軸と、前記陰極と前記陽極を真空気密して絶縁を保つ外囲器と、前記外囲器の周囲に設けられ前記回転機構を回転させるために回転磁界を発生させるコイルとからなり,
前記回転軸または前記固定軸のいずれか一方を有底円筒構造となし、
前記軸受回転体と前記固定軸との間に潤滑材を充填し、前記陽極回転軸の回転時に前記潤滑材に生じる動圧によって前記軸受回転体と前記固定軸に一定の隙間を保つX線管装置において,
前記潤滑材としてガリウム/インジウム/スズの合金からなる液体金属を用い,
前記軸受回転体と前記固定軸との間の真空内との境界部の前記軸受回転体の表面と前記固定軸の表面の一部に微小な凸部を隙間がない状態で多数設けて撥液性を有した表面を形成して構成したことを特徴としている。
本発明の目的を達成するために、発明に係る回転陽極型X線管装置は、陰極と該陰極に対向する陽極を有し、前記陰極から放出さる熱電子を前記陽極表面に衝突させてX線を発生するものであって、前記陽極を回転させて前記電子衝突時の前記陽極表面に発生する熱を放熱する回転機構を備え、
前記回転機構は、前記陽極と締結されており軸受回転体を設けた陽極回転軸と、前記陽極回転軸を前記軸受回転体で保持する固定軸と、前記陰極と前記陽極を真空気密して絶縁を保つ外囲器と、前記外囲器の周囲に設けられ前記回転機構を回転させるために回転磁界を発生させるコイルとからなり,
前記回転軸または前記固定軸のいずれか一方を有底円筒構造となし、
前記軸受回転体と前記固定軸との間に潤滑材を充填し、前記陽極回転軸の回転時に前記潤滑材に生じる動圧によって前記軸受回転体と前記固定軸に一定の隙間を保つX線管装置において,
前記潤滑材としてガリウム/インジウム/スズの合金からなる液体金属を用い,
前記軸受回転体と前記固定軸との間の真空内との境界部の前記軸受回転体の表面を、クロムを含有した鉄系金属に、露点が10℃以上、40℃以下のWet水素雰囲気で、軸受部品材料の焼鈍し温度または固溶化温度より高温で熱処理して形成したことを特徴としている。
本発明の目的を達成するために、発明に係る回転陽極型X線管装置は、陰極と該陰極に対向する陽極を有し、前記陰極から放出さる熱電子を前記陽極表面に衝突させてX線を発生するものであって、前記陽極を回転させて前記電子衝突時の前記陽極表面に発生する熱を放熱する回転機構を備え、
前記回転機構は、前記陽極と締結されており軸受回転体を設けた陽極回転軸と、前記陽極回転軸を前記軸受回転体で保持する固定軸と、前記陰極と前記陽極を真空気密して絶縁を保つ外囲器と、前記外囲器の周囲に設けられ前記回転機構を回転させるために回転磁界を発生させるコイルとからなり,
前記回転軸または前記固定軸のいずれか一方を有底円筒構造となし、
前記軸受回転体と前記固定軸との間に潤滑材を充填し、前記陽極回転軸の回転時に前記潤滑材に生じる動圧によって前記軸受回転体と前記固定軸に一定の隙間を保つX線管装置において,
前記潤滑材としてガリウム/インジウム/スズの合金からなる液体金属を用い,
前記軸受回転体と前記固定軸との間の真空内との境界部の前記軸受回転体の表面を,クロムを含有した鉄系金属に、露点が10℃以上、40℃以下のWet水素雰囲気で、軸受部品材料の焼鈍し温度または固溶化温度より高温で熱処理して形成したリング状部品を取り付けて、撥液表面を形成したことを特徴としている。
本発明の目的を達成するために、発明に係る回転陽極型X線管装置は、陰極と該陰極に対向する陽極を有し、前記陰極から放出さる熱電子を前記陽極表面に衝突させてX線を発生するものであって、前記陽極を回転させて前記電子衝突時の前記陽極表面に発生する熱を放熱する回転機構を備え、
前記回転機構は、前記陽極と締結されており軸受回転体を設けた陽極回転軸と、前記陽極回転軸を前記軸受回転体で保持する固定軸と、前記陰極と前記陽極を真空気密して絶縁を保つ外囲器と、前記外囲器の周囲に設けられ前記回転機構を回転させるために回転磁界を発生させるコイルとからなり,
前記回転軸または前記固定軸のいずれか一方を有底円筒構造となし、
前記軸受回転体と前記固定軸との間に潤滑材を充填し、前記陽極回転軸の回転時に前記潤滑材に生じる動圧によって前記軸受回転体と前記固定軸に一定の隙間を保つX線管装置において,
前記潤滑材としてガリウム/インジウム/スズの合金からなる液体金属を用い,
前記軸受回転体と前記固定軸の表面全体に微小な凸部を多数設けて撥液性を有した表面を形成し、しかる後、液体金属とよく濡れることが望ましい範囲について前記撥液表面を除去して形成したことを特徴としている。
本発明の目的を達成するために、発明に係る回転陽極型X線管装置は、陰極と該陰極に対向する陽極を有し、前記陰極から放出さる熱電子を前記陽極表面に衝突させてX線を発生するものであって、前記陽極を回転させて前記電子衝突時の前記陽極表面に発生する熱を放熱する回転機構を備え、
前記回転機構は、前記陽極と締結されており軸受回転体を設けた陽極回転軸と、前記陽極回転軸を前記軸受回転体で保持する固定軸と、前記陰極と前記陽極を真空気密して絶縁を保つ外囲器と、前記外囲器の周囲に設けられ前記回転機構を回転させるために回転磁界を発生させるコイルとからなり,
前記回転軸または前記固定軸のいずれか一方を有底円筒構造となし、
前記軸受回転体と前記固定軸との間に潤滑材を充填し、前記陽極回転軸の回転時に前記潤滑材に生じる動圧によって前記軸受回転体と前記固定軸に一定の隙間を保つX線管装置において,
前記潤滑材としてガリウム/インジウム/スズの合金からなる液体金属を用い,
前記軸受回転体と前記固定軸の表面全体に微小な凸部を多数設けて撥液性を有した表面を形成し、しかる後、液体金属とよく濡れることが望ましい範囲について前記撥液表面にNi,Au、Cuのいずれかの金属被膜を形成したことを特徴としている。
本発明によれば、回転陽極用の流体すべり軸受の潤滑剤に液体金属を用いても軸受隙間から液体金属が漏洩することなく軸受潤滑性能劣化を生じさせることのない回転陽極型X線管装置を提供することができる。
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
本件明細書においては、液体金属を利用したX線管装置回転陽極を例にとって説明する。
図1には、本発明に係る回転陽極型X線管装置の実施形態が示されている。
図1において、回転陽極1は、陰極から放出された熱電子が衝突しX線を発生する陽極ターゲット2と、陽極回転軸3と、ターゲット2から流入する熱による軸受劣化防止のための断熱部4、及び液体金属軸受5とによって構成されている。
液体金属軸受5は、固定軸6と、軸受回転体7とによって構成されている。この液体金属軸受5においては、固定軸6と軸受回転体7の嵌合隙間に潤滑剤として液体金属8が挿入されている。
そして、この潤滑剤である液体金属8によって、固定軸6と軸受回転体7との隙間が、回転陽極1の回転時に、液体金属8に発生する動圧によって、一定に保たれるようになっている。
また、固定軸6表面には、螺旋溝が設けられており、この螺旋溝は、発生する動圧を高め、耐荷重性能を高める作用を有している。
なお、図1から明らかなように、陽極回転体9は、陽極ターゲット2と、陽極回転軸3と、断熱部4と、軸受回転体7とを結合したものである。
図1に図示の回転陽極1及び陰極は、外囲器12内に対向して保持され、外囲器12内部は、絶縁のために真空に保たれている。
外囲器12の外部には、回転陽極1を回転させるために、回転陽極1の周囲に回転磁界を発生させるコイル13が設置されている。そして、回転陽極1には、このコイル13により発生した回転磁界によって、陽極回転軸3の表面に渦電流が発生し、この渦電流と回転磁界の作用によって回転可能となっている。
液体金属8を潤滑剤として利用したすべり軸受においては、固定軸6または軸受回転体7のどちらか一方が有底円筒形状を有している。この固定軸6または軸受回転体7のどちらか一方の有底円筒によって固定軸6または軸受回転体7が保持され、軸受回転体7が回転した際に各々の隙間に充填された液体金属8に発生する動圧によって軸受隙間を一定に保ち滑らかな回転を可能にしている。
したがって、固定軸6と軸受回転体7により構成される軸受隙間には、外部との境界面が存在し、この境界部分で潤滑剤は、外部と接することとなる。また、X線管内においては潤滑剤である液体金属8と真空とが接することとなる。このため、この液体金属8と真空との境界部分おける液体金属8が真空中へ漏洩するのを防止することが重要となる。
すべり軸受では軸受回転体7に液体金属8が引かれ流動することにより動圧が発生し、軸受隙間を一定に保ち潤滑されている。このためには軸受材料は、液体金属8と良くなじむ、すなわち良く濡れる材料が適している。
したがって、液体金属8と良く濡れる材料で構成されている軸受母材の上に液体金属8を滴下すると、図2(A)の上段に示すように液体金属8は母材表面全体に流れてしまう。このような状態で、図2(A)の下段に示すように軸受隙間を形成し、液体金属8を充填すると、真空境界部分から漏洩してしまう。
このような液体金属8と真空との境界部分での液体金属8が真空中に漏洩するのを防止する漏洩防止技術として、軸受隙間中の液体金属8、真空境界近傍の固定軸6と軸受回転体7の表面に液体金属8をはじく撥液性のある表面11を形成する方法がある。
液体金属8をはじく撥液性のある表面11が形成されている軸受母材の上に液体金属8を滴下すると、図2(B)の上段に示すように液体金属8は母材表面の濡れない表面11で液体金属8を弾き、液体金属8は、それ自身の表面張力によって表面11上で流れずに留まろうとする。
軸受隙間を形成する固定軸6、軸受回転体7の両方に撥液表面11を形成すると、図2(B)の下段に示すように液体金属8の真空中への漏洩を防止することができる。
図3には、本発明に係る回転陽極型X線管装置の固定軸6および軸受回転体7に形成される撥液表面11の実施例が示されている。
図3は、潤滑材としてガリウム/インジウム/スズの合金からなる液体金属8を用い,軸受母材として金型鋼(SKD11)を用いた、場合の撥液表面の凸部構造が示されている。
図3(A)には、軸受母材が未処理の場合の表面状態が示されており、この軸受母材が未処理の場合には、表面に凹凸は無く液体金属に濡れてしまう。また、図3(B)には、軸受母材に露点27℃のWet水素中、1000℃の処理を施した場合の表面状態が示されており、図3(B)の軸受母材の表面には、金属母材表面に0.5〜3.0μm程度の凸が多数生成されており、液体金属にはほとんど濡れないことが分かる。
また、図3(C)には、図3(B)の撥液性表面が模式的に示されている。
金属母材表面に0.5〜3.0μm程度の凸が多数生成される図3(B)の軸受母材の表面のような凸部構造の表面が撥液性を有する原理は、図3(C)に示すように金属母材表面の凸部が半球に近い形状を呈しており、この金属母材表面に液体金属8が接触した状態でも液体金属8が密集した凸部の奥にまで浸入することができず、凸部表面での点接触のみで支持されている状態となるため、金属母材表面に濡れ広がることが無いためである。
潤滑材としてガリウム/インジウム/スズの合金からなる液体金属8を用いる場合には,凸部の半径、及び高さが0.5〜3.0μm程度であることが望ましい。
このような金属母材表面を形成する方法としては、種々があるが、本実施例においては、露点が10℃以上の40℃以下のWet水素雰囲気中で、金型鋼を利用する場合には、これの焼鈍し温度(約800℃)以上で熱処理をする方法を用いている。
このような金属母材表面に処理を施すと、金型鋼表面に0.5〜3.0μm程度の凸が均一に形成され液体金属8を撥液する表面が形成される。
このような金属母材表面の処理によって撥液性表面を形成すると、金型鋼表面には、凸部以外の部分にクロムが集中して存在し、これに反して凸部にはクロムが希薄であることが分かった。このことから凸部表面形成に合金元素として12%程度添加されているクロムが関係していることがわかる。これらのことから金型鋼以外でもクロムを含有する鉄系合金では同様の効果を期待することができる。
また、本発明においては、露点が10℃以上、40℃以下のWet水素雰囲気中で焼鈍し温度(約800℃)以上で熱処理を施して凹凸表面を生成している。しかしながら、図4に示すように、熱処理を施して凹凸表面を生成する処理条件は、鉄が還元される条件であり、母材表面の酸化は、発生しない。
一方、この熱処理を施して凹凸表面を生成する処理条件は、クロムが酸化される条件にある。
これらのことから、本発明は、従来の単なる酸化膜、酸化物による撥液ではなく、鉄とクロムの還元と酸化条件下で生成される表面の凸構造によるものであることが分かる。
液体金属8を利用した動圧軸受において、軸受隙間の真空境界近傍で、液体金属8に対して撥液性が要求されるのとは逆に軸受隙間内部では液体金属8が軸受回転軸と固定軸表面に良く濡れ、付着する必要がある。
この軸受隙間内部では液体金属8が軸受回転軸と固定軸表面に良く濡れ、付着することが必要なのは、回転軸、固定軸表面に付着した液体金属8が回転軸の回転により引かれ流動することにより、軸受隙間を一定に保つ動圧が発生するからである。
すなわち、軸受隙間内部では、液体金属8が軸受表面に良く濡れるほうが動圧を効率的に発生させることができるためである。
このように液体金属8を利用した動圧軸受において、軸受隙間の真空境界近傍では、液体金属8に対して撥液性を備え、軸受隙間内部では液体金属8が軸受回転軸と固定軸表面に良く濡れ、付着するようにするための実施例を図5〜7に示されている。
図5は、陽極回転軸3の軸受隙間の真空境界近傍を金型鋼、高速度工具鋼などのクロムを含有した鉄系金属で構成される別部品とし、この鉄系金属だけを露点が10℃以上、40℃以下のWet水素雰囲気で、軸受部品材料の焼鈍し温度または固溶化温度より高温で熱処理して撥液表面を設け、陽極回転軸3には処理を施さない部品を組立てるようにしたものである。
この陽極回転軸3の軸受隙間の真空境界近傍を金型鋼、高速度工具鋼などのクロムを含有した鉄系金属で構成される別部品は、図5においては、一枚の板状に形成されたものとなっているか、リング状に形成したものであっても良い。
図6には、軸受回転軸、固定軸を一つの部品として仕上げ、軸受隙間の精度を確保する実施例が示されている。
すなわち、図6は、陽極回転軸3、固定軸6を1次仕上した後、撥液表面を設けるための熱処理を施し、しかる後、2次加工を行い、最終形状に仕上げると供に、真空境界近傍の撥液表面のみを残して軸受隙間内部の表面の撥液表面を除去するして形成したものである。
この真空境界近傍の撥液表面のみを残して軸受隙間内部の表面の撥液表面を除去する際、撥液表面を除去するには、方法としては機械加工による方法、エッチングなどの表面加工により撥液表面を除去する方法等がある。
図7には、軸受回転軸、固定軸を一つの部品として仕上げ、軸受隙間の精度を確保する他の実施例が示されている。
すなわち、図7は、軸受部品形状を仕上げた後に撥液表面を設けるための熱処理を施し、その後濡れ性が必要な範囲にNi、Au、Cuなど液体金属8との濡れ性が良い金属の薄膜をコーティングして形成したものである。
このコーティング手法としては、メッキなどの他に、真空蒸着によるコーティングなどがある。
本発明は、X線管装置ばかりでなく、液体金属の特性を利用した装置で、撥液性が要求されるあらゆる部材、部品に適用することができる。
本発明に係る回転陽極型X線管装置の全体構成図である。 撥液表面による液体金属漏洩防止の原理説明図である。 軸受母材表面の未処理の表面状態と、軸受母材表面に撥液表面を設けるための熱処理を施した表面状態を示す図である。 Wet水素熱処理の熱力学状態を示す図である。 液体金属軸受を採用したX線管の回転陽極概略図である。 濡れ性を制御するX線管回転陽極軸受構造の一例を示す図である。 濡れ性を制御するX線管回転陽極軸受構造の一例を示す図である。
符号の説明
1……………………回転陽極
2……………………陽極ターゲット
3……………………陽極回転軸
4……………………断熱部
5……………………液体金属軸受
6……………………固定軸
7……………………軸受回転体
8……………………液体金属
9……………………ジャーナル軸受
10…………………スラスト軸受
11…………………漏洩防止のための撥液表面
12…………………外囲器
13…………………コイル

Claims (5)

  1. 陰極と、前記陰極から放射される電子が衝突することによりX線を発生し、前記電子が衝突するときに生じる熱を放熱するために回転する陽極と、前記陰極と前記陽極とを真空雰囲気に保持する外囲器と、を有する回転陽極型X線管装置であって、
    前記陽極は、回転側である軸受回転体と、固定側である固定軸とを有し、
    前記軸受回転体と前記固定軸の間に液体金属が充填されており、
    前記軸受回転体と前記固定軸の間の前記真空雰囲気との境界部であって、前記軸受回転体の表面と前記固定軸の表面の一部に、微小な凸部が隙間なく多数設けられ、前記液体金属をはじく撥液表面を形成したことを特徴とする回転陽極型X線管装置。
  2. 請求項1に記載の回転陽極型X線管装置において、
    前記液体金属はガリウム/インジウム/スズの合金からなり、
    前記境界部には、露点が10℃以上40℃以下のWet水素雰囲気中においてクロムを含有する鉄系合金に前記鉄系合金の焼鈍し温度以上で熱処理を施した部材が用いられ、
    前記境界部以外の前記軸受回転体の表面と前記固定軸の表面には、前記撥液表面が設けられないことを特徴とする回転陽極型X線管装置。
  3. 請求項2に記載の回転陽極型X線管装置において、
    前記境界部に用いられる部材は、前記境界部以外の部分とは別部品として構成され、前記部材のみに前記熱処理が施されることを特徴とする回転陽極型X線管装置。
  4. 請求項2に記載の回転陽極型X線管装置において、
    前記軸受回転体と前記固定軸とに前記熱処理を施した後、前記境界部以外の部分には前記凸部を除去する処理が施されることを特徴とする回転陽極型X線管装置。
  5. 請求項2に記載の回転陽極型X線管装置において、
    前記軸受回転体と前記固定軸とに前記熱処理を施した後、前記境界部以外の部分には前記液体金属との濡れ性の良い金属薄膜が形成されることを特徴とする回転陽極型X線管装置。
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