JP5204334B2 - 金属酸素電池 - Google Patents

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Description

本発明は、金属酸素電池に関する。
従来、酸素を活物質とする正極と、金属を活物質とする負極と、該正極と負極とに挟持された電解質層とを備える金属酸素電池が知られている。
前記金属酸素電池では、放電時には、前記負極において金属が酸化されて金属イオンを生成し、生成した金属イオンが前記電解質層を透過して前記正極側に移動する。一方、前記正極では、酸素が還元されて酸素イオンを生成し、生成した酸素イオンが前記金属イオンと結合して金属酸化物が生成する。
また、充電時には、前記正極において、前記金属酸化物から金属イオンと酸素イオンとが生成し、生成した酸素イオンは酸化されて酸素となる。一方、前記金属イオンは前記電解質層を透過して前記負極側に移動し、該負極で還元されて金属となる。
前記金属酸素電池では、前記金属として金属リチウムを用いると、金属リチウムは理論電圧が高く電気化学当量が大きいことから、大きな容量を得ることができる。また、酸素として空気中の酸素を用いると、電池内に正極活物質を充填する必要がないことから、電池の質量当たりのエネルギー密度を高くすることができる。
ところが、空気中の酸素を正極活物質とするために、正極を大気に開放すると、空気中の水分、二酸化炭素等が電池内に侵入し、電解質、負極等が劣化するという問題がある。そこで、前記問題を解決するために、密封ケース内に、受光により酸素を放出する酸素吸蔵材料を含む正極と、金属リチウムからなる負極と、電解質層とを配設すると共に、該酸素吸蔵材料に光を導く光透過部を備える金属酸素電池が知られている(例えば、特許文献1参照)。
前記金属酸素電池によれば、前記光透過部を介して前記酸素吸蔵材料に光を導くことにより、該酸素吸蔵材料から酸素を放出させることができ、前記正極を大気に開放することなく、正極活物質としての酸素を得ることができる。従って、空気中の水分、二酸化炭素等が電池内に侵入することによる電解質、負極等の劣化を防止することができる。
しかし、前記従来の金属酸素電池は、光線の照射が無いときには酸素の供給が不安定になると共に、密封ケースの他の部分に比較して脆弱である光透過部が破壊されて電解液が漏出する虞がある。そこで、前記金属酸素電池の正極材料として、光線の照射によらず、化学的に酸素を吸蔵、放出し、又は物理的に吸着、脱着することができる酸素貯蔵材料を用いることが考えられる。前記酸素貯蔵材料としては、YMnO3を挙げることができる。
特開2009−230985号公報
しかしながら、前記正極材料としてYMnO3からなる酸素貯蔵材料を用いる金属酸素電池では、放電過電圧が大きくなり、結果として充放電効率が低下したり高出力が得られないという不都合がある。
本発明は、かかる不都合を解消して、正極材料としてYMnO3からなる酸素貯蔵材料を用いると共に、放電過電圧を低下させることができる金属酸素電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、金属酸素電池の正極材料としてYMnO3からなる酸素貯蔵材料を用いたときに放電過電圧が大きくなる原因について検討した。この結果、本発明者らは、前記酸素貯蔵材料は、原料粉末を1000℃程度の温度で焼成する際に、YMnO3の粒子同士の焼結が過度に進行して、粒子径が粗大化し、比表面積が小さくなるという知見を得た。
通常、YMnO3からなる酸素貯蔵材料が、その結晶格子中に酸素を吸蔵、放出する場合には、酸素との化学結合の生成、解離を伴う。しかし、前記酸素貯蔵材料が、その表面に酸素を吸着、脱着する場合には単に分子間力のみが作用し、化学結合の生成、解離を伴わない。
このため、前記酸素貯蔵材料の表面に対する酸素の吸着、脱着は、該酸素貯蔵材料が酸素を吸蔵、放出する場合に比較して低エネルギーで行われることとなり、電池反応には該酸素貯蔵材料の表面に吸着されている酸素が優先的に用いられる。従って、前記酸素貯蔵材料の比表面積が小さくなると、その表面に吸着、脱着できる酸素量が減少し、またリチウムイオンが酸素イオンと反応する反応界面が減少するため、金属酸素電池の放電過電圧が高くなると考えられる。
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであり、前記目的を達成するために、酸素を活物質とする正極と、金属リチウムを活物質とする負極と、該正極と負極とに挟持された電解質層とを備える金属酸素電池において、前記正極、前記負極及び前記電解質層は密封ケース内に配設されており、前記正極は、イットリウム塩とマンガン塩と有機酸とを粉砕混合し、一次焼成した後、得られた一次焼成物に対し、その全量の1〜20質量%の範囲でジルコニウム塩を添加して二次焼成することにより得られるYMnOとZrOとからなる複合金属酸化物を酸素貯蔵材料として含むことを特徴とする。
本発明の金属酸素電池では、放電時には、次の式に示すように前記負極において金属リチウムが酸化されてリチウムイオンと電子とが生成し、生成したリチウムイオンは前記電解質層を透過して正極に移動する。一方、正極においては、前記酸素貯蔵材料から放出又は脱着された酸素が還元されて酸素イオンとなり、前記リチウムイオンと反応して酸化リチウムまたは過酸化リチウムを生成する。そこで、前記負極と正極とを導線で接続することにより、電気エネルギーを取り出すことができる。
(負極) 4Li → 4Li+ +4e-
(正極) O2 + 4e- → 2O2-
4Li+ + 2O2- → 2Li2
2Li+ + 2O2- → Li22
また、充電時には、次の式に示すように前記正極において酸化リチウムまたは過酸化リチウムからリチウムイオンと酸素イオンとが生成し、生成したリチウムイオンは前記電解質層を透過して負極に移動する。また、生成した酸素イオンは、そのままで、又は酸化されることにより生成した酸素分子として、前記酸素貯蔵材料に吸蔵又は吸着される。そして、負極では前記リチウムイオンが還元されて、金属リチウムとして析出する。
(正極) 2Li2O → 4Li+ + 2O2-
Li22 → 2Li+ + 2O2-
(負極) 4Li+ +4e- → 4Li
ここで、本発明の金属酸素電池における酸素貯蔵材料は、イットリウム塩とマンガン塩と有機酸とを粉砕混合し、一次焼成した後、得られた一次焼成物にジルコニウム塩を添加して二次焼成することにより得られる。前記二次焼成の際、YMnO3粒子の表面の一部がZrO2粒子により被覆されると、該ZrO2粒子は難焼結性であって且つYMnO3粒子よりも粒子径が小さいので、YMnO3粒子同士の過度の焼結が抑制される。この結果、得られたYMnO3とZrO2とからなる複合金属酸化物を含む前記酸素貯蔵材料は、ジルコニウム塩を添加しないで製造したYMnO3のみからなる酸素貯蔵材料に比較して、粒子径が小さくなると共に、比表面積が大きくなる。
従って、前記酸素貯蔵材料は、その表面に吸着、脱着できる酸素量が増加し、リチウムイオンが酸素イオンと反応する反応界面が増加する。この結果、本発明の金属酸素電池では、放電過電圧を低下させることができる。
また、本発明の金属酸素電池において、前記正極、前記負極及び前記電解質層は密封ケース内に配設されている。本発明の金属酸素電池では、前記酸素貯蔵材料が化学的に酸素を吸蔵、放出し、又は物理的に吸着、脱着することができるので、前記正極を大気に開放したり、脆弱な光透過部を形成することなく、前記密封ケース内に配設された前記正極で活物質としての酸素を得ることができる。従って、本発明の金属酸素電池では、大気中の水分又は二酸化炭素による劣化や、光透過部の損傷による電解液漏出を避けることができる。
また、本発明の金属酸素電池において、前記ジルコニウム塩は、前記イットリウム塩とマンガン塩と有機酸との一次焼成物に対し、その全量の1〜20質量%の範囲で添加する。
前記一次焼成物に添加するジルコニウム塩の量が、該一次焼成物の全体に対して1質量%未満では、二次焼成において、YMnO粒子同士の過度の焼結を抑制する効果を十分に得ることができない。
また、前記一次焼成物に添加するジルコニウム塩の量が、該一次焼成物の全体に対して20質量%を超えると、YMnO粒子の表面がZrO粒子で過剰に被覆される。この結果、前記酸素貯蔵材料の表面積全体に対するYMnOの相対的な割合が低下してしまい、YMnOの触媒性能が阻害される上に、十分な酸素貯蔵性能を得ることができない。
更に、ZrO2は固体酸であるので、YMnO3から放出される酸素イオンを吸着又は内部に貯蔵することにより、ZrO2自体の結晶性を安定化しようとする作用がある。そこで、前記一次焼成物に添加するジルコニウム塩の量が、該一次焼成物の全体に対して20質量%を超えると、放電容量が低下することがある。また、ZrO2は、二次焼成中にYMnO3との固溶により安定化を図るため、比表面積の低下やYMnO3の触媒活性の低下を招き、過電圧の上昇を抑制する効果を十分に得ることができないことがある。
また、本発明の金属酸素電池において、前記正極、前記負極及び前記電解質層は密封ケース内に配設されていることが好ましい。本発明の金属酸素電池では、前記酸素貯蔵材料が化学的に酸素を吸蔵、放出し、又は物理的に吸着、脱着することができるので、前記正極を大気に開放したり、脆弱な光透過部を形成することなく、前記密封ケース内に配設された前記正極で活物質としての酸素を得ることができる。従って、本発明の金属酸素電池では、大気中の水分又は二酸化炭素による劣化や、光透過部の損傷による電解液漏出を避けることができる。
本発明の金属酸素電池の一構成例を示す説明的断面図。 本発明の酸素貯蔵材料の粒度分布を示すグラフ。 本発明の酸素貯蔵材料の酸素放出性能を示すグラフ。 本発明の一実施例の金属酸素電池における充放電曲線を示すグラフ。
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
図1に示すように、本実施形態の金属酸素電池1は、酸素を活物質とする正極2と、金属リチウムを活物質とする負極3と、正極2と負極3との間に配設される電解質層4とを備え、正極2、負極3及び電解質層4は、ケース5に密封して収容されている。
ケース5は、カップ状のケース本体6と、ケース本体6を閉蓋する蓋体7とを備え、ケース本体6と蓋体7との間には絶縁樹脂8が介装されている。また、正極2は蓋体7の天面との間に正極集電体9を備えており、負極3はケース本体6の底面との間に負極集電体10を備えている。尚、金属酸素電池1において、ケース本体6は負極板として、蓋体7は正極板として作用する。
金属酸素電池1において、正極2は酸素貯蔵材料と、導電材料と、結着剤とからなる。前記酸素貯蔵材料は、以下の工程により得ることができる。
先ず、例えば、イットリウム塩と、マンガン塩と、有機酸とを粉砕混合した後、250〜350℃の範囲の温度で0.5〜1時間の範囲の時間、一次焼成する。次に、得られた一次焼成物を粉砕混合した後、該一次焼成物の全量の1〜20質量%の範囲でジルコニウム塩を添加し、800℃で3時間、二次焼成する。
前記イットリウム塩、マンガン塩及びジルコニウム塩としては、例えば、それぞれの金属の硝酸塩等を挙げることができる。前記有機酸としては、例えば、リンゴ酸等を挙げることができる。
前記ジルコニウム塩の焼成により生成するZrO2粒子は、難焼結性であって且つYMnO3粒子よりも粒子径が小さい。そこで、前記二次焼成の際、生成するYMnO3粒子の表面の一部がZrO2粒子により被覆されることにより、YMnO3粒子同士の過度の焼結が抑制される。
この結果、前記二次焼成により得られるYMnO3とZrO2とからなる酸素貯蔵材料は、ジルコニウム塩を添加していないYMnO3のみからなる酸素貯蔵材料に比較して、粒子径が小さくなると共に、比表面積が大きくなる。このようにして得られる酸素貯蔵材料としての複合金属酸化物は、例えば、1〜30cm2/gの範囲の比表面積を備えるものとなる。
前記導電材料としては、例えば、グラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、メソポーラスカーボン、カーボンファイバー等の炭素材料を挙げることができる。
前記結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を挙げることができる。
次に、電解質層4は、例えば、非水系電解質溶液をセパレータに浸漬させたものであってもよく、固体電解質であってもよい。
前記非水系電解質溶液は、例えば、リチウム化合物を非水系溶媒に溶解したものを用いることができる。前記リチウム化合物としては、例えば、炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)等を挙げることができる。また、前記非水系溶媒としては、例えば、炭酸エステル系溶媒、エーテル系溶媒、イオン液体等を挙げることができる。
前記炭酸エステル系溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等を挙げることができる。前記炭酸エステル系溶媒は2種以上混合して用いることもできる。
前記エーテル系溶媒としては、例えば、ジメトキシエタン、ジメチルトリグラム、ポリエチレングリコール等を挙げることができる。前記エーテル系溶媒は2種以上混合して用いることもできる。
前記イオン液体としては、例えば、イミダゾリウム、アンモニウム、ピリジニウム、ペリジウム等のカチオンと、ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド(TTSI)、ビス(ペンタフルオロエチルスルフォニル)イミド(BETI)、テトラフルオロボレート、パークロレート、ハロゲンアニオン等のアニオンとの塩を挙げることができる。
前記セパレータとしては、例えば、ガラス繊維、ガラス製ペーパー、ポリプロピレン製不織布、ポリイミド製不織布、ポリフェニレンスルフィド製不織布、ポリエチレン製多孔フィルム等を挙げることができる。
また、前記固体電解質としては、例えば、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質等を挙げることができる。
前記酸化物系固体電解質としては、例えば、リチウム、ランタン、ジルコニウムの複合酸化物であるLi7La3Zr212、リチウム、アルミニウム、ケイ素、チタン、ゲルマニウム、リンを主成分とするガラスセラミックス等を挙げることができる。前記Li7La3Zr212は、リチウム、ランタン、ジルコニウムの一部を、それぞれストロンチウム、バリウム、銀、イットリウム、鉛、スズ、アンチモン、ハフニウム、タンタル、ニオブ等の他の金属で置換されたものであってもよい。
次に、集電体9,10としては、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、銅等のメッシュからなるものを挙げることができる。
本実施形態の金属酸素電池1では、放電時には次の式に示すように、負極3において、金属リチウムが酸化されてリチウムイオンと電子とが生成する。生成したリチウムイオンは、正極2に移動し、前記酸素貯蔵材料から供給される酸素の還元により生成した酸素イオンと反応し、酸化リチウム又は過酸化リチウムを生成する。
(負極) 4Li → 4Li+ +4e-
(正極) O2 + 4e- → 2O2-
4Li+ + 2O2- → 2Li2
2Li+ + 2O2- → Li22
一方、充電時には次の式に示すように、正極2において、酸化リチウム又は過酸化リチウムからリチウムイオンと酸素イオンとが生成する。生成したリチウムイオンは負極3に移動し、負極3で還元されることにより金属リチウムとして析出する。
(正極) 2Li2O → 4Li+ + 2O2-
Li22 → 2Li+ + 2O2-
(負極) 4Li+ +4e- → 4Li
本実施形態の金属酸素電池1において、上述したように、前記酸素貯蔵材料は、ジルコニウム塩を添加していないYMnO3のみからなる酸素貯蔵材料に比較して、比表面積が大きくなる。従って、前記酸素貯蔵材料は、その表面に吸着、脱着できる酸素量が増加し、またリチウムイオンが酸素イオンと反応する反応界面が増加する。この結果、本実施形態の金属酸素電池1では、放電過電圧を低下させることができる。
ここで、前記放電時又は充電時に、前記酸素貯蔵材料は、酸素の吸蔵、放出には化学結合の生成、解離を伴うが、その表面における酸素の吸着、脱着は、分子間力に相当するエネルギーのみで行うことができる。従って、正極2における電池反応には、前記酸素貯蔵材料の表面において吸着、脱着される酸素が優先的に用いられることとなり、反応速度の低下及び過電圧の上昇を抑制することができる。
次に、実施例及び比較例を示す。
〔実施例1〕
本実施例では、まず、硝酸イットリウム5水和物と、硝酸マンガン6水和物と、リンゴ酸とを、1:1:6のモル比となるようにして、粉砕混合し、複合金属酸化物材料の混合物を得た。次に、得られた複合金属酸化物材料の混合物を250℃の温度で30分間反応させた後、さらに、300℃の温度で30分間、350℃の温度で1時間反応させて一次焼成を行った。
次に、前記一次焼成で得られた一次焼成物を粉砕混合した後、該一次焼成物の全量の20質量%となるように、硝酸ジルコニウム5水和物を添加し、800℃の温度で3時間、二次焼成して複合金属酸化物を得た。
得られた複合金属酸化物は、X線回折パターンにより、化学式YMnO3で表される複合金属酸化物であり、六方晶構造を備えることが確認された。また、本実施例で得られた複合金属酸化物の平均粒子径D50を、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製)を用い、エタノールを溶媒として算出した。結果を表1に示す。また、本実施例で得られた複合金属酸化物の粒度分布のグラフを図2(a)に示す。
また、前記複合金属酸化物の比表面積を、全自動細孔分布測定装置(Quantachrome社製)を用い、水銀圧入法により測定した。結果を表1に示す。
次に、本実施例で得られた前記複合金属酸化物500mgを石英製サンプル管に収容し、該サンプル管を管状炉内に設置した。前記サンプル管の入口側から3容積%のH2を含むArガスを100ml/分の流量で該サンプル管に導入した。そして、前記サンプル管の出口側でH2ガス濃度を測定し、H2ガス濃度が一定になるまで保持した。
次に、前記サンプル管に対して前記H2を含むArガスを導入しながら、前記管状炉を10℃/分の速度で700℃まで昇温し、昇温中に該サンプル管の出口側から放出されるガス中のH2O濃度を計測した。そして、計測されたH2O濃度から、前記複合金属酸化物の吸着酸素量を算出した。得られた吸着酸素量の結果を、酸素放出性能として図3に示す。
次に、酸素貯蔵材料として、本実施例で得られた前記複合金属酸化物と、導電材料としてケッチェンブラック(株式会社ライオン製)と、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン(ダイキン工業株式会社製)とを、40:50:10の質量比で混合し、正極混合物を得た。そして、得られた正極混合物をチタンメッシュからなる正極集電体9に5MPaの圧力で圧着し、直径15mm、厚さ1mmの正極2を形成した。
正極2は、全自動細孔分布測定装置(Quantachrome社製)を用い、水銀圧入法により空隙率を測定したところ、78容量%の空隙率を備えていた。
次に、内径15mmの有底円筒状のSUS製ケース本体6の内部に、直径15mmの銅メッシュからなる負極集電体10を配置し、負極集電体10上に、直径15mm、厚さ0.1mmの金属リチウムからなる負極3を重ね合わせた。
次に、負極3上に、直径15mmのガラス繊維(日本板硝子株式会社製)からなるセパレータを重ね合わせた。次に、前記セパレータ上に、前記のようにして得られた正極2及び正極集電体9を、正極2が該セパレータに接するように重ね合わせた。次に、前記セパレータに非水系電解質溶液を注入し、電解質層4を形成した。
前記非水系電解質溶液としては、エチレンカーボネートと、ジエチルカーボネートとを50:50の質量比で混合した混合溶液に、支持塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットルの濃度で溶解した溶液(キシダ化学株式会社製)を用いた。
次に、ケース本体6に収容された負極集電体10、負極3、電解質層4、正極2、正極集電体9からなる積層体を、内径15mmの有底円筒状のSUS製蓋体7で閉蓋した。このとき、ケース本体6と蓋体7との間に、外径32mm、内径30mm、厚さ5mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなるリング状の絶縁樹脂8を配設することにより、図1に示す金属酸素電池1を得た。
次に、本実施例で得られた金属酸素電池1を電気化学測定装置(東方技研株式会社製)に装着し、負極3と正極2との間に、0.2mA/cm2の電流を印加し、セル電圧が2.0Vになるまで放電した。このときのセル電圧と放電容量との関係を図4(a)に示す。
次に、本実施例で得られた金属酸素電池1を前記電気化学測定装置に装着し、負極3と正極2との間に、0.2mA/cm2の電流を印加し、セル電圧が4.2Vになるまで充電した。このときのセル電圧と充電容量との関係を図4(b)に示す。
〔実施例2〕
本実施例では、前記一次焼成物の全量の5質量%となるように硝酸ジルコニウム5水和物を添加したことを除き、実施例1と全く同一にして、金属酸素電池1を得た。
次に、本実施例で得られた複合金属酸化物の平均粒子径D50を実施例1と全く同一にして算出したところ、実施例1と同程度の結果が得られた。
また、本実施例で得られた複合金属酸化物の比表面積を実施例1と全く同一にして測定した。結果を表1に示す。
次に、本実施例で得られた金属酸素電池1を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、充放電を行った。このときのセル電圧と放電容量との関係を図4(a)に、セル電圧と充電容量との関係を図4(b)に、それぞれ示す。
〔実施例3〕
本実施例では、前記一次焼成物の全量の1質量%となるように硝酸ジルコニウム5水和物を添加したことを除き、実施例1と全く同一にして、金属酸素電池1を得た。
次に、本実施例で得られた複合金属酸化物の平均粒子径D50を実施例1と全く同一にして算出したところ、実施例1と同程度の結果が得られた。
また、本実施例で得られた複合金属酸化物の比表面積を実施例1と全く同一にして測定した。結果を表1に示す。
次に、本実施例で得られた金属酸素電池1を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、充放電を行った。このときのセル電圧と放電容量との関係を図4(a)に、セル電圧と充電容量との関係を図4(b)に、それぞれ示す。
〔比較例1〕
本比較例では、硝酸ジルコニウム5水和物を全く用いなかった以外は、実施例1と全く同一にして金属酸素電池1を得た。
次に、本比較例で得られた複合金属酸化物の平均粒子径D50を実施例1と全く同一にして算出した。結果を表1に示す。また、本比較例で得られた複合金属酸化物の粒度分布のグラフを図2(b)に示す。
また、本比較例で得られた複合金属酸化物の比表面積を実施例1と全く同一にして測定した。結果を表1に示す。
また、本比較例で得られた複合金属酸化物の吸着酸素量を、実施例1と全く同一にして算出した。結果を、酸素放出性能として図3に示す。
次に、本比較例で得られた金属酸素電池1を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、充放電を行った。このときのセル電圧と放電容量との関係を図4(a)に、セル電圧と充電容量との関係を図4(b)に、それぞれ示す。
〔比較例2〕
本比較例では、前記一次焼成物の全量の30質量%となるように硝酸ジルコニウム5水和物を添加したことを除き、実施例1と全く同一にして、金属酸素電池1を得た。
次に、本比較例で得られた複合金属酸化物の比表面積を実施例1と全く同一にして測定した。結果を表1に示す。
次に、本比較例で得られた金属酸素電池1を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、充放電を行った。このときのセル電圧と放電容量との関係を図4(a)に、セル電圧と充電容量との関係を図4(b)に、それぞれ示す。
表1及び図2から、実施例1で得られたYMnO3とZrO2とを含む複合金属酸化物によれば、比較例1で得られたYMnO3のみからなる複合金属酸化物に比較して、平均粒子径D50の値が小さいことが明らかである。また、表1及び図2から、実施例1〜3で得られたYMnO3とZrO2とを含む複合金属酸化物によれば、比較例1で得られたYMnO3のみからなる複合金属酸化物又は比較例2で前記一次焼成物の全量の30質量%となるように硝酸ジルコニウム5水和物を添加して得られたYMnO3とZrO2とを含む複合金属酸化物に比較して、比表面積が大きいことが明らかである。
また、図3から、実施例1で得られたYMnO3とZrO2とを含む複合金属酸化物によれば、比較例1で得られたYMnO3のみからなる複合金属酸化物に比較して、酸素放出性能が3.5倍以上大きいことが明らかである。
次に、図4(a)から、YMnO3とZrO2とを含む複合金属酸化物材料からなる酸素貯蔵材料を用いた実施例1〜3の金属酸素電池1によれば、YMnO3のみからなる複合金属酸化物を用いた比較例1の金属酸素電池1又は比較例2で前記一次焼成物の全量の30質量%となるように硝酸ジルコニウム5水和物を添加して得られたYMnO3とZrO2とを含む複合金属酸化物を用いた比較例2の金属酸素電池1に比較して、放電過電圧が低くなっていることが明らかである。
また、図4(b)から、YMnO3とZrO2とを含む複合金属酸化物材料からなる酸素貯蔵材料を用いた実施例1〜3の金属酸素電池1によれば、YMnO3のみからなる複合金属酸化物を用いた比較例1の金属酸素電池1又は比較例2で前記一次焼成物の全量の30質量%となるように硝酸ジルコニウム5水和物を添加して得られたYMnO3とZrO2とを含む複合金属酸化物を用いた比較例2の金属酸素電池1に比較して、放電容量が増加しており、充電過電圧が低くなっていることが明らかである。
1…金属酸素電池、 2…正極、 3…負極、 4…電解質層、 5…ケース。

Claims (5)

  1. 酸素を活物質とする正極と、金属リチウムを活物質とする負極と、該正極と負極とに挟持された電解質層とを備える金属酸素電池において、
    前記正極、前記負極及び前記電解質層は密封ケース内に配設されており、
    前記正極は、イットリウム塩とマンガン塩と有機酸とを粉砕混合し、一次焼成した後、得られた一次焼成物に対し、その全量の1〜20質量%の範囲でジルコニウム塩を添加して二次焼成することにより得られるYMnOとZrOとからなる複合金属酸化物を酸素貯蔵材料として含むことを特徴とする金属酸素電池。
  2. 請求項1記載の金属酸素電池において、前記イットリウム塩はイットリウムの硝酸塩であることを特徴とする金属酸素電池。
  3. 請求項1又は請求項2記載の金属酸素電池において、前記マンガン塩はマンガンの硝酸塩であることを特徴とする金属酸素電池。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の金属酸素電池において、前記ジルコニウム塩はジルコニウムの硝酸塩であることを特徴とする金属酸素電池。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の金属酸素電池において、前記有機酸はリンゴ酸であることを特徴とする金属酸素電池。
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