JP5203012B2 - 異常検出装置、寿命検出装置、異常検出方法、および、コンピュータを異常検出装置として機能させるためのプログラム - Google Patents

異常検出装置、寿命検出装置、異常検出方法、および、コンピュータを異常検出装置として機能させるためのプログラム Download PDF

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Description

本発明は軸受の異常を検出する技術に関し、特に、アコースティクエミッション(Acoustic Emission:AE)を利用して軸受の異常を検出するための異常検出装置、軸受の寿命検出装置、異常検出方法、および、コンピュータを異常検出装置として機能させるためのプログラムに関する。
従来、軸受の異常を検出するための技術として、アコースティックエミッション(AE)を用いた技術が知られている。アコースティックエミッションとは、固体の変形や破壊に伴って内部エネルギが音響波として放出される現象である。この技術は、軸受からのAEをAEセンサによって検出し、AEセンサからのAE信号のノイズをバンドパスフィルタによって除去し、ノイズが除去されたAE信号を包絡線検波回路で包絡線検波し、この包絡線検波回路からのAE信号を比較器で一定の基準値と比較し、このAE信号が当該基準値を超えた時に、軸受の異常として検出する。
アコースティックエミッションを利用した軸受の異常検出に関し、たとえば、特開平4−32737号公報(特許文献1)は、発生周期毎のAE発生確率と単一の閾値とを比較して、軸受の異常を判別する異常検出装置を開示している。
また、特開2006−226731号公報(特許文献2)は、AE信号とノイズ成分とを弁別して、軸受の異常を正確に検出できる異常検出装置を開示している。
特開平4−32737号公報 特開2006−226731号公報
ところが、上記従来の軸受の異常検出装置は、バンドパスフィルタによりノイズを除去しているだけなので、高周波数のノイズが発生した場合など、ノイズと軸受異常を区別して弁別することはできないので、軸受の異常を判断できない。また上記の方法では、軸受の異常を検出することはできるが、寿命を予測することはできない。
本発明は、上述のような問題点を開示するためになされたものであって、その目的は、軸受の異常を検出する精度が向上する異常検出装置を提供することである。他の目的は、軸受の寿命を検出することができる寿命検出装置を提供することである。
他の目的は、検出精度が向上する軸受の異常検出方法を提供することである。他の目的は、軸受の寿命予測方法を提供することである。
他の目的は、軸受の異常を検出する精度が向上する異常検出装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムを提供することである。他の目的は、軸受の寿命を予測することができる異常検出装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムを提供することである。
上記の課題を解決するために、この発明のある局面に従うと、軸受の異常を検出するための異常検出装置が提供される。この異常検出装置は、軸受の異常を判定するために定められた基準値を格納する記憶手段と、アコースティックエミッションを検出する検出手段と、検出手段によって検出された信号に対して窓関数を設定する設定手段と、窓関数によって規定される窓に含まれる波形のエネルギーを積算する積算手段と、窓を時間軸方向に移動させながら積算手段によって算出される積算値の最大値を算出する算出手段と、最大値と基準値との比較に基づいて、軸受に異常が発生しているか否かを判定する判定手段とを備える。
好ましくは、設定手段は、一定の幅を有する複数の窓関数を、一定の間隔で設定する。
好ましくは、一定の間隔および一定の幅は、軸受の寸法と回転数とに基づいて規定される。
好ましくは、検出手段は、第1のアコースティックエミッションと第2のアコースティックエミッションとを検出する。設定手段は、第1のアコースティックエミッションと第2のアコースティックエミッションとの検出間隔を下回る間隔を、一定の幅として設定する。
この発明の他の局面に従うと、軸受の寿命を検出する寿命検出装置が提供される。この寿命検出装置は、軸受の寿命を規定する基準値を格納する記憶手段と、アコースティックエミッションを検出する検出手段と、検出手段によって検出された信号に対して窓関数を設定する設定手段と、窓関数によって規定される窓に含まれる波形のエネルギーを積算する積算手段と、窓を時間軸方向に移動させながら積算手段によって算出される積算値の複数の極大値を算出する算出手段と、複数の極大値に基づいて、軸受の寿命を検出する寿命検出手段とを備える。
この発明の他の局面に従うと、コンピュータが、軸受の異常を検出するための異常検出方法が提供される。コンピュータは、プロセッサと記憶装置とを備えている。記憶装置は、軸受の異常を判定するために定められた基準値を格納している。異常検出方法は、プロセッサが、アコースティックエミッションに対応する信号を受信するステップと、プロセッサが、信号に対して窓関数を設定するステップと、プロセッサが、窓関数によって規定される窓に含まれる波形のエネルギーを積算するステップと、プロセッサが、窓を時間軸方向に移動させながら積算値の最大値を算出するステップと、プロセッサが、最大値と基準値との比較に基づいて、軸受に異常が発生しているか否かを判定するステップとを含む。
この発明の他の局面に従うと、軸受の異常を検出するための異常検出装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムが提供される。コンピュータは、プロセッサと記憶装置とを備えている。記憶装置は、軸受の異常を判定するために定められた基準値を格納している。このプログラムは、プロセッサに、アコースティックエミッションに対応する信号を受信するステップと、信号に対して窓関数を設定するステップと、窓関数によって規定される窓に含まれる波形のエネルギーを積算するステップと、窓を時間軸方向に移動させながら積算値の最大値を算出するステップと、最大値と基準値との比較に基づいて、軸受に異常が発生しているか否かを判定するステップとを実行させる。
本発明によると、軸受の異常を検出する精度を向上させることができる。また、早期に軸受の異常を検知することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
本発明の実施の形態に係る軸受の異常検出装置は、軸受に亀裂が発生した場合には軸受の回転数と軸受寸法で決定される一定の周期(特性周期)でAE(Acoustic Emission)信号が発生すること、および、亀裂が発生した場合には持続時間の短いAEが発生すること、また、潤滑不良の場合には持続時間の長いAEが発生することに着目してなされている。そして、本発明の実施の形態に係る軸受の異常検出装置は、軸受から発生したAEの周期性から軸受の異常発生を正確に検出でき、さらに、AEの持続性から、異常の内容を識別できるという考察に基づいている。
最初に、図1を参照して、本発明の実施の形態に係る技術的思想について説明する。図1(A)は、バッファメモリに一時的に保存されているAE信号に対して窓関数を適用する局面を示す。AE信号は、たとえば、バッファメモリに保存されている。図1(B)は、当該AE信号に基づいて算出されるアコースティックエミッションエネルギーを示す。本実施の形態において、エネルギーは、AE信号値の積分値として定義される。
図1(A)異常検出装置による検査が開始されてから時間ΔT0が経過すると、AE信号の振動レベルが一時的に上昇したことが検知される。AE信号に基づくエネルギーも、時刻ΔT0以降に上昇することになる(図1(B))。
その後、時刻ΔT2から、幅Δtを有する窓関数110が設定される。ここで、Δtとして、大きな値をとると次の周期で発生したアコースティックエミッションを含むことになる。そこで、Δtの値は、アコースティックエミッションが発生する周期よりも短い周期が好ましい。Δtは、当該軸受の仕様(寸法、転動体の数など)によって規定される。たとえば、Δtとして、当該軸受の内輪の転送面上を転動体(ころ、ボールなど)が通過する周期Tの5分の1等が好ましいが、これに限られない。
図1(A)を再び参照して、窓関数110の中に含まれるAE信号の振幅値は、他の時間に観測されたAE信号の振幅値よりも大きくなる。本実施の形態に係る軸受の異常検出装置は、このような場合のAE信号に基づくエネルギー値を算出し、当該算出した値が予め規定された基準値を上回るか否かに基づいて、当該軸受に異常が発生しているか否かを判定する。
本実施の形態に係る軸受の異常検出装置は、窓関数110と同じ大きさを有する窓関数を、AE信号の時間軸に沿って移動する。たとえば、窓関数120,130は、窓関数110と同じ大きさを有する
このように、本実施の形態に係る軸受の異常検出装置は、特性周期の間隔で並んだΔtの幅を有する櫛の窓をAE信号に設定し、この窓に含まれる波形のエネルギーを算出する。そして、異常検出装置は、時間軸方向に沿ってこれらの窓を移動させながら、その算出値を順次求める。そうすると、異常検出値は、最大値を得る。これが、特性周期で発生しているAEのエネルギー総量(「AEエネルギカウント」ともいう。)となる。
なお、窓の数は、原理から基本的には2個あればよい。処理速度の観点からは、窓の数が多いほうが好ましいが、現実的には、異常検出装置が備えるメモリの容量によって波形を計測できる時間が決定されるので、この時間内における窓の数が設定される。
[機能構成]
図2を参照して、本発明の実施の形態に係る軸受の異常検出装置200について説明する。図2は、異常検出装置200によって実現される機能の構成を表わすブロック図である。異常検出装置200は、AE(Acoustic Emission)検出部210と、窓関数設定部220と、エネルギー算出部230と、最大値決定部240と、窓移動部250と、記憶部260と、判定部270と、出力部280とを備える。
AE検出部210は、異常検出装置200に送られる信号を受信するように構成されている。AE検出部210は、その信号に基づいてアコースティックエミッションを検出する。
窓関数設定部220は、AE検出部210からの出力に基づいて作動するように構成されている。窓関数設定部220は、AE検出部210によって検出された信号に対して窓関数を設定する。
エネルギー算出部230は、窓関数設定部220からの出力に基づいて作動するように構成されている。エネルギー算出部230は、窓関数設定部220によって設定された窓関数によって規定される窓に含まれる信号波形のエネルギを算出する。たとえば、エネルギー算出部230は、当該信号波形の振幅値と微少時間との積を算出し、当該積を、当該窓関数の幅を規定する時間にわたって積分し、当該積分値をエネルギーとして算出する。
窓移動部250は、窓関数設定部220によって設定された窓関数を時間軸方向に移動させる。たとえば、窓移動部250は、予め設定された時間だけ窓関数を移動するための信号を、窓関数設定部220に与える。窓関数設定部220は、窓移動部250から送られる信号に基づいて、アコースティックエミッションに対して設定される窓関数を時間軸方向に移動させる。
最大値決定部240は、エネルギー算出部230からの出力と、窓移動部250からの出力とに基づいて作動するように構成されている。最大値決定部240は、エネルギー算出部230によって算出されるエネルギーの積算値の最大値を特定する。
記憶部260は、異常検出装置200を作動させるために入力されたデータおよび異常検出装置200によって生成されたデータを格納するように構成されている。記憶部260は、たとえば、軸受の異常を検出するために予め設定された基準値を格納している。当該基準値は、異常検出装置200の使用時に、異常検出装置200の使用者によって入力される。あるいは、異常検出装置200がデータ通信回線を介して通信装置(図示しない)に接続されている場合には、異常検出装置200は、通信装置によって送信された基準値の入力を受け付けて、記憶部260に当該基準値を格納してもよい。
判定部270は、最大値決定部240からの出力と、記憶部260に格納されているデータとに基づいて作動するように構成されている。判定部270は、最大値決定部240によって算出された最大値と、記憶部260に格納されている当該基準値とを比較することにより、当該軸受に異常が発生しているか否かを判定する。たとえば、当該最大値が当該基準値を上回る場合に、判定部270は、その軸受に異常が発生していると判定する。軸受に発生する異常は、たとえば、剥離異常、摩擦異常である。判定部270は、その判定結果を出力部280に対して送出する。
出力部280は、判定部270からの出力に基づいて作動するように構成されている。出力部280は、ある局面において、判定部270による判定結果を表示するディスプレイ装置として実現される。他の局面において、出力部280は、軸受の異常を通知するように構成された発光部(たとえば発光ダイオード)として実現される。他の局面において、出力部280は、軸受の異常を報知するための音声を出力するように構成されたスピーカとしても実現され得る。さらに他の局面において、出力部280は、判定結果を伝送するように構成されたネットワークインターフェイスとしても実現され得る。
好ましくは、窓関数設定部220は、一定の幅を有する複数の窓関数を、一定の間隔でアコースティックエミッション信号(AE信号)に対して設定する。窓関数の数は、2つ以上であればよい。窓関数の数は、プロセッサの処理能力と、AE信号を格納するメモリの容量とによっても規定され得る。
好ましくは、当該一定の間隔および当該一定の幅は、当該軸受の寸法と回転数とに基づいて規定される。
好ましくは、AE検出部210は、第1のアコースティックエミッションと第2のアコースティックエミッションとを検出する。窓関数設定部220は、第1のアコースティックエミッションと第2のアコースティックエミッションとの検出間隔を下回る間隔を、当該一定の幅として設定する。このように設定すると、1つの窓関数に複数のアコースティックエミッションが含まれなくなるため、異常検出精度の低下を防止することができる。
さらに他の局面において、軸受の異常検出装置200は、軸受の寿命を算出することもできる。たとえば、最大値決定部240がエネルギー算出部230によって積算された複数の積算値から複数の極大値を特定することができる。この場合、最大値決定部240は、少なくとも2つの当該極大値に基づいて、補間処理を実行することにより、その軸受の寿命を算出することができる。
[データ構造]
図3を参照して、本実施の形態に係る異常検出装置200のデータ構造について説明する。図3は、記憶部260におけるデータの格納の一態様を概念的に表わす図である。記憶部260は、たとえば、フラッシュメモリ、ハードディスク装置、その他データを不揮発的に保持できる記憶装置によって実現される。記憶部260は、データを格納するための複数のメモリ領域を含む。
窓間隔初期値は、メモリ領域310に格納されている。窓間隔初期値は、周期的な複数のアコースティックエミッションを検出するために複数の窓が設定される場合の当該窓の間隔を規定する。窓間隔初期値は、異常検出装置200のインストール時あるいは使用時に異常検出装置200の使用者によって入力される。
窓の幅は、メモリ領域320に格納されている。窓の幅は、当該窓関数を規定する。窓の幅は、エネルギの積算の対象となる範囲を規定する。
基準値は、メモリ領域330に格納されている。当該基準値は、エネルギの積算値の最大値に基づいて軸受の異常の有無を判定するために使用される。基準値も、異常検出装置200の使用者によって入力される。他の局面において、当該基準値は、異常検出装置200に接続されるデータ通信回線を介しても入力され得る。データ通信回線は、有線および無線のいずれであってもよい。
判断値は、メモリ領域340に格納されている。当該判断値は、判断対象となる軸受において異常が発生しているか否かを判断する基準を規定する。ある局面において、判断値は、たとえば、AE信号の振幅値の積分値として規定されるエネルギーとして示される。
異常検出プログラムは、メモリ領域350に格納されている。異常検出プログラムは、図2に示される異常検出機能を実現する。たとえば、コンピュータのプロセッサが異常検出プログラムを実行すると、図2に示される機能が実現され、軸受の異常が検出される。
オペレーティングシステムは、メモリ領域360に格納されている。オペレーティングシステムは、異常検出装置200の基本的な動作を規定する。当該基本的な動作とは、異常検出装置200に対する信号の受信、演算処理、データの格納、データの出力などを含む。
[寿命]
図4を参照して、軸受の寿命について説明する。図4は、軸受の回転時間とエネルギー積算値とに基づいて規定される寿命の関係を表わす図である。軸受の運転時に発生するAE信号に基づいて算出されるエネルギーレベルは、ある時間までは大きく変動しない。図4に示される例では、約7×10(秒)までは、一定であり、定常状態と考えられる。一方、その後は、エネルギーレベルが上昇している。このエネルギーレベルの上昇は、すなわち、寿命の低下につながる。エネルギーレベルの上昇の態様は、異常の原因(たとえば、潤滑不良、転送面の剥離など)によって異なる。
なお、上記で求めたエネルギー積算値は寿命の進行に伴い、図4に示すように、寿命と相関して増加する。したがって、少なくとも2回の積算値(x1,x2)を求めれば、次式によって軸受の寿命を計算することができる。
寿命=E×(x2−x1)/(y2−y1)
ただし、E:エネルギーの積算値。
[ハードウェア構成]
図5を参照して、本実施の形態に係る軸受の異常検出装置200の構成についてさらに説明する。図5は、異常検出装置200のハードウェア構成を表わすブロック図である。異常検出装置200は、AEセンサ510と、プリアンプ520と、バンドパスフィルタ530と、A/D(Analog to Digital)変換器540と、プロセッサ550と、表示器560とを備える。
異常検出装置200に入力される信号は、AEセンサ510に入力される。AEセンサ510は、その信号に基づいてアコースティックエミッションを検出する。AEセンサ510は、そのAE信号をプリアンプ520に送出する。
プリアンプ520は、AE信号を増幅し、増幅後の信号をバンドパスフィルタ530に送出する。
バンドパスフィルタ530は、プリアンプ520によって増幅されたAE信号のうち、予め設定された周波数帯域の信号を選択的に出力する。予め設定された周波数帯域は、たとえば、80kHz−500kHzの周波数を含むが、周波数帯域はこれに限られない。
A/D変換器540は、バンドパスフィルタ530から出力されたAE信号をデジタル信号に変換し、そのデジタル信号をプロセッサ550に送出する。
プロセッサ550は、異常検出プログラム(メモリ領域350)を実行し、デジタル信号に変換されたAE信号を用いて軸受の異常検出処理を実行する。プロセッサ550は、その処理結果を表示器560に送出する。
表示器560は、プロセッサ550から送られる信号に基づいて、軸受の異常検出結果を表示する。表示の態様は、たとえば異常の有無の結果のみに限られず、軸受の回転数、運転時間その他軸受の使用条件を併せて表示することも含む。あるいは、他の局面において、表示器560は、図1に示されるようなAE信号と窓関数とを表示しても良い。さらに他の局面において、異常検出装置200は、表示器560に結果を表示させると共に、データ記録媒体にAE信号および判断結果を逐次記録してもよい。このようにすると、異常時の直線の状態をデータとして捕捉する事ができるため、当該異常じの状態を分析しやすくなる。
[制御構造]
図6を参照して、本実施の形態に係る異常検出装置200の制御構造について説明する。図6は、異常検出装置200のプロセッサ550が実行する一連の動作の一部を表わすフローチャートである。
ステップS610にて、プロセッサ550は、異常検出処理の開始時刻Tを初期化する(T=0)。たとえば、プロセッサ550は、使用者によって与えられるリセット指示の入力を検知すると、時刻Tを初期化する。あるいは、他の局面において、予め定められた時刻の到来時に、プロセッサ550は、時刻Tを初期化してもよい。
ステップS620にて、プロセッサ550は、A/D変換器540によってデジタル変換されたAE信号の入力を受け付ける。
ステップS630にて、プロセッサ550は、エネルギー算出部230として、窓関数設定部220によって設定された窓関数に含まれるAE信号の振幅値を用いて、エネルギーを計算する。
ステップS640にて、プロセッサ550は、時刻Tが予め設定された規定値を下回っているか否かを判定する。プロセッサ550は、時刻Tが当該規定値を下回っていると判定すると(ステップS640にYES)、制御をステップS660に切り換える。そうでない場合には(ステップS640にてNO)、プロセッサ550は、制御をステップS650に切り換える。
ステップS650にて、プロセッサ550は、窓移動部250として、窓関数をΔだけ移動させる(T=T+Δ)。この移動量Δは、軸受の寸法(たとえば、内輪の外径、外輪の内径、軸受の回転速度等)によって規定される。
ステップS660にて、プロセッサ550は、判定部270として、ステップS630にて算出されたエネルギーの最大値が予め設定された判断値(メモリ領域340)を上回っているか否かを判定する。プロセッサ550は、当該エネルギーの最大値が当該判断値を上回っていると判定すると(ステップS660にてYES)、制御をステップS670に切り換える。そうでない場合には(ステップS660にてNO)、プロセッサ550は、制御をステップS610に戻す。
ステップS670にて、プロセッサ550は、表示器560に信号を送出することにより、当該軸受に異常が発生していることを表示させる。表示器560は、たとえば、当該軸受が異常であることを示すメッセージ、アイコンその他の画像を表示する。
ステップS680にて、プロセッサ550は、複数の極大値に基づいて当該軸受の寿命を算出する。当該寿命は、たとえば算式(x2−x1)/(y2−y1)×Eとして算出される。
ステップS690にて、プロセッサ550は、表示器560に信号を送出することにより、当該軸受の寿命を表示する。
なお、本実施の形態に係る異常検出装置200は、寿命の算出を行なわない態様でも実現可能である。この場合、ステップS680およびステップS690の各処理は、なくてもよい。
[コンピュータシステムの構成]
以上詳述した本実施の形態に係る異常検出装置200は、周知の構成を有するコンピュータシステムを用いて実現することもできる。
そこで、図7を参照して、本実施の形態に係る異常検出装置200を実現するコンピュータシステム700について説明する。図7は、コンピュータシステム700のハードウェア構成を表わすブロック図である。
コンピュータシステム700は、主たる構成要素として、プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)710と、コンピュータシステム700の使用者による指示の入力を受付けるマウス720およびキーボード730と、CPU710によるプログラムの実行により生成されたデータ、またはマウス720もしくはキーボード730を介して入力されたデータを揮発的に格納するRAM(Random Access Memory)740と、データを不揮発的に格納するハードディスク750と、光ディスク駆動装置760と、モニタ780と、通信I/F(Interface)790とを備える。各構成要素は、相互にデータバスによって接続されている。光ディスク駆動装置760には、CD−ROM(Compact Disc-Read Only Memory)762その他の光ディスクが装着され得る。
コンピュータシステム700における各処理は、ハードウェアおよびCPU710によって実行されるソフトウェアによって実現される。このようなソフトウェアは、ハードディスク750に予め格納されている場合がある。また、当該ソフトウェアは、CD−ROM762その他のデータ記録媒体に格納されて、プログラムプロダクトとして流通している場合もある。あるいは、当該ソフトウェアは、いわゆるインターネットに接続している情報提供事業者によってダウンロード可能なプログラムプロダクトとして提供される場合もある。このようなソフトウェアは、光ディスク駆動装置760その他の読取装置によってそのデータ記録媒体から読み取られて、あるいは通信I/F790を介してダウンロードされた後、ハードディスク750に一旦格納される。そのソフトウェアは、CPU710によってハードディスク750から読み出され、RAM740に実行可能なプログラムの形式で格納される。CPU710は、そのプログラムを実行する。
図7に示されるコンピュータシステム700を構成する各構成要素は、一般的なものである。したがって、本発明の最も本質的な部分は、RAM740、ハードディスク750、CD−ROM762その他のデータ記録媒体に格納されたソフトウェア、あるいはネットワークを介してダウンロード可能なソフトウェアであるともいえる。なお、コンピュータシステム700のハードウェアの動作は周知であるので詳細な説明は繰り返さない。
なお、記録媒体としては、CD−ROM、FD(Flexible Disk)、ハードディスク750に限られず、磁気テープ、カセットテープ、光ディスク(MO(Magnetic Optical Disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc))、IC(Integrated Circuit)カード(メモリカードを含む)、光カード、マスクROM、EPROM(Electronically Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electronically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュROMその他の半導体メモリ等の固定的にプログラムを担持できる媒体でもよい。
ここでいうプログラムとは、CPU710によって直接実行可能なプログラムだけでなく、ソースプログラム形式のプログラム、圧縮処理されたプログラム、暗号化されたプログラムなどを含む。
図8を参照して、本実施の形態に係る異常検出装置200によって算出される軸受の寿命について説明する。図8は、軸受の異常が検知される時期とAEエネルギとの関係を表わす図である。
本実施の形態に係る異常検出装置200によると、たとえば、点Aにおいて、エネルギーレベルの上昇を検知することができる。したがって、異常検出装置200は、この時点で、当該軸受において異常が発生していることを検知することができる。
これに対して、振動値の上昇を検知する従来の異常検出技術によると、たとえば、点Bにおいて、振動値の上昇が検知される。この場合、点Aと点Bとの間は、約4.2年となる。点Bから定格寿命時点(点C)までの期間は、約1.7年である。
これにより、本実施の形態に係る異常検出装置200によると、約4.2年早く、軸受の異常を検知することができる。そのため、当該軸受の交換その他の補修を早期に開始することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の実施の形態に係る軸受の異常検出装置の技術的思想を説明するための図である。 本発明の実施の形態に係る軸受の異常検出装置200によって実現される機能の構成を表わすブロック図である。 異常検出装置200の記憶部260におけるデータの格納の一態様を概念的に表わす図である。 軸受の回転時間とエネルギー積算値とに基づいて規定される寿命の関係を表わす図である。 本発明の実施の形態に係る軸受の異常検出装置200のハードウェア構成を表わすブロック図である。 異常検出装置200のプロセッサ550が実行する一連の動作の一部を表わすフローチャートである。 異常検出装置200を実現するコンピュータシステム700のハードウェア構成を表わすブロック図である。 軸受の異常が検知される時期とAEエネルギとの関係を表わす図である。
符号の説明
110,120,130 窓関数、762 CD−ROM。

Claims (7)

  1. 軸受の異常を検出するための異常検出装置であって、
    軸受の異常を判定するために定められた基準値を格納する記憶手段と、
    アコースティックエミッションを検出する検出手段と、
    前記検出手段によって検出された信号に対して窓関数を設定する設定手段と、
    前記窓関数によって規定される窓に含まれる波形のエネルギーを積算する積算手段と、
    前記窓を時間軸方向に移動させながら前記積算手段によって算出される積算値の最大値を算出する算出手段と、
    前記最大値と前記基準値との比較に基づいて、前記軸受に異常が発生しているか否かを判定する判定手段とを備える、異常検出装置。
  2. 前記設定手段は、一定の幅を有する複数の窓関数を、一定の間隔で設定する、請求項1に記載の異常検出装置。
  3. 前記一定の間隔および前記一定の幅は、前記軸受の寸法と回転数とに基づいて規定される、請求項2に記載の異常検出装置。
  4. 前記検出手段は、第1のアコースティックエミッションと第2のアコースティックエミッションとを検出し、
    前記設定手段は、前記第1のアコースティックエミッションと前記第2のアコースティックエミッションとの検出間隔を下回る間隔を、前記一定の幅として設定する、請求項1〜3のいずれかに記載の異常検出装置。
  5. 軸受の寿命を検出する寿命検出装置であって、
    軸受の寿命を規定する基準値を格納する記憶手段と、
    アコースティックエミッションを検出する検出手段と、
    前記検出手段によって検出された信号に対して窓関数を設定する設定手段と、
    前記窓関数によって規定される窓に含まれる波形のエネルギーを積算する積算手段と、
    前記窓を時間軸方向に移動させながら前記積算手段によって算出される積算値の複数の極大値を算出する算出手段と、
    前記複数の極大値に基づいて、前記軸受の寿命を算出する寿命検出手段とを備える、寿命検出装置。
  6. コンピュータが、軸受の異常を検出するための異常検出方法であって、前記コンピュータは、プロセッサと記憶装置とを備えており、前記記憶装置は、軸受の異常を判定するために定められた基準値を格納しており、
    前記異常検出方法は、
    前記プロセッサが、アコースティックエミッションに対応する信号を受信するステップと、
    前記プロセッサが、前記信号に対して窓関数を設定するステップと、
    前記プロセッサが、前記窓関数によって規定される窓に含まれる波形のエネルギーを積算するステップと、
    前記プロセッサが、前記窓を時間軸方向に移動させながら前記積算値の最大値を算出するステップと、
    前記プロセッサが、前記最大値と前記基準値との比較に基づいて、前記軸受に異常が発生しているか否かを判定するステップとを含む、異常検出方法。
  7. 軸受の異常を検出するための異常検出装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、前記コンピュータは、プロセッサと記憶装置とを備えており、前記記憶装置は、軸受の異常を判定するために定められた基準値を格納しており、
    前記プログラムは、前記プロセッサに、
    アコースティックエミッションに対応する信号を受信するステップと、
    前記信号に対して窓関数を設定するステップと、
    前記窓関数によって規定される窓に含まれる波形のエネルギーを積算するステップと、
    前記窓を時間軸方向に移動させながら前記積算値の最大値を算出するステップと、
    前記最大値と前記基準値との比較に基づいて、前記軸受に異常が発生しているか否かを判定するステップとを実行させる、プログラム。
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