JP5202028B2 - 真空ピンセットおよびこれを用いた基板搬送装置ならびに基板処理装置 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体ウエハ,液晶表示パネル用ガラス基板,半導体製造装置用マスク基板等を吸着して搬送するのに用いられる真空ピンセットおよびこれを用いた基板搬送装置ならびに基板処理装置に関する。
CPU(中央処理装置),MPU(超小型演算処理装置)やフラッシュメモリ等に用いられる半導体ウエハの1種であるシリコンエピタキシャルウエハは、シリコン単結晶基板の表面にシリコンエピタキシャル層を気相成長させることによって作製することができる。このような気相成長は、例えば、枚葉式の気相成長装置を用いて行なわれる。この枚葉式の気相成長装置は、シリコン単結晶基板を1枚ずつ処理する装置であり、シリコン単結晶基板を載置するサセプタと、周囲にハロゲンランプ等の加熱手段を配した反応室と、サセプタ上にシリコン単結晶基板を搬送する真空ピンセットとを内部に備えている。
この枚葉式の気相成長装置を用いてシリコンエピタキシャルウエハを作製する場合には、まず、反応室の外部からシリコン単結晶基板を真空ピンセットで吸着して搬送し、反応室の内部のサセプタに載置する。次に、反応室内を窒素ガス,水素ガス等で順次置換して加熱手段によって反応室内の温度を上げることにより、シリコン部分が空気に曝されることによってシリコン単結晶基板の表面に形成されている酸化膜(自然酸化膜)が除去される。
その後、反応室内の温度を最適温度に調整した状態でモノシラン(SiH),ジクロルシラン(SiHCl)等のエピタキシャルガスやホスフィン(PH),ジボラン(B)等のドーピングガスを所定時間,所定流量で供給してシリコン単結晶を成長させた後、水素ガスで置換し、反応室内の温度を約600〜900℃まで下げて窒素ガスで置換することにより、シリコンエピタキシャル層を備えたシリコンエピタキシャルウエハを得ることができる。得られたシリコンエピタキシャルウエハは、再び真空ピンセットで吸着されて、反応室の外部に搬送される。
このように、反応室の外部から気相成長装置へ、または気相成長装置から反応室の外部への基板の搬送に、真空ピンセットが用いられている。この真空ピンセットは、ここで一例として挙げた半導体ウエハの1種であるシリコンエピタキシャルウエハに限らず、液晶表示パネル用ガラス基板や半導体製造装置用マスク基板等の搬送にも用いられている。そして、真空ピンセットやこの真空ピンセットを用いた搬送ロボットとして、特許文献1および特許文献2に提案されているものがある。
図9は、特許文献1で提案されている真空ピンセットを示す、(a)は平面図であり,(b)は(a)におけるY−Y’線での断面図である。
この真空ピンセット30は、一方の端部が二股に分岐し、平面視した形状がY字状をした薄肉の長尺状セラミック板32からなり、一方の主面32aには、端部の2カ所と分岐の手前の1カ所との計3カ所に凸板33a〜33cがそれぞれ貼り合わされて、その上面を各々吸着面とし、半導体ウエハ等の基板を3点で支持するものである。また、分岐の手前の凸板33cには開口部34を設け、長尺状セラミック板32の他方の主面32bに刻設した溝と連通するようにしてあり、この溝を金属箔板37で塞ぐことにより吸引孔(吸引路)35としたものである。
そして、真空ピンセット30の他方の主面32bにおける表面粗度を一方の主面32aより粗くし、一方の主面32aが凹となるように真空ピンセット30を反らせてあることにより、搬送ロボットに真空ピンセット30を設置した際に生じる真空ピンセット30の自重による撓みが相殺され、真空ピンセット30の全長がほぼ水平に保たれ、吸着面を水平に保つことができるので、半導体ウエハ等の基板を傷つけず確実に保持することができるというものである。
また図10は、特許文献2で提案されている真空ピンセットを用いた搬送ロボットの例を示す斜視図である。
この真空ピンセット41を用いた搬送ロボット40は、真空ピンセット41上に配置した複数の真空吸着部42によりガラス基板45の裏面を真空吸着して搬送するものである。真空吸着部42は、真空吸着穴43と平面状シート材44とからなり、真空吸着穴43と平面状シート材44の中央部に設けた貫通孔とを重ね、平面状シート材44の中央付近だけを真空ピンセット41上に接着剤で接合することにより、平面状シート材44の外周部がガラス基板45側へ変形可能にしたものである。これにより、反りのあるガラス基板45でも吸着し損なうことのない信頼性の高い搬送を実現できるというものである。
特開2001−77171号公報 特開2000−133694号公報
しかしながら、特許文献1で提案された真空ピンセット30および特許文献2で提案された真空ピンセット41は、半導体ウエハ等の基板を確実に吸着できるので信頼性の高い搬送を実現できるものの、半導体ウエハ等の基板の大型化や半導体ウエハ等の基板の搬送効率および処理効率の向上に対応するために、真空ピンセットには更なる吸着力の向上が求められている。
この要求に対し、例えば、特許文献1で提案された真空ピンセット30の吸引孔(吸引路)35を大きくして吸着力を向上させることが考えられるが、その場合には、真空ピンセット30の剛性が低下するために吸着面が水平に保てなくなり、半導体ウエハ等の基板を吸着できなかったり、搬送途中で半導体ウエハ等の基板を落下させたりするおそれがあった。
本発明は、上記課題を解決すべく案出されたものであり、剛性の低下を抑えて吸着力を向上させることによって、半導体ウエハ等の基板を確実に吸着して搬送できる真空ピンセットおよびこれを用いた基板搬送装置ならびに基板処理装置を提供することを目的とするものである。
本発明の真空ピンセットは、先端側が二股に分岐した板状体と、該板状体の先端部および分岐部の各表面の少なくとも3カ所に設けられた、気体を吸引して基板を吸着するため
の吸着部と、前記分岐部の吸着部と他の吸着部とをつなぐ吸引路と、前記分岐部の吸着部と吸引路を介してつながって気体を吸引するための吸引部とを備えてなる真空ピンセットにおいて、前記分岐部の吸着部と前記吸引部とをつなぐ前記吸引路の断面積が、前記分岐部の吸着部側よりも前記吸引部側の方で大きいとともに、前記板状体および前記吸着部はセラミックスからなる積層体とされていることを特徴とするものである。
また、本発明の真空ピンセットは、上記構成において、前記分岐部の吸着部と前記吸引部とをつなぐ前記吸引路の高さが、前記分岐部の吸着部側から前記吸引部側に向かって段階的に高くなっていることを特徴とするものである。
また、本発明の真空ピンセットは、上記構成において、前記分岐部の吸着部と前記吸引部とをつなぐ前記吸引路の幅が、前記分岐部の吸着部側よりも前記吸引部側の方で広いことを特徴とするものである。
また、本発明の真空ピンセットは、上記構成において、前記分岐部の吸着部と前記吸引部とをつなぐ前記吸引路の断面積が、前記分岐部の吸着部側から前記吸引部側に向かって徐々に大きくなっていることを特徴とするものである。
また、本発明の基板搬送装置は、上記いずれかの構成の真空ピンセットを前記基板を吸着して搬送するのに用いることを特徴とするものである。
さらに、本発明の基板処理装置は、上記構成の基板搬送装置を前記基板を処理室に搬送するのに用いることを特徴とするものである。
本発明の真空ピンセットによれば、先端側が二股に分岐した板状体と、板状体の先端部および分岐部の各表面の少なくとも3カ所に設けられた、気体を吸引して基板を吸着するための吸着部と、分岐部の吸着部と他の吸着部とをつなぐ吸引路と、分岐部の吸着部と吸引路を介してつながって気体を吸引するための吸引部とを備えてなる真空ピンセットにおいて、分岐部の吸着部と吸引部とをつなぐ吸引路の断面積が、分岐部の吸着部側よりも吸引部側の方で大きいことから、吸引機構を作動させたときの吸引に掛かる抵抗が小さくなり、吸引路の容積が大きくなることから吸着力が向上するので、半導体ウエハ等の基板を確実に吸着して搬送することができる。また、断面積の大きい部分が吸引部側の方へ設けられていることから真空ピンセットの剛性の低下を抑えることができるので、大型化した半導体ウエハ,液晶表示パネル用ガラス基板,半導体製造装置用マスク基板等の基板についても搬送効率および処理効率の向上に対応することができる。さらにまた、板状体および吸着部はセラミックスからなる積層体とされていることから、使用される気体が、薬品やフッ素系ガス,塩素系ガス等の腐食性ガス等を用いる場合には、吸引路および吸着部耐食性に優れたものとなり、使用条件の制約を受けないものとすることができます。
また、本発明の真空ピンセットによれば、分岐部の吸着部と吸引部とをつなぐ吸引路の高さが、分岐部の吸着部側から吸引部側に向かって段階的に高くなっているときには、半導体ウエハ等の基板から発生するパーティクルや大気中の埃を吸引し、パーティクルや大気中の埃が分岐部の吸着部と吸引部とをつなぐ吸引路の段階的に高くなった部分に運び込まれて、この段階的に高くなった部分にパーティクルや大気中の埃が留まったとしても、拡大領域によって十分に流路を確保することができるので、吸引路が詰まることなく基板を確実に吸着して搬送することができる。
また、本発明の真空ピンセットによれば、分岐部の吸着部と吸引部とをつなぐ吸引路の幅が、分岐部の吸着部側よりも吸引部側の方で広いときには、吸引部の径が吸着部の径よりも大きいことから、吸引力の増加に伴い吸着力が向上するので、半導体ウエハ等の基板をより確実に吸着して搬送することができる。
また、本発明の真空ピンセットによれば、分岐部の吸着部と吸引部とをつなぐ吸引路の断面積が、分岐部の吸着部側から吸引部側に向かって徐々に大きくなっているときには、吸引路の幅や高さが途中で大きくなっているものに比べて、応力集中によってクラックが発生するおそれを少なくすることができる。
また、本発明の基板搬送装置によれば、基板を吸着して搬送するのに上記いずれかの構成の本発明の真空ピンセットを用いることから、剛性の低下を抑えて吸着力を向上させることによって、半導体ウエハ等の基板を確実に吸着して搬送することができるので、基板の搬送効率を高くすることができ、大型化した半導体ウエハ,液晶表示パネル用ガラス基板,半導体製造装置用マスク基板等の基板についても搬送効率を向上させることができる。
また、本発明の基板処理装置によれば、基板の搬送効率の高い上記構成の本発明の基板搬送装置を基板を処理室に搬送するのに用いることから、基板処理の歩留まりおよび信頼性が高まり、大型化した半導体ウエハ,液晶表示パネル用ガラス基板,半導体製造装置用マスク基板等の基板についても基板の処理効率を高くすることができる。
以下、本発明の真空ピンセットおよびこれを用いた基板搬送装置ならびに基板処理装置の実施の形態の例について説明する。
図1は、本発明の真空ピンセットの実施の形態の一例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)におけるA−A’線での断面図であり、(c)は真空ピンセット1を(b)におけるB−B’線の位置で切断したときの断面図である。なお、図1(b)においては、吸着状態を示すため基板の断面図を付加してある。また、以下の図面においては、図1と同様の部材には同じ符号を用いて示す。
この真空ピンセット1は、図1(a)に平面図で示すように、板状体7の一方の端部の先端側が二股状に分岐しており、板状体7の先端部および分岐部の各表面の少なくとも3カ所に基板を吸着する吸着孔2と吸着面3aとを有する吸着部3を備えており、他方の端部には、5カ所に孔が開口しており、中央に吸引路4と連通するとともに吸引機構に接続する吸気孔を有する吸引部5を、他の4カ所にボルトで基板搬送装置のシャフト等に締結するための貫通孔6を備えている。また、図1(b)の(a)におけるA−A’線での断面図および図1(c)の真空ピンセット1を(b)におけるB−B’線の位置で切断したときの断面図で示すように、真空ピンセット1の内部には吸着部3と吸引部5とを連通する吸引路4を内設している。
この真空ピンセット1を用いた基板8の搬送は、この真空ピンセット1に接続された吸引機構(図示せず)を作動させることによって、吸引部5と吸引路4とを介して3カ所の吸着孔2で吸引して、このときに発生する吸着力によって吸着面3aに基板8を吸着し、次工程に搬送するものである。このとき、本発明の真空ピンセット1は、分岐部の吸着部3と吸引部5をつなぐ吸引路4の断面積が、分岐部の吸着部3側よりも吸引部5側の方で大きいことが重要である。なお、以下の説明では、分岐部の吸着部3と吸引部5とをつなぐ吸引路4の断面積が分岐部の吸着部3側よりも吸引部5側の方で大きい部分を拡大領域4aという。
図1に示す例の本発明の真空ピンセット1は、吸引路4の断面積が、分岐部の吸着部3側から吸引部5側に向かう途中から図中に双方向矢印で示す厚み方向に高くなる拡大領域4aを有している。この真空ピンセット1によれば、分岐部の吸着部3と吸引部5とをつなぐ吸引路4の断面積が分岐部の吸着部3側よりも吸引部5側の方で大きいことから吸引機構を作動させたときの吸引に掛かる抵抗が小さくなり、吸引路4の容積が大きくなることから吸着力が向上するので、基板8を確実に吸着して搬送することができる。また、拡大領域4aが吸引部5側の方へ設けられていることから、真空ピンセット1の剛性の低下を抑えることができる。
次に、図2〜図5は、本発明の真空ピンセットの実施の形態の他の例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)におけるA−A’線での断面図であり、(c)は真空ピンセット1を(b)におけるB−B’線の位置で切断したときの断面図である。
図2に示す例の真空ピンセット1は、分岐部の吸着部3と吸引部5とをつなぐ吸引路4の高さが、分岐部の吸着部3側よりも吸引部5側に向かって段階的に高い拡大領域4aを有している。この図2に示す例の真空ピンセット1であれば、吸引機構を作動させたときの吸引に掛かる抵抗が小さくなり、吸引路4の容積が大きくなることから、吸着力が向上するので基板8を確実に吸着して搬送することができる。また、拡大領域4aが吸引部5側の方へ設けられていることから、分岐部側に十分な強度を確保することができるので、真空ピンセット1の剛性の低下を抑えることができる。さらに、基板8から発生するパーティクルや大気中の埃を吸引し、パーティクルや大気中の埃が分岐部の吸着部3と吸引部5とをつなぐ吸引路4の段階的に高くなった拡大領域4aに運び込まれて、この段階的に高くなった拡大領域4aにパーティクルや大気中の埃が留まったとしても、拡大領域4aによって十分に流路を確保することができるので、吸引路4が詰まることなく基板8を確実に吸着して搬送することができる。
図3に示す例の真空ピンセット1は、分岐部の吸着部3と吸引部5とをつなぐ吸引路4の幅が、分岐部の吸着部3側よりも吸引部5側の方で広がる拡大領域4aを有している。この図3に示す例の真空ピンセット1であれば、上記と同様の効果を得ることができるとともに、吸引部5の径が吸着部3の径よりも大きいことから吸引力の増加に伴い吸着力が向上するので、基板8をより確実に吸着して搬送できる。
図4および図5に示す例の真空ピンセット1は、分岐部の吸着部3と吸引部5とをつなぐ吸引路4の断面積が、分岐部の吸着部3側から吸引部5側に向かって徐々に大きくなっている。図4に示す例の真空ピンセット1は、吸引路4が分岐部の吸着部3側から吸引部5側に向かって除々に幅方向に大きくなっており、図5に示す例の真空ピンセット1は、吸引路4が分岐部の吸着部3側から吸引部5側に向かって除々に幅方向および厚み方向に大きくなっている。
図4および図5に示す真空ピンセット1であれば、吸引機構を作動させたときの吸引に掛かる抵抗が小さくなり、吸引路4の容積が大きくなることから吸着力が向上するので、基板8を確実に吸着して搬送することができる。また、拡大領域4aが吸引部5側の方へ設けられていることから、分岐部側に十分な強度を確保することができるので、真空ピンセット1の剛性の低下を抑えることができる。さらに、図1〜図3に示す例の真空ピンセット1のように吸引路4の幅や高さが途中で大きくなっているものに比べて、応力集中によってクラックが発生するおそれを少なくすることができる。
また、図1〜図4に示す例の真空ピンセット1の断面図において、図中に双方向矢印で示す高さhに対する拡大領域4aの最も高い部分である最大高さhmaxおよび双方向矢印で示す幅wに対する拡大領域4aの最も幅の広い部分である最大幅wmaxは、それぞれ2.5倍以下であることが好ましい。高さhに対する最大高さhmaxおよび幅wに対する最大幅wmaxがいずれもこの範囲であることにより、分岐部から吸引部5までの間の剛性の低下を抑えて吸着力を向上させることができるので、基板8を確実に吸着して搬送することができる。
また、本発明の真空ピンセット1は、樹脂の耐熱温度を超えない使用環境で用いるときには、吸着面3aが樹脂で被覆されていることが好適である。吸着面3aが樹脂で被覆されているときには、基板8の材質より樹脂は柔らかいので、基板8を傷つけるおそれを少なくすることができ、吸着時の基板8と吸着面3aとの接触によってパーティクルが発生するのも抑制することができる。
加えて、本発明の真空ピンセット1は、吸着面3aとともに吸着部3の外側面3bが樹脂で被覆されていることが好適である。外側面3bが樹脂で被覆されているときには、基板8を搬送しているときに外側面3bから塵埃等の粒子が離脱することがなくなるので、粒子の付着によって基板8を汚染するおそれを少なくすることができる。
この吸着面3aや外側面3bを被覆する樹脂としては、ポリイミド樹脂およびポリテトラフロロエチレン樹脂,ポリ三フッ化塩化エチレン樹脂,ポリビニリデンフルオライド樹脂等のフッ素樹脂が好適である。これらの中でもポリイミド樹脂は、真空中でガスの発生がほとんどなく、耐熱性に優れている。また、フッ素樹脂は、化学的に安定で、耐熱性に優れている。これら樹脂の厚みは、例えば0.5〜1.0mmである。
なお、図1〜図5に示す例の真空ピンセット1の平面図には、いずれも吸着面3aの輪郭が円形であるものを示したが、吸着面3aの輪郭は円形に限定されるものではなく、楕円形状であっても矩形状であってもよい。また、図1〜図5に示す例の真空ピンセット1は、例えば、厚みが1.8〜3mm,長さが160〜350mmであり、特に直径が203.2mm(8インチ)および304.8mm(12インチ)である大型の基板8を吸着して搬送するのにも好適である。
図6は、本発明の真空ピンセットを用いた基板搬送装置およびこの基板搬送装置を用いた基板処理装置の実施の形態の一例を示す平面図である。
図6に示すように、本例の基板処理装置20は、搬送室9のほぼ中央に基板搬送装置10を設置し、搬送室9の周囲にゲートバルブ16を介して複数の処理室14a〜14dおよび処理前後の基板8を収納する基板カセット17を備えた2個の基板カセット室15を配置して、基板8を1枚ごとに連続的に処理するマルチチャンバ方式の基板処理装置20である。
ここで、各処理室14a〜14dでは、例えば以下のような処理が行なわれる。処理室14aでは、基板8としてのシリコン単結晶基板に対して酸化処理が施され、その表面にシリコン酸化膜が形成される。また、処理室14bでは、プラズマドライエッチング装置を用いて、基板8上に形成された酸化膜が除去される。また、処理室14cでは、エピタキシャル層を形成するためのエピタキシャル処理が行なわれる。また、処理室14dでは、例えば、アルミニウム,チタン,窒化チタン等からなる層がスパッタリング法により基板8上に形成される。
そして、搬送室9のほぼ中央に設置されている本発明の基板搬送装置10は、軸方向に回転するシャフト11と、シャフト11に対して回転可能に取り付けられた第1のアーム12と、第1のアーム12の先端に同じく回転可能に取り付けられた第2のアーム13と、第2のアーム13の先端に固定された真空ピンセット1とを備えた多関節型の基板搬送装置10である。
この基板搬送装置10は、処理室14および基板カセット室15のゲートバルブ16が開口した後、第2のアーム13を伸長させ、処理室14内に進入させるまたは基板カセット室15内の基板カセット17に収納された基板8の間隙に真空ピンセット1を進入させて、その搬出および搬入を行なう。
そして、これらを備えた本発明の基板処理装置20を用いた基板8の処理は、まず処理前の基板8がカセット単位で基板カセット室15内に運び込まれる。そして、基板カセット室15内を真空引きまたは不活性ガスとの置換が行なわれた後、搬送室9と基板カセット室15との間のゲートバルブ16が開き、基板搬送装置10によって基板カセット17に複数収納された基板8同士の間隙に真空ピンセット1を進入させて基板8を1枚取り出し、搬送室9内に搬送される。
次に、所定の処理室14a〜14d内の真空引きまたは不活性ガスとの置換が行なわれた後、搬送室9と処理室14a〜14dとの間のゲートバルブ16が開き、基板8が各処理室14a〜14d内に搬入されて、成膜やエッチング等の処理が行なわれる。そして、最終的に処理が終わった基板8は、基板搬送装置10により搬送されて基板カセット室15内の基板カセット17に収納される。このようにして、基板8は外気に晒されることなく、所定の雰囲気中で一連の処理が行なわれる。
この本発明の基板搬送装置10に、分岐部の吸着部3と吸引部5とをつなぐ吸引路4の断面積が分岐部の吸着部3側よりも吸引部5側の方で大きい本発明の真空ピンセット1を用いることにより、基板8を確実に吸着して搬送できるので、基板8の搬送効率を高くすることができる。
また、本発明の基板処理装置20は、本発明の真空ピンセット1を用いた基板8の搬送効率が高い本発明の基板搬送装置10を基板8を吸着して処理室14a〜14dに搬送する機構として設置していることにより、基板8の処理効率を高くすることができる。
次に、このような本発明の真空ピンセット1を得るための製造方法について図7および図8を用いて説明する。
図7は、図3の本発明の真空ピンセットの各部材を示す、それぞれ(a)は吸着部3の、(b)は板状体7aの、(c)は板状体7bの、(d)は板状体7cの成形体の平面図である。図8は、図7(a)〜(d)の各部材の積層状態を示す図である。
このように、本発明の真空ピンセット1は、吸着部3や板状体7a〜7cのように、複数の部材に分けて成形した成形体を積層して焼成することが好適であり、とりわけ各成形体が積層して焼成した後にセラミックスとなるものであることが好適である。このような方法によれば、積層構造の吸着部3や板状体7a〜7cの各層が有機系の接着剤によらずに接合されているものとなるので、半導体素子や半導体装置の製造工程において用いられる薬品やフッ素系ガス,塩素系ガス等の腐食性ガスに対する耐食性にも優れたものとなり、使用条件の制約を受けないものとすることができる。
この本発明の真空ピンセット1の製造方法は、まず、セラミック原料粉末,焼結助剤,バインダ等を混合したスラリーをドクターブレード法で成形したシートを成形体の形状に打ち抜くか、またはセラミック原料粉末,焼結助剤,バインダ等を混合したスラリーを噴霧乾燥した顆粒を用いて成形体をプレス成形する。さらに、必要に応じて切削加工を施して、円筒状の吸着部3と、吸引部5および貫通孔6を有する板状体7aと、吸着孔2,吸引部5,貫通孔6および拡大領域4aを備えた吸引路4となる溝を有する板状体7bと、貫通孔6を有する板状体7cとを得る。また、吸引路4の高さが段階的に高くなる拡大領域4aが板状体7aまたは板状体7cに及ぶときには、板状体7aまたは板状体7cの板状体7bに対向する面に切削加工を施して、拡大領域4aの一部となる凹部を形成すればよい。
次に、吸着部3,板状体7a,板状体7bおよび板状体7cが互いに対向する面に密着液を塗布し、吸着孔2,吸引部5および貫通孔6の位置を合わせて、図8に示すように積層する。なお、これらを積層するときの向きは、図7(a),(b)および(d)に示す部材は図示している面が上向きとなるように、図7(c)に示す部材は図示している面が下向きとなるように積層する。そして、この積層体を加圧した後、焼成することにより、図3に示す本発明の真空ピンセット1を得ることができる。また、図1,2,4,5に示す真空ピンセット1を得る場合も、吸着孔2,吸引部5,貫通孔6等を有し、それぞれの拡大領域4aを備えた吸引路4の形状に応じた板状体7a〜7cと吸着部3とを作製し、上記と同様に吸着部3および各板状体7a〜7cが互いに対向する面に密着液を塗布し、吸着孔2,吸引部5および貫通孔6の位置を合わせて積層して加圧した後、焼成することによって、それぞれ得ることができる。なお、各成形体を積層した積層体の焼成温度は用いるセラミック原料粉末により異なり、例えばセラミック原料粉末としてアルミナ原料粉末を用いたときには、焼成温度は1500〜1600℃とすればよい。
また、吸着面3aや外側面3bを樹脂で被覆する場合は、プライマー(下地剤)を塗装後に乾燥させてから、ポリイミド樹脂およびポリテトラフロロエチレン樹脂,ポリ三フッ化塩化エチレン樹脂,ポリビニリデンフルオライド樹脂等のフッ素樹脂のいずれかをスプレーにより塗布し、塗布した樹脂のガラス転位点や融点を超える温度で熱処理すればよい。なお、樹脂の被覆が不要な部分については、プライマー(下地剤)を塗装する前にマスキングを施し、熱処理後にマスキングを取り除けばよい。
このようにして作製された本発明の真空ピンセット1は、吸引機構を作動させたときの吸引に掛かる抵抗が小さくなり、吸引路4の容積が大きくなることから吸着力が向上するので、基板8を確実に吸着して搬送することができる。また、拡大領域4aが吸引部5側の方へ設けられていることから、分岐部から吸引部5にかけて十分な強度を確保することができるので、真空ピンセット1の剛性の低下を抑えることができる。
また、本発明の真空ピンセット1は、吸着部3,板状体7a〜7cのように複数の部材に分けて成形した成形体を積層して焼成することにより得られたセラミックスからなるものであるときには、各成形体間が有機系の接着剤によらずに接合されているため、半導体素子や半導体装置の製造工程において用いられる薬品やフッ素系ガス,塩素系ガス等の腐食性ガスに対する耐食性にも優れたものとなり、使用条件の制約を受けないものとすることができる。
さらに、吸着面3aおよび外側面3bが樹脂で被覆されているときには、基板8を形成する材質より樹脂は柔らかいので、樹脂の耐熱温度を超えない使用環境で用いることにより、基板8を傷つけるおそれを少なくすることができ、吸着時の基板8と吸着面3aとの接触によってパーティクルが発生するのを抑制することができる。
また、このように優れた本発明の真空ピンセット1を基板8を吸着して搬送するのに用いた本発明の基板搬送装置10は、剛性の低下を抑え吸着力を向上させた本発明の真空ピンセット1を用いることから、基板8を確実に吸着して搬送することができるので、大型化した半導体ウエハ,液晶表示パネル用ガラス基板,半導体製造装置用マスク基板等の基板8であっても搬送効率を高くすることができる。さらに、この基板8の搬送効率の高い本発明の基板搬送装置10を基板8を処理室に搬送するのに用いた本発明の基板処理装置20は、大型化した半導体ウエハ,液晶表示パネル用ガラス基板,半導体製造装置用マスク基板等の基板についても基板8の処理効率を高くすることができる。
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図1〜図5に示す例の本発明の真空ピンセット1と従来の真空ピンセットとを作製し、吸引に掛かる抵抗を確認するために圧力損失を調べた。なお、試料No.については、図1に示す例の本発明の真空ピンセット1をNo.1とし、以下それぞれ、図2に示す例をNo.2とし、図3に示す例をNo.3とし、図4に示す例をNo.4とし、図5に示す例をNo.5とし、従来の真空ピンセットをNo.6とした。
まず、実施例として本発明の真空ピンセット1の試料No.1〜5を以下の手順で作製した。アルミナ原料粉末と焼結助剤とバインダ等を混合したスラリーを用いてドクターブレード法でシートを成形し、得られたシートを金型で打ち抜くことにより、吸引部5および4つの貫通孔6を有する板状体7aと、一方の端部の先端側が二股状に分岐し、他方の端部に4つの貫通孔6を有する板状体7cとを得た。板状体7bについては、金型でシートを打ち抜いて外辺,吸着部2,吸引部5および4つの貫通孔6を形成した後に、拡大領域4aを含む吸引路4の形状に応じた溝の切削加工を施した。また、所定の厚みとするための切削加工を板状体7a〜7cに施した。
次に、アルミナ原料粉末と焼結助剤とバインダ等を混合したスラリーを噴霧乾燥した顆粒を用いてプレス成形することにより、吸着部3の成形体を得た。そして、吸着部3,板状体7a,板状体7b,板状体7cの各成形体の互いに対向する面に密着液を塗布し、板状体7bの吸着孔2に吸着部3の位置を合わせ、板状体7a〜7cの外辺および貫通孔6の位置を合わせて積層して加圧した後、1500〜1600℃の焼成温度で焼成することにより、厚みが1.8mmで長さが160mmの図1〜図5に示す例の本発明の真空ピンセット1の実施例の各試料を得た。また、比較例としての従来の真空ピンセットである試料No.6については、吸引路4に拡大領域4aを設けないことを除いて、同様の方法で作製した。
次に、圧力計を備えた吸引機構(図示しない)を作動させ、真空ピンセットの吸引部5に接続するチューブの先端が開放された状態で圧力計が39kPaを示すように圧力を調節した。そして、圧力計が39kPaを示した状態で、本発明の真空ピンセット1の実施例である試料No.1〜5および試料No.6の従来の真空ピンセットの吸引部5にチューブを接続したときの圧力の低下を圧力損失として圧力計から読み取った。
結果を表1に示す。
Figure 0005202028
表1に示す結果から分かる通り、試料No.6の従来の真空ピンセットの圧力損失が5.2kPaであって高かったのに対して、本発明の真空ピンセット1の実施例である試料No.1〜5は、いずれも圧力損失が4.0kPa以下と低かった。また、分岐部の吸着部3側よりも吸引部5側の方で広くなっている、または分岐部の吸着部3側から吸引部5側に向かって徐々に大きくなっている拡大領域4aを有する本発明の真空ピンセット1の実施例である試料No.3〜5は、吸引部5の径が吸着部3の径よりも大きいことから、3.2kPa以下とさらに圧力損失が低かった。
特に、吸引路4が分岐部の吸着部3側から吸引部5側に向かって除々に幅方向および厚み方向に大きくなり、吸引路4の容積が実施例の中で最も大きい本発明の真空ピンセット1の実施例である試料No.5の圧力損失が、2.5kPaと最も低かった。
以上の結果から、分岐部の吸着部3と吸引部5とをつなぐ吸引路の断面積が分岐部の吸着部3側よりも吸引部5側の方で大きい本発明の真空ピンセット1は、吸引機構を作動させたときの吸引に掛かる抵抗が小さくなり、吸引路4の容積が大きくなることから吸着力が向上することが分かった。
また、本発明の真空ピンセット1である試料No.1〜5を基板処理装置10に用いて、基板カセット室15内の基板カセット17に収納された基板8を各処理室14a〜14dへ吸着して搬送を繰り返し行なったところ、基板8の吸着ミスや搬送中の基板8の落下もなかったので、本発明の真空ピンセット1は、吸着力の向上により確実に基板8を吸着するとともに、繰り返しの搬送に耐え得る十分な剛性を有しており、大型化した半導体ウエハ,液晶表示パネル用ガラス基板,半導体製造装置用マスク基板等の基板の搬送についても対応できることが分かった。
また、本発明の真空ピンセット1を用いた基板搬送装置10の搬送効率は従来のものよりも高く、この基板搬送装置10を用いた基板処理装置20は、基板8の処理効率が同じく従来のものよりも高まり、大型化した半導体ウエハ,液晶表示パネル用ガラス基板,半導体製造装置用マスク基板等の基板を扱う場合においても好適であることが分かった。
本発明の真空ピンセットの実施の形態の一例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)におけるA−A’線での断面図であり、(c)は真空ピンセット1を(b)におけるB−B’線の位置で切断したときの断面図である。 本発明の真空ピンセットの他の実施の形態の他の例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)におけるA−A’線での断面図であり、(c)は真空ピンセット1を(b)におけるB−B’線の位置で切断したときの断面図である。 本発明の真空ピンセットの他の実施の形態のさらに他の例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)におけるA−A’線での断面図であり、(c)は真空ピンセット1を(b)におけるB−B’線の位置で切断したときの断面図である。 本発明の真空ピンセットの他の実施の形態のさらに他の例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)におけるA−A’線での断面図であり、(c)は真空ピンセット1を(b)におけるB−B’線の位置で切断したときの断面図である。 本発明の真空ピンセットの他の実施の形態のさらに他の例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)におけるA−A’線での断面図であり、(c)は真空ピンセット1を(b)におけるB−B’線の位置で切断したときの断面図である。 本発明の真空ピンセットを用いた基板搬送装置およびこの基板搬送装置を用いた基板処理装置の平面図である。 図3の本発明の真空ピンセットの各部材を示す、それぞれ(a)は吸着部の、(b)〜(d)は板状体の成形体の平面図である。 図7(a)〜(d)の各部材の積層状態を示す図である。 従来の真空ピンセットの例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)におけるY−Y’線での断面図である。 従来の真空ピンセットを用いた搬送ロボットの例を示す斜視図である。
符号の説明
1:真空ピンセット
2:吸着孔
3:吸着部
3a:吸着面
3b:外側面
4:吸引路
4a:拡大領域
5:吸引部
6:貫通孔
7:板状体
8:基板
9:搬送室
10:基板搬送装置
14a〜14d:処理室
20:基板処理装置

Claims (6)

  1. 先端側が二股に分岐した板状体と、該板状体の先端部および分岐部の各表面の少なくとも3カ所に設けられた、気体を吸引して基板を吸着するための吸着部と、前記分岐部の吸着部と他の吸着部とをつなぐ吸引路と、前記分岐部の吸着部と吸引路を介してつながって気体を吸引するための吸引部とを備えてな、前記分岐部の吸着部と前記吸引部とをつなぐ前記吸引路の断面積が、前記分岐部の吸着部側よりも前記吸引部側の方で大きいとともに、前記板状体および前記吸着部はセラミックスからなる積層体とされていることを特徴とする真空ピンセット。
  2. 前記分岐部の吸着部と前記吸引部とをつなぐ前記吸引路の高さが、前記分岐部の吸着部側から前記吸引部側に向かって段階的に高くなっていることを特徴とする請求項1に記載の真空ピンセット。
  3. 前記分岐部の吸着部と前記吸引部とをつなぐ前記吸引路の幅が、前記分岐部の吸着部側よりも前記吸引部側の方で広いことを特徴とする請求項1に記載の真空ピンセット。
  4. 前記分岐部の吸着部と前記吸引部とをつなぐ前記吸引路の断面積が、前記分岐部の吸着部側から前記吸引部側に向かって徐々に大きくなっていることを特徴とする請求項1に記載の真空ピンセット。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の真空ピンセットを前記基板を吸着して搬送するのに用いることを特徴とする基板搬送装置。
  6. 請求項5に記載の基板搬送装置を前記基板を処理室に搬送するのに用いることを特徴とする基板処理装置。
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